【解決手段】超音波センサ100に用いられる半導体装置2は、圧電素子1を用いて超音波域の出力波信号W1を送信する送信部10と、圧電素子1(または他の圧電素子)を用いて超音波域の入力波信号(W2またはW3)を受信する受信部20と、送信部10及び受信部20を制御するロジック部30を有する。送信部10は、出力波信号W1にID情報を重畳し、ロジック部30は、ID情報に基づいて入力波信号(W2、W3)の自他識別を行った上で、検知対象物200の接近検知や距離測定を行う。なお、出力波信号W1の変調方式としては、PAM方式、PPM方式、または、PFM方式を採用すればよい。
前記バースト信号生成部は、前記ID情報の重畳に際して、前記バースト信号のデューティ制御、位相制御、及び、駆動周波数制御の少なくとも一つを実施することを特徴とする請求項2に記載の超音波センサ。
前記ロジック部は、前記ID情報が重畳された入力波信号の受信可否に基づいて、前記検知対象物の接近検知を行うことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の超音波センサ。
前記ロジック部は、前記ID情報が重畳された出力波信号を送信してから同ID情報が重畳された入力波信号を受信するまでの経過時間に基づいて、前記検知対象物の距離測定を行うことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の超音波センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の超音波センサでは、その近傍に他の超音波センサが存在する状況下において、他の超音波センサの出力波信号を自機の反射波信号と誤認識し、検知対象物の接近検知や距離測定に支障を来たすおそれがあった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、他の超音波センサとの間で干渉を生じにくい超音波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている超音波センサは、圧電素子を用いて超音波域の出力波信号を送信する送信部と、前記圧電素子または他の圧電素子を用いて超音波域の入力波信号を受信する受信部と、前記送信部及び前記受信部を制御するロジック部と、を有し、前記送信部は、前記出力波信号にID情報を重畳し、前記ロジック部は、前記ID情報に基づいて前記入力波信号の自他識別を行った上で、検知対象物の接近検知や距離測定を行う構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る超音波センサにおいて、前記送信部は、一次巻線に流れる駆動電流に応じて二次巻線側の前記圧電素子を駆動するトランスと、前記駆動電流を生成する電流源と、バースト信号に応じて前記駆動電流をオン/オフするスイッチと、前記バースト信号を生成するバースト信号生成部とを含む構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第2の構成から成る超音波センサにおいて、前記バースト信号生成部は、前記ID情報の重畳に際して、前記バースト信号のデューティ制御、位相制御、及び、駆動周波数制御の少なくとも一つを実施する構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第3の構成から成る超音波センサにおいて、前記バースト信号生成部は、前記ID情報の重畳に際して、前記バースト信号のパルス設定数制御を実施する構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第4の構成から成る超音波センサにおいて、前記ロジック部は、前記バースト信号の駆動周波数、デューティ、位相、及び、パルス設定数を一組として指定する構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第2の構成から成る超音波センサにおいて、前記電流源は、前記ID情報の重畳に際して、前記駆動電流の電流値制御を実施する構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1〜第6いずれかの構成から成る超音波センサにおいて、前記送信部は、前記出力波信号に通信情報も重畳する構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1〜第7いずれかの構成から成る超音波センサにおいて、前記受信部は、前記入力波信号を増幅して増幅出力信号を生成するアンプと、前記増幅出力信号をデジタル出力信号に変換するADコンバータと、を含む構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、上記第8の構成から成る超音波センサにおいて、前記受信部は、前記増幅出力信号を所定値と比較してゼロクロス検出信号を生成するコンパレータをさらに含む構成(第9の構成)にするとよい。
【0016】
また、上記第1〜第9いずれかの構成から成る超音波センサにおいて、前記ロジック部は、前記ID情報が重畳された入力波信号の受信可否に基づいて、前記検知対象物の接近検知を行う構成(第10の構成)にするとよい。
【0017】
また、上記第1〜第10いずれかの構成から成る超音波センサにおいて、前記ロジック部は、前記ID情報が重畳された出力波信号を送信してから同ID情報が重畳された入力波信号を受信するまでの経過時間に基づいて、前記検知対象物の距離測定を行う構成(第11の構成)にするとよい。
【0018】
また、本明細書中に開示されている車両は、検知対象物の接近検知や距離測定を行うための手段として、上記第1〜第11いずれかの構成から成る超音波センサを有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0019】
本明細書中に開示されている発明によれば、他の超音波センサとの間で干渉を生じにくい超音波センサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<超音波センサ>
図1は、超音波センサの全体構成を示す図である。本構成例の超音波センサ100は、外界に向けて超音波域(=人間の耳に聞こえない周波数帯域を指し、一般には20kHz以上)の出力波信号W1を送信し、その反射波信号W2を受信して検知対象物200の接近検知や距離測定を行う近接センサ(外界センサの一種)であり、圧電素子1と半導体装置2を有する。なお、近接センサで使用される駆動周波数は、一般的に30〜80kHzである。
【0022】
圧電素子1は、その両端間に印加される電圧信号に応じて機械的変位(振動)を生じる特性を持ち、出力波信号W1の送波器として機能する。また、圧電素子1は、自身に加わる機械的変位(振動)に応じてその両端間に起電力を生じる特性を持ち、反射波信号W2の受波器としても機能する。なお、圧電素子1の素材としては、ぺロブスカイト型セラミック(チタン酸バリウム、チタン酸鉛、及び、チタン酸ジルコン酸鉛など)などを好適に用いることができる。
【0023】
半導体装置2は、圧電素子1を用いて出力波信号W1の送信動作と反射波信号W2の受信動作を司る制御主体であり、送信部10と、受信部20と、ロジック部30と、を集積化して成る。また、半導体装置2は、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、出力端子DRV1及びDRV2と入力端子INP及びINNを有する。
【0024】
送信部10は、出力端子DRV1と出力端子DRV2との間に外部接続された圧電素子1を用いて出力波信号W1を送信する。なお、送信部10は、ロジック部30からの指示(例えばレジスタ格納値)に応じて出力波信号W1の変調処理を行うことにより、自機のID情報、若しくは、当該ID情報と任意の通信情報(=各種のデータやコマンドなど)を重畳する機能を備えている。
【0025】
受信部20は、入力端子INPと入力端子INNとの間に外部接続された圧電素子1を用いて超音波域の入力波信号(=検知対象物200から戻ってくる反射波信号W2または他の超音波センサ300から送信された出力波信号W3)を受信する。
【0026】
このように、本図の例では、出力端子DRV1と出力端子DRV2との間、及び、入力端子INPと入力端子INNとの間に、共通の圧電素子1が外部接続されており、この圧電素子1が送受波器として送信部10と受信部20の双方で共用されている。
【0027】
ただし、入力端子INPと入力端子INNとの間に、圧電素子1とは別の圧電素子を外部接続すれば、送波器と受波器を個別に用意することもできる。また、そのような必要がなく、外部端子削減を優先すべきであれば、出力端子DRV1及びDRV2と入力端子INP及びINNを一組の入出力端子として統合し、半導体装置2の内部において、当該入出力端子に送信部10と受信部20の双方を並列接続しておいてもよい。
【0028】
ロジック部30は、検知対象物200の接近検知や距離測定(=近辺に障害物があるか否かの探知)に際して、送信部10及び受信部20を制御する主体であり、特に、圧電素子1を用いて受信された入力波信号の復調処理を行う復調処理部31を含んでおり、入力波信号に自機のID情報が重畳されているか否かに基づいて、当該入力波信号の自他識別を行う機能を備えている。なお、入力波信号の復調処理については、例えば、所定期間内の入力波信号をマイコンで取り込み、これを出力波信号W1の変調方式に合わせた復調方式で復調してやればよい。
【0029】
このように、本構成例の超音波センサ100であれば、自機のID情報が重畳されている反射波信号W2を認識することができるので、他の超音波センサ300との間で干渉を生じにくくなる。以下では、超音波センサ100の送受信動作について、図示を交えながら具体的に説明する。
【0030】
<送受信動作>
図2は、超音波センサ100の送受信動作(他の超音波センサ300との干渉が生じ得る状態)を示す図である。超音波センサ100では、時刻t1で出力波信号W1を送信してから、時刻t2で反射波信号W2を受信するまでの所要時間Δt(=t2−t1)を測定することにより、超音波センサ100と検知対象物200との距離を算出することができる。また、超音波センサ100では、反射波信号W2の受信可否に基づいて、検知対象物200の接近検知(存在確認)を行うこともできる。
【0031】
なお、時刻t3において、他の超音波センサ300の出力波信号W3が自機の反射波信号W2よりも先に受信された場合、従来の超音波センサでは、これを自機の反射波信号W2と誤認識して、検知対象物の接近検知や距離測定に支障を来たすおそれがあった。
【0032】
一方、本構成例の超音波センサ100であれば、自機のID情報が重畳されていない出力波信号W3を無視することができるので、他の超音波センサ300が近傍に存在したとしても干渉を生じにくくなる。
【0033】
また、出力波信号W1に自機のID情報だけでなく任意の通信情報を重畳しておけば、超音波センサ100と他の超音波センサ300との間で、例えば、相互干渉を避けるための事前調停を行うことも可能となる。
【0034】
なお、超音波センサ100で得られた検知対象物200の接近検知結果や距離測定結果については、ホストとなる演算処理装置(CPU[central processing unit]など)に逐次出力してもよいし、或いは、不図示のレジスタに結果を格納しておき、演算処理装置から任意のタイミングで読み出すようにしてもよい。
【0035】
<送信部>
図3は、送信部10の一構成例を示す図である。本構成例の送信部10は、トランス11と、電流源12と、スイッチ13と、バースト信号生成部14と、を含む。
【0036】
トランス11は、互いに電磁結合する一次巻線L1と二次巻線L2を含み、一次巻線L1に流れる駆動電流Idに応じて二次巻線L2の両端間に接続された圧電素子1を駆動する。このように、送信部10の増幅手段としてトランス11を用いることにより、送信部10に供給される電源電圧がそれほど高くなくても、圧電素子1を十分に駆動することができる電圧値まで、圧電素子電圧V1(=圧電素子1の両端間に印加される電圧)を高めることが可能となる。
【0037】
電流源12は、スイッチ13と接地端との間に接続されており、所定の駆動電流Idを生成する。
【0038】
スイッチ13は、トランス11の一次巻線L1と電流源12との間に接続されており、バースト信号Sbに応じて駆動電流Idのオン/オフ(=本図の例では、駆動電流Idが流れる電流経路の導通/遮断)を行う。
【0039】
バースト信号生成部14は、スイッチ13のオン/オフ駆動を行うためのバースト信号Sb(=駆動パルス信号)を生成する。なお、バースト信号Sbは、所定の駆動周波数Fdで間欠駆動される矩形波状、三角波状、若しくは、正弦波状の電圧信号である。また、バースト信号生成部14は、ロジック部30から変調制御信号Sc(例えばレジスタ設定値)の入力を受け付けており、出力波信号W1に自機のID情報を重畳する際、バースト信号Sbを所定の変調方式(PAM[pulse amplitude modulation]方式、または、PPM[pulse phase modulation]方式、若しくは、PFM[pulse frequency modulation]方式)で変調する機能(詳細は後述)を備えている。
【0040】
<受信部>
図4は、受信部20の一構成例を示す図である。本構成例の受信部20は、アンプ21と、AD[analog-to-digital]コンバータ22と、コンパレータ23と、を含む。
【0041】
アンプ21は、圧電素子電圧V1(=入力波信号に相当)を増幅して増幅出力信号AMPOを生成する。なお、アンプ21としては、そのゲインを任意に調整することのできるPGA[programmable gain amplifier]などを好適に用いることができる。
【0042】
ADコンバータ22は、所定のサンプリング周波数(例えば1MHz)で動作することにより、アナログの増幅出力信号AMPOをデジタル出力信号DOに変換する。なお、デジタル出力信号DOは、ロジック部30におけるPAM方式の復調処理(=バンドパスフィルタ処理やピーク検出処理など)に供される。
【0043】
コンパレータ23は、増幅出力信号AMPOを所定値(=アンプ21の信号無出力時におけるバイアス値)と比較してゼロクロス検出信号ZXを生成する。なお、ゼロクロス検出信号ZXは、ロジック部30におけるPPM方式またはPFM方式の復調処理(=パルス数検出処理や駆動周波数検出処理)に供される。ただし、ADコンバータ22のサンプリング周波数をバースト信号Sbの駆動周波数よりも高い値(例えば数十MHz)まで高めることができるのであれば、コンパレータ23を割愛することも可能である。
【0044】
<バースト信号>
図5は、バースト信号生成部14によるバースト信号Sbの変調例を示す図である。先にも述べたように、バースト信号生成部14は、出力波信号W1に自機のID情報を重畳する際、バースト信号SbをPAM方式、PPM方式、若しくは、PFMで変調する。
【0045】
より具体的に述べると、バースト信号生成部14は、ID情報の重畳に際して、バースト信号Sbのデューティ制御(PAM変調)、位相制御(PPM変調)、及び、駆動周波数制御(PFM変調)の少なくとも一つを実施する。また、それぞれの変調方式では、データを1ビット送信するために必要な最小パルス数が異なる。そこで、バースト信号生成部14は、ID情報の重畳を行う際、必要に応じてバースト信号Sbのパルス設定数制御も実施する。
【0046】
なお、上記の変調処理を実現すべく、ロジック部30は、バースト信号Sbの駆動周波数(Fd)、デューティ(Duty)、位相(Phase)、及び、パルス設定数(Pulse Num)を一組とし、最大m組分(例えばm=8)のパラメータ群を変調制御信号Scによりバースト信号生成部14に指定する。すなわち、バースト信号Sbの変調方式については、自由に組み合わせることが可能である。
【0047】
以下では、本図に即して、非変調時(例えばデータ”0”送信時)と変調時(例えばデータ”1”送信時)との間で、バースト信号Sbにどのような違いがあるかを説明する。
【0048】
バースト信号SbのPAM変調を行う場合、バースト信号Sbは、データ”0”送信時にはパターン(A)でパルス駆動され、データ”1”送信時にはパターン(B)でパルス駆動される。なお、パターン(A)のバースト信号Sbは、駆動周波数:58kHz、デューティ:25%、位相:0%、パルス設定数:12とされており、パターン(B)のバースト信号Sbは、駆動周波数:58kHz、デューティ:50%、位相:0%、パルス設定数:12とされている。すなわち、PAM変調時には、バースト信号Sbのデューティが可変制御される。
【0049】
また、バースト信号SbのPPM変調を行う場合、バースト信号Sbは、データ”0”送信時には、パターン(B)−(C)の組み合わせ(=正転−反転)でパルス駆動され、データ”1”送信時には、パターン(C)−(D)の組み合わせ(=反転−反転)でパルス駆動される。なお、パターン(C)及び(D)のバースト信号Sbは、いずれも駆動周波数:58kHz、デューティ:50%、位相:50%、パルス設定数:12とされている。すなわち、PPM変調時には、バースト信号Sbの位相が可変制御される。
【0050】
また、バースト信号SbのPFM変調を行う場合、バースト信号Sbは、データ”0”送信時にはパターン(D)でパルス駆動され、データ”1”送信時にはパターン(E)でパルス駆動される。なお、パターン(E)のバースト信号Sbは、駆動周波数:60kHz、デューティ:50%、位相:50%、パルス設定数:12とされている。すなわち、PFM変調時には、バースト信号Sbの駆動周波数が可変制御される。
【0051】
なお、上記各種パラメータの設定可能範囲については、例えば、駆動周波数:30〜80kHz(Δ0.25kHz刻み)、デューティ:1.56%〜100%(Δ1.56%刻み)、位相:1.56%〜100%(Δ1.56%刻み)、及び、パルス設定数:1〜16パルス(Δ1パルス刻み)とすればよい。
【0052】
以下では、上記の各種変調方式(PAM、PPM、PFM)について、個別具体的に検証する。
【0053】
<PAM方式(デューティ制御)>
図6及び
図7は、それぞれ、PAM変調時の駆動波形(=バースト信号Sbと圧電素子電圧V1)及び反射波形(=増幅出力信号AMPO)を示す図である。
【0054】
両図で示したように、バースト信号Sbをデューティ25%で12パルス出力した後、デューティ50%に切り替えてから更に12パルス出力すると、デューティ切替(パターン(A)→(B))に応じて増幅出力信号AMPOの振幅に変化を生じることが分かる。
【0055】
特に、増幅出力信号AMPOの前半12パルス(パターン(A))と、後半12パルス(パターン(B))のうち、それぞれの過渡変化状態における数パルス分(例えば、最初の3パルス分)を除いた部分については、それぞれの振幅値を十分に比較することができる。この検証結果から、PAM変調時には、データを1ビット送信するために複数発のパルス(例えば4パルス程度)が必要であると言える。
【0056】
図8は、PAM復調時のピーク検出動作を示す図であり、バースト信号Sbのデューティを増大させていったときに、デジタル出力信号DOのピーク値(図中の菱形マークを参照)が徐々に上昇していく様子を示している。なお、本図では、ロジック部30におけるBPF[band pass filter]処理済みのデジタル出力信号DOが描写されている。
【0057】
本図で示したように、PAM復調時には、デジタル出力信号DOのピーク値をロジック部30で検出し、その検出結果に基づいてデータの論理レベル判定を行えばよい。なお、上記のピーク値検出や論理レベル判定については、ハードウェア処理を行ってもよいし、ソフトウェア処理を行ってもよい。
【0058】
<PPM方式(位相制御)>
図9及び
図10は、それぞれ、PPM変調時の反射波形(=増幅出力信号AMPO)を示す図である。なお、
図9では、位相反転時(正転−反転時)の挙動が描写されており、
図10では、同位相時(反転−反転時)の挙動が描写されている。
【0059】
図9で示したように、バースト信号Sbを正転位相POS(位相:0%)で12パルス出力した後、反転位相NEG(位相:50%)に切り替えてから更に12パルス出力したとき、すなわち、バースト信号Sbをパターン(B)−(C)の組み合わせでパルス駆動したとき、位相切替タイミングを跨ぐように設定された一定期間T内のパルス数は、ほぼ7.5パルスであった。
【0060】
一方、
図10で示したように、バースト信号Sbを反転位相NEG(位相:50%)で12パルス出力した後、同じく反転位相NEG(位相:50%)で更に12パルス出力したとき、すなわち、バースト信号Sbをパターン(C)−(D)の組み合わせでパルス駆動したとき、位相切替タイミングを跨ぐように設定された一定期間T内のパルス数は、ほぼ8.0パルスであった。
【0061】
このように、バースト信号Sbの位相切替(正転−反転vs反転−反転)を行うことにより、増幅出力信号AMPOのパルス間隔が半位相分(0.5パルス分)だけ変化することから、PPM変調は十分に可能であると言える。
【0062】
なお、一定期間Tを設定するためのタイミング制御としては、例えば、増幅出力信号AMPOのピーク数が所定値(例えば6ピーク目)に達した時点でパルス数のカウント動作を開始し、一定期間Tの経過後におけるパルス数を取得すればよい。また、位相切替判定の別手法としては、所定のパルス数を検出するまでの所要時間を計測し、その計測結果から位相切替が行われたか否かを判定してもよい。
【0063】
<PFM方式(駆動周波数制御)>
図11及び
図12は、それぞれ、PFM変調時の反射波形(=増幅出力信号AMPO)を示す図である。なお、
図11では58kHz駆動時(パターン(D))の挙動が描写されており、
図12では60kHz駆動時(パターン(E))の挙動が描写されている。
【0064】
図11で示したように、バースト信号Sbをパターン(D)(駆動周波数58kHz)でパルス駆動したときには、増幅出力信号AMPOの周波数が57.8kHzであった。
【0065】
一方、
図12で示したように、バースト信号Sbをパターン(E)(駆動周波数60kHz)でパルス駆動したときには、増幅出力信号AMPOの周波数が60.06kHzであった。
【0066】
このように、バースト信号Sbの駆動周波数を切り替えれば、増幅出力信号AMPOの周波数もこれに追従して変化することから、PFM変調は十分に可能であると言える。
【0067】
なお、増幅出力信号AMPOの周波数測定手法としては、例えば、
図4のコンパレータ23で生成されるゼロクロス検出信号ZXに基づいて、ロジック部30で増幅出力信号AMPOのゼロクロスタイミングを検出し、その検出結果から周波数を算出すればよい。
【0068】
<PAM方式(駆動電流制御)>
なお、先の
図6及び
図7では、PAM変調に際してバースト信号Sbのデューティ制御を行う例を挙げたが、電流源12(
図3を参照)で生成される駆動電流Idの電流値を制御することにより、出力波信号W1のPAM変調を実現することも可能である。
【0069】
図13〜
図15は、それぞれ、駆動電流制御によるPAM変調の一例を示す図であり、駆動電流Idの大きさに応じた増幅出力信号AMPOの振幅変化挙動が描写されている。
【0070】
図13で示したように、Id=161mAであるときには、増幅出力信号AMPOの安定時振幅が約60Vppとなる。また、
図14で示したように、Id=331mAであるときには、増幅出力信号AMPOの安定時振幅が約100Vppとなる。また、
図15で示したように、Id=496mAであるときには、増幅出力信号AMPOの安定時振幅が約160Vppとなる。
【0071】
このように、駆動電流Idの電流値を切り替えれば、増幅出力信号AMPOの安定時振幅もこれに追従して変化することから、駆動電流制御によるPAM変調は十分に可能であると言える。
【0072】
なお、駆動電流制御によるPAM変調を実現するためには、時間軸での電流能力切替機能を電流源12に持たせておき、ID情報の重畳に際して、駆動電流Idの電流値制御を実施すればよい。また、駆動電流値Idの設定可能範囲については、例えば、96mA〜600mA程度とすればよい。
【0073】
<車両用ソナー>
図16は、車両の外観図である。車両Xのフロントバンパーには、その左右角部と中央部にそれぞれフロントソナーX1(L、R、C)が設けられている。また、車両Xのリアバンパーにも、その左右角部と中央部にそれぞれバックソナーX2(L、R、C)が設けられている(ただし、図示の便宜上、バックソナーX2R及びX2Cは不図示)。
【0074】
このように、車両XにフロントソナーX1(L、R、C)及びバックソナーX2(L、R、C)を搭載することにより、車両Xの周囲における検知対象物(=障害物、他車、または、通行人など)の接近検知や距離測定を行うことができるので、ドライバーの安全運転を支援することが可能となる。
【0075】
なお、上記のフロントソナーX1(L、R、C)及びバックソナーX2(L、R、C)としては、それぞれ、これまでに説明してきた超音波センサ1を適用することができる。
【0076】
<その他の変形例>
また、上記の実施形態では、超音波センサ1を車両用ソナーとして適用する例を挙げたが、超音波センサ1の適用対象はこれに限定されるものではなく、駐車スペース毎に超音波センサ1が設けられた駐車管理システム、湿度センサ、積雪深計、ベルトコンベアの物体検知器、タンク注水時の液量検知器、自動ドアや侵入監視装置などの人体センサ、若しくは、各種の変位計測器などにも広く適用することが可能である。
【0077】
このように、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。