【実施例】
【0030】
本発明の一実施例として、多管式熱交換器の伝熱管に対して上下方向からクランプして取り付けられる管端部高圧シール治具を
図1〜
図4に示す。
図1は、管端部に対して取り付け完了状態を示す本管端部高圧シール治具の概略断面図であり、(a)は伝熱管中心軸方向に沿った側断面図、(b)は伝熱管中心軸と直交する方向の(a)のA−A断面矢視図、(c)は(a)のB−B断面矢視図である。
図2は本管端部高圧シール治具の部材構成を示す管端部取り付け前の概略斜視図であり、部分的に断面を含むものである。
図3は、本管端部高圧シール治具の管端部取り付け工程の各過程を示す側断面図である。
図4は胴体内で水平方向に並列配置された複数の伝熱管にそれぞれ本管端部高圧シール治具が取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
【0031】
本実施例による管端部高圧シール治具1は、伝熱管2の端部に対して、管外周面を一つの管直径方向のみで互いに対向してクランプする一対のコレット部材(10a,10b)と、この一対のコレット部材に外側から摺動可能に且つ伝熱管軸周りに相対回転不能に嵌合する嵌合孔16が形成されたスリーブ部材15と、該スリーブ部材15とプラグ3とを連結する連結機構とを備え、一対のコレット部材(10a,10b)の対向する外壁面が、伝熱管軸方向に沿って管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面(11a,11b)を形成していると共に、スリーブ部材15の嵌合孔16の内壁面に、一対のコレット部材のテーパ面(11a,11b)と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面(17a,17b)が形成されており、一対のコレット部材(10a,10b)が、スリーブ部材15に対して伝熱管軸方向に沿って管中央側に移動することによって互いの間隔が小さくなり、前記伝熱管の端部を締め込むものである。
【0032】
具体的には、管端部高圧シール治具1は、まず、伝熱管としてのライフル管2が間に挿入されてその端部の外周面をライフル管2の上下直径方向で互いに対向してクランプする一対のコレット部材(10a,10b)と、この一対のコレット部材(10a,10b)に外側から摺動可能に嵌合する嵌合孔16が形成されたスリーブ部材15とを備えたものである。
【0033】
一対のコレット部材(10a,10b)の外形状は、対向する上下外壁面が、管中央側に向かって漸次外径が小さくなる一対のテーパ面(11a,11b)を形成していると共に、ライフル管中心軸と直交方向の断面形状が四隅を面取りした略長方形状を有するものである。対応するスリーブ部材15の嵌合孔16の内周形状は、この一対のコレット部材(10a,10b)の外形状に沿うように、ライフル管中心軸と直交方向の断面形状が略長方形状であると共に上下内壁面が一対のコレット部材の上下テーパ面(11a,11b)と同じ傾斜角度で互いに摺動可能に当接するテーパ面(17a,17b)となっている。
【0034】
一対のコレット部材(10a,10b)と嵌合孔16とが互いに断面略長方形状であるため、両者のライフル管中心軸周りの相対回動は規制され、一対のコレット部材(10a,10b)のライフル管2に対する締め込みはより安定なものとなる。
【0035】
また、本実施例においては、一対のコレット部材(10a,10b)の内周面に、ライフル管軸方向に沿った断面で略三角形状の突条12が複数並列して設けられている。これら突条12により、ライフル管軸方向の沿った断面で先端の尖った歯状形状が連続する鋸歯形状が形成されるため、耐圧テスト時に管端部高圧シール治具1を管外側へ押し戻す方向へ圧力がかかっても、これら突条12の先端の食い込みによるライフル管2の外周面に対する抜け止め効果で締め付け状態がより強固に維持される。
【0036】
さらに、一対のコレット部材(10a,10b)の内周面には、ライフル管軸方向で同一位置で周方向に沿って溝13が形成されており、この溝13内にC型形状のリテーナリング14が摺動可能に収納されている。このリテーナリング14によって、締め込みに伴う一対のコレット部材(10a,10b)同士の間隔変更に対応しながら、一対のコレット部材(10a,10b)同士を連結してライフル管中心軸方向に沿った移動を一体的にする。
【0037】
本管端部高圧シール治具1は、さらに高圧ホースHを接続するためのプラグ3のための連結機構として、スリーブ部材15と同一外形状のカバー部材18がスリーブ部材15にネジ止めされる。カバー部材18の中央には貫通孔状の雌ねじ穴19が形成されている。
【0038】
一方、高圧ホースHからの高圧水が導入される流路33を備えたプラグ3は、高圧ホースHとの接続側と反対側にライフル管2の端部外周に嵌合する円筒状装着部31を有している。円筒状装着部31の内周面にはOリングRが配置され、外周面にはカバー部材18の雌ねじ穴19に螺合する雄ねじ加工32が施されている。
【0039】
したがって、プラグ3は、カバー部材18の雌ねじ穴19に一端側から螺合することにより、スリーブ部材15と連結され、スリーブ部材15の嵌合孔16内の一対のコレット部材(10a,10b)の間を貫通して突出するライフル管2の端部の外周面に装着される。本実施例では、カバー部材18の雌ねじ穴19を通過してさらに螺合を進めることにより、プラグ3の円筒状装着部31の端縁F2が一対のコレット部材(10a,10b)の外側端面F1に当接する構成とした。
【0040】
以上の構成における管端部高圧シール治具1の取り付けは、まず
図3(a)のように、スリーブ部材15の貫通孔16内に一対のコレット部材(10a,10b)を配置し、スリーブ部材15にネジ止め(図簡略化のため不図示)されたカバー部材18の雌ねじ穴19にプラグ3をある程度螺合させて構成部材を一体化させた状態とする。そして一対のコレット部材(10a,10b)の間からカバー部材18を貫通するまでライフル管2を挿入してその管端部をプラグ3の円筒状装着部31の内周に嵌め込む(
図3(b))。
【0041】
その後、プラグ3の螺合を進めて伝熱管軸方向にそって管中央側へ移動させていくことによって、プラグ3の円筒状装着部31の端縁F2が一対のコレット部材(10a,10b)の外側端面F1を押圧して、一対のコレット部材(10a,10b)をスリーブ部材15に対して管端部を締め込む方向へ押し込むことができ、
図3(c)に示すように、プラグ3の装着と同時に一対のコレット部材(10a,10b)の管端部に対する締め込みによる管端部高圧シール治具1の取り付けが完了する。
【0042】
本実施例においては、管端部高圧シール治具1の外形状、即ちスリーブ部材15とカバー部材18との外形状を上下方向が長辺方向となる断面長方形状とし、多管式熱交換器の胴体内で水平方向で隣合うライフル管2同士の中心軸の間のピッチPに対して、管端部高圧シール治具1の中心から水平方向で最大外径となる位置までの距離Dを、ピッチPの1/2以下とした。これによって、
図4に示すように、隣合う管端部高圧シール治具1が互いに干渉することなく良好に多数のライフル管2に取り付けられる。
【0043】
なお、以上の実施例においては、抜け止めのための突状部として、コレット部材の内周面に伝熱管軸方向と直交方向に延びる断面三角形の突条を複数並列配置して設けた場合を示したが、この他の形態の突状部でも採用可能である。例えば、
図5に示すように、先端が尖った円錐状あるいは角錐状の突起42を多数形成したものも望ましい。この場合、管外周面に対する点状の食い込み箇所が数多く確保される。