特開2018-96894(P2018-96894A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

特開2018-96894車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム
<>
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000003
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000004
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000005
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000006
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000007
  • 特開2018096894-車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96894(P2018-96894A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/06 20060101AFI20180525BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
   G01M17/06
   B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-243068(P2016-243068)
(22)【出願日】2016年12月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石神 直大
(57)【要約】
【課題】急旋回時の初期応答時の安定性又は限界域での挙動を評価可能な車両操縦安定性能評価方法を提供する。
【解決手段】方法は、直進走行時に所定の操舵角を入力し、入力後の車両に生じるヨーモーメントMz及び横加速度Ayの時系列データを取得するステップ(ST1)と、時系列データにおけるヨーモーメントMzの最大値、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得するステップ(ST3)と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進走行時に所定の操舵角を入力し、前記入力後の車両に生じるヨーモーメント及び横加速度の時系列データを取得するステップと、
前記時系列データにおけるヨーモーメントの最大値、前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得するステップと、を含む、車両操縦安定性能評価方法。
【請求項2】
前記評価値を取得するステップは、前記ヨーモーメントの最大値を評価値として取得する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記時系列データを取得するステップは、少なくとも2つの前記時系列データを取得し、
前記評価値を取得するステップは、各々の前記時系列データにおけるヨーモーメントの最大値を評価値として取得し、
前記評価値が小さい方を初期応答時の安定性が良いと判定するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価値を取得するステップは、前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得し、
前記評価値に基づいて、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定するステップを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記時系列データを取得するステップは、少なくとも2つの前記時系列データを取得し、
前記評価値を取得するステップは、各々の前記時系列データにおける前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得し、
前記評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判定するステップを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
直進走行時に所定の操舵角を入力し、前記入力後の車両に生じるヨーモーメント及び横加速度の時系列データを取得する時系列データ取得部と、
前記時系列データにおけるヨーモーメントの最大値、前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得する評価値取得部と、を備える、車両操縦安定性能評価装置。
【請求項7】
前記評価値取得部は、前記ヨーモーメントの最大値を評価値として取得する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記時系列データ取得部は、少なくとも2つの前記時系列データを取得し、
前記評価値取得部は、各々の前記時系列データにおけるヨーモーメントの最大値を評価値として取得し、
前記評価値が小さい方を初期応答時の安定性が良いと判定する判定部を備える、請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
前記評価値取得部は、前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得し、
前記評価値に基づいて、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定する判定部を備える、請求項6〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記時系列データ取得部は、少なくとも2つの前記時系列データを取得し、
前記評価値取得部は、各々の前記時系列データにおける前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得し、
前記評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判定する判定部を備える、請求項6〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
4輪自動車の限界域を含めた車両操縦安定性能を評価することが求められている。一般的に、サーキット走行でのドライバーによる官能評価が行われるが、ドライバーの主観に依存するため、客観的な評価とは言えない。
【0003】
特許文献1には、タイヤの操縦安定性を評価する手法として、ハンドルを左右に周期的に振る左右連続操舵を行い、それによりハンドルに加わる操舵トルクを測定し、評価を行う記載がある。
【0004】
特許文献2には、コースに沿って車両を走行させ、ステアリングホイールの操舵角を計測しておき、操舵角の平均値が小さいほど操縦安定性が良いと定量的に評価する手法が開示されている。
【0005】
上記いずれにも、急旋回時の初期応答時の安定性又は限界域での挙動を評価することについての記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−72172号公報
【特許文献2】特開2010−19563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、急旋回時の初期応答時の安定性又は限界域での挙動を評価可能な車両操縦安定性能評価方法、装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0009】
すなわち、本開示の車両操縦安定性能評価方法は、直進走行時に所定の操舵角を入力し、前記入力後の車両に生じるヨーモーメント及び横加速度の時系列データを取得するステップと、前記時系列データにおけるヨーモーメントの最大値、前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得するステップと、を含む。
【0010】
車両の平面運動は、車両の横滑りと回転に帰着するので、車両の運動特性は、車両のヨーモーメントと横加速度とに表れる。ヨーモーメントの最大値が初期応答時の安定性に対応し、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値が限界域での挙動に対応する。よって、これらの少なくともいずれかを評価値とすれば、車両操縦安定性能を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の車両操縦安定性能評価装置を示すブロック図。
図2】装置が実行する車両操縦安定性能評価処理ルーチンを示すフローチャート。
図3】時系列データを得るための試験又はシミュレーションに関する説明図。
図4】或るテストケースの横加速度−ヨーモーメントの線図。
図5】或るテストケースの横加速度−ヨーモーメントの線図。
図6】或るテストケースの横加速度−ヨーモーメントの線図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
[車両操縦安定性能評価装置]
装置1は、車両の操縦安定性能を評価するために使用される。
【0014】
具体的に、装置1は、図1に示すように、時系列データ取得部10と、ヨーモーメント−横加速度対応データ生成部11と、評価値取得部12と、判定部13と、を有する。これら各部10〜13は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図示しない処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
【0015】
時系列データ取得部10は、直線走行時に所定の操舵角を入力し、入力後の車両に生じるヨーモーメント及び横加速度の時系列データを取得する。図3に示すように、操舵角0°として所定速度で直進走行している時に、所定の操舵角を一気に入力し、操舵角を維持した状態にする。速度は一定速度でもよく、加速中でも制動中でもよく、適宜設定可能である。入力後の車両に生じるヨーモーメントMz及び横加速度Ayの時系列データを取得する。図3において車両の重心をCGで示している。時系列データは、ヨーモーメント及び横加速度を計測可能な一連の計測装置を設けた実車を用いた試験を行い、計測結果の時系列データを入力するようにしてもよい。計測装置は、タイヤ力、タイヤ切れ角、重心位置とタイヤ力点の位置関係からヨーモーメントMzを算出するように構成されている。また、タイヤモデル及び車両モデルを用いたシミュレーションを実行し、シミュレーションで予測したヨーモーメント及び横加速度の時系列データを入力するようにしてもよい。シミュレーション自体を本装置で実行するように構成してもよい。
【0016】
テスト条件としては、限界領域の特性評価を行うためには、限界円旋回条件になるのが好ましい。例えば、横加速度の最大値が、路面とタイヤの間の摩擦係数付近になるように設定するのがよい。一般的には、ドライ路面での路面タイヤ間の摩擦係数を考慮し、横加速度の最大値が0.6G以上となる時系列データを取得できるように条件を設定する。車両速度が20〜30km/hであっても、大操舵角を入力することで0.6G以上の高加速度に達しうる。車両速度及び入力操舵で定めるとすれば、0.6Gの最大横加速度を得るとして、50km/hで操舵角90°以上、100km/hの場合は操舵角30°以上が一例として挙げられる。
【0017】
時系列データ取得部10は、テストケースを比較評価するために、少なくとも2つの時系列データを取得するように構成することが挙げられる。勿論、単独の評価であれば、1つの時系列データを取得するのでもよい。
【0018】
図3に示すように、車両の平面運動は、車両の横滑りと回転に帰着するので、車両の運動特性は、車両のヨーモーメントと横加速度とに表れる。ヨーモーメントMz及び横加速度Ayの時系列データを取得すれば、線形領域から限界領域までの挙動を捉えることができるからである。
【0019】
横加速度対応データ生成部11は、評価値取得部12による評価値の取得処理を容易にするために、時間情報に基づきヨーモーメントと横加速度とを対応付けたヨーモーメント−横加速度対応データを生成する。これは、同時点におけるヨーモーメントの値と横加速度の値が一組に対応付けられ、複数組のデータを有する。これらのデータを、第1軸をヨーモーメントとし、第2軸を横加速度とする車両横加速度−ヨーモーメントの線図にプロットすれば、図4のような線図が得られる。図4は、一定速度での走行後にニュートラル状態で操舵角を入力した例と、一定速度での走行後に駆動(加速)させて操舵角を入力した例と、一定速度での走行後に制動(減速)させて操舵角を入力した例と、を示している。
【0020】
評価値取得部12は、時系列データにおけるヨーモーメントの最大値、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得する。本実施形態では、初期応答時の安定性及び限界域での挙動の双方を評価するために、時系列データにおけるヨーモーメントの最大値、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値、の双方を取得しているが、いずれか一方だけでもよい。
【0021】
判定部13は、評価値に基づき車両操縦安定性能を評価する。
【0022】
2つのテストケースについて初期挙動(初期応答時の安定性)を評価する場合、時系列データ取得部10が2つの時系列データを取得し、評価値取得部12が、各々の時系列データについてヨーモーメントの最大値を評価値として取得する。判定部13は、評価値を比較し、評価値が小さい方を初期応答時の安定性が良いと判定する。
【0023】
2つのテストケースについて限界域での挙動を評価する場合、評価値取得部12は、時系列データ取得部10が取得した2つの時系列データについて、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得する。判定部13は、評価値を比較し、評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判断する。また、判定部13は、評価値に基づき、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定する。評価値が負で且つ0を中心とする所定範囲外であれば、コースアウト傾向であり、評価値が正で且つ0を中心とする所定範囲外であれば、スピン傾向であり、評価値が0を中心とする所定範囲内であれば、良好であると判断することが挙げられる。
【0024】
図4に示す例の初期応答時の安定性について、ヨーモーメントMzの最大値は、駆動状態、制動状態、ニュートラルの順に次第に大きくなっている。したがって、この3つのテストケースでは、駆動状態が最も初期応答時の安定性がよいと、判定部13は判断する。
【0025】
図4に示す例の限界域での挙動について、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値は、いずれも負値であり、0から大きく離れている。よって、判定部13は、これらのテストケースについて、コースアウト傾向であると判断する。また、3つのテストケースのうちニュートラルが最も0に近い。よって、判定部13は、ニュートラルが、限界域での挙動が最も安定していると判断する。
【0026】
図5は、SUV車両モデル、タイヤサイズ225/60R18のCarSim内製タイヤモデルを用い、速度120km/h、操舵角120°として、シミュレーションによって算出した時系列データを示す。スリップ角に対して時間遅れがない仮想タイヤ(緩和長さ0m)と、時間遅れがあるタイヤ(緩和長さ1m)との2つのテストケースである。
【0027】
図5に示す例の初期応答時の安定性について、ヨーモーメントMzの最大値は、緩和長0mの方が緩和長1mよりも小さい。よって、判定部13は、緩和長0mの方が、初期応答時の安定性が良いと判定する。時間遅れが小さいことは、後輪により早く横力が発生するので、安定性が良いことを意味し、判定部13の判定結果が正しいことが分かる。
【0028】
図5に示す例の限界域での挙動について、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値は、いずれも負値であり、緩和長0mの方が、評価値が0に近い。よって、判定部13は、緩和長0mの方が、限界域での挙動が安定していると判定する。
【0029】
図6は、SUV車両モデル、タイヤサイズ225/60R18のMFタイヤモデルを用い、速度120km/h、操舵角120°として、シミュレーションによって算出した時系列データを示す。オフロードタイヤ(ローグリップ)と、スポーツタイヤ(ハイグリップ)との2つのテストケースである。
【0030】
図6に示す例の初期応答時の安定性について、ヨーモーメントMzの最大値は、オフロードタイヤもスポーツタイヤもほぼ同じである。よって、判定部13は、両者の初期応答時の安定性が同じであると判定する。
【0031】
図6に示す例の限界域での挙動について、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値は、いずれも負値であり、スポーツタイヤの方が、評価値が0に近い。よって、判定部13は、いずれもコースアウト傾向であると判定し、スポーツタイヤの方が、限界域での挙動が安定していると判定する。
【0032】
[車両操縦安定性能評価方法]
上記装置1の動作について図1〜2を参照しつつ説明する。
【0033】
まず、ステップST1において、時系列データ取得部10は、直進走行時に所定の操舵角を入力し、入力後の車両に生じるヨーモーメント及び横加速度の時系列データを1以上取得する。
【0034】
次のステップST2において、横加速度対応データ生成部11は、時系列データに基づき、ヨーモーメント−横加速度対応データを生成する。
【0035】
次のステップST3において、評価値取得部12は、ヨーモーメントの最大値、横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を車両操縦安定性能の評価値として取得する。
【0036】
次のステップST4において、判定部13は、評価値に基づき初期応答時の安定性を判断する。
【0037】
次のステップST5において、判定部13は、評価値に基づき、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定する。
【0038】
次のステップST6において、判定部13は、評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判定する。
【0039】
ステップST4〜6は、その全てを実行してなくてもよく、順不同であり、ステップST54〜6のいずれを実行するかは任意に選択可能である。
【0040】
以上のように、本実施形態の車両操縦安定性能評価方法は、直進走行時に所定の操舵角を入力し、入力後の車両に生じるヨーモーメントMz及び横加速度Ayの時系列データを取得するステップ(ST1)と、時系列データにおけるヨーモーメントMzの最大値、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得するステップ(ST3)と、を含む。
【0041】
本実施形態の車両操縦安定性能評価装置は、直進走行時に所定の操舵角を入力し、入力後の車両に生じるヨーモーメントMz及び横加速度Ayの時系列データを取得する時系列データ取得部10と、時系列データにおけるヨーモーメントMzの最大値、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値、の少なくともいずれかを車両操縦安定性能の評価値として取得する評価値取得部12と、を備える。
【0042】
車両の平面運動は、車両の横滑りと回転に帰着するので、車両の運動特性は、車両のヨーモーメントMzと横加速度Ayとに表れる。ヨーモーメントMzの最大値が初期応答時の安定性に対応し、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントの値が限界域での挙動に対応する。よって、これらの少なくともいずれかを評価値とすれば、車両操縦安定性能を評価することが可能となる。
【0043】
本実施形態の方法において、評価値を取得するステップ(ST3)は、ヨーモーメントMzの最大値を評価値として取得する。
本実施形態の装置において、評価値取得部12は、ヨーモーメントMzの最大値を評価値として取得する。
【0044】
前輪に対する後輪の応答が良いほど、より早く後輪に横力が発生するので、ヨーモーメントが増加から減少に転じやすい。初期応答時の安定性が良い程、ヨーモーメントの最大値が小さくなる。よって、前記ヨーモーメントの最大値を評価値とすれば、評価値が小さいほど操舵に対する後輪の応答性が良いと理解できるので、初期応答時の安定性を定量的に評価可能となる。
【0045】
本実施形態の方法において、時系列データを取得するステップ(ST1)は、少なくとも2つの時系列データを取得し、評価値を取得するステップ(ST3)は、各々の時系列データにおけるヨーモーメントの最大値を評価値として取得する。評価値が小さい方を初期応答時の安定性が良いと判定するステップ(ST4)を含む。
本実施形態の装置において、時系列データ取得部10は、少なくとも2つの時系列データを取得し、評価値取得部12は、各々の時系列データにおけるヨーモーメントMzの最大値を評価値として取得する。評価値が小さい方を初期応答時の安定性が良いと判定する判定部13を備える。
【0046】
このように、ヨーモーメントMzの最大値を評価値とし、それを比較するだけで、定量的に初期応答時の安定性を評価することが可能となる。
【0047】
本実施形態の方法において、評価値を取得するステップ(ST3)は、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値を評価値として取得する。評価値に基づいて、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定するステップ(ST5)を含む。
本実施形態の装置において、評価値取得部12は、横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値を評価値として取得する。評価値に基づいて、限界域での挙動が、コースアウト傾向、スピン傾向、良好のいずれかであると判定する判定部13を備える。
【0048】
このようにすれば、限界域での挙動の特性を定量的に評価することが可能となる。
【0049】
本実施形態の方法において、時系列データを取得するステップ(ST1)は、少なくとも2つの前記時系列データを取得し、評価値を取得するステップ(ST3)は、各々の前記時系列データにおける前記横加速度が最大である時のヨーモーメントの値を評価値として取得する。評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判定するステップ(ST6)を含む。
本実施形態の装置において、時系列データ取得部10は、少なくとも2つの時系列データを取得し、評価値取得部12は、各々の時系列データにおける横加速度Ayが最大である時のヨーモーメントMzの値を評価値として取得する。評価値が0に近い方が、限界域での挙動が安定していると判定する判定部13を備える。
【0050】
このようにすれば、限界域での挙動の安定性を評価することが可能となる。
【0051】
本実施形態のプログラムは、上記方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させる。
これらプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。言い換えると、上記方法を使用しているとも言える。
【0052】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
例えば、図1に示す各部10〜13は、所定プログラムをコンピュータのCPUで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。
【0054】
横加速度対応データ生成部11は、評価値取得部12による処理の簡素化のために設けられるために省略可能である。また、判定部13は、初期応答時の安定性の評価値を得ることが目的であれば、省略可能である。
【0055】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10…時系列データ取得部
12…評価値取得部
13…判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6