【解決手段】直列に配置された、鍔部22Aを有する第一の棒状コア20A及び鍔部22Bを有する第二の棒状コア20Bと、第一のコイル30A及び第二のコイル30Bとを備え、第一の棒状コア20Aの端面26Aと、第二の棒状コア20Bの端面26Bとが離間しているアンテナ装置。
前記第一の棒状コアの前記第二の棒状コアが配置された側の端面と、前記第二の棒状コアの前記第一の棒状コアが配置された側の端面とが、接着剤層を介して接着されていることを特徴とする請求項1、3または5のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態のアンテナ装置の一例を示す模式断面図であり、
図2は、
図1に示すアンテナ装置の断面構造の一例を示す模式断面図である。なお、
図2は、
図1中の符号II−II間における断面構造を示している。ここで、
図1および
図2、ならびに、後述する
図3以降において、図中に示すX軸方向、Y軸方向(以下、「第一方向」と称す場合がある)およびZ軸方向(以下、「第二方向」と称す場合がある)は互いに直交する方向である。また、X軸方向は、
図1中に示す2本の棒状コア20の配列方向と平行であると共に、第一の棒状コア20A(20)の中心軸A1および第二の棒状コア20B(20)の中心軸A2とも平行である。この点は、
図3以降に示される棒状コアについても実質同様である。
【0016】
図1に示す本実施形態のアンテナ装置10A(10)は、その主要部として、直列に配置された複数本(
図1に示す例では2本)の棒状コア20と、第一のコイル30A(30)および第二のコイル30B(30)とを有している。これら2本の棒状コア20から選択される一方の棒状コア(第一の棒状コア20A)の外周側には、導線を巻回して形成された第一のコイル30Aが設けられており、2本の棒状コア20から選択され、かつ、第一の棒状コア20Aの一方の端部側に配置された他方の棒状コア(第二の棒状コア20B)の外周側には、導線を巻回して形成された第二のコイル30Bが設けられている。また、第一のコイル30Aと第二のコイル30Bとは導線(不図示)により電気的に接続されている。
【0017】
第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端部には鍔部22A(22)が設けられており、第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端部には鍔部22B(22)が設けられている。そして、棒状コア20と、コイル30との間には、両部材間を電気的に絶縁する絶縁部材40が配置されている。また、コイル30は、棒状コア20の鍔部22が設けられていない部分(コア本体部24)に配置されると共に、棒状コア20の中心軸A1、A2方向に対して、鍔部22側に寄せて配置されている。
【0018】
第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bは、第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面26Aと、第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面26Bとが離間するように、配置されている。また、第一の棒状コア20Aと第二の棒状コア20Bは、第一の棒状コア20Aの中心軸A1と、第二の棒状コア20Bの中心軸A2とが一致するように配置されている。さらに、コイル30の外周面30Sは、鍔部22の外周面22Sよりも内周側に位置している。
【0019】
なお、
図1中において、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bは、アンテナ装置10A内における配置位置および配置方向が異なる点を除けば、その形状・サイズは同一であり、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bについても、両者の形状・サイズは同一である。
【0020】
また、第一の棒状コア20A、第二の棒状コア20B、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bは、一端に開口部52が設けられ、他端に底壁部54Aが設けられた有底の筒状ケース50A(50)内に収納されている。この開口部52は、板状の蓋部材60により密閉されている。そして、筒状ケース50Aの開口部52側に第一の棒状コア20Aが位置し、底壁部54A側に第二の棒状コア20Bが位置している。
【0021】
第二の棒状コア20Bの鍔部22Bが設けられた側と反対側の端部の外周面と対向する位置には、金属端子70が配置されている。この金属端子70は、導線(不図示)により第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bに接続されると共に、一端が、底壁部54Aを貫通して底壁部54Aの第二の棒状コア20Bが設けられた側と反対側の面に露出している。そして、金属端子70の一端は、外部接続端子80に接続されている。また、金属端子70には、チップコンデンサなどの電子素子(不図示)が適宜接続される。さらに、筒状ケース50A内の隙間部分には、必要に応じて、アンテナ装置10Aの製造に際して筒状ケース50A内に充填されたポッティング材が硬化した充填材(たとえば、シリコーンゴムなど)で満たされていてもよい。
【0022】
棒状コア20の中心軸A1、A2と直交する断面(YZ平面)における断面形状は特に限定されず、たとえば、円形、矩形、六角形、八角形等などが例示できるが、矩形が好ましい。また、鍔部22の断面形状と、コア本体部24の断面形状とは相似形でもよく、非相似形でもよい。また、筒状ケース50を、その中心軸に対して直交する平面で切断した場合における筒状ケース50の内周面50Sの断面形状(輪郭形状)も特に限定されず、たとえば、円形、矩形、六角形、八角形等などが例示できるが、筒状ケース50内に収納される棒状コア20の断面形状に応じて適宜選択できる。ここで、鍔部22および筒状ケース50の内周面50Sの断面形状が矩形状である場合、
図1に示すアンテナ装置10Aの断面構造の一例としては、
図2に示す断面構造が挙げられる。
【0023】
図2に示す例では、内周面50Sの断面形状が矩形の筒状ケース50A内に、第一の棒状コア20Aの(断面形状が矩形の)鍔部22Aが配置されている。ここで、鍔部22Aの外周面22Sは、4つの平面から構成されており、外周面22SのうちY軸(第一方向)と直交する2つの領域(平面)が、それぞれ、上面22STおよび下面22SBを構成し、外周面22SのうちZ軸(第二方向)と直交する領域(平面)が、それぞれ、右面22SRおよび左面22SLを構成している。
【0024】
また、筒状ケース50Aの内周面50Sも4つの平面から構成されており、内周面50SのうちY軸(第一方向)と直交する2つの平面が、それぞれ、上面50STおよび下面50SBを構成し、内周面50SのうちZ軸(第二方向)と直交する平面が、それぞれ、右面50SRおよび左面50SLを構成している。
【0025】
そして、鍔部22Aの上面22STの全面が、筒状ケース50Aの上面50STと密着しており、鍔部22Aの下面22SBの全面が、筒状ケース50Aの下面50SBと密着している。一方、鍔部22Aの右面22SRの全面は、筒状ケース50Aの右面50SRと離間しており、鍔部22Aの左面22SLの全面は、筒状ケース50Aの左面50SLと離間している。すなわち、Z軸(第二方向)において、鍔部22Aと、筒状ケース50Aとの間には隙間がある。これらの点は、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bについても同様である。
【0026】
なお、棒状コア20は、磁性材料から構成され、たとえば、Mn−Zn系フェライトやそれ以外のアモルファス系磁性体の微粉末を圧縮成形することにより作製された部材などを適宜用いることができる。また、コイル30等を構成する導線は、銅等の導電性材料からなる芯線と、この芯線の表面を覆う絶縁材料とを有する部材であり、金属端子70および外部接続端子80としては銅などの導電性部材からなる部材が適宜利用できる。さらに、筒状ケース50および蓋部材60としては樹脂材料からなる部材が用いられ、これらの部材は、たとえば、PP(ポリプロピレン)を用いて射出成形した部材を用いることができる。また、絶縁部材40としては、紙や、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルムなどの絶縁性シート、あるいは、筒状の樹脂部材を用いることができる。
【0027】
図1および
図2に例示した本実施形態のアンテナ装置10Aでは、アンテナ装置10Aの製造時、および/または、完成品状態において、(1)X軸方向における第一の棒状コア20Aの端面26Aと第二の棒状コアの端面26Bとの距離(ギャップ長さG)が設計値に対してばらついたり、(2)YZ平面方向における第一の棒状コア20Aの中心軸A1と第二の棒状コア20Bの中心軸A2との位置ずれ(軸ズレ)が生じることがある。これは、
図1および
図2に示すアンテナ装置10Aの製造時において、筒状ケース50A内に挿入・配置された2つの棒状コア20が、X軸方向あるいはZ軸方向にスライドすることができるためである。
【0028】
たとえば、アンテナ装置10Aの製造時において、ギャップ長さGを設計値に設定し、軸ズレも皆無となるように棒状コア20を筒状ケース50A内に配置したと仮定する。(a)しかし、この場合であっても、アンテナ装置10A内において棒状コア20が完全に固定されていなければ、組み立て中のアンテナ装置10Aに外部から衝撃が加わることで、ギャップ長さGがばらついたり、あるいは、軸ズレが生じる可能性がある。(b)また、製造時に筒状ケース50A内に棒状コア20を配置した後に、ポッティング材などを用いて、棒状コア20の配置位置を完全に固定することなくアンテナ装置10Aが完成した場合、完成品状態のアンテナ装置10Aに外部から衝撃が加わることで、ギャップ長さGがばらついたり、あるいは、軸ズレが生じる可能性がある。よって、上記(a)(b)に示すケースでは、ギャップ長さGのばらつきあるいは軸ズレが発生することで、アンテナ装置10Aのインダクタンス値Lが設計値に対して変動してしまう。
【0029】
このようなインダクタンス値Lの変動を抑制するためには、たとえば、特許文献1に例示したアンテナ装置のように、直列に配列された2つの棒状コア間に、インダクタンス値Lを調整するためのインダクタンス値調整機構として小型コアを設けることが有効である。しかし、この場合、アンテナ装置の構造が複雑化するため、コストや生産性において実用性に欠ける。これに対して、本実施形態のアンテナ装置10では、仮にギャップ長さGがばらついたりあるいは軸ズレが生じたとしても、インダクタンス値調整機構を採用せずともインダクタンス値Lの変動を抑制できる。以下にこのような効果が得られる理由について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態のアンテナ装置10の主要部について示す模式図であり、
図4は、
図3に示す鍔付きの棒状コアの代わりに鍔無しの棒状コアを用いた場合について示す模式図である。なお、
図3および
図4中、棒状コア20、100およびコイル30以外の部材については記載を省略してある。また、
図3に示す例と、
図4に示す例との差異点は、棒状コアが鍔部を有するか否かのみである。すなわち、
図4中に示す第一の棒状コア100A(100)および第二の棒状コア100B(100)は、
図3中に示す第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bに各々対応しており、鍔部22を有さない点を除けば、
図3に示す棒状コア20と同一の形状・サイズ・材質を有する。なお、図中の符号Dは、YZ平面方向における中心軸A1と中心軸A2との距離(軸ズレ長さD)を意味する。
【0031】
ここで、
図3および
図4中、棒状コア20、100のX軸方向およびYZ平面方向への動きは全く規制されないものと仮定し、ギャップ長さGおよび軸ズレ長さDを様々に変えた場合におけるインダクタンス値Lについてシュミレーション計算を実施した。このシュミレーション結果を表1および表2に示す。なお、表1は、
図3に示す例についてのシュミレーション計算結果について示したものであり、表2は、
図4に示す例についてのシュミレーション計算結果について示したものである。表1および表2中のインダクタンス値Lの値は、測定電流=1mA、ギャップ長さG=0.00mm、かつ、軸ズレ長さD=0.00mmにおけるインダクタンス値Lを基準値(100%)とした際の相対値(%)として示されている。
【0034】
表1および表2に示す結果からも明らかなように、鍔部22を有する棒状コア20を用いた場合では、鍔部22を有さないストレートな形状を有する一般的な棒状コア100を用いた場合と比べて、ギャップ長さGがばらついたり、あるいは、軸ズレ長さDがばらついたとしても、インダクタンス値Lの変動量を抑制することができる。この理由は、コイル30A側から第一の棒状コア20Aの端面26A側へと伸びる磁束、および、コイル30B側から第二の棒状コア20Bの端面26B側へと伸びる磁束が、ギャップ長さGあるいは軸ズレ長さDが増大しても、棒状コア20の外側方向へと漏れるのを鍔部22により抑制できるためと考えられる。
【0035】
したがって、本実施形態のアンテナ装置10は、下記(1)および(2)に示すようなギャップ長さGのばらつき、あるいは、軸ズレが生じ易い構造を有する場合であっても、インダクタンス値Lの変動を抑制できる。
(1)アンテナ装置10の製造時に、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bを少なくとも収納する筒状収納部材(たとえば、
図1に例示した筒状ケース50Aあるいはボビンなど)内に配置し終えた後において、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bから選択される少なくとも一方の棒状コア20が、筒状収納部材内においてスライド可能である場合。
(2)アンテナ装置10の完成後において、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bから選択される少なくとも一方の棒状コア20が、筒状収納部材においてスライド可能である場合。
【0036】
なお、本願明細書において、「筒状収納部材」とは、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bを直接に収納する筒状の部材を意味する。それゆえ、アンテナ装置10が、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bをその内周側に収納する第一の筒体と、第一の筒体を、その内周側に収納する第二の筒体とを有する場合、「筒状収納部材」とは、第一の筒体のみを意味する。具体例を挙げて説明すれば、
図1に示すアンテナ装置10Aでは、筒状ケース50Aが筒状収納部材に該当する。また、本実施形態のアンテナ装置10が、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bをその内周側に収納すると共に第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bがその外周側に設けられたボビンと、ボビンをその内周側に収納する筒状ケースとを有する場合には、ボビンが筒状収納部材に該当する。
【0037】
ここで、ギャップ長さGがばらつく可能性がある構造を有するアンテナ装置10の具体例としては、筒状収納部材内に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが少なくとも収納された状態において、第一の棒状コア20Aの端面26Aと、第二の棒状コア20Bの端面26Bと、の間に形成された空間(ギャップ空間S)内が、(i)気体のみからなる材料、(ii)気体および液状物質を含む材料、(ii)気体および微小固体物質を含む材料、(iv)気体およびスポンジ状物質を含む材料から選択されるいずれかの材料により占有されている場合が挙げられる。ここで、(i)〜(iv)気体としては空気などが挙げられ、(ii)液状物質としては、グリースなどが挙げられ、(iii)微小固体物質としては、ギャップ長さGの数分の1以下の最大径を有する粒子状物質あるいはギャップ長さGの数分の1以下の最大長を有する繊維状物質(パルプ繊維、ガラス繊維、綿繊維など)が挙げられる。なお、(ii)〜(iv)において、ギャップ空間S内に占める気体の割合は20%以上であればよく50%以上が好ましい。
【0038】
たとえば、
図1に示すアンテナ装置10Aでは、筒状収納部材(筒状ケース50A)内に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bと共に収納されている。そして、アンテナ装置10Aでは、ギャップ空間S内に空気のみが存在する。このため、
図1に示すアンテナ装置10Aでは、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのいずれもX軸方向にスライドできるため、ギャップ長さGがばらつく可能性がある。
【0039】
また、軸ズレが生じる可能性がある構造を有するアンテナ装置10の具体例としては、筒状収納部材内に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが少なくとも収納された状態において、(i)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Y軸方向(第一方向)と直交する領域、(ii)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域、(iii)第二の棒状コアの鍔部22Bの外周面22Sのうち、Y軸方向(第一方向)と直交する領域、および、(iv)第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域、から選択される少なくともひとつの領域の全面が、筒状収納部材の内周面と離間している場合が挙げられる。なお、本願明細書において、「筒状収納部材の内周面」には、筒状収納部材の内周側に、筒状収納部材と一体を成すように形成された突起の表面や、筒状収納部材の内周側に接着等により強固に固定された突起の表面も含まれる。
【0040】
たとえば、
図1および
図2に示すアンテナ装置10Aでは、筒状収納部材(筒状ケース50A)内に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bと共に収納されている。そして、アンテナ装置10Aでは、(ii)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域(右面22SR)の全面、および、(iv)第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域(左面22SL)の全面が、筒状収納部材(筒状ケース50A)の内周面50Sと離間している。このため、
図1および
図2に示すアンテナ装置10Aでは、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのいずれもZ軸方向にスライドできるため、軸ズレが生じる可能性がある。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態のアンテナ装置10では、2本の鍔部22を有する棒状コア20を用いるため、アンテナ装置10内において棒状コア20が意図しない方向にスライドすることで、ギャップ長さGがばらついたり、あるいは、軸ズレが生じたとしても、インダクタンス値の変動を抑制できる。
【0042】
一方、本実施形態のアンテナ装置10に用いられる棒状コア20は、柱状のコア本体部24に対して突出部を成す鍔部22を有している。このため、筒状収納部材側に、突出部を成す鍔部22と係止あるいは篏合等することで、アンテナ装置10内における棒状コア20のスライドを規制する規制部分を設けることで、棒状コア20の意図しない方向へのスライドを阻止することも極めて容易である。この場合、インダクタンス値Lの変動を招く原因であるギャップ長さGのばらつき、および、軸ズレの少なくともいずれか一方を根本的に抑制できる。それゆえ、筒状収納部材に棒状コア20のスライドを規制する規制部分を設けた場合、ギャップ長さGのばらつき、および、軸ズレの少なくともいずれかに起因するインダクタンス値Lの変動を完全に抑制することが可能である。
【0043】
図5は、本実施形態のアンテナ装置10の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、
図2に示すアンテナ装置10Aの変形例について示す図(YZ断面図)である。
図5に示すアンテナ装置10B(10)は、筒状ケース50の内部構造が若干異なる点を除けば、
図1に示すアンテナ装置10Aと同様の形状・構造を有するものである。
図5に示すアンテナ装置10Bでは、内周面50Sの断面形状が矩形の筒状ケース50B(50)内に、第一の棒状コア20Aの(断面形状が矩形の)鍔部22Aが配置されている。そして、
図5に示す筒状ケース50Bは、内周面50Sに筒状ケース50Bと一体的に形成された4つの突起56が設けられている以外は
図2に示す筒状ケース50Aと同様の形状・サイズを有する部材である。
【0044】
ここで、筒状ケース50Bにおいては、上面50STに1対の突起56L、56Rが設けられ、下面50SBにも1対の突起56L、56Rが設けられている。また、一対を成す突起56Lと突起56Rとの間のピッチは、鍔部22の幅(Z軸方向長さ)と一致している。なお、2つの突起間の「ピッチ」とは、隣り合う2つの突起56において、一方の突起56の他方の突起56が設けられた側の端面と、他方の突起56の一方の突起56が設けられた側の端面との最短距離を意味する。そして、上面50ST側に設けられた2つの突起56L、56Rの間、および、下面50SB側に設けられた2つの突起56L、56Rの間に位置するように、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aが配置されている。なお、この点は、
図5中において図示されていない第二の棒状コア20Bについても同様である。
【0045】
このため、
図5に示すアンテナ装置10Bでは、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのZ軸方向への意図せぬスライドが生じ得る可能性がある
図2に示すアンテナ装置10Aと異なり、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのZ軸方向への意図せぬスライドもさらに阻止される。すなわち、
図5に示すアンテナ装置10Bでは、軸ズレが生じないため、軸ズレに起因するインダクタンス値Lの変動量をゼロにすることができる。
【0046】
軸ズレの発生を阻止できる構造を有するアンテナ装置10としては、
図5に例示したアンテナ装置10Bに限定されず、以下に示す条件を満たしていればよい。すなわち、軸ズレの発生を阻止できる構造を有するアンテナ装置10としては、筒状収納部材内に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが少なくとも収納された状態において、(i)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Y軸方向(第一方向)と直交する領域の少なくとも一部、(ii)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域の少なくとも一部、(iii)第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周面22Sのうち、Y軸方向(第一方向)と直交する領域の少なくとも一部、および、(iv)第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域の少なくとも一部が、筒状収納部材の内周面と密着している場合が挙げられる。
【0047】
たとえば、
図5に示す例では、(i)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Y軸方向(第一方向)と直交する領域(上面22STおよび下面22SB)の全面が、筒状ケース50B(筒状収納部材)の内周面50S(上面50STおよび下面50SB)と密着している。また、(ii)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周面22Sのうち、Z軸方向(第二方向)と直交する領域(左面50SLおよび右面50SR)の少なくとも一部(左面50SLおよび右面50SRのY軸方向両端側近傍)が、筒状ケース50B(筒状収納部材)の内周面50Sの一部を構成する突起56L、56Rの表面の一部と密着している。そして、(i)(ii)に関しては、
図5中で図示を省略した第二の棒状コア20Bについても同様である。
【0048】
図6は、本実施形態のアンテナ装置10の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、
図1に示すアンテナ装置10Aの変形例について示す図(XY断面図)である。
図6に示すアンテナ装置10C(10)は、筒状ケース50の内部構造が若干異なる点を除けば、
図1に示すアンテナ装置10Aと同様の形状・構造を有するものである。
図6に示すアンテナ装置10Cを構成する筒状ケース50Cは、内周面50Sに筒状ケース50Cと一体的に形成された6つの突起56が設けられている以外は
図1に示す筒状ケース50Aと同様の形状・サイズを有する部材である。
【0049】
ここで、筒状ケース50Cにおいては、筒状ケース50Cの内周面50Sの上面50ST側および下面50SB側に、筒状ケース50Cの一端側から他端側へと、突起56F、突起56C、および、突起56Bがこの順に設けられている。また、突起56Fと突起56Cとの間のピッチは、鍔部22Aの長さ(X軸方向長さ)と一致しており、突起56Cと突起56Bとの間のピッチは、鍔部22Bの長さ(X軸方向長さ)と一致している。そして、上面50ST側に設けられた2つの突起56F、56Cの間、および、下面50SB側に設けられた2つの突起56F、56Cの間に位置するように、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aが配置されている。また、上面50ST側に設けられた2つの突起56C、56Bの間、および、下面50SB側に設けられた2つの突起56C、56Bの間に位置するように、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bが配置されている。
【0050】
このため、
図6に示すアンテナ装置10Cでは、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのX軸方向への意図せぬスライドが生じ得る可能性のある
図1に示すアンテナ装置10Aと異なり、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのX軸方向への意図せぬスライドを阻止できる。すなわち、
図6に示すアンテナ装置10Cでは、ギャップ長さGのばらつきが生じないため、ギャップ長さGのばらつきに起因するインダクタンス値の変動量をゼロにすることができる。また、アンテナ装置10Cにおいて、ギャップ長さGは、突起56Cの幅(X軸方向長さ)を変えることで所望の値に設定できる。
【0051】
なお、
図6に示す突起56Cの代わりに、仕切り板あるいは接着剤層を設けても、
図6に示すアンテナ装置10Cと同様に、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20BのX軸方向への意図せぬスライドを阻止できる。
【0052】
図7は、本実施形態のアンテナ装置10の他の例を示す部分断面図であり、具体的には、
図6に示すアンテナ装置10Cの変形例について示す図(XY断面図)である。
図7に示すアンテナ装置10D(10)は、筒状ケース50の内部構造が若干異なる点を除けば、
図6に示すアンテナ装置10Cと同様の形状・構造を有するものである。
図7に示すアンテナ装置10Dを構成する筒状ケース50D(50)は、
図6に示す筒状ケース50Cにおける突起56Cの代わりに、筒状ケース50Cと一体的に形成された仕切り板58が設けられている点を除けば、
図6に示す筒状ケース50Cと同様の形状・サイズを有する部材である。また、
図7に示す仕切り板58の厚み(X軸方向長さ)は、
図6に示す突起56Cの幅(X軸方向長さ)と同一である。
【0053】
それゆえ、突起56Fと仕切り板58との間のピッチは、鍔部22Aの長さ(X軸方向長さ)と一致しており、仕切り板58と突起56Bとの間のピッチは、鍔部22Bの長さ(X軸方向長さ)と一致している。そして、上面50STおよび下面50SBに各々設けられた2つの突起56Fと仕切り板58の間に位置するように、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aが配置されている。また、上面50STおよび下面50SBに各々設けられた2つの突起56Bと仕切り板58の間に位置するように、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bが配置されている。
【0054】
図6および
図7に例示したように、ギャップ長さGのばらつきを阻止するために、本実施形態のアンテナ装置10では、筒状収納部材の内周側に、以下の(A)〜(C)に示す3つの部材を設けることができる。
(A)(A1)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面26Aおよび第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面26Bと密着する仕切り板58、および、(A2)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面26Aおよび第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面26Bと密着する突起56C、から選択されるいずれかの部材。
(B)第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの、第二の棒状コア20Bが設けられた側と反対側の端面28Aと密着する突起56F。
(C)第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの、第一の棒状コア20Aが設けられた側と反対側の端面28Bと密着する突起56B。
【0055】
なお、突起56および仕切り板58は、筒状収納部材と一体的に形成されたものであることが好ましいが、筒状収納部材の内周面に接着あるいは篏合等により強固に固定されたものであってもよい。
【0056】
図8は、本実施形態のアンテナ装置10の他の例を示す部分断面図であり、具体的には、
図6に示すアンテナ装置10Cの変形例について示す図(XY断面図)である。
図8に示すアンテナ装置10E(10)は、筒状ケース50の内部構造が若干異なる点と、接着剤層90を有する点を除けば、
図6に示すアンテナ装置10Cと同様の形状・構造を有するものである。
図8に示すアンテナ装置10Eを構成する筒状ケース50E(50)は、
図6に示す筒状ケース50Cにおける突起56Cを省略した点を除けば、
図6に示す筒状ケース50Eと同様の形状・サイズを有する部材である。また、第一の棒状コア20Aの端面26Aと第二の棒状コア20Bの端面26Bとを接着する接着剤層90の厚み(X軸方向長さ)は、
図6に示す突起56Cの幅(X軸方向長さ)および
図7に示す仕切り板58の厚み(X軸方向長さ)と同一である。
【0057】
なお、
図8に示すアンテナ装置10Eでは、筒状ケース50Eから突起56F、56Bを省略することもできる。突起56F、56Bを省略した場合においても、接着剤層90によって第一の棒状コア20Aと第二の棒状コア20Bとが接着されているため、ギャップ長さGは常に一定に保てるためである。但し、突起56F、56Bが省略された筒状ケース50E内において、接着剤層90によって接着された第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが一体となってX軸方向にスライドしてしまう可能性もある。したがって、このような意図せぬスライドを防止するためには、突起56F、56Bを省略しない方が望ましい。
【0058】
図8に例示したように、ギャップ長さGのばらつきを阻止するために、本実施形態のアンテナ装置10では、第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面26Aと、第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面26Bとを、接着剤層90を介して接着した構成を採用することができる。なお、
図8に示す例では1層の接着剤層90を用いているが、2層の接着剤層90を用いることもできる。たとえば、ギャップ長さGの調整を容易とするために、一定の厚みを持つ板状のスペーサを、第一の棒状コア20Aの端面26Aと、第二の棒状コア20Bの端面26Bとの間に配置すると共に、スペーサの一方の面と端面26Aとを第一の接着剤層90で接着し、スペーサの他方の面と端面26Bとを第二の接着剤層90で接着することができる。
【0059】
また、本実施形態のアンテナ装置10では、筒状ケース50の内周面50Sに、棒状コア20の鍔部22を嵌め込んで固定するための溝を設けることで、ギャップ長さGのばらつきを阻止することもできる。
【0060】
図9は、本実施形態のアンテナ装置10の他の例を示す部分断面図であり、具体的には、
図1に示すアンテナ装置10Aの変形例について示す図(XY断面図)である。
図8に示すアンテナ装置10F(10)は、筒状ケース50の内部構造が若干異なる点を除けば、
図1に示すアンテナ装置10Aと同様の形状・構造を有するものである。
図1に示すアンテナ装置10Fを構成する筒状ケース50Fは、
図1に示す筒状ケース50Aの外殻肉厚を若干厚くした上で、内周面50Sに第一の溝59Aおよび第二の溝59Bが、筒状ケース50Fの長手方向(X軸方向)に対して、ギャップ長さGに相当する間隔を置いて設けられた点を除けば、
図1に示す筒状ケース50Aと同様の形状・サイズを有する部材である。これら2本の溝59A、59Bの幅(X軸方向長さ)は、各々鍔部22A、22Bの幅(X軸方向長さ)と同一である。そして、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周部が第一の溝59Aに嵌め込まれ、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周部が第二の溝59Bに嵌め込まれている。
【0061】
図9に例示したように、ギャップ長さGのばらつきを阻止するために、本実施形態のアンテナ装置10では、筒状収納部材の内周側に、第一の溝59Aおよび第二の溝59Bが筒状収納部材の長手方向(X軸方向)に対して隣り合うように設けられ、複数本の棒状コア20の配列方向と平行な方向(X軸方向)において、第一の溝59Aの幅が、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの幅と同一であると共に、第二の溝59Bの幅が、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの幅と同一であり、第一の溝59A内に、第一の棒状コア20Aの鍔部22Aの外周部が嵌め込まれ、かつ、第二の溝59B内に、第二の棒状コア20Bの鍔部22Bの外周部が嵌め込まれた構成を採用することができる。なお、第一の溝59Aおよび第二の溝59Bは、筒状収納部材の周方向において、周方向の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0062】
以上に説明した
図6〜
図9に示すアンテナ装置10C、10D、10E、10Fでは、筒状ケース50C、50D、50E、50Fの内周側に突起56、仕切り板58、あるいは、溝59A、59Bが設けられる。このため、アンテナ装置10C、10D、10E、10Fの組み立てに際しては、2本の棒状コア20をX軸方向に沿って筒状ケース50内に挿入することができない。それゆえ、
図6〜
図9に示すアンテナ装置10C、10D、10E、10Fの組み立てに用いる筒状ケース50C、50D、50E、50Fは、筒状ケース50C、50D、50E、50FをX軸方向と平行を成す平面に対して2分割して得られた2つの部材の組み合わせ(たとえば、2つの半筒状部材の組み合わせ、側面が開口した筒状ケース本体と側面蓋部材との組み合わせなど)から構成されることが好ましい。この場合、アンテナ装置10C、10D、10E、10Fの組み立てに際しては、たとえば、筒状ケース50C、50D、50E、50Fを構成する一方の半筒状部材に、コイル30や絶縁部材40が取付けられた棒状コア20を配置した後、一方の半筒状部材と他方の半筒状部材とを合体させて、筒状ケース50C、50D、50E、50Fを完成させることができる。また、蓋部材60は、筒状ケース50C、50D、50E、50Fと一体的に形成されていてもよい。
【0063】
なお、一般的なアンテナ装置では、1本の細長い棒状コアを内周側に収納すると共に、コイルが外周側に巻回されたボビンと、このボビンを内周側に収納する筒状ケースとを備えている。これに対して、
図1〜2、5〜9に例示した本実施形態のアンテナ装置10では、ボビンを用いず、筒状ケース50のみを用いている。すなわち、本実施形態のアンテナ装置10では、ボビンを省略した簡略化した構造を実現することが容易である。なお、ボビンを省略した場合、筒状ケース50に加わった衝撃は、ボビンに分散吸収されることなく棒状コア20に直接伝達され易くなる。したがって、一般的なアンテナ装置において、ボビンを省略し、ケースのみを用いた構造では、衝撃が加わった際に細長い棒状コアが破折しやすくなる。
【0064】
しかしながら、本実施形態のアンテナ装置10では、1本の細長い棒状コアの代わりに、この細長い棒状コアを2つ以上に分割した複数本の棒状コア20を用いている。このため、棒状コア20の軸方向と略直交する方向からの衝撃(横衝撃)が加わっても、破折し難い。また、横衝撃が加わる場合、最初に衝撃が加わり易いのは、棒状コア20の各部のうち筒状ケース50の内周面50Sと最も近接または接触する位置にある鍔部22である。そして、この鍔部22においては、棒状コア20の軸方向と直交する方向の厚みが最も大きいため、横衝撃が加わっても極めて破折し難くなる。すなわち、本実施形態のアンテナ装置10では、鍔部22を備えた第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bを少なくとも用いるため、ボビンを省略しても横衝撃による棒状コア20の破折が生じ難い。これに加えて、ボビンを省略できるため、アンテナ装置10の構造を簡略化することもできる。
【0065】
但し、本実施形態のアンテナ装置10では、無論、必要に応じて、内周側に第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bが収納され、外周側に第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bが少なくとも配置されたボビンと、このボビンを収納する筒状ケースとを組み合わせて用いることも可能である。
【0066】
なお、
図1〜2、5〜9には、2本の棒状コア20を用いたアンテナ装置10を例示したが、本実施形態のアンテナ装置10は、3本以上の棒状コア20を有していてもよい。この場合、少なくともいずれか2本の棒状コア20が鍔部22を有しており、アンテナ装置10内において、各々の棒状コア20の鍔部22同士が所定のギャップ長さGを保って対向配置されていればよい。また、必要に応じて、両端に鍔部22を設けた棒状コア20を用いてもよい。
【0067】
また、3本以上の棒状コア20を用いる場合、アンテナ装置10の組み立てに用いる筒状ケース50としては、2枚以上の仕切り板58を有する筒状ケース50を用いることも好適である。
図10は、本実施形態のアンテナ装置10に用いられる筒状ケース50の他の例を示す外観斜視図である。
図10に示す筒状ケース50G(50)は、四角筒状の筒状ケース50G内の空間を、X軸方向と平行を成す筒状ケース50Gの中心軸Bに対して略4等分するように、筒状ケース50Gの内周側に筒状ケース50Gと一体的に形成された3枚の仕切り板58が設けられた構造を有している。また、
図1に示す筒状ケース50Aの開口部52に設けられた蓋部材60の代わりに、
図10に示す筒状ケース50Gでは、蓋部材60に対応する頂壁部54Bが筒状ケース50Gと一体的に形成されている。筒状ケース50Gは、筒状ケース50Gの4つの外周面の一面側に開口部OPを設けた筒状ケース本体部50G1と、この開口部OPに対応する形状・サイズを有する板状の側面蓋部材50G2とから構成されている。なお、以上に説明した点を除けば、
図10に示す筒状ケース50Gは、
図1に示す筒状ケースと実質同様の構造を有する。
【0068】
図10に例示したような複数枚の仕切り板58を備えた筒状ケース50Gでは、筒状ケース50G内に、複数本の棒状コア20を容易、かつ、安定して保持することができる。また、筒状ケース本体部50G1の4つの外周面のうちの一つの面には開口部OPが設けられているため、アンテナ装置10の組み立てに際しては、同一方向から、複数本の棒状コア20を同時に筒状ケース50G内に挿入して配置することができる。そして、複数本の棒状コア20を同時に筒状ケース50G内に挿入・配置した後は、開口部OPに側面蓋部材50G2を取り付けて蓋をすることで、筒状ケース50Gを完成させることができる。これに加えて、樹脂材料と金型とを用いて筒状ケース50Gを成形する際に用いる金型も簡易かつ安価に作製できる。
【0069】
なお、棒状コア20の鍔部22の縁部は、
図1等に例示したように角張った形状を有するが、アンテナ装置10から発信される電波をより遠くに飛ばせるようにする観点からは、鍔部22の縁部が丸く形成されていてもよい。たとえば、
図1に示すアンテナ装置10Aに用いられる鍔部22の縁部が角張った第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bの代わりに、
図11に示すアンテナ装置10G(10)ように、鍔部22の縁部を丸く形成した第一の棒状コア20C(20)および第二の棒状コア20D(20)を用いることができる。
【0070】
本実施形態のアンテナ装置10は、たとえば、LF帯(30kHz〜300kHz)の近距離通信システムの送信用のアンテナ装置として用いることができ、主に車両ドアの施解錠を遠隔操作するキーレスエントリーシステムに用いることが好適である。一方、インダクタンス値Lは下式(1)で定義され、下式(1)中、Lはインダクタンス値、Aはコイルの巻数等に依存する定数値、Nは反磁界係数、μは透磁率である。
・式(1) L=A×μ/{1+N×(μ−1)}
【0071】
ここで、磁性体材料の透磁率μは、温度により変化するパラメーターである。そして、車両は、寒冷地域から熱帯地域までの様々な地域で利用される上に、同じ地域であっても夏場と冬場のように季節の変動もあるため、車両の使用温度は数十度以上の幅がある。それゆえ、磁性体材料からなる棒状コアを備えたアンテナ装置を、温度変化の大きい環境下で使用すると、インダクタンス値Lも大きく変動することになる。一方、反磁界係数Nは、磁性体の形状に依存する係数であり、具体的には、磁性体の外部に形成される磁束を打ち消す反対方向の磁束が磁性体内部にどの程度作用しているかを定量的に表す係数である。この反磁界係数Nは、磁性体の長さ(磁極間の距離)が、磁性体の長さ方向と直交する平面における磁性体断面の断面積よりも大きい形状である程(棒状コアの形状としては太く短い程)、1に近づき、その逆の形状である程(棒状コアの形状としては細く長い程)、0に近づく。そして、式(1)から、反磁界係数Nが大きければ大きい程(棒状コアの形状としては太く短い程)、透磁率μの変化に対するインダクタンス値Lの変動幅は小さくなる。
【0072】
したがって、温度変化の大きい環境下でアンテナ装置を使用する場合であっても、太く短い形状の棒状コアを使用すれば、インダクタンス値Lの変動を大幅に抑制できると考えられる。しかしながら、キーレスエントリーシステムに用いるアンテナ装置は寸法上の制約が大きいため、棒状コアの形状を短くすることは容易であっても、太くすることは難しい場合が多い。これに加えて、棒状コアの太さを維持したまま、単に短くしただけではインダクタンス値Lが大幅に低下してしまう。このため、インダクタンス値Lを維持しつつもインダクタンス値Lの温度依存性を小さくするためには、1本の細く長い棒状コアを2つ以上に分割して複数本の太く短い棒状コアに置き換えることが有効であると考えられる。
【0073】
表3は、20℃におけるインダクタンス値Lを基準値(0%)とした場合において、温度−40℃、−20℃、0℃および20℃におけるインダクタンス値Lの相対値の測定結果を示したものである。なお、表3中の実験例1は、
図12(A)に示すように1本の細長い棒状コア200の中心軸C1方向の中央部近傍にコイル210を設けた場合のインダクタンス値Lの測定結果であり、実験例2は、
図12(B)に示すように、
図12(A)に示す棒状コア200を2等分して得た第一の棒状コア202Aおよび棒状コア202Bのうち、第二の棒状コア202Bの中心軸D2方向の中央部近傍にコイル210を設けた場合とにおけるインダクタンス値Lの測定結果である。なお、
図12(B)において、2本の棒状コア202A、202Bは、各々の中心軸D1,D2が一致すると共に、ギャップ長さG>0mmとなるように、棒状コア202Aと棒状コア202Bとの間に若干の隙間を設けて直列に配置されている。表3に示す結果から明らかなように、1本の細く長い棒状コア200を2分割して、棒状コア全体としての長さを保ちつつ2本の太く短い棒状コア202A、202Bに置き換えることで、インダクタンス値Lの温度依存性を小さくできることが判る。すなわち、直列に配置された複数本の棒状コア20を備える本実施形態のアンテナ装置10は、1本の細長い棒状コアを用いるアンテナ装置と比べると、温度変化に対してもインダクタンス値L、さらには共振周波数が大きく変動するのを抑制することができる。