特開2018-96562(P2018-96562A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2018096562-ボイラシステム 図000003
  • 特開2018096562-ボイラシステム 図000004
  • 特開2018096562-ボイラシステム 図000005
  • 特開2018096562-ボイラシステム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96562(P2018-96562A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】ボイラシステム
(51)【国際特許分類】
   F22B 35/00 20060101AFI20180525BHJP
   F22D 1/14 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   F22B35/00 E
   F22D1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-238844(P2016-238844)
(22)【出願日】2016年12月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 兼資
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 和洋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】越智 克幸
【テーマコード(参考)】
3L021
【Fターム(参考)】
3L021AA05
3L021CA06
3L021DA04
3L021FA12
3L021FA21
(57)【要約】
【課題】エコノマイザにおける低温腐食の発生を抑制できるボイラシステムを提供する。
【解決手段】ボイラシステム1000は、ボイラ100に個別制御信号を出力する個別制御装置50と、複数の個別制御装置50のそれぞれに少なくともボイラ100の燃焼量を制御させる台数制御信号を出力する台数制御装置300と、を備える。個別制御装置50は、台数制御装置300から台数制御信号を取得する台数制御信号取得部56と、ボイラ100の本体1の蒸気圧力が圧力閾値以上か否かを判定する第1判定部57Aと、蒸気圧力が圧力閾値未満であると判定され、ボイラ100を第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が台数制御信号取得部56に取得されたとき、ボイラ100を第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する燃焼制御部58と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ヘッダをそれぞれ有し、蒸気を生成する複数のボイラと、
複数の前記ボイラで生成された蒸気が集合するスチームヘッダと、
複数の前記ボイラのそれぞれに設けられ、前記ボイラに個別制御信号を出力する個別制御装置と、
複数の前記個別制御装置のそれぞれに少なくとも前記ボイラの燃焼量を制御させる台数制御信号を出力する台数制御装置と、
を備え、
前記個別制御装置は、
前記台数制御装置から前記台数制御信号を取得する台数制御信号取得部と、
前記ボイラの本体の蒸気圧力が圧力閾値以上か否かを判定する第1判定部と、
前記蒸気圧力が前記圧力閾値未満であると判定され、前記ボイラを第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が前記台数制御信号取得部に取得されたとき、前記ボイラを前記第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を前記ボイラに出力する燃焼制御部と、を有する、
ボイラシステム。
【請求項2】
前記台数制御装置は、
稼働中の前記ボイラの前記本体の圧力データ又は前記スチームヘッダの圧力データを取得する圧力データ取得部と、
前記圧力データに基づいて、前記第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号を出力する出力制御部と、を有する、
請求項1に記載のボイラシステム。
【請求項3】
前記ボイラのエコノマイザに供給される給水温度が給水温度閾値以上か否かを判定する第2判定部を備え、
前記個別制御装置の前記燃焼制御部は、前記給水温度が前記給水温度閾値未満であり前記蒸気圧力が前記圧力閾値未満であると判定され、前記ボイラを第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が前記台数制御信号取得部に取得されたとき、前記ボイラを前記第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を出力する、
請求項1又は請求項2に記載のボイラシステム。
【請求項4】
前記個別制御装置の前記燃焼制御部は、前記給水温度が前記給水温度閾値以上であると判定されたとき又は前記蒸気圧力が前記圧力閾値以上であると判定されたとき、前記台数制御信号取得部に取得された台数制御信号に基づいて、前記ボイラを燃焼させる個別制御信号を前記ボイラに出力する、
請求項3に記載のボイラシステム。
【請求項5】
前記ボイラのエコノマイザから排出される排ガス温度が排ガス温度閾値以上か否かを判定する第3判定部を備え、
前記個別制御装置の前記燃焼制御部は、前記排ガス温度が前記排ガス温度閾値以上であると判定されたとき、前記台数制御信号取得部に取得された台数制御信号に基づいて、前記ボイラを燃焼させる個別制御信号を前記ボイラに出力する、
請求項3又は請求項4に記載のボイラシステム。
【請求項6】
前記ボイラが起動してからの経過時間が時間閾値以上か否かを判定する第4判定部を備え、
前記個別制御装置の前記燃焼制御部は、前記経過時間が前記時間閾値以上であると判定されたとき、前記台数制御信号取得部に取得された台数制御信号に基づいて、前記ボイラを燃焼させる個別制御信号を前記ボイラに出力する、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のボイラシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラは、排ガスの余熱を利用して給水を予熱するエコノマイザを備える。特許文献1及び特許文献2に記載されているように、重油を燃料とする油焚きボイラにおいては、重油に含まれる硫黄分に起因して、低温腐食と呼ばれる硫酸腐食がエコノマイザに発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−164907号公報
【特許文献2】特開平06−313502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
給水加熱を行うボイラの起動時においては、設備の状況によって、エコノマイザに供給される給水温度が低い場合がある。また、ボイラの起動時においては、ボイラの本体からエコノマイザに排出される排ガス流量が少なく、排ガス温度が低い場合がある。給水温度が低く、排ガス温度が低い場合、エコノマイザにおける排ガス温度が過度に低下する可能性が高い。排ガス温度が露点温度以下に低下すると、硫酸が生成され、エコノマイザにおいて低温腐食が発生する可能性が高くなる。
【0005】
本発明の態様は、エコノマイザにおける低温腐食の発生を抑制できるボイラシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、蒸気ヘッダをそれぞれ有し、蒸気を生成する複数のボイラと、複数の前記ボイラで生成された蒸気が集合するスチームヘッダと、複数の前記ボイラのそれぞれに設けられ、前記ボイラに個別制御信号を出力する個別制御装置と、複数の前記個別制御装置のそれぞれに少なくとも前記ボイラの燃焼量を制御させる台数制御信号を出力する台数制御装置と、を備え、前記個別制御装置は、前記台数制御装置から前記台数制御信号を取得する台数制御信号取得部と、前記ボイラの本体の蒸気圧力が圧力閾値以上か否かを判定する第1判定部と、前記蒸気圧力が前記圧力閾値未満であると判定され、前記ボイラを第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が前記台数制御信号取得部に取得されたとき、前記ボイラを前記第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を前記ボイラに出力する燃焼制御部と、を有する、ボイラシステムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、エコノマイザにおける低温腐食の発生を抑制できるボイラシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係るボイラシステムの一例を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るボイラの一例を模式的に示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る台数制御装置及び個別制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
図4図4は、本実施形態に係るボイラシステムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[ボイラシステム]
図1は、本実施形態に係るボイラシステム1000の一例を模式的に示す図である。ボイラシステム1000は、蒸気ヘッダ11をそれぞれ有し、蒸気を生成する複数のボイラ100と、複数のボイラ100で生成された蒸気が集合するスチームヘッダ200と、複数のボイラ100のそれぞれに設けられ、ボイラ100に個別制御信号を出力する個別制御装置50と、複数の個別制御装置50のそれぞれに台数制御信号を出力する台数制御装置300とを備える。
【0011】
ボイラ100は、蒸気使用設備500に供給される蒸気を生成する。複数のボイラ100のそれぞれは、蒸気管10を介してスチームヘッダ200と接続される。複数のボイラ100のそれぞれで生成された蒸気は、蒸気管10を介してスチームヘッダ200に供給される。
【0012】
スチームヘッダ200は、複数のボイラ100のそれぞれから供給された蒸気を貯留する。スチームヘッダ200は、蒸気管210を介して蒸気使用設備500と接続される。スチームヘッダ200の蒸気は、蒸気管210を介して蒸気使用設備500に供給される。
【0013】
台数制御装置300は、複数の個別制御装置50のそれぞれにボイラ100の燃焼状態を制御させる台数制御信号を出力する。個別制御装置50は、ボイラ100の燃焼状態を制御するための個別制御信号をボイラ100に出力する。個別制御装置50は、その個別制御装置50が設けられているボイラ100に個別制御信号を出力する。ボイラ100の燃焼状態は、個別制御装置50に個別に制御される。
【0014】
ボイラ100の燃焼状態は、ボイラ100の燃焼量を含む。燃焼量[kcal/h]とは、ボイラ100の本体1の燃焼室において単位時間当たりに発生する熱量をいう。台数制御装置300は、複数の個別制御装置50のそれぞれに少なくともボイラ100の燃焼量を制御させる台数制御信号を出力する。
【0015】
また、ボイラ100の燃焼状態は、ボイラ100の燃焼開始、燃焼維持、及び燃焼停止を含む。台数制御装置300は、複数のボイラ100のうち稼働させるボイラ100の数を示す運転台数を決定して、複数の個別制御装置50のそれぞれにボイラ100の燃焼開始、燃焼維持、及び燃焼停止を制御させる台数制御信号を出力する。
【0016】
スチームヘッダ200は、ヘッダ圧力センサ201を有する。ヘッダ圧力センサ201は、スチームヘッダ200の圧力を検出する。ヘッダ圧力センサ201で検出されたスチームヘッダ200の圧力を示す圧力データは、台数制御装置300に出力される。
【0017】
蒸気使用設備500の蒸気消費量は、蒸気使用設備500の稼働状態によって変動する。蒸気使用設備500の蒸気消費量の変動に伴って、スチームヘッダ200の圧力が変動する。例えば、蒸気使用設備500の蒸気消費量が増大した場合、複数のボイラ100からスチームヘッダ200に供給される実蒸気量が不足する。実蒸気量が不足する場合、スチームヘッダ200の圧力は低下する。一方、蒸気使用設備500の蒸気消費量が減少した場合、複数のボイラ100からスチームヘッダ200に供給される実蒸気量が余剰する。実蒸気量が余剰する場合、スチームヘッダ200の圧力は上昇する。
【0018】
スチームヘッダ200の圧力データに基づいて、複数のボイラ100で生成される必要蒸気量が算出される。必要蒸気量は、蒸気使用設備500が要求する蒸気消費量を充足するためにボイラ100が発生すべき蒸気量である。
【0019】
本実施形態において、台数制御装置300は、スチームヘッダ200の圧力データに基づいて、複数のボイラ100それぞれの燃焼量を決定する。台数制御装置300は、決定した燃焼量でボイラ100を稼働させるための台数制御信号を個別制御装置50に出力する。
【0020】
[ボイラ]
次に、本実施形態に係るボイラ100について説明する。図2は、本実施形態に係るボイラ100の一例を模式的に示す図である。本実施形態において、ボイラ100は、水管ボイラの一種である貫流ボイラを含む。
【0021】
図2に示すように、ボイラ100は、バーナ2を有する本体1と、本体1に供給される給水を収容する給水タンク3と、本体1に供給される給水が流れる給水管4と、給水管4に設けられる給水ポンプ5と、給水管4に設けられる流量調整弁15と、バーナ2に供給される燃料を収容する燃料タンク6と、燃料タンク6からバーナ2に供給される燃料が流れる燃料管7と、燃料管7に設けられる燃料ポンプ8と、燃料管7に設けられる流量調整弁9とを備える。
【0022】
また、ボイラ100は、給水管4の給水温度を検出する給水温度センサ13と、エコノマイザ20から排出される排ガス温度を検出する排ガス温度センサ14と、水面計(不図示)に設けられ、本体1の蒸気圧力を検出する蒸気圧力センサ18とを備える。
【0023】
また、ボイラ100は、蒸気ヘッダ11と、本体1で生成された蒸気が流れる蒸気管10と、本体1に供給される給水と本体1から排出された排ガスとを熱交換するエコノマイザ20と、ボイラ100を制御する個別制御装置50とを備える。
【0024】
本体1は、バーナ2が配置される燃焼室と、給水管4からの給水が流れる水管とを有する。燃料ポンプ8の作動により、燃料タンク6の燃料がバーナ2に供給される。バーナ2は、燃料管7を介して供給された燃料を燃焼室に噴射する。バーナ2から噴射された燃料が燃焼することにより火炎が生成される。本実施形態において、燃料は重油を含む。
【0025】
本体1は、燃焼室で発生した熱を使って給水を加熱して蒸気を生成する。生成された蒸気は、蒸気管10を介してスチームヘッダ200に供給される。本体1の燃焼室で発生した排ガスは、本体1から排出され、エコノマイザ20に供給される。
【0026】
給水管4は、給水タンク3と本体1とを接続する水管である。給水ポンプ5の作動により、給水タンク3の給水がエコノマイザ20を介して本体1に供給される。給水管4は、エコノマイザ20の入口接続部20A及び出口接続部20Bを経由して本体1と接続される。給水管4は、給水タンク3とエコノマイザ20の入口接続部20Aとを接続する第1給水管41と、エコノマイザ20の入口接続部20Aとエコノマイザ20の出口接続部20Bとを接続する第2給水管42と、エコノマイザ20の出口接続部20Bと本体1とを接続する第3給水管43とを含む。
【0027】
エコノマイザ20は、本体1からの排ガスが供給される内部空間を有するケーシング21を有する。ケーシング21は、本体1からの排ガスが供給される排ガス入口21Aと、排ガスが排出される排ガス出口21Bとを有する。排ガス入口21Aは、煙道23を介して本体1と接続される。排ガス出口21Bは、煙道24を介して煙突25と接続される。第2給水管42は、エコノマイザ20の水管であり、複数の屈曲部42Cを有する。
【0028】
本体1から排出された排ガスは、排ガス入口21Aを介してケーシング21の内部空間に流入する。ケーシング21の内部空間を流れる排ガスと第2給水管42を流れる給水とが熱交換される。排ガスとの熱交換により温度上昇した給水は、エコノマイザ20の出口接続部20Bから流出し、第3給水管43を介して本体1に供給される。給水との熱交換により温度低下した排ガスは、排ガス出口21Bから排出される。出口接続部20Bにおける給水温度は、入口接続部20Aにおける給水温度よりも高い。排ガス入口21Aにおける排ガス温度は、排ガス出口21Bにおける排ガス温度よりも高い。
【0029】
入口接続部20Aは、出口接続部20Bよりもエコノマイザ20の排ガス出口21Bに近い位置に設けられる。出口接続部20Bは、入口接続部20Aよりもエコノマイザ20の排ガス入口21Aに近い位置に設けられる。給水は、エコノマイザ20の上部から下方に向かって流れる。排ガスは、エコノマイザ20の下部から上方に向かって流れる。すなわち、本実施形態において、エコノマイザ20は、排ガスに対して対向流型である。対向流型のエコノマイザ20とは、給水が流れる方向と排ガスが流れる方向とが逆の関係となるエコノマイザをいう。
【0030】
給水温度センサ13は、エコノマイザ20において熱交換される前の給水温度を検出する。給水温度センサ13は、第1給水管41に設けられる。給水温度センサ13で検出された給水温度データは、台数制御装置300に出力される。
【0031】
排ガス温度センサ14は、エコノマイザ20において熱交換された後の排ガス温度を検出する。排ガス温度センサ14は、ケーシング21の外側の煙道24に設けられる。排ガス温度センサ14で検出された排ガス温度データは、個別制御装置50に出力される。
【0032】
蒸気圧力センサ18は、本体1の蒸気圧力を検出する。本体1の蒸気圧力と蒸気ヘッダ11の蒸気圧力とは実質的に等しい。蒸気圧力センサ18で検出された本体1の蒸気圧力を示す圧力データは、個別制御装置50に出力される。
【0033】
流量調整弁9は、バーナ2に供給される単位時間当たりの燃料の供給量を示す燃料流量を調整する。流量調整弁9は、個別制御装置50に制御される。
【0034】
流量調整弁15は、エコノマイザ20及び本体1に供給される給水の単位時間当たりの供給量を調整する。流量調整弁15は、個別制御装置50に制御される。
【0035】
[台数制御装置及び個別制御装置]
図3は、本実施形態に係る台数制御装置300及び個別制御装置50の一例を示す機能ブロック図である。
【0036】
台数制御装置300は、複数の個別制御装置50と接続される。台数制御装置300は、コンピュータシステムを含み、演算処理装置及び記憶装置を有する。演算処理装置は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ又はRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。同様に、個別制御装置50は、コンピュータシステムを含み、演算処理装置及び記憶装置を有する。
【0037】
台数制御装置300は、圧力データ取得部301と、出力制御部302と、記憶部303と、入出力部304とを有する。
【0038】
圧力データ取得部301は、ヘッダ圧力センサ201から、スチームヘッダ200の圧力を示す圧力データを取得する。
【0039】
出力制御部302は、ボイラ100の本体1における燃焼量を制御させる台数制御信号を個別制御装置50に出力する。また、出力制御部302は、ボイラ100の本体1における燃焼開始、燃焼維持、及び燃焼停止を制御させる台数制御信号を個別制御装置50に出力する。出力制御部302は、圧力データ取得部301で取得されたスチームヘッダ200の圧力データに基づいて、複数のボイラ100それぞれの燃焼量を決定する。
【0040】
個別制御装置50は、給水温度データ取得部51と、排ガス温度データ取得部52と、圧力データ取得部53と、時間データ取得部54と、台数制御信号取得部56と、判定部57と、燃焼制御部58と、記憶部59と、入出力部60とを有する。
【0041】
給水温度データ取得部51は、給水温度センサ13から、ボイラ100のエコノマイザ20に供給される給水温度を示す給水温度データを取得する。
【0042】
排ガス温度データ取得部52は、排ガス温度センサ14から、ボイラ100のエコノマイザ20から排出される排ガス温度を示す排ガス温度データを取得する。
【0043】
圧力データ取得部53は、蒸気圧力センサ18から、ボイラ100の本体1の蒸気圧力を示す圧力データを取得する。
【0044】
時間データ取得部54は、タイマ19から、タイマ19による計時時間を示す時間データを取得する。
【0045】
台数制御信号取得部56は、台数制御装置300から、台数制御信号を取得する。
【0046】
判定部57は、ボイラ100の本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta以上か否かを判定する第1判定部57Aと、ボイラ100のエコノマイザ20に供給される給水温度が給水温度閾値Tb以上か否かを判定する第2判定部57Bと、ボイラ100のエコノマイザ20から排出される排ガス温度が排ガス温度閾値Tc以上か否かを判定する第3判定部57Cと、ボイラ100が起動してからの経過時間が時間閾値Td以上か否かを判定する第4判定部57Dとを含む。
【0047】
燃焼制御部58は、ボイラ100の本体1における燃焼量を制御する。燃焼制御部58は、流量調整弁9を制御して、バーナ2に供給される単位時間当たりの燃料の供給量を示す燃料流量を制御する。燃料流量が制御されることにより、本体1における燃焼量が制御される。バーナ2に供給される燃料流量が多いほど、燃焼量は高くなる。バーナ2に供給される燃料流量が少ないほど、燃焼量は低くなる。
【0048】
燃焼制御部58は、バーナ2に供給される燃料流量を調整して、本体1を第1燃焼段階及び第2燃焼段階のいずれか一方の燃焼段階に設定可能である。第1燃焼段階は、本体1を第1燃焼量で燃焼させる燃焼段階である。第2燃焼段階は、本体1を第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる燃焼段階である。なお、第1燃焼段階及び第2燃焼段階の少なくとも一方が異なる燃焼量で燃焼させる複数の燃焼段階を含んでもよい。例えば、第1燃焼段階が本体1を高燃焼量で燃焼させる高燃焼段階を含み、第2燃焼段階が本体1を中燃焼量で燃焼させる中燃焼段階と低燃焼量で燃焼させる低燃焼段階とを含んでもよい。
【0049】
本実施形態において、第1燃焼量は、定められた条件で本体1の最大能力を連続して発揮させることができる燃焼量である。第2燃焼量は、第1燃焼量の25[%]以上50[%]以下の燃焼量である。
【0050】
第1判定部57Aは、圧力データ取得部53に取得された圧力データに基づいて、本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta以上か否かを判定する。蒸気圧力についての圧力閾値Taは、予め定められており記憶部59に記憶される。
【0051】
第2判定部57Bは、給水温度データ取得部51に取得された給水温度データに基づいて、エコノマイザ20に供給される給水温度が給水温度閾値Tb以上か否かを判定する。給水温度についての給水温度閾値Tbは、予め定められており記憶部59に記憶される。
【0052】
第3判定部57Cは、排ガス温度データ取得部52に取得された排ガス温度データに基づいて、エコノマイザ20から排出される排ガス温度が排ガス温度閾値Tc以上か否かを判定する。排ガス温度についての排ガス温度閾値Tcは、予め定められており記憶部59に記憶される。
【0053】
第4判定部57Dは、時間データ取得部54に取得された時間データに基づいて、ボイラ100が起動してからの経過時間が時間閾値Td以上か否かを判定する。経過時間についての時間閾値Tdは、予め定められており記憶部59に記憶される。
【0054】
[制御方法]
次に、本実施形態に係るボイラシステム1000の制御方法について説明する。図4は、本実施形態に係るボイラシステム1000の制御方法の一例を示すフローチャートである。以下の説明においては、第1号機から第5号機の5台のボイラ100を制御する例について説明する。また、以下の説明においては、ボイラ100の本体1において燃焼開始させることを適宜、稼働開始、と称し、燃焼維持させることを適宜、稼働維持、と称し、燃焼停止させることを適宜、稼働停止、と称する。
【0055】
スチームヘッダ200の圧力がヘッダ圧力センサ201によって検出される。圧力データ取得部301は、ヘッダ圧力センサ201から、スチームヘッダ200の圧力を示す圧力データを取得する(ステップS10)。
【0056】
出力制御部302は、スチームヘッダ200の圧力データに基づいて、稼働開始させるボイラ100、稼働維持させるボイラ100、及び稼働停止させるボイラ100を決定する(ステップS20)。本実施形態においては、一例として、稼働停止状態の第1号機が稼働開始され、稼働状態の第2,第3,第4号機が稼働維持され、稼働状態の第5号機が稼働停止されることとする。
【0057】
出力制御部302は、スチームヘッダ200の圧力データに基づいて、稼働させる第1,第2,第3,第4号機のボイラ100それぞれの燃焼量を決定する(ステップS30)。出力制御部302は、第1号機のボイラ100の個別制御装置50に、稼働開始及び第1号機の本体1に要求される燃焼量を示す台数制御信号を出力する(ステップS40)。
【0058】
また、出力制御部302は、第2,第3,第4号機のボイラ100の個別制御装置50のそれぞれに、稼働維持及び第2,第3,第4号機の本体1に要求される燃焼量を示す台数制御信号を出力する。また、出力制御部302は、第5号機のボイラ100の個別制御装置50に、稼働停止を示す台数制御信号を出力する。
【0059】
個別制御装置50の台数制御信号取得部56は、台数制御装置300の出力制御部302から出力された台数制御信号を取得する(ステップS50)。
【0060】
以下、一例として、第1号機から第5号機のうち第1号機のボイラ100の動作について説明する。第1号機のボイラ100の個別制御装置50の台数制御信号取得部56は、稼働開始及び第1号機の本体1に要求される燃焼量を示す台数制御信号を取得する。
【0061】
圧力データ取得部53は、蒸気圧力センサ18から、本体1の蒸気圧力を示す圧力データを取得する(ステップS60)。判定部57の第1判定部57Aは、本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta未満か否かを判定する(ステップS70)。
【0062】
ステップS70において、本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta未満であると判定されたとき(ステップS70:Yes)、判定部57は、台数制御装置300から出力された台数制御信号が示す燃焼量が第2燃料量であるか否かを判定する(ステップS80)。
【0063】
ステップS80において、台数制御装置300から出力された台数制御信号が示す燃焼量が第1燃料量よりも低い第2燃焼量であると判定されたとき(ステップS80:Yes)、個別制御装置50の燃焼制御部58は、本体1を第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を出力して第1燃焼段階に設定する(ステップS90)。
【0064】
すなわち、本実施形態においては、蒸気圧力が圧力閾値Ta未満であると判定され、ボイラ100の本体1を第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が台数制御信号取得部56に取得されたとき、燃焼制御部58は、台数制御信号をリジェクトして、ボイラ100の本体1を第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号をボイラ100の流量制御弁9に出力する。つまり、台数制御装置300で算出された燃焼量が第2燃焼量でも、蒸気圧力が低い場合、個別制御装置50は、台数制御信号をリジェクトして、ボイラ100の本体1を第1燃焼量で燃焼させる。
【0065】
ステップS70において、本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta未満ではないと判定されたとき(ステップS70:No)、及びステップS80において、台数制御信号が示す燃焼量が第2燃焼量ではないと判定されたとき(ステップS80:No)、燃焼制御部58は、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、本体1を燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する(ステップS100)。
【0066】
例えば、台数制御信号が示す燃焼量が第2燃焼量である場合、燃焼制御部58は、台数制御信号に基づいて、本体1を第2燃焼量で燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する。また、台数制御信号が示す燃焼量が第1燃焼量である場合、燃焼制御部58は、台数制御信号に基づいて、本体1を第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する。
【0067】
このように、蒸気圧力が圧力閾値Ta未満であるとき、燃焼制御部58は、台数制御信号が示す燃焼量にかかわらず、台数制御信号をリジェクトして、第1燃焼量で本体1を燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する。
【0068】
また、蒸気圧力が圧力閾値Ta以上であるとき、燃焼制御部58は、台数制御信号をリジェクトせず、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、台数制御装置300で算出された燃焼量で本体1を燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する。
【0069】
また、蒸気圧力が圧力閾値Ta未満でも、台数制御装置300で算出された燃焼量が第1燃焼量であるとき、燃焼制御部58は、台数制御信号に基づいて、第1燃焼量で本体1を燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する。
【0070】
[効果]
以上説明したように、本実施形態によれば、蒸気圧力が圧力閾値Ta未満であると判定され、ボイラ100の本体1を低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が台数制御信号取得部56に取得されたとき、個別制御装置50の燃焼制御部58は、台数制御信号をリジェクトして、ボイラ100の本体1を高い第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する。これにより、例えばボイラ100の起動時において、エコノマイザ20に供給される給水温度が低く、本体1からの排ガス温度が低い場合においても、第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号がリジェクトされ、第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を出力される。そのため、エコノマイザ20における排ガス温度の過度な低下が抑制される。したがって、エコノマイザ20における低温腐食の発生が抑制される。
【0071】
すなわち、本実施形態において、個別制御装置50は、本体1の蒸気圧力が低い場合、ボイラ100が起動時であり、給水温度が低く排ガス温度が低いとみなして、第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号を出力する。これにより、エコノマイザ20における低温腐食の発生が抑制される。
【0072】
また、本実施形態によれば、蒸気圧力が圧力閾値Ta以上であると判定されたとき、個別制御装置50の燃焼制御部58は、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、ボイラ100の本体1を燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力する。これにより、台数制御装置300において算出された燃焼量で複数のボイラ100が燃焼するため、必要蒸気量を得ることができる。
【0073】
なお、上述の実施形態においては、台数制御装置300の出力制御部302は、スチームヘッダ200の圧力データに基づいて燃焼量を算出して、台数制御信号を出力することとした。台数制御装置300の出力制御部302は、稼働中のボイラ100の本体1の圧力データに基づいて燃焼量を算出して、台数制御信号を出力してもよい。本体1の圧力データは、蒸気圧力センサ18に検出される。蒸気圧力センサ18で検出された本体1の圧力データは、個別制御装置50を介して台数制御装置300に送信される。台数制御装置300の圧力データ取得部301は、稼働中のボイラ100の本体1の圧力データを取得する。台数制御装置300の出力制御部302は、圧力データ取得部301に取得された稼動中のボイラ100の本体1の圧力データに基づいて、規定の燃焼量でボイラ100を燃焼させる台数制御信号を出力することができる。
【0074】
なお、上述の実施形態において、給水温度が給水温度閾値Tb未満であり蒸気圧力が圧力閾値Ta未満であると判定部57において判定され、ボイラ100を第1燃焼量よりも低い第2燃焼量で燃焼させる台数制御信号が台数制御信号取得部56に取得されたとき、個別制御装置50の燃焼制御部58は、台数制御信号をリジェクトして、ボイラ100の本体1を第1燃焼量で燃焼させる個別制御信号をボイラ100の流量制御弁9に出力してもよい。すなわち、台数制御装置300で算出された燃焼量が第2燃焼量でも、給水温度が低く蒸気圧力が低い場合、個別制御装置50は、台数制御信号をリジェクトして、ボイラ100の本体1を第1燃焼量で燃焼させてもよい。
【0075】
また、エコノマイザ20に供給される給水温度が給水温度閾値Tb以上であると判定されたとき又は本体1の蒸気圧力が圧力閾値Ta以上であると判定されたとき、個別制御装置50による台数制御信号のリジェクトが解除されてもよい。個別制御装置50の燃焼制御部58は、給水温度が給水温度閾値Tb以上であると第2判定部57Bにおいて判定されたとき又は蒸気圧力が圧力閾値Ta以上であると第1判定部57Aにおいて判定されたとき、台数制御信号をリジェクトせず、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、ボイラ100の本体1を燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する。給水温度が高温度になった後又は蒸気圧力が高圧力になった後、台数制御信号に基づいてボイラ100の燃焼量が調整されるため、燃焼量が第2燃焼量に調整されても、エコノマイザ20における排ガス温度の過度な低下が抑制される。したがって、エコノマイザ20における低温腐食の発生が抑制される。
【0076】
また、給水温度が給水温度閾値Ta未満且つ蒸気圧力が圧力閾値Tb未満でも、台数制御装置300で算出された燃焼量が第1燃焼量であるとき、燃焼制御部58は、台数制御信号に基づいて、第1燃焼量で本体1を燃焼させる個別制御信号をボイラ100に出力してもよい。
【0077】
なお、上述の実施形態において、排ガス温度が排ガス温度閾値Tc以上であると判定されたとき、個別制御装置50による台数制御信号のリジェクトが解除されてもよい。個別制御装置50の燃焼制御部58は、排ガス温度が排ガス温度閾値Tc以上であると第3判定部57Cにおいて判定されたとき、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、ボイラ100の本体1を燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する。排ガス温度が高温度になった後、台数制御信号に基づいてボイラ100の燃焼量が調整されるため、燃焼量が第2燃焼量に調整されても、エコノマイザ20における排ガス温度の過度な低下が抑制される。したがって、エコノマイザ20における低温腐食の発生が抑制される。
【0078】
また、燃焼停止している第1号機のボイラ100が起動してからの経過時間が時間閾値Td以上であると判定されたとき、個別制御装置50による台数制御信号のリジェクトが解除されてもよい。個別制御装置50の燃焼制御部58は、ボイラ100が起動してからの経過時間が時間閾値Td以上であると第4判定部57Dにおいて判定されたとき、台数制御信号取得部56に取得された台数制御信号に基づいて、ボイラ100の本体1を燃焼させる個別制御信号を流量調整弁9に出力する。ボイラ100が起動してから十分に時間が経過した後、台数制御信号に基づいてボイラ100の燃焼量が調整されるため、燃焼量が第2燃焼量に調整されても、エコノマイザ20における排ガス温度の過度な低下が抑制される。したがって、エコノマイザ20における低温腐食の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0079】
1…本体、2…バーナ、3…給水タンク、4…給水管、5…給水ポンプ、6…燃料タンク、7…燃料管、8…燃料ポンプ、9…流量調整弁、10…蒸気管、11…蒸気ヘッダ、13…給水温度センサ、14…排ガス温度センサ、15…流量調整弁、18…蒸気圧力センサ、19…タイマ、20…エコノマイザ、20A…入口接続部、20B…出口接続部、21…ケーシング、21A…排ガス入口、21B…排ガス出口、23…煙道、24…煙道、25…煙突、41…第1給水管、42…第2給水管、42C…屈曲部、43…第3給水管、50…個別制御装置、51…給水温度データ取得部、52…排ガス温度データ取得部、53…圧力データ取得部、54…時間データ取得部、56…台数制御信号取得部、57…判定部、57A…第1判定部、57B…第2判定部、57C…第3判定部、57D…第4判定部、58…燃焼制御部、59…記憶部、60…入出力部、100…ボイラ、200…スチームヘッダ、201…ヘッダ圧力センサ、210…蒸気管、300…台数制御装置、301…圧力データ取得部、302…出力制御部、303…記憶部、304…入出力部、500…蒸気使用設備、1000…ボイラシステム。
図1
図2
図3
図4