特開2018-99400(P2018-99400A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2018099400-風車式脱臭装置 図000003
  • 特開2018099400-風車式脱臭装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-99400(P2018-99400A)
(43)【公開日】2018年6月28日
(54)【発明の名称】風車式脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/16 20060101AFI20180601BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20180601BHJP
【FI】
   A61L9/16 D
   A61L9/01 L
   A61L9/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-247430(P2016-247430)
(22)【出願日】2016年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】716005656
【氏名又は名称】五十嵐 泰蔵
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 泰蔵
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 憲子
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB11
4C180BB12
4C180CC04
4C180CC05
4C180CC15
4C180CC16
4C180CC17
4C180EA13X
4C180EA14X
4C180EA22X
4C180EA26X
4C180EB21X
4C180HH05
(57)【要約】
【課題】 従来の脱臭機は吸着剤との接触時間は極めて短く、脱臭効率に問題があるとともに、ホコリも吸い込むため頻繁に目詰まりが起こり、したがって目詰まりを防ぐためのいろんな工夫を施した複雑な構造になっている
【解決手段】回転機構に接続された風車の1枚以上の羽根の表面あるいは表裏両面が、臭気成分吸着能を有する成分をシート状に成形したシートによって被覆された構成とした風車式脱臭装置。この構成により、簡易な構造でありながら吸着剤との接触時間が長く脱臭効率を向上させることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構に接続された風車の1枚以上の羽根の表面あるいは表裏両面が、臭気成分吸着能を有する成分をシート状に成形したシートによって被覆されたことを特徴とする風車式脱臭装置。
【請求項2】
前記風車が垂直軸風車であり、前記垂直軸風車はS字型、サボニウス型、直線翼型、クロスフロー型から選ばれることを特徴とする請求項1記載の風車式脱臭装置。
【請求項3】
前記垂直軸風車がサボニウス型風車またはクロスフロー型風車であることを特徴とする請求項2記載の風車式脱臭装置。
【請求項4】
臭気成分吸着能を有する成分をシート状に成形したシートが、活性炭素繊維、粉末・粒状活性炭、粉末・粒状の木炭、竹炭、ゼオライト、トルマリン、イオン交換樹脂から選ばれる臭気成分吸着剤を、(A)「抄紙技術によってペーパー化したシート(抄紙タイプ)」、(B)「不織布等のシート上にコーティングしたシート(コーティングタイプ)」、(C)「不織布で挟み込み高充填化した不織布タイプシート」、および(D)「セルロース繊維を織物状、編み物状にした後、焼成、炭化してシート化したシート」、の中から一種以上選ばれることを特徴とする請求項1−3記載の風車型脱臭装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脱臭装置に関し、簡単にかつ効率よく悪臭を除去することが出来る風車式脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年悪臭に関する人々の嫌悪感は強くなっており、いわゆる空気清浄機は大きな市場となっており、各家庭への浸透が顕著である。一方家庭以外でもいたるところで悪臭の問題が顕在化しており、例えば老人養護施設のベッドサイド、溶剤を使うネイルサロン、染毛時の悪臭に悩む理容室など幅広い分野で簡便な脱臭機が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−230626
【特許文献2】特開2004−069157
【特許文献3】特開2002−066236
【特許文献4】特開平10−015332
【特許文献5】特許第3939047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】

以上に述べた従来の脱臭機は吸着剤との接触時間は極めて短く、脱臭効率に問題があるとともに、ホコリも吸い込むため頻繁に目詰まりが起こり、したがって目詰まりを防ぐためのいろんな工夫を施した複雑な構造になっている。また、ファンによって周囲の空気を吸い込む構造になっており、ファンの回転による騒音が問題になっている。一方、実際悪臭が問題となっている個所をみてみると、各家庭も含めたトイレ内をはじめとして、排泄物による臭いが発生する老人ホームや介護施設のベッドサイド、溶剤を使用するネイルサロン、染毛を行う美容室、猫や犬などペットの家庭内飼育におけるペット用トイレサイド、動物病院、大学等の実験動物飼育室、など非常に多岐にわたる。したがって、脱臭効率がよく、騒音がなく、かつ簡単に必要な時に必要な所(例えばネイルサロンや美容室では処置を行うテーブル上)への移動が容易な脱臭機が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る風車式脱臭装置は、回転機構に接続された風車の1枚以上の羽根の表面あるいは表裏両面が、臭気成分吸着能を有する成分をシート状に成形したシートによって被覆されたことを特徴とする風車式脱臭装置である。
【0006】
上記課題解決手段による作用は次のとおりである。活性炭などの吸着物質をシート状に成形したシート(以下脱臭シートという)で風車の羽根表面を被覆し、風車を回転させることで、シートの表面に汚染空気をゆっくりと流して接触させることにより、接触面積を広くするとともに接触時間を従来よりも長くすることが可能となる。このことにより従来の問題点である、ファンによる騒音を低減できるとともに、目詰まりによる圧損の上昇を抑制でき、脱臭効率の向上が可能となる。
【0007】
脱臭シートは市場で簡単に入手することが出来る。本発明に使用される臭気成分吸着能を有する成分をシート状に成形したシートとしては、活性炭素繊維、粉末・粒状活性炭、粒状の木炭、竹炭、ゼオライト、トルマリン、イオン交換樹脂などから選ばれる臭気成分吸着剤を、(1)抄紙技術によってペーパー化したシート(抄紙タイプ)、(2)不織布等のシート上にコーティングしたシート(コーティングタイプ)、(3)不織布で挟み込み高充填化したシート(不織布タイプ)、および(4)セルロース繊維を織物状、編み物状にした後、焼成、炭化してシート化したシートなどが好ましいシートである。本発明では目的の臭い成分に効果的な吸着剤をシート化した物を選んで使うことが出来るし、組み合わせて使うこともできる。また、吸着物質が飽和吸着に達した場合は、天日で乾燥すれば吸着能を回復させることができることから経済性にも優れている。
なお、本発明に使用される臭気成分吸着剤は、例示した物に限定されるものではなく、幅広く使用可能であることはいうまでもない。
【0008】
本発明に係る風車式脱臭装置は、前記風車が垂直軸風車であり、前記垂直軸風車はS字型、サボニウス型、直線翼型、クロスフロー型から選ばれることを特徴とする風車式脱臭装置であってよい。風車が垂直軸風車であれば、風車の回転面を風向に追尾させる方向制御機構が不要になる。
【0009】
本発明に係る風車式脱臭装置は、前記垂直軸風車がサボニウス型風車またはクロスフロー型風車であることを特徴とする風車式脱臭装置であってよい。
【0010】
本発明に係る回転機構に接続された風車は、風力発電用に開発された垂直軸風車である。風車にはいろいろな種類があり、羽根の形状で分けると、プロペラ型、オランダ風車型、多翼型、ダリウス型、サボニウス型などがあり、また風車の回転軸が水平に置かれているか、垂直に置かれているかによって「水平軸風車」と「垂直軸風車」に分かれる。
【0011】
垂直軸風車にはパドル型、S字型、サボニウス型、直線翼型、ダリウス型、クロスフロー型などがあり、なかでもサボニウス型またはクロスフロー型風車は本発明に最適なものである。
【0012】
サボニウス型の基本は、半円筒形の羽根2枚で構成されるもので、左右の羽根を互い違いに円周方向に多少重なり合う部分を残し、ずらして組み合わせたもので、二つのバケット(半分割された円筒)を通り抜ける空気が、反対側バケットの裏面に流れ込むようにすることにより、回転方向に押す作用と向かい風の抵抗を抑える力となり、回転効率を上げている。本発明では基本型の風車を多段にすることもできるし、羽根枚数も増やすことも出来る。
【0013】
クロスフロー型風車は、細長い湾曲状の羽根を、上下の円盤外周縁部に適度な角度を付けて等間隔に多数設け、外部の風が羽根の隙間から内部空洞部を貫流して、反対側(風下の羽根の隙間)から外部へ排出しつつ、一定方向に回転する風車である。サボニウス型、クロスフロー型両方とも回転時の騒音が極めて低く、特にクロスフロー型は風に対しては無指向性で、全方位からの風を受けて回転することから、逆に風車を回転することで全方位からの空気を引きこむことになり、対象空気との接触面積や接触機会が増大することから本発明に好適な風車として使うことが出来る。
【0014】
本発明にサボニウス型が好適な理由としては、羽根の面積を大きくとることが出来るとともに、既存の風力発電用風車の中では少ない風力で回転する特徴があり、かつ回転時の発生音も小さいことから、いろんな場面において幅広い使い方が可能になることである。例えば扇風機の風でも、エアコンの風でも、窓際の外からの風でも簡単に風車を回転させることが出来る。一方、垂直軸を回転させれば対象空気を引きこむことが出来る。すなわち、悪臭発生個所から脱臭シートへの空気の流れを無理なく作ることが出来る。
【0015】
本発明にクロスフロー型風車が好適な理由としては、風に対して無指向性で、全方位からの風を受けて回転することから、逆に風車を回転することで全方位からの空気を引きこむことになり、対象空気との接触面積や接触機会を増大させることから本発明に好適な風車として使うことが出来る。また、これら以外にも特開2007-177796号公報にて提案された多重衝突型風車なども使用することが出来る。
【0016】
本発明の風車を構成する材料としては、金属、木材、プラスチック等広範囲に使うことが出来、また羽根状に成形した網を2枚重ねした間隙に脱臭シートを挟み込んで使用することも出来る。
【0017】
風車の回転は、垂直軸と接続された可変モーターによって行うことも出来、風車全体の大きさに応じてモーターと電源を選べばよい。例えば自動車の車内で使用する高さ20cm程度の小型の脱臭機の場合には、充電式乾電池で回転可能なモーターを使うことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の脱臭機は運転時の発生音が静かで、軽量で、かつ羽根表面が充分汚染空気と接触することから、必要な個所に必要な時に簡便にセットすることが出来、容易に目的の悪臭を低減することが可能となり、市場の広範な要求にこたえることが出来る
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のサボニウス型の平面図
図2】本発明のクロスフロー型の平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明のサボニウス型の平面図である。図1において、ブレードは半円筒形の羽根2枚で構成されており、2枚のブレードは円周方向に重なり合う部分を残し、ずらして組み合わされている。図1において、ブレードを上面から見た場合の起点と終点が、支持板である金属板の中心を通る直線状に配置されるようにブレードを取り付けている。ブレードの取り付け位置
を示している。
【0021】
図2は本発明のクロスフロー型の平面図である。図2において、細長い湾曲状の羽根を、支持部である円盤外周縁部に適度な角度を付けて等間隔に多数設けている。図2において、湾曲状の羽根を上面から見た場合の起点は支持部である円盤の中心から円周方向に離れた位置に配置されるように湾曲状の羽根を取り付けている。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
以下の方法に従ってサボニウス風車式脱臭機を製作した。
(1)直径89mm,高さ200mm,厚さ0.5mmの塩化ビニル製の筒を縦に2分割してブレードとし、ブレードの両面に、旭化成株式会社製の特殊活性炭入り消臭シートであるセミアを両面テープで張り付けて本発明になるブレードとした。
(2)直径148mmの円形の多数穴あきステンレス金属板を2枚用意し、図―1に準拠して2枚の金属板にブレードを取り付けた。
(3)2枚のステンレス板の中心の穴に径3mm、長さ300mmのステンレス棒を通して垂直軸として固定した。さらに全体を架台に取り付け、タミヤ製のミニモーター低速ギヤボックスとステンレス棒を接続して電池で回転させるようにして本発明のサボニウス風車式脱臭機(以下本発明品1という)を得た。
【0023】
(実施例2)
次に以下の方法でクロスフロー風車式脱臭機を製作した。
サボニウス風車式脱臭機製作で用いたと同様の塩化ビニル製の筒を縦に8分割してブレードとし、新日本テックス株式会社製の「わし炭シート」を各ブレードの両面に両面テープで張り付けて本発明になるブレードとした。
またサボニウス型脱臭機製作で用いたと同様の多数穴あきステンレス金属板の外縁から10mmの位置に図―2に準じて8本のブレードを取り付け、以下同様にモーターと接続して本発明品2を得た。
【0024】
(性能評価1)
本発明品1の脱臭効果を以下の方法で測定した。
(1)容量1m3(アクリル樹脂製)の密閉容器に50ppmになるようにアンモニアを投入し、攪拌ファンで攪拌した後ガス検知管(光明理化学工業株式会社製の製品名ガステック)にて初期濃度を測定したところ50ppmであった。
(2)この密閉容器に本発明品1を入れ、羽根回転数20rpmで運転し、15分後にアンモニア濃度を測定したところ1ppm以下であった。
(3)この密閉容器に50ppmになるようにホルムアルデヒドを投入し、攪拌ファンで攪拌した後ガステックにて初期濃度を測定したところ50ppmであった。
この密閉容器に本発明品1を入れ、羽根回転数20rpmで運転し、15分後にホルムアルデヒド濃度を測定したところ1ppm以下であった。
(性能評価2)
本発明品2の脱臭効果を以下の方法で測定した。
容量1m3(アクリル樹脂製)の密閉容器に20ppmになるようにトリメチルアミンを投入し、攪拌ファンで攪拌した後ガス検知管(光明理化学工業株式会社製の製品名ガステック)にて初期濃度を測定したところ20ppmであった。
この密閉容器に本発明品2を入れ、羽根回転数20rpmで運転し、15分後にトリメチルアミン濃度を測定したところ1ppm以下であった。
(性能評価3)
アセトンを使用しているネイルサロンの処置テーブル上に本発明品1を置き、20rpmで回転を続けたところ、作業中のアセトン臭はほとんどなくなった。また回転音も気にならないくらい静かであった。
(性能評価4)
6畳くらいの部屋に置かれている猫用トイレの近辺に本発明品2を置き、20rpmで運転を行ったところ臭いの減少は顕著であった。
(性能評価5)
中型セダンのダッシュボード上に本発明品2を置き、20rpmで運転を行ったところタバコ臭が顕著に減少した。また回転音も静かであった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上、本発明品による脱臭効果は非常に大きいことが明らかである。また、運転音も静かで、かつ軽くて移動も容易であることから、広範囲な用途に使われることが期待される。

図1
図2