(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-95864(P2018-95864A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20180525BHJP
E01H 10/00 20060101ALI20180525BHJP
C05F 11/08 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
C09K3/18
E01H10/00 Z
C05F11/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-237189(P2017-237189)
(22)【出願日】2017年12月11日
(11)【特許番号】特許第6331184号(P6331184)
(45)【特許公報発行日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0169685
(32)【優先日】2016年12月13日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517433452
【氏名又は名称】パクソンウ
(74)【代理人】
【識別番号】100071054
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高久
(72)【発明者】
【氏名】パクソンウ
【テーマコード(参考)】
4H020
4H061
【Fターム(参考)】
4H020AA02
4H020AA03
4H020AB01
4H061AA01
4H061CC13
4H061CC15
4H061EE12
4H061EE14
4H061EE64
4H061EE66
(57)【要約】 (修正有)
【課題】気温が上ってもはや除雪剤を必要としない時期において残存する除雪剤を回収又は除去する追加作業を行わなくてよいため経済性に優れる、環境にやさしい除雪剤及びその製造方法の提供。
【解決手段】金属イオン塩と微生物が含浸されたウッドチップを含み、前記微生物は、バチルス・サブチリス菌、バチルス・アミロリクエファシエンス菌、バチルス・ステアロサーモフィラス菌、バチルス・セレウス菌、バチルス・メガテリウム菌及びバチルス・リケニフォルミス菌から選択された少なくともいずれか一つの枯草菌である、除雪剤。金属イオン塩が塩化マグネシウム、メタ珪酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及びリチウムイオン塩から選択される塩である、除雪剤。ウッドチップが1〜20mmの薄板状の木片で表面に凹凸が形成されている、木片である、除雪剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン塩と微生物が含浸されたウッドチップを含み、
前記微生物は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)菌、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)菌、バチルス・ステアロサーモフィラス(bacillus stearothermophilus)菌、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)菌、バチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)菌及びバチルス・リケニフォルミス(bacillus licheniformis)菌から選択された少なくともいずれか一つの枯草菌であることを特徴とする、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤。
【請求項2】
前記金属イオン塩は、
塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤。
【請求項3】
前記ウッドチップは、
1〜20mm厚みの薄板状の木片であって、表面に凹凸が形成されたことを特徴とする、請求項1に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤。
【請求項4】
金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを浸漬させる浸漬段階;
前記浸漬段階を通じて金属イオン塩が含浸されたウッドチップを乾燥する第1乾燥段階;
前記第1乾燥段階を通じて乾燥されたウッドチップに微生物培養液を噴射する噴射段階;及び
前記噴射段階を通じて微生物が含浸されたウッドチップを乾燥する第2乾燥段階;を含み、
前記微生物培養液は、
バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)菌、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)菌、バチルス・ステアロサーモフィラス(bacillus stearothermophilus)菌、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)菌、バチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)菌及びバチルス・リケニフォルミス(bacillus licheniformis)菌から選択された少なくともいずれか一つの枯草菌を培地に接種して培養したものであることを特徴とする、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【請求項5】
前記ウッドチップは、
木板の表面に凹凸を形成する表面処理段階;及び
表面に凹凸が形成された木板を1〜20mm厚みの薄板状の木片に破砕させる破砕段階;を含んで製造されたことを特徴とする、請求項4に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【請求項6】
前記金属イオン塩が溶解されたイオン溶液は、
水に、
塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上の金属イオン塩を1:0.5〜2質量比で溶解させてなることを特徴とする、請求項4に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【請求項7】
前記金属イオン塩は、
塩化マグネシウム100重量部、
前記塩化マグネシウム100重量部を基準に、メタけい酸ナトリウム1〜10重量部、リチウムイオン塩1〜10重量部が含まれてなることを特徴とする、請求項6に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【請求項8】
前記第1乾燥段階では、
前記金属イオン塩が含浸されたウッドチップを120〜140℃で1〜2時間乾燥することを特徴とする、請求項4に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【請求項9】
前記第2乾燥段階では、
微生物が含浸されたウッドチップを10〜30℃で20〜30時間乾燥することを特徴とする、請求項4に記載の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウッドチップに微生物と金属イオン塩を含浸させてなる除雪剤及びその製造方法に係り、より詳しくは、当該除雪剤を路面に撒布して摩擦力を付与し且つ積雪された雪を融雪する効果を同時に得ることができるだけでなく、ウッドチップ中に含浸された微生物が周辺の植物や土壌に栄養物質として作用して土壌の質を改善し、植物の成長に役立てられる土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全地球的な気象異変などで冬期の暴雪が我が国は勿論、全世界的に頻繁に発生しており、そのため、交通の安全や円滑な運行のために道路などに積もった雪を除雪すべく、冬期に除雪剤の撒布が多くなされている。
一般に、除雪剤は、直接雪を溶かす融雪(融氷)剤と、雪を溶かすことはできないが圧雪又は結氷路面で一時的に摩擦力を高めるための摩擦剤とに分けられる。
【0003】
通常、摩擦剤としては砂又は練炭灰を使用しているが、撒布初期に一時的に摩擦力を増加させて滑りを防止する効果はあるが、粒子が氷層の深部に次第に沈降しながら次の降雪時には積雪中に埋まってしまい、大した効果を期待し難く、配水管や集水井の詰まり、微細な粒子による空気汚染、異物による車両の破損、雪が溶けてから残留する砂又は練炭灰によって掃除が要されるなどの多くの作業人力や費用が更に所要されることから経済性に劣り、そのため、上り坂区間、陰地、常時結氷地域、地熱のない橋梁区間などの摩擦力が要される地域に限って制限的に使用されている。
【0004】
一方、融雪剤は、塩化物系除雪剤と非塩化物系除雪剤とに大別され、非塩化物系除雪剤に比べて塩化物系除雪剤の方が除雪効果に優れ、主に塩化物系除雪剤を使用している実情である。
【0005】
しかし、既存の塩化物系除雪剤は、除雪作業のために道路の路面や橋梁への撒布の際、前記塩化物系除雪剤中に含まれる塩素イオン(Cl
−)と鉄(Fe)とが反応しながら塩化鉄(FeCl
2)を生成し、これが自動車、鉄筋、鉄骨などを腐食させるという問題が発生している。
【0006】
特に、塩化物系除雪剤のうち多用される塩化カルシウムは、水に溶解し又は土壌に吸収されると水質の汚染や土壌の酸性化を誘発し、且つ道路周辺の草木、農作物などの植物を枯死させるなど植物の生長に支障をもたらして環境汚染を誘発する原因の一つとして知られている。
【0007】
また、撒布される除雪剤は、無作為に広い範囲に振り撤かれるため、実際除雪に要する量よりも多くの量が撒布され、一度使用された除雪剤は雪が溶けながら発生した水とともに配水管に流れ込むので、再び雪が降ったり結氷した場合は、再度撒布しなければならない実情である。したがって、除雪作業の際に除雪に要する量よりも多量の除雪剤が使用されており、過量で撒布された除雪剤による車両の腐食、道路の破損などの問題が発生している。
【0008】
これにより、前述した問題を解決するために種々の環境にやさしい除雪剤についての研究・開発が進行されてきており、そこで、本願出願人は、韓国登録特許第1617935号(2016年04月27日登録公告)を通して、山での伐木後に残った木や木工所での切り端などの廃木材を原料として作ったウッドチップを利用して、木材の摩擦性や金属イオンの徐放効果を用いた長期間の使用が可能な除雪剤を提案したことがある。
【0009】
しかし、前記従来技術では、気温が上がると残存するウッドチップによって道路又は路面が美観上汚なく見え、且つ残存するウッドチップを回収するという追加作業によって経済性に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許第1617935号(2016年04月27日登録公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、環境にやさしい材料であるウッドチップに金属イオン塩と微生物を含浸させて除雪剤を製造することによって、積雪された路面又は道路への摩擦力をウッドチップで高め、且つ前記ウッドチップ中に含浸された金属イオン塩で雪を溶かすことで摩擦剤と融雪剤の効果を併せて得ることができ、一方、ウッドチップ中に含浸された微生物が外部に放出されて周辺の土壌や植物に栄養成分として作用するだけではなく、気温が上ってもはや除雪剤を必要としない時期において前記ウッドチップ中に含浸された微生物によってウッドチップが生分解することで、残存するウッドチップを回収するという追加作業を必要としない、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤及びその製造方法を提供摺ることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述したような目的を達成するために、本発明の一実施形態は、金属イオン塩と微生物が含浸されたウッドチップを含む、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤に関する。
【0013】
具体的に、前記微生物は、枯草菌及び乳酸菌からなる群より選択された1種以上を含んでいてよく、前記金属イオン塩は、塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含んでいてよい。
前記ウッドチップは、1〜20mm厚さの薄板状の木片であって、表面に凹凸が形成されたものを使用していてよい。
【0014】
一方、本発明の他の実施形態は、金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを浸漬させる浸漬段階;前記浸漬段階を通じて金属イオン塩が含浸されたウッドチップを乾燥する第1乾燥段階;前記第1乾燥段階を通じて乾燥されたウッドチップに微生物培養液を噴射する噴射段階;及び前記噴射段階を通じて微生物が含浸されたウッドチップを乾燥する第2乾燥段階;を含む、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤を製造する方法である。
【0015】
前記ウッドチップは、木板の表面に凹凸を形成する表面処理段階;及び表面に凹凸が形成された木板を1〜20mm厚さの薄板状の木片に破砕する破砕段階;を含んで製造されていてよい。
【0016】
前記金属イオン塩が溶解されたイオン溶液は、水に、塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上の金属イオン塩を1:0.5〜2質量比で溶解させてなるものを使用していてよい。このとき、前記金属イオン塩は、塩化マグネシウム100重量部、前記塩化マグネシウム100重量部を基準に、メタけい酸ナトリウム1〜10重量部、リチウムイオン塩1〜10重量部が含まれたものを使用していてよい。
前記微生物培養液は、枯草菌及び乳酸菌からなる群より選択された1種以上の微生物を培地に接種し培養して製造されたものであってよい。
【0017】
好ましくは、前記第1乾燥段階は、前記金属イオン塩が含浸されたウッドチップを120〜140℃で1〜2時間乾燥していてよく、前記第2乾燥段階は、微生物が含浸されたウッドチップを10〜30℃で20〜30時間乾燥することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、環境にやさしい材料であるウッドチップ中に金属イオン塩と微生物を含浸させて除雪剤を製造することによって、前記ウッドチップ中に含浸された微生物が外部に放出されることで除雪剤が撒布された周辺の土壌や植物に栄養分として作用して土壌の質を改善し、且つ植物の成長に役立てられる。
【0019】
また、所定期間の経過後にウッドチップが微生物によって生分解することで、気温が上ってもはや除雪剤を必要としない時期において残存する除雪剤を回収又は除去する追加作業を行わなくてよいため経済性に優れ、且つ2次環境汚染を生じさせないため環境にやさしい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例を挙げて詳しく説明するに先立ち、本明細書及び請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、本発明の技術的思想や概念に符合する意味として解釈されるべきであることを明らかにしておく。
【0021】
本明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に拘りのない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでいてよいことを意味する。
【0022】
本明細書内において「ウッドチップ」とは、木を所定の大きさに破砕した小片を意味するものであり、広い意味では木の葉を除いた木の根、枝、幹などのすべての部分の小片を意味するものであってよい。
以下、本発明の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤及びその製造方法について詳しく説明することにする。
【0023】
先ず、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の場合、積雪された路面又は道路上に撒布して圧雪又は結氷した路面への摩擦力を向上させ、且つウッドチップ中に含浸された金属イオン塩で持続的に雪を溶かすことで融雪(融氷)効果を得ることができるだけでなく、土壌や作物に有益な微生物が外部に放出されて周辺の土壌及び植物に栄養分として作用して植物の成長や土壌の質を改善させることができる。また、所定の時期が過ぎて気温が上ってもはや除雪剤を必要としない時期になると、ウッドチップ中に含浸された微生物が活性化しながらウッドチップを生分解させ、残存する除雪剤を回収するという追加作業が不要となることで経済性が高まり、生分解したウッドチップが周辺の土壌や植物に栄養分として供給でき、環境親和性が高い。
【0024】
具体的に、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の場合、金属イオン塩と微生物が含浸されたウッドチップを含んでいてよい。
【0025】
前記ウッドチップは、木葉を除く木の根、枝、幹などの木の硬い部分を細かく破砕した小片であり、一例として、伐木された木を板状に裁断した後、木板の表面の表面積を向上させるために凹凸を形成した後、これを破砕して使用し、又は、他の例として、光葉樹不良林樹種更新、造林などのため伐木される木又は木を使用して加工品を製造した後に発生する多量の林木副産物などを破砕して使用することができ、廃棄される資源をリサイクルして資源の効率性を向上させることができる。
【0026】
前記ウッドチップでは木に形成されている多数の気孔内に雪を溶かす融雪効果を有する金属イオン塩が含浸されており、積雪された路面又は道路面に該ウッドチップを撒布した場合、前記金属イオン塩が雪と反応して雪を溶かす溶解過程が持続的に進行され、一瞬ではなく所定の期間に亘ってウッドチップ中に含浸されていた金属イオン塩が徐々に外部に排出されることで、除雪効果を持続させる徐放効果を得ることができる。
【0027】
好ましくは、前記ウッドチップは、圧雪又は結氷路面に適当な摩擦力を付与するためには、1〜20mm長さの薄板状の木片であってよく、より好ましくは、5〜10mm長さで厚みは1〜5mmであってよく、薄板状の木片の形態は特に限定されず、平衡四辺形、四角形、円形、球形、多角形などの多様な形態であってよい。
【0028】
前記ウッドチップの長さ、厚み、及び形態に応じて前記ウッドチップの表面積が変わり、そのため、前記ウッドチップにおける徐放効果に差異が生じ、ウッドチップの形態は薄板状であることが好ましい。
【0029】
また、前記ウッドチップの表面はフラットであってもよいが、好ましくは、凹凸が形成されていてよく、前記ウッドチップの表面に形成された凹凸によってウッドチップの表面積が増加し、その結果、ウッドチップの広い表面積によって除雪効果を向上させることができ、且つ広い表面積によって路面の摩擦力を増加させることができる。
【0030】
一例として、前記ウッドチップの表面積を広げるために、製造されたウッドチップの表面には凹凸が形成されていてよく、形成された凹凸がラインに沿って配列して形成され、又は任意に不規則に形成されていてよい。また、形成された凹凸の断面は、流線形、波形、三角形、四角形、台形、多角形など、特に限定されずに多様な形態で形成されていてよく、凹凸の断面が一つの形態ではない前記挙げられた多様な形態が繰り返し、非規則的に配列されていてもよい。
【0031】
より詳述すると、前記ウッドチップ中に含まれる金属イオン塩は、直接的に雪を溶かす融雪(融氷)の役割をするものであって、一般的に雪を溶かす除雪剤として使用されるものであれば特に限定されずにいずれも使用することができるが、好ましくは、塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上を含んでいてよい。
【0032】
より好ましくは、前記金属イオン塩のうちより環境にやさしい塩化マグネシウムを主原料として使用し、補助腐食及び除雪効果が極大化できるメタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)及びリチウムイオン塩などを使用していてよい。
【0033】
本発明に係る摩擦力及び除雪効果が向上した環境にやさしい除雪剤に使用される金属イオン塩は、前記ウッドチップの全重量の5〜40wt%の範囲で含まれていてよく、より好ましくは、10〜15wt%の範囲で含まれていてよく、より効果的な除雪効果を得るために、前記金属イオン塩は、塩化マグネシウム100重量部、前記塩化マグネシウム100重量部を基準に、メタけい酸ナトリウム1〜10重量部、リチウムイオン塩1〜10重量部を含んでいてよい。このとき、使用されるリチウムイオン塩は、特に限定されないが、一例として、塩化リチウム(lithium chloride、LiCl)、炭酸リチウム(lithium carbonate、Li
2CO
3)、酸化リチウム(lithium oxide、Li
2O)から選択されたものを使用していてよい。
【0034】
したがって、本発明に係る摩擦力及び除雪効果が向上した環境にやさしい除雪剤の場合、積雪された雪の上に撒布された瞬間から持続的にウッドチップ中に含浸されていた金属イオン塩によって除雪効果が示されるため、既存の除雪剤に比べ、適切な量の除雪剤を使用することができるだけでなく、除雪の際、雪が降る度に除雪剤を撒布しなくても済むため、除雪作業性が向上するだけでなく経済性が向上し、且つ過量の金属イオン塩を使用しなくても済むため、2次環境汚染を防止することができる。
【0035】
さらには、本発明に係る環境にやさしい除雪剤は、ウッドチップ中に微生物を更に含むことによって、金属イオン塩とともに前記微生物が外部に放出されることで、周辺の土壌や植物に栄養分として作用するだけでなく、雪が完全に溶けた後又は気温が上ってもはや除雪効果を必要としてない時点では前記ウッドチップ中に含まれた微生物によってウッドチップを生分解することで路面又は道路に残っているウッドチップを回収及び廃棄処理する追加作業を行わなくても済む。
【0036】
また、前記ウッドチップが融雪でできた水とともに配水管や集水管に流れていって管詰まりを生じさせたり、周辺の農地又は土壌に流出して2次環境汚染を起こしたりすることなく、ウッドチップが生分解し、その分解物が周辺の農地又は土壌に流出して栄養物質として作用し、その結果、土壌の質を改善し、農作物又は植物の成長に役立てられる堆肥の役割をすることができる。
【0037】
具体的には、前記ウッドチップ中に含浸される微生物は、植物の生長や土壌の質改善に役立てられる有用微生物であって、植物の根での栄養分吸収を促進させることで生長を促進させるとともに、根伝染性病害に対して生物学的防除力を向上させ、病源菌と鉄に対する競争的な機作によって病源菌の生長を抑制させることで植物の生長や土壌の質改善に役立てられる。本発明に係る除雪剤の骨格であるウッドチップ中に含まれる微生物は、一般的に土壌の質を改善したり、植物に良い影響を及ぼす微生物であれば特に限定されずに使用可能であるが、好ましくは、枯草菌及び乳酸菌からなる群より選択された1種以上を使用していてよい。
【0038】
枯草菌は自然界に広く分布する非病原性細菌であり、特に空気、枯草、下水、土壌の中に存在し、棒状の桿菌で鞭毛片親があるため運動性を持っており、菌体中央に円形又は卵円形の芽胞を形成する。一般的に培養基でも発育性に優れ、灰白色の大きなコロニーを形成しその周囲は放射状をなしている。前記枯草菌の特徴は芽胞を持っていて抵抗力が強く、菌体はグリコーゲンを含むグラム陽性菌であり、多数の炭水化物を分解して酸を生成することができる。前記枯草菌は30〜60℃で最も増殖が活発であり、50〜56℃の高温でも発育するが、70℃以上の蒸気中で15分放置すれば死滅する。このような枯草菌のうち代表的なバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)菌は、一般的に、清麹醤、納豆、みそ、キムチ、コチュジャン、醤油などの多様な醗酵食品に多量含まれており、本発明では、前記枯草菌の中でもバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)菌、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)菌、バチルス・ステアロサーモフィラス(bacillus stearothermophilus)菌、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)菌、バチルス・メガテリウム(bacillus megaterium)菌、バチルス・リケニフォルミス(bacillus licheniformis)菌から選択された一つ以上を使用することが好ましい。
【0039】
乳酸菌は嫌気性細菌であって、漬け物やヨーグルトに多量含有されていると知られており、有機物分解酵素(protease、cellulase、amylaseなど)、ビタミン、アミノ酸、生長ホルモン、核酸などを産生し、乳酸産生で酸度を低下させて嫌気性有害微生物の増殖を抑制する機能があると知られている。乳酸菌が活性化すると、植物の種子発芽及び根の発育が促進され、有機酸(acetic acid、lactic acidなど)などを産生して不溶性リン酸化合物の陽イオンとキレート結合をすることでリン酸を可溶化させることができる。
【0040】
また、乳酸菌はバクテリオシン(bacterioncin)、過酸化水素(hydrogen peroxide)、乳酸(lactic acid)、抗ウイルス物質などの産生で病源菌を抑制することができる。主に醗酵堆肥接種菌として使用されており、堆肥を多量使用する作物では根の発育や初期生育に卓越な効果がある。本発明において使用される乳酸菌としては、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)菌、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantanum)菌、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)菌、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)菌、ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)菌から選択された一つ以上を使用していてよい。
【0041】
前記したように、本発明に係る除雪剤中では微生物として枯草菌又は乳酸菌を使用していてよく、前記枯草菌と乳酸菌は常温で活発に増殖又は培養される微生物の一つであって、除雪剤を必要とする積雪時又は気温が低い冬季など持続的に除雪機能を発揮しなければならない時は、低い気温によって枯草菌又は乳酸菌の活動が活発ではないことからウッドチップの生分解性が低下することでウッドチップ本来の形態を保持しつつ路面への摩擦力を付与し、且つ前記ウッドチップ中に含浸された金属イオン塩によって持続的に融雪させる除雪効果を発揮することができ、また、前記微生物が外部に放出されながら除雪剤が撒布された周辺の土壌の質改善及び植物の成長に役立てられる。
【0042】
さらには、気温が上ってもはや除雪効果を必要としない時期になると、前記枯草菌及び乳酸菌の増殖が活発になりながらウッドチップの生分解性を促進させ、路面上に残存するウッドチップを分解させて除去することができるため、除雪剤を回収する追加作業を不要とするだけでなく、生分解するウッドチップが周辺の土壌や植物に栄養成分として作用して植物の生長に役立てられる。
【0043】
一方、本発明に係る他の実施形態は、土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の製造方法に関するものであって、好ましくは、金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを浸漬させる浸漬段階;前記浸漬段階を通じて金属イオン塩が含浸されたウッドチップを乾燥する第1乾燥段階;前記第1乾燥段階を通じて乾燥されたウッドチップに微生物培養液を噴射する噴射段階;及び前記噴射段階を通じて微生物が含浸されたウッドチップを乾燥する第2乾燥段階;を含んで、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤を製造することができる。
【0044】
好ましくは、前記ウッドチップは、前述したように、木の加工後に発生する副産物、すなわち廃棄される木、木材を破砕して得ていてよく、木板の表面に凹凸を形成し破砕して得ていてよく、一例として、前記ウッドチップは、木板の表面に凹凸を形成する表面処理段階;及び表面に凹凸が形成された木板を1〜20mm厚みの薄板状の木片に破砕する破砕段階;を含んで製造されたウッドチップを使用していてよい。
【0045】
前記ウッドチップの表面に形成された凹凸の模様、形態は、前述したように多様な形態、ラインを有していてよく、フラットな表面に比べて表面積を増加させることができる凹凸形態であれば特に限定されない。
【0046】
前記したようにウッドチップの表面に凹凸が形成され表面積が向上することによって金属イオン塩の徐放性、すなわち融雪(融氷)効果の持続性及び融雪時間を制御することができ、前記表面積が広くなるほど積雪される雪を溶かす速度を高め、微生物による生分解期間も短縮させることができる。
【0047】
これは、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤を私用する地域、時期に応じて、前記ウッドチップの表面に形成された凹凸の好適な形状及び形態を制御してウッドチップを表面積を調節することができる。一例として、雪がたくさん降って路面又は坂道の多い山間地方の場合、ウッドチップの表面に屈曲の激しい凹凸を形成することで摩擦力を極大化させるだけでなく、広い表面積によって早期に雪を溶かすことができる。逆に、雪の積雪量が多くなく雪の降る間隔又は時期が長い場合、ウッドチップの表面がフラットな、又は凹凸が細かいか少量、些細に形成されて屈曲の激しい凹凸が形成されたウッドチップに比べてウッドチップの表面積が狭い場合、相対的に長期間持続的且つ繰り返しの融雪効果を期待することができる。前記例は、本発明に係る環境にやさしい除雪剤の基本骨格になるウッドチップの多様な形態の一部の例示を記載したことであって、好ましくは、本発明の土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤が撒布される地域又は時期による、積雪される雪の量、陰地又は陽地に応じて、除雪剤の基本骨格になるウッドチップの表面の形態を適宜制御し、調節すればよく、このようにして製造されたウッドチップを使用して本発明の除雪剤を製造することができる。
【0048】
具体的に説明すると、先ず、浸漬段階では、ウッドチップに金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを浸漬させてウッドチップ内部に金属イオン塩を含浸させていてよく、好ましくは、浸漬段階を通じてウッドチップ内部に形成された空隙中に金属イオン塩を含浸させていてよい。
【0049】
前記浸漬段階で使用される金属イオン塩が溶解されたイオン溶液は、塩化マグネシウム(magmesium chloride)、メタけい酸ナトリウム(sodium metasilicate)、塩化カルシウム(calcium chlride)、塩化ナトリウム(sodium chloride)及びリチウムイオン塩からなる群より選択された少なくとも一つ以上の金属イオン塩を1:0.5〜2質量比で溶解させてなるものを使用していてよく、好ましくは、塩化マグネシウム100重量部、前記塩化マグネシウム100重量部を基準に、メタけい酸ナトリウム1〜10重量部、リチウムイオン塩1〜10重量部を含む金属イオン塩を水と0.5〜2:1質量比で溶解させてなるものを使用していてよく、より好ましくは、金属イオン塩と水が1:1質量比で混合してなる金属イオン塩が溶解されたイオン溶液を使用していてよい。このとき、水と金属イオン塩との1:1割合はウッドチップ中の金属イオン塩を効果的に含浸させるための最も好ましい割合である。
【0050】
また、前記浸漬段階では、金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを40〜80分間前記金属イオン塩が溶解されたイオン溶液にウッドチップを浸漬させることが好ましく、前記浸漬時間の範囲を外れると、ウッドチップに金属イオン塩が十分に浸漬されず、所望の融雪効果を期待し難く、且つ時間超過による利益がなくて製造工程や時間がかかって経済性に劣ることがある。
【0051】
前記浸漬段階を通じて金属イオン塩が含浸されたウッドチップは、120〜140℃で1〜2時間乾燥する第1乾燥段階を通じて1次的に乾燥して、前記ウッドチップの表面に金属イオン塩が含まれたウッドチップを製造することができる。
【0052】
前記第1乾燥段階を通じて乾燥されたウッドチップの表面に微生物培養液を噴射する噴射段階を通じて、ウッドチップ中に微生物を含浸させることができ、好ましくは、微生物培養液をスプレーにて前記ウッドチップの表面に均一に噴射させることができる。
前記微生物培養液は、一般的に木を生分解させる微生物を培養した微生物培養液であれば特に限定されずに使用可能である。
【0053】
具体的に、前記微生物培養液は、一般的に木を生分解させることができる微生物を培地に接種して培養した後、公知の微生物培養液を製造する方法を用いて製造すればよく、特に限定されないが、好ましくは、枯草菌及び乳酸菌からなる群より選択された1種以上を含む微生物を培養して製造された微生物培養液を使用することが好ましい。
【0054】
詳しくは、前記微生物培養液は、乳酸菌及び枯草菌が成長することができる栄養源が含まれている培地に30〜45℃で2〜3日間培養して製造することができる。特に、乳酸菌は3日以上培養しないことが好ましく、これは栄養物質の枯渇によって乳酸菌の活性が弱くなることがあり、培地内の乳酸菌の活動による乳酸が蓄積されて乳酸菌の生菌数が減少することがあるからである。
【0055】
例えば、液体培地(TSB)に枯草菌又は乳酸菌からなる群より選択された1種以上の微生物を30〜45℃で48〜72時間振盪培養したものを使用するか、MRS Broth培地を精製水に溶かしてから、121℃、1〜2気圧で10〜30分間滅菌した後、加圧殺菌された液体培地を予め殺菌されたフラスコに分注して枯草菌又は乳酸菌からなる群より選択された1種以上の微生物を接種し、40〜60℃の温度で80rpmの速度で撹拌しながら96時間培養して微生物培養液を製造することができる。
このとき、使用される枯草菌及び乳酸菌についての具体的な説明は、前述したとおりであり、ここでは省略することにする。
【0056】
前記噴射段階を通じて微生物が含浸されたウッドチップを、第2乾燥段階を通じて水分含量を低減させてから包装して、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤を製造することができる。
【0057】
具体的に、前記第2乾燥段階では、微生物が含浸されたウッドチップを10〜30℃で20〜30時間乾燥していてよく、前記第2乾燥段階の乾燥温度が10℃未満であると、所望の水分となるように乾燥するのに相当な時間がかかるだけでなく、十分に水分が乾燥されず保存及び流通過程で腐敗したり、カビが発生したりして、除雪剤の品質を低下させることがあり、乾燥温度が30℃を超えると、ウッドチップ中に含浸された微生物が活性化してウッドチップの生分解が進行し、除雪剤としての所望の摩擦力や融雪効果を期待し難い。
【0058】
したがって、本発明に係る土壌や作物に有益な微生物が含浸された環境にやさしい除雪剤の場合、除雪剤をもはや必要としない時期に微生物によって除雪剤を生分解させることで残存する除雪剤を回収したり廃棄処理するという追加作業を遂行しなくても済むだけでなく、廃棄処理される林木副産物、木工所廃林木、建設現場の廃木材などの廃棄される廃木材を破砕してなるウッドチップを使用することで資源のリサイクル率を高め、且つ前記ウッドチップ中に含浸された金属イオン塩による徐放効果により、一度の撒布で一回きりではない繰り返し且つ持続的な融雪(除雪)効果が期待でき、経済性に優れ且つ環境親和的である。
【0059】
さらには、微生物によって分解されたウッドチップは堆肥としての活用価値が高く、除雪剤が撒布された周辺の土壌や植物に栄養物質を供給して土壌の質を改善し且つ植物の成長に役立てられる。