【課題】圧力センサにおいて、部品点数、および、組立作業工程を増大させることなく、圧力センサにおけるセンサチップと金属ダイヤフラムとの間に生じる電界に対する影響を低減でき、さらに、圧力伝達媒体の封入量の増大を伴わず温度特性の安定化を図ることができること。
【解決手段】液封室13内におけるセンサチップ16の一方の端面とダイヤフラム32との間には、シールド部材21と、封入されている圧力伝達媒体PMよりも熱膨張率の低い環状部材17とが設けられているとともに、シールド部材21の電位は、センサチップ16の信号処理電子回路と同一電位とされているもの。
圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサチップと、該センサチップが配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切るダイヤフラムと、該センサチップに電気的に接続される入出力端子群とを含んでなるセンサユニットと、
前記センサチップを取り囲むように配置され、前記入出力端子群に電気的に接続される支持部材と、
前記支持部材により支持されることにより、前記液封室内における前記センサチップの一方の端面と前記ダイヤフラムとの間に配され、該センサチップの信号処理電子回路部に作用する電界を遮断する電界遮断部材と、
前記液封室内における前記電界遮断部材、および、前記支持部材の外周部に臨むように配される環状部材と、を備え、
前記電界遮断部材の電位が、前記センサチップの前記信号処理電子回路と同一の電位とされることを特徴とする圧力センサのシールド構造。
圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサチップと、該センサチップが配される液封室と該液封室に向き合う圧力室とを仕切るダイヤフラムと、該センサチップに電気的に接続される入出力端子群とを含んでなるセンサユニットと、
前記センサチップを取り囲むように配置され、前記入出力端子群に電気的に接続される支持部材と、
前記支持部材により支持されることにより、前記液封室内における前記センサチップの一方の端面と前記ダイヤフラムとの間に配され、該センサチップの信号処理電子回路部に作用する電界を遮断する電界遮断部材と、
前記液封室内における前記電界遮断部材、および、前記支持部材の外周部に臨むように配される環状部材と、
前記センサユニットと前記電界遮断部材と、前記環状部材とを収容するセンサユニット収容部と、を備え、
前記電界遮断部材の電位が、前記センサチップの前記信号処理電子回路と同一の電位とされることを特徴とする圧力センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、このような場合の対策としては、例えば、上述の液封室から離隔したハーメチックガラスの他方の端面から突出するリードピンと接続される上述のような押さえ板をさらに配置したり、また、別工程でリードピンと電気的に接続したりなどして、そのリードピンをセンサチップに集積されている電子回路のゼロ電位に接続することが考えられる。
【0006】
しかしながら、さらなる押さえ板の配置、および、リードピンと押さえ板とを接続する作業が必要とされることにより、圧力センサにおける部品点数、および、組立作業工程が増大するので得策とは言えない。
【0007】
また、電界の影響を取り除くための他の手法としては、センサチップと金属ダイヤフラムとの間隔を大きくとるという構成もある。このようにした場合、液封室空間も大きくしなければならず、充填するオイル量も増加する。周囲温度の変化によりシリコーンオイルの熱膨張による金属ダイヤフラムの変位量も変化するため、その結果として圧力センサの出力特性も変化してしまう。従って、部品点数、組立作業工程を増大させることなく、また液封室内空間も大きくすることなく、圧力センサにおけるセンサチップと金属ダイヤフラムとの間に生じる電界より受ける影響を低減させることが要望される。
【0008】
以上の問題点を考慮し、本発明は、圧力センサのシールド構造、および、それを備える圧力センサであって、部品点数、および、組立作業工程を増大させることなく、圧力センサにおけるセンサチップと金属ダイヤフラムとの間に生じる電界に対する影響を低減でき、さらに、圧力伝達媒体の封入量の増大を伴わず温度特性の安定化を図ることができる圧力センサのシールド構造、および、それを備える圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するために、本発明に係る圧力センサのシールド構造は、圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサチップと、センサチップが配される液封室と液封室に向き合う圧力室とを仕切るダイヤフラムと、センサチップに電気的に接続される入出力端子群とを含んでなるセンサユニットと、センサチップを取り囲むように配置され、入出力端子群に電気的に接続される支持部材と、支持部材により支持されることにより、液封室内におけるセンサチップの一方の端面とダイヤフラムとの間に配され、センサチップの信号処理電子回路部に作用する電界を遮断する電界遮断部材と、液封室内における電界遮断部材、および、支持部材の外周部に臨むように配される環状部材と、を備え、電界遮断部材の電位が、センサチップの信号処理電子回路と同一の電位とされることを特徴とする。上述の環状部材は、液封室に封入される圧力伝達媒体よりも熱膨張率が低いものであってもよい。上述の支持部材は、導電板であってもよい。環状部材と電界遮断部材とが、一体となってもよい。
【0010】
本発明に係る圧力センサは、圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサチップと、センサチップが配される液封室と液封室に向き合う圧力室とを仕切るダイヤフラムと、センサチップに電気的に接続される入出力端子群とを含んでなるセンサユニットと、センサチップを取り囲むように配置され、入出力端子群に電気的に接続される支持部材と、支持部材により支持されることにより、液封室内におけるセンサチップの一方の端面とダイヤフラムとの間に配され、センサチップの信号処理電子回路部に作用する電界を遮断する電界遮断部材と、液封室内における電界遮断部材、および、支持部材の外周部に臨むように配される環状部材と、センサユニットと電界遮断部材と、環状部材とを収容するセンサユニット収容部と、を備え、電界遮断部材の電位が、センサチップの信号処理電子回路と同一の電位とされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る圧力センサのシールド構造、および、それを備える圧力センサによれば、電界遮断部材の電位が、センサチップの信号処理電子回路と同一の電位とされることにより、センサチップに影響を及ぼす電界が生じる虞がないので部品点数、および、組立作業工程を増大させることなく、圧力センサにおけるセンサチップと金属ダイヤフラムとの間に生じる電界に対する影響を低減でき、さらに、圧力伝達媒体の封入量の増大を伴わず温度特性の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図3は、本発明に係る圧力センサのシールド構造の一例が適用された圧力センサの構成を概略的に示す。
【0014】
図3において、圧力センサは、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材30と、ろう付け等により、継手部材30のベースプレート28に連結され後述するセンサユニットを収容しセンサチップからの検出出力信号を所定の圧力測定装置に供給するセンサユニット収容部と、を含んで構成されている。
【0015】
金属製の継手部材30は、上述の配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部30fsを内側に有している。雌ねじ部30fsは、矢印Pの示す方向から供給される流体を後述する圧力室28Aに導く継手部材30のポート30aに連通している。ポート30aの一方の開口端は、継手部材30のベースプレート28とセンサユニットのダイヤフラム32との間に形成される圧力室28Aに向けて開口している。
【0016】
センサユニット収容部の外郭部は、カバー部材としての円筒状の防水ケース20により形成されている。樹脂製の防水ケース20の下端部には、開口部20bが形成されている。内側となる開口部20bの周縁の段差部には、継手部材30のベースプレート28の周縁部が係合されている。
【0017】
圧力室28A内には、継手部材30のポート30aを通じて流体の圧力が導入される。センサユニットのハウジング12の下端面は、ベースプレート28の周縁部に溶接により連結されている。
【0018】
圧力室28A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、金属製の円筒状のハウジング12と、圧力室28Aとハウジング12の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム32と、複数の圧力検出素子、および、圧力検出素子からの信号を処理する信号処理電子回路部を有するセンサチップ16と、接着剤層50を介してセンサチップ16を一端部で支持する金属製のチップマウント部材18と、センサチップ16に電気的に接続される入出力端子群40ai(i=1〜8)と、入出力端子群40aiおよびオイル充填用パイプ44をチップマウント部材18の外周面とハウジング12の内周面との間に固定するハーメチックガラス14と、を主な要素として含んで構成されている。
【0019】
ダイヤフラム32は、上述の圧力室28Aに向き合うハウジング12の一方の下端面に支持されている。圧力室28Aに配されるダイヤフラム32を保護するダイヤフラム保護カバー34は、複数の連通孔34aを有している。ダイヤフラム保護カバー34の周縁は、ダイヤフラム32の周縁とともに溶接によりハウジング12の下端面に接合されている。ハウジング12、ダイヤフラム32、ベースプレート28、および、継手部材30は、接続され導通している為、互いに同一電位である。また、入出力端子群40ai、チップマウント部材18は、ハーメチックガラス14等の絶縁物を介してハウジング12とは絶縁されて保持されている。
【0020】
金属製のダイヤフラム32と向かい合うセンサチップ16およびハーメチックガラス14の端面との間に形成される液封室13には、例えば、所定量のシリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体等の圧力伝達媒体PMがオイル充填用パイプ44を介して充填されている。なお、オイル充填用パイプ44の一方の端部は、オイル充填後、二点鎖線で示されるように、押し潰され閉塞される。
【0021】
入出力端子群40ai(i=1〜8)は、2本の電源用端子と、1本の出力用端子と、5本の調整用端子とから構成されている。各端子の両端部は、それぞれ、上述のハーメチックガラス14の端部から液封室13に向けて突出し、または、後述する端子台24の孔24bに向けて突出している。2本の電源用端子と、1本の出力用端子とは、接続端子36を介して各リード線38の芯線38aに接続されている。各リード線38は、例えば、所定の圧力測定装置に接続される。なお、
図3においては、8本の端子うちの4本の端子だけが示されている。入出力端子群40aiと後述するセンサチップ16との間は、ボンディングワイヤWiで接続されている。
【0022】
入出力端子群40aiを整列させる端子台24は、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を主な成分として成形されている。端子台24は、入出力端子群40aiが挿入される複数個の孔24bとともに、内側に所定の容積の空洞部24Aを有している。端子整列部24Tは、互いに離隔した複数個の孔24bを有し上述の基端部と直交するように一体に成形されている。接着面としての端子台24の基端部の下端面は、ハウジング12の上端面に、シリコーン系接着剤により接着されている。これにより、所定の厚さを有する環状の接着層10aが、ハウジング12の上端面に形成されることとなる。また、入出力端子群40aiが突出するハーメチックガラス14の上端面全体には、シリコーン系接着剤からなる被覆層10bが所定の厚さで形成されている。
【0023】
端子整列部材としての端子台24の外周面、および、端子台24に連結され上述の端子整列部24Tの孔24bおよび端子台24の上部の開口端を覆うエンドキャップ22の外周面と防水ケース20の内周面との間、また、防水ケース20の内周面とハウジング12の外周面との間には、封止材26が、所定量、充填されている。端子台24およびエンドキャップ22は、上述のセンサユニットを挟んで継手部材30のベースプレート28と向き合って防水ケース20内に配置されている。エンドキャップ22の上端面は、防水ケース20の開口端から上方に向けて突出している。即ち、エンドキャップ22の上端面の位置は、防水ケース20の開口端面の位置よりも高い位置となる。
【0024】
センサチップ16は、例えば、液封室13の内側となるチップマウント部材18の一端部に接着剤層50を介して接着されている。略矩形状のセンサチップ16の外寸は、チップマウント部材18の直径よりも大に設定されている。
【0025】
液封室13内には、例えば、円盤状の導電板19がセンサチップ16を囲むように、ハーメチックガラス14の一方の端面に支持されている。導電板19は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁材料で作られており、貼着、蒸着、めっき等によって形成される金、銀、銅、アルミニウム等の金属膜からなる導電層が、一方の端面に形成されて一体となっている。導電板19は、導電層がある一方の端面が、ダイヤフラム32と対向し、絶縁層である他方の端面でハーメチックガラス14の表面に支持されている。
【0026】
図1および
図2に拡大されて示されるように、液封室13内におけるセンサチップ16の一方の端面とダイヤフラム32との間には、電界遮断部材としてのシールド部材21と、シールド部材21、および、導電板19に結合される環状部材17とが設けられている。シールド部材21は、センサチップ16の信号処理電子回路部に対する不所望な電界を遮断するものとされる。シールド部材21は、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の導電性の金属材料で作られてもよいし、あるいは、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等の絶縁材料で作られ、接着、蒸着、スパッタリング、めっき等によって成膜される導電性の金属膜で被覆され一体となっていてもよい。
【0027】
図2に示されるように、キャップ状のシールド部材21における4個の固定端部は、円盤状の導電板19の端面におけるセンサチップ16の外周部に近接して接合され導通している。シールド部材21には、図示が省略されるが、複数個の開口部が側面に設けられており、圧力が圧力伝達媒体PMを介してセンサチップ16に伝搬するように、圧力伝達媒体PMが、開口部を介して移動可能な形状となっている。
【0028】
導電板19は、例えば、入出力端子群40aiのうちのいずれか一本以上、例えば、ゼロ(V)の端子とボンディングワイヤWiを介して接続され導通している。この様な構成により、シールド部材21および導電板19の電位は、センサチップ16に搭載されている電子回路の電位と同一電位となっている。
【0029】
環状部材17は、圧力伝達媒体PMよりも熱膨張率の低い、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等の絶縁材料で成形されている。環状部材17は、導電板19の外周縁と係合する段差部を一方の開口端部に有している。また、環状部材17は、シールド部材21の外観形状に対応した開口部17Aを中央部に有している。これにより、シールド部材21が、環状部材17の開口部17A内に所定の隙間をもって挿入される。なお、環状部材17の形状は、斯かる例に限られることなく、液封室13内に充填される圧力伝達媒体の容積が減少するような形状であればよく、例えば、円筒形以外の六角形、八角形等の多角形で成形されてもよい。また、環状部材17の横断面の形状は、矩形、正方形に限られることなく、例えば、Oリングのような円形、VリングのようなV字形であってもよい。
【0030】
液封室13内に充填される圧力伝達媒体の容積は、シールド部材21および環状部材17により、ハウジング12の内周部によって形成される液封室13の全内容積(環状部材17が設けられない場合)に比して小となる。これにより、液封室13内に充填される圧力伝達媒体の量が減少するので圧力センサの出力における温度特性が向上することとなる。
【0031】
シールド部材21におけるセンサチップ16全体を覆う部分は、センサチップ16の端面との間に所定の隙間が形成されている。なお、シールド部材21の外寸は、センサチップ16の信号処理電子回路部に対する不所望な電界を遮断するように、センサチップ16の信号処理電子回路部の大きさに応じて適宜、設定されてもよい。
【0032】
従って、ダイヤフラム32とセンサチップ16の信号処理電子回路部との間に、センサチップ16の電位と同一電位となるシールド部材21を配置することにより、ユニットの一次側電源(不図示)と同一電位であるダイヤフラム32と、制御回路(不図示)側との電位差によって生じるセンサチップ16に作用する電界は、シールド部材21により遮断される。また、シールド部材21の電位とセンサチップ16の電位とは同一電位であるので電界はこれら相互間に発生しない。そのため、センサチップ16とダイヤフラム32との間に生じる電位差は、センサチップ16に作用しないのでセンサチップ16における電子回路に対する影響を防止することができる。
【0033】
図4は、本発明に係る圧力センサのシールド構造のさらなる他の一例が適用された圧力センサの構成を部分的に示す。
【0034】
図4に示される圧力センサは、圧力が検出されるべき流体が導かれる配管に接続される継手部材60と、ろう付け等により、継手部材60とベースプレート58とが連結され後述するセンサユニットを収容する金属製のセンサハウジング56と、を含んで構成されている。
【0035】
継手部材60のポート60aの一方の開口端は、継手部材60のベースプレート58とセンサユニットのダイヤフラム70との間に形成される圧力室58Aに向けて開口している。
【0036】
圧力室58A内の圧力を検出し検出出力信号を送出するセンサユニットは、圧力室58Aとセンサハウジング56の内周部とを隔絶する金属製のダイヤフラム70と、複数の圧力検出素子、および、圧力検出素子からの信号を処理する信号処理電子回路部を有するセンサチップ66と、センサチップ66の外周部が挿入される孔を有しセンサチップ66を取り囲む導電板62と、センサチップ66に電気的に接続される入出力端子群54ai(i=1〜8)と、を主な要素として含んで構成されている。
【0037】
センサチップ66は、センサハウジング56の内周部における所定位置に接着され支持されている。
【0038】
金属製のダイヤフラム70は、センサハウジング56の接合端とベースプレート58の接合端との間に溶接され、固定されている。従って、センサハウジング56は、ダイヤフラム70、ベースプレート58、および、継手部材60と接続され導通しており、互いに同一電位となっている。
【0039】
ダイヤフラム70とセンサハウジング56の内周面で形成された密封空間である液封室68には、例えば、所定量のシリコーンオイルまたはフッ素系不活性液体等のような圧力伝達媒体PMが充填されている。圧力伝達媒体PMは、センサハウジング56の孔56aを通じて充填された後、栓部材52により孔56aが閉塞される。入出力端子群は、個々にハーメチックガラス(不図示)を介してセンサハウジング56から絶縁されて支持されている。入出力端子群54aiとセンサチップ66との間は、ボンディングワイヤWiで接続されている。
【0040】
液封室68内には、例えば、矩形状の導電板62がセンサチップ66を囲むように、センサハウジング56の一方の端面に支持されている。導電板62は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁材料で作られており、貼着、蒸着、めっき等によって成膜される金、銀、銅、アルミニウム等の金属膜からなる導電層が、一方の端面に形成され一体となっている。導電板62は、導電層がある一方の端面がダイヤフラム70と対向し、絶縁層である他方の面でセンサハウジング56に支持されている。また、液封室68内におけるセンサチップ66の一方の端面とダイヤフラム70との間には、電界遮断部材としてのシールド部材64と、シールド部材64、および、導電板62に結合される環状部材65とが設けられている。シールド部材64は、センサチップ66の一方の端面全体を所定の間隔をもって覆い、センサチップ66の信号処理電子回路部に対する不所望な電界を遮断するものとされる。シールド部材64は、例えば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の導電性の金属材料で作られてもよいし、あるいは、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等の絶縁材料で作られ、接着、蒸着、スパッタリング、めっき等によって成膜される導電性の金属膜で被覆され一体となってもよい。
【0041】
シールド部材64の一対の固定端部と、導電板62とは、互いに導体面で接合され導通するとともに、環状部材65の内周部と一体に成形されている。導電板62は、入出力端子群54aiのうちいずれか1本以上の端子、例えば、ゼロ(V)用端子とボンディングワイヤWiを介して接合され導通している。この様な構成により、シールド部材64および導電板62の電位は、センサチップ66に搭載されている電子回路の電位と同一電位となっている。従って、シールド部材64は、絶縁物(導電板62の絶縁層)を介して一次側電位と同一電位であるセンサハウジング56に支持されている。
【0042】
環状部材65は、圧力伝達媒体PMよりも熱膨張率の低い材料で、例えば、樹脂、ガラス、セラミック等ののうちのいずれかの絶縁材料で、成形されている。また、環状部材65は、シールド部材64の外観形状に対応した開口部65Aを中央部に有している。これにより、シールド部材64が、環状部材65の開口部65A内に所定の隙間をもって挿入される。環状部材65におけるセンサチップ66の一方の端面に向き合う面には、各ボンディングワイヤWiが配される複数個の溝65Giが放射状に所定の深さで形成されている。
【0043】
なお、上述の例においては、導電板62の外周部は、
図4に示されるように。環状部材65の内周部に近接して配置されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、導電板62の外周部が、環状部材65の内周部から離隔した位置で、環状部材65に臨むように配置されてもよい。
【0044】
上述の例においては、シールド部材64の一対の固定端部と、導電板62とは、互いに導体面で接合され導通するとともに、環状部材65の内周部と一体に成形されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、シールド部材が接合される導電板がセンサハウジング56の内周面に固定された後、シールド部材が、別体の環状部材の内周部に組み付けられるように構成されてもよい。
【0045】
さらに、例えば、
図6(A)に示されるように、導電板が、絶縁材料で作られたコア部材63と、導電性材料で作られコア部材63を覆うカバー部材67とからなるものでもよい。なお、
図6(A)〜(C)は、シールド部材64は、図示が省略されている。環状のコア部材63は、内周縁部に段差部63Rを一方の端面に隣接して有している。カバー部材67は、コア部材63におけるダイヤフラム70に向き合う他方の端面を覆う円板状部67Aと、円板状部67Aに連なりコア部材63の内周部を覆う内周縁部67Cと、内周縁部67Cに連なり、かしめ加工により、コア部材63の段差部63Rに固定される固定部67Bとからなる。導電板のコア部材63の一方の端面は、センサハウジング56の内周面に接着されている。その際、
図6(B)に示されるように、所定の隙間が導電板におけるカバー部材67の固定部67Bとセンサハウジング56の内周面との間、および、センサチップ66の外周面と導電板におけるカバー部材67の内周縁部67Cとの間に形成されることによって、センサハウジング56とカバー部材67との接触が、防止される。
【0046】
さらにまた、例えば、
図6(C)に示されるように、導電板が、絶縁材料で作られたコア部材63´と、導電性材料で作られコア部材63´を覆うカバー部材67´とからなるものでもよい。環状のコア部材63´は、外周縁部に薄肉の張出部63´Fを有している。カバー部材67´は、コア部材63´におけるダイヤフラム70に向き合う他方の端面を覆う円板状部67´Aと、円板状部67´Aに連なりコア部材63´の張出部63´Fの外周部を覆う外周縁部67´Cと、外周縁部67´Cに連なり、かしめ加工により、コア部材63´の張出部63´Fの一方の端面に固定される固定部67´Bとからなる。導電板のコア部材63´の内周縁部の周囲の端面は、センサハウジング56の内周面に接着されている。その際、
図12(C)に示されるように、所定の隙間が、導電板におけるカバー部材67´の固定部67´Bとセンサハウジング56の内周面との間、ならびに、センサチップ66の外周面と導電板におけるカバー部材67´の内周縁部67´a、およびコア部材63´の内周面との間に形成されることによって、センサハウジング56とカバー部材67´との接触が防止される。
【0047】
液封室68内に充填される圧力伝達媒体の容積は、シールド部材64および環状部材65により、ハウジング56の内周部によって形成される液封室68の全内容積(環状部材65が設けられない場合)に比して小となる。これにより、液封室68内に充填される圧力伝達媒体の量が減少するので圧力センサの出力における温度特性が向上することとなる。従って、ダイヤフラム70とセンサチップ66との間に、センサチップ66の信号処理電子回路部の電位と同一電位となるシールド部材64を配置することにより、ユニットの一次側電源(不図示)と同一電位であるダイヤフラム70と、制御回路(不図示)側との電位差によって生じるセンサチップ66に作用する電界は、シールド部材64により遮断される。また、シールド部材64の電位とセンサチップ66の電位は、同一電位であるので電界はこれら相互間に発生しない。そのため、センサチップ66とダイヤフラム70との間に生じる電位差は、センサチップ66に作用しないのでセンサチップ66における電子回路に対する影響を防止することができる。
【0048】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る圧力センサのシールド構造の一例によれば、圧力センサにおいて、センサチップ16および66とダイヤフラム32および70との相互間に生じる電位に起因したセンサチップ内の電子回路への影響(圧力センサの出力変動)が、シールド部材21、またはシールド部材64、導電板19、62により回避されるので部品点数、および、組立作業工程を増大させることなく、センサチップとダイヤフラムとの間に生じる電界に対する影響を低減できることとなる。また、環状部材17、65により圧力伝達媒体の封入量の増大を伴わず、温度特性を安定させることができる。