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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96392(P2018-96392A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】管端部高圧シール治具
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/08 20060101AFI20180525BHJP
   F28F 11/00 20060101ALI20180525BHJP
   F28F 1/00 20060101ALI20180525BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   F16L19/08
   F28F11/00 A
   F28F1/00 D
   F28F27/00 511J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-238408(P2016-238408)
(22)【出願日】2016年12月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】石谷 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】山内 浩行
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014GA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多管式熱交換器の伝熱管を外側からクランプする方式でありながらも胴体内の狭い管ピッチで配置された伝熱管に対しても使用可能とした管端部高圧シール治具を提供する。
【解決手段】多管式熱交換器の伝熱管2の端部に対して管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材10a、10bと、一対のコレット部材に外側から摺動可能に且つ伝熱管中心軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔16が形成されたスリーブ部材15と、スリーブ部材と高圧流体導入流路33を有するプラグ3とを連結する連結機構と、を備えた管端部高圧シール治具1であって、スリーブ部材の嵌合孔の内壁面に一対のコレット部材のテーパ面と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面17a、17bが形成されており、一対のコレット部材がスリーブ部材に対して管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり伝熱管の端部を締め込む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多管式熱交換器の伝熱管の端部に、該端部をシールしながら高圧ホースからの高圧流体を導入する流路を有するプラグを装着する管端部高圧シール治具において、
前記伝熱管の端部に対して、管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材と、この一対のコレット部材に外側から伝熱管軸方向に摺動可能に且つ伝熱管中心軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔が形成されたスリーブ部材と、該スリーブ部材と前記プラグとを連結する連結機構とを備え、
前記一対のコレット部材の対向する外壁面が、前記伝熱管軸方向の管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面を形成していると共に、
前記スリーブ部材の前記嵌合孔の内壁面に、前記一対のコレット部材の前記テーパ面と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面が形成されており、
前記一対のコレット部材は、前記スリーブ部材に対して前記伝熱管軸方向に沿って管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり、前記伝熱管の端部を締め込むものであることを特徴とする管端部高圧シール治具。
【請求項2】
前記一対のコレット部材が対向する前記管直径方向が、前記伝熱管の多管式熱交換器の胴体内配置状態における上下方向であることを特徴とする請求項1に記載の管端部高圧シール治具。
【請求項3】
前記一対のコレット部材は、前記伝熱管の端部の外周面に当接する内周面に、少なくとも前記伝熱管軸方向に沿った断面で先端が尖った歯状形状を形成する複数の突状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管端部高圧シール治具。
【請求項4】
前記一対のコレット部材同士を互いの間隔を変化可能に連結して前記スリーブ部材に対して一体的に摺動可能とするリテーナ部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の管端部高圧シール治具。
【請求項5】
前記プラグは、前記伝熱管の端部外周に前記伝熱管軸方向に移動可能に嵌合すると共にその端縁が前記一対のコレット部材の外側端面に当接する円筒状装着部を備え、
前記プラグの前記伝熱管軸方向に沿った管中央側への移動によって、前記円筒状装着部の端縁が前記外側端面を押し込まれ、前記一対のコレット部材が前記スリーブ部材に対して前記伝熱管の端部を締め込む方向へ移動されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の管端部高圧シール治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式熱交換器の耐圧テストの際に各伝熱管の両端をシールするための高圧シール治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラー向けの多管式熱交換器では、作動流体が高圧、高温条件で使用される。そのため、製造された熱交換器は、最終的に耐圧テストを行い、所定の圧力で水漏れや強度不足など、熱交換器として不具合がないことが検査される。
【0003】
多管式熱交換器は、円筒状の胴体(シェル)の中に多数本の伝熱管(チューブ)が配置された構造を有する熱交換器である。この伝熱管として、管内周面に螺旋状のライフリング加工が施されたライフル管を使用することによって、強度や耐食性の向上が図られている。
【0004】
耐圧テストを行うためには、各伝熱管端部を高圧水給排のための高圧ホースとの接合において封止する必要があり、多くの場合は管両端を溶接によりシールしている。このように溶接で管端部をシールする場合、耐圧テストに必要な手順として、(1)溶接作業、(2)耐圧テスト、(3)溶接部の除去、(4)伝熱管両端の開先加工、が必要であり、これら多くの工程で作業者の技量と時間を必要とするため、製造コストが増大する要因となっている。
【0005】
そこで、時間短縮やコスト低減のため、伝熱管端部のシールに管端用シール治具が使用される。このようなシール治具として、ライフル管に対して外周面でクランプしてシールするプラグがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5676174号明細書
【特許文献2】実開昭57−105948号公報
【特許文献3】実開昭57−92149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来のシール治具は、ライフル管を外側からクランプしてシールする構造であり、耐圧テスト時にチューブ内の高圧に抗する抜け止め機構をさらに有する必要があるため、シール治具自体の小型化が困難である。したがって、このようなシール治具は、胴体内での管ピッチが狭い場合には、隣合うシール治具同士が互いに干渉してしまい実用的ではなかった。
【0008】
これに対し、ライフル管に内面側で係合する方式も提案されている(特許文献2および特許文献3参照。)。しかしながら、この方式の場合、係合部が管内周面のライフリング形状に嵌合するようにシール治具を製作する必要があり、汎用性や経済性に欠くものであった。
【0009】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、伝熱管を外側からクランプする方式でありながらも胴体内の狭い管ピッチで配置された伝熱管に対しても使用可能とした管端部高圧シール治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る管端部高圧シール治具は、多管式熱交換器の伝熱管の端部に、該端部をシールしながら高圧ホースからの高圧流体を導入する流路を有するプラグを装着する管端部高圧シール治具において、
前記伝熱管の端部に対して、管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材と、この一対のコレット部材に外側から摺動可能に且つ伝熱管中心軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔が形成されたスリーブ部材と、該スリーブ部材と前記プラグとを連結する連結機構と、を備え、
前記一対のコレット部材の対向する外壁面が、前記伝熱管軸方向の管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面を形成していると共に、
前記スリーブ部材の前記嵌合孔の内壁面に、前記一対のコレット部材の前記テーパ面と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面が形成されており、
前記一対のコレット部材は、前記スリーブ部材に対して前記伝熱管軸方向に沿って管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり、前記伝熱管の端部を締め込むものである。
【0011】
請求項2に記載の発明に係る管端部高圧シール治具は、請求項1に記載の管端部高圧シール治具において、前記一対のコレット部材が対向する前記管直径方向が、前記伝熱管の多管式熱交換器の胴体内配置状態における上下方向であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明に係る管端部高圧シール治具は、請求項1又は2に記載の管端部高圧シール治具において、前記一対のコレット部材は、前記伝熱管の端部の外周面に当接する内周面に、少なくとも前記伝熱管軸方向に沿った断面で先端が尖った歯状形状を形成する複数の突状部が設けられているものである。
【0013】
請求項4に記載の発明に係る管端部高圧シール治具は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管端部高圧シール治具において、前記一対のコレット部材同士を互いの間隔を変更可能に連結して前記スリーブ部材に対して一体的に摺動可能とするリテーナ部材をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に記載の発明に係る管端部高圧シール治具は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の管端部高圧シール治具において、前記プラグは、前記伝熱管の端部外周に前記伝熱管軸方向に移動可能に嵌合すると共にその端縁が前記一対のコレット部材の外側端面に当接する円筒状装着部を備え、
前記プラグの前記伝熱管軸方向に沿った管中央側への移動によって、前記円筒状装着部の端縁が前記外側端面を押し込まれ、前記一対のコレット部材が前記スリーブ部材に対して前記伝熱管の端部を締め込む方向へ移動されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の管端部高圧シール治具においては、伝熱管端部に対して一つの管直径方向で互いに対向する一対のコレット部材のみで管外周面をクランプするため、管端部高圧シール治具の部材厚みが、前記管直径方向でのみ大きくなり、それ以外のコレット部材が存在しない管端部周りの領域で部材厚みを小さく抑えることができ、管端部高圧シール治具の小型化が可能となる。したがって、このように部材厚みが小さい領域を多管式熱交換器の伝熱管同士のピッチの狭い間に位置付けて管端部高圧シール治具を取り付ければ、管端部を外側からクランプしてシールする方式であっても、互いに干渉することなく良好に取り付けることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例による管端部高圧シール治具を取り付け完了状態で示す概略断面図であり、(a)は伝熱管中心軸方向に沿った側断面図、(b)は伝熱管中心軸と直交する方向の(a)のA−A断面矢視図、(c)は(a)のB−B断面矢視図である。
図2図1の管端部高圧シール治具の部材構成を示す伝熱管端部取り付け前の概略斜視図であり、部分的に断面を含むものである。
図3図1の管端部高圧シール治具の伝熱管端部取り付け工程を説明するための側断面図であり、(a)〜(c)は各過程の状態を示す。
図4図1の管端部高圧シール治具が胴体内で水平方向に並列配置された複数の伝熱管にそれぞれ取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
図5】一対のコレット部材の内周面の抜け止め用突部として、図1、2の場合と異なる形態の突起が多数個設けられた場合のコレット部材を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、多管式熱交換器の伝熱管の端部に、該端部をシールしながら高圧ホースからの高圧流体を導入する流路を有するプラグを装着する管端部高圧シール治具であって、前記伝熱管の端部に対して、管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材と、この一対のコレット部材に外側から摺動可能に且つ伝熱管中心軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔が形成されたスリーブ部材と、該スリーブ部材と前記プラグとを連結する連結機構とを備え、前記一対のコレット部材の対向する外壁面が、前記伝熱管軸方向の管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面を形成していると共に、前記スリーブ部材の前記嵌合孔の内壁面に、前記一対のコレット部材の前記テーパ面と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面が形成されており、前記一対のコレット部材は、前記スリーブ部材に対して前記伝熱管軸方向に沿って管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり、前記伝熱管の端部を締め込むものである。
【0018】
以上の構成によれば、本発明の管端部高圧シール治具は、管端部外周面とスリーブ部材の嵌合孔の内壁面のうちのテーパ面との間に楔状に嵌合する一対のコレット部材によって確実に管端部をクランプするものである。そして、多管式熱交換器の耐圧テスト時の伝熱管端部への装着の際には、管端部に対して管外周面をクランプするのが、一つの管直径方向で互いに対向する一対のコレット部材のみであるため、一対のコレット部材に外側から嵌合して締め込むためのスリーブ部材を含む管端部高圧シール治具の部材厚みが、前記管直径方向のクランプする方向のみ大きくなり、それ以外のコレット部材が存在しない管端部周りの領域で部材厚みを小さく抑えることができるため、管端部高圧シール治具の小型化が実現される。
【0019】
従って、この部材厚みが小さい領域を胴体内に配置された伝熱管同士間のピッチの狭い間に位置付けて管端部高圧シール治具を取り付ければ、伝熱管を外側からクランプしてシールする方式であっても、互いに干渉することなく良好に伝熱管端部に取り付けられ、良好な封止状態でプラグを装着することができる。
【0020】
このように一対のコレット部材が対向状態で管端部をクランプする管直径方向としては、胴体内に水平配置された状態の伝熱管に対して上下方向(鉛直方向)とするのが簡便である。この場合、左右方向(水平方向)側の部材厚みを小さくできるため、水平方向により多くの伝熱管を並列配置して左右で隣合う伝熱管同士の管ピッチを狭くした多管式熱伝導器に対応できる。
【0021】
また、使用対象となる多管式熱交換器の伝熱管の配置構成が予め決定されていれば、例えば水平方向で隣合う伝熱管同士の中心軸の間のピッチPに対して、管端部高圧シール治具の中心から水平方向で最大外径となる位置までの距離Dが、前記ピッチPの1/2以下であれば良い。さらに、管端部高圧シール治具の外形状は、実質的にはスリーブ部材の外形状として、互いに効率良く並列配置できるように、伝熱管中心軸に対して直交方向の断面形状が略長方形であるのが好ましい。
【0022】
さらに、スリーブ部材の嵌合孔の輪郭および一対のコレット部材の外形状も、伝熱管中心軸に対する直交方向の断面形状が略長方形状となる構成とすることによって、一対のコレット部材がスリーブ部材に対して伝熱管中心軸周りに回動することが回避され、管端部に対する良好な締め込み状態が維持できる。
【0023】
なお、一対のコレット部材の内周面に管端部外周面に対して抜け止め加工を施すことによってその締め込み位置をより確実に保持できる。たとえば、一対のコレット部材の内周面に、少なくとも伝熱管軸方向に沿った断面で先端が尖った歯状形状を形成する突状部を複数設けることによって抜け止め手段を構成できる。この場合、各突状部の歯状形状の先端が管外周面に食い込んで抜け止めとなるため、耐圧テスト時の高圧水導入の際に管端部高圧シール治具を管端部から押し出す力が作用しても、これに抗して一対のコレット部材による良好な管端部クランプ状態が維持される。このような突状部としては、多数の円錐状あるいは角錐状の突起をコレット部材の内周面に形成すればよい。また、このような突起に限らず、伝熱管軸方向に直交する方向に延びる例えば断面略三角形の突条を複数並列配置する構成など、これら突条が伝熱管軸方向に沿った断面で鋸歯形状を形成するものであれば、各突条の先端峰が管外周面に食い込む抜け止めとなる。
【0024】
また、一対のコレット部材が互いに独立した別部材で構成される場合、管端部に対して均等に締め込まれるように、スリーブ部材に対して一体的に伝熱管軸方向に摺動する必要があるため、一対のコレット部材同士を連結するリテーナ部材を設ければよい。なお、一対のコレット部材が締め付けのためにスリーブ部材のテーパ面に対して内径が小さくなる方向へ移動すると互いに間隔は僅かに小さくなるため、リテーナ部材はこの間隔の変化に対応できる構造のものとする。
【0025】
たとえば、一対のコレット部材の内周面の同じ伝熱管軸周り位置に溝を穿設し、この溝に摺動可能に収納されるC型形状のリテーナリングがあげられる。このリテーナリングは、一対のコレット部材の押圧によってC型形状の開口距離を縮めて径を小さくするように弾性変形することで、一対のコレット部材同士の間隔の変化を許容しながら両者を連結できる。
【0026】
耐圧テストにおいては、管端部高圧シール治具を介して、高圧流体を給排するための高圧ホースが接続されるプラグが各伝熱管の端部に装着される。従って、本発明の管端部高圧シール治具においても高圧流体導入路を有するプラグをスリーブ部材に連結する連結機構を備えている。
【0027】
このような連結機構としては、スリーブ部材と同一外形状で該スリーブ部材に同軸上にネジ止め等により連結されると同時に、中央にプラグの一端側外周面に螺合する雌ねじ穴が形成されたカバー部材の構成が簡便である。
【0028】
プラグは、内周面で伝熱管の端部外周に伝熱管軸方向に移動可能に嵌合すると共に外周面に雄ねじ加工が施された円筒状装着部を備えたものとすることで、カバー部材の雌ねじ穴に一端側から螺合することにより、スリーブ部材と連結され、スリーブ部材の嵌合孔内の一対のコレット部材の間を貫通して突出する伝熱管の端部の外周面に装着される。
【0029】
この構成において、カバー部材の雌ねじ穴を貫通孔とすることで、プラグの一端側はカバー部材を貫通してスリーブ部材の嵌合孔内の一対のコレット部材の外側端面に達することができる。したがって、この構成により、プラグの螺合を進めて管中央側方向へ移動させていくことによって、プラグの円筒状装着部の端縁が一対のコレット部材の外側端面を押圧して、一対のコレット部材をスリーブ部材に対して管端部を締め込む方向へ押し込むことができ、プラグの装着と同時に一対のコレット部材の管端部に対する締め込みを完了させることができる。
【実施例】
【0030】
本発明の一実施例として、多管式熱交換器の伝熱管に対して上下方向からクランプして取り付けられる管端部高圧シール治具を図1図4に示す。図1は、管端部に対して取り付け完了状態を示す本管端部高圧シール治具の概略断面図であり、(a)は伝熱管中心軸方向に沿った側断面図、(b)は伝熱管中心軸と直交する方向の(a)のA−A断面矢視図、(c)は(a)のB−B断面矢視図である。図2は本管端部高圧シール治具の部材構成を示す管端部取り付け前の概略斜視図であり、部分的に断面を含むものである。図3は、本管端部高圧シール治具の管端部取り付け工程の各過程を示す側断面図である。図4は胴体内で水平方向に並列配置された複数の伝熱管にそれぞれ本管端部高圧シール治具が取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【0031】
本実施例による管端部高圧シール治具1は、伝熱管2の端部に対して、管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材(10a,10b)と、この一対のコレット部材に外側から摺動可能に且つ伝熱管軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔16が形成されたスリーブ部材15と、該スリーブ部材15とプラグ3とを連結する連結機構とを備え、一対のコレット部材(10a,10b)の対向する外壁面が、伝熱管軸方向に沿って管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面(11a,11b)を形成していると共に、スリーブ部材15の嵌合孔16の内壁面に、一対のコレット部材のテーパ面(11a,11b)と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面(17a,17b)が形成されており、一対のコレット部材(10a,10b)が、スリーブ部材15に対して伝熱管軸方向に沿って管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり、前記伝熱管の端部を締め込むものである。
【0032】
具体的には、管端部高圧シール治具1は、まず、伝熱管としてのライフル管2が間に挿入されてその端部の外周面をライフル管2の上下直径方向で互いに対向してクランプする一対のコレット部材(10a,10b)と、この一対のコレット部材(10a,10b)に外側から摺動可能に嵌合する嵌合孔16が形成されたスリーブ部材15とを備えたものである。
【0033】
一対のコレット部材(10a,10b)の外形状は、対向する上下外壁面が、管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面(11a,11b)を形成していると共に、ライフル管中心軸と直交方向の断面形状が四隅を面取りした略長方形状を有するものである。対応するスリーブ部材15の嵌合孔16の内周形状は、この一対のコレット部材(10a,10b)の外形状に沿うように、ライフル管中心軸と直交方向の断面形状が略長方形状であると共に上下内壁面が一対のコレット部材の上下テーパ面(11a,11b)と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面(17a,17b)となっている。
【0034】
一対のコレット部材(10a,10b)と嵌合孔16とが互いに断面略長方形状であるため、両者のライフル管中心軸周りの相対回動は規制され、一対のコレット部材(10a,10b)のライフル管2に対する締め込みはより安定なものとなる。
【0035】
また、本実施例においては、一対のコレット部材(10a,10b)の内周面に、ライフル管軸方向に沿った断面で略三角形状の突条12が複数並列して設けられている。これら突条12により、ライフル管軸方向の沿った断面で先端の尖った歯状形状が連続する鋸歯形状が形成されるため、耐圧テスト時に管端部高圧シール治具1を管外側へ押し戻す方向へ圧力がかかっても、これら突条12の先端の食い込みによるライフル管2の外周面に対する抜け止め効果で締め付け状態がより強固に維持される。
【0036】
さらに、一対のコレット部材(10a,10b)の内周面には、ライフル管軸方向で同一位置で周方向に沿って溝13が形成されており、この溝13内にC型形状のリテーナリング14が摺動可能に収納されている。このリテーナリング14によって、締め込みに伴う一対のコレット部材(10a,10b)同士の間隔変更に対応しながら、一対のコレット部材(10a,10b)同士を連結してライフル管中心軸方向に沿った移動を一体的にする。
【0037】
本管端部高圧シール治具1は、さらに高圧ホースHを接続するためのプラグ3のための連結機構として、スリーブ部材15と同一外形状のカバー部材18がスリーブ部材15にネジ止めされる。カバー部材18の中央には貫通孔状の雌ねじ穴19が形成されている。
【0038】
一方、高圧ホースHからの高圧水が導入される流路33を備えたプラグ3は、高圧ホースHとの接続側と反対側にライフル管2の端部外周に嵌合する円筒状装着部31を有している。円筒状装着部31の内周面にはOリングRが配置され、外周面にはカバー部材18の雌ねじ穴19に螺合する雄ねじ加工32が施されている。
【0039】
したがって、プラグ3は、カバー部材18の雌ねじ穴19に一端側から螺合することにより、スリーブ部材15と連結され、スリーブ部材15の嵌合孔16内の一対のコレット部材(10a,10b)の間を貫通して突出するライフル管2の端部の外周面に装着される。本実施例では、カバー部材18の雌ねじ穴19を通過してさらに螺合を進めることにより、プラグ3の円筒状装着部31の端縁F2が一対のコレット部材(10a,10b)の外側端面F1に当接する構成とした。
【0040】
以上の構成における管端部高圧シール治具1の取り付けは、まず図3(a)のように、スリーブ部材15の貫通孔16内に一対のコレット部材(10a,10b)を配置し、スリーブ部材15にネジ止め(図簡略化のため不図示)されたカバー部材18の雌ねじ穴19にプラグ3をある程度螺合させて構成部材を一体化させた状態とする。そして一対のコレット部材(10a,10b)の間からカバー部材18を貫通するまでライフル管2を挿入してその管端部をプラグ3の円筒状装着部31の内周に嵌め込む(図3(b))。
【0041】
その後、プラグ3の螺合を進めて伝熱管軸方向にそって管中央側へ移動させていくことによって、プラグ3の円筒状装着部31の端縁F2が一対のコレット部材(10a,10b)の外側端面F1を押圧して、一対のコレット部材(10a,10b)をスリーブ部材15に対して管端部を締め込む方向へ押し込むことができ、図3(c)に示すように、プラグ3の装着と同時に一対のコレット部材(10a,10b)の管端部に対する締め込みによる管端部高圧シール治具1の取り付けが完了する。
【0042】
本実施例においては、管端部高圧シール治具1の外形状、即ちスリーブ部材15とカバー部材18との外形状を上下方向が長辺方向となる断面長方形状とし、多管式熱交換器の胴体内で水平方向で隣合うライフル管2同士の中心軸の間のピッチPに対して、管端部高圧シール治具1の中心から水平方向で最大外径となる位置までの距離Dを、ピッチPの1/2以下とした。これによって、図4に示すように、隣合う管端部高圧シール治具1が互いに干渉することなく良好に多数のライフル管2に取り付けられる。
【0043】
なお、以上の実施例においては、抜け止めのための突状部として、コレット部材の内周面に伝熱管軸方向と直交方向に延びる断面三角形の突条を複数並列配置して設けた場合を示したが、この他の形態の突状部でも採用可能である。例えば、図5に示すように、先端が尖った円錐状あるいは角錐状の突起42を多数形成したものも望ましい。この場合、管外周面に対する点状の食い込み箇所が数多く確保される。
【符号の説明】
【0044】
1:管端部高圧シール治具
2:ライフル管(伝熱管)
3:プラグ
10a,10b:コレット部材
11a,11b:テーパ面
12:突条
13:溝
14:リテーナリング
15:スリーブ部材
16:嵌合孔
17a,17b:テーパ面
18:カバー部材
19:雌ねじ穴
31:円筒状装着部
32:雄ねじ加工
33:流路
42:突起
R:Oリング
F1:一対のコレット部材の外側端面
F2:プラグの円筒状装着部の端縁
H:高圧ホース
図1
図2
図3
図4
図5