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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96736(P2018-96736A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】変位計
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/26 20060101AFI20180525BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   G01D5/26 J
   G01B11/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-239061(P2016-239061)
(22)【出願日】2016年12月9日
(71)【出願人】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
【Fターム(参考)】
2F065AA31
2F065BB16
2F065FF58
2F065GG07
2F065JJ18
2F065LL02
2F065PP01
2F103EC08
2F103GA15
(57)【要約】
【課題】
回転変位を検出することが出来る変位計を提供する。
【解決手段】
変位計10は、入光部と受光部に接続可能に構成された光ファイバ40と、光ファイバ40の第1部分を保持する固定保持部61と、固定保持部61に対して移動自在に設けられ、かつ、光ファイバ40の第2部分を保持する移動保持部62と、固定保持部61に対する移動保持部62の接近または離反によって生じる自らの屈曲状態に応じて検出用の光の態様を変化させるセンサ素子63と、回転軸72に軸支されて回転運動自在に設けられた回転運動部材71と、回転運動部材71の回転運動の発生に伴って回転軸72回りに回転することにより移動保持部62を移動させる力を伝達する力伝達部74とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出用の光を入光する入光部と検出用の光を受光する受光部とに接続可能に構成された光ファイバと、
位置が固定され、かつ、光ファイバの第1部分を保持する固定保持部と、
固定保持部に対して接近または離反する方向に移動自在に設けられ、かつ、該光ファイバの第2部分を保持する移動保持部と、
固定保持部と移動保持部との間の光ファイバの第3部分に設けられ、固定保持部に対する移動保持部の接近または離反によって生じる自らの屈曲状態に応じて検出用の光の態様を変化させるセンサ素子と、
回転軸に軸支されて回転運動自在に設けられた回転運動部材と、
移動保持部と連結され、かつ、回転運動部材の回転運動の発生に伴って回転軸回りに回転することにより移動保持部を移動させる力を伝達する力伝達部とを備える変位計。
【請求項2】
請求項1記載の変位計において、
前記回転運動部材に回転運動が生じていない状態において前記移動保持部の位置を所定の位置に位置させる位置調節部を備える変位計。
【請求項3】
請求項1又は2記載の変位計において、
固定保持部及び移動保持部の間の光ファイバと回転運動部材との間に設けられた仕切板を備える変位計。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項記載の変位計において、
前記回転運動部材に回転運動が発生していない状態において回転軸に対して回転運動部材が存在する方向と、固定保持部に対して移動保持部の接近または離反する方向とが平行であり、
力伝達部材が回転運動部材に対して垂直となるように連結されるとともに、移動保持部に対して前記接近または離反する方向に垂直に連結している変位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コアとクラッドからなる光ファイバである本線体と、当該光ファイバ本線体のコアとコア径が異なるコアを有した前記光ファイバセンサ本線体よりも長さが短い光ファイバである光センサ素子とを備えたセンサ用光ファイバが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の本線体と光センサ素子との間の界面における光のリークによるレーリ散乱光を測定することにより、本線体の歪み等を検出することが出来る。
【0004】
また、特許文献2には、このようなセンサ用光ファイバのセンサ素子の一方を保持する固定保持部と、固定保持部と所定の距離をおいて固定保持部に移動可能に配置され、光センサ素子を中心として前記一部と線対称の位置にあるセンサ用光ファイバの他部を保持する移動保持部とを有するセンサ用光ファイバが提案されている。
【0005】
このセンサ用光ファイバは、移動保持部が固定保持部に接近するなど、移動保持部がセンサ用光ファイバを保持する点と固定保持部が前記センサ用光ファイバを保持する点とを結ぶ方向と同一の方向に応力が印加されたとき、その応力に応じて光センサ素子を中心としてセンサ用光ファイバを屈曲させ、当該応力が解除されたとき、屈曲状態から復帰させる機構を有する。
【0006】
このセンサ用光ファイバにおいては、移動保持部に連結された測定対象に歪みが生じると、移動保持部が固定保持部に接近して光センサ素子が屈曲し、センサ用光ファイバに光伝送の損失が生じる。換言すれば、センサ用光ファイバに接続された光源と受光素子で光伝送の損失を検出することにより、移動保持部に連結された測定対象の歪みを検出することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3180959号公報
【特許文献2】特許第4310606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、移動保持部に連結された測定対象が固定保持部に接近するような直線的な変位であれば検出できるものの、回転変位の検出は難しかった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、回転変位を検出することが出来る変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の変位計は、
検出用の光を入光する入光部と検出用の光を受光する受光部とに接続可能に構成された光ファイバと、
位置が固定され、かつ、光ファイバの第1部分を保持する固定保持部と、
固定保持部に対して接近または離反する方向に移動自在に設けられ、かつ、該光ファイバの第2部分を保持する移動保持部と、
固定保持部と移動保持部との間の光ファイバの第3部分に設けられ、固定保持部に対する移動保持部の接近または離反によって生じる自らの屈曲状態に応じて検出用の光の態様を変化させるセンサ素子と、
回転軸に軸支されて回転運動自在に設けられた回転運動部材と、
移動保持部と連結され、かつ、回転運動部材の回転運動の発生に伴って回転軸回りに回転することにより移動保持部を移動させる力を伝達する力伝達部とを備える。
【0011】
当該構成の変位計によれば、回転運動部材の回転運動の発生に伴って力伝達部が回転軸回りに回転することにより、前記移動保持部に対して力が伝達される。この力に応じて、移動保持部が移動することにより、移動保持部が固定保持部に対して接近または離間する。これにより、固定保持部の位置は固定されているので、移動保持部の移動に伴い、固定保持部と移動保持部との間の光ファイバの第3部分に設けられたセンサ素子が屈曲する。このセンサ素子の屈曲状態に応じて、入光部から入光された検出用の光の態様が変化する。この結果、受光部において受光される検出用の光の態様も変化する。
【0012】
換言すれば、当該構成の変位計によれば、受光部において受光される検出用の光の態様の変化により、回転軸に軸支された回転運動部材の回転運動、すなわち回転変位を検出することが出来る。
【0013】
本発明の変位計において、
前記回転運動部材に回転運動が生じていない状態において前記移動保持部の位置を所定の位置に位置させる位置調節部を備えることが好ましい。
【0014】
当該構成の変位計によれば、位置調節部によって、回転運動部材に回転運動が生じていない状態において移動保持部の位置が所定の位置に位置する。これにより、回転運動部材に回転運動が生じていない状態において移動保持部と固定保持部との距離が一定に保たれ、その間に存在するセンサ素子の屈曲状態も一定に保たれる。
【0015】
これにより、回転運動部材に回転運動が生じていない状態において受光部で受光される検出用の光の態様が一定の態様となる。この結果、受光部で受光される検出用の光の態様が当該一定の態様か否かを判別することにより、容易に回転運動部材に回転運動の発生の有無、すなわち、回転変位の発生の有無を検出することが出来る。
【0016】
本発明の変位計において、
固定保持部及び移動保持部の間の光ファイバと回転運動部材との間に設けられた仕切板を備えることが好ましい。
【0017】
当該構成の変位計によれば、固定保持部及び移動保持部の間の光ファイバと回転運動部材との間に設けられた仕切板によって、光ファイバの屈曲態様と回転運動部材の動作との干渉の発生が回避される。これにより、光ファイバと回転運動部材との干渉によってセンサ素子が屈曲することが回避されるので、センサ素子の屈曲態様が回転運動部材の回転態様をより反映しやすくなる。
【0018】
本発明の変位計において、
前記回転運動部材に回転運動が発生していない状態において回転軸に対して回転運動部材が存在する方向と、固定保持部に対して移動保持部の接近または離反する方向とが平行であり、
力伝達部材が回転運動部材に対して垂直となるように連結されるとともに、移動保持部に対して前記接近または離反する方向に垂直に連結していることが好ましい。
【0019】
当該構成の変位計によれば、回転軸に対して回転運動部材が存在する方向と、固定保持部に対して移動保持部の接近または離反する方向とが平行であり、力伝達部材が回転運動部材に垂直となるように連結されるとともに、前記接近または離反する方向に垂直に連結しているので、これらの部材を直方体の収容室の内部に収容することが出来る。この結果、変位計をコンパクトに構成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態の変位計の正面図。
図2図1におけるII−II断面図。
図3図2におけるIII−III断面図。なお、回転運動検出部の構成を破線で示している。
図4図2におけるIV−IV断面図。
図5図3におけるV−V断面図。
図6図6Aは、基準位置における各部材の位置を示す図、図6Bは、回転運動部材が反時計方向に回転したときの各部材の位置を示す図、図6Cは、回転運動部材が時計方向に回転したときの各部材の位置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1図6Cを参照して、本発明の変位計の実施形態を説明する。
【0022】
なお、図1図3図4図6A図6Cにおいては、図1図3図4図6A図6Cの各図の紙面右下の矢印で示されるように、紙面の上方を上とし、紙面の下方を下(地球の重力により引き寄せられる方向)とし、紙面の左方を左とし、紙面の右方を右と定義する。また、図2においては、図2の紙面右下の矢印で示されるように、紙面の上方を上とし、紙面の下方を下とし、紙面の左方を前とし、紙面の右方を後と定義する。また、図5においては、図5の紙面右下の矢印で示されるように、紙面の上方を前とし、紙面の下方を後とし、紙面の左方を左とし、紙面の右方を右と定義する。
【0023】
(構成)
図1及び図2に示されるように、変位計10は、直方体状の筐体20と、筐体20の後面に配置された取付板30とを備える。筐体20は、光ファイバ40を介してOTDR(Optical Time−Domain Reflectometer)50(又は、光源及び受光素子)に接続されている。
【0024】
図2に示されるように、筐体20は、中空に形成された収容部21と、収容部21を覆う蓋部22とを備える。筐体20は、収容部21と蓋部22との間に、仕切板23を備える。蓋部22及び仕切板23は、収容部21にねじ止めされることにより収容部21に対して固定される。蓋部22と仕切板23との間には、センサ部60が設けられている。仕切板23よりも後方の収容部21の内部には、回転運動検出部70が設けられている。
【0025】
取付板30は、筐体20の後方にねじ止めされている。変位計10は、取付板30にねじ止めされたネジ31,32を介して橋梁、トンネルの壁又は大型建造部等の測定対象物に固定されている。
【0026】
光ファイバ40は、コアとクラッドとを含む光伝搬部と光伝搬部を被覆する被覆部とを備えて構成される。コアは、クラッドよりも屈折率が高い素材で構成されており、コアの周りがクラッドで覆われている。光は、コアの屈折率とクラッドの屈折率との相違による全反射によりコア内を伝搬する。コア及びクラッドのそれぞれは、石英ガラスで形成されている。これに代えて、コア及びクラッドのそれぞれがプラスチック等の屈折率が高い素材で形成されていてもよい。被覆部は、光伝搬部を外圧から保護するため、光伝搬部を被覆している。被覆部は、例えばプラスチックで形成される。
【0027】
OTDR50は、検査用の光を光ファイバ40に入射する入光部と、レーリ散乱光等の検査用の光を受光する受光部と、受光した検査用の光に基づいて、測定対象物の推定変位量を推定する変位量推定部とを備える。OTDR50に代えて、変位計10は、LED (light−emitting diode、発光ダイオード)等の発光素子である入光部と、PD(Photodiode、フォトダイオード)等の受光素子である受光部と、受光した検査用の光に基づいて、測定対象の推定変位量を推定する変位量推定部とを備えてもよい。
【0028】
図3に示されるように、光ファイバ40は、筐体20の内部かつ仕切板23の前方において、上方に設けられた接続口41から伸びた内部光ファイバ42が、おおよそ2回転して再度接続口41に戻るように構成されている。
【0029】
この内部光ファイバ42は、接続口41から右方向にぐるりと回った後、左下において固定保持部61に一部(第1部分)を保持されている。内部光ファイバ42は、固定保持部61からみると右方向への屈曲した部分が設けられ、その先で移動保持部62に一部(第2部分)を保持されている。固定保持部61と、移動保持部62とは、上下方向に所定の距離を置いて設けられているが、左右方向及び前後方向の位置はほとんど同一である。
【0030】
固定保持部61は、その位置が仕切板23に対して例えばネジなどで固定されている。
【0031】
移動保持部62は、仕切板23に設けられた縦長の開口23aの中で上下方向に移動自在に設けられて、固定保持部61に対して接近または離反する方向に移動自在になっている。より詳しくは、移動保持部62は、後述する回転運動検出部70の軸72回りに回転することにより、固定保持部61に対して接近または離反する方向にも移動できるように構成されている。
【0032】
固定保持部61と移動保持部62との間の内部光ファイバ42は、屈曲時の被覆部によるヒステリシスの影響を軽減または防止するため、光伝搬部を露出させたものとしてもよい。
【0033】
固定保持部61と移動保持部62との間における内部光ファイバ42の屈曲した部分の中心部分には、センサ素子63が設けられている。センサ素子63は、固定保持部61に対する移動保持部62の接近または離反によって生じる自らの屈曲状態に応じて内部光ファイバ42内を通過する検出用の光の態様を変化させる。
【0034】
また、センサ素子63は、径が異なるコアとこれらのコアを覆うクラッドを互いに接続させることによって形成されてもよい。このようなセンサ素子63としては、例えば、特許文献1に開示されているセンサ素子を採用しうる。固定保持部61と移動保持部62との間におけるセンサ素子63とにより、センサ部60が構成される。
【0035】
図2及び図4に示されるように、仕切板23の後方の収容部21の内部には、回転運動検出部70が設けられている。
【0036】
図4及び図5に示されるように、回転運動検出部70は、回転運動部材71と、軸72と、軸受部73と、力伝達部74と、位置調節部75とを備える。
【0037】
回転運動部材71は、高剛性の部材に感度調整用におもり71aを付けて構成されている。回転運動部材71は軸受部73を介して仕切板23に設けられた軸72に回動自在に一体に支持されている。軸受部73は、ベアリング73aを備える。
【0038】
回転運動部材71が地震等の揺れに応じて軸72回りに回転する。回転運動部材71は、その中央位置が、軸72の上下方向に引いた基準線Lに対して、軸72回りに所定角度(例えば10度)まで回転可能に構成されている。
【0039】
なお、回転運動部材71は、収容部21の外部に露出して、測定対象物と連結されることにより、測定対象物の歪みの発生に応じて回転運動するように構成されていてもよい。
【0040】
力伝達部74は、軸受部73と一体で構成された板状の高剛性の部材により構成され、軸受部73の左方の移動保持部62の台座部62a連結されている。力伝達部74は、回転運動部材71の回転に応じて、回転運動部材71の回転方向と同一の方向に回転するように構成されている。力伝達部74が回転することにより、移動保持部62が力伝達部74の回転方向と同一方向に回転し仕切板23の開口23a内で移動する。
【0041】
位置調節部75は、ロッド75a、75bと、コイルばね固定部75c、75dと、コイルばね75e、75fとを備える。ロッド75a、75bは、夫々、軸受部73に固定されている。コイルばね固定部75c、75dは、ロッド75a、75bのそれぞれの下方に、収容部21に固定されている。コイルばね75e、75fは、それぞれ、ロッド75a及びコイルばね固定部75c、又はロッド75b及びコイルばね固定部75dに連結されている。
【0042】
この位置調節部75はコイルばね75e、75fにより弾発的に回転運動部材71を軸の真下の位置に保持し、回転の基準位置に保持する。
【0043】
測定すべき変位、すなわち、揺れを生じさせる力Fは、バネ定数kとバネの伸縮量xを用いて、F=k・xと表現される。想定される最大の力F_max及び変位計の大きさ等から、想定される最大のバネの伸縮量x _maxを求め、力F_maxとバネの伸縮量x _maxと関係式F=k・x・・(1)とから、適切なバネ定数を求めることが出来る。
【0044】
ここで、軸72から回転運動部材71の重心までの長さをL1とし、軸72から力伝達部74と移動保持部62との接続部分までの長さをL2とし、移動保持部62と固定保持部61との間の内部光ファイバ42の長さをL3とする。
【0045】
この場合、長さL1に対する長さL2の比を調節することにより、計測の感度を変化させることができる。また、長さL3の調節により、感度に変化を生じさせることができるが、長さL3が短くなるとセンサ素子に与える曲率が大きくなり過ぎて破損するおそれがある。このような観点から、長さL3を所定の長さ以上にすることが好ましい。例えば、特許文献2では与える曲率半径を8mm以上としている。
【0046】
回転運動部材の質量をm、回転運動部材に発生する加速度をαとすると関係式F=mα=k・x・・(2)から、感度は式Δx/Δα=m/k‥(3)で表現される。この感度を示す式(3)と所望の測定感度とから、所望の測定感度にするための回転運動部材の質量mを決定することが出来る。
【0047】
(回転運動検出の仕組み)
次に、図6A図6Cを用いて、変位計10における回転運動検出の仕組みを説明する。
【0048】
回転運動が生じていない状態では、図6Aに示されるように、回転運動部材71が、軸受部73の真下に位置する。以下、この位置を基準位置という。
【0049】
ここから、図6Bに示されるように、例えば地震の発生などにより回転運動部材71に回転方向の力が働き、回転運動部材71が軸72回りに反時計回りに回転運動すると、軸受部73も反時計回りに回転する。軸受部73の反時計回りの回転に応じて、力伝達部74も反時計回りに回転する。力伝達部74の回転に応じて、移動保持部62に反時計回りの力が与えられ、移動保持部62も反時計回りに回転する。この結果、移動保持部62が固定保持部61に接近する方向(下方向)に移動する。移動保持部62が固定保持部61に接近すると、移動保持部62と固定保持部61との間のセンサ素子63の屈曲が大きくなり、内部光ファイバ42内を通過する検出用の光の態様が変化する。
【0050】
また、図6Cに示されるように、例えば地震の発生などにより回転運動部材71に回転方向の力が働き、回転運動部材71が軸72回りに時計回りに回転運動すると、軸受部73も時計回りに回転する。軸受部73の時計回りの回転に応じて、力伝達部74も時計回りに回転する。力伝達部74の回転に応じて、移動保持部62に時計回りの力が与えられ、移動保持部62も時計回りに回転する。この結果、移動保持部62が固定保持部61に離間する方向(上方向)に移動する。移動保持部62が固定保持部61から離間すると、移動保持部62と固定保持部61との間のセンサ素子63の屈曲が小さくなり、内部光ファイバ42内を通過する検出用の光の態様が変化する。
【0051】
OTDR50(又は光源および受光素子)において受光された検出用の光の態様の変化により、センサ素子63の屈曲状態が推定できるので、ひいては、回転運動部材71の回転状態、すなわち回転変位を検出することが出来る。
【0052】
(回転運動が生じていない場合の位置調節の仕組み)
また、図6A図6Cを参照して、回転運動が生じていない場合の位置調節の仕組みを説明する。
【0053】
例えば、回転運動部材71に外部からの力が解消された時点で、図6Bに示されるように回転運動部材71が基準位置よりも反時計回りに回転した状態にあったとする。この場合、左側のコイルばね75eは収縮し、右側のコイルばね75fは伸展した状態となっている。この時、左側のコイルばね75eからは伸展する方向への復元力(上方向への力)が生じ、右側のコイルばね75fからは収縮する方向への復元力(下方向への力)が生じる。左側のコイルばね75eと連結されたロッド75a及び右側のコイルばね75fと連結されたロッド75bを介して、軸受部73に時計回り方向の力が与えられ、時計回り方向に回転する。コイルばね75e、75fに働く力は、回転運動部材71が基準位置にある場合にゼロとなるので、回転運動部材71が基準位置となるように調節される。この結果、力伝達部74に連結された移動保持部62の位置も、当該基準位置に対応した位置となる。
【0054】
同様に、回転運動部材71に外部からの力が解消された時点で、図6Cに示されるように回転運動部材71が基準位置よりも時計回りに回転した状態にあった場合でも、回転運動部材71が基準位置となるように調節され、力伝達部74に連結された移動保持部62の位置も、当該基準位置に対応した位置となる。
【0055】
なお、位置調節部75がなくとも、地球の重力と回転運動の減衰により、回転運動部材71が基準位置となるように調節される。
【0056】
(作用効果)
当該構成の変位計10によれば、回転運動部材71の回転運動の発生に伴って力伝達部74が回転軸回りに回転することにより、移動保持部62に対して力が伝達される。この力に応じて、移動保持部62が移動することにより、移動保持部62が固定保持部61に対して接近または離間する。これにより、固定保持部61の位置は固定されているので、移動保持部62の移動に伴い、固定保持部61と移動保持部62との間の内部光ファイバ42の一部に設けられたセンサ素子63が屈曲する。このセンサ素子63の屈曲状態に応じて、内部光ファイバ42内を通過する検出用の光の態様が変化する。この結果、受光部としてのOTDR50において受光される検出用の光の態様も変化する。
【0057】
換言すれば、当該構成の変位計10によれば、OTDR50(又は光源および受光素子)において受光される検出用の光の態様の変化により、軸72に軸支された回転運動部材71の回転運動、すなわち回転変位を検出することが出来る。
【0058】
また、当該構成の変位計10によれば、位置調節部75によって、回転運動部材71に回転運動が生じていない状態において移動保持部62の位置が所定の位置に位置する。これにより、回転運動部材71に回転運動が生じていない状態において移動保持部62と固定保持部61との距離が一定に保たれ、その間に存在するセンサ素子63の屈曲状態も一定に保たれる。
【0059】
これにより、回転運動部材71に回転運動が生じていない状態においてOTDR50(又は光源および受光素子)で受光される検出用の光の態様が一定の態様となる。この結果、OTDR50(又は光源および受光素子)で受光される検出用の光の態様が当該一定の態様か否かを判別することにより、容易に回転運動部材71の回転運動の発生の有無、すなわち、回転変位の発生の有無を検出することが出来る。
【0060】
また、当該構成の変位計10によれば、固定保持部61及び移動保持部62の間の内部光ファイバ42と回転運動部材71との間に設けられた仕切板23によって、内部光ファイバ42の屈曲態様と回転運動部材71の動作との干渉の発生が回避される。これにより、内部光ファイバ42と回転運動部材71との干渉によってセンサ素子63が屈曲することが回避されるので、センサ素子63の屈曲態様が回転運動部材71の回転態様をより反映しやすくなる。
【0061】
また、当該構成の変位計10によれば、軸72に対して回転運動部材71が存在する方向(下方向)と、固定保持部61に対して移動保持部62の接近または離反する方向(上下方向)とが平行となるように構成されている。また、力伝達部74が回転運動部材71に垂直となるように連結されるとともに、前記接近または離反する方向に垂直に連結しているので、これらの部材を直方体の収容部21の内部に収容することが出来る。この結果、変位計10をコンパクトに構成することが出来る。
【0062】
また、本実施形態では、位置調節部75が相異なる方向に力を加える2つのコイルばね75e、75fを含んで構成されているので、基準位置の調節が簡素な構成で容易に行うことが出来る。
【0063】
また、本実施形態では、回転運動部材71が軸72の下方に存在するので、重力を利用して回転運動部材71の位置を基準位置に容易に調節することが可能となる。
【0064】
なお、図1及び図6A図6Cの上下方向を左右方向にして、回転運動部材71の基準位置を重力方向とを垂直にする場合、回転運動部材71の基準位置を水平に保つためには、2つのコイルばね75e、75fとして、バネ定数の比率が互いに異なったバネを使用してもよいし、初期伸長の長さすなわち引張力の比率が互いに異なったバネを使用してもよい。
【符号の説明】
【0065】
10‥変位計、40‥光ファイバ、61‥固定保持部、62‥移動保持部、63‥センサ素子、71‥回転運動部材、72‥回転軸、74‥力伝達部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6