【解決手段】プラグコンタクト100を長手方向に沿って保持するプラグハウジングが平板状の接触部を有するリセプタクルコンタクトを長手方向に沿って保持するリセプタクルハウジングの上面から沈むように嵌合し、プラグコンタクト100が、嵌合時リセプタクルコンタクトの接触部に一対のコンタクト片110の先端部133で挟持する接触部を有するコネクタ構造において、一対のコンタクト片110の先端部133は対面する挟持面が幅方向に位置がずれており、プラグコンタクト100は長手方向に沿う方向に2列状に配列され、一対のコンタクト片110の先端部133の位置ずれ量が先端部133の幅寸法に比べて大きく、挟持方向に接点135を有するくの字状で、無負荷時接点135は挟持面よりも挟持方向に進む位置にある。
プラグコンタクトを長手方向に沿って保持するプラグハウジングが平板状の接触部を有するリセプタクルコンタクトを長手方向に沿って保持するリセプタクルハウジングの上面から沈むように嵌合し、前記プラグコンタクトが、嵌合時前記リセプタクルコンタクトの前記接触部に一対のコンタクト片で挟持する接触部を有するコネクタ構造において、
前記一対のコンタクト片の先端部は対面する挟持面が挟持方向に直交する幅方向に位置がずれており、前記プラグコンタクトは前記長手方向に沿う方向に少なくとも1列に複数個が配置されているところに特徴を有するコネクタ構造。
請求項2記載の一対のコンタクト片の先端部は、挟持方向に頂部を有するくの字状で、無負荷時前記頂部は挟持面よりも挟持方向に進む位置にあるところに特徴を有するコネクタ構造。
前記1列状に配置されたプラグコンタクトの配置エリアを1つ或いは2つ以上に区分けした場合、同一エリア内では、前記一対のコンタクト片の先端部の位置ずれ方向が同一方向に揃えられているところに特徴を有する請求項1から3の内一項記載のコネクタ構造。
請求項5記載の条件で配置されたプラグコンタクトは、長手距離の略中央でエリアが区分けされ全体が4つのエリアを備え、隣接するエリアのプラグコンタクトの一対のコンタクト片の先端部の位置ずれ方向が同一方向であるところに特徴を有するコネクタ構造。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。
図1は本発明の実施形態に係るコネクタ構造のプラグコネクタと、レセプタクルコネクタとが嵌合開始位置にある状態を示す外観斜視図である。
図2は同コネクタ構造のプラグコネクタと、レセプタクルコネクタとの嵌合状態を示す外観斜視図である。
図3は同コネクタ構造に係るプラグコンタクトの外観斜視図である。
図4は同コネクタ構造に係るプラグコンタクトの平面図であって、(1)は静止状態、(2)は嵌合状態である。
図5は同コネクタ構造に係るレセプタクルコンタクトのレセプタクルハウジングに対する圧入状態を示す要部断面図である。
図6は、同コネクタ構造に係るプラグコネクタに備わるプラグコンタクトの配列状態を示す平面図であって、(1)は、プラグハウジングに装着された状態のプラグコンタクトの配列状態であり、(2)は、上記状態からプラグコンタクトを取り出した配列状態であり、(3)はプラグコンタクトのコンタクト片の位置ずれ方向を理解しやすいように模式的に表現した配列状態を示す平面図である。
図7は、同コネクタ構造に係るプラグコンタクトの千鳥配列による効果を生じる要部構造を示す模式図であって、(1)はオーバーラップ構造、(2)は今狭ピッチ構造である。
図8は同コネクタ構造に係るレセプタクルコンタクトの外観図である。
図9は同コネクタ構造に係るレセプタクルコンタクトのレセプタクルハウジングに対する圧入状態を示す、(1)は要部拡大図、(2)は透視図である。
図10は同コネクタ構造に係るプラグコンタクトと、レセプタクルコンタクトとの嵌合過程の要部断面図である。
図11は同コネクタ構造に係るフロート部と、ハウジング部との要部拡大図である。
図12は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとの嵌合開始状態を示す要部断面図である。
図13は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとが長手方向の位置ずれと傾きが生じている状態での嵌合時のずれ吸収、及び傾き吸収を示す要部断面図である。
図14は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとが平面上の回転ずれが生じている状態での嵌合時のずれ吸収を示す要部断面図である。
図15は同コネクタ構造に係るプラグコンタクトと、レセプタクルコンタクトとのずれ吸収機構を示す断面図である。
なお、説明中の指示方向は原則対象図面に示す方向定義にしたがう。
【0018】
<コネクタ構造概説>
平行位置にある2枚の回路基板B1、B2を接続するためのプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3と、からなるコネクタ構造が
図1、
図2に示されている。プラグコネクタ1、リセプタクルコネクタ3ともに、左右側壁13、22の下面から外方向に回路基板B1、B2に接続するコンタクト接続部140、340が延びている。プラグコネクタ1は、リセプタクルコネクタ3の上面からその全体を沈めるように嵌合し、2枚の回路基板B1、B2間の所定回路を接続する。
【0019】
プラグコネクタ1は、
図1に示されるように、箱状のプラグハウジング10にプラグコンタクト100を2列に亘り等間隔に収容する。プラグハウジング10は、合成樹脂の射出成形により得られ、プラグコンタクト100は導電性の圧延金属板の塑性加工によって
得られる。
【0020】
リセプタクルコネクタ3は、
図1に示されるように、二重の入れ子構造からなり、リセプタクルハウジング30と、比較的大きな板状の接触部を有するリセプタクルコンタクト300とを備える。リセプタクルハウジング30は、回路基板B2に取り付くベースハウジング20と、その内側に浮いた状態にある、フロート部200とからなる。ともに合成樹脂の射出成形により得られる。また、リセプタクルコンタクト300は、導電性の圧延金属板の塑性加工により得られる。
【0021】
<プラグハウジング>
プラグハウジング10は、
図1に示されるように、前後方向に延びる底壁12、この底壁12の前後端に端壁14、14、左右端に側壁13、13を備える。底壁12は、左右側壁13、13、前後端壁14、14で周囲が囲まれ、中央部に窪地を有する。側壁13は、端壁14に比べて厚みを有し、内部にプラグコンタクト100を収容する、収容室を備える。収容室は、左右側壁に等間隔に長手方向に沿って備わる。端壁は平坦な板状である。
【0022】
プラグハウジング10は、
図1に示されるように、窪地の中央部に底壁12の表面から真上に延びる柱状の位置決めポスト11を有する。位置決めポスト11は、嵌合時、相手方コネクタ(リセプタクルコネクタ3)の位置決めガイド250と作用し、両コネクタ1、3の正規嵌合位置を割り出す。位置決めポスト11と、位置決めガイド250とは、その機能に応じる、先端部にテーパー面を備えている。
【0023】
位置決めポスト11は、
図1に示されるように、前後方向に板厚を有する板状で、対応する位置決めガイド250は、この板状の位置決めポスト11を表裏面から挟持する一対の板片を有する溝である。位置決めガイド250は、位置決めポスト11に比べて幅方向(左右方向)の寸法が大きく、このために、正規規嵌合位置からのずれが幅方向(左右方向)に生じていても、プラグコネクタ1はリセプタクルコネクタ3に収容可能である。すなわち、相対的にずれた状態でも嵌合が許容される。
【0024】
プラグハウジング10は、
図1に示されるように、側壁13の内部に狭ピッチで前後方向に沿って配置されるプラグコンタクト100を収容し、回路基板B1と接続する接続部140は底壁12の下面で等間隔に延び、相手方コンタクト(リセプタクルコンタクト300)と接続する接触部は、全体が側壁で覆われる。
【0025】
プラグハウジング10は、
図1に示されるように、回路基板B1との接続が補強されるように、ハウジングの所定の位置に補強金具を備えていてもよい。これにより、プラグコンタクト100と同時に補強金具の実装もおこなえる。
【0026】
<プラグコンタクト>
プラグコンタクト100は、
図3に示されるように、一対のコンタクト片110、100からなる。一対のコンタクト片110、110は、180度湾曲する連結部136で連なり、互いに内側面を相手方に向けて正対する。一対のコンタクト片110、110間には距離が設けられている。これにより、コンタクト片110の付勢力が強化される。
【0027】
コンタクト片110は、
図3に示されるように、左右方向に比べて上下方向に長く延び、矩形状の圧入部120の上辺から上方に接触部130が連なる。接触部130の下端側縁からは、一対のコンタクト片110、110を繋ぐように連結部136が備わる。また圧入部120の下辺からは、途中外方向へ屈曲する姿勢で接続部140が延びている。
【0028】
一方のコンタクト片110の圧入部120、接触部130は、
図3に示されるように、略同じ平面上にあり、他方のコンタクト片110は、これと平行して延びる接触部130を備えている。双方の接触部130、130は、
図3に示されるように、山形に屈曲する先端部133を備え、山形の頂部に接点135を備えている。嵌合時、接点135は、相手方コンタクト(リセプタクルコンタクト300)に接続し、付勢力を作用させる。
【0029】
接触部130は、
図3に示されるように、基端部から先端部にいくにしたがって幅寸法は段階的に狭くなる。基端部は略圧入部と同じ幅寸法を有し、先端部はその1/4程度の寸法まで減少する。接触部130は、基端部を支点にして弾性変形し、嵌合時、相手方コンタクト300に付勢力を与える。
【0030】
接触部130の先端部133は、
図3に示されるように、互いに対面する内側に山形の頂部が張り出し、対面姿勢で衝突を避けるため、互いに幅寸法分前後方向にずらした位置に配置されている。これにより、山形は比較的大きな角度で前方へ張り出し、その頂部は相手方頂部と衝突するほどの勢いではあるが、先端部133は互いにオフセット位置にあるため、静的状態、或いは弾性変形状態ともに、互いに干渉は生じない。
【0031】
すなわち、一対のコンタクト片110、110は、
図4に示されるように、接触部130は、略全体が互いに鏡面対称に写る形状で、先端部133が互いに干渉を避ける位置にあるので、弾性変形方向と直交する方向から静的状態のコンタクト100を見たとき、先端部133は、互いに重なり合う、いわゆるオーバーラップの位置にある。
【0032】
一対のコンタクト片110、110からなるプラグコンタクト100は、
図4の(1)に示されるように、先端部133は、静的状態でオーバーラップ姿勢にあり、嵌合時、相手方コンタクト300が一対の先端部133、133に挟持されたとき、一対の先端部133、133の接点135、135は、
図4の(2)に示されるように、相手方コンタクト300の厚み分だけ離間した状態である。弾性片の付勢力は変形量に比例するので、オーバーラップ状態からの挟持は、オーバーラップ状態のない場合に比べて、大きな付勢力が得られる。
【0033】
このように、オーバーラップ姿勢により、薄い板厚の材料が使用でき、幅寸法も小型化が可能になり、これにより装置の小型化か望める。また、相手方コンタクト300の挟持状態でのコンタクト幅寸法の最小化も図られるので、端子配列の狭ピッチ化にも寄与する。
【0034】
<プラグ取り付け>
プラグコンタクト100は、
図5に示されるように、プラグハウジング10の収容室18に収容される。収容室18は、プラグハウジング10の底壁12の左右端部から左右側壁13にかけて、内部に形成されている。収容室18は、プラグコンタクト100の圧入部120を係止するための被圧入部19、19を下端寄りに備え、弾性変形可能な接触部130を収容する部分を上端寄りに備えている。
【0035】
側壁13は、
図5に示されるように、上下方向にスリット17が刻まれ、柱状の保護部16が前後方向に等間隔で形成されている。隣接する一対の保護部16、16の内部に、一対のコンタクト片110、110が収容され、嵌合時、スリット17を通して挿入された図示しない相手方コンタクトと接続する。すなわち、隣接する一方の保護部16には、一方のコンタクト片110が収容され、他方の保護部16には、他方のコンタクト片110が収容される。
【0036】
プラグコンタクト100は、
図5に示されるように、プラグハウジング10の下面から
収容室18に圧入され、圧入終了位置で圧入部120は被圧入部19、19に係止する。この位置で、接触部130は保護部16の内部にある。このとき、一対のコンタクト片110、110は一体的に圧入され、一つの収容室18に収容されている。接触部130は、収容室18内で内壁に干渉することなく、所定範囲内で弾性変形可能である。一対の接触部130、130は、スリット17で隔たれた一対の保護部16、16に各片が収容され、スリット17は概ね接触部130の全長を満たす程度の深さを有し、嵌合時、図示しない相手方コンタクトは概ねスリット17の底部近くまで挿入される。
【0037】
接触部130は、
図5に示されるように、保護部16で全体が覆われるので、不用意な接触による変形破損から免れる。また、前後方向に等間隔で配置されたプラグコンタクト100は、隣接ずるコンタクト間も保護部16で守られ、互いに干渉は生じない。
【0038】
スリット17は、
図5に示されるように、一対のコンタクト片110、110を真二つに分ける位置に刻まれ、スリット17上にプラグコンタクト先端部133のオーバーラップ構造が位置している。これにより、スリット17入り口を通過した図示しない相手方コンタクトは、スムーズに先端部133、133の誘いに誘導され、嵌合終了位置まで挿入される。
【0039】
オーバーラップ位置の先端部133は、嵌合時、
図4に示されるように、相手方コンタクト300に対して互いに挟持する向きに付勢力を作用させ、接点135で強い電気的機械的接続を得る。このとき、オフセット位置にある一対の接点135、135により、相手方コンタクト300との間で回転モーメントが生じるが、等間隔で複数列に亘り配置されているので、互いに回転モーメントが打ち消され、コネクタ構造は全体的に安定的である。
【0040】
<千鳥配列状態>
図6は、プラグコネクタ1に備わるプラグコンタクト100の配列状態を示す平面図である。(1)は、プラグハウジング10に装着された状態のプラグコンタクト100の配列状態であり、(2)は、上記状態からプラグコンタクト100を取り出した配列状態であり、(3)はプラグコンタクト100のコンタクト片110の位置ずれ方向を理解しやすいように模式的に表現した配列状態である。
図7は、プラグコンタクト100の千鳥配列による効果を生じる要部構造を示す模式図であって、(1)はオーバーラップ構造、(2)は今狭ピッチ構造である。
【0041】
プラグコンタクト100は、
図6の(1)に示されるように、プラグハウジング10に2列状に配列され、左右方向(長手方向)に等間隔で保持されている。図示しない回路基板との接続部140は、プラグハウジング10側壁13から外方向へ延出し、図示しない相手方コンタクト300との接触部130は紙面手前方向へ延びている。
【0042】
プラグコンタクト100の一対のコンタクト片110は、
図6の(2)、(3)に示されるように、一対のコンタクト片110の位置ずれ方向が同一方向になるように揃えられ、一列状に配列されたコンタクト片110は、足先(先端部133)が同一方向に向くように千鳥足状に配列されている。
【0043】
プラグコンタクト100は、
図6に示されるように、プラグハウジング10に2列状態で配列され、配列エリアを右上の第1象限から反時計回りにI、II、III、IVの4つのエリアに分けた場合、各エリアでプラグコンタクト100の千鳥配列の足並は整えられている。また隣接するエリアの千鳥配列の足並みも同じ方向に揃えられている。たとえば、IエリアとIIエリアとのプラグコンタクト100の千鳥配置の足並みは、ともに一対のコンタクト片110の上段側の先端部133の接点135が挟持面に対して挟持方向
に進む右寄り位置にあり、下段側の先端部133の接点135が挟持面に対して挟持方向に進む左寄り位置にある。
【0044】
すなわち、Iエリアのプラグコンタクト100の一対のコンタクト片110は、上段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して左側面から押圧し、下段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して右側面から押圧して挟持し、相手方コンタクト300と電気的接続状態を得る。同じく、IIエリアのプラグコンタクト100の一対のコンタクト片110も、上段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して左側面から押圧し、下段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して右側面から押圧して挟持する。同じく、IIIエリアのプラグコンタクト100の一対のコンタクト片110も、上段側のコンタクト片110は相手方コンタクト300に対して左側面から押圧し、下段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して右側面から押圧して挟持する。同じく、IVエリアのプラグコンタクト100の一対のコンタクト片110も、上段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して左側面から押圧し、下段側のコンタクト片110は、相手方コンタクト300に対して右側面から押圧して挟持する。
【0045】
このように、I乃至IVエリアにある一対のコンタクト片110の千鳥配列の足並み方向を揃えることで、一種類のプラグコンタクト100で、I乃至IVエリアの全てのエリアで必要な形のプラグコンタクト110を準備することができる。
【0046】
一対のコンタクト片110、110の先端部133は、
図7の(1)に示されるように、静的姿勢で先端部の接点が挟持面を超えた、いわゆるオーバーラップ状態にあるので、挟持時の挟持力(復元力)はオーバーラップ状態がない場合に比べて強化されている。これにより、強化された保持力で相手方コンタクト300と接続することができる。また、保持力が強化された分板厚を薄くすることもでき、この場合は狭ピッチ化、機器の小型化に寄与できる。
【0047】
各エリアの隣接する千鳥配列の足並は揃うので、
図7の(2)に示されるように、隣接するプラグコンタクト100の配列距離を短くできる。すなわち狭ピッチでプラグコンタクト100の配列ができ、機器の小型化に寄与できる。
【0048】
本実施形態では、I乃至IVの各エリアのプラグコンタクト100の一対のコンタクト片110は、千鳥配列の足並が全て同じ方向に揃えられている。しかし、勿論、本発明は、千鳥配列の足並がI乃至IVエリア全てにおいて同一方向に揃えられたコンタクト配列態様に限定するものではなく、エリア間で相違する態様を含むことがあってもよい。たとえば、IエリアとIIエリアの千鳥配列の足並み、及びIIIエリアとIVエリアの千鳥配列の足並みは、夫々同一方向に揃えられるとともに、I、IIエリアとIII、IVエリア間では鏡像関係の千鳥配列状態の足並み方向であってもよい。このような千鳥配列の態様であっても上述した効果が得られる。
【0049】
<リセプタクルハウジング>
リセプタクルハウジング30は、
図1に示されるように、ベースハウジング20と、フロート部200とからなる入れ子構造で、フロート部200は、リセプタクルコンタクト300を介して繋がる、いわゆるフローティング構造である。フロート部200は、ベースハウジング20の中で前後、左右、及び上下方向に変位可能に緩やかに保持されている。また、左右方向を軸芯とする回転変位、或いは前後方向を軸芯とする回転変位も許容されている。
【0050】
ベースハウジング20、フロート部200ともに非導電性の合成樹脂からなる射出成形
品であり、ベースコンタクトは導電性金属から塑性加工で得られる。
【0051】
ベースハウジング20は、
図1に示されるように、左右一対の側壁22、22と、この側壁22を繋ぐ一対の端壁21、21とを備え、内側にフロート部200を収容するための収容空間24を有している。側壁22は、基端部でコンタクトを保持するために必要な厚みを有し、ここより上方は比較的薄い平坦な板壁である。側壁22上面も比較的薄い平坦な板壁で覆われ、前後方向に沿ってスリットが形成されている。スリットを通して内部に収容されているリセプタクルコンタクト300の配列状況が観察できる。
【0052】
端壁21は、
図1に示されるように、上方に開いたコの字状で両側壁22、22を平行位置に繋げる。端面は、端壁21以外の部分は開口されている。また、ベースハウジング20の下面は概ね開口され、上面はフロート部200の挿入口で全面が開口されている。
【0053】
収容空間24は、
図1に示されるように、平面視矩形状の窪地で、ここにフロート部200の全体が沈むように嵌り込む。収容空間24は、フロート部200の外形寸法に比べて、上下、及び左右方向ともに大きく、且つベースハウジング20の端面は開口されているので、収容空間24に収容されたフロート部200は、前後、左右、及び上下方向に変位可能である、また、左右方向、或いは前後方向を軸芯にして回転変位も可能である。
【0054】
フロート部200は、
図1、
図9に示されるように、前後方向に延びる箱体で、板壁状の左右側壁220、220、同じく板壁状の前後端壁230、230を備え、左右方向中央には、前後方向に延びる縦壁260を備え、前後方向中央には、左右方向に延びる横壁270を備える。縦壁260は、前後端で端壁に繋がり、横壁270は、左右端で側壁に繋がる。
【0055】
側壁220内面、縦壁260側面には、
図9に示されるように、リセプタクルコンタクト300の接触部330を保持するための保持溝280、280が備わる。縦壁260側面には、フロート圧入部322を圧入するための被圧入部290が備わる。側壁220と縦壁260とは、横桟210で繋がり強度、剛性が確保されている。
【0056】
<リセプタクルコンタクト>
リセプタクルコンタクト300は、
図8に示されるように、細く長くS字状にカーブする保持部320、保持部320の前端に連なる接続部340、及び保持部320の後端に連なる接触部330からなる。
【0057】
保持部320は、
図8に示されるように、比較的小さな湾曲部と、比較的大きな湾曲部とが連続する、略S字状である。小さな湾曲部の端部には、ベースハウジングに取り付くベース圧入部321が備わり、大きな湾曲部の端部には、フロート部に取り付くフロート圧入部322が備わる。ベース圧入部321と、フロート圧入部322とは、保持部320の最も離れた両端部に位置するので、その間は実質的に長い距離が確保されている。図示しない回路基板に伝わる振動は、長い距離が確保されている、このS字部分に吸収されるので、コネクタ構造全体として良好な振動吸収効果が得られる。また、両圧入部321、322ともにその前後に比べて幅寸法が若干大きくとられ圧入保持されやすい形状を備えている。
【0058】
保持部320の端部に連なる接続部340は、
図8に示されるように、90度外向きに屈曲する。接続部340は、その下面で図示しない回路基板の所定ランドに半田接続される。図示しない回路基板の振動は接続部340を通して伝わるが、S字部分で振動は吸収されるので、コンタクトの接点部分の摺動が抑制されたコネクタ構造が得られる。
【0059】
接触部330は、図示しない相手方コンタクトに接続する部分であって、
図6に示されるように、上下、及び左右方向に広がる板状である。
【0060】
接触部330は、
図9に示されるように、フロート部200に若干の隙間を設けて等間隔に並ぶ。
【0061】
<リセ取り付け>
リセプタクルコンタクト300は、
図9に示されるように、ベースハウジング20と、フロート部200との双方に架けて組み付けられる。フロート部200は、接触部330全体を保持するとともに、保持部320の一部、フロート圧入部322を保持し、一方ベースハウジング20は、保持部320の一部、ベース圧入部321を保持する。S字状に延びる保持部320は、フロート圧入部322と、ベース圧入部321との間で、ベースハウジング20、及びフロート部200のどちらにも干渉することはなく、許容範囲内で、上下、左右、及び前後方向に変位可能である。これにより、ベースハウジング20に対するフロート部200のフローティング構造が得られる。
【0062】
リセプタクルコンタクト300は、
図9に示されるように、リセプタクルハウジング30の下面から圧入される。
【0063】
リセプタクルコンタクト300の接触部330は、
図9に示されるように、フロート部200に下面から組み付けられる。保持部320のフロート圧入部322は、縦壁260の側面に形成された溝状の被圧入部290に圧入され、圧入と同時に、接触部330は両側縁を側壁220内面、及び縦壁260側面の凹状の保持溝280、280に入れた状態で保持される。圧入終了位置まで圧入されたとき、接触部330はフロート部200の正規組み付け位置に組み付けられる。
【0064】
リセプタクルコンタクト300の接触部330がすべて組み付けられた状態のフロート部200は、
図7に示されるように、ベースハウジング20に下面から組み付けられる。保持部320のベース圧入部321は、ベースハウジング20の側壁22下面に形成されたスリット状の被圧入部23に圧入され、圧入終了位置まで圧入されたとき、リセプタクルコンタクト300は正規圧入位置にあり、同時にフロート部200は正規組み付け位置にある。
【0065】
フロート部200は、
図1、
図9に示されるように、収容空間24に組み付けられたとき、S字状に延びる保持部320でベースハウジング20から浮いた状態に保持される。フロート部200は、両側壁220、220にリセプタクルコンタクト300を複数列配置するので、ベースハウジング20の中の収容空間24で浮いた状態のフロート部200が構成される。
【0066】
<嵌合>
プラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3との嵌合は、
図10に示されるように、上面から水平姿勢でおこなわれる。プラグハウジング10の位置決めポスト11をリセプタクルハウジング30の位置決めガイド250の位置に合わせる。この位置でプラグコンタクト100は、対応するリセプタクルコンタクト300に嵌合する位置にある。リセプタクルコンタクト300の接触部330は、
図10に示されるように、図示しないスリットを通してプラグコンタクト100の図示しない接触部に当接し、図示しない接触部の一対の先端部は間口を広げ、相手方接触部330を挟持する姿勢を準備する。
【0067】
長手方向、幅方向の初期の嵌め込みをおこない、
図10に示されるように、水平姿勢を保った状態で嵌合終了位置まで挿入する。押し切り位置で嵌合終了姿勢である。この姿勢
で、プラグコネクタ1は、リセプタクルコネクタ3の上面からその全体を沈めるように嵌合し、2枚の図示しない回路基板間B1、B2の所定回路を接続する。リセプタクルコンタクト300とプラグコンタクト100とは、嵌合終了位置で接続する。
【0068】
<フロート部のシーソー構造>
フロート部2500のベースハウジング20に対するシーソー構造を図面に従って説明する。
図11は同コネクタ構造に係るフロート部と、ハウジング部との要部拡大図である。
図10は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとの嵌合開始状態を示す要部断面図である。
図13は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとが長手方向の位置ずれと傾きが生じている状態での嵌合時のずれ吸収及び傾き吸収を示す要部断面図である。
図14は同コネクタ構造に係るプラグコネクタと、リセプタクルコネクタとが平面上の回転ずれが生じている状態での嵌合時のずれ吸収を示す要部断面図である。
なお、説明中の指示方向は図面中の方向定義に原則従う。
【0069】
フロート部200は、
図11に示されるように、横壁270の底面270aに断面半円状の支持部2700を一対備える。支持部2700は、横壁270の底面270aに離間して幅方向(左右方向)の両端部に備わる。横壁270は、フロート部200の長手方向(前後方向)の中間部に左右側壁220、220を繋げるように備わる。横壁70は、側壁220内面の下半分に接続し、底面270aは、
図9に示されるように、側壁220下端よりも下方に若干露出している。支持部2700は、この露出する底面270aに備わる。支持部2700は、概ね断面半円状で対応する受け部2500と、曲率を有する周面で接する。周面の曲率は、フロート部200がベースハウジング20に対して左右方向を回転軸として転がる方向に設けられている。
なお、支持部2700は、断面半円状の他、目的に応じた形状を取りうる、たとえば頂点を下にする断面3角形状でもよい。
【0070】
ベースハウジング20は、
図11に示されるように、前後方向の中間部に左右側壁22、22を繋げる中間壁25を備える。中間壁25は、側壁22下方寄りの端部に備わる。中間壁25は、側壁22下端よりも比較的大きく下方に張り出している。中間壁25は、側壁22と協働して補強金具を支持する。
【0071】
中間壁25は、
図11に示されるように、上面に平坦な受け部2500を備える。受け部2500は、面上に広がる平坦面であり、この面上で対応する支持部2700を受ける。支持部2700は、受け部2500の面上で前後方向、及び左右方向の移動が許容されるとともに、左右方向を回転軸方向として面上を転がることが許容されている。
【0072】
フロート部200は、
図11に示されるように、ベースハウジング20に収容されるとき、支持部2700と、受け部2500との接点以外には、ベースハウジング20に接触するところはない。左右側壁22、及び220は、隙間を設けて夫々備わり、前後端壁21、及び230に関しては、ベースハウジング20の端壁21、21は、フロート部200の端部の大きさ相当が刳り抜かれ、これにより干渉するところはない。また、フロート部200と、ベースハウジング20とは、リセプタクルコンタクト300を介して接続されているが、S字状に大きく湾曲する保持部320によって前後、左右、及び上下方向の動きが許容されている。この3軸方向の動きは重畳的に許容されるので、左右方向を回転軸方向とする回転、或いは上下方向を回転軸方向とするいわゆる平面上の回転に対しても許容されている。
【0073】
フロート部200は、
図11に示されるように、リセプタクルコンタクト300によって、緩やかにベースハウジング20に保持され、支持部2700を支点にするベースハウ
ジング20に対するシーソー構造が構築されている。また、支持部2700は、受け部2500に対して前後方向、左右方向への動きも許容されている。特に前後方向の動きは比較的大きく許容されている。
【0074】
図12は、嵌合開始時のフロート部200と、ベースハウジング20との姿勢を示す図であって、特にプラグハウジング10の位置決めポスト11、これに対応するリセプタクルハウジング30の位置決めガイド250、及びフロート部200の支持部2700、これに対応するベースハウジング20の受け部2500の関係を示すものである。位置決めガイド250は、フロート部200の縦壁260と、横壁270とが交差するフロート部200の略中央位置に備わり、対応する位置決めポスト11と、嵌合操作において最初に接するところである。位置決めポスト11と、位置決めガイド250とは協働して、プラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とを相対的に正規嵌合開始位置に位置修正し、その位置からプラグコネクタ1は降下して最終的に正規嵌合位置へ収まる。支持部2700は、位置決めガイド250の直下に位置し、位置決めポスト11の延長線上に支持部2700と、受け部2500との接点がある。
【0075】
図13は、嵌合開始時、フロート部200がベースハウジング20に対して前後方向の位置ずれと、前後方向に沿う傾きが重畳している場合のずれと傾きの吸収を示す図である。位置決めポスト11の尖端部と、位置決めガイド250間口のテーパー部とが協働して、ずれと、傾きとが生じているプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とのずれた姿勢を正規嵌合姿勢に近づける。許容範囲内の両者のずれ、傾きはフロート部200の前後、左右、上下各方向の位置追従性によりリセプタクルコネクタ3のずれた姿勢から正規嵌合姿勢への姿勢修正がおこなわれる。プラグコネクタ1は、このように姿勢修正がおこなわれたリセプタクルコネクタ3のフロート部200に嵌合終了位置まで挿入される。このように、相対的なずれと傾きが生じているプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とは、フロート部200の3軸方向の位置追従性により正規嵌合状態が得られる。
【0076】
ずれと、傾きとが生じているときの支持部2700の動きに注目すると、ずれと傾きによる正規姿勢からのずれを打ち消す方向にフロート部200は、
図11に示されるように、姿勢を変える。ずれを打ち消すように支持部2700は、受け部2500に対して後方側へ変位するとともに、前方が上向きに傾くずれを打ち消すように支持部2700は、受け部2500上で反時計方向に転がる。この転がりと、位置ずれとの重畳した動きが支持部2700で生じ、結果フロート部200の追従性が得られる。
【0077】
図14は、嵌合開始時、フロート部200がベースハウジング20に対して平面上で回転ずれが生じている場合の回転ずれ吸収を示す図である。フロート部200は、一対の支持部2700、2700の中間位置を中心にしてベースハウジング20に対して平面上で回転方向に追従性を有している。追従性はリセプタクルコンタクト300のばね性を駆動力とする。
【0078】
両者の嵌合開始時、位置決めポスト11の尖端部は、位置決めガイド250の一対のガイド片の中にあり、一対のガイド片と、位置決めポスト11との間には隙間が形成されている。一対のガイド片、位置決めポスト11ともに幅方向に距離を有するものではあるが、生じている隙間は一対のガイド片の間で位置決めポスト11の回転をある程度許容する大きさである。これにより、
図14に示されるように、相対的に平面上の回転ずれが生じているプラグコネクタ1は、位置決めポスト11を位置決めガイド250に嵌め合わせることができ、挿入が一段進んだ段階で、ずれを打ち消す方向にフロート部200の姿勢修正がおこなわれる。許容範囲内のずれを吸収する方向に姿勢修正がおこなわれたフロート部200に対して、プラグコネクタ1は、さらに挿入が進んだ状態で嵌合終了姿勢に至る。
【0079】
平面上のずれを吸収するときの支持部2700の動きに注目すると、平面上のずれを打ち消す方向にフロート部200は、
図14に示されるように、姿勢を変える。すなわちフロート部200は、平面上を一対の支持部2700の中間位置を中心にして時計方向、或いは反時計方向に回転し、このとき支持部2700は、受け部2500上をすべり移動する。このすべり移動によってフロート部200の回転追従性が得られる
【0080】
<効果、ずれ吸収>
フロート部200は、長手方向(前後方向)の中間位置にある一対の支持部2700でシーソー状態で支持される。これにより、支持部2700を中心に回転可能である。その結果、プラグコネクタ1のリセプタクルコネクタ3に対する嵌合開始時の回転方向の傾きに対して、傾きを打ち消す方向に変位してずれを吸収することができる。
【0081】
一対の支持部2700、2700は、受け部2500の面上を長手方向、幅方向に変位可能である。これにより、フロート部200は、プラグコネクタ1のリセプタクルコネクタ3に対する嵌合開始時の長手方向、幅方向の位置ずれに対して、この位置ずれを打ち消す方向に変位して位置ずれを吸収することができる。
【0082】
位置決めポスト11の尖端部と、位置決めガイド250の間口のテーパー面とは協働して、相対的にずれた位置にあるコネクタ同士1、及び3を嵌合開始位置にあわせることができる。これにより、ずれた2枚の回路基板上のプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とを嵌合させることができる。
【0083】
支持部2700の尖端部は、半円状で対応する受け部2500は、平坦に広がる平面なので支持部2700は、受け部2500の面上で転がり、或いはすべり移動ができる。これにより、回転中心自体が平面上を動きうる支持部2700を備えたシーソー構造が得られる。その結果、3次元的なずれに追従可能なフロート部が得られる。
【0084】
プラグ回路基板B1がリセプタクル回路基板B2に対して傾いている場合、
図15に示されるように、所定の傾きの範囲内では傾いたままの姿勢でプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とは嵌合可能である。
【0085】
板状に広がるリセプタクルコンタクト300の接触部330に対して、接点で接続するプラグコンタクト100の接触部130は比較的小さく、正規に接続しうる範囲は中心点から同心円上に広がりを持つ。また、リセプタクルハウジング30はフローティング構造を備えるので、回路基板B1、B2間の相対的な傾きは、比較的大きな範囲で許容され、プラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とは嵌合可能である。
【0086】
プラグ回路基板B1がリセプタクル回路基板B2に対し左右方向にずれている場合、
図11に示されるように、所定のずれの範囲内では、ずれたままの姿勢でプラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とは嵌合可能である。
【0087】
リセプタクルコンタクト300の接触部330に対するプラグコンタクト100の接触部130は、正規接続範囲が左右方向に比較的大きい範囲を有しているので、相対的なずれを許容したまま嵌合可能である。
【0088】
位置ずれと傾きが重畳するときでも、プラグコネクタ1と、リセプタクルコネクタ3とは、嵌合可能である。リセプタクルハウジング30のフローティング構造は、傾きに対して追従し、複雑な変位に対応可能である。
回路基板B2の振動は接続部340を通して伝わるが、S字部分で振動は吸収されるの
で、コンタクトの接点部分の摺動が抑制されたコネクタ構造が得られる。
オーバーラップ姿勢により、薄い板厚の材料が使用でき、幅寸法も小型化が可能になり、これにより装置の小型化か望める。
相手方コンタクトの挟持状態でのコンタクト幅寸法の最小化も図られるので、端子配列の狭ピッチ化も望める。
【0089】
<効果、接点部の接続状態を保持したまま、ずれや振動を吸収>
プラグコンタクト100の一対のコンタクト片110は、無負荷時オーバーラップ位置にあるので、相手方コンタクトとの嵌合時には強化された保持力が得られる。
一対のコンタクト片の千鳥配列は足並が同じ方向に揃うので、プラグコンタクトが狭ピッチに配列されたプラグコネクタが得られる。