(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96565(P2018-96565A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】温風暖房機
(51)【国際特許分類】
F24H 3/06 20060101AFI20180525BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20180525BHJP
F23N 5/26 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
F24H3/06 302
F23N5/24 104
F23N5/26 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239114(P2016-239114)
(22)【出願日】2016年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】391055195
【氏名又は名称】関西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】今谷 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】木下 徹
(72)【発明者】
【氏名】高村 紀之
【テーマコード(参考)】
3K003
3K068
【Fターム(参考)】
3K003RA01
3K003RA04
3K003RA09
3K068NA04
3K068NA14
3K068PB03
(57)【要約】
【課題】停電等により送風機が停止して燃焼炉への空気の導入が中断された場合であっても、燃焼炉で発生する有害ガスを室外へ効率的に排出可能な温風暖房機の提供
【解決手段】温風暖房機1は、燃焼炉2と、燃焼炉2へ空気を導入するための送風機7,8と、熱交換器3と、燃焼炉2から熱交換器3へ燃焼ガスを導入する燃焼ガス管6と、燃焼ガス管6から分岐して設けられたベント配管9と、を備える。燃焼ガスは、送風機7,8の稼働により煙突を介して排出される。送風機7,8の停止時に燃焼炉2で発生した不完全燃焼ガスは、ベント配管9の煙突効果によりベント配管9を介して排出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の燃焼が行われる燃焼炉と、
前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、
前記燃焼炉の下流側に設けられた熱交換器と、
前記燃焼炉から前記熱交換器へ燃焼ガスを導入する燃焼ガス管と、
前記熱交換器の下流側に設けられて燃焼ガスを室外へ排出するための煙突と、
前記燃焼ガス管から分岐して設けられたベント配管と、を備え、
前記燃焼ガスは、前記送風機の稼働により前記煙突を介して排出され、
前記送風機の停止時に前記燃焼炉で発生した不完全燃焼ガスは、前記ベント配管の煙突効果により前記ベント配管を介して室外へ排出されることを特徴とする温風暖房機。
【請求項2】
燃料の燃焼が行われる燃焼炉と、
前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、
前記燃焼炉の下流側に設けられ、煙管を有する熱交換器と、
前記燃焼炉から前記熱交換器へ燃焼ガスを導入する燃焼ガス管と、
前記熱交換器の下流側に設けられ、燃焼ガスを室外へ排出するための煙突と、
前記燃焼ガス管から分岐して設けられたベント配管と、
前記煙管の詰まりの発生を検知する検知手段と、を備え、
前記燃焼ガスは、前記送風機の稼働により前記煙管を通過した後に前記煙突を介して排出され、
前記煙管に詰まりが生じ燃焼ガスの通過が妨げられたときは、前記燃焼ガス管における内部圧力の上昇により燃焼ガスの一部が前記ベント配管に流入し、前記検知手段は燃焼ガスの前記ベント配管への流入の有無に基づき前記煙管の詰まりの発生を検知することを特徴とする温風暖房機。
【請求項3】
前記検知手段は、前記ベント配管の内部温度を検知する温度センサを備え、前記温度センサにより検知された前記内部温度に基づき、燃焼ガスの前記ベント配管への流入の有無を検知することを特徴とする請求項2に記載の温風暖房機。
【請求項4】
前記内部温度が第1所定温度を超えた場合には、前記検知手段は報知手段を介して詰まりの発生を使用者に報知し、
前記内部温度が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度を超えた場合には、前記検知手段は前記送風機を停止させることを特徴とする請求項3に記載の温風暖房機。
【請求項5】
前記ベント配管の外面は断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の温風暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器を備えた温風暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固形燃料を用いたストーブが提案されている。これは、炉内で固形燃料を燃焼させ、炉表面からの輻射熱により室内空気を暖めるものであり、炉内で発生した燃焼ガスは煙突効果によって煙突を介して屋外へ排出される(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような輻射式のストーブは、比較的狭い空間を暖房するには十分であるが、広い空間を有する園芸ハウスには不十分であった。
【0003】
そこで、園芸ハウスにおける暖房設備として、熱交換器を用いた温風暖房機が提案されている(例えば、特許文献2及び3参照)。温風暖房機は、ファンを用いて燃焼炉に空気を取り込み、燃焼炉で発生した燃焼ガスを煙管及び煙突を介して室外へ排出する一方で、低温のハウス内空気をケーシング内に取り入れ、低温のハウス内空気と燃焼ガスとを煙管により熱交換し、ハウス内へ温風を吹き出して暖房を行うように構成されている。また、温風暖房機の燃料として、木屑や籾殻等を利用したバイオマス固形燃料が見直されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−19470号公報
【特許文献2】特開2006−317043号公報
【特許文献3】特開2016−38198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような熱交換器を用いた温風暖房機の稼働中に停電が発生すると、燃焼炉への空気の導入が停止し、燃料は不完全燃焼を起し、有害ガスが発生する。そして、熱交換器が抵抗となるために、自然通風を利用した煙突からの排出では十分に不完全燃焼ガスを排出することができず、有害ガスが室内に充満して危険な状態となる。特に固形燃料を用いる暖房機においては、重油等を燃料とするものと比較して、空気(酸素)の供給が遮断されても長時間にわたって燃料がくすぶり続けるため、有害ガス発生による事故の危険性が高くなる。
【0006】
また、熱交換器に煤が蓄積して煙管が閉塞すると、燃焼ガスが逆流して燃焼炉の隙間から室内に流れ込む虞がある。
【0007】
本発明は、停電等により送風機が停止して燃焼炉への空気の導入が中断された場合であっても、燃焼炉で発生する有害ガスを室外へ効率的に排出可能な温風暖房機の提供を目的とする。
【0008】
本発明は、熱交換器の煙管における詰まりの発生を検知可能な温風暖房機の提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る温風暖房機は、燃料の燃焼が行われる燃焼炉と、前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、前記燃焼炉の下流側に設けられた熱交換器と、前記燃焼炉から前記熱交換器へ燃焼ガスを導入する燃焼ガス管と、前記熱交換器の下流側に設けられて燃焼ガスを室外へ排出するための煙突と、前記燃焼ガス管から分岐して設けられたベント配管と、を備え、前記燃焼ガスは、前記送風機の稼働により前記煙突を介して排出され、前記送風機の停止時に前記燃焼炉で発生した不完全燃焼ガスは、前記ベント配管の煙突効果により前記ベント配管を介して室外へ排出されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る暖房機は、燃料の燃焼が行われる燃焼炉と、前記燃焼炉へ空気を導入するための送風機と、前記燃焼炉の下流側に設けられ、煙管を有する熱交換器と、前記燃焼炉から前記熱交換器へ燃焼ガスを導入する燃焼ガス管と、前記熱交換器の下流側に設けられ、燃焼ガスを室外へ排出するための煙突と、前記燃焼ガス管から分岐して設けられたベント配管と、前記煙管の詰まりの発生を検知する検知手段と、を備え、前記燃焼ガスは、前記送風機の稼働により前記煙管を通過した後に前記煙突を介して排出され、前記煙管に詰まりが生じ燃焼ガスの通過が妨げられたときは、前記燃焼ガス管における圧力上昇により燃焼ガスの一部が前記ベント配管に流入し、前記検知手段は燃焼ガスの前記ベント配管への流入の有無に基づき前記煙管の詰まりの発生を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る温風暖房機によれば、燃焼ガス管から分岐して設けられたベント配管を備え、送風機の停止時に燃焼炉で発生した不完全燃焼ガスは、ベント配管の煙突効果によりベント配管を介して室外へ排出されるので、不完全燃焼ガスが燃焼炉の隙間等から室内に漏れ出すのを防止でき、室内における一酸化炭素中毒等の発生を回避できる。
【0012】
また、本発明に係る温風暖房機によれば、煙管に詰まりが生じ燃焼ガスの通過が妨げられたときは、燃焼ガスの一部又がベント配管に流入するので、検知手段により燃焼ガスのベント配管への流入の有無に基づいて煙管の詰まりの発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る温風暖房機の概略図であって、正常運転時における空気及びガスの流れを説明する図。
【
図2】
図1に示す温風暖房機の概略図であって、停電時におけるガスの流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る温風暖房機について説明する。
図1を参照して、本実施形態の温風暖房機1は、主に園芸ハウスHに設置されて用いられるものであり、燃焼炉2と、燃焼炉2の下流側に位置する熱交換器3と、熱交換器3の下流側に位置する煙突4と、を備える。本実施形態における燃料炉2は特に回分式燃焼炉であり、燃料として例えばバイオマス固形燃料が用いられる。燃焼炉2には空気供給管5を介してハウス内空気(室内空気)が導入され、燃焼炉2で燃料が燃焼されて高温の燃焼ガスが発生する。
【0015】
熱交換器3は燃焼ガス管6を介して燃焼炉2に接続されており、燃焼炉2で発生した燃焼ガスは燃焼ガス管6を介して熱交換器3へ供給される。熱交換器3は、ケーシング31と、ケーシング31内に設けられた複数本の煙管32と、ケーシング31の上面開口部に設けられた送風機33と、を備える。各煙管32は燃焼ガス管6に接続され、燃焼ガス管6を介して供給された燃焼ガスは複数の煙管32を介して煙突4へ導かれ、煙突4から園芸ハウスH外(室外)へ排気される。送風機33は、送風ファン(図示せず)の回転によりハウス内空気をケーシング31内に取り入れると共に、煙管32を通過する燃焼ガスとの間の熱交換により温風を生成し、このようにして生成された温風はダクト34の送風口から園芸ハウスH内に流出し、暖房が行われる。
【0016】
また、空気供給管5と煙突4にはそれぞれ送風機7,8が設けられている。送風機7,8は電動式の軸流送風機であって、送風器7,8の稼働によってハウス内空気の燃焼炉2への導入及び煙突4を介した燃焼ガスの排気が促される。
【0017】
温風暖房機1は更に、燃焼ガス管6から分岐して園芸ハウスH外まで延出するベント配管9と、煙管32における詰まりの発生を検知する検知手段10と、検知手段10に接続された報知手段11と、を備え、ベント配管9の外面は断熱材12で覆われている。検知手段10は、ベント配管9の内部温度を検知する温度センサ10aと、温度センサ10aに接続された制御部10bと、を備え、制御部10bは温度センサ10aにより検知されたベント配管9の内部温度に基づき、煙管32における詰まりの発生の有無を検知する。ベント配管9の直径は、煙突4の直径よりも小さく設定されており、例えば煙突4の直径が120mm程度の場合、ベント配管9の直径は25mm程度であるのが好ましい。
【0018】
このような構成を有する温風暖房機1による暖房は次の様にして行われる。送風器7,8によって燃焼炉2へハウス内空気を導入しつつ、燃焼炉2で燃料を燃焼させる。これにより燃焼炉2で発生した燃焼ガスは、送風器7,8によって燃焼ガス管6を介して煙管32へ導入され、煙突4を介して園芸ハウスH外へ排気される。このとき、ベント配管9を介してハウス外空気(外気)も燃焼ガス管6へ導入されるが、ベント配管9の径は比較的小さいため、外気導入による実質的な問題は生じない。そして、送風機33により熱交換器3のケーシング31内に取り入れられたハウス内空気は、煙管32を通過する燃焼ガスとの間の熱交換により暖められ、ダクト34を介して園芸ハウスH内に送出される。
【0019】
次に、温風暖房機1の運転中に送風器7,8が停止した場合のガスの排出について説明する。温風暖房機1の運転中に停電等が発生して送風器7,8が停止すると、燃焼炉2への燃焼空気の供給が行われなくなり、燃焼炉2では燃料の不完全燃焼が起こり、不完全燃焼ガスが発生する。この不完全燃焼ガスは、
図2に示す様に、バイパス配管9の煙突効果によりバイパス配管9を介して園芸ハウスH外(室外)へ排出される。また、バイパス配管9の外面に設けられた断熱材12によりバイパス配管9が保温されるため、バイパス配管9の通風力(煙突効果)が維持され、不完全燃焼ガスを効果的に排出することができる。
【0020】
ここで、仮にバイパス配管9を設けないと、不完全燃焼ガスの一部は室外に排出されることなく燃焼炉2の隙間などから園芸ハウスH内に漏れ、一酸化炭素中毒のリスクが高まる。これは、熱交換器3には通風抵抗があるため、煙突4による自然通風だけでは不完全燃焼ガスの排出を十分に行うことができないのに加え、比較的径の大きい煙突4では不完全燃焼ガスが冷えやすく、十分な煙突効果を維持できないからである。
【0021】
これに対し、バイパス配管9を設けることにより、自然通風のみで不完全燃焼ガスを効果的に排出することができ、一酸化炭素中毒のリスクを回避できる。
【0022】
次に、熱交換器3の煙管32の詰まりの検知について説明する。高温の燃焼ガスが通過する燃焼ガス管6の内部温度は、1,250°程度と高温である一方、温風暖房機1の正常運転時にはベント配管9には外気が導入されるため、ベント配管9の内部温度は外気温(園芸ハウスHの室内温度(例えば、25°程度))とほぼ等しい。しかしながら、煤の付着等により煙管32に詰まりが生じると、燃焼ガスが十分に煙管32を通過せず、燃焼ガス管6の内部圧力が高くなり、燃焼ガスの一部がベント配管9内に導入される。このようにして高温の燃焼ガスがベント配管9に流入すると、ベント配管9の内部温度が上昇する。よって、温度センサ10aを用いてベント配管9の内部温度をモニタすることで、燃焼ガスの燃焼ガス管6への流入の有無、ひいては煙管32における詰まりの発生の有無を検知することができる。また、熱交換器3における煤の蓄積(煙管32の詰まりの程度)が増すほど、ベント配管9に流入する燃焼ガスの量が増え、ベント配管9の内部温度も高くなる。よって、ベント配管9の内部温度に基づいて、煙管32の詰まりの程度も検出することができる。
【0023】
本実施形態では、温度センサ10aによる検知温度(温度センサ10aにより検知されたベント配管9の内部温度)が第1所定温度を超えた場合、制御部10bは報知手段11を駆動し、煤詰まりの発生を使用者に報知し、使用者に対して熱交換器3の清掃を促す。報知手段11としては、発光ランプの点灯や報知音の発生等により煤詰まりの発生を報知できればその形態に限定はない。また、温度センサ10aによる検知温度が第2所定温度を超えた場合、制御部10bは送風機7,8を停止させ、燃焼炉2への空気の供給を遮断することによって、燃焼ガスが室内へ漏れるのを防止する。
【0024】
ここで、第1所定温度としては、100°〜200°とするのが好ましい。100°以上であれば、煤詰まりの発生がほぼ確実だからである。また、第2所定温度としては、熱交換器3(煙管32)が完全に閉塞する一歩手前の温度とするのが好ましく、具体的には201°〜300°とするのが好ましい。
【0025】
以上、本発明の実施形態に係る温風暖房機について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0026】
例えば、上記実施形態においては送風機7,8を用いたが、何れか一方の送風機のみを用いてもよい。また、燃料はバイオマス燃料に限定されず、他の燃料であってもよい。
【0027】
また、上記実施形態においては、検知手段10はベント配管9の内部温度に基づきベント配管9への燃焼ガスの流入を検出したが、ベント配管9への燃焼ガスの流入を検出できれば、その検出方法に制限はない。
【符号の説明】
【0028】
1 温風暖房機
2 燃焼炉
3 熱交換器
4 煙突
6 燃焼ガス管
7,8 送風機
9 ベント配管
10 検知手段
10a 温度センサ
11 報知手段
12 断熱材