(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-96977(P2018-96977A)
(43)【公開日】2018年6月21日
(54)【発明の名称】鋼帯の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20180525BHJP
G01N 27/83 20060101ALI20180525BHJP
【FI】
G01N21/892 B
G01N27/83
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-222618(P2017-222618)
(22)【出願日】2017年11月20日
(31)【優先権主張番号】10 2016 124 522.4
(32)【優先日】2016年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513213841
【氏名又は名称】ティッセンクルップ ラッセルシュタイン ゲー エム ベー ハー
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ワイルド
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ノレン
【テーマコード(参考)】
2G051
2G053
【Fターム(参考)】
2G051AA37
2G051AB06
2G051AB07
2G051BB05
2G051CA03
2G051CA07
2G051CB01
2G051CB05
2G051DA06
2G051EA14
2G051EB09
2G051EC01
2G051ED08
2G051FA02
2G053AA13
2G053AB22
2G053BA03
2G053BA15
2G053BB03
2G053CA03
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB27
2G053CB29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鋼帯の表面欠陥および内部介在物の両方の検出を可能にする、検査方法およびシステムを提供する。
【解決手段】鋼帯1の少なくとも一方の表面は、照明され且つ少なくとも1つのカメラ2によって走査されて、走査された表面の2次元画像を画定する画像記録10が生成され、且つ画像記録は、画像処理ユニット3へ送られ、画像処理ユニットは、画像記録に対して欠陥の検出を行い、表面欠陥が検出されると、検出された表面欠陥を分類し、鋼帯は磁化され、且つ鋼帯の表面上の漏洩磁束が少なくとも1つの磁場感応漏洩磁束センサ4により検出されて鋼帯の内部における不均質性が検出され、漏洩磁束センサは、画像処理ユニットへ送られ且つ鋼帯の内部における不均質性を識別するために画像処理ユニットによって欠陥の検出が行われる漏洩磁束記録20を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯の検査方法であって、前記鋼帯(1)の少なくとも一方の表面は、走査される前記表面の2次元画像を画定する画像記録(10)を生成するために、照明され且つ少なくとも1つのカメラ(2)によって走査され、前記画像記録(10)は画像処理ユニット(3)に送られ、前記画像処理ユニット(3)は前記画像記録(10)に対して欠陥の検出を行い、表面欠陥(11)が検出された場合、検出された前記表面欠陥(11)を分類する、検査方法において、前記鋼帯(1)が磁化され、前記鋼帯(1)の内部における不均質性(21)を検出するために、前記鋼帯(1)の前記表面上の漏洩磁束が少なくとも1つの磁場感応センサ(4)により検出され、前記漏洩磁束センサ(4)が、前記画像処理ユニット(3)に送られ、且つ、前記鋼帯(1)の内部における不均質性(21)を検出するために前記画像処理ユニット(3)によって前記欠陥の検出が行われる漏洩磁束記録(20)を生成することを特徴とする、検査方法。
【請求項2】
前記画像処理ユニットにおいて不均質性が検出されると、検出された前記不均質性は分類される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像記録(10)および前記漏洩磁束記録(20)は、前記鋼帯(1)の前記欠陥の3次元画像(30)を生成するために、前記画像処理ユニット(3)において、具体的にはスーパーインポーズすることによって組み合わされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記欠陥の前記3次元画像(30)において捕捉される前記欠陥(31)は、既定の欠陥クラスに分類される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記欠陥の前記3次元画像(30)は、ディスプレイユニット(5)に表示されることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記鋼帯(1)は、前記鋼帯の移動方向に帯速度で移動していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カメラ(2)は、前記鋼帯の移動方向に対して直角に延在する複数の直線的に配置された光センサを備えたデジタルラインスキャンカメラである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記磁場漏洩を検出するために使用される前記磁場感応センサ(4)は、前記鋼帯の移動方向に対して直角に延在する複数の直線的に配置された磁気センサを備えたセンサアレイである、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記鋼帯(1)の前記表面は、光(L)を放射する照明ユニット(6)によって照明され、且つ第1のカメラ(2a)および第2のカメラ(2b)によって走査され、前記第1のカメラ(2a)は、前記鋼帯(1)の前記表面から反射される光(R)を捕捉し、前記第2のカメラ(2b)は、前記鋼帯(1)の前記表面から散乱される光(S)を捕捉することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記鋼帯(1)を磁化するために、前記鋼帯は、磁化ロール(8)の周りに案内され、且つ電磁石または永久磁石(7a)を備える磁化ユニット(7)を通過することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記漏洩磁束センサ(4)は、前記磁化ロール(8)に対向して配置され、前記鋼帯(1)は、前記磁化ロール(8)と前記漏洩磁束センサ(4)との間の隙間(9)を通過する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
鋼帯を検査するための、好ましくは請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法を実行するためのシステムであって、
−前記鋼帯(1)を照らすために使用される照明ユニット(6)と、
−前記鋼帯(1)を磁化するために使用される磁化ユニット(7)と、
−前記鋼帯(1)の表面を光学的に走査し、且つ走査された前記表面の2次元画像を画定する画像記録(10)を生成するために使用される、少なくとも1つのカメラ(2)と、
−前記カメラ(2)に接続され、データ処理のために前記画像記録(10)の送り先となり、前記画像記録(10)において光学的な表面欠陥(11)を検出し且つ検出された前記表面欠陥(11)を分類することができる、画像処理ユニット(3)と、
−前記鋼帯(1)の前記表面上の漏洩磁束を検出して漏洩磁束記録(20)を生成するために使用される少なくとも1つの磁場感応漏洩磁束センサ(4)であって、前記漏洩磁束センサ(4)が前記漏洩磁束記録(20)を前記画像処理ユニット(3)に伝送するために前記画像処理ユニット(3)に接続され、前記画像処理ユニット(3)が前記漏洩磁束記録(20)から前記鋼帯(1)の内部における不均質性(21)を検出できるように構成される、少なくとも1つの磁場感応漏洩磁束センサ(4)と、を備えるシステム。
【請求項13】
前記漏洩磁束センサ(4)は、前記漏洩磁束の密度を検出できるよう、誘導コイル、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ)、異方性磁気抵抗センサ(AMRセンサ)、トンネル磁気抵抗センサ(TMRセンサ)またはホールセンサを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記磁化ユニット(7)は、電磁石または永久磁石(7a)と、前記漏洩磁束センサ(4)から離隔して配置される磁化ロール(8)と、を備え、前記鋼帯(1)は、前記磁化ロール(8)の周りに案内され、且つ前記電磁石または前記永久磁石(7a)により生成される磁場と、前記磁化ロール(8)と前記漏洩磁束センサ(4)との間に形成される隙間(9)とを通過することを特徴とする、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記カメラ(2)は、複数の直線的に配置された光学センサを備えたデジタルラインスキャンカメラであり、前記磁場感応漏洩磁束センサ(4)は、複数の直線的に配置された磁気センサを備えたセンサアレイである、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の鋼帯の検査方法に関し、且つこの方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼帯の表面を検査するための自動システムは、従来技術から知られており、鋼帯の表面の品質は、品質管理の目的で決定される。この目的のために、生産または仕上げプロセスを終了して所定の帯速度で移動する鋼帯の表面は、移動する鋼帯の表面の2次元画像を取得するカメラによってインラインで監視される。鋼帯の冷間圧延プロセスにおいて、帯速度は、典型的には、1400m/分より速く、典型的な鋼帯仕上げプロセス、例えば鋼帯の錫メッキプラントにおいて、帯速度は、20m/分〜700m/分の範囲内である。鋼帯は、コーティングされていない場合もあれば、コーティングされている鋼帯、具体的には、腐食防止コーティングが施された鋼帯(例えば、錫メッキまたは亜鉛メッキ鋼帯)もあり、鋼帯がコーティングされている場合、カメラは、コーティングの表面品質を監視する。
【0003】
原則として、(コーティングされた、またはコーティングされていない)鋼帯の表面検査は、製造および仕上げまたはコーティングプロセスの完了直後で、鋼帯をコイルに巻き付ける前に行われる。表面検査は、概して、鋼帯が帯速度で移動している間に、特別に訓練された検査員により、鋼帯の表面を視覚的に監視することによって行われる。検査員による視覚的な表面検査を補助するために使用される自動表面検査システムは、概して、移動する鋼帯の表面を走査し且つ走査された表面の2次元画像を捕捉する複数のカメラを装備している。検査システムのカメラによって取得される鋼帯表面の画像は、画像処理プログラムによって分析され、異常または表面欠陥が検出される。鋼帯の典型的な表面欠陥には、例えば、すり傷、表面破壊欠陥、酸化、酸化スラグの筋または汚染物および異物が含まれる。鋼帯上のこのような表面欠陥は、特に、鋼帯が、製品の意図される使用中にその表面が見えるような製品の製造に使用される場合、または、製品の製造中に鋼帯が変形される場合には(例えば、深絞り加工またはしごき加工において)、変形中にこのような表面欠陥が形成製品の安定性を低下させ得ることに起因して、受け入れられないか、少なくとも望ましくない。コーティングされた鋼帯では、耐食性コーティングの表面欠陥もまた、耐食性を低下させる可能性がある。
【0004】
例えば、特許文献1は、金属製品、具体的には金属帯の平坦な表面上の欠陥を検出する方法を開示していて、これにより、検査される表面上の小さい欠陥および極小の欠陥を確実に検出して分類することが可能である。この目的のため、検査されるべき表面区画が照明ユニットによって照明され、且つ、カメラユニットを用いて、異なる露光で少なくとも2つの画像が捕捉され、画像処理ユニットへ送られる。異なる露光で取得された画像は、小さい表面欠陥および極小の表面欠陥でも検出できるように、画像処理ユニットにおいてスーパーインポーズされる。
【0005】
鋼帯の検査中に、鋼帯の使用目的に合格しないと考えられる表面欠陥が検出されれば、表面欠陥が現出している鋼帯区画を切り取って不合格品として廃棄することができる。これを可能にするには、表面検査をインラインで実行し、且つこれを極めて迅速且つ確実に分析する必要がある。自動化された表面検査システムは、移動している鋼帯の表面の2次元画像を捕捉し、且つその過程で多数の重大な表面欠陥および重要でない表面欠陥を検出するため、表面検査システムによってオンラインで捕捉された2次元画像を画像処理ユニットに送り、そこで2次元画像を分析して異常および表面欠陥を検出する必要がある。欠陥である可能性のあるものは多く、且つ欠陥はある程度かなり多様である(異常、表面欠陥、汚染および異物)ことから、画像処理ソフトウェアによって検出される多数の欠陥を分類する必要がある。所定の欠陥が累積して発生する場合、それらの表面欠陥が表面検査システムによってオンラインで検出され、画像処理ユニットにおいてオンラインで分析され且つ分類されれば、製造または仕上げプロセスに介入することが可能である。
【0006】
特許文献2は、表面データを処理し且つ帯材料の品質を分析する方法を開示しており、この方法は、このような分類を行なう。特許文献3は、移動する帯の表面を自動的に検査する方法を説明しており、この方法では、検出された欠陥をオンライン分類に基づいて迅速且つ正確に分析することができる。
【0007】
鋼帯の製造中、鋼内の非金属または酸化物の介在物(含有物)または欠陥は、生産に固有の特徴として現れる可能性がある。特に、極細または超極細範囲(各々、厚さ3mm以下、および0.6mm以下)の薄鋼板では、最小の介在物であっても欠陥品となり、よって、下流のプロセス、例えば成形プロセスにおいて不合格品となる可能性がある。鋼帯の深部に位置する内部介在物は、鋼帯の目視検査、特に従来の光学的な表面検査システムによる検査では検出しきれない。鋼帯の深部に位置する介在物を検出するには、磁気または磁気誘導検査法、例えば漏洩磁束試験法、を使用できることが知られている。例えば、特許文献4は、漏洩磁束を測定するための試験ステーションを開示している。漏洩磁束試験では、鋼帯が磁化され、磁化によって発生する漏洩磁束が磁場感応センサによって検出される。漏洩磁束の大きさは、検査される鋼帯の磁性および透磁率に依存し、および鋼帯内部に潜在的に存在する介在物に依存する。鋼帯の磁性および透磁率が一定のままであれば、磁場感応センサによって鋼帯表面上に検出される局所的に変化する漏洩磁束は、内部欠陥、具体的には、鋼帯内の非金属介在物を示すものであり得る。
【0008】
しかしながら、鋼帯の検査において、磁場感応センサによって測定される信号の分析は、原則として、単位面積当たりの欠陥数を純粋に統計的に検出することに限定される。しかしながら、概して、欠陥の性質およびモルフォロジーを決定することは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2015/022271A1
【特許文献2】EP1737587B1
【特許文献3】EP1901230A1
【特許文献4】DE202014104374U1
【発明の概要】
【0010】
これを出発点として、本発明が解決しようとする課題は、鋼帯の表面欠陥および内部介在物の両方の検出を可能にする、鋼帯を検査する方法およびそのためのシステムを利用できるようにすることにある。同時に、信頼でき且つ迅速な欠陥の検出は、具体的には、鋼帯が移動している間にオンラインで可能にされるべきである。さらに、エリア(部位)によっては表面に現れ、エリアによっては内部介在物の形で鋼帯内部にのみ存在する異なるタイプの欠陥を区別し且つ分類することも可能であるべきである。
【0011】
これらの課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法、および請求項12に記載の特徴を有するシステムによって解決される。本方法およびシステムの好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明による鋼帯の検査方法によれば、鋼帯の2つの表面のうちの少なくとも一方が照され、最低1台のカメラによって走査される。鋼帯表面の走査は、好ましくは、鋼帯が移動している間に行われ、カメラは、好ましくは、鋼帯の表面をライン毎に、鋼帯の移動方向に対して直角に走査する。その際に、カメラは、走査された表面の2次元画像を画定する画像記録を捕捉する。画像記録は、分析のための画像処理ユニットに送られ、ここで記録が分析されて欠陥が検出される。画像処理ユニットは、概して、画像記録における異常を検出し且つそれをデータベースに記憶(保存)することができる画像処理プログラムを備える。画像処理ユニットで検出された画像記録における異常は、例えば、表面欠陥を既知の異常と比較することによって典型的な表面欠陥を検出し且つこれを既知の表面欠陥に関連づけることができるようにするために、分類される。画像記録における識別された異常の分類および表面欠陥としてのそれらの分類は、例えば、画像記録における検出された異常を、分類データベースに記憶され、以前の測定結果から既知である表面欠陥と比較することによって行われる。
【0013】
画像処理ユニットによって検出可能な画像記録から得られる表面欠陥だけでなく、鋼帯内部の介在物も検出し、且つ位置を特定することができるように、本発明による方法は、鋼帯の磁化、および少なくとも1つの磁場感応漏洩磁束センサによる鋼帯表面上の漏洩磁束(漏れ磁束)の検出を行なう。これにより、鋼帯内部の不均質性を検出できるようになる。この目的のために、漏洩磁束センサは、漏洩磁束記録を生成し、これが分析のために画像処理ユニットに送られ、画像処理ユニットで欠陥の検出が行われる。鋼帯内部における、例えば非金属内部介在物の形態である不均質性の存在を検出するために、画像処理ユニットにおいて漏洩磁束記録は異常についてチェックされ、且つ画像処理ユニットにおいて異常が存在する場合にはその異常を分類して、検出された異常を鋼帯内部の不均質性に関連づけることができるようにする。これもやはり、例えば、識別された異常を欠陥データベースに記憶されている典型的(既知である)且つ分類された欠陥と比較することにより、漏洩磁束記録における識別された異常を、鋼帯内部における不均質性の形態の分類された欠陥と比較することによって行われてもよい。
【0014】
画像処理ユニットにおいて、特に、カメラの画像記録および漏洩磁束センサの漏洩磁束記録の両方について欠陥検を行う画像処理プログラムにおいて、画像記録のデータと漏洩磁束記録のデータとは、特に、これらのデータをスーパーインポーズ(重ね合わせる、合成;superimposing)することにより、鋼帯の欠陥の3次元画像を取得することができるように組み合わされてもよい。このような方法で取得された鋼帯の欠陥の3次元画像は、例えば、エリアによっては鋼帯表面に表面欠陥として現れ(且つ画像記録において見ることができる)、エリアによっては同時に、表面には見えない、鋼帯内部における不均質性(例えば、非金属介在物)の形態で存在する、連続する(隣接した;contiguous)欠陥の検出および分類を可能にする。
【0015】
欠陥の3次元画像は、好ましくは、ディスプレイユニット、例えばスクリーンに表示される。ディスプレイユニット上で欠陥の3次元画像を見ることにより、検査員は、おそらくはオンラインで、即ち鋼帯が移動している、進行中の鋼帯製造または仕上げプロセスの間に、ディスプレイユニット上で、表面欠陥および鋼帯内部の不均質性の両方を識別することができる。
【0016】
画像記録の生成に使用される少なくとも1つのカメラは、好ましくは、デジタルカメラであり、特に、鋼帯の移動方向に対して直角に延在し且つ直線的に配置された複数の光センサを有するラインスキャンカメラである。このタイプのカメラシステムを使用することにより、鋼帯の全幅に亘って延在するカメラシステムが、帯速度で移動する鋼帯の表面をライン毎に走査することから、鋼帯が移動する間に鋼帯の全表面を2次元的且つ迅速に取得することができる。
【0017】
磁場感応漏洩磁束センサもまた、鋼帯の移動方向に対して直角に延在する直線的に配置された複数の磁気センサを備えたセンサアレイであってもよい。これは、鋼帯が移動している間に、鋼帯表面上の漏洩磁束がライン毎に、且つ鋼帯表面全体にわたって2次元的に検出されることを可能にする。
【0018】
ラインスキャンカメラと、複数の直線的に配置された磁気センサを備えた磁気センサアレイとを組合せて使用することは、ラインスキャンカメラと磁気センサアレイの両方がラインごとに鋼帯表面を走査することから、特別な優位点を提供する。これは、ラインスキャンカメラにより取得されるデータ(カメラの画像記録および磁気センサアレイの漏洩磁束記録)と磁気センサアレイにより取得されるデータとが、鋼帯の(3次元)座標に関して同じ構造および同じローカルマッピングを有する、という事実に起因する。これにより、カメラで取得したデータ(画像記録および漏洩磁束記録)と磁気センサアレイで取得したデータとを、画像処理ユニットにおいて同時且つ一様に分析することが可能となる。これは、ラインスキャンカメラおよび磁気センサアレイのデータ(即ち、画像記録および漏洩磁束記録)を分析のために画像処理ユニットに同じデータ構造で送信することができ、且つ画像処理ユニットに含まれる、または画像処理ユニットで実行される画像処理プログラムは、同じデータ構造を有する記録(画像記録および漏洩磁束記録)を処理し、それらの異常を検査することができる、という事実に起因する。したがって、画像記録のデータと漏洩磁束記録のデータとをスーパーインポーズすることにより、画像処理ユニットにおいて、鋼帯の欠陥の位置依存性3次元画像を容易且つ迅速に生成することが可能である。
【0019】
画像処理ユニットにおいて画像記録のデータと漏洩磁束記録のデータとを組み合わせることにより、漏洩磁束記録のデータを、画像記録のデータの分析方法と同じ方法で分析することができる。その結果、漏洩磁束記録の分析は、単に単位面積当たり(1平方メートル当たり)の鋼帯の内部の不均質性(例えば、非金属介在物)を含む統計分析のみに限定されず、代わりに、鋼帯内部の不均質性の位置並びに範囲(程度)および形状が含まれ且つ分類される。これに関しては、従来の表面検査システムで既に使用されている複雑で非常に高価な画像処理プログラムを使用することができる。本発明は、鋼帯表面上の漏洩磁束を検出するための漏洩磁束センサと、表面検査システムの画像処理ユニットとを組み合わせることを提供し、前記画像処理ユニットは、表面検査システムのカメラの画像記録と(同時に)磁場感応センサの漏洩磁束記録の両方を分析する。
【0020】
本発明のこれらの、およびさらなる優位点および特徴は、添付の図面を参照してより詳細に説明する後述の実施形態例から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による方法を実行することができる、鋼帯を検査するための本発明によるシステムの図表示である。
【
図2】
図1に示すシステムで検査された鋼帯表面の2次元画像の一例であり、この2次元画像は、光学的に識別可能な表面欠陥を示す。
【
図3】
図1に示すシステムによる検査中に識別された、鋼帯内部の不均質性を示す図表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、鋼帯1を検査するための本発明によるシステムの図表示である。図示されているシステムは、本発明による方法を実行するよう機能し、鋼帯1を照明するための照明ユニット6と、鋼帯1を磁化するための磁化ユニット7と、鋼帯1の表面を光学的に走査するための少なくとも1つのカメラ2と、鋼帯1の表面上の漏洩磁束を検出するための少なくとも1つの磁場感応センサ4と、少なくとも1つのカメラ2および漏洩磁束センサ4に接続される画像処理ユニット3とを備える。
【0023】
図1に示す磁化ユニット7は、永久磁石または電磁石と、漏洩磁束センサ4から離隔して配置される磁化ロール8を備える。鋼帯1は、検査に先立つ生産または仕上げプロセスに応じて、10〜700m/分の範囲内であり得る既定の帯速度で鋼帯の移動方向vに移動され、且つ
図1に示すように、磁化ロール8の周りへ案内される。磁化ロール8の外周と漏洩磁束センサ4の感磁(磁気感受)測定面との間には、隙間9が形成されている。鋼帯1は、漏洩磁束センサ4と磁化ロール8との間のこの隙間9を通過する。隙間9の幅(即ち、磁化ロール8の外周と漏洩磁束センサ4の感磁面との間の距離)は、漏洩磁束センサ4を鋼帯表面から適切な測定位置に位置合わせできるように調整可能である。典型的な測定距離は、0.1mm〜1.0mmの範囲である。
【0024】
磁化ユニット7の電磁石または永久磁石は、磁化ロール8に適切に一体化されてもよい。しかしながら、電磁石または永久磁石は、
図1に示すように、磁化ロール8の下流に配置することも可能である。
【0025】
磁化ユニット7の下流で、鋼帯1は、照明ユニット6および少なくとも1つのカメラ2の近くに配置されるガイドロール10の周りに案内される。照明ユニット6は、鋼帯1の少なくとも一方の面を光Lで照明する。
【0026】
図1に示す実施例において、カメラ2は、明視野カメラ2aと、暗視野カメラ2bとを備える。明視野カメラ2aは、鋼帯1の表面から反射される光Rを捕捉し、暗視野カメラ2bは、鋼帯の表面から散乱される散乱光Sを捕捉する。これにより、明視野カメラ2aは、鋼帯1の欠陥のない表面エリアより明るいまたは暗いエリアとして現れる、鋼帯表面上の光学的異常を検出することができる。鋼帯表面に汚れ(ほこり)粒子または材料の隆起または窪みが存在し、そこから照明ユニット6によって鋼帯1の表面上に当てられた光Lが散乱される場合は、散乱光Sを暗視野カメラ2bで捕捉することができる。したがって、暗視野カメラ2bは、特には、鋼帯表面上の汚染物質および窪みまたは材料の隆起を検出する。
【0027】
明視野カメラ2aおよび暗視野カメラ2bによって得られた画像データは、データ線(有線または無線)11を介して画像処理ユニット3に伝送される。適切には、データ処理およびデータ記憶のためのPCまたはラップトップコンピュータを備える画像処理ユニット3は、画像処理ソフトウェアを含み、画像処理ソフトウェアは、カメラ2の画像データを処理し、且つ画像データに基づいて、鋼帯1の表面の2次元(光学的)画像を画定する2次元画像記録10を生成する。鋼帯表面のこの2次元画像は、データ伝送のために画像処理ユニット3に接続されるディスプレイユニット5に表示されてもよい。
【0028】
画像処理ユニット3に含まれる画像処理ソフトウェアは分類モジュールを備え、この分類モジュールによって、カメラ2によって取得された画像データにおける異常を検出し且つ分類することができる。画像記録10の画像データにおいて検出された異常を分類することを可能にするために、画像処理ユニット3は、多数の典型的な表面欠陥および先行する検査から既知の表面欠陥が記憶された分類データベースが格納されている記憶ユニットを備える。カメラ2の画像記録10において検出された異常を分類するために、これらの異常は、分類データベースに記憶されている(標準化された)表面欠陥と比較される。検出された異常の特性が、記憶されている表面欠陥の特性に一致していれば、検出された異常は、表面欠陥11に関連づけられる。したがって、このような方法で検出され且つ分類された表面欠陥11は、カメラ2の画像記録10を含むファイルにマークされる(marked)か、別の方法で識別される。さらに、検出され且つ分類された表面欠陥11は、ディスプレイユニット5に表示することもでき、ディスプレイユニット5上に画像記録10の2次元画像が表示される。ディスプレイユニット5における表面欠陥11の表示においては、表面欠陥11の位置および性質の双方がマーキングされてもよい。
【0029】
図2は、鋼帯1の走査された表面の2次元画像の一例を示していて、その画像では検出され且つ分類された複数の表面欠陥11を見ることができる。
【0030】
磁化ユニット7における鋼帯1の磁化は、鋼帯1の表面に漏洩磁束を生成する。漏洩磁束の程度は、鋼帯1の磁化および透磁率に依存し、ならびに鋼帯1の内部構造に依存する。鋼帯の磁化および透磁率が一定のままである場合、磁場感応漏洩磁束センサ4によって鋼帯1の表面上に検出される局所的に変化する漏洩磁束の存在は、内部欠陥、例えば、鋼帯1の内部における非金属介在物を示す。例えば、鋼帯1の内部に非金属介在物が存在する場合、鋼帯1の内部の磁力線は、鋼帯1の表面上の位置依存漏洩磁束画像に異常を発生させる非金属介在物の周りに方向づけられる。このような異常は、磁場感応漏洩磁束センサ4によって検出することができる。漏洩磁束センサ4によって生成された漏洩磁束データ(位置依存漏洩磁束値)は、データライン12によって画像処理ユニット3に送信され、そこでデータが処理されて漏洩磁束記録20が生成される。漏洩磁束記録20は、空間分解漏洩磁束データを含み、且つこれにより、漏洩磁束センサ4によって検出される漏洩磁束の位置依存画像を画定する。漏洩磁束記録20における異常の存在は、鋼帯1の内部における不均質性、特には、非金属の影響を示している。したがって、漏洩磁束記録20は、鋼帯内部における不均質性の位置、構造およびモルフォロジー(形態;morphology)に関する情報を含む。
【0031】
画像処理ユニット3で生成される漏洩磁束記録20は、画像処理ユニット3に含まれる画像処理ソフトウェアによって異常をチェックされる。漏洩磁束記録20内に異常が検出されると、検出された異常の特性が、漏洩磁束データベースに記憶されている、漏洩磁束記録における以前の漏洩磁束測定値から既知である異常の特性と比較される。現在生成されている漏洩磁束記録20における異常の特性が、漏洩磁束データベースに記憶されている異常の特性に一致すれば、現在の漏洩磁束記録20において検出された異常は、漏洩磁束記録における以前の検査から知られ且つ分類されている異常に関連づけることができる。このような方法で、検出された異常は、鋼帯1の現在の漏洩磁束記録20内に分類され、鋼帯内部の典型的な不均質性21に関連づけることができる。これにより、漏洩磁束記録20における欠陥の存在だけでなく、その位置ならびに不均質性21の性質、範囲および形状およびモルフォロジーも識別することが可能になる。
【0032】
漏洩磁束記録20およびその中に存在する不均質性21の図表示の一例を
図3に見ることができる。
【0033】
画像処理ユニット3の画像処理ソフトウェアは、画像記録10のデータと漏洩磁束記録20のデータとを組み合わせ、且つこのデータの組合せにより、欠陥の3次元画像30を生成することができる。欠陥のこの3次元画像30は、ディスプレイユニット5に表示可能である。画像記録10のデータと漏洩磁束記録20のデータとが組み合わされているという事実には、欠陥の3次元画像30が、光学的に視認可能な表面欠陥11および鋼帯1の内部における不均質性21に関する両方の情報を含む、という効果がある。したがって、欠陥の3次元画像30には、表面での光学的に視認可能な欠陥に関する情報だけでなく、鋼帯の深さ方向における内部構造に関する情報も含まれる。
【0034】
その結果、欠陥が一部のエリアでのみ鋼帯1の表面上の表面欠陥として現れ(且つ欠陥が画像記録10においてそのように識別可能であり)、且つ同時に、表面には(表面欠陥として)見えず、鋼帯内部における不均質性として(例えば、非金属介在物として)少なくとも一部のエリアに存在する場合でも、欠陥の3次元画像30において連続的な異常および欠陥を検出し且つ分類することも可能である。
【0035】
このような状況の一例を
図2および
図3に見ることができ、これらの図は、鋼帯1の選択されたエリアの表面の2次元画像の部分(
図2)、および鋼帯1の同一エリアの漏洩磁束記録20を示す。
図2では、(光学的な)表面欠陥11のみが見え、
図3では、主として、漏洩磁束記録20において識別された不均質性21が見られ、この不均質性は、鋼帯1における内部の非金属介在物を示している。
図2の画像記録10に見ることができる表面欠陥11は、
図3の漏洩磁束記録20においても、少なくともある程度は見ることができる。
図2の画像記録10のデータと
図3の漏洩磁束記録20のデータとを組み合わせることにより、画像記録10における異常および漏洩磁束記録20における異常が、鋼帯1の内部および表面構造における局所的に連続する欠陥によって引き起こされていることが分かる。関与する欠陥31は、実質的に、鋼帯1の帯移動方向vへ長手方向に延びる内部欠陥(鋼帯1における内部不均質性)であり、これは、一部のエリア(即ち、
図3において参照符号11’で示すエリア)のみではあるが、鋼帯1の表面上にも見受けられるものの、これ以外は、表面より下の鋼帯1の内部にのみ存在する。
【0036】
本発明による方法が、画像記録10のデータと漏洩磁束記録20のデータとを組み合わせるという事実により、一部のエリアでのみ鋼帯表面上の欠陥11として視認可能で、且つ残りのエリアでは鋼帯内部において不均質性21の形態で伝播(増殖)するこれらの欠陥を、検出し、視覚化し且つ分類することが欠陥の3次元画像30において可能である。
【0037】
本発明により、画像記録10のデータと漏洩磁束記録20のデータとを組み合わせることによって生成される欠陥の3次元画像30は、好ましくは、ディスプレイユニット5にインラインで、即ち、進行中の製造または仕上げプロセスから出る鋼帯1が既定の帯速度で鋼帯の移動方向vに移動している間、表示されてもよい。
【0038】
その結果、例えば、進行中の鋼帯1の製造または仕上げプロセスの間に、(画像記録10からの)表面欠陥11および(漏洩磁束記録20からの)鋼帯内部における不均質性21の両方を検出し、分類し且つ視覚化することが可能であり、また必要であれば、製造または仕上げプロセスに介入して、追加的な表面欠陥および/または鋼帯内部における不均質性の成長を防止することが可能である。同時に、本発明による方法は、欠陥の3次元画像30における、エリアによっては表面欠陥11として、エリアによっては鋼帯内部の不均質性21として識別される連続する欠陥の検出、およびその分類も可能にする。
【0039】
鋼帯1が移動している間、鋼帯表面を2次元的に走査できるようにするために、少なくとも1つのカメラ2は、好ましくは、直線的に配置された複数の光センサを有するデジタルラインスキャンカメラであり、カメラ2は、互いに離隔して配置された複数の光センサが鋼帯の移動方向に対して直角に且つ鋼帯の全幅に亘って延在するよう、移動する鋼帯1に対して配置される。カメラ2のこの設計および構成を使用することで、帯速度で移動する鋼帯1の表面をライン毎に走査することができる。明視野カメラ2aおよび暗視野カメラ2bが、
図1に示す実施形態例が提案するとおりに使用されれば、これらのカメラは、好ましくは、共にラインスキャンカメラである。
【0040】
さらに、漏洩磁束センサ4は、好ましくは、直線的に配置された複数の磁気センサを備えたセンサアレイの形態で構成され、それらの磁気センサは、互いに離隔され、やはり鋼帯の移動方向に対して直角に且つ鋼帯の全幅に亘って延在して配置される。センサアレイ形態である漏洩磁束センサ4のこの設計および構成の使用により、鋼帯が移動している間、鋼帯の全表面にわたってライン毎に漏洩磁束を検出することも可能である。漏洩磁束センサ4はまた、鋼帯の移動方向vに前後して配置される複数のセンサラインを備えることもできる。(1000を遙かに超える磁気センサを含み得る)センサマトリクス内の磁気センサの数に依存して、多重ラインセンサマトリクスとして設計される漏洩磁束センサ4は、100μm〜500μmの範囲の厚さを有する鋼帯における50μm〜100μmの範囲の球径を有する内部介在物の検出を可能にする。
【0041】
包含される漏洩磁束センサ4の磁気センサは、例えば、誘導コイル、巨大磁気抵抗センサ(GMRセンサ)、異方性磁気抵抗センサ(AMRセンサ)、トンネル磁気抵抗センサ(TMRセンサ)またはホール(Hall)センサであってもよい。
【0042】
また、デジタルラインスキャンカメラとしてのカメラ2およびセンサアレイとしての漏洩磁束センサ4の設計は、生成される画像記録10および漏洩磁束記録20のデータ構造に関して優位性を提供する。なぜなら、画像記録10から結果的に生じる2次元光学画像および漏洩磁束記録20から結果的に生じる漏洩磁束の位置依存性が、位置依存性に関して同じ(ライン)構造を有するという理由による。その結果、画像記録10および漏洩磁束記録20の両方を1つの画像処理ソフトを用いて処理することが可能であり、且つ画像記録10のデータと漏洩磁束記録20のデータとを互いにスーパーインポーズすることにより、3次元記録(欠陥の3次元画像30)を生成することが可能であり、この記録は、表面上の鋼帯構造に関する情報、および内部介在物または他の不均質性に関する深さの情報の両方を含む。
【外国語明細書】