特開2018-96085(P2018-96085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96085(P2018-96085A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】トンネル掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20180525BHJP
   E21D 9/087 20060101ALI20180525BHJP
   E21D 9/04 20060101ALI20180525BHJP
   E21D 9/093 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   E21D9/06 301Z
   E21D9/087 A
   E21D9/04 Z
   E21D9/093 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-240667(P2016-240667)
(22)【出願日】2016年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(71)【出願人】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】西村 清亮
(72)【発明者】
【氏名】岡田 喬
(72)【発明者】
【氏名】繁 修二
(72)【発明者】
【氏名】梶山 雅生
(72)【発明者】
【氏名】手塚 仁
(72)【発明者】
【氏名】畔高 伸一
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃
(72)【発明者】
【氏名】河越 勝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】保苅 実
(72)【発明者】
【氏名】小松 典彦
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB07
2D054AD12
2D054AD19
2D054BA03
2D054BA25
2D054GA10
2D054GA15
(57)【要約】
【課題】TBMタイプとシールドタイプとに変更可能で、かつ、TBMタイプでの掘削時において地山に拘束され難い構造を備えたトンネル掘進機を提供する。
【解決手段】筒状の胴体部2と、カッターヘッド3と、チャンバー4と、胴体部の後側に設けられたジャッキ5とを備えたトンネル掘進機1において、胴体部2は、チャンバー4の直後における胴体部の外周側に形成された凹部6と、凹部6内に設けられて当該凹部6と掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面とで囲まれた密閉空間内において当該凹部6の開口6Aを介して掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けるための吹付装置7と、トンネル空洞部の内面を臨む凹部6の開口6Aを塞ぐ塞板9を着脱可能に取付けるための塞板着脱部10とを備えた。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴体部と、胴体部の前方に位置されて当該胴体部の中心軸を回転中心として回転可能なように胴体部に取付けられてトンネル空洞部を形成するためのカッターヘッドと、カッターヘッドの後側と胴体部の前側とで囲まれたチャンバーと、胴体部の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッターヘッドを回転駆動させることによってカッターヘッドで地山を掘削して掘進するトンネル掘進機において、
胴体部は、
チャンバーの直後における胴体部の外周側に形成された凹部と、
凹部内に設けられて当該凹部と掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面とで囲まれた密閉空間内において当該凹部の開口を介して掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けるための吹付装置と、
トンネル空洞部の内面を臨む凹部の開口を塞ぐ塞板を着脱可能に取付けるための塞板着脱部とを備え、
地山の状態に応じて、
吹付装置で掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面に凹部の開口を介してコンクリートを吹き付けながら掘進するか、又は、塞板着脱部に塞板を取付けて当該塞板で凹部の開口を塞いだ状態で掘進するかを、選択可能に構成されたことを特徴とするトンネル掘進機。
【請求項2】
カッターヘッドは、回転中心から放射状に設けられた複数のスポークと、スポークの前面に設けられたカッタービットとを備え、
胴体部は、前面板の下部に当該前面板を貫通する下部開口を備え、
カッターヘッドで掘削されたズリが下部開口を介して胴体部の後方に搬送装置で搬送されるか、又は、少なくとも1本のスポークが着脱可能に設けられており、当該スポークが取り外された開口部分が下部開口の前方に位置されるように、カッターヘッドの回転を制御し、胴体部の内側から下部開口及び開口部分を介してカッターヘッドの前方に重機を移動させることが可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル掘進機。
【請求項3】
胴体部が、前面板の中央部に当該前面板を貫通する中央開口を備え、
カッターヘッドが、回転中心となる中央部に貫通孔を備え、
胴体部の内側には切羽よりも前方の地山に先進ボーリングを行う先進ボーリング装置を備え、
先進ボーリング装置の掘削ビットを中央開口及び貫通孔を介して切羽よりも前方の地山に進行させて切羽よりも前方の地山の地質を検査可能に構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトンネル掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NATM工法によって掘進するTBMタイプとシールド工法によって掘進するシールドタイプとに変更可能なトンネル掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
NATM工法によって掘削するTBMタイプとシールド工法によって掘削するシールドタイプとに変更可能なトンネル掘進機が知られている(特許文献1参照)。
即ち、地山が岩盤層のような比較的安定した地盤である場合において、カッターヘッドで掘削して形成されたトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けて覆工を構築し、この覆工の内面にグリッパを突っ張らせて推進用のジャッキの推進反力を取ることにより掘進するTBMタイプと、地山が土砂層のような軟弱地盤である場合において、カッターヘッドで掘削して形成されたトンネル空洞部の内面にセグメントを組立てて、推進用のジャッキのピストンをセグメントの前端面に押し付けて推進反力を取ることにより掘進するシールドタイプとに変更可能なように構成されたトンネル掘進機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−129888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたトンネル掘進機では、カッターヘッドの後方に位置するチャンバーの後方に延長するように設けられたシールドシェル(スキンプレート)を備え、TBMタイプでの掘削時においては、シールドシェルの後端よりも後方の位置でトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けている。
従って、掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面は、シールドシェルの後端よりも後方の位置でコンクリートが吹き付けられて安定するまでの間、シールドシェルで支持されているので、シールドシェルで支持される掘削直後のトンネル空洞部の周囲の地山が緩みやすく、緩んだ地山によってシールドシェルが拘束されやすくなり、トンネル掘進機が掘進できなくなりやすいという構造上の問題がある。
本発明は、TBMタイプとシールドタイプとに変更可能で、かつ、TBMタイプでの掘削時において地山に拘束されにくい構造を備えたトンネル掘進機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るトンネル掘進機は、筒状の胴体部と、胴体部の前方に位置されて当該胴体部の中心軸を回転中心として回転可能なように胴体部に取付けられてトンネル空洞部を形成するためのカッターヘッドと、カッターヘッドの後側と胴体部の前側とで囲まれたチャンバーと、胴体部の後側に設けられたジャッキとを備え、ジャッキの駆動により推進しながらカッターヘッドを回転駆動させることによってカッターヘッドで地山を掘削して掘進するトンネル掘進機において、胴体部は、チャンバーの直後における胴体部の外周側に形成された凹部と、凹部内に設けられて当該凹部と掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面とで囲まれた密閉空間内において当該凹部の開口を介して掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けるための吹付装置と、トンネル空洞部の内面を臨む凹部の開口を塞ぐ塞板を着脱可能に取付けるための塞板着脱部とを備え、地山の状態に応じて、吹付装置で掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面に凹部の開口を介してコンクリートを吹き付けながら掘進するか、又は、塞板着脱部に塞板を取付けて当該塞板で凹部の開口を塞いだ状態で掘進するかを、選択可能に構成されたことを特徴とするので、TBMタイプでの掘削時において掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けることができて、掘削直後の地山の緩みを防止できる。従って、TBMタイプとシールドタイプとに変更可能で、かつ、TBMタイプでの掘削時において地山に拘束されにくい構造を備えたトンネル掘進機を提供できる。
また、カッターヘッドは、回転中心から放射状に設けられた複数のスポークと、スポークの前面に設けられたカッタービットとを備え、胴体部は、前面板の下部に当該前面板を貫通する下部開口を備え、カッターヘッドで掘削されたズリが下部開口を介して胴体部の後方に搬送装置で搬送されるか、又は、少なくとも1本のスポークが着脱可能に設けられており、当該スポークが取り外された開口部分が下部開口の前方に位置されるように、カッターヘッドの回転を制御し、胴体部の内側から下部開口及び開口部分を介してカッターヘッドの前方に重機を移動させることが可能に構成されたので、トンネル掘進機での掘削が行えなくなった場合に、前方地山の発破掘削を行った後、カッターヘッドの下部前方位置に重機を移動して発破掘削のズリをチャンバー内に搬送することができるようになったり、万が一、トンネル掘進機が地山に拘束されて掘進できなくなった場合、前方地山の発破掘削を行った後、カッターヘッドの下部前方位置に重機を移動して発破掘削のズリをチャンバー内に搬送することにより、カッターヘッドの前方に作業スペースを形成でき、カッターヘッドの前方側からトンネル掘進機の拘束状態を解除する作業を行うことができるようになる。
また、胴体部が、前面板の中央部に当該前面板を貫通する中央開口を備え、カッターヘッドが、回転中心となる中央部に貫通孔を備え、胴体部の内側には切羽よりも前方の地山に先進ボーリングを行う先進ボーリング装置を備え、先進ボーリング装置の掘削ビットを中央開口及び貫通孔を介して切羽よりも前方の地山に進行させて切羽よりも前方の地山の地質を検査可能に構成されたので、前方の地山の状況を事前に知ることができるようになり、トンネル掘進機のタイプを地山の状況に応じた適切なタイプにして、トンネルを確実に施工できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】トンネル掘進機のTBMタイプの構成を示す断面図。
図2】トンネル掘進機の胴体部を前側から見た図。
図3】胴体部における前側部及び中間部の内部構造を示す斜視図。
図4】胴体部における前側部、中間部及びカッターヘッドを示す斜視図。
図5】トンネル掘進機をカッターヘッドの前側から見た図。
図6】反力支持装置の構成を示す図。
図7】カッターヘッドの前側に重機が移動した状態を示す斜視図。
図8】トンネル掘進機のシールドタイプの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1乃至図8を参照し、実施形態に係るトンネル掘進機1の構成を説明する。
尚、以下の説明において、前(先頭)、後、上、下、左、右は、トンネル掘進機1の掘進方向を基準とした方向である。
【0008】
図1に示すように、トンネル掘進機1は、基部となる筒状の胴体部2と、胴体部2の前方に設けられたカッターヘッド3と、カッターヘッド3と胴体部2との間に位置されるチャンバー4と、胴体部2の後側に設けられたジャッキ5とを備え、ジャッキ5の駆動により推進しながらカッターヘッド3を回転駆動させることによってカッターヘッド3で地山を掘削して掘進する構成である。
カッターヘッド3は、胴体部2の前方に位置されて当該胴体部2の中心軸2Xを回転中心として回転可能なように胴体部2に取付けられて断面円形の円筒状のトンネル空洞部を形成するための面状掘削手段である。
チャンバー4は、カッターヘッド3の後側と胴体部2の前側とで囲まれてカッターヘッド3で切削されたズリ(掘削土砂)が取込まれる取込空間であり、当該チャンバー4内に取り込まれたズリは、搬送装置としてのズリ搬送コンベヤ45により胴体部2の後方に搬送される。
【0009】
胴体部2は、上述したカッターヘッド3、ジャッキ5、ズリ搬送コンベヤ45、図外のセグメント組立装置であるエレクター、図外の長尺先受け装置等の他に、チャンバー4の直後における胴体部2の外周側に形成された凹部6と、吹付装置7と、カッターヘッド3の左右の側部側の地山を掘削する側部掘削手段としてのブームカッター8と、掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面を臨む凹部6の開口6Aを塞ぐ塞板9を着脱可能に取付けるための塞板着脱部10と、切羽よりも前方の地山に対して先進ボーリングを行う先進ボーリング装置11とが設けられている。
吹付装置7は、凹部6内に設けられたノズル71,72と、当該ノズル71,72に加圧された吹付用の支保材としてのコンクリートを供給する図外のコンクリート供給手段とを備え、当該凹部6と掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面とで囲まれた密閉空間内において当該掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付ける装置である。
【0010】
トンネル掘進機1は、地山を掘削して断面馬蹄形状の素掘り状態のトンネル空洞部を形成し、当該トンネル空洞部の内面の下部側にインバート12を形成するとともに、当該トンネル空洞部の内面の上部側、及び、当該トンネル空洞部の内面の左右の側部側に覆工を形成して当該覆工の内面に反力支持装置13を組み立てて、このインバート12及び反力支持装置13を推進反力の反力受として利用して掘進したり、あるいは、断面馬蹄形状の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にセグメント16を組み立てて、当該セグメント16を推進反力の反力受として利用して掘進する装置である(図1及び図8参照)。
【0011】
つまり、トンネル掘進機1は、NATM工法によってトンネルを掘削するTBMタイプとシールド工法によってトンネルを掘削するシールドタイプとに交互に変更可能に構成されている。
TBMタイプは、掘削対象の地山の地質が比較的安定した岩盤層等である場合に使用される構成であり、図1に示すように、掘削した直後のトンネル空洞部の内面の上部側、及び、左右の側部側に吹付装置7によりコンクリートを吹付けて覆工15を形成することにより、掘削した直後のトンネル空洞部の内面の上部側、及び、左右の側部側の地山の早期安定を図った後、トンネル掘進機1の後方に形成された当該トンネル空洞部の内面の下部側にインバート12を形成するとともに、覆工15の内面に反力支持装置13を組み立てて、ジャッキ5のピストン5aを当該インバート12の前端面及び反力支持装置13の前端面に押し付けることにより、当該インバート12及び反力支持装置13を推進反力の反力受として利用して掘進するように構成されている。
シールドタイプは、掘削対象の地山の地質が軟弱な土砂層等である場合に使用される構成であり、図8に示すように、塞板着脱部10に塞板9を取付けて、掘削した直後のトンネル空洞部の内面の上部側、及び、左右の側部側の地山を塞板9で支持した後に、エレクターによって、塞板9の後方側にセグメント16を組み立てて、ジャッキ5のピストン5aを当該セグメント16の前端面に押し付けることにより、当該セグメント16を推進反力の反力受として利用して掘進するように構成されている。
【0012】
即ち、トンネル掘進機1は、地山の状態に応じて、凹部6から吹付装置7で掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けながら掘進するTBMタイプで施工を行うか、又は、凹部6の開口6Aを塞ぐ塞板9で地山を支持しながら掘進するシールドタイプで施工を行うかを、選択可能に構成されている。
【0013】
胴体部2は、前側部2Aと、中間部2Bと、後側部2Cとを備える。
【0014】
胴体部2を前側から見た図2に示すように、前側部2Aは、前面板21と、前面板21の周縁より後方に延長する周壁22と、隔壁23と、後面板24とを備え、周壁22の左右側にそれぞれブームカッター設置部2Dが設けられ、上部に上部吹付装置設置部2Eが設けられる。
【0015】
前面板21は、胴体部2の中心軸(カッターヘッド3の回転中心軸)2Xを中心26Xとする円形面の円の中央部に円形の中央開口26aが形成された円環面部26と、円環面部26より上方に延長するように設けられて円環面部26の中心26Xを通過する垂直線Vを基準として左右にそれぞれ45°の範囲の扇面部27と、円環面部26より下方に延長するように設けられて円環面部26の中心26Xを通過する垂直線Vを中心線とした四角面の中央部に下部開口28aが形成された下面部28とを備えた形状である。
円環面部26の円の直径は、カッターヘッド3の直径よりも小さい直径である。
また、下部開口28aは、チャンバー4に取り込まれたズリを胴体部2の後方に排出するための排出口又はパワーショベル等の重機の出入口として機能する。尚、下部開口28aには、通常時においては、チャンバー4に取り込まれたズリを胴体部2の後方に搬送するための上述したズリ搬送コンベヤ45が設置されている。
周壁22は、円環面部26の外周縁及び下面部28の左右の側縁より後方に延長する板により形成される。
隔壁23は、扇面部27の左右の端縁より後方に延長し、周壁22より円環面部26の中心26Xを中心として放射面状に延長する板により形成された左右の境界壁23a,23aと、下部隔壁23bと、上部隔壁23cとを備える。
下部隔壁23bは、胴体部2の中心軸2Xを中心とする下湾曲面板により形成される。即ち、下部隔壁23bは、円環面部26の中心26Xを通過する垂直線Vと交差する下端位置を基準として左右の周方向に例えばそれぞれ70°(中心26Xを基準とした中心角度)離れた140°の範囲内で延在し、かつ、後端が後面板24まで延長して前端が前面板21よりも前方に位置される下湾曲面板により形成される。
上部隔壁23cは、胴体部2の中心軸2Xを中心とする上湾曲面板により形成される。即ち、上部隔壁23cは、円環面部26の中心26Xを通過する垂直線Vと交差する上端位置を基準として左右の周方向に例えばそれぞれ110°(中心26Xを基準とした中心角度)離れた220°の範囲内で延在し、かつ、後端が後面板24まで延長して前端が前面板21よりも前方に位置される上湾曲面板により形成される。
上部隔壁23cを形成する上湾曲面板の曲率半径は、下部隔壁23bを形成する下湾曲面板の曲率半径よりも小さく形成される。
当該上部隔壁23cの左右の下端縁と当該下部隔壁23bの左右の上端縁とが連結されて断面馬蹄形の筒体が構成され、断面円形掘削手段としてのカッターヘッド3及び左右の側部掘削手段としてのブームカッター8によって掘削される掘削直後のトンネル空洞部が断面馬蹄形に形成されることになる。
尚、上部隔壁23cは、扇面部27の上端縁と左右の境界壁23a,23aの上端縁とで囲まれた部分が開口6aに形成された板により形成される。
後面板24は、境界壁23aの後端縁と上部隔壁23cの後端縁と下部隔壁23bの後端縁と周壁22の後端縁とを繋ぐ板により形成される。
【0016】
そして、左右のブームカッター設置部2Dは、境界壁23aと上部隔壁23cと下部隔壁23bと周壁22とで囲まれた前方開口の領域により構成される。
【0017】
上部吹付装置設置部2Eは、左右の境界壁23a,23aと、扇面部27と、周壁22とで囲まれた上部開口の凹部6xにより構成される。
【0018】
そして、図4に示すように、上部隔壁23c及び下部隔壁23bで囲まれた断面馬蹄形の領域の前部にカッターヘッド3が配置され、当該カッターヘッド3と上部隔壁23cと下部隔壁23bと前面板21と周壁22と左右の境界壁23a,23aと後面板24とで囲まれた領域により、チャンバー4が形成される。
【0019】
中間部2Bは、左右のブームカッター設置部2Dの後方に設けられた側部吹付装置設置部2F,2Fを備える。
側部吹付装置設置部2Fは、前側部2Aの後面板24と、前側部2Aの周壁22より後方に延長するように設けられた周壁22Bと、前側部2Aの下部隔壁23bより後方に延長するように設けられた下部隔壁23Bと、後面板24と対向するように設けられた円環状の後板24Bとで囲まれて、トンネル空洞部の上部及び左右の側部と面する部分が開口6bとなった凹部6yにより構成される。
【0020】
従って、上部吹付装置設置部2Eを形成する凹部6x及び側部吹付装置設置部2Fを形成する凹部6yにより、チャンバー4の直後における胴体部2の外周側に形成された凹部6が構成され、かつ、トンネル空洞部と面する上部吹付装置設置部2Eの開口6a及びトンネル空洞部と面する側部吹付装置設置部2Fの開口6bにより、チャンバー4の直後における胴体部2の外周側に形成された凹部6の開口6Aが構成される。
そして、TBMタイプにおいては、当該凹部6に設けられた吹付装置7のノズル71,72から開口6Aを介して掘削直後のトンネル空洞部の内面にコンクリートが吹き付けられ、シールドタイプにおいては、塞板着脱部10に塞板9が取付けられることにより、当該塞板9によって当該開口6Aが塞がれる。
【0021】
後側部2Cは、カッターヘッド3の直径よりも若干小さい円環状の後板24Bと、後板24Bの円環状の後面において周方向に沿って所定間隔を隔てて複数設けられたジャッキ5と、中間部2Bの下部隔壁23Bより後方に延長するように設けられた下部隔壁23Cとを備える。
【0022】
即ち、トンネル掘進機1は、図1に示すように、前側部2A、中間部2B、後側部2Cのそれぞれが下部隔壁23b,23B,23Cを備えており、当該下部隔壁23b,23B,23Cによりトンネル掘進機1の下部隔壁23Xが構成される。
そして、TBMタイプにおいては、図1に示すように、下部隔壁23Xの後方にインバート12を形成する例えばコンクリートブロック12aが設置される。
また、シールドタイプにおいては、吹付装置7を使用しないので、図8に示すように、開口6Aを塞ぐように塞板9が設けられて、この塞板9の後端と下部隔壁23Xの後端とが一致するように構成され、この塞板及び下部隔壁の後方にセグメントが組み立てられる。即ち、当該塞板9が上部隔壁23cの後方に延長する上部隔壁として機能して、この上部隔壁23cと塞板9とでトンネル掘進機1の上部隔壁23Yが構成され、シールドタイプにおいては、掘削後のトンネル空洞部が、上部隔壁23Yと下部隔壁23Xとで構成される断面馬蹄形の筒体で支持されることになる。
【0023】
トンネル掘進機1は、断面馬蹄形状のトンネル空洞部を形成するために、切削手段として、断面円形掘削手段としてのカッターヘッド3と、左右の側部掘削手段としてのブームカッター8とを備える。
そして、カッターヘッド3は、筒状の胴体部2の前側(トンネル掘進機1の掘進方向の先頭側)に、掘削するトンネル空洞部の断面馬蹄形の中心となる胴体部2の中心軸2Xを回転中心として回転可能に支持される。
また、ブームカッター8は、胴体部2の前側の左右のブームカッター設置部2Dに設けられて、カッターヘッド3で掘削される断面円形空洞部の左右の外周よりも外側に位置する地山部分を掘削する。
ブームカッター8は、例えば、伸縮及び揺動可能に構成されたアーム8aの先端に、図外の掘削ビットを搭載したドリル8bを備えた構成である。
ブームカッター8は、図5に示すように、各ブームカッター設置部2Dにおいて、それぞれ3つ程度設けられる。例えば、下部隔壁23bと上部隔壁23cとの境界部分近傍に位置する地山部分を掘削するブームカッター8と、カッターヘッド3の左右下側の外周と下部隔壁23bとの間に位置する地山部分を掘削するブームカッター8と、カッターヘッド3の左右側の外周と上部隔壁23bとの間に位置する地山部分を掘削するブームカッター8とを備える。
尚、図4に示すように、ブームカッター設置部2Dにおいて、前面板21の下面部28の左右の側縁より後方に延長する周壁22の近傍には、ブームカッター8で掘削されて後側に溜まったズリを後側から前方に搬送する搬送スクリュー88が設けられる。
【0024】
図4に示すように、胴体部2の中心軸2Xを回転中心として回転するカッターヘッド3は、円形状の回転中心板の中央に貫通孔31が形成された回転中心部32と、回転中心部32と同心円状に形成された回転中心部32よりも大径の円環状連結板33と、回転中心部32と同心円状に形成された円環状連結板33よりも大径の円環状外周板34と、回転中心部32から放射状に円環状外周板34まで延長するように設けられた複数のスポーク35と、互いに隣り合うスポーク35とスポーク35との間において円環状連結板33から放射状に円環状外周板34まで延長するように設けられた複数の外側スポーク36と、各スポーク35,36の前面に設けられたカッタービット30(図1参照)とを備える。尚、図4,5,7においては、カッタービット30の図示を省略している。また、貫通孔31は、先進ボーリング装置11のロッド11cを貫通させるための貫通孔として機能する。
【0025】
カッターヘッド3は、カッターヘッド支持機構を介して胴体部2の前方に位置されるように設けられている。
カッターヘッド支持機構は、図1に示すように、内周面に太陽歯車37が形成された円筒体38と、円筒体38の一端開口に形成された円環板39と、円環板39の前面から前方に突出するように設けられた複数の支持アーム40とを備え、複数の支持アーム40の先端とカッターヘッド3の円環状連結板34とが連結されている。
各支持アーム40にはそれぞれ掻揚げ板41が取り付けられている。各掻揚げ板41は、胴体部2の中心軸2Xを中心として放射状に延長するように設けられており、カッターヘッド3が胴体部2の中心軸2Xを回転中心として回転することにより掘削されてチャンバー4内に取り込まれたズリを掻き揚げて細かく砕く。
【0026】
カッターヘッド3は、カッターヘッド駆動機構により回転駆動する。
カッターヘッド駆動機構は、図1に示すように、太陽歯車37の周方向に沿って所定間隔を隔てて配置されて太陽歯車37に噛み合うように設けられた複数の原動歯車42と、原動歯車42の駆動源としてモータ43とを備えて構成される。
【0027】
従って、複数の原動歯車42のモータ43を駆動して太陽歯車37が形成された円筒体38を胴体部2の中心軸2Xを回転中心として回転させると、胴体部2の中心軸2Xを回転中心としてカッターヘッド3が回転し、切羽を掘削する。掘削されたズリは、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間、又は、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間を経由してチャンバー4内に取り込まれる。即ち、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間、又は、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間の間隔がチャンバー4内へのズリ取込口となっている。
【0028】
尚、円環状外周板34よりも外周側に位置される複数の外側スポーク36、又は、複数のスポーク35の外側部分のうちの1つ以上、例えば、図4に示すような外側スポーク36Aは、円環状連結板33及び円環状外周板34に対して着脱可能に設けられており、その他のスポーク35,36は、円環状連結板33及び円環状外周板34と一体、又は、円環状連結板33及び円環状外周板34に対して固定状態に取付けられている。
【0029】
吹付装置7は、胴体部2の上部側、及び、胴体部2の左右の側部側の周囲において、胴体部の中心軸を通過する垂直線Vを基準として左右の周方向に例えばそれぞれ110°離れた220°の範囲内を移動可能に設けられて、掘削された断面馬蹄形のトンネル空洞部の内面における上端位置から左右の周方向にそれぞれ110°離れた220°の範囲内にコンクリートを吹付ける装置である。
【0030】
吹付装置7としては、図3に示すように、上部吹付装置7Aと、左右の側部吹付装置7B,7Bとを備える。
上部吹付装置7Aは、図2に示すように、胴体部2の前側の周囲において、胴体部2の中心軸2Xを通過する垂直線Vを基準として左右の周方向に例えばそれぞれ45°離れた90°の範囲内を左右に移動可能に設けられて、カッターヘッド3で掘削された直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面における上端位置から左右に45°離れた90°の範囲内(以下、上半90°の範囲内という)にコンクリートを吹付ける吹付装置である。
側部吹付装置7Bは、上部吹付装置7Aよりも後方に配置され、胴体部2の中心軸2Xを通過する垂直線Vを基準として左右の周方向に例えばそれぞれ中心角°45°離れた位置からさらに周方向に65°離れた位置までの左右の側部の範囲内(以下、側部65°の範囲内という)を移動可能に設けられて、ブームカッター8で掘削された断面馬蹄形のトンネル空洞部における左右の内面にコンクリートを吹付ける吹付装置である。
【0031】
吹付装置7は、胴体部2の外周側に形成された凹部6と掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部に内面とで囲まれた密閉空間内に設けられた吹付ノズル71,72(図1参照)と、ノズルガイド機構と、図外の材料圧送装置と、図外の混合機とを備え、吹付ノズル71,72と混合機とが図外のホースで互いに繋がれ、混合機と材料圧送装置とが図外のホースで互いに繋がれた構成である。
ノズルガイド機構は、周壁22,22Bの曲率に対応した孤状に延長するように設けられたガイド部材と、吹付ノズル71,72をガイド部材に移動可能に取付ける連結手段とを備える。
ガイド部材は、例えばガイドレール73であり、連結手段は例えばガイドレール73上を滑走可能に設けられた図外の車輪であり、例えば、車輪を駆動するモータを制御することで、吹付ノズル71,72をガイドレール73上で左右方向に移動させるように構成されている。尚、ガイドレール73は、支柱74により、周壁22の外周面に固定されている。
【0032】
上部吹付装置7A及び側部吹付装置7Bは、それぞれ、胴体部2の前側に設けられて掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面の周方向に沿ってコンクリートを吹き付ける前側吹付ノズルと、前側吹付ノズルよりも胴体部2の後方に設けられて前側吹付ノズルからコンクリートを吹付けられて形成されたコンクリート層の上にトンネル空洞部の周方向に沿ってコンクリートを吹き付ける後側吹付ノズルとを備えている。
即ち、上部吹付装置7Aの前側に配置された前側吹付ノズルとしての仮吹付ノズル71は、掘削直後のトンネル空洞部の上半90°の範囲内に例えば厚さ50mmの吹付けコンクリート層を形成するための吹付ノズルである。
上部吹付装置7Aの後側に配置された後側吹付ノズルとしての一次吹付ノズル72は、掘削直後の形成するための吹付ノズルである。
また、側部吹付装置7Bの前側に配置された前側吹付ノズルとしての仮吹付ノズル71は、掘削直後のトンネル空洞部の側部65°の範囲内に例えば厚さ50mmの吹付けコンクリート層を形成するための吹付ノズルである。
側部吹付装置7Bの後側に配置された後側吹付ノズルとしての一次吹付ノズル72は、掘削直後のトンネル空洞部の側部65°の範囲内に例えば厚さ200mmの吹付けコンクリート層を形成するための吹付ノズルである。
即ち、上部吹付装置7Aは、チャンバー4の直後における胴体部2の外周の上部側に形成された上部吹付装置設置部2Eに設けられ、側部吹付装置7B,7Bは、チャンバー4の直後における胴体部2の左右の外周側に形成された側部吹付装置設置部2Fに設けられる。
つまり、チャンバー4は、胴体部2の外周の上部に形成された上部吹付装置設置部2Eの前方に位置される領域と、胴体部2の外周における上部吹付装置設置部2Eの左右側に位置されるブームカッター設置部2Dの領域とを含む。
換言すると、トンネル掘進機1は、胴体部2の外周の上部においてチャンバー4の直後に位置される上部吹付装置設置部2Eに設けられて、カッターヘッド3で掘削された掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の上部側の内面にコンクリートを吹き付けるための上部吹付装置7Aと、ブームカッター設置部2Dに設けられて、カッターヘッド3で掘削されないカッターヘッド3の左右の横側に位置する地山部分を掘削するブームカッター8と、チャンバー4の一部を形成するブームカッター設置部2Dの直後に位置される側部吹付装置設置部2Fに設けられて、ブームカッター8で掘削された直後の断面馬蹄形のトンネル空洞部の左右側の内面にコンクリートを吹付けるための側部吹付装置7B,7Bとを備えている。
従って、カッターヘッド3で掘削された掘削直後のトンネル空洞部の上部側にチャンバー4の直後の位置において上部吹付装置7Aによりコンクリートが吹付けられて当該掘削直後のトンネル空洞部の上部側の地山の緩みを防止できるとともに、ブームカッター8で掘削された掘削直後の断面馬蹄形のトンネル空洞部の左右側にチャンバー4の直後の位置において側部吹付装置7B,7Bによりコンクリートが吹付けられて当該掘削直後の断面馬蹄形のトンネル空洞部の左右側の地山の緩みを防止できるようになり、TBMタイプでの掘削時において地山に拘束されにくい構造を備えたトンネル掘進機1となる。
【0033】
塞板着脱部10は、例えば、前面板26の扇面部27の外周側の後面より後方に突出するように設けられた取付ブラケットにより構成され、例えば上部隔壁23cの周方向に沿って分割された複数の塞板9の前端側を当該取付ブラケットに、水密な連結構造により連結し、かつ、周方向に隣り合う塞板9,9同士を水密な連結構造により連結することにより、胴体部2に凹部6の開口6Aを塞ぐ塞板9を設けることが可能となっている。
【0034】
先進ボーリング装置11は、削孔機11aと、削孔機11aを前後方向に移動可能に支持する支持体11bとを備える。
支持体11bを前方向に移動させて、削孔機11aのロッド11cの先端の掘削ビット11dをカッターヘッド3の貫通孔31に通して、前方の地山を削孔し、前方地山の地質を検査する。即ち、ロッド11cの先端には削孔により削られた土砂を採取する図外の採取部が設けられており、この採取部で採取された土砂を調べることにより、前方地山の地質を検査する。
【0035】
反力支持装置13は、トンネル掘進機1により掘削されたトンネル空洞部の内面における上部隔壁23cの周方向範囲に対応した上半90°の範囲及び左右の側部65°の範囲内の内面に形成された覆工15の内面に設置される例えば孤状の複数の鋼製フレーム13aと、前後の鋼製フレーム13a,13aを連結する連結手段13bとにより構築され、これら複数の鋼製フレーム13aの外面と覆工15の内面との摩擦力によってジャッキ5のピストン5aの押圧力を受けてトンネル掘進機1を推進させる際の反力を得るようにした構成である。
鋼製フレーム13aは、例えば、図6に示すように、複数のフレーム部材13d,13d同士がヒンジ等の可動連結部を介して連結されて構成され、複数のフレーム部材13dの外周面が覆工15の内面に押し当てられるようにフレーム部材13dを拡径して覆工15の内面に設置される。
【0036】
尚、反力支持装置13は、両方の下端をインバート12に設けられた図外の係合部に係合させて、インバート12との摩擦力によってジャッキ5のピストン5aの押圧力を受けるセグメントのような支持体を用いてトンネル掘進機1を推進させる際の反力を得るようにした構成、上述した覆工15の内面との摩擦力及び上述したインバート12との摩擦力によってジャッキ5のピストン5aの押圧力を受ける上述した鋼製フレーム13aのような支持体を用いてトンネル掘進機1を推進させる際の反力を得るようにした構成としてもよい。
【0037】
実施形態1のトンネル掘進機1を用いたトンネル施工方法について説明する。
まず、掘削対象の地山の地層を検査し、地山の地層が岩盤層(例えば軟岩・中硬岩層)であったとする。この場合、トンネル掘進機1を図1に示すようなTBMタイプに構成して地山を掘削する。
地山を最初に掘削する際には、ジャッキ5の反力を得るための図外の反力支持装置を設置し、カッターヘッド3を駆動しながらジャッキ5のピストン5aを伸ばして図外の反力支持装置でトンネル掘進機1の推進反力を得ることにより、トンネル掘進機1が地山を掘削して推進する。
尚、トンネル掘進機1を掘進させる前に、図外の長尺先受け装置を駆動して、切羽から長尺の鋼管を地山に打ち込み、鋼管周辺の地山に薬液を注入することにより、前方地山を改良・補強し、切羽の安定を図る。
【0038】
そして、所定の距離(例えばジャッキ5の1ストローク分)だけ掘進するのと同時に、掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面における上半90°の範囲に上部吹付装置7Aの仮吹付ノズル71を駆動して、例えば厚さ50mmの仮吹付コンクリート層80を形成する。所定の距離だけ掘進した後、掘進を中止し、今回形成した仮吹付コンクリート層80の表面にH形鋼等の支保工14を設置する。尚、支保工14は、凹部6の底を形成する周壁22,22Bに形成された図外の搬入用窓を介して凹部6内に搬入される。そして、支保工設置後にトンネル掘進機1を所定の距離だけ掘進するのと同時に、掘削直後のトンネル空洞部の上半90°の範囲に上部吹付装置7Aの仮吹付ノズル71を駆動して、例えば厚さ50mmの仮吹付コンクリート層80を形成するとともに、前回の掘進時に形成した仮吹付コンクリート層80の上に上部吹付装置7Aの一次吹付ノズル72を駆動して、例えば厚さ200mmの一次吹付コンクリート層81を形成し、前回設置した支保工14を一次吹付コンクリートで固定することで覆工15を形成する。そして所定の距離だけ掘進した後、掘進を中止し、今回形成した仮吹付コンクリート層80の表面に支保工14を設置する。
【0039】
支保工設置後にさらにトンネル掘進機1を所定の距離だけ掘進するのと同時に、掘削直後のトンネル空洞部の上半90°の範囲に仮吹付コンクリート層80を形成するとともに、前回の掘進時に形成した仮吹付コンクリート層80の上に一次吹付コンクリート層81を形成して覆工15を形成し、さらに、最初に掘削されたトンネル空洞部の左右の側部65°の範囲に側部吹付装置7Bの仮吹付ノズル71を駆動して、仮吹付コンクリート層80を形成する。掘進を中止し、今回形成した左右の側部の仮吹付コンクリート層80の表面に支保工14を設置する。さらに、4回目の所定の距離だけの掘進作業と同時に、掘削直後のトンネル空洞部の上半90°の範囲に仮吹付コンクリート層80を形成し、前回の掘進時に形成した仮吹付コンクリート層80の上に一次吹付コンクリート層81を形成して覆工15を形成するとともに、前々回(2回目)の掘進作業時に形成された左右の側部65°の範囲にそれぞれ仮吹付コンクリート層80を形成し、かつ、前回の掘進作業時に左右の側部の65°の範囲にそれぞれ形成された仮吹付コンクリート層80の上に、側部吹付装置7Bの一次吹付ノズル72を駆動して、一次吹付コンクリート層81を形成して覆工15を形成する。
以後、上述した掘進作業時の吹付け作業を繰り返していくことにより、掘削直後のトンネル空洞部の内面に仮吹付コンクリート層80が形成され、当該仮吹付コンクリート層80によって、掘削直後の断面馬蹄形のトンネル空洞部の周囲の地山の緩みを防止できるようになり、TBMタイプでの掘削時において、トンネル掘進機1が地山に拘束されにくくなる。
【0040】
尚、トンネル掘進機1によって掘削されたトンネル空洞部内にトンネル掘進機1が入り込んだ後、トンネル掘進機1の後方における断面馬蹄形のトンネル空洞部の下側にはコンクリートブロック12aが設置されてインバート12が構築され、トンネル掘進機1の後方における断面馬蹄形のトンネル空洞部の上側に形成された覆工15の内面には反力支持装置13が構築される。即ち、覆工15の内面に鋼製フレーム13aをトンネル掘進機1の推進方向に沿ったトンネル空洞部31内の前後に複数個設置するとともに、前後の鋼製フレーム13a,13aを連結部材13bで連結して反力支持装置13を構築する(図1参照)。この反力支持装置13の外面と覆工15の内面との摩擦力及びインバート12によりトンネル掘進機1を推進させる際の反力を得ることによって、トンネル掘進機1を推進させることができる。つまり、カッターヘッド3を駆動しながら推進ジャッキ5のピストン5aを伸ばして反力支持装置13の前端面及びインバート12の前端面に押し当てることで、トンネル掘進機1がトンネル空洞部の前方を掘削しながら推進する(図1参照)。
当該トンネル掘進機1では、反力支持装置13を用いて推進反力を得るようにしているので、グリッパのようにトンネル空洞部の内面に集中荷重が加わらず、一次吹付コンクリート層81が損傷しない工法を実現できる。また、反力支持装置13により、覆工15の内面を押圧する内圧効果が発生し、トンネル空洞部の周囲の地山の緩みを抑制できる。
【0041】
尚、トンネル掘進機1を推進させた後に、反力支持装置13の後方に位置されていた鋼製フレーム13aを反力支持装置13の前端に移動して連結することで、次にトンネル掘進機1を推進させる際の反力支持装置13を構築する。即ち、トンネル掘進機1を推進させる毎に、後方の鋼製フレーム13aを前側に盛り替えて次にトンネル掘進機1を推進させる際の反力支持装置13を構築する。
【0042】
また、例えば、トンネル掘進機1を所定距離だけ掘進させる毎に、先進ボーリング装置11を駆動して、前方地山の地質を調査する。即ち、先進ボーリング装置11の掘削ビット11dを中央開口26a及び貫通孔31を介して切羽よりも前方の地山に進行させて切羽よりも前方の地山の地質を検査する。
【0043】
前方地山の地質調査の結果、例えば、前方地山が土砂地山であることが判明した場合、トンネル掘進機1をTBMタイプからシールドタイプに切り換える。即ち、胴体部2の前側部及び中間部において、開口6A(6a,6b)を介してトンネル空洞部の内面に開放されていた部分、即ち、吹付装置7が設けられている領域である凹部6(6x,6y)を密閉するために、塞板着脱部10に塞板9を取付けて、塞板9で開口6A(6a,6b)を塞ぎ、掘削後のトンネル空洞部が上部隔壁23Yと下部隔壁23Xとで構成される断面馬蹄形の筒体で支持されるシールドタイプに切り換える。
そして、例えばジャッキ5の1ストローク分の推進動作が終了する毎に、ジャッキ5を縮退させて、ジャッキ5の後方においてトンネル空洞部の内周面に沿って断面馬蹄形のセグメント16を組み立てていき、ジャッキ5のピストン5aを当該セグメント16の前端面に押し付けることにより、当該セグメント16を推進反力の反力受として利用して掘進し、断面馬蹄形のトンネルを構築する。
シールドタイプに構成されたトンネル掘進機1を用いてトンネルを施工することによって、掘削対象の土質が軟弱土砂層のように崩落の危険がある場合でも掘削作業を行うことが可能となる。
【0044】
尚、シールドタイプに移行した場合、ブームカッター8を取り外し、当該ブームカッターの代わりに、カッターヘッド3のスポーク35,36の先端に伸縮自在に設けられた図外のコピーカッターを用いて、カッターヘッド3で掘削される断面円形空洞部の左右の外周よりも外側に位置する地山部分を掘削する。
【0045】
また、前方地山の地質調査の結果、例えば、前方地山が硬岩の連続する地山であることが判明し、当該トンネル掘進機1による掘進作業ができなくなった場合、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間、又は、互いに隣り合うスポーク35とスポーク36との間を介して図外の削岩機で前方地山に発破孔を形成し、当該発破孔に発破を設置する発破掘削を行う。発破掘削を行った後に、トンネル掘進機1のカッターヘッド3の着脱可能なったスポーク36Aを取り外し、図7に示すように、このスポーク36Aを取り外した開口部分36Bが胴体部2の前側の下部開口28aの前方に位置するように、カッターヘッド3の回転停止位置を設定し、搬送コンベヤ45を取り外した後、この下部開口28a及びスポーク36Aを取り外した開口部分36Bを介してカッターヘッド3の下部前方位置にパワーショベルのような重機46を移動して発破掘削のズリをチャンバー4内に送る。
【0046】
また、万が一、トンネル掘進機1が地山に拘束されて掘進できなくなった場合、前方地山の発破掘削を行った後、カッターヘッド3の前方側からトンネル掘進機1の拘束状態を解除する作業を行うことができるようになる。
例えば、地山に拘束されている上部隔壁23c及び塞板9の外側に位置する地山部分に前側から削岩機を用いたボーリングによるコア抜き作業を行って、上部隔壁23c及び塞板9の外側に位置する地山を崩すことにより、トンネル掘進機1を地山による拘束から解放できるようになる。
【0047】
即ち、トンネル掘進機1での掘削が行えなくなった場合に、前方地山の発破掘削を行った後、カッターヘッド3の下部前方位置に重機46を移動して発破掘削のズリをチャンバー4内に搬送することができるようになったり、万が一、トンネル掘進機1が地山に拘束されて掘進できなくなった場合、前方地山の発破掘削を行った後、カッターヘッド3の下部前方位置に重機46を移動して発破掘削のズリをチャンバー4内に搬送することにより、カッターヘッド3の前方に作業スペースを形成でき、上述したようなカッターヘッド3の前方側からトンネル掘進機1の拘束状態を解除する作業を行うことができるようになる。
尚、下部開口28aの大きさを大きくした場合、取り外すスポークの数を多くすればよい。
【0048】
実施形態1のトンネル掘進機1によれば、先進ボーリング装置11を備えるので、断面馬蹄形のトンネル空洞部を掘削する場合において、事前に前方地山の状態を知ることができるので、地山の状況に応じて、TMBタイプからシールドタイプ、又は、シールドタイプからTMBタイプに変更でき、地山の地質が変わっても、トンネル掘進機1のタイプを地山の状況に応じた適切なタイプにして、断面馬蹄形のトンネルを確実に施工できるようになる。
【0049】
また、実施形態1のトンネル掘進機1によれば、掘削直後の素掘り状態のトンネル空洞部の内面にコンクリートを吹き付けるために、吹付装置7をチャンバー4の直後に設けたので、TBMタイプでの掘削時において掘削直後の地山の緩みを防止でき、地山に拘束されにくい構造を備えたトンネル掘進機1を提供できる。即ち、TBMタイプとシールドタイプとに変更可能で、かつ、TBMタイプでの掘削時において地山に拘束されにくい構造を備えたトンネル掘進機1を提供できる。
また、吹付け対象であるトンネル空洞部の内面にだけ開放した凹部6の空間内で吹付けを行うので、当該凹部6の空間以外の人が行き交う領域に吹付の際のリバウンド(粉塵)が発生しない。
【0050】
実施形態1のトンネル掘進機1によれば、断面馬蹄形に掘削するために、断面円形掘削用のカッターヘッド3と複数のブームカッタ8とを備えるので、断面馬蹄形のトンネル空洞部を施工でき、断面形状として無駄の少ない馬蹄形断面のトンネルを施工できる。
【0051】
実施形態1のトンネル掘進機1によれば、上部吹付装置7A及び側部吹付装置7Bが、それぞれ前後に配置された吹付ノズル、即ち、仮吹付ノズル71と一次吹付ノズル72ととを備えているので、仮吹付ノズル71から掘削直後のトンネル空洞部の内面に吹付けられるコンクリートにより形成される仮吹付コンクリート層80によって、地盤の緩みを防止できるとともに、一次吹付ノズル72から仮吹付コンクリート層80の上に吹付けられるコンクリートにより一次吹付コンクリート層81を形成して覆工15を形成できる。即ち、掘削直後のトンネル空洞部の内面に早期にコンクリートを吹付けて地盤の緩みを防止できるとともに、連続して覆工15を形成できるようになるので、覆工15を早期に構築できる。
【0052】
尚、上記では断面馬蹄形のトンネル空洞部を掘削するトンネル掘進機1を示したが、断面円形のトンネル空洞部を掘削するトンネル掘進機としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 トンネル掘進機、2 胴体部、3 カッターヘッド、4 チャンバー、
5 ジャッキ、6 凹部、6A 凹部の開口、7 吹付装置、9 塞板、
10 塞板着脱部、11 先進ボーリング装置、11d 掘削ビット、26 前面板、
26a 中央開口、28a 下部開口、30 カッタービット、31 貫通孔、
35,36 スポーク、37 開口部分、45 ズリ搬送コンベヤ(搬送装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8