【解決手段】CD138特異的キメラ抗原受容体(CAR)およびこれと機能的に関連する1つまたは複数の低酸素状態応答性調節エレメントをコードし、誘導性自殺遺伝子をコードする配列をさらに含む発現ベクターを開発する。該ベクターを含み、その発現が環境特異的調節の制御下にあるCD138特異的キメラ抗原受容体を有する細胞を作成する。
CD138特異的キメラ抗原受容体(CAR)をコードし、a)該CD138特異的CARと機能的に関連する1つもしくは複数の低酸素状態応答性調節エレメント、および/またはb)誘導性自殺遺伝子を含む発現ベクター。
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターである、請求項1または3に記載のベクター。
前記CD138特異的CARが、CD28、OX40、4〜1BB、ICOS、およびこれらの組合せからなる群から選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1または3に記載のベクター。
前記自殺遺伝子が、カスパーゼ9、単純ヘルペスウイルス、チミジンキナーゼ(HSV−tk)、シトシンデアミナーゼ(CD)、およびチトクロームP450からなる群から選択される、請求項2または3に記載のベクター。
前記低酸素状態応答性調節エレメントが、VEGF低酸素状態応答性調節エレメント、α1B−アドレナリン作動性受容体低酸素状態応答性調節エレメント、脂肪酸シンターゼ低酸素状態応答性調節エレメント、またはこれらの組合せを含む、請求項1または2に記載のベクター。
前記ウイルスが、EBV、CMV、アデノウイルス、BKウイルス、HHV6、RSV、インフルエンザ、パラインフルエンザ、ボカウイルス、コロナウイルス、LCMV、ムンプス、麻疹、メタ肺炎ウイルス、パルボウイルスB、ロタウイルス、ウェストナイルウイルス、JC、HHV7、またはHIVである、請求項19に記載の細胞。
前記CARが、黒色腫関連抗原(MAGE)、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、スルビビン、CD19、CD20、CD22、k軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、ErbB二量体、EGFr vIII、癌胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7−H6、IL−13受容体a2、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW−MAA、CD171、Lewis Y、G250/CAIX、HLA−A1 MAGE A1、HLA−A2 NY−ESO−1、PSCA、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、avb6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、CD44v6、二重抗原、およびユニバーサルからなる群から選択される抗原に特異的である、請求項21に記載の細胞。
前記活性化ドメインが、CD3、CD16、CD28、CD40、CD134、およびCD137からなる群から選択される分子を認識するscFVである、請求項1に記載の細胞。
腫瘍抗原特異的CARをコードし、a)該腫瘍抗原特異的CARと機能的に関連する1つもしくは複数の低酸素状態応答性調節エレメント、および/またはb)誘導性自殺遺伝子を含む発現ベクター。
前記腫瘍抗原が、黒色腫関連抗原(MAGE)、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、スルビビン、CD19、CD20、CD22、k軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、ErbB二量体、EGFr vIII、癌胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7−H6、IL−13受容体a2、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW−MAA、CD171、Lewis Y、G250/CAIX、HLA−A1 MAGE A1、HLA−A2 NY−ESO−1、PSCA、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、avb6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、CD44v6、二重抗原、およびユニバーサルからなる群から選択される、請求項31または33に記載のベクター。
【発明を実施するための形態】
【0029】
長年にわたる特許法の慣例に沿って、請求項を含め本明細書において、語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、含む(comprising)という語と共に使用される場合、「1つまたは複数」を意味する。本開示のいくつかの実施形態は、開示の1種または複数の要素、方法ステップ、および/または方法からなるか、本質的になるものでありうる。本明細書に記載のいずれの方法または組成物も、本明細書に記載の任意の他の方法または組成物に関して実行できることが企図されている。
【0030】
本明細書で使用される「低酸素性」という用語は、20%のO
2分圧を指し、本明細書で使用される「低酸素状態」は、1%のO
2分圧を指す。特定の実施形態では、生理学的組織の低酸素状態は、<約60mmHgであると考えられる。
【0031】
I.一般的な実施形態
本開示の実施形態では、CD138を発現するがん細胞を処置するための方法および組成物がある。特定の実施形態では、がんは、多発性骨髄腫(MM)などの造血器悪性腫瘍、または乳がんなどの固形腫瘍、およびほぼ不変的に低酸素性である固形腫瘍である。方法および組成物は、必要がある特定の組織または細胞へと療法を送達するが、CD138を発現する非がん性細胞への送達は回避する処置を提供することと関連する。方法および組成物は、CD138を発現するがん性組織またはがん性細胞へと療法を送達するが、CD138を発現するが、がん療法を必要としない細胞への送達は回避する処置を提供することと関連する。特定の実施形態では、療法は、低酸素性の組織または環境では有効であり、正常酸素性の組織または環境では無効である。本開示の態様では、療法は、低酸素性の組織または環境では有効であり、正常酸素性組織または正常酸素性環境には治療用部分が存在しないため、正常酸素性の組織または環境では有効でない。いくつかの場合では、細胞療法は、低酸素性の組織または環境では有効であることができ、正常酸素性組織または正常酸素性環境では、細胞が治療用部分を発現しないため、正常酸素性の組織または環境では有効でないが、この治療用部分は、低酸素性組織または低酸素環境には存在する。本開示の実施形態では、治療用部分は、少なくともCD138抗原に特異的なCARを含む。他の組織特異的抗原も、組織特異的発現または環境特異的発現を示す対応する部分で標的化することができる。
【0032】
本開示の特定の態様は、MMための療法であって、MMを有することが知られるか、MMを有することが疑われるか、またはMMを発症する危険性がある個体のための療法を提供する。いくつかの場合では、個体がMMを有することを、CD138陽性がん細胞の同定以外の手段によって決定することもできる。特定の実施形態では、MMのための療法は、既に個体に提供されているか、または提供されつつある。個体は、療法の初期において、または治療法を施してある期間が経過した後において、1つまたは複数のいかなる種類のMM療法(本開示以外の療法)に対しても、不応性でありうる。
【0033】
本開示の特定の態様は、乳がんための療法であって、乳がんを有することが知られるか、乳がんを有することが疑われるか、または乳がんを発症する危険性がある(1つまたは複数の指標となる遺伝子マーカーまたは家族歴もしくは個人歴を有するなどの)個体のための療法を提供する。いくつかの場合では、個体が乳がんを有することを、CD138陽性がん細胞の同定以外の手段によって決定することもできる。特定の実施形態では、乳がんのための療法は、既に個体に提供されているか、または提供されつつある。個体は、療法の初期において、または療法を施してある期間が経過した後において、1つまたは複数のいかなる種類の乳がん療法(本開示以外の療法)に対しても、不応性でありうる。
【0034】
MMのための治療選択肢の有意な改善にも関わらず、MMは、依然として本質的に治癒不可能である。特に、本発明者らおよび他の発明者らは、腫瘍関連抗原(TAA)に標的化され、適切な共刺激性エンドドメインを組み込む、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞が、B細胞系造血器悪性腫瘍を処置する有望な手段であることを示した。悪性形質細胞(PC)は、高レベルのCD138抗原を発現するため、この抗原を標的化するようにリダイレクトされたT細胞によって、効果的に消失させうることが推論された。実際、初期の研究では、CD138特異的CAR(CAR.CD138)は、CD138
+腫瘍細胞に対する有用な活性を示した。CD138の使用に対する1つの警告は、抗原は、例えば、上皮細胞、間葉細胞、血管平滑筋細胞、内皮細胞、および神経細胞の側底面上でも低レベルで発現され、CARで改変されたT細胞による、「オン・ターゲット」ではあるが、「オフ器官」または「オフ組織」である毒性の危険性を増大させることである。したがって、本開示の特定の実施形態では、低酸素状態応答性エレメントの誘導的制御下でCAR.CD138を発現することによって、正常骨髄微小環境およびMM骨髄(BM)微小環境の低酸素的性質を利用することができる。CARで改変されたT細胞を低酸素環境内で共刺激するのに最も有利な免疫エレメントを、in vitro、および、異種マウスモデルなど、in vivoの両方において規定することもできる。最後に、本開示の実施形態の安全性をさらに増大させるために、コンストラクト内に、誘導性カスパーゼ9(iC9)に基づき前に検証された自殺遺伝子などの自殺遺伝子を組み込むこともできる。この戦略は、予測より多数のT細胞が、低酸素性BM環境を回避し、「オン・ターゲット」ではあるが「オフ器官」である毒性を引き起こすのに十分な程度に機能的なCAR発現を保持する場合、CARで改変されたT細胞の急速な除去を可能にする。ある特定の態様では、臨床グレードのレトロウイルスベクターと、MM患者に由来する、CARで改変された自己T細胞株とを製造し、これらの細胞を、再発したMMを有する患者であって、フェーズIの臨床試験に登録された患者へと注入することができる。ある特定の場合には、手順の安全性、in vivoにおける、注入されたT細胞の生存、およびBM中のこれらの細胞の蓄積、ならびにBM中と対比された、末梢血(PB)中のT細胞によるCARの示差的発現を評価することができる。毒性が生じる場合は、in vivoにおけるiC9安全性遺伝子の活性を決定することができる。T細胞の注入が、検出可能な疾患を有する患者における疾患のコントロールをもたらすのかどうかを評価することもできる。
【0035】
低酸素状態応答性エレメント(HRE)の誘導的制御下でCAR.CD138を発現することによって、MMにおけるBM微小環境の低酸素的性質を利用することが本開示の目的である。CARで改変されたT細胞を低酸素環境内で共刺激するのに最も有利な免疫エレメントを、in vitro、および、異種マウスモデルであるin vivoの両方において規定することもできる。最後に、提起されたアプローチの安全性をさらに増大させるために、コンストラクト内に、誘導性カスパーゼ9(iC9)に基づき前に検証された自殺遺伝子を組み込むこともできる。ある特定の実施形態では、低分子、例えば、AP1903を使用して、誘導性カスパーゼ9(iカスパーゼ9)が、二量体化可能である。例えば、Straathofら、Blood、105:4247〜4254(2005)を参照されたい。
【0036】
臨床グレードのベクター(レトロウイルスベクターなど)と、MM患者に由来する、CARで改変された自己T細胞株とを製造し、これらを、再発したMMを有する患者者へと注入することができる。手順の安全性を評価し、毒性が生じる場合は、二量体化薬を投与して、iC9安全性遺伝子を、in vivoにおいて活性化させることができる。T細胞の注入が、検出可能な疾患を有する患者における疾患のコントロールをもたらすのかどうかを評価することもできる。
【0037】
それらのin vivoにおける生存、および二量体化薬のこれらの細胞に対するその後の効果を、in vitroにおいて測定し、(臨床的に適応である場合は)in vivoにおいても測定することによって、注入されたCAR−T細胞の運命を特徴付けることが本開示の目的である。BM中および末梢血中のこれらの細胞の蓄積、各環境におけるT細胞によるCARの示差的発現、ならびに、これらと関連する、腫瘍細胞を殺滅させる能力を比較することもできる。細胞、および、必要な場合、二量体化薬は、それらを必要とする個体へと、臨床において提供することができる。
【0038】
本開示における実施形態は、ワクチン接種によって、MM患者において、スルビビン特異的CTLを誘発するであろう。補完的なアプローチでは、本開示は、造血器悪性腫瘍におけるCAR技術を使用して、標的の腫瘍性PCを提供する。
【0039】
II.造血器悪性腫瘍
造血器悪性腫瘍には、血液、骨髄、およびリンパ節に影響を及ぼすがんの種類が含まれる。造血器悪性腫瘍は、2つの主要な血液細胞系統:骨髄細胞株またはリンパ細胞株のいずれかに由来しうる。骨髄細胞株は通常、顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ、および肥満細胞を産生する;リンパ細胞株は、B細胞、T細胞、NK細胞、および形質細胞を産生する。リンパ腫、リンパ性白血病、および骨髄腫は、リンパ細胞株に由来するが、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、および骨髄増殖性疾患は、骨髄由来である。ある特定の実施形態では、これらの造血器悪性腫瘍のいずれも、本開示の方法および/または組成物で処置可能である。
【0040】
多発性骨髄腫(MM;これは、形質細胞骨髄腫またはカーラー病としても知られている)は、本開示の方法および組成物で処置することができる。MMとは、通常は抗体の産生の一因となる白血球の一種である、形質細胞のがんである。MMでは、複数種の異常な形質細胞が骨髄中に蓄積され、正常な血液細胞の産生を破壊する。MMは、血液検査(例えば、血清タンパク質電気泳動または血清中遊離カッパ/ラムダ軽鎖アッセイ)、骨髄検査、尿タンパク質電気泳動、および最も罹患しやすい骨のX線など、様々な形で診断することができる。治癒不可能であると考えられているが、ステロイド、化学療法、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、免疫調節薬(IMiD)など、サリドマイドまたはレナリドマイド、放射線、および/または幹細胞移植で処置することもできる。ある種の症状には、例えば、例えば、カルシウムの増大、腎不全、貧血、および/または骨病変が含まれる。本開示の処置は、病期I、病期II、または病期IIIのMMに有用である。MMのための精密検査の一部には、例えば、血清中遊離軽鎖アッセイ、骨検索、骨髄生検、および/またはIgGの定量的測定が含まれうる。
【0041】
本開示の実施形態に加えて、MMを有する患者には、特に、個体が65歳未満の場合、自己造血幹細胞移植を伴う高用量化学療法も提供することができる。幹細胞移植の前に、これらの個体には、サリドマイド、デキサメタゾン、ボルテゾミブベースのレジメン、レナリドマイド、またはこれらの組合せなどの誘導化学療法の初期コースを施すことができる。自己または同種幹細胞移植(ASCT)も利用することができる。65歳を超える個体は、メルファラン、プレドニゾン、ボルテゾミブ、メルファラン、レナリドマイド、またはこれらの組合せで処置することができる。
【0042】
III.CD138
CD138(シンデカン1としても知られている)とは、ヒトでは、SDC1遺伝子によってコードされるタンパク質である。例示として、それらのいずれも、参照によりそれらの全体として本明細書に組み込む、GenBank(登録商標)受託番号BC008765は、例示のCD138ポリヌクレオチドを提供しており、GenBank(登録商標)受託番号AAH08765は、例示のCD138ポリペプチドを提供している。このような配列は、例えば、CD138特異的CAR分子を生成するのに、当業者に有用である。
【0043】
IV.キメラ抗原受容体(CAR)
いくつかの場合では、CD138特異的CARを発現するように細胞を改変する。腫瘍指向性キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように、ヒトTリンパ球を遺伝子操作することにより、タンパク質抗原のプロセシングおよび提示の異常に起因する腫瘍の免疫回避機構をバイパスする、抗腫瘍エフェクター細胞をもたらすことができる。さらに、これらのトランスジェニック受容体は、タンパク質由来ではない腫瘍関連抗原も指向しうる。本開示のある特定の実施形態では、少なくとも1つのCARを含むように改変されたCTLがある。特定の態様では、特定の細胞は、2つ以上のCD138特異的CARを含めた、2種以上のCD138特異的認識部分の発現を含む。
【0044】
本開示には、CAR(これは、キメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体とも呼ぶことができる)と称する人工的T細胞受容体が含まれる。本開示の実施形態では、CARは、CD138に特異的である。CARには一般に、エクトドメイン、膜貫通ドメイン、およびエンドドメインが含まれうる。特定の実施形態では、CARは、第一世代のCAR、第二世代のCAR、または第三世代のCARでありうる。
【0045】
特定の場合には、免疫細胞には、キメラであり、非天然であり、少なくとも部分的に人為によって操作されており、CD138を指向するCARが含まれる。特定の場合には、操作されたCARは、1つ、2つ、3つ、4つ以上の構成要素を有し、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の構成要素は、Tリンパ球の、腫瘍抗原を含むがん細胞への標的化または結合を容易にする。特定の実施形態では、CARは、腫瘍抗原に対する抗体、細胞質シグナル伝達ドメインの一部もしくは全部、および/または1つもしくは複数の共刺激性分子の一部もしくは全部、例えば、共刺激性分子のエンドドメインを含む。特定の実施形態では、抗体は、一本鎖可変断片(scFv)である。ある特定の態様では、抗体は、例えば、CD138を発現するがん細胞の細胞表面上の標的抗原を指向する。ある特定の実施形態では、キメラ受容体の、標的抗原とのエンゲージメントに続き、T細胞受容体ζ鎖に由来する細胞質シグナル伝達ドメインなどの細胞質シグナル伝達ドメインを、Tリンパ球の増殖およびエフェクター機能のための刺激性シグナルをもたらすために、キメラ受容体の少なくとも一部として利用する。例には、CD27、CD28、4〜1BB、およびOX40などの共刺激性分子、またはIL7およびIL15など、サイトカイン受容体のシグナル伝達構成要素に由来するエンドドメインが含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、共刺激性分子を利用して、抗原のエンゲージメントの後でCARによってもたらされる、T細胞の活性化、増殖、および細胞傷害作用を強化する。特定の実施形態では、共刺激性分子は、CD28、OX40、および4〜1BBであり、サイトカインおよびサイトカイン受容体は、IL7およびIL15である。
【0046】
一般に、CARのエクトドメインは、シグナルペプチド、抗原認識ドメイン、および抗原認識ドメインを、膜貫通ドメインへと連結するスペーサーを包含する。抗原認識ドメインは一般に、CD138に特異的な一本鎖可変断片(scFv)を含むであろう。しかし、2つ以上のCARが同じ細胞内にある場合は、第2のCARは、例えば、黒色腫関連抗原(MAGE)、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、スルビビン、CD19、CD20、CD22、κ軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、EGFr vIII、癌胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7−H6、IL−13受容体a2、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW−MAA、CD171、Lewis Y、G250/CAIX、HLA−A1 MAGE A1、HLA−A2 NY−ESO−1、PSC1、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、またはCD44v6のいずれか1つに特異的なscFvを含みうる。
【0047】
エクトドメインのヒンジ領域の例には、免疫グロブリンのCH2CH3領域、IgG1に由来するヒンジ領域、およびCD3の部分が含まれる。膜貫通領域は、いかなる種類でもよいが、いくつかの場合では、CD28でありうる。
【0048】
一般に、本開示のCARのエンドドメインは、抗原認識後における細胞内のシグナル伝達および受容体のクラスターに活用される。最も一般に使用されるエンドドメイン構成要素は、抗原が結合した後で、活性化シグナルをT細胞へと伝達する、3つのITAM(免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ)を含有する、CD3−ゼータである。いくつかの実施形態では、CD28、4〜1BB、および/またはOX40と組み合わせたCD3−ゼータなど、追加の共刺激性シグナル伝達も活用する。
【0049】
V.自殺遺伝子
本開示の実施形態では、特定の発現ベクター内で自殺遺伝子を利用して、細胞が、例えば、所望の時点または地点または生理学的イベントにおいて、アポトーシスにより自殺することを可能にする。自殺遺伝子は、CD138−CARベクターと同じ発現ベクター上に存在しうる。自殺遺伝子は、当業界で公知であり、慣例的に使用されるが、特定の実施形態では、本開示で使用される自殺遺伝子は、カスパーゼ9、単純ヘルペスウイルス、チミジンキナーゼ(HSV−tk)、シトシンデアミナーゼ(CD)、またはチトクロームP450である。特定の態様では、自殺遺伝子は、誘導性であり、特異的な化学的二量体化誘導剤(CID)を使用して活性化される(Ramosら、2010)。
【0050】
VI.低酸素状態応答性調節エレメント
本開示の実施形態は、治療用細胞内の人工的抗原受容体の発現の制御を含めた、治療用細胞の活性の環境的制御を可能にする、調節エレメントを利用する。特定の実施形態では、CARの発現を、低酸素状態の存在下または低酸素性組織内など、環境的または組織特異的に調節する。1つまたは複数のエレメントは、CD138特異的CARをコードし、CD138特異的CARをコードする配列と機能的に関連する、発現ベクター内で活用される。「機能的に関連する」は、1つまたは複数のエレメントが、CD138特異的CARポリペプチドをコードする配列の発現を調節しうるのに適した形で構成されていることを意味しうる。いくつかの実施形態では、このようなエレメントは、定義によって、正常酸素性環境内でCD138特異的CARの転写に影響を及ぼすことがまったく可能でないか、または無視できる程度に影響を及ぼすに過ぎない。
【0051】
利用されうる例示のHREには、例えば、配列NCGTGが含まれ、特定の実施形態では、配列は、7、8、9、10回以上であってもよいが、少なくとも6回など、タンデムで反復される。
【0052】
VII.エンゲージャー分子
本開示のいくつかの実施形態では、CD138特異的CARを含む本開示の細胞を、エンゲージャー分子を発現するようにも改変する。特定の実施形態では、このような細胞は、二特異的T細胞エンゲージャー分子を分泌することができる。特定の実施形態における二特異性は、活性化ドメインおよび抗原認識ドメインの存在を包含する。抗原認識ドメインは、標的細胞内もしくは標的細胞上に存在するかまたは標的細胞によって分泌される分子に結合し、活性化ドメインは、レシピエント細胞を最終的に活性化させる過程を誘発する、T細胞上、NK細胞上、またはNKT細胞上に存在する、細胞表面受容体に結合する。結合性ドメインおよび抗原認識ドメインは、いかなる種類でもありうるが、特定の実施形態では、1つのscFvは、活性化を媒介する細胞表面分子に特異的であり、他のscFvは、CD138または別の腫瘍抗原を含めた、特定のえり抜きの腫瘍抗原に特異的である。腫瘍抗原に対する特定のscFvは、特定の腫瘍抗原を有する、対応するがん細胞を認識するように調整することができる。
【0053】
特定の態様では、エンゲージャー分子は、免疫細胞表面(または操作された免疫細胞表面)上の活性化分子に結合する活性化ドメインと、標的細胞抗原、例えば、腫瘍細胞またはがん細胞の表面上で発現される抗原に結合する抗原認識ドメインとを含む。
【0054】
エンゲージャーは、二部分(例えば、任意選択で、リンカーによって接合されうる、活性化ドメインと、抗原認識ドメインとを含む)であってもよく、三部分または多部分(例えば、1つもしくは複数の活性化ドメインおよび/もしくは抗原認識ドメイン、または他のドメインを含む)であってもよい。特定の実施形態では、エンゲージャーの活性化ドメインが、抗体またはその抗原結合性断片もしくは部分、例えば一本鎖可変領域断片(scFv)であるか、またはこれを含む。他の特定の実施形態では、抗原認識ドメインは、抗体あるいは抗原結合性断片またはこれらの一部、例えば、モノクローナル抗体、またはscFvであるかもしくはこれを含むか、または、リガンド、ペプチド、可溶性のT細胞受容体、もしくはこれらの組合せを含みうる。ある特定の実施形態では、活性化ドメインおよび抗原認識ドメインが、リンカー、例えば、ペプチドリンカーによって連結されている。
【0055】
当業者は、免疫細胞が、異なる活性化受容体を有し、エンゲージャーが、活性化される細胞に照らして調整されることを認識する。例えば、CD3は、T細胞上の活性化受容体であるが、CD16、NKG2D、またはNKp30は、NK細胞上の活性化受容体であり、そして、CD3またはインバリアントTCRは、NKT細胞上の活性化受容体である。したがって、T細胞を活性化するエンゲージャー分子は、NK細胞を活性化するエンゲージャー分子とは異なる活性化ドメインを有しうる。特定の実施形態、例えば、免疫細胞がT細胞である実施形態では、活性化分子が、CD3、例えば、CD3γ、CD3δ、もしくはCD3ε;またはCD27、CD28、CD40、CD134、CD137、およびCD278のうちの1つまたは複数である。他の特定の実施形態、例えば、免疫細胞がNK細胞である実施形態では、活性化分子がCD16、NKG2D、またはNKp30であり、免疫細胞がNKT細胞である実施形態では、活性化分子がCD3またはインバリアントTCRである。
【0056】
ある特定の他の実施形態では、エンゲージャーが、1つまたは複数のアクセサリードメイン、例えば、1つもしくは複数のサイトカイン、共刺激性ドメイン、T細胞活性化の負の調節分子を抑制するドメイン、またはこれらの組合せをさらに含む。特定の実施形態では、サイトカインがIL−15、IL−2、および/または、IL−7である。他の特定の実施形態では、共刺激性ドメインがCD27、CD80、CD86、CD134、またはCD137である。他の特定の実施形態では、T細胞活性化の負の調節分子を抑制するドメインが、PD−1、PD−L1、CTLA4、またはB7−H4である。
【0057】
いくつかの場合では、エンゲージャーのscFVは、EphA2、CD19、8H9、CAIX、CD20、CD30、CD33、CD44、CD70、CD123、CD138、EGFR、EGFRvIII、EGP2、EGP40、EPCAM、EphA2、ERBB2(HER2)、ERBB3、ERBB4、FAP、FAR、FBP、GD2、GD3、HLA−A1+MAGE1、IL11Rα、IL13Rα2、κ軽鎖、KDR、ラムダ、Lewis−Y、MCSP、メソテリン、Muc1、NCAM、NKG2Dリガンド、TAG72、TEM1、TEM8、CEA、PSCA、およびPSMAに特異的である。
【0058】
VIII.ウイルス特異性
本開示の実施形態では、CD138−CAR細胞は、それらの天然受容体が、EBV、HIV、HTLV−1などに由来するウイルス潜伏感染タンパク質など、ウイルス潜伏感染タンパク質に特異的なCTLである。これらのウイルス特異的CTLは、潜伏感染性ウイルス抗原をプロセシングする、プロフェッショナルな抗原提示細胞からの生理学的共刺激を受け、それらのCARを介して、腫瘍細胞を殺滅させることができる。この二重特異性は、リダイレクトされたCTLが、CARを介する抗腫瘍活性を利用しながら、プロフェッショナルな抗原提示細胞からの生理学的共刺激を受けることも可能にする。
【0059】
当業者は、このような細胞型を生成することは慣例的であることを認識する。
【0060】
IX.CD138特異的CARを含む宿主細胞
本開示の細胞の実施形態には、CD138特異的CARを発現しうる細胞が含まれ、これらには、例えば、T細胞、NK細胞、およびNKT細胞が含まれる。本明細書で使用される用語「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」は、互換的に使用することができる。これらの用語のすべてには、任意かつすべての後続の世代である、それらの子孫細胞も含まれる。すべての子孫細胞が、意図的であるかまたは予測外の突然変異のために必ずしも同一でない場合もあることが理解される。異種核酸配列の発現の文脈では、「宿主細胞」は、原核細胞または真核細胞を指し得、これには、ベクターを複製し、かつ/またはベクターによりコードされる異種遺伝子を発現することができる、任意の形質転換可能な生物が含まれる。宿主細胞は、ベクターのレシピエントとして使用することができ、そのように使用されている。宿主細胞は、「トランスフェクト」してもよく、「形質転換」してもよく、これらは、外因性核酸が、宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。形質転換された細胞には、初代対象細胞およびその子孫細胞が含まれる。本明細書で使用される、用語「操作された」細胞および「組換え」細胞または宿主細胞は、例えば、ベクターなどの外因性核酸配列が導入された細胞を指すことが企図されている。したがって、組換え細胞は、組換えにより導入された核酸を含有しない、天然に存在する細胞から識別可能である。本開示の実施形態では、宿主細胞は、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、キラーT細胞(T−Killer−cell)、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞、またはキラーT細胞(killer T cell)としても知られている)を含めたT細胞などの免疫細胞であり、本開示には、エフェクター機能を誘発しうる、NK細胞、NKT細胞、および他の免疫細胞も包含される。
【0061】
ある特定の実施形態では、RNAまたはタンパク質性配列を、同じ宿主細胞内の、他の選択されたRNAまたはタンパク質性配列と共に共発現しうることが企図されている。共発現は、宿主細胞に、2つ以上の異なる組換えベクターを共トランスフェクトすることによって達成することができる。代わりに、単一の組換えベクターを構築して、RNAの複数の異なるコード領域を含めることができ、その後、これを、単一のベクターをトランスフェクトされた宿主細胞内で発現することもできるであろう。
【0062】
いくつかのベクターは、それが原核細胞内および真核細胞内のいずれにおいても複製および/または発現されることを可能にする、制御配列を利用しうる。当業者ならば、上記に記載の宿主細胞のすべてを、それらを維持し、ベクターの複製を可能にするようにインキュベートする条件もさらに理解するであろう。ベクターの大スケールの作製のほか、ベクターによってコードされる核酸、およびそれらのコグネイトのポリペプチド、タンパク質、またはペプチドの作製も可能にする、技法および条件も理解されており、知られている。
【0063】
本開示で使用される細胞は、哺乳動物細胞を含めた真核細胞であるが、原核細胞を、ベクターまたはベクターへと組み込むDNAの組換え操作(engineering)における操作(manipulation)のために利用することもできる。細胞は、特に、ヒト細胞であるが、それらのそれぞれの動物における使用のための、任意の対象の動物、特に、ウマ、ウシ、マウス、ヒツジ、イヌ、ネコなどの馴致動物と関連した細胞でありうる。これらの種では、T細胞、NK細胞、NKT細胞など、多様な細胞型を関与しうる。
【0064】
細胞は、自己細胞、同系細胞、同種細胞であってよく、いくつかの場合では、細胞を施される個体との関連における異種細胞などの異種細胞でさえありうる。細胞は、主要組織適合性複合体(「MHC」)プロファイルを変化させることによって改変することもでき、β
2−マイクログロブリンを不活化して、機能的なクラスI MHC分子の形成を防止することによって改変することもでき、クラスII分子の不活化によって改変することもでき、1つまたは複数のMHC分子の発現をもたらすことによって改変することもでき、細胞傷害活性と関連した遺伝子の発現を強化または不活化することを介して、細胞傷害能を強化または不活化することなどによって改変することもできる。
【0065】
細胞が、特異的な抗原特異性またはホーミングにおける標的部位特異性を有するT細胞およびB細胞など、特定の特異性を有する、いくつかの場合には、特異的なクローン細胞またはオリゴクローンも対象でありうる。
【0066】
CD138特異的CARを有する本開示の細胞は、第2のCARを発現してもよく、エンゲージャー分子を発現してもよく、かつ/またはウイルス特異的であってもよく、任意の組換え発現コンストラクトを、HREの制御下に置いてもよく、置かなくてもよい。
【0067】
CD138特異的CARをコードする発現ベクターは、細胞へと、1つまたは複数のDNA分子として導入することもでき、コンストラクトを含有する宿主細胞の選択を可能にする少なくとも1つのマーカーがありうるコンストラクトとして導入することもできる。コンストラクトは、好都合な方途であって、遺伝子および調節領域を単離してもよく、必要に応じて、ライゲーションしてもよく、適切なクローニング宿主内でクローニングしてもよく、制限またはシークェンシングによって解析してもよい方途により調製することもでき、他の好都合な手段により調製することもできる。特に、PCRを使用して、機能的単位の全部または一部を含めた個々の断片を単離することができ、この場合、必要に応じて、「プライマー修復」、ライゲーション、in vitroにおける突然変異誘発などを使用して、1カ所または複数カ所の突然変異を導入することができる。ひとたび完成し、適切な配列を有することが実証されたコンストラクトは、その後、任意の好都合な手段によって、CTLに導入することができる。コンストラクトは、細胞へと感染させるかまたは形質導入するための、非複製型の欠損ウイルスゲノム様アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)またはレトロウイルスベクターを含めた他のウイルスへと組み込み、パッケージングすることができる。コンストラクトには、所望の場合、トランスフェクションのためのウイルス配列が含まれうる。代替的に、コンストラクトは、融合体、エレクトロポレーション、遺伝子銃、トランスフェクション、リポフェクションなどによって導入することもできる。宿主細胞は、コンストラクトを導入する前に、培養物中で成長させ、拡張するのに続いて、コンストラクトの導入およびコンストラクトの組込みのための適切な処置をこれらに施すことができる。細胞は、その後、拡張され、コンストラクト内に存在するマーカーによってスクリーニングされる。使用されて成功しうる多様なマーカーには、hprtマーカー、ネオマイシン耐性マーカー、チミジンキナーゼマーカー、ハイグロマイシン耐性マーカーなどが含まれる。
【0068】
多くの状況において、処置を終了させたいと望む場合、細胞が腫瘍性となっている場合、それらの存在の後における細胞の非存在が対象である研究において、または他の事象では、改変された細胞を殺滅させうることを望むこともできる。この目的では、制御された条件下で、改変細胞を殺滅しうる、ある特定の遺伝子産物の発現をもたらしうる。カスパーゼ9などの自殺遺伝子産物は、このような産物の例である。
【0069】
例示を目的として述べると、がん患者、またはがんに対して感受性であるかもしくはがんを有することが疑われる患者は、以下の通りに処置することができる。本明細書で記載される通りに改変された細胞は、患者に投与し、長期間にわたり保持することができる。個体には、1回または複数回の細胞の投与を行うことができる。例示の細胞には、低酸素状態応答性CD138特異的CAR T細胞が含まれる。細胞は、少なくとも低酸素状態応答性CD138特異的CARを発現するように少なくとも改変され、それらを必要とする個体に提供される。
【0070】
X.コンストラクトの細胞への導入
本明細書に記載の、低酸素状態応答性CD138特異的CARコンストラクト、または任意のコンストラクトは、1つまたは複数のDNA分子として導入することもでき、コンストラクトを含有する宿主細胞の選択を可能にする少なくとも1つのマーカーがありうるコンストラクトとして導入することもできる。コンストラクトは、従来の方途により調製することができる。必要に応じて、遺伝子領域と調節領域とを隔離し、ライゲートし、適切なクローニング宿主内でクローニングし、制限もしくはシークェンシング、または他の好都合な手段によって解析した。特に、PCRを使用して、機能的な単位の全部または一部を含めた個別の断片を単離することができる。必要に応じて、「プライマー対」、ライゲーション、in vitroにおける突然変異誘発などを使用して、1つまたは複数の突然変異を導入することができる。ひとたび完成され、適切な配列を有することが実証されたコンストラクトは、その後、任意の好都合な手段によって、宿主細胞に導入することができる。コンストラクトは、細胞への感染または形質導入のために、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、もしくは単純ヘルペスウイルス(HSV)またはレトロウイルスベクターを含めた他のウイルスなど、非複製性の欠損ウイルスゲノムに組み込み、パッケージングすることができる。所望の場合、コンストラクトには、トランスフェクションのためのウイルス配列を含めることができる。代わりに、融合、エレクトロポレーション、遺伝子銃、トランスフェクション、リポフェクションなどによって、コンストラクトを導入することもできる。コンストラクトの導入前に、宿主細胞を、培養物中で成長させ、拡張するのに続いて、コンストラクトの導入およびコンストラクトの組込みのための適切な処理を施すことができる。その後、細胞を拡張し、コンストラクト内に存在するマーカーによって、スクリーニングする。使用して成功しうる様々なマーカーには、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性などが含まれる。
【0071】
いくつかの場合では、コンストラクトを特定の遺伝子座に組み込むことが所望される相同組換えのための標的部位を有しうる。例えば、相同組換えについて当業界で公知である材料および方法を使用して、内因性遺伝子をノックアウトし、コンストラクトによってコードされた遺伝子で置き換える(同じ遺伝子座または他の場所において)ことができる。相同組換えには、Ω−ベクターまたはO−ベクターを使用することができる。例えば、ThomasおよびCapecchi、Cell(1987)51,503−512;Mansourら、Nature(1988)336,348−352;ならびにJoynerら、Nature(1989)338,153−156を参照されたい。
【0072】
コンストラクトDNAの原液を調製し、トランスフェクションを実行するのに使用されうる有用なエレメントであって、細菌または酵母による複製起点、選択および/または増幅マーカー、原核生物または真核生物における発現のためのプロモーター/エンハンサーエレメントなどのエレメントを含有するベクターは、当業界で周知であり、多くが市販されている。
【0073】
XI.細胞の投与
本開示は、CD138特異的CARを発現するように細胞を操作し、少なくともいくつかの場合では、個体への投与の前に細胞を拡張することを含め、ひとたび細胞を適正に調製したら、それらを必要とする個体への細胞の投与を包含する。
【0074】
DNAコンストラクトで改変された細胞は、選択条件下にある培養物中で成長させ、コンストラクトを有する細胞として選択された細胞は、その後、拡張し、例えば、宿主細胞内のコンストラクトの存在を決定するためのポリメラーゼ連鎖反応を使用して、さらに解析することができる。ひとたび、改変宿主細胞を同定し、または確認したら、その後、計画した通りに使用することができる、例えば、培養物中で拡張することもでき、宿主生物に導入することもできる。
【0075】
細胞の性質により、細胞を、多種様々な方途により、宿主生物、例えば、哺乳動物に導入することができる。特定の実施形態では、細胞を、骨髄中など、局所的に導入するが、代わりの実施形態では、細胞を全身に施し、がんにホーミングさせるか、細胞を、がんにホーミングするように改変する。利用される細胞の数は、多数の状況、導入の目的、細胞の寿命、使用されるプロトコール、例えば、投与回数、細胞の増殖能力、組換えコンストラクトの安定性などに依存するであろう。細胞は、対象の部位において、またはその近傍において一般に注射される、分散液として適用することができる。細胞は、生理学的に許容できる培地中の細胞でありうる。
【0076】
DNAの導入は、必ずしも全ての場合で組込みをもたらす必要はない。状況によって、導入されたDNAの一過性の維持で十分な場合もある。そのような場合、細胞が宿主に導入されて、所定時間後に、例えば細胞が特定の部位にホーミングできた後に機能できるようになるといった、短期的な効果を達成することができる。
【0077】
細胞は、所望される通りに投与することができる。所望される応答、投与の様式、細胞の寿命、存在する細胞の数により、様々なプロトコールを利用することができる。投与回数は、上記で記載した因子に、少なくとも部分的に依存するであろう。
【0078】
系は、リガンドに対する細胞応答、発現の効率、および、必要に応じて、分泌レベル、発現産物の活性、時期および状況と共に変化しうる患者の特定の必要、細胞または個々の細胞の発現活性の喪失の結果としての細胞活性の喪失率などの多くの変数下に置かれることを理解されたい。したがって、各個別の患者について、集団全体に投与されうる万能細胞があったとしても、各患者を個体に適正な投与量についてモニタリングすることが予測され、このような患者のモニタリングの実施は、当業界では慣例的である。
【0079】
CARにより改変されたT細胞は、静脈内注入を介して投与する。用量は、例えば、1m
2当たり1×10
7〜1m
2当たり2×10
8の範囲でありうる。
【0080】
特定の場合には、複数のCD138 CARを発現する免疫細胞を、CD138を発現するがん抗原を伴う個体に送達する。特定の実施形態では、単回投与が必要とされる。他の実施形態では、細胞の複数回投与が必要とされる。例えば、操作された免疫細胞の初回投与の後で、例えば、がんの存在または非存在について、個体の検査を行うこともでき、腫瘍の数および/またはサイズの低減について個体の検査を行うこともできる。万一、がんが、初回投与後における腫瘍の成長など、さらなる処置に対する必要を示す場合は、追加の1回または複数回の同じCD138CAR発現細胞(または、任意選択で、別の種類の免疫療法および/もしくは化学療法、外科手術および/もしくは放射線照射を含めた、別の種類のがん療法)の送達が個体に施される。いくつかの場合では、個体における腫瘍サイズの低減は、CD138CAR発現免疫療法が有効であることを示すので、さらなる投与が個体に提供される。
【0081】
XI.CD138特異的CARをコードするポリヌクレオチド
本開示は、本明細書で規定される、CD138特異的CARをコードする核酸配列と、核酸配列を保有する細胞とを含む組成物も包含する。特定の態様では、核酸分子は、組換え核酸分子であり、合成核酸分子でありうる。核酸分子は、DNA、RNAのほか、PNA(ペプチド核酸)を含む可能性があり、これらのハイブリッド体でありうる。
【0082】
さらに、さらなる目的で、核酸分子が、例えば、チオエステル結合および/またはヌクレオチド類似体を含有しうることも企図されている。修飾は、細胞内のエンドヌクレアーゼおよび/またはエクソヌクレアーゼに対する核酸分子の安定化に有用でありうる。核酸分子は、細胞内の前記核酸分子の転写を可能にするキメラ遺伝子を含む適切なベクターによって転写されうる。この点で、このようなポリヌクレオチドは「遺伝子標的化」アプローチまたは「遺伝子治療的」アプローチに使用することができることが理解される。別の実施形態では、核酸分子を標識する。核酸を検出するための方法、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、PCRまたはライマー伸長は、当業界で周知である。この実施形態は、遺伝子治療アプローチにおける、上記で記載した核酸分子の導入の成功を検証するためのスクリーニング法に有用なでありうる。
【0083】
核酸分子は、組換えによりもたらされたキメラ核酸分子であって、上で述べた核酸分子のいずれかを、単独または組合せで含むキメラ核酸分子でありうる。特定の態様では、核酸分子は、ベクターの一部である。
【0084】
したがって、本開示は、本開示に記載の核酸分子を含むベクターを含む組成物にも関する。
【0085】
多くの適したベクターが、分子生物学の当業者に公知であり、その選択は、所望の機能に依存し、これらには、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、および遺伝子操作で従来使用されている他のベクターが含まれるであろう。当業者に周知の方法を使用して、多様なプラスミドおよびベクターを構築することができる。例えば、Sambrookら(1989);およびAusubel、「Current Protocols in Molecular Biology」、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1989)、(1994)に記載の技法を参照されたい。代替的に、本開示のポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞に送達するために、リポソームへと再構成することができる。クローニングベクターを使用して、個々のDNA配列を単離することができる。特定のポリペプチドの発現が必要とされる場合は、関与性の配列を、発現ベクターに導入することができる。典型的なクローニングベクターには、pBluescript SK、pGEM、pUC9、pBR322、およびpGBT9が含まれる。典型的な発現ベクターには、pTRE、pCAL−n−EK、pESP−1、pOP13CATが含まれる。
【0086】
特定の実施形態では、本明細書で規定される、CD138特異的CARをコードする核酸配列に作動可能に連結された調節配列である核酸配列を含むベクターがある。このような調節配列(制御エレメント)は、当業者に公知であり、これらには、プロモーター、スプライスカセット、翻訳開始コドン、翻訳部位、および挿入配列をベクターに導入するための挿入部位が含まれうる。特定の実施形態では、核酸分子を、真核細胞内または原核細胞内の発現を可能にする、前記発現制御配列に作動的に連結する。
【0087】
ベクターは、本明細書で規定される、CD138特異的CARをコードする核酸分子を含む発現ベクターであることが企図される。特定の態様では、ベクターは、レンチウイルスベクターなどのウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、例えば、Clontech(Mountain View、CA)またはGeneCopoeia(Rockville、MD)製のレンチウイルスベクターを含め、市販されている。
【0088】
「調節配列」という用語は、それらがライゲーションされた、コード配列の発現を行うのに必要なDNA配列を指す。このような制御配列の性質は、宿主生物によって異なる。原核生物では、制御配列には一般に、プロモーター、リボソーム結合性部位、およびターミネーターが含まれる。真核生物では、制御配列には一般に、プロモーター、ターミネーター、および、いくつかの場合では、エンハンサー、トランス活性化因子、または転写因子が含まれる。「制御配列」という用語には、少なくとも、それらの存在が、発現に必要な、すべての構成要素が含まれることを意図し、これらには、追加の有利な構成要素も含まれる。
【0089】
「作動可能に連結された」という用語は、そのように記載された構成要素が、それらが、それらの意図された形で機能することを可能にする関係にある並置を指す。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合的な条件下で達成されるような形でライゲーションされている。制御配列がプロモーターである場合、当業者には、その二本鎖核酸を使用することが好ましいことが明らかである。
【0090】
したがって、ある特定の実施形態では、列挙されたベクターは、発現ベクターである。「発現ベクター」は、選択された宿主を形質転換し、選択された宿主内のコード配列の発現をもたらすのに使用しうるコンストラクトである。発現ベクターは、例えば、クローニングベクター、バイナリーベクター、または組込みベクターでありうる。発現は、核酸分子の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。原核細胞内および/または真核細胞内の発現を確保する調節エレメントは、当業者に周知である。真核細胞の場合、調節エレメントは通常、転写の開始を確保するプロモーターと、任意選択で、転写の終結および転写物の安定化を確保するpoly−Aシグナルとを含む。原核宿主細胞内の発現を可能にする、可能な調節エレメントは、例えば、大腸菌(E.coli)内のP
Lプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、またはtacプロモーターを含み、真核宿主細胞内の発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母内のAOX1プロモーターもしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物細胞内および他の動物細胞内のCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、もしくはグロビンイントロンである。
【0091】
転写の開始の一因となるエレメントのほかに、このような調節エレメントは、ポリヌクレオチドの下流のSV40−poly−A部位またはtk−poly−A部位などの転写終結シグナルも含みうる。さらに、使用される発現系によって、ポリペプチドを、細胞内区画へと配向性付けるか、または培地へと分泌することができるリーダー配列を、列挙された核酸配列のコード配列へと付加することができ、これらも当業界で周知である。リーダー配列は、翻訳配列、開始配列、および終結配列と適切に調和させてアセンブルされ、リーダー配列は、翻訳されたタンパク質またはその一部の、ペリプラズム空間または細胞外培地への分泌を配向性付けうることが好ましい。任意選択で、異種配列は、所望の特徴、例えば、発現された組換え産物の安定化または簡略化された精製を付与するN末端同定ペプチド(前出を参照されたい)を含めた融合タンパク質をコードしうる。この文脈では、岡山−バーグによるcDNA発現ベクターであるpcDV1(Pharmacia)、pEF−Neo、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)、pEF−DHFRおよびpEF−ADA(Raumら、Cancer Immunol Immunother(2001)、50(3)、141〜150)またはpSPORT1(GIBCO BRL)など、適した発現ベクターが、当業界で公知である。
【0092】
いくつかの実施形態では、発現制御配列は、真核宿主細胞にトランスフェクトしうるベクター内の真核生物プロモーター系であるが、原核生物宿主のための制御配列も使用することができる。ひとたびベクターを、適切な宿主へと組み込んだら、宿主を、高レベルのヌクレオチド配列の発現に適した条件下で維持し、所望に応じ、本開示のポリペプチドの回収および精製を後続させることができる。特定の実施形態では、1つまたは複数のコード可能な配列を、低酸素環境に応答性の発現制御配列によって調節する。
【0093】
追加の調節エレメントには、転写エンハンサーのほか、翻訳エンハンサーも含まれうる。上記に記載の本開示のベクターは、選択マーカーおよび/または評定マーカーを含むと有利である。形質転換された細胞の選択に有用な選択マーカー遺伝子は、当業者に周知であり、例えば、dhfrについての選択の基盤としての代謝拮抗耐性遺伝子であって、メトトレキサートに対する耐性を付与する代謝拮抗耐性遺伝子(Reiss、Plant Physiol.(Life−Sci.Adv.)13(1994)、143〜149);アミノグリコシドであるネオマイシン、カナマイシン、およびパロマイシンに対する耐性を付与するnpt(Herrera−Estrella、EMBO J.、2(1983)、987〜995);およびハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Marsh、Gene、32(1984)、481〜485)を含む。追加の選択用遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを使用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用することを可能にするhisD(Hartman、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85(1988)、8047);細胞がマンノースを使用することを可能にするマンノース−6−リン酸イソメラーゼ(WO94/20627);およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である、2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン(DFMO)に対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue、1987、「Current Communications in Molecular Biology」、Cold Spring Harbor Laboratory編)、またはブラストサイジンSに対する耐性を付与する、Aspergillus terreusに由来するデアミナーゼ(Tamura、Biosci.Biotechnol.Biochem.、59(1995)、2336〜2338)も記載されている。
【0094】
有用な評定マーカーも当業者に公知であり、市販されている。前記マーカーは、ルシフェラーゼ(Giacomin、Pl.Sci.、116(1996)、59〜72;Scikantha、J.Bact.、178(1996)、121)、緑色蛍光タンパク質(Gerdes、FEBS Lett.、389(1996)、44〜47)、またはβ−グルクロニダーゼ(Jefferson、EMBO J.、6(1987)、3901〜3907)をコードする遺伝子であると有利である。この実施形態は特に、列挙されたベクターを含有する細胞、組織、および生物の簡単で迅速なスクリーニングに有用である。
【0095】
上記に記載の通り、列挙された核酸分子は、コードされたポリペプチドを細胞内で発現するように、細胞内で、単独で使用することもでき、ベクターの一部として使用することもできる。CD138特異的CARコンストラクトのうちのいずれか1つをコードするDNA配列を含有する核酸分子またはベクターを、細胞に導入し、細胞は、対象のポリペプチドを産生する。列挙された核酸分子およびベクターは、直接的な導入のために設計することもでき、リポソームまたはウイルスベクターを介する(例えば、アデノウイルス、レトロウイルスを介する)細胞への導入のために設計することもできる。ある特定の実施形態では、細胞は、例えば、T細胞、CAR T細胞、NK細胞、NKT細胞、MSC、神経幹細胞、または造血幹細胞である。
【0096】
上記に従い、本開示は、ベクター、特に、遺伝子操作で従来使用されている、プラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージであって、本明細書で規定される、CD138特異的CARポリペプチド配列をコードする核酸分子を含むベクターを導出する方法に関する。前記ベクターは、発現ベクターおよび/もしくは遺伝子導入ベクターまたは標的化ベクターであることが好ましい。列挙されたポリヌクレオチドまたはベクターを、標的化された細胞集団に送達するために、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルスに由来する発現ベクターを使用することができる。当業者に周知の方法を使用して、組換えベクターを構築することができる。例えば、Sambrookら(同上)、Ausubel(1989、同上)または他の標準的な教科書に記載の技法を参照されたい。代替的に、列挙された核酸分子およびベクターは、標的細胞に送達するために、リポソームへと再構成することができる。本開示の核酸分子を含有するベクターは、細胞宿主の種類によって変化する、よく知られている方法によって、宿主細胞に導入することができる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般に、原核細胞に活用されるが、他の細胞宿主には、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションを使用することができる。Sambrook、前出を参照されたい。
【0097】
XII.ベクター一般
本開示のベクターは、CD138特異的CARまたはCD138特異的エンゲージャー分子を含めた、CD138特異的認識部分を作製し、少なくともいくつかの場合では、これを発現する組換え操作のために使用することができる。
【0098】
「ベクター」という用語は、細胞に導入するために核酸配列をその中に挿入でき、細胞内で複製可能である担体核酸分子を指すのに用いられる。核酸配列は、「外因性」であってもよく、これは、その配列が、ベクターがその中に導入される細胞にとって外来のものであること、またはその配列が細胞内の配列に相同であるが、宿主細胞核酸中において、その配列が通常は存在しない位置にあることを意味する。ベクターには、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、および植物ウイルス)、および人工染色体(例えば、YAC)が含まれる。当業者ならば、標準的な組換え技法でベクターを構築するのに十分な装備を備えている(例えば、Maniatisら、1988、およびAusubelら、1994を参照。両文献を参照により本明細書に組み込む)。
【0099】
「発現ベクター」という用語は、転写可能なRNAをコードする核酸を含む、任意のタイプの遺伝子コンストラクトを指す。場合によっては、その後、RNA分子がタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。その他の場合、例えば、アンチセンス分子またはリボザイムの生成においては、これらの配列は翻訳されない。発現ベクターは、様々な「制御配列」を含有することができる。「制御配列」は、特定の宿主細胞における、動作可能に連結されたコード配列の転写、場合によって翻訳に必要な核酸配列を指す。転写および翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクターおよび発現ベクターは、他の機能を果たす、下に記載される核酸配列を含有することもできる。
【0100】
本開示で利用される調節配列には、その発現が調節される発現コンストラクトへと機能的に連結された、1つまたは複数の低酸素状態応答性エレメントが含まれる。以下では、利用されうる他の調節エレメントについて記載する。
【0101】
「プロモーター」は、転写の開始および速度がそこで制御される核酸配列領域である制御配列である。「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび他の転写因子など、調節タンパク質および調節分子が、核酸配列の特異的な転写を開始するために結合しうる遺伝エレメントを含有しうる。「動作可能に配置された」、「動作可能に連結された」、「制御下」、および「転写制御下」という句は、プロモーターが、核酸配列との関係において、その配列の転写開始および/または発現を制御するのに正しい機能的な位置および/または方向で存在することを意味する。
【0102】
プロモーターは、一般に、RNA合成の開始部位の位置を決めるのに機能する配列を含む。この最もよく知られている例がTATAボックスであるが、例えば、哺乳動物の末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ遺伝子のプロモーターおよびSV40後期遺伝子のプロモーターなど、プロモーターの中にはTATAボックスをもたないものもあり、開始部位自体を覆う異なるエレメントが、開始箇所を定めるのを助ける。さらに別のプロモーターエレメントが、転写開始の頻度を調節する。典型的な場合、これらは開始部位の30〜110bp上流の領域に位置している。ただし、開始部位の下流に機能エレメントを含有していることが示されているプロモーターもいくつもある。コード配列をプロモーターの「制御下」に置くには、転写リーディングフレームの転写開始部位の5’末端を、選択されたプロモーターの「下流」(すなわち、3’側)に配置する。「上流」のプロモーターが、DNAの転写を刺激し、コードされたRNAの発現を促進する。
【0103】
プロモーターエレメント間の間隔は、しばしば柔軟であり、そのため、エレメントが反転するか、お互いと比較して動いた場合でも、プロモーター機能が保存される。tkプロモーターでは、活性を低下させずに、プロモーターエレメント間の間隔を50bpまで広げることができる。プロモーターに応じて、個々のエレメントは、転写を活性化するために協力して機能することも、独立して機能することもできるようである。プロモーターは、「エンハンサー」と共に用いても、そうでなくともよい。「エンハンサー」は、核酸配列の転写活性化に関与するシス作用の調節配列を指す。
【0104】
プロモーターは、コーディングセグメントおよび/またはエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって得ることのできる、核酸配列に天然に随伴しているものでもよい。そのようなプロモーターを「内因性」と呼ぶことができる。同様に、エンハンサーは、核酸配列に天然に随伴し、その配列の下流または上流のいずれかに位置するものでもよい。代わりに、コーディング核酸セグメントを、組換え体または異種のプロモーターの制御下に置くことによって、ある種の利点が得られるであろう。組換え体または異種のプロモーターとは、その天然の環境にある核酸配列には通常は随伴していないプロモーターを指す。組換え体または異種のエンハンサーも、その天然の環境にある核酸配列には通常は随伴していないエンハンサーを指す。そのようなプロモーターまたはエンハンサーには、他の遺伝子のプロモーターまたはエンハンサー、および任意の他のウイルスまたは原核もしくは真核細胞から単離されるプロモーターまたはエンハンサー、および「天然に存在」しない、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメントおよび/または発現を改変する変異を含有するプロモーターまたはエンハンサーが含まれうる。例えば、組換えDNAの構築で最も一般的に用いられるプロモーターには、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトース、およびトリプトファン(trp)プロモーター系が含まれる。プロモーターおよびエンハンサー核酸配列の合成による生成に加えて、本明細書に開示されている組成物に関して、PCR(商標)を含めた組換えクローニングおよび/または核酸増幅技術を用いて、配列を生成することができる(それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,683,202号および第5,928,906号を参照)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などの非核オルガネラ内の配列の転写および/または発現を指示する制御配列も利用できることが企図されている。
【0105】
当然ながら、発現用に選択されたオルガネラ、細胞型、組織、器官、または生物内でDNAセグメントの発現を効率的に指示するプロモーターおよび/またはエンハンサーを利用することが重要となる。分子生物学の当業者ならば、タンパク質発現用のプロモーター、エンハンサー、および細胞型の組合せの使用について一般的に知っている(例えば、参照により本明細書に組み込まれるSambrookら、1989参照)。利用するプロモーターは、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を指示するのに適切な条件下で構成的なもの、組織特異的なもの、誘導可能なもの、ならびに/または、組換えタンパク質および/もしくはペプチドの大規模生成に有利なものなど、有用なものでありうる。プロモーターは、異種のものでも、内因性のものでもよい。
【0106】
さらに、発現を駆動させるために、あらゆるプロモーター/エンハンサーの組合せを使用することもできる。T3、T7、またはSP6の細胞質発現系の使用も、別の可能な実施形態である。真核細胞は、送達複合体の一部として、または追加の遺伝子発現コンストラクトとして適切な細菌ポリメラーゼが与えられれば、ある種の細菌プロモーターからの細胞質転写をサポートすることができる。
【0107】
組織特異的プロモーターまたは組織特異的エレメントの識別のほか、それらの活性を特徴付けるアッセイも、当業者に周知である。特定の実施形態では、低酸素性特異的調節エレメントなどの、環境特異的プロモーターまたは環境特異的エレメントを活用する。組織特異的プロモーター、細胞系統特異的プロモーター、および/または活性化特異的プロモーターを利用することができ、例には、活性化T細胞エレメント、NFAT(細胞系統制限活性化)、初期成長応答遺伝子(活性化)、肝臓X受容体応答エレメント(活性化)、低酸素状態応答エレメント(環境的)などが含まれる。
【0108】
コード配列の効率的な翻訳には、特異的な開始シグナルも必要でありうる。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは隣接の配列が含まれる。ATG開始コドンを含めた、外因性の翻訳制御シグナルの提供が必要でありうる。当業者ならば、この決定および必要なシグナルの提供を容易に行うことができるだろう。
【0109】
本開示のある特定の実施形態では、内部リボソーム進入部位(IRES)エレメントを用いて、多重遺伝子または多シストロン性メッセージが生成され、これらを、本開示で用いることができる。
【0110】
ベクターは、多重クローニング部位(MCS)を含むことができる。MCSは、複数の制限酵素部位を含有する核酸領域である。これらの制限酵素部位はいずれも、ベクターを消化する標準的な組換え技術と共に用いることができる。「制限酵素消化」は、核酸分子内の特定の位置のみで機能する酵素を用いて核酸分子を触媒により切断することを指す。これらの制限酵素の多くは市販されている。そのような酵素の使用は、当業者によって広く理解されている。しばしば、ベクターは、外因性の配列をベクターにライゲートすることが可能となるように、MCS内で切断する制限酵素を用いて線形化または断片化される。「ライゲーション」は、相互に連続していても、いなくてもよい2つの核酸断片間でリン酸ジエステル結合を形成するプロセスを指す。制限酵素およびライゲーション反応を用いる技法は、組換え技術の当業者に周知である。
【0111】
スプライシング部位、終結シグナル、複製起点、および選択マーカーも利用することができる。
【0112】
ある特定の実施形態では、プラスミドベクターが、宿主細胞を形質転換するための使用に企図されている。一般に、宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターがこれらの宿主と共に使用される。通常、ベクターは、複製部位と、形質転換細胞における表現型選択を提供できるマーキング配列とを有する。非限定的な例では、E.coliは、しばしば、E.coli種由来のプラスミドであるpBR322の誘導体を用いて形質転換される。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性のための遺伝子を含有しており、したがって、形質転換細胞を同定するための簡単な手段を提供する。pBRプラスミドまたは他の微生物プラスミドもしくはファージは、例えば、微生物がそれ自体のタンパク質の発現に用いることができるプロモーターも含有しているか、含有するように改変されていなければならない。
【0113】
加えて、宿主微生物と適合性であるレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターを、これらの宿主と共に形質転換ベクターとして用いることができる。例えば、組換えファージベクターを作製する際に、例えば、E.coli LE392などの宿主細胞を形質転換するのに使用できるラムダファージGEM(商標)11を利用することができる。
【0114】
さらなる有用なプラスミドベクターには、pINベクター(Inouyeら、1985)およびpGEXベクターが含まれる。pGEXベクターは、後の精製および分離または切断のために、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成するのに使用される。他の適した融合タンパク質は、βガラクトシダーゼやユビキチンなどとの融合タンパク質である。
【0115】
発現ベクターを含む細菌宿主細胞、例えば、E.coliは、いくつかの適した培地のいずれか、例えば、LB中で培養される。当業者には理解されるように、ある種のベクターにおける組換えタンパク質の発現は、宿主細胞を、ある種のプロモーターに特異的な薬剤と接触させることによって、例えば、IPTGを培地に添加するか、インキュベーション温度をより高温に切り換えることによって、誘導することができる。細菌をさらなる期間、通常は2〜24時間培養した後、遠心分離によって細胞を収集し、洗浄して、残りの培地を除去する。
【0116】
A.ウイルスベクター
ある種のウイルスは、細胞を感染させるか、受容体媒介のエンドサイトーシスを介して細胞に進入し、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、ウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現する能力を有するので、そのようなウイルスは、外来の核酸を細胞(例えば、哺乳動物細胞)内に導入する魅力的な候補となっている。本開示の構成要素は、ヘパラナーゼをコードするウイルスベクターでありうる。本開示の核酸を送達するのに使用できるウイルスベクターの非限定な例を以下に記載する。
【0117】
1.アデノウイルスベクター
核酸の送達のための特定の方法は、アデノウイルス発現ベクターを使用するものである。アデノウイルスベクターは、ゲノムDNAに組み込まれる能力が低いことが知られているが、この特徴は、これらのベクターによってもたらされる遺伝子移入の効率が高いことで相殺される。「アデノウイルス発現ベクター」には、(a)コンストラクトのパッケージングをサポートし、(b)最終的に、その中にクローニングされた組織または細胞特異的なコンストラクトを発現するのに十分なアデノウイルス配列を含有するコンストラクトが含まれると企図されている。アデノウイルス(36kbの直鎖状二本鎖DNAウイルス)の遺伝学的構成に関する知識により、アデノウイルスDNAの大きな領域を7kbまでの外来配列で置換することが可能である(GrunhausおよびHorwitz、1992)。
【0118】
2.AAVベクター
核酸は、アデノウイルス支援のトランスフェクションを用いて細胞内に導入できる。アデノウイルスを組み合わせた系を用いた細胞系でトランスフェクション効率の増大が報告されている(KelleherおよびVos、1994;Cottenら、1992;Curiel、1994)。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、組み込まれる頻度が高く、かつ非分裂性の細胞を感染させることができ、それにより遺伝子を哺乳動物細胞に、例えば組織培養中(Muzyczka、1992)またはin vivoで、送達するのに有用となっているので、本開示の細胞で使用するのに魅力的なベクター系である。AAVは、感染の宿主域が広い(Tratschinら、1984;Laughlinら、1986;Lebkowskiら、1988;McLaughlinら、1988)。rAAVベクターの生成および使用に関する詳細は、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,139,941号および第4,797,368号に記載されている。
【0119】
3.レトロウイルスベクター
レトロウイルスは、それらの遺伝子を宿主ゲノムに組み込み、多量の外来遺伝物質を輸送し、広い範囲の種および細胞型を感染させ、特別な細胞株でパッケージングされる能力を有するため、送達ベクターとして有用である(Miller、1992。)
【0120】
ヘパラナーゼレトロウイルスベクターを構築するために、複製欠損であるウイルスを生成する特定のウイルス配列の箇所に核酸(例えば、ヘパラナーゼの部分またはすべてをコードするもの)をウイルスゲノムに挿入する。ビリオンを生成するために、gag、pol、およびenv遺伝子を含有するがLTRおよびパッケージング構成要素が無いパッケージング細胞株を構築する(Mannら、1983)。レトロウイルスLTRおよびパッケージング配列と共に、cDNAを含有する組換えプラスミドが、特別な細胞株に導入される(例えば、リン酸カルシウム沈殿によって)と、パッケージング配列によって、組換えプラスミドのRNA転写産物をウイルス粒子にパッケージングすることが可能になり、その後、ウイルス粒子が培養培地中に分泌される(NicolasおよびRubenstein、1988;Temin、1986;Mannら、1983)。次いで、組換え体レトロウイルスを含有する培地を収集し、場合によっては濃縮し、遺伝子移入に用いる。レトロウイルスベクターは、多様な細胞型を感染させることができる。しかし、組み込みおよび安定した発現には、宿主細胞の分裂が必要である(Paskindら、1975)。
【0121】
レンチウイルスは、複雑なレトロウイルスであり、共通のレトロウイルス遺伝子であるgag、pol、およびenvに加えて、調節または構造的な機能を有する他の遺伝子も含有している。レンチウイルスベクターは、当業界で周知である(例えば、Naldiniら、1996;Zuffereyら、1997;Blomerら、1997年;米国特許第6,013,516号および第5,994,136号を参照)。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス:HIV−1、HIV−2、およびサル免疫不全ウイルス:SIVが挙げられる。レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重弱毒化することによって生成された。例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、およびnefが欠失しており、それにより、ベクターが生物学的に安全になっている。
【0122】
組換え体レンチウイルスベクターは、非分裂性細胞を感染させることができ、in vivoおよびex vivoの遺伝子移入ならびに核酸配列の発現の両方に用いることができる。例えば、適した宿主細胞が、パッケージング機能、すなわち、gag、pol、env、rev、およびtatを有する2つ以上のベクターでトランスフェクトされる、非分裂性細胞を感染させることができる組換え体レンチウイルスが、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,994,136号に記載されている。エンベロープタンパク質を、特定の細胞型の受容体へとターゲティングする抗体または特定のリガンドと連結することによって、組換え体ウイルスをターゲティングすることができる。対象とする配列(調節領域を含む)を、特定の標的細胞上にある受容体のリガンドをコードする別の遺伝子と共にウイルスベクターに挿入することによって、例えば、ベクターが標的特異的となる。
【0123】
4.他のウイルスベクター
他のウイルスベクターも、本開示におけるワクチンコンストラクトとして利用できる。ワクシニアウイルス(Ridgeway、1988;BaichwalおよびSugden、1986;Couparら、1988)、シンドビスウイルス、サイトメガロウィルス、および単純ヘルペスウイルスなどのウイルス由来のベクターを利用することができる。これらは、様々な哺乳動物細胞用に魅力的な特徴をいくつかもっている(Friedmann、1989;Ridgeway、1988;BaichwalおよびSugden、1986;Couparら、1988;Horwichら、1990)。
【0124】
5.改変ベクターを用いる送達
送達する核酸を、特異的な結合リガンドを発現するように遺伝子操作された感染性のウイルス中に収容することができる。したがって、ウイルス粒子は、標的細胞の同族受容体に特異的に結合し、内容物を細胞に送達することになる。ウイルスエンベロープにラクトース残基を化学的に付加することによるレトロウイルスの化学修飾に基づいて、レトロウイルスベクターの特異的なターゲティングを可能にするように設計された新規なアプローチが開発された。この修飾は、シアロ糖タンパク質受容体を介した肝細胞の特異的な感染を可能にすることができる。
【0125】
レトロウイルスエンベロープタンパク質および特定の細胞受容体に対するビオチン化抗体が用いられる、組換え体レトロウイルスをターゲティングする別のアプローチが設計された。抗体は、ストレプトアビジンを用いることにより、ビオチン構成要素を介して結合させた(Rouxら、1989)。Rouxらは、主要組織適合複合体クラスIおよびクラスII抗原に対する抗体を用いて、それらの表面抗原を有する様々なヒト細胞の、エコトロピックウイルスによる感染をin vitroで実証した(Rouxら、1989)。
【0126】
B.ベクター送達と細胞形質転換
細胞をトランスフェクトまたは形質転換するための核酸送達のための適した方法は、当業者に公知である。そのような方法には、DNAのex vivoでのトランスフェクションや注入などによる直接的送達が含まれるが、これらに限定されない。当業界で公知の技法の適用によって、細胞を安定的にまたは一過性に形質転換することができる。
【0127】
C.Ex Vivo形質転換
ex vivoセッティングにおいて、生物から摘出された真核細胞および組織にトランスフェクトするための方法は、当業者に公知である。したがって、細胞または組織を摘出し、ヘパラナーゼまたは本開示の他の核酸を使用して、ex vivoにおいてトランスフェクトしうることが企図されている。特定の態様では、移植細胞または組織が生物内に入れられる。好ましい様相では、核酸が移植細胞内で発現される。
【0128】
XIII.併用療法
本開示のある特定の実施形態では、臨床的態様のための本開示の方法、例えば、CD138を発現するがん免疫細胞を有する個体への、例えば、CD138特異的CARを発現するT細胞の投与を、抗がん剤など、過剰増殖性疾患の処置に有効な他の薬剤と組み合わせる。例えば、「抗がん」剤は、がん細胞を殺滅する、がん細胞のアポトーシスを誘導する、がん細胞の成長速度を低減させる、転移の発生率または数を低減させる、腫瘍の大きさを低減させる、腫瘍成長を抑制する、腫瘍もしくはがん細胞への血液供給を低減させる、がん細胞もしくは腫瘍に対する免疫応答を促進する、がんの進行を防止もしくは抑制する、またはがんを有する対象の寿命を延長することによって、対象体内のがんに負の影響を与えることができる。より一般的には、これらの他の組成物は、細胞を殺滅するか、その増殖を抑制するのに有効な総量で提供することになる。このプロセスは、がん細胞を、発現コンストラクトおよび薬剤または複数の因子と同時に接触させることを含みうる。これは、細胞を、両方の薬剤を含む1つの組成物または薬理学的製剤と接触させることによって、または細胞を、一方の組成物が発現コンストラクトを含み、他方が第2の薬剤を含む2つの異なる組成物もしくは製剤と同時に接触させることによって達成できる。
【0129】
本開示の実施形態では、本開示の治療用細胞に加えて、以下:ステロイド、化学療法、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)、免疫調節薬(IMiD)など、サリドマイドまたはレナリドマイド、放射線、および/または幹細胞移植の1つまたは複数を、MMを伴う個体に提供する。
【0130】
化学療法および放射線療法薬剤に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床腫瘍学における重大な問題となっている。現在のがん研究の1つの目標は、化学療法および放射線療法の有効性を、それを遺伝子療法と併用することによって改善する方法を見出すことである。例えば、レトロウイルスベクター系によって脳腫瘍に送達される場合の、単純ヘルペス−チミジンキナーゼ(HS−tK)遺伝子は、抗ウイルス剤ガンシクロビルに対する感受性を誘導することに成功した(Culverら、1992)。本開示の文脈では、細胞療法は、他のアポトーシス促進剤または細胞周期調節剤に加えて、化学療法的介入、放射線療法的介入、または免疫療法的介入と共に、同様に使用しうることが企図されている。
【0131】
代わりに、本発明の療法は、他方の薬剤処置と数分間から何週間かの間隔を置いて、その前にまたはその後に行うことができる。他方の薬剤と本開示が個体に別々に適用される実施形態では、一般に、各送達時の間で有意な期間が期限切れにならないことを確実にして、それにより、薬剤療法および本発明の療法が細胞に対してなお有利な併用効果を及ぼすことができるようにすることになる。そのような場合、細胞を、両方の様式と、相互に約12〜24時間の内、より好ましくは、相互に約6〜12時間の内に接触させることができることが企図されている。しかし、状況によっては、処置の期間をかなり延長し、それぞれの投与の間で数日(2、3、4、5、6、または7)から数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8)が経過することが望ましい可能性がある。
【0132】
次のような様々な組合せを利用することができる。ここで、本開示は「A」であり、放射線療法または化学療法など、第2の薬剤は「B」である。
【0133】
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
【0134】
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B
A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
【0135】
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B
B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
【0136】
必要に応じて処置サイクルを反復することが予期されている。様々な標準的療法および外科的介入を本発明の細胞療法と組み合わせて適用できることも企図されている。
【0137】
A.化学療法
がん療法には、化学的処置および放射線照射ベースの処置の両方の様々な併用療法も含まれる。組合せ化学療法には、例えば、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アデルスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシレート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;セレコキシブ(COX−2阻害剤);クロランブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロスタノロン;ズアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブルゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸エステル;フルオロウラシル;フルオロシタビン;フォスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;イプロプラチン;イリノテカン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;メゲストロール酢酸塩;メレンゲストロール酢酸エステル;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイトマルシン;マイトマイシン;マイトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;タキソテール;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジン硫酸塩;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;ビンゾリジン硫酸塩;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩;20−epi−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アデルスロイキン;ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アントラレリックス;反dorsalizing形成タンパク質1(anti−dorsalizing morphogenetic protein 1);前立腺癌用の抗アンドロゲン;抗エストロゲン;抗ネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート;アポトーシス遺伝子調整剤;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ−アレチン;ベータクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラトレンA;ビゼレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カペシタビン;カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキサミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis−ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペントアントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデミンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド;デキスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン:ジデミンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン;9−ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドキソルビシン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;フルオロダウノルビシン塩酸塩;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモフォシン;イロマスタット;イマチニブ(例えば、GLEEVEC(登録商標))、イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;4−イポメアノール;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリンNトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;レンチナン硫酸塩;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害性因子;白血球アルファインターフェロン;ロイポロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシンである線維芽細胞成長因子−サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;ヒト絨毛性ゴナドトロピンであるErbitux;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;マスタード系抗がん剤;ミカペロキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N−アセチルジナリン;N置換ベンザミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン:ネリドロン酸;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調整剤;窒素酸化物による抗酸化剤;ニトルリン;オビメルセン(GENASENSE(登録商標));O
6−ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オサステロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金複合体;白金化合物;白金−トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫調節剤;プロテインキナーゼC阻害剤;小型藻類のプロテインキナーゼC阻害剤;プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチナミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビジノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老齢由来阻害剤1;センスオリゴヌ
クレオチド;シグナル伝達阻害剤;シゾフラン;ソブゾキサン;ボロカプテートナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スクァラミン;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;過活動血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チロコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激性ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;チタノセンジクロリド;トプセンチン;トレミフェン;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン;ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー、または以上の任意の類似体バリアントもしくは誘導体バリアントが含まれる。
【0138】
B 放射線療法
DNA損傷を引き起こし、かつ広く利用されている他の因子には、γ線、X線および/または腫瘍細胞への放射性同位元素の指向的送達として一般に知られているものが含まれる。マイクロ波およびUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図されている。これらの因子すべてが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範な損傷をもたらす可能性がきわめて高い。X線の線量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる場合の50〜200レントゲンの1日線量から、2000〜6000レントゲンの単回線量までである。放射性同位元素の投与量範囲は、広範に様々であってもよく、同位元素の半減期、照射される放射線の強度およびタイプ、ならびに新生細胞による取り込みによって左右される。
【0139】
細胞に用いられる場合、「接触」および「曝露」という用語は、本明細書では、治療用コンストラクトおよび化学療法剤または放射線療法剤を標的細胞に送達するか、標的細胞の直近に置くプロセスを述べるのに使用される。細胞の殺滅または分裂停止を行うため、細胞を殺滅するか、細胞が分裂するのを妨げるのに有効な総量で両薬剤を細胞に送達する。
【0140】
C.免疫療法
一実施形態では、CD138特異的認識部分(CD138特異的CARを発現するT細胞またはCD138特異的エンゲージャー分子を有するT細胞)以外の免疫療法を、本開示の方法と共に利用する。
【0141】
免疫療法薬は、一般に、免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存して、がん細胞を標的にし、破壊する。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面のなんらかのマーカーに特異的な抗体でありうる。抗体だけで、治療のエフェクターとして働いても、細胞殺滅を実際に行うのに他の細胞を動員してもよい。抗体は、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)とコンジュゲートさせてもよく、ターゲティング剤として働く。代わりに、エフェクターは、直接的または間接的に腫瘍細胞標的と相互作用する表面分子を有するリンパ球でもよい。様々なエフェクター細胞には、T細胞、細胞傷害性T細胞、NKT細胞およびNK細胞が含まれる。
【0142】
したがって、免疫療法を、本開示の細胞療法との併用療法の一部として用いることもあり得る。併用療法の一般的なアプローチについて以下に論じる。一般に、腫瘍細胞には、標的にすることができる、すなわち、大部分の他の細胞には存在しないなんらかのマーカーがあるはずである。多くの腫瘍マーカーが存在しており、これらのいずれも、本開示の関係において、ターゲティングに適したものでありうる。一般的な腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erb B、p155、黒色腫関連抗原(MAGE)、黒色腫優先発現抗原(PRAME)、スルビビン、CD19、CD20、CD22、k軽鎖、CD30、CD33、CD123、CD38、ROR1、ErbB2、ErbB3/4、ErbB二量体、EGFr vIII、癌胎児性抗原、EGP2、EGP40、メソテリン、TAG72、PSMA、NKG2Dリガンド、B7−H6、IL−13受容体a2、MUC1、MUC16、CA9、GD2、GD3、HMW−MAA、CD171、Lewis Y、G250/CAIX、HLA−A1 MAGE A1、HLA−A2 NY−ESO−1、PSCA、葉酸受容体a、CD44v6、CD44v7/8、a
vb
6インテグリン、8H9、NCAM、VEGF受容体、5T4、胎児AchR、NKG2Dリガンド、CD44v6、二重抗原、およびユニバーサルが含まれる。
【0143】
D.遺伝子
さらに別の実施形態では、第2の処置が、治療用ポリヌクレオチドが本開示の臨床実施形態の前もしくは後、またはそれと同時に投与される遺伝子療法である。細胞増殖の誘導因子、細胞増殖の抑制因子、またはプログラム細胞死の調節因子を含めた様々な発現産物が、本開示に包含される。
【0144】
E.外科手術
がんを有するヒトの60%が、予防、診断、病期分類、根治、および緩和のための手術を含めたなんらかのタイプの手術を行うことになる。根治手術は、本開示の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法など、他の療法とともに施用されうるがん治療である。
【0145】
根治手術には、がん組織の全体または一部を物理的に摘出、切除、および/または破壊する切除術が含まれる。腫瘍切除術は、少なくとも腫瘍の一部の物理的な摘出を指す。腫瘍切除術に加えて、外科手術による処置には、レーザー外科療法、低温外科手術、電気外科手術、および顕微鏡下手術(モース手術)が含まれる。本開示は、表在がん、前がん病変、または付帯的な量の正常組織の摘出とともに使用できることがさらに企図されている。
【0146】
がん細胞、組織、または腫瘍の全部または一部の切除に際し、体内に空洞が形成されうる。さらなる抗がん療法の潅流、直接注射、または当該領域への局所適用によって、処置を達成させてもよい。そのような処置は、例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、もしくは7日毎に、または1週、2週、3週、4週、および5週毎に、または1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、もしくは12カ月毎に、反復することができる。これらの処置は、投薬量が可変的なものでもよい。
【0147】
F.他の薬剤
処置の治療有効性を向上させるために、本開示と組み合わせて、他の薬剤を用いてもよいことが企図されている。これらの追加薬剤には、免疫調節剤、細胞表面受容体およびギャップ結合の上方制御に作用する薬剤、細胞分裂停止および分化薬剤、細胞接着の阻害剤、またはアポトーシス誘導因子に対する過増殖細胞の感受性を増強する薬剤が含まれる。免疫調節剤には、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、β、およびγ;IL−2および他のサイトカイン;F42Kおよび他のサイトカイン類似体;MIP−1、MIP−1β、MCP−1、RANTES、および他のケモカインが含まれる。Fas/Fasリガンド、DR4もしくはDR5/TRAILなど、細胞表面受容体またはそのリガンドの上方制御は、過増殖細胞に対するオートクリンまたはパラクリン作用を確立することによって、本開示のアポトーシス誘導能を強化するであろうことがさらに企図されている。ギャップ結合の数の増大によって、細胞間シグナル伝達が増大すれば、近傍の過剰増殖性細胞集団に対する抗過剰増殖性効果が増大するであろう。他の実施形態では、処置の抗過増殖有効性を向上させるために、本開示と組み合わせて、細胞分裂停止または分化薬剤を用いることができる。細胞接着の阻害剤は、本開示の有効性を向上させることが企図されている。細胞接着阻害剤の例は、接着斑キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。処置の有効性を向上させるために、抗体c225など、アポトーシスに対する過増殖細胞の感受性を増強する他の薬剤を、本開示と組み合わせて使用できるであろうことがさらに企図されている。
【0148】
XII.医薬組成物
本開示に従い、「医薬組成物」という用語は、個体への投与のための組成物に関する。本開示の特定の態様では、医薬組成物は、がん細胞上のCD138抗原を指向する複数の免疫細胞を含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は、非経口投与、経皮投与、管腔内投与、動脈内投与、髄腔内投与、または静脈内投与のための組成物またはがんへの直接的な注射のための組成物を含む。前記医薬組成物を、注入または注射を介して個体に投与することが特に企図されている。適した組成物の投与は、異なる方途、例えば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋内投与、局所投与、または皮内投与によって行うことができる。
【0149】
本開示の医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含みうる。適した医薬担体の例は、当業界で周知であり、これらには、リン酸緩衝生理食塩液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、多様な種類の保湿剤、滅菌溶液などが含まれる。このような担体を含む組成物は、よく知られている好都合な方法によって製剤化することができる。これらの医薬組成物は、適した用量で対象に投与することができる。
【0150】
投与量レジメンは、主治医および臨床的因子によって決定されるであろう。医療技術分野で周知の通り、任意の1人の患者の投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与回数および投与経路、全般的健康、および共時的に投与される他の薬物を含めた多くの因子によって決まる。投与に好ましい投与量は、1日当たり体重1キログラム当たり0.24μg〜48mg、好ましくは0.24μg〜24mg、より好ましくは0.24μg〜2.4mg、なおより好ましくは0.24μg〜1.2mgの範囲である可能性があり、最も好ましくは0.24μg〜240mgの単位でありうるだろう。特に好ましい投与量を、本明細書の以下に列挙する。進行は、定期的な評価によってモニタリングすることができる。CARにより改変されたT細胞は、静脈内注入を介して投与される。用量は、1m
2当たりの細胞1×10
7個〜1m
2当たりの細胞2×10
8個の範囲でありうる。
【0151】
本開示の組成物は、局所投与することもでき、全身投与することもできる。投与は一般に、非経口投与、例えば、静脈内投与であり、DNAは、例えば、遺伝子銃による内部もしくは外部の標的部位への送達、またはカテーテルによる動脈内の部位への送達など、標的部位へと直接的に投与することができる。好ましい実施形態では、医薬組成物を皮下投与し、なおより好ましい実施形態では、静脈内投与する。非経口投与のための調製物には、滅菌水溶液または滅菌非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、生理食塩液および緩衝媒質を含めた、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョン、または懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース、および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内媒体には、流体および栄養物補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づく電解質補充液など)などが含まれる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなど、保存剤および他の添加剤も存在してよい。加えて、本開示の医薬組成物は、例えば、好ましくはヒト由来の、血清アルブミンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質性担体も含みうるであろう。本開示の医薬組成物は、医薬組成物の意図される使用によって、CARコンストラクトもしくはCAR核酸分子またはこれらをコードするベクター(本開示に記載の)に加えて、さらに、生物学的に活性の薬剤も含みうることが企図される。
【0152】
本明細書に記載の組成物のいずれかを、CD138を発現するがんを処置するためのキットに含めることができる。非限定的な例では、細胞療法における使用のための、1つまたは複数のCD138指向性免疫細胞、および/または細胞療法における使用のための1つまたは複数の細胞であって、組換え発現ベクターを保有する細胞を生成する試薬を、キットに含めることができる。キットの構成要素は、適した容器手段で提供される。
【0153】
キットのいくつかの構成要素は、水性媒体に入れるか、凍結乾燥形態でパッケージングすることができる。キットの容器手段には、通常、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、または他の容器手段が含まれることになり、その中に、構成要素を入れる、好ましくは、適切にアリコートに分けることができる。キット内に複数の構成要素がある場合、キットは、通常、第2、第3、または他の追加の容器を含有することになり、その中に追加の構成要素を個別に入れることができる。しかし、構成要素の様々な組合せを1つのバイアルに含めることもできる。キットは、典型的には、販売用に構成要素をしっかりと封じ込めるための手段も含むことになる。そのような容器には、その中に所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器が含まれることになる。
【0154】
キットの構成要素を1種および/または2種以上の液体溶液中で提供する場合、液体溶液は水溶液であり、無菌水溶液が特に有用である。場合によっては、容器手段が、それ自体、シリンジ、ピペット、および/または装置などの他のものであってもよく、そこから、製剤を身体の感染領域に適用すること、動物に注射すること、ならびに/またはキットの他の構成要素にさえ適用し、かつ/もしくはこれと混合することができる。
【0155】
しかし、キットの構成要素は、乾燥粉末として提供することができる。試薬および/または構成要素を乾燥粉末として提供する場合、この粉末を、適した溶媒の添加によって再構成することができる。溶媒を別の容器手段に入れて提供できることが企図されている。キットは、無菌の薬学的に許容できるバッファーおよび/または他の希釈剤を含有するための第2の容器手段を含むことができる。
【0156】
特定の実施形態では、細胞療法に用いられる細胞をキットに入れて提供し、場合によっては、細胞がキットの本質的に唯一の構成要素となる。キットは、必要とされた細胞を作成する試薬および材料を含みうる。特定の実施形態では、試薬および材料には、所望の配列を増幅するためのプライマー、ヌクレオチド、適した緩衝液または緩衝液試薬、塩などが含まれ、いくつかの場合では、試薬には、本明細書に記載のエンゲージャー分子および/またはそのための調節エレメントをコードするベクターおよび/またはDNAも含まれる。
【0157】
特定の実施形態では、キット内に、個体から1つまたは複数の試料を抽出するのに適した1つまたは複数の装置がある。この装置は、シリンジ、メスなどであってもよい。
【0158】
特定の態様では、キットは、本開示の細胞療法を含み、それに対して細胞が免疫性である化学療法も含む。いくつかの場合に、キットには、細胞療法の実施形態に加えて、例えば、化学療法、ホルモン療法、および/または免疫療法など、二次がん療法も含まれる。キットは、個体の特定のがんに照らして調整することができ、個体のためのそれぞれの二次がん療法を含みうる。
【0159】
XII.CD138 CARを発現する宿主T細胞の治療的使用
例示を目的として述べると、がん患者、またはがんに罹患しやすい患者、またはがんを有することが疑われる患者は、本明細書に記載の通りに処置することができる。本明細書に記載の通りに改変された免疫細胞は、個体に投与し、長期にわたり保持することができる。個体には、1回または複数回の細胞の投与を行うことができる。いくつかの実施形態では一般に、改変された細胞を封入して、免疫認識を阻害し、腫瘍部位に配置する。
【0160】
多様な実施形態では、発現コンストラクト、核酸配列、ベクター、宿主細胞、および/またはこれらを含む医薬組成物を、腫瘍性疾患など、がん性疾患の防止、処置、または改善のために使用する。特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、例えば、固形腫瘍を含めたがんの防止、改善、および/または処置において、特に、有用でありうる。
【0161】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、疾患または病的状態の症状または病態への有益または望ましいいかなる作用も含み、処置されている疾患または状態(例えば、がん)の1種または複数の測定可能マーカーにおける最小限の低減さえ含みうる。処置は、場合によって、疾患もしくは状態の症状の軽減もしくは改善または疾患もしくは状態の進行の遅延を伴うことがある。「処置」は、必ずしも、疾患もしくは状態またはそれに伴う症状の完全な根絶または治癒を示すわけではない。
【0162】
本明細書で使用される場合、「予防する」および「予防される」、「予防すること」などの類似の語は、疾患または状態、例えば、がんの発生または再発を予防する、阻害する、またはその可能性を低減するためのアプローチを示す。この語は、疾患もしくは状態の発症もしくは再発を遅らせること、または疾患もしくは状態の症状の発症もしくは再発を遅らせることも指す。本明細書で使用される場合、「予防」および類似の語は、疾患または状態の発症または再発の前に、疾患または状態の強度、影響、症状、および/または負荷を軽減させることも含む。
【0163】
特定の実施形態では、本発明は、発現コンストラクト、核酸分子、および/またはベクターを保有する細胞であって、単独で、または別の療法との任意の組合せで投与することができ、少なくともいくつかの態様では、薬学的に許容される担体または賦形剤と併せて投与することができる細胞を部分的に企図する。ある特定の実施形態では、細胞を投与する前に、前記核酸分子またはベクターを、細胞のゲノムへと安定的に組み込むことができる。特定の実施形態では、ある特定の細胞または組織に特異的であり、前記細胞内に滞留するウイルスベクターを使用することができる。適した医薬担体および医薬賦形剤は、当業界で周知である。本開示に従い調製された組成物は、上記で同定された疾患を防止するか、処置するか、または遅延させるために使用することができる。
【0164】
さらに、本開示は、がん性疾患(腫瘍性疾患を含めた)を防止、処置、または改善するための方法であって、それを必要とする対象に、抗原認識部分分子および化学療法耐性分子、それらをコードする核酸配列、それらをコードするベクターを保有する細胞であり、本明細書で企図され、かつ/または本明細書で企図される工程によって作製される細胞の有効量を投与するステップを含む方法にも関する。
【0165】
例示の改変された免疫細胞の組成物の投与の可能な適応は、MM、乳がん、結腸がん、前立腺がん、頭頸部がん、皮膚がん、泌尿生殖器がん、例えば、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頚がん、および腎がん、肺がん、胃がん、小腸がん、肝がん、膵臓がん、胆嚢がん、胆管がん、食道がん、唾液腺がん、および甲状腺がんなど、乳がん、前立腺がん、肺がん、および結腸がん、または上皮がん/癌を含めた、腫瘍性疾患を含めた、がん性疾患である。細胞組成物投与の例示の適応は、例えば、CD138を発現する任意の悪性腫瘍を含めたがん性疾患である。加えて、細胞組成物投与の例示の適応には、他の腫瘍抗原を異常に発現する悪性腫瘍も含まれ、これらも標的化することができる。本開示の組成物の投与は、例えば、微小残存病変、初期がん、進行がん、および/または転移がんおよび/または不応性がんを含めたすべてのステージおよびタイプのがんに有用である。
【0166】
本開示はさらに、他の化合物、例えば、免疫細胞を介して作用する、二特異性抗体コンストラクト、標的化された毒素、または他の化合物との共投与プロトコールも包含する。本発明の組成物の共投与のための臨床レジメンは、他方の構成要素を投与するのと同時に、その前に、および/またはその後に行う共投与を包含しうる。特定の組合せ療法には、化学療法、放射線照射、外科手術、ホルモン療法、または他のタイプの免疫療法が含まれる。
【0167】
実施形態は、本明細書に記載の1つまたは複数の免疫細胞、本明細書に記載の核酸配列、本明細書に記載のベクター、および/または本明細書に記載の宿主を含む、キットに関する。本開示のキットが、本明細書の上記に記載の医薬組成物を、単独で、または医療処置もしくは医療介入を必要とする個体に投与される、さらなる医薬と組み合わせて含むことも企図される。
【0168】
コンストラクトで改変されたCTLは、その後、選択的条件下の培養物中で成長させ、コンストラクトを有するものとして選択された細胞は、その後、拡張し、例えば、宿主細胞内のコンストラクトの存在を決定するためのポリメラーゼ連鎖反応を使用して、さらに解析することもできる。改変された宿主細胞をひとたび同定したら、その後、それらを計画された通りに使用する、例えば、培養物中で拡張するか、または宿主生物に導入する。
【0169】
細胞の性質によって、多種多様な方途により、細胞を、宿主生物、例えば、哺乳動物に導入することができる。特定の実施形態では、細胞を、腫瘍部位に導入することができるが、代わりの実施形態では、細胞を、がんにホーミングさせるか、細胞を、がんにホーミングするように改変する。利用される細胞の数は、多数の状況、導入のための目的、細胞の寿命、使用されるプロトコール、例えば、投与回数、細胞が増殖する能力、組換えコンストラクトの安定性などによって決まるであろう。細胞は一般に、対象の部位またはその近傍において注射される、分散液として適用することができる。細胞は、生理学的に許容可能な培地中の細胞でありうる。
【0170】
DNAの導入は、あらゆる場合に組込みをもたらす必要があるわけではない。状況によっては、導入されたDNAの一過性の維持で十分でありうる。このようにすれば、短期的な効果を及ぼすことができ、この場合、細胞を宿主に導入し、その後、所定の時間の後で、例えば、細胞が特定の部位にホーミングすることができた後で、オンにすることもできよう。
【0171】
細胞は、所望に応じて投与することができる。所望の応答、投与様式、細胞の寿命、存在する細胞の数によって、多様なプロトコールを利用することができる。投与回数は、上記に記載の因子によって、少なくとも部分的に決まるであろう。
【0172】
系は、リガンドに対する細胞応答、発現の効率、および、必要に応じて、分泌レベル、発現産物の活性、時期および状況と共に変化しうる患者の特定の必要、細胞または個々の細胞の発現活性の喪失の結果としての細胞活性の喪失率など、多くの変数の下に置かれることを理解されたい。したがって、各個別の患者について、集団全体に投与されうる万能細胞があったとしても、各患者を個体に適正な投与量についてモニタリングすることが予測され、このような患者のモニタリングの実施は、当業界では慣例的である。
【実施例】
【0173】
以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を実証する目的で含める。当業者ならば、後続の実施例で開示される技法が、本発明者によって本開示の実施においてよく機能することが発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい方式を構成すると考えられうることを理解するであろう。しかし、当業者ならば、本開示に照らして、開示される特定の実施形態において、多くの変化を施し、本開示の趣旨および範囲から逸脱せずに、やはり同じ結果または同様の結果を得うることも理解するであろう。
【0174】
実施例1初期研究XII.初期研究/予備データ
CARベースの技術を使用して、CD19、ヒト免疫グロブリンのκ軽鎖、およびリンパ腫内のCD30を標的化する臨床試験が開発されている。戦略は、臨床的探索下にあり、近年、CAR.CD19で処置された患者の最初の群について報告された。本開示の実施形態では、CAR技術を使用して、このアプローチによる処置のためにいまだ選択されていない、例示の造血器障害を標的化する。
【0175】
CAR.CD138でリダイレクトされたT細胞は、CD138
+悪性PCを標的化する。本発明者らは、CD138特異的一本鎖(scFv)を、前に記載した通り、IgG1のヒンジ−CH2CH3領域、CD28エンドドメイン、およびζ鎖とインフレームでクローニングした(第二世代のCAR)。
図1は、活性化されたTリンパ球内のCAR.CD138の発現、ならびにそれらによるCD138
+MM細胞株(U266およびRPMI)および初代腫瘍性PCの特異的な殺滅を示す。
【0176】
CAR.CD138+T細胞は、in vivoにおけるMMの成長を制御する。CARでリダイレクトされたT細胞の抗腫瘍効果を、in vivoにおいて評価するため、本発明者らは、SCIDマウスにおいて異種移植モデルを確立し、生物発光システムを使用して、MMの成長を追跡した。これらの実験では、マウスに、ホタルルシフェラーゼ(FFLuc)で標識されたU266細胞(細胞0.5×10
6個)を静脈内(i.v)注射した。腫瘍細胞が発光によって検出可能となったら、マウスに、対照T細胞およびCAR+T細胞(マウス1匹当たりの細胞10
7個)を、外因性サイトカインを伴わずにi.v.注射した。
図2において示される通り、CAR+T細胞は、MMの成長の制御をもたらす。
【0177】
CAR.CD138の低酸素状態誘導性発現:低酸素状態誘導性CAR.CD138を生成するため、本発明者らは、CAR.CD138カセットの配向性を、SFGレトロウイルス骨格へと反転させ、これに、その3’末端でミニマルCMVプロモーター(Clontech)と融合させた、HREの6回反復配列を含めた。
図3は、正常酸素状態下および低酸素状態(1%のO
2分圧)下における、活性化されたTリンパ球内の、低酸素状態誘導性CAR.CD138(hCAR.CD138)の発現および機能を示す。
【0178】
全体として、これらの初期研究は、本開示の実用性を示す。HREの制御下で発現されたCAR.CD138は、完全な抗MM機能を保持することは重要である。
【0179】
実施例2例示の方法
慣例的に使用されているいくつかの方法は、以前の刊行物(9、25)に十分に記載されている。
【0180】
本開示の実施形態では、低酸素状態応答性エレメント(HRE)の誘導的制御下でCAR.CD138を発現することによる、MMにおけるBM微小環境の低酸素的性質の利用がある。CAR T細胞を低酸素環境内で共刺激するのに最も有利な免疫エレメントを、in vitro、および、in vivoの異種マウスモデルの両方において規定することもできる。最後に、提起されたアプローチの安全性をさらに増大させるために、当業者は、コンストラクト内に、誘導性カスパーゼ9(iC9)に基づき前に検証された自殺遺伝子を組み込むこともできる。
【0181】
初期研究(
図1および2)は、CAR.CD138を構成的に発現するT細胞が、in vitro、および、in vivoの異種マウスモデルの両方において、抗MM効果を及ぼすことを明確に示す。
図3において示される通り、T細胞が低酸素状態へと曝露されると、hCAR.CD138が有意に上方制御され、T細胞は抗MM活性を保持する。これらの研究におけるCAR.CD138は、CD28共刺激性エンドドメインをコードする。低酸素状態下における、4〜1BBを含めた共刺激性エンドドメインおよびそれらの組合せの効果を、in vitroにおいて比較することができる。一連の抗原刺激の後における増殖、サイトカインの放出、および細胞傷害活性を、in vitroにおいて測定することができ、抗腫瘍活性を、in vivoのマウスモデルにおいて測定することができる(
図2)。加えて、二量体化CARの発現が、正常酸素状態下でさえ、なおも観察される(
図3)ため、発現をさらに低減するように、HREとベクターの3’末端LTRとの間にインシュレーターを含めることもできる。BM低酸素状態において、hCAR.CD138が機能的に発現したら、自己再生能を有するT細胞は、BM環境を回避し、再循環し、潜在的な毒性をもたらす可能性がある。T細胞が、CAR発現を、下方制御するには、48〜72時間かかるため、低酸素状態から正常酸素状態へと移行したら(少なくともいくつかの実施形態では)、構成的プロモーター下で、誘導性カスパーゼ9(iC9)に基づき、自殺遺伝子を共発現することができるので、それらが毒性を引き起こす場合は、T細胞を急速に消失させることができる。iC9遺伝子は、5’LTRの構成的制御下において、逆の配向性で、
図3に記載のレトロウイルスベクター内に施すことができる。ベクターのin vitroおよびin vivoにおける機能性を評価する。
【0182】
本開示の実施形態では、有用なベクターは、低酸素状態下における、主要かつ機能的なCAR.CD138の発現を、in vitroおよびin vivoの両方において可能にする。加えて、自殺遺伝子の包含は、毒性の場合に細胞を消失させることが期待される。低酸素状態下におけるCARの発現が、機能的に不十分である場合、それを、インシュレーターを含めたカセットのサイズ(全体のサイズ:3.5kb)に帰することができ、カセットを、レトロウイルスベクターと比較してカーゴ容量を増大させた、レンチウイルスベクター内に導入することができる。これらのベクターの製造が、頑健であり、再現可能性が高いため、レトロウイルスによるアプローチを利用しうるが、いくつかの場合では、レンチウイルスも活用される。
【0183】
本開示の実施形態では、臨床グレードのレトロウイルスベクターと、MM患者に由来する、CARで改変されたT細胞株を製造し、それらを、再発したMMを有する患者へと注入することを包含する方法がある。当業者は、手順の安全性を評価することができ、毒性が生じる場合は、二量体化薬を投与して、iC9安全性遺伝子をin vivoにおいて活性化させる。T細胞の注入が、検出可能な疾患を有する患者における疾患のコントロールをもたらすのかどうかを評価することもできる。
【0184】
hCAR.CD138および構成的iC9をコードする、安定的なレトロウイルスによる産生細胞株を作製する。前に記載した通り、PG13によるパッケージングを利用することができる。産生細胞株を調製するための詳細な手順は、記載の中心部において提示されている。このパッケージングから得られた臨床グレードの上清を使用して、MM患者から得られたPB試料に由来するT細胞に形質導入することができる。
【0185】
再発したMM/不応性MMを有する患者において、hCAR.CD138およびiC9を発現する、用量を増大させるTリンパ球の効果を評価することができる(他の実施形態と対照的に、標準的な第一選択療法に応答性の患者を処置することができる)。まず、CAR−T細胞の単回静脈内投与を、3つの異なる用量レベルで評価することができる。ベンダムスチンは、ある程度の抗MM活性を有し、おそらく、養子移入されたCAR T細胞の拡張に好適な環境を創出するため、ベンダムスチンによる処置の後でT細胞を投与する。
【0186】
1mL当たりの力価が>10
6である、安定的な産生細胞株を開発することができる。T細胞の形質導入効率は、低酸素状態下において、30%〜40%の範囲でありうる(
図3)。リダイレクトされたT細胞は、低酸素状態下の共培養実験において、CD138
+標的を消失させることができ、in vitroにおける、iC9自殺遺伝子を活性化させる低分子二量体化剤であるAP1903(20〜50nM)への曝露の24時間以内に、急速に消失させる(形質導入された細胞の>90%)こともできる。
【0187】
本開示の実施形態では、注入されたCAR−T細胞の運命を、それらのin vivoにおける生存を測定することによって特徴づけ、in vitroおよびin vivoにおける、二量体化薬のこれらの細胞に対するその後の効果も決定することができる。BM中および末梢血中のこれらの細胞の蓄積、各環境におけるT細胞によるCARの示差的発現、ならびにこれらと関連する、腫瘍細胞を殺滅させる能力も比較することができる。
【0188】
導入されたT細胞の存続および拡張は、T細胞注入後の異なる時点において回収されたPBから抽出されたDNAにおいて、免疫表現型アッセイおよびリアルタイム定量的PCRアッセイ(Q−PCR)を使用して推定する。BM試料を、これらの患者の臨床評価の一部として、6週目に回収する。間隔を置いて、血漿試料を回収し、瞬時凍結させて、in vivoにおけるT細胞によって放出された、IL−2、IL6、IFNγ、およびTNFαを検出する。例えば、6、12、および24週間後における、パラプロテインレベルおよびPCのBMへの浸潤をモニタリングすることによって、抗腫瘍活性の臨床的証拠を検索することもできる。患者は、NCI基準に従い、毒性の発生について緊密にモニタリングされる。グレードIII〜IVの毒性の場合は、前に報告された通り、患者をAP1903で処置して、iC9遺伝子を活性化させる。iC9の効果は、CARの+循環細胞の喪失を測定すること、およびQPCRを介するiC9トランス遺伝子の変化によって定量化する。
【0189】
CARの分子シグナル(これは、低酸素状態によって決まらない)は、6週目まで、PB試料およびBM試料のいずれにおいても検出されるが、CAR T細胞の蓄積のために、BM中で高度なシグナルが生じる可能性さえある。MMのBMは、低酸素性であるため、T細胞内のフローサイトメトリーによるCARの発現(これは、タンパク質の合成を検出するので、低酸素状態によって決まる)は、BM中で、PB中と比較してはるかに高度であることが期待される。特定の実施形態では、同等数のT細胞が、PB中およびBM中の両方において、表現型的にCAR陽性である場合、これは、低酸素状態により活性化されたT細胞の再循環を反映し、細胞が正常酸素性環境に戻るときに予測される、期待されたCARの下方制御を伴わない。この持続的発現が、毒性と関連するのかどうかを決定し、毒性と関連する場合は、iC9自殺遺伝子を活性化させるAP1903の投与によって失効化させうるのかどうかを決定することができる。iC9の活性化は、AP1903投与の3時間以内に>90%のhCAR.CD138Tを消失させる。AP1903の投与にも関わらず、副作用が増大し続ける場合は、AP1903の追加投与を実施し、高用量のステロイドを投与することができる。特定の実施形態では、hCAR.CD138 T細胞の注入は、腫瘍の有意な低減をもたらす。万一、T細胞の単回投与が、完全寛解を誘導するのに不十分である場合は、T細胞の追加投与を実施することができる。
【0190】
特定の実施形態では、MMを有する患者に「在庫」産物をもたらすために、CAR.CD138を、対象外のEBV特異的CTLへと生着させるが、これは、重度のMMを有する高齢のMM患者のために使用されうる、非骨髄破壊的同種幹細胞移植の後において、特に価値のあるアプローチである。いくつかの実施形態では、MM TAAを指向するTCRを使用する、他の腫瘍関連抗原(MAGE、PRAME、スルビビン)の標的化がある。いくつかの実施形態では、TCRではなく、CARによって媒介される、第3の特異性の包含は、抗原またはHLA分子の発現/抗原のプロセシングの喪失による腫瘍の回避を有意に低減しうる。CD138 scFvを、分泌性「エンゲージャー」タンパク質として発現することもできる。
【0191】
実施例3進行性形質細胞増多症のための、CD138特異的CARを発現するT細胞の研究
本開示の実施形態では、一般に、構成的な活性プロモーター下において、(a)低酸素状態依存性プロモーター下でCD138分子を標的化する人工的T細胞受容体(キメラ抗原受容体またはCAR)(CD138.CAR)、および(b)誘導性カスパーゼ−9(iC9)自殺タンパク質を発現するように改変された、用量を増大させる、自己または同系の活性化末梢血Tリンパ球(ATL)の安全性を評価することができる。本開示の方法の特定の実施形態には、(1)これらのCD138.CAR−ATLの生存および機能を、in vivoにおいて測定すること;(2)不応性形質細胞増多症を有する患者において、CD138.CAR−ATLの抗腫瘍効果を定量化し、改定International Myeloma Working Group(IMWG)Uniform Response基準によって臨床的応答を評価すること;および(3)毒性が生じた場合に、末梢血に由来するトランス遺伝子陽性細胞の消滅を測定することによって、自殺遺伝子を活性化させるのに使用される二量体化剤である、AP1903の投与の有効性を評価することが含まれる。
【0192】
初期研究の少なくともいくつかの場合には、T細胞処置のための、例示の適格性基準がある。(1)不応性/再発した形質細胞増多症(または患者が標準的な治療を受けるかもしくは完了することができないのかどうかを新規に診断する);(2)少なくとも12週間の平均余命;(3)十分な臓器機能;(4)フローサイトメトリーによって決定されるCD138.CAR/iC9の発現が>20%である、形質導入された自己末梢血T細胞の利用可能性;(5)説明同意文書への署名;(6)マウスタンパク質含有産物への過敏反応履歴がないこと。
【0193】
処置計画の例:ベンダムスチンの投与。患者にベンダムスチン(例えば、毎日45mg/m
2ずつ2日間にわたる)を施して、リンパ枯渇をもたらし、注入されたCAR+T細胞の生着を促進する。
【0194】
ベンダムスチンも、限定的な抗骨髄腫効果を及ぼしうる。T細胞の投与。ベンダムスチンによる処置後4〜7日目にT細胞を注入して、それらのIL−7およびIL−15を含めた、再生性サイトカインの発生環境への曝露を最大化する。CRM(continual reassessment method)変法を使用して、3種の用量レベルを評価し、各用量レベルにサイズ2のコホートを登録した。各患者には、以下の投与計画:群1:1m
2当たり2×10
7個、群2:1m
2当たり1×10
8個、群3:1m
2当たり2×10
8個に従い、1回の注射を施す。直接的な毒性の非存在下では、T細胞の逐次投与を実施する許可を得ることができるが、これは、以前の例示の研究で取られた戦略である。
【0195】
臨床パラメータおよび生物学的パラメータのモニタリング:ある特定のパラメータをモニタリングすることができ、これには、T細胞注入前、ならびにT細胞注入の4時間後、および1、2、4、6週間後に実施される、病歴、身体検査、および慣例的な検査室検査が含まれる。レトロウイルス組込み細胞を検出するように設計された他の研究について記載の、特異的Q−PCRアッセイによって、CAR+T細胞の存続もモニタリングすることができる。複製コンピテントレトロウイルス(RCR)およびレトロウイルス組込み細胞のクローン性の検出は、FDAガイドラインに準拠して実施する。処置前および処置の6週間後における、BMを含めた疾患負荷の評価を活用する。
【0196】
用量制限毒性(DLT):DLTは、以下の毒性:(1)グレード3またはグレード4の任意の、造血器以外における毒性;(2)グレード4の任意の造血器DLT(血球減少症は、ベンダムスチンに伴うと予測され、DLTと評定されない;広範にわたる骨髄病変を伴う患者は、造血器DLTについて評価可能でない)であって、場合により、おそらく、または確実に改変T細胞と関連すると考えられうる毒性のいずれかとして規定することができる。造血器以外におけるDLTが生じた場合、患者は、二量体化薬物(0.4mg/kg)の単回投与で処置し、循環する遺伝子改変T細胞に対する効果を研究する。48時間以内に毒性が減少しない場合、プロトコールは、ステロイド(毎日1mg/kgずつのメチルプレドニゾロン)と組み合わせた、最大3回の二量体化薬の追加投与を可能にするであろう。
【0197】
研究の終了:最低10例の患者を処置し、現行の用量で6例の患者を登録し、DLTがないか、またはDLTの予測確率が>20%である場合、試験を終了することができる。最大18例の患者を登録することができる。毒性は、NCI基準(CTCAE)を使用して評価する。特定の実施形態では、6週間で処置コースを構成し、これが、DLTを評価するためのベースとして用いられる。
【0198】
実施例4CD138 CAR T細胞は、in vitroおよびin vivoにおいて有効である
本実施例は、in vitroおよびin vivoにおける測定によって、例示のCD138特異的CAR T細胞が、腫瘍細胞に対して有効であることを示す。
【0199】
図4は、CAR.CD138は、健常ドナー試料および多発性骨髄腫(MM)試料のいずれに由来するT細胞内でも、効率的かつ安定的に発現されうることを実証する。
図4Dにおいて示される通り、健常ドナーに由来する対照T細胞および形質導入されたT細胞のいずれも、均衡した比率のCD3
+CD8
+T細胞(57%±26%および54%±14%)およびCD3
+CD4
+T細胞(35%±17%および37%±13%)を含有したが、MM患者に由来するT細胞は、CD8
+細胞(80%±10%)を含有する不均衡が大きかった。健常ドナーおよびMM患者に由来する、形質導入されたT細胞は、ex vivoにおける拡張手順と適合的な、メモリー細胞とエフェクターメモリー細胞との比率(それぞれ、CD45RO
+:82%±16%および79%±9%;それぞれ、CD62L
+=51%±17%および42%±14%)を含有した。
【0200】
図5では、CAR.CD138
+T細胞は、CD138
+腫瘍細胞株を標的化する。CAR.CD138を発現する、健常ドナーに由来するT細胞は、標準的な51Cr放出アッセイにおいて、選択されたCD138
+MM由来細胞株を、対照T細胞より有意に高い割合で溶解させた(
図5A、5D)。殺滅の同様のパターンは、形質導入されたT細胞が、MM患者から生成された場合にも観察された(
図5B)。これに対し、CAR.CD138
+T細胞の、特定のCD138
−標的(
図5A、5B、5D)または対照T細胞(
図5C)に対する活性は、無視できる程度であった。
【0201】
図6は、CAR.CD138
+T細胞は、共培養実験において、CD138
+腫瘍細胞を消失させることを実証する。CAR.CD138
+T細胞の、CD138
+腫瘍細胞を消失させる、長期にわたる能力を評価するために、CAR
+T細胞または対照T細胞を、外因性サイトカインの非存在下においてCD138
+腫瘍細胞またはCD138
−腫瘍細胞と共に共培養し(
図6A)、5〜7日後に、FACS解析によって、残留腫瘍細胞を数え上げた。CAR
+T細胞の存在下では、CD138
+腫瘍は完全に消失したが、対照T細胞を伴う培養物中では、腫瘍細胞は過剰成長した。
【0202】
CAR.CD138
+T細胞は、腫瘍細胞に応答したTh1プロファイルを示す(
図7)。CAR.CD138
+T細胞のサイトカインプロファイルを評価するため、CAR
+T細胞または対照T細胞を、CD138
+腫瘍細胞またはCD138
−腫瘍細胞と共に共培養した。24時間後に培養物上清を回収し、特定のTh1およびTh1サイトカインの存在について解析した。
【0203】
CAR.CD138
+T細胞は、推定がん幹細胞を標的化する(
図8)。アプローチはまた、推定がん幹細胞も標的化することを確認するため、RPMI−8266腫瘍細胞内に含有されるSP細胞によるCD138の発現を研究し、その後、このサブセットもまた、CAR
+T細胞によって効果的に消失させうるのかどうかを、モニタリングした。対照T細胞を伴う共培養では、RPMI−8266細胞がなおも存在しただけでなく、平均6%のSP細胞もやはり存在した(
図8A、8B)。これに対し、CAR
+T細胞を伴う培養物中では、RPMI細胞は有意に低減され 、SP細胞は検出されなかった(
図8A、8B)。この能力をさらに確認するため、SP細胞を、RPMI細胞株から直接分取し、対照T細胞またはCAR
+T細胞と共に培養した(
図8C)。分取されたSP細胞が完全に消失したのは、形質導入されたT細胞の存在下に限られた。
【0204】
図9は、CAR.CD138
+T細胞は、初代骨髄腫細胞を標的化することを示す。健常ドナーから生成されたCAR
+T細胞は、対照T細胞とは対照的に、MM患者に由来する、CD138で選択された腫瘍細胞を消失させる(<80%の低減)ことに成功した(
図9A)。
図9Bでは、同様に、自己CAR
+T細胞も、初代MM細胞を、対照T細胞と比較して消失させ、これらの実験におけるサイトカインプロファイルは、Th1プロファイルと符合した(
図9C)。
【0205】
図10は、CAR.CD138
+T細胞は、in vivoにおける抗腫瘍活性を有することを実証する。NSGマウスに、4×10
6個の、ホタルルシフェラーゼで標識されたOPM−2細胞の静脈内投与を行った後で、CAR.CD138
+T細胞(1×10
7個)の注入を伴う、3回にわたるi.v.注入を行った。23日目から、生物発光イメージング(BLI)を実施して、腫瘍成長をモニタリングした。
図10Aは、BLIによって決定され、対照T細胞またはCAR.CD138
+T細胞で処置されたマウスを比較する、マウス1匹当たりの平均光子/秒/cm
2/ステラジアンを示す。3回の独立の実験のまとめ。
図10Bは、CAR.CD138
+T細胞または対照T細胞で処置されたマウスのカプラン−マイヤー生存曲線(p<0.01)を示す。
【0206】
図11では、低酸素状態誘導性CAR.CD138(HRE.CAR.CD138)の生成および機能がある。
図11Aは、レトロウイルスベクター内でコードされるHRE.CAR.CD138の概略表示を提示する。対照T細胞、構成的CAR.CD138
+T細胞、またはHRE.CAR.CD138
+T細胞を、正常酸素状態下または低酸素状態下のCD138
+標的と共に共培養した(
図11B)。培養の4日後、細胞を回収し、CD3およびCD138で染色して、腫瘍細胞の成長を評価した。また、T細胞上のCARの発現も評価した。HRE.CAR.CD138
+T細胞は、低酸素状態下の腫瘍細胞を消失させた。(
図11C)対照T細胞、構成的CAR.CD138
+T細胞、またはHRE.CAR.CD138
+T細胞を標識し、正常酸素状態下または低酸素状態下のCD138
+標的と共に共培養した。培養の4日後、細胞を回収し、CD3で染色し、フローサイトメトリーによって、CSFEの希釈率を測定した。HRE.CAR.CD138
+T細胞は、低酸素状態下で増殖した。
【0207】
本発明およびその利点を詳細に説明したが、添付されている本発明の請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱せずに、様々な変更、置換、および改変をここに加えることができると理解するべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細中に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されるものではない。当業者ならば、本発明の開示内容から容易に理解するように、本明細書に記載の対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、そのような実施形態と実質的に同じ結果をもたらす、現存する、または後に開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップも、本発明に従って使用できる。したがって、添付されている請求の範囲には、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップも包含されるものとする。