【解決手段】本発明の減震デッキD1は、前壁11、後壁12および両側壁13,13の4壁が設けられた内側器具1と、内側器具1の外周において内側器具1の4壁に対応して前壁21、後壁22および両側壁23,23の4壁がそれぞれ設けられ、かつ内側器具1に対し前後両側方向に相対的に移動可能に設けられた外側器具2と、内側器具1の4壁の各外面と、外側器具2の4壁の各内面との各間にそれぞれ配置され、かつゴム弾性を有する振動吸収体41,42とを備える。内側器具1および外側器具2のいずれか一方の器具に加わった振動が、振動吸収体41,42によって吸収されることによって他方の器具に伝達するのが抑制されるよう構成されている。
前記内側器具は、前後に並んで配置される複数の内側器具構成体によって構成されるとともに、各内側器具構成体がベース上に前後方向に沿ってスライド自在にそれぞれ取り付けられ、
前記複数の内側器具構成体の各間にゴム弾性を有する振動吸収体が設けられ、
前記内側器具構成体のうち前端の内側器具構成体は、前方への移動が禁止されるとともに、後端の内側器具構成体は、後方への移動が禁止されるように構成されている請求項8に記載の減震デッキ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2等に示す従来の減震装置は、前後方向および左右方向の振動吸収機構が上下2段に重ね合わされるように配置されて形成されているため、高さ寸法が高くなってしまい、減震装置自体の大型化を来すという課題があった。特に減震装置を収納用ラックの底部に取り付けるような場合には、ラック全体の高さが高くなってしまうため、収納物の出し入れ作業が困難になり、使い勝手が悪くなるばかりか、場合によっては高さ制限のある限られたスペースにラックを設置できないおそれもあった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、前後方向および両側方向(左右方向)の振動を共に吸収できる上、高さ寸法を低くできて小型コンパクト化を図ることができる減震デッキ、ラックの減震構造および収納物荷崩れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]前壁、後壁および両側壁の4壁が設けられた内側器具と、
前記内側器具の外周において前記内側器具の4壁に対応して前壁、後壁および両側壁の4壁がそれぞれ設けられ、かつ前記内側器具に対し前後両側方向に相対的に移動可能に設けられた外側器具と、
前記内側器具の4壁の各外面と、前記外側器具の4壁の各内面との各間にそれぞれ配置され、かつゴム弾性を有する振動吸収体とを備え、
前記内側器具および前記外側器具のいずれか一方の器具に加わった振動が、前記振動吸収体によって吸収されることによって他方の器具に伝達するのが抑制されるよう構成されていることを特徴とする減震デッキ。
【0010】
[2]前記振動吸収体は、中空状に形成されている前項1に記載の減震デッキ。
【0011】
[3]前記一方の器具の両側壁に前後方向に延びるスライド溝が形成されるとともに、
前記他方の器具にその両側壁間に架橋するようにスライド軸が固定され、
前記スライド軸が前記スライド溝に溝長さ方向および軸方向に沿ってそれぞれ移動自在に収容されている前項1または2に記載の減震デッキ。
【0012】
[4]前記スライド溝は、その中間部が低位置で前後両端部が高位置となる円弧状に形成されている前項3に記載の減震デッキ。
【0013】
[5]前記振動吸収体は、前後方向の振動を吸収する前後振動吸収体と、両側方向の振動を吸収する左右振動吸収体とを備え、
前記前後振動吸収体は、前記内側器具の前壁および後壁の各外面と、前記外側器具の前壁および後壁の各内面との各間に設けられるとともに、
前記左右振動吸収体は、前記内側器具の両側壁の各外面と、前記外側器具の両側壁の各内面との各間に設けられ、
前記前後振動吸収体と前記左右振動吸収体とが一体に形成されている前項1〜4のいずれか1項に記載の減震デッキ。
【0014】
[6]前記一方の器具が前記内側器具によって構成されるとともに、前記他方の器具が前記外側器具によって構成されている前項1〜5のいずれか1項に記載の減震デッキ。
【0015】
[7]前記内側器具が設置面に固定されるベースによって構成されるとともに、
前記外側器具が前記ベースの外周および上方を覆うよう配置されるベースカバーによって構成されている前項1〜6のいずれか1項に記載の減震デッキ。
【0016】
[8]設置面に固定されるベースに前記内側器具が取り付けられている前項1または2に記載の減震デッキ。
【0017】
[9]前記内側器具は、前後に並んで配置される複数の内側器具構成体によって構成されるとともに、各内側器具構成体がベース上に前後方向に沿ってスライド自在にそれぞれ取り付けられ、
前記複数の内側器具構成体の各間にゴム弾性を有する振動吸収体が設けられ、
前記内側器具構成体のうち前端の内側器具構成体は、前方への移動が禁止されるとともに、後端の内側器具構成体は、後方への移動が禁止されるように構成されている前項8に記載の減震デッキ。
【0018】
[10]前記内側器具および前記外側器具は、その前後方向が両側方向に対し長くなるように細長形状に形成されている前項1〜9のいずれか1項に記載の減震デッキ。
【0019】
[11]設置面上に設置されるラックの減震を図るためのラックの減震構造であって、
前項1〜10のいずれか1項に記載の減震デッキにおける前記一方の器具が設置面に固定されるとともに、前記他方の器具に前記ラックの底面が固定されて、前記ラックが前記減震デッキを介して設置面に支持されていることを特徴とするラックの減震構造。
【0020】
[12]前記減震デッキがその前後方向が前記ラックの奥行き方向に一致するように配置されている前項11項に記載のラックの減震構造。
【0021】
[13]ラックの棚板に収納された収納物の落下を防止するためのラックの収納物荷崩れ防止構造であって、
前項1〜10のいずれか1項に記載の減震デッキにおける前記一方の器具が、設置面としての前記棚板に固定されて、前記他方の器具上に収納物が載置可能に構成されていることを特徴とするラックの収納物荷崩れ防止構造。
【発明の効果】
【0022】
発明[1]の減震デッキによれば、内側器具の外周に外側器具を配置して、内側器具の周囲4壁の各外面と外側器具の周囲4壁の各内面との各間にそれぞれ配置した振動吸収体によって前後方向および両側方向の振動を吸収するようにしているため、前後方向および両側方向の振動を同一の高さ位置に配置した振動吸収体によって吸収することができる。このため本発明の減震デッキは、従来のように前後方向の振動を吸収する機構と、両側方向の振動を吸収する機構とを上下2段に重ね合わせるように配置するような減震装置と比較して、高さ寸法を低く形成できて小型コンパクト化を図ることができる。
【0023】
発明[2]の減震デッキによれば、振動吸収体が中空状に形成されているため、適度な柔軟性が付与されて、振動に対し素早く応答して変形を開始するようになる。このため地震発生直後の初期振動から振動を確実に吸収できて、優れた振動吸収特性を得ることができる。
【0024】
発明[3]の減震デッキによれば、内側器具に対し外側器具を前後両側方向に移動自在に確実に支持することができる。
【0025】
発明[4]の減震デッキによれば、一方の器具に対し他方の器具が振動してスライド軸がスライド溝をスライドした際には、自重によりスライド軸はスライド溝の中間位置(初期位置)に戻ろうとする動作、いわゆる原点復帰動作が行われるため、この原点復帰動作と地震による振動とが互いの動きを打ち消し合うように作用し、より一層振動を低減することができて、より一層優れた振動吸収特性を得ることができる。
【0026】
発明[5]の減震デッキによれば、前後振動吸収体と左右振動吸収体とを一体に形成しているため、その一体品を取り付けるだけで、前後振動吸収体および左右振動吸収体の2種類の振動吸収体を取り付けることができる。このため前後振動吸収体および左右振動吸収体を別々に取り付ける場合と比較して、部品点数および取付工程数を減少させることができ、コストの削減を図ることができるとともに、振動吸収体の取付作業、ひいては減震デッキ自体の組立作業を容易に行うことができる。
【0027】
発明[6]〜[8]の減震デッキによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0028】
発明[9]の減震デッキによれば、前後方向の振動を複数の振動吸収体によって吸収することができるため、振動吸収特性をより一層向上させることができる。
【0029】
発明[10]の減震デッキによれば、一方の器具に対する他方の器具の前後方向のスライド量を左右方向のスライド量に比べて長くできるため、前後方向の振動に対しては振幅や強度が大きくともその振動を確実に軽減できようになり、前後方向の振動吸収特性をより一層向上させることができる。
【0030】
発明[11][12]のラックの減震構造によれば、既述したように減震デッキ自体の小型コンパクト化を図ることができるため、ラック全体の高さを低くでき、ラックを効率良く設置することができる。
【0031】
発明[13]のラックの収納物荷崩れ防止構造によれば、既述したように減震デッキ自体の小型コンパクト化を図ることができるため、減震デッキ上の収納スペースを大きく確保でき、その減震デッキ上に載置される収納物を効率良く収納することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である減震デッキD1の構造を説明するための図、
図2はその減震デッキD1の分解斜視図、
図3および
図4はその減震デッキD1の要部を示す断面図である。なお本実施形態においては、発明の理解を容易にするため、減震デッキD1の長さ方向を「前後方向(X方向)」と称し、水平面内において前後方向に直交する方向を「両側方向、幅方向、左右方向(Y方向)」と称するようにしている。この前後方向および両側方向は、減震デッキD1に対して使用される方向であり、減震デッキD1の前後方向および両側方向は、水平面内であればいずれの向きに配置しても良い。参考までに本実施形態の減震デッキD1は、前後方向および左右方向にそれぞれ対称形状となっており、前後の向きまたは左右の向きを変えても同じ構成となる。
【0034】
図1〜
図4に示すように本第1実施形態の減震デッキD1は、内側器具を構成するベース1と、外側器具を構成するベースカバー2とを基本的な構成要素として備えている。本実施形態においては、ベース1およびベースカバー2のいずれか一方が一方の器具を構成するとともに、残り一方(他方)が他方の器具を構成するものである。
【0035】
ベース1は前後方向に長い細長形状に形成されている。このベース1は正面断面がU字状であり、上向きに開放された溝型形状を有している。このベース1の両側の側壁13,13が左壁および右壁を構成するものである。さらにベース1の底壁における前端部および後端部には立ち上がり状に前壁11および後壁12がそれぞれ形成され、この前壁11および後壁12がベース1の前方開放部および後方開放部を閉塞するように配置されている。
【0036】
またベース1の両側壁13,13における前部および後部には、ベース1の略長さ方向(前後方向)に沿って延びるスライド溝(スロット)15がそれぞれ形成されている。このスライド溝15は前後方向の中間部が低位置で最も低く、かつ前後両端部が高位置で最も高くなるような円弧状に形成されている。
【0037】
ベースカバー2は前後方向に長い細長形状に形成されており、ベース1よりも一回り大きいサイズに形成されてベース1の前後両側および上方を外側から覆うことができるように構成されている。このベースカバー2は正面断面が逆U字状であり、下向きに開放された溝型形状を有している。このベースカバー2の両側の側壁23,23が左壁および右壁を構成するものである。さらにベースカバー2の天井壁における前端縁および後端縁には垂れ下がり状に前壁21および後壁22がそれぞれ形成され、この前壁21および後壁22がベースカバー2の前方開放部および後方開放部を閉塞するように配置されている。
【0038】
またベースカバー2の両側壁23,23における前部および後部には、上記ベース1のスライド溝15に対応して軸取付孔25が形成されている。
【0039】
このベースカバー2は以下に詳述する軸部材3を介してベース1に前後左右方向(水平方向)にスライド自在に支持されている。
【0040】
すなわち軸部材3は、ベース1のスライド溝15に挿入可能なスライド軸(スライドシャフト)31を備えている。このスライド軸31の両側部外周には、ブッシュ32が嵌め込まれるように設けられるとともに、このブッシュ32を介して、スライド軸31の外周にローラ33が軸心回りに回転自在に設けられている。
【0041】
この軸部材3におけるローラ33が、ベース1の両側壁13,13のスライド溝15,15に両側壁13,13をまたがるように挿通配置された状態で、ローラ33の両側部におけるベース1の両側壁13,13の外側にワッシャ35がスナップリング36を介して取り付けられる。これにより、ローラ33が両側方向(ローラ軸心方向)への抜け止めが図られた状態で、スライド軸31(ローラ33)がベース1のスライド溝15に溝長さ方向(略前後方向)に沿ってスライド自在ないし転動自在に取り付けられる。
【0042】
さらにベース1の前後左右および上方を覆うようにベースカバー2が配置された状態で、軸部材3におけるスライド軸31の両端面に、ベースカバー2の両側壁23,23の外側から軸取付孔25を通じてロゼットワッシャ(ロゼット座金)37がボルト38を介して固定される。これによりスライド軸31の両端がベースカバー2の両側壁23,23に固定されて、スライド軸31がベース1のスライド溝15に沿って移動することによって、ベースカバー2がベース1に対し相対的に前後方向にスライド移動するとともに、スライド軸31がベース1のスライド溝15を軸方向に移動することによって、ベースカバー2がベース1に対し相対的に両側方向(左右方向)にスライド移動できるようになっている。こうしてベースカバー2がベース1に対し相対的に水平方向(前後両側方向)に沿って移動自在に支持されている。
【0043】
なおベースカバー2がベース1に支持された状態では、ベース1の前後両側壁11,12,13,13の外側に対応して、ベースカバー2の前後両側壁21,22,23,23がそれぞれ配置されるようになっている。
【0044】
またベース1およびベースカバー2間の前部および後部には、エポキシ化天然ゴム等のゴム弾性を有する素材によって構成される振動吸収体連結品4,4がそれぞれ設けられている。
【0045】
振動吸収体連結品4は、平面視において中央に孔(中央孔)を有する略円環状(略ドーナッツ状)の前後振動吸収体41を備え、この前後振動吸収体41の外周縁部における前後方向内側には、ベース1の前後壁11,12に対向して平坦な取付面40が設けられている。さらにこの取付面40の両端には前後方向内側に突出するようにして、左右振動吸収体42,42が上記前後振動吸収体41に一体に形成されている。左右振動吸収体42,42は前後振動吸収体41と同様、平面視において中央に孔(中央孔)を有する略円環状(略ドーナッツ状)に形成されている。さらにこの左右振動吸収体42の径寸法は前後振動吸収体41の径寸法よりも小さく形成されている。
【0046】
この振動吸収体連結品4の取付面40が、ベース1の前壁11および後壁12の各外面に接合された状態で、ボルト45によってベース1の前壁11および後壁12に固定される。この固定状態においては、前側の振動吸収体連結品4の前後振動吸収体41がベース1の前壁11外面とベースカバー2の前壁21内面との間に配置されるとともに、左右振動吸収体42がベース1の前部においてベース1の両側壁13外面とベースカバー2の両側壁13内面との各間に配置される。さらに後側の振動吸収体連結品4の前後振動吸収体41がベース1の後壁12外面とベースカバー2の後壁22内面との間に配置されるとともに、左右振動吸収体42がベース1の後部においてベース1の両側壁13外面とベースカバー2の両側壁13内面との各間に配置される。
【0047】
なお本発明において、内側器具としてのベース1の前壁11,後壁12および両側壁13,13は、必ずしもベース(内側器具)1の前面、後面および両側面の全域に設ける必要はなく、少なくとも振動吸収体41,42が形成される部分に設けられていれば良い。さらにベース(内側器具)1の前後両側壁11,12,13の形状も必ずしも板状に形成する必要はなく、振動吸収体41,42を支持できる構成であれば、どのような形状であっても良く、例えば線状、帯状、網状等に形成するようにしても良い。
【0048】
また外側器具としてのベースカバー2も同様であり、前壁21,後壁22および両側壁23,23は、必ずしもベースカバー(外側器具)2の前面、後面および両側面の全域に設ける必要はなく、少なくとも振動吸収体41,42が形成される部分に設けられていれば良い。さらにベースカバー(外側器具)2の前後両側壁21,22,23の形状も必ずしも板状に形成する必要はなく、振動吸収体41,42を支持できる構成であれば、どのような形状であっても良く、例えば線状、帯状、網状等に形成するようにしても良い。
【0049】
以上のように構成された本実施形態の減震デッキD1は例えば、倉庫等に設置される収納用ラックにおいて地震時の転倒防止用等に好適に用いることができる。
【0050】
すなわち
図6に示すように、収納用ラック9を書庫や倉庫等の床面(設置面)90に設置するに際して、本実施形態の減震デッキD1を、床面におけるラック9の設置領域の左右両端位置と中間位置との3箇所にそれぞれ固定する。このとき、減震デッキD1におけるベース1をボルト等の固着具91を介して床面90に固定し、その固定された減震デッキD1のベースカバー2にボルト等の固着具91を介してラック9の底面を固定する。さらに減震デッキD1はその前後方向をラック9の奥行き方向に一致させるとともに、左右方向をラック9の間口方向に一致させるように配置する。なお本実施形態では、1台のラック9に対し3本の減震デッキD1を使用しているが、ラック1台当たりの減震デッキD1の使用数は、設置するラック9の大きさや重量等に合わせて適宜調整すれば良い。
【0051】
このようにラック9が減震デッキD1を介して床面90に設置されたラックの減震構造(転倒防止構造)において地震によって床面90が振動した際には
図5に示すように、床面90の振動に伴って減震デッキD1のベース1が振動するものの、その振動を吸収するように前後振動吸収体41および左右振動吸収体42が圧縮変形するため、その圧縮変形によって振動が吸収されてベースカバー2に振動が伝達されるのが抑制されて、ベースカバー2の振動が抑制される。このようにベースカバー2の振動が低減されるため、ラック9の振動も低減される。従ってラック9が転倒したり、ラック9に収納した収納物が落下するのを有効に防止することができる。
【0052】
また本実施形態においては、振動吸収体41,42として中央に貫通孔を有する円環状のものを採用しているため、振動吸収体41,42に適度な柔軟性が付与されて、振動に対し素早く応答して変形を開始するようになる。このため地震発生直後の初期振動から振動を確実に吸収できるため、振動吸収特性に優れ、より確実にラック9の転倒を防止することができる。
【0053】
なお本実施形態においては、振動吸収体41,42として円環状のものを採用して、初期振動に対する応答性を向上させるようにしているが、それだけに限られず、円環状以外の中空状の振動吸収体であれば、初期振動に対する応答性を向上させることができる。円環状以外の中空状としては例えば、多角環状、内部が空洞の球体状、内部が空洞のキューブ状等の矩形ブロック状、お椀状、コップ状等を例示することができる。
【0054】
また本実施形態においては、ベース1に中間位置が低位置の円弧状のスライド溝15を形成し、そのスライド溝15にベースカバー2のスライド軸31を移動自在に挿入して支持しているため、ベースカバー2がベース1に対し振動してスライド軸31がスライド溝15に沿って移動した際には、自重によりスライド軸31はスライド溝15の中間位置(初期位置)に戻ろうとする動作、いわゆる原点復帰動作が行われる。この原点復帰動作と地震による振動とが互いの動きを打ち消し合うように作用するため、より一層振動を低減することができ、より一層確実にラック9の転倒防止や、収納物の落下防止を図ることができる。
【0055】
また本実施形態においては、ベース1の周囲4側面を覆うにようベースカバー2を配置して、ベース1の外周面とベースカバー2の内周面との間に配置された前後振動吸収体41および左右振動吸収体42によって前後方向および左右方向の振動を吸収するようにしているため、前後方向の振動と左右方向の振動とを同一の高さ位置に配置した振動吸収体41,42によって吸収することができる。従って本実施形態の減震デッキD1においては、従来のように前後方向の振動を吸収する前後振動吸収機構と、左右方向の振動を吸収する左右振動吸収機構とを上下2段に重ね合わせるように配置して減震装置を形成する場合と比較して、高さ寸法を低く形成することができ、減震デッキD1自体の小型コンパクト化を図ることができる。さらに減震デッキD1を含むラック9全体の高さも低くできるため、倉庫内等の高さ制限が多少厳しいような場合であってもラック9を効率良く確実に設置できる上さらに、ラック9に対する収納物の出し入れ作業を容易に行えて利便性を確実に向上させることができる。
【0056】
またラック9のような収納装置においては構造上、地震発生時等において間口方向の振動よりも奥行き方向の振動に弱く、間口方向の振動対策よりも奥行き方向の振動対策を優先して行う必要がある。そこで本実施形態においては減震デッキD1の前後方向をラック9の奥行き方向に一致させているため、奥行き方向の振動をより確実に低減することができる。すなわち本実施形態の減震デッキD1においては、ベース1およびベースカバー2を前後方向に長い細長形状(レール形状)に形成しているため、ベース1に対しベースカバー2の前後方向のスライド量を左右方向のスライド量に比べて長くできる。このためそのスライド量に合わせて、前後振動吸収体41のサイズを左右振動吸収体42のサイズに比べて大きく形成することができ、前後方向(奥行き方向)の振動に対しては振幅や強度が大きくともその振動を確実に軽減することができる。さらにその振動低減効果と、上記円弧状のスライド溝15の原点復帰動作による振動低減効果とが相まって、前後方向の振動をより一層確実に吸収することができる。このように本実施形態の減震デッキD1は左右方向の振動吸収特性に比べて前後方向の振動吸収特性に優れているため、ラック9に採用することによって、より一層有用性を増大させることができる。
【0057】
また本第1実施形態の減震デッキD1においては、前後振動吸収体41と左右振動吸収体42とを一体に形成した振動吸収体連結品4をベース1に取り付けるようにしているため、振動吸収体連結品4を固定するだけで、前後振動吸収体41および左右振動吸収体42の2種類の振動吸収体を取り付けることができる。このため前後振動吸収体41および左右振動吸収体42を別々に取り付ける場合と比較して、部品点数を削減できて、コストを削減できるとともに、取付工程数も減少させることができ、振動吸収体41,42の取付作業、ひいては減震デッキD1の組立作業を容易に行うことができる。
【0058】
もっとも本発明においては、前後振動吸収体41と左右振動吸収体42とを必ずしも一体にする必要はなく、後の第2実施形態で説明するように、前後振動吸収体41と左右振動吸収体42とを別体にして別々に取り付けるようにしても良い。
【0059】
上記
図6に示す使用形態では、本第1実施形態の減震デッキD1を、ラック9の下側に取り付けて転倒防止等を図るようにしているが、この減震デッキD1は他の形態でも使用することができる。
【0060】
例えば
図7に示すように本第1実施形態の減震デッキD1を、ラック9の棚板95上に取り付けることもできる。
【0061】
すなわちラック9において振動対策が必要な棚板95、つまり振動対策が必要な収納物96を載置する棚板95(設置面)に、必要に応じた本数分の減震デッキD1を固定する。このとき、減震デッキD1は上記と同様、前後方向をラック9の奥行き方向に一致させるとともに、左右方向をラック9の間口方向に一致させるように配置した状態で、ベース1をボルト等の固着具を介して棚板95に固定する。
【0062】
そしてその棚板上に固定した減震デッキD1上に、収納物96を載置するように収納するものである。このラックの収納物荷崩れ防止構造においては、地震により床面90およびラック9が振動したとしても上記と同様に、減震デッキD1によってその振動が吸収されるため、振動が収納物96に伝達されるのを抑制することができる。このため収納物96自体が振動するのが抑制されて、収納物9棚板95から落下するのを有効に防止することができる。
【0063】
このラックの収納物荷崩れ防止構造においては、既述した通り減震デッキD1の高さ寸法が低いため、減震デッキD1上の収納スペースを大きく確保でき、減震デッキD1上に載置される収納物96を効率良く収納することができる。
【0064】
<第2実施形態>
図8はこの発明の第2実施形態である減震デッキD2を説明するための図である。同図に示すようにこの減震デッキD2においては、ベース1の外周面およびベースカバー2の内周面間に設けられる前後振動吸収体41と左右振動吸収体42とが別体に設けられている点が、上記
図1〜
図4に示す第1実施形態の減震デッキD1に対し実質的に相違している。
【0065】
すなわちこの減震デッキD2においては、ベース1の前壁11および後壁12の各外面と、ベースカバー2の前壁21および後壁22の各内面との各間には、平面視円環状の前後振動吸収体41が配置されている。この前後振動吸収体41は、ボルト45によってベース1の前壁11および後壁12に固定されている。
【0066】
さらにベース1の両側壁13の各外面と、ベースカバー2の両側壁23の各内面との各間には、上記前後振動吸収体41よりも一回り小さいサイズの左右振動吸収体42が配置されている。この左右振動吸収体42には、スライド軸31が貫通配置されており、スライド軸31を介して左右振動吸収体42がベースカバー2に支持されている。
【0067】
この第2実施形態の減震デッキD2において、他の構成は上記第1実施形態の減震デッキD2と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0068】
この第2実施形態の減震デッキD2においても上記第1実施形態の減震デッキD1と同様に、ラック全体の減震構造として使用できるとともに(
図6参照)、ラックの棚板上の収納物の落下を防止する構造として使用することができる(
図7参照)。
【0069】
さらにこの第2実施形態の減震デッキD2においても上記と同様に、第1実施形態の減震デッキD1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
<第3実施形態>
図9〜
図11はこの発明の第3実施形態である減震デッキD3を説明するための図である。これらの図に示すように、この第3実施形態の減震デッキD3が、上記第1および第2実施形態の減震デッキD1,D2に対し大きく相違している点は、第1および第2実施形態の減震デッキD1,D2においては、内側器具がベース1を兼用しているのに対し、本第3実施形態の減震デッキD3においては、内側器具構成体1a、1aとベース1bとが別部材によって構成されている点である。
【0071】
すなわち本第3実施形態の減震デッキD3において、ベース1bは正面断面が逆U字状で前後方向に長い溝型形状を有しており、そのベース1bにおける両側壁の前後両側部には、上記各実施形態と同様に円弧状のスライド溝15が形成されている。このベース1bの上壁上面には、前後方向に沿ってレール16が固定されている。このレール16は、正面断面U字状で溝型形状を有している。さらにこのレール16の両側壁における長さ方向の中間部には、コ字状の切欠部17が形成されるとともに、その切欠部17の内周縁部における前後両側縁が、後述する内側器具1aのストッパー27を係止できるように構成されている。
【0072】
本実施形態において、内側器具は、前後に配置される2本の内側器具構成体1a,1aによって構成されている。各内側器具構成体1a,1aは正面断面U字状で溝型形状を有しており、互いに同じ形状に形成されている。各内側器具構成体1aは、前壁11、後壁12および左右両側壁13,13を備えている。さらに前後一対の内側器具構成体1a,1aのうち、前側に配置される内側器具構成体1aの後壁12の両側部には側方に突出するようにストッパー27が形成されるとともに、後側に配置される内側器具構成体1aの前壁11の両側部には側方に突出するようにストッパー27が形成されている。
【0073】
この2本の内側器具構成体1a,1aが前後に直列状に配置されるようにして、上記ベース1bのレール16内にそれぞれ前後方向にスライド自在(摺動自在)に収容される。この収納状態においては、前側の内側器具構成体1aにおいては後壁12側のストッパー27が、レール16の切欠部17内に配置されて、このストッパー27が切欠部17の前端縁に係止することによって、前側の内側器具構成体1aがレール16に沿って前方への移動が禁止されるようになっている。さらに後側の内側器具構成体1aにおいては前壁11側のストッパー27が、レール16の切欠部17内に配置されて、このストッパー27が切欠部17における後端縁に係止することによって、後側の内側器具構成体1aがレール16に沿って後方への移動が禁止されるようになっている。
【0074】
また各内側器具構成体1a,1aの前壁11および後壁12には、前後振動吸収体41,41が固定されており、2本の内側器具構成体1a,1aはその間に2つの前後振動吸収体41,41を介して配置されている。さらに前側の内側器具構成体1aの両側壁13,13の前端部には、左右振動吸収体42,42が固定されるとともに、後側の内側器具構成体1aの両側壁13,13の後端部には、左右振動吸収体42,42が固定されている。
【0075】
この構成においては、前後2本の内側器具構成体1a,1aにおいて、レール16に対し前後方向の外側への移動(互いに離間する方向への移動)は、既述した通りストッパー27が切欠部17の端縁に係止することによって禁止される一方、前後方向の内側への移動(互いに接近する方向への移動)は、両内側器具構成体1a,1a間に介在される2つの前後振動吸収体41,41が圧縮変形する分だけ許容されるようになっている。
【0076】
ベースカバー2は正面断面が逆U字状で、溝型形状を有している。ベースカバー2は、前壁21、後壁22および左右両側壁23,23を備えている。両側壁23,23の前後両端部を除いた中間領域は下方に張り出すように形成されており、この中間領域の前後両端部には、上記ベース1bのスライド溝15にそれぞれ対応して軸取付孔25が形成されている。
【0077】
このベースカバー2が、ベース1b上の内側器具(前後一対の内側器具構成体1a,1a)の全周を覆うように配置された状態で上記実施形態と同様に、ベース1bのスライド溝15およびベースカバー2の軸取付孔25に挿通された軸部材3によって、ベース1bに対しスライド溝15の範囲内において前後方向にスライド自在に取り付けられる。この取付状態においては、ベースカバー2の前壁21が前側の内側器具構成体1aの前壁11の前方に配置されて、両前壁11,21間に上記前後振動吸収体41が配置されるとともに、ベースカバーの後壁22が後側の内側器具構成体1aの後壁12の後方に配置されて、両後壁12,22間に上記前後振動吸収体41が配置される。さらにベースカバー2の両側壁23,23が各内側器具構成体1a,1aの両側壁13,13の側方に配置されて、両側壁13,23間に上記左右振動吸収体42がそれぞれ配置される。
【0078】
この第3実施形態の減震デッキD3において、他の構成は上記第1および第2実施形態の減震デッキD1,D2と実質的に同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0079】
この第3実施形態の減震デッキD3においても上記第1および第2実施形態の減震デッキD1,D2と同様に、ラック全体の減震構造として使用できるとともに(
図6参照)、ラックの棚板上の収納物の落下を防止する構造として使用することができる。
【0080】
この第3実施形態の減震デッキD3においてベース1bに対しベースカバー2が左右方向に相対的に移動するような振動が発生した際には、上記第1および第2実施形態の減震デッキD1,D2と同様、いずれかの左右振動吸収体42が圧縮変形することによって、振動が吸収されるようになっている。
【0081】
特に本実施形態の減震デッキD3においては以下に説明するように、前後方向の振動に対し、より一層優れた振動吸収特性を備えている。例えばベース1bに対しベースカバー2が前方(
図11の右側)に移動する際には、後側の内側器具構成体1aの後壁12の前後振動吸収体41が圧縮変形すると同時に、後側の内側器具構成体1aが両内側器具構成体1a,1a間の2つの前後振動吸収体41,41を圧縮変形させつつ前方に移動する。このように計3つの前後振動吸収体41の圧縮変形によって前方への振動を吸収することができる。同様に、ベース1bに対しベースカバー2が後方(
図11の左側)に移動する際には、前側の内側器具構成体1aの前壁11の前後振動吸収体41が圧縮変形すると同時に、前側の内側器具構成体1aが両内側器具構成体1a,1a間の2つの前後振動吸収体41,41を圧縮変形させつつ後方に移動するため、計3つの前後振動吸収体41の圧縮変形によって後方への振動を吸収することができる。従って前後方向(長さ方向)の振動に対し、複数の前後振動吸収体41によって振動を吸収できるため、振動吸収特性を格段に向上させることができる。そのため本第3実施形態の減震デッキD3は、高重量大型のラックや、高重量大型の収納物であっても効率良く振動を吸収することができ、いわゆる重量ラック用の振動吸収機構として好適に採用することができる。
【0082】
なお上記第3実施形態においては、内側器具を2つ内側器具構成体によって構成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては内側器具を3つ以上の複数の内側器具構成体によって構成することも可能である。この場合、複数の内側機器構成体の各間に振動吸収体を配置する一方、複数の内側器具構成体のうち前端に配置される内側器具構成体をストッパーによって前方への移動を禁止し、後端に配置される内側器具構成体をストッパーによって後方への移動を禁止し、さらに中間に配置される内側器具構成体を前後方向に自由に移動できるように構成すれば良い。これにより内側器具構成体の各間に配置された振動吸収体によっても前後方向の振動を吸収することができる。
【0083】
ところで上記実施形態においては、本発明の減震デッキD1〜D3をラックに適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明の減震デッキは、ラック以外の設置物にも適用することができる。ラック以外の設置物としては、家具、電化製品、ショーケース(展示ケース)、自動販売機等を例示することができる。
【0084】
例えば
図12に示すように屋内(部屋)の床面90に減震デッキD1(D2,D3)を設置し、その上に基板97を介して家具9aを載置するようにしても良いし、
図13に示すようにトラックの荷台(設置面)97上に減震デッキD1(D2,D3)を設置して、その減震デッキD1(D2,D3)上に荷物を積載するようにしても良い。この場合、減震デッキD1(D2,D3)を床面90や荷台97に固定しても良いが、単に載置しておくだけでも上記と同様に減震効果を得ることができる。
【0085】
また上記実施形態の減震デッキにおいては、内側器具(ベース)側の振動を外側器具(ベースカバー)側に伝達されるのを抑制するようにしているが、それだけに限られず、本発明の減震デッキにおいては、外側器具(ベースカバー)の振動を内側器具(ベース)側に伝達するのを抑制するようにしても良い。例えば外側器具(ベースカバー)側を床面や棚板等の設置面に固定し、内側器具(ベース)側にラックや収納物を設けるようにしても良い。
【0086】
さらに上記実施形態においては、円弧状のスライド溝15をベース1側に形成するようにしているが、それだけに限られず、円弧状等のスライド溝をベースカバー側に形成して、そのスライド溝にベース側に固定したスライド軸をスライド自在に挿入するようにしても良い。
【0087】
また本発明においては、スライド溝を必ずしも円弧状に形成する必要はなく、スライド溝を前後方向に沿って直線状に形成するようにしても良い。
【0088】
さらに本発明においては、前後振動吸収体および左右振動吸収体として必ずしも中空状のものを採用する必要はなく、中実構造のものを採用するようにしても良い。