【解決手段】架台10と、複数のケーブル22と、複数のケーブル22を結束する1つ以上の結束部材24と、を有する可燃物20と、可燃物20を架台10から吊り下げる吊り下げ部材30と、を備えた火災模型1。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】実施形態に係る可燃物を示す模式的正面図である。
【
図1-2】実施形態に係る可燃物を示す模式的背面図である。
【
図1-3】実施形態に係る可燃物を示す模式的平面図である。
【
図1-4】実施形態に係る可燃物を示す模式的底面図である。
【
図1-5】実施形態に係る可燃物を示す模式的右側面図である。
【
図1-6】実施形態に係る可燃物を示す模式的左側面図である。
【
図1-7】
図1−1中のA−A’部分の拡大図である。
【
図1-8】
図1−1中のB−B’部分の拡大図である。
【
図1-9】
図1−1中のC−C’部分の拡大図である。
【
図1-10】
図1−2中のD−D’部分の拡大図である。
【
図1-11】
図1−2中のE−E’部分の拡大図である。
【
図1-12】
図1−2中のF−F’部分の拡大図である。
【
図1-13】
図1−5中のG−G’部分の拡大図である。
【
図1-14】
図1−5中のH−H’部分の拡大図である。
【
図1-15】
図1−5中のI−I’部分の拡大図である。
【
図1-16】
図1−6中のJ−J’部分の拡大図である。
【
図1-17】
図1−6中のK−K’部分の拡大図である。
【
図1-18】
図1−6中のL−L’部分の拡大図である。
【
図2-1】実施形態に係る火災模型を示す模式的正面図である。
【
図2-2】実施形態に係る火災模型を示す模式的背面図である。
【
図2-3】実施形態に係る火災模型を示す模式的平面図である。
【
図2-4】実施形態に係る火災模型を示す模式的底面図である。
【
図2-5】実施形態に係る火災模型を示す模式的右側面図である。
【
図2-6】実施形態に係る火災模型を示す模式的左側面図である。
【
図3】複数のケーブルに結束部材を通す様子を説明する模式図である。
【
図5】実施形態に係るガス系消火設備の性能評価方法を説明する模式図である。
【
図6】実施形態に係るガス系消火設備の性能評価方法のその他の例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態に係る火災模型1]
図1−1は実施形態に係る可燃物を示す模式的正面図であり、
図1−2は実施形態に係る可燃物を示す模式的背面図であり、
図1−3は実施形態に係る可燃物を示す模式的平面図であり、
図1−4は実施形態に係る可燃物を示す模式的底面図であり、
図1−5は実施形態に係る可燃物を示す模式的右側面図であり、
図1−6は実施形態に係る可燃物を示す模式的左側面図である。
図1−7は
図1−1中のA−A’部分の拡大図であり、
図1−8は
図1−1中のB−B’部分の拡大図であり、
図1−9は
図1−1中のC−C’部分の拡大図である。
図1−10は
図1−2中のD−D’部分の拡大図であり、
図1−11は
図1−2中のE−E’部分の拡大図であり、
図1−12は
図1−2中のF−F’部分の拡大図である。
図1−13は
図1−5中のG−G’部分の拡大図であり、
図1−14は
図1−5中のH−H’部分の拡大図であり、
図1−15は
図1−5中のI−I’部分の拡大図である。
図1−16は
図1−6中のJ−J’部分の拡大図であり、
図1−17は
図1−6中のK−K’部分の拡大図であり、
図1−18は
図1−6中のL−L’部分の拡大図である。
図2−1は実施形態に係る火災模型を示す模式的正面図であり、
図2−2は実施形態に係る火災模型を示す模式的背面図であり、
図2−3は実施形態に係る火災模型を示す模式的平面図であり、
図2−4は実施形態に係る火災模型を示す模式的底面図であり、
図2−5は実施形態に係る火災模型を示す模式的右側面図であり、
図2−6は実施形態に係る火災模型を示す模式的左側面図である。
図2−7は
図2−1中のM部分の拡大図であり、
図2−8は
図2−1中のN部分の拡大図である。
【0011】
図1Aから
図1Fに示すように、実施形態に係る火災模型1は、架台10と、複数のケーブル22と、複数のケーブル22を結束する1つ以上の結束部材24と、を有する可燃物20と、可燃物20を架台10から吊り下げる吊り下げ部材30と、を備える。以下、詳細に説明する。
【0012】
(火災模型1)
火災模型1は実際の火災を模した模型であり、消火設備の性能評価実験に用いられる。消火設備の性能評価実験は、例えば、
図5、
図6に示すように、試験区画60内に火災模型1を設置した後、可燃物20を燃焼させ、この燃焼に対する消火設備50の消火性能を評価することにより行われる。火災模型1を用いた消火設備の性能評価実験により、消火設備の、実際に生じ得る火災に対する有効性を示すことができる。
【0013】
(架台10)
架台10は可燃物20を吊り下げるための部材である。架台10には例えば金属(例:鉄、ステンレス)などの不燃材を用いることができる。架台10の高さはケーブル22の長さに応じて定めることができるが、例えば、1300mm以上1500mm以下であることが好ましい。架台10の形状などは特に限定されない。
【0014】
(可燃物20)
可燃物20は、火災模型1に用いられる火災模型用の可燃物である。可燃物20は、複数のケーブル22と、複数のケーブル22を結束する1つ以上の結束部材24と、を有する部材である。このように、複数のケーブル22を結束して1つの可燃物20とすることにより、ケーブル22の焼失、脱落、過度の燃焼を抑制することができる。すなわち、複数のケーブル22を結束して1つの可燃物20とすることにより、複数のケーブル22を非結束状態で個別に架台10から吊り下げる場合と比較して、試験区画内に消火剤ガスを放出するまでに可燃物20が焼失したり、架台10から脱落したりすることを抑制できる。また、複数のケーブル22を結束して1つの可燃物20とすることにより、ケーブル22が過度に燃焼することを抑制できる。ケーブル22が過度に燃焼すると、消火剤ガスの放出前に、ケーブル22の燃焼自体によって試験区画内の酸素濃度が低下してしまい、ガス系消火設備の性能を十分に評価できなくなる虞がある。しかしながら、本実施形態によれば、そのような虞を抑制することができる。
【0015】
各ケーブル22には例えばPEケーブルやポリプロピレンやポリエステルを用いることができる。各ケーブル22の断面形状は例えば円状であり、その直径は例えば10.0mm以上15.0mm以下である。各ケーブル22の長さは例えば500mm以上700mm以下である。ケーブル22の本数は例えば2本以上30本以下であり、20本以上25本以下であることが特に好ましい。各ケーブル22には例えば通信ケーブルや電気コードなどが含まれる。
【0016】
結束部材24には例えば金属製のワイヤや結束バンドなどを用いることができる。結束部材24の数は1つ以上であればよい。ただし、複数の結束部材24で複数のケーブル22を結束すれば、燃焼の際に可燃物20が型崩れすることを効果的に抑制することができる。例えば、可燃物20の上端側領域、中間領域、及び下端側領域をそれぞれ1つ以上の結束部材24で結束することが好ましい。上端側領域とは可燃物20の上端からの距離が例えば0mm以上100mm以下の領域であり、中間領域とは可燃物20の上端からの距離が例えば200mm以上400mm以下の領域であり、下端側領域とは可燃物20の下端からの距離が例えば100mm以上300mm以下の領域である。
【0017】
複数のケーブル22は、可燃物20の下端側において、放射状に広がっていることが好ましい。このようにすれば、ケーブル22とケーブル22の間に空気(特に酸素)が流入しやすくなるため、可燃物20への着火が容易になる。また、可燃物20の燃焼を単独で継続させることが容易になる。
【0018】
可燃物20は、吊り下げ部材30に接続される接続部26を有していてもよい。
【0019】
図3は複数のケーブルに結束部材を通す様子を説明する模式図である。
図3に示すように、複数のケーブル22は、可燃物20の上端側に貫通孔22aをそれぞれ有していることが好ましく、これらの貫通孔22aには結束部材24が通されていることが好ましい。
図3に示す例では、一例として、1つの結束部材24を2本のワイヤを用いて構成し、1本目のワイヤを複数のケーブル22の貫通孔22aに通し、複数のケーブル22をすだれ状に巻取り、2本目のワイヤで複数のケーブル22の外周を締め付け、1本目のワイヤの端部と2本目のワイヤの端部を撚り合わせ、1つの可燃物20としている。このようにすれば、より一層、複数のケーブル22を強固に結束して、これらが架台10から脱落することを防止することができる。なお、可燃物20の下端側領域を結束する結束部材24は、可燃物20の下端側が放射状に広がるよう、例えば1本のワイヤで構成し、可燃物20の上端側領域や中間領域を結束する結束部材24よりも、複数のケーブル22を緩めに締め付けていることが好ましい。各ケーブル22が有する貫通孔22aは例えばドリルやキリなどを用いて形成することができる。
【0020】
(吊り下げ部材30)
吊り下げ部材30は可燃物20を架台10から吊り下げるための部材である。このように、可燃物20を架台10から吊り下げることにより、ケーブルが配置された電気室や通信機械室などで起こり得る火災の特徴を適切に捉えて、これを表現することができる。すなわち、一般に、ケーブルが配置された電気室や通信機械室などで起こり得る火災は、床面に敷設されたケーブルではなく、架空配線としてのケーブルやケーブルラック上に敷設されたケーブルが燃焼することにより生じることが多い。床面に敷設されたケーブルは比較的着火し難く、仮に着火しても単独で燃焼を継続するに至らない場合が多いからである。そこで、本実施形態では、架台10から可燃物20を吊り下げることにより、可燃物20を、架空配線やケーブルラック上に敷設されたケーブルを模した部材とすることにした。これにより、電気室や通信機械室などに存在するケーブルのうちどのケーブルが火災の原因になり易いかが考慮され、ケーブルが配置された室で生じ得る火災の実態に即した火災模型1を提供することができる。
【0021】
吊り下げ部材30には例えば鉄製のワイヤや吊り治具などを用いることができる。
【0022】
吊り下げ部材30の数は例えば1本または2本以上である。1本の吊り下げ部材を用いる場合は、当該1本の吊り下げ部材の一端を接続部や結束部材などに固定し、当該1本の吊り下げ部材の他端を架台に固定してもよい。また、1本の吊り下げ部材の一端と他端を接続部や結束部材に固定し、吊り下げ部材の中央部を架台に引っ掛けることにより可燃物を架台に吊り下げるものとしてもよい。2本以上の吊り下げ部材30を用いる場合は、複数の吊り下げ部材の各一端を接続部や結束部材に固定し、当該複数の吊り下げ部材の各他端を架台に固定してもよい。
【0023】
吊り下げ部材30は接続部26だけでなく、結束部材24や可燃物20自体に固定することもできる。ただし、可燃物20の型崩れを抑制するべく、吊り下げ部材3は接続部26や結束部材24、特に接続部26に固定することが好ましい。吊り下げ部材30を接続部26、結束部材24、あるいは可燃物20自体、並びに架台10に固定する場合、この固定は、係合、縛り付け、または溶接などの様々な態様で行うことができる。
【0024】
図4は着火時の様子を説明する模式図である。
図4に示すように、吊り下げ部材30は、可燃物20への着火が容易になるよう、可燃物20の下端が、後述する着火装置40からの炎の外延(炎のなかで一番温度が高い領域)と接する位置となるよう、可燃物20を吊り下げていることが好ましい。
【0025】
(着火装置40)
着火装置40は可燃物20に着火するための装置である。着火装置40は、可燃物20の下方に配置され、着火用燃料を有している。着火用燃料は、可燃物20の着火に必要な量だけ設けられており(好ましくは可燃物20の着火に必要最低限となる量だけ設けられており)、可燃物20の燃焼が単独で継続するに至った後、所定時間以内に焼失する。これにより、消火剤ガスの放出前に着火用燃料を焼失させて、可燃物20(ケーブル22)単独の燃焼に対する消火設備の消火性能を評価することが可能となる。なお、ここでの所定時間は例えば0分以上2分以下である。
【0026】
着火用燃料は例えばn−ヘプタンなどの液体燃料である。液体燃料を着火用燃料として用いる場合、着火装置40は液体燃料を入れる火皿などの容器を有していることが好ましい。さらに、この場合は、液体燃料の燃焼により容器が変形しないよう、容器内に敷水を注ぎ入れておくことが好ましい。このようにしても、比重の関係で、敷水は容器の下方に移動し、液体燃料は容器の上方に移動するため、液体燃料への着火は容易に行うことができる。なお、容器が変形すると、容器内において液体燃料が偏在して、可燃物20が部分的に着火されてしまい(例:右側面だけ着火、左側面だけ着火)、可燃物20が均等に燃焼しない虞がある。しかし、容器内に敷水を入れておけば、たとえ容器が変形したとしても、敷水により液体燃料の底面が水平になるため、可燃物20を均等に燃焼させることができる。
【0027】
液体燃料の量は特に限定されない。例えば、150cc(100g)以上200cc(150g)以下のn−ヘプタンを着火用燃料として用いる場合、容器には例えば250mm以上350mm以下の底面積を有し、650cm
3以上900cm
3以下の容積を有する部材を用いることが好ましい。また、この場合、敷水の分量は例えば3.125リットル以上6.125リットル以下であることが好ましい。
【0028】
[実施形態に係るガス系消火設備50の性能評価方法]
図5は実施形態に係るガス系消火設備の性能評価方法を説明する模式図である。
図5に示すように、実施形態に係るガス系消火設備50の性能評価方法は、ガス系消火設備50が配備された試験区画60内に、実施形態に係る火災模型1を配置する工程と、可燃物20に着火する工程と、可燃物20の燃焼が単独で継続するに至った後、試験区画60内に消火剤ガスを放出する工程と、消火剤ガスの放出から所定時間経過後、可燃物20の消火状態を確認する工程と、を有する。以下、詳細に説明する。
【0029】
(火災模型1を配置する工程)
まず、ガス系消火設備50が配備された試験区画60内に、実施形態に係る火災模型1を配置する。火災模型1は例えば試験区画60の中央や中央付近に配置することが好ましい。
【0030】
試験区画60は、例えば、電気室や通信機械室などのケーブルが配置された室を模した試験用の区画である。電気室とは、例えば、電子機器が設置されたコンピュータルームや配電盤などが設置された室であり、通信機械室とは例えば電気交換室や無線通信機室である。試験区画60は例えば幅5.0m×奥行5.0m×高さ4.0m=100m
3の区画である。
【0031】
ガス系消火設備50とは、例えば、消火剤ガスを放出して試験区画60内の酸素濃度を下げ、燃焼現象そのものをストップさせて消火を行う消火設備である。消火剤ガスは例えば不活性ガスや窒素ガスである。ガス系消火設備50は、電気絶縁性に優れ、また消火剤による汚損や水損のリスクも少ないため、電気設備が設置される室(例:電気室、通信機械室)などでの使用に適している。
【0032】
ガス系消火設備50は、例えば、試験区画60内へ消火剤ガスを送る配管52と、消火剤ガスを噴出する噴射ノズル53と、を備えている。避圧口61は、試験区画60内の圧力を試験区画60外へ逃がす開口であり、試験区画60を構成する壁や天井などに設けられる。
【0033】
配管52は、試験区画60外に配置されているガス貯蔵容器54から試験区画60内へ消火剤ガスを送る管である。配管52には配管内の流量を制御する流量制御装置55が設けられていてもよい。このようにすれば、噴射ノズル53を用いた消火剤ガスの噴射量制御と、流量制御装置55を用いた配管52における消火剤ガスの流量制御と、のいずれか一方あるいは双方の制御により、消火剤ガスの放出時間を制御することができる。
【0034】
(着火用燃料に着火する工程)
次に、着火用燃料に着火する。着火用燃料への着火方法は特に限定されない。着火用燃料の火が可燃物20に着火し、可燃物20の燃焼が開始する。着火用燃料は可燃物20の燃焼が単独で継続するに至った後、焼失する。なお、着火用燃料の着火後、例えば2分で試験区画60内の換気を休止し、例えば2分30秒で試験区画60の扉を閉鎖することが好ましい。
【0035】
(消火剤ガスを放出する工程)
次に、可燃物20が燃焼を開始した後、例えば着火用燃料に着火してから3分後に、試験区画60内へ消火剤ガスを放出する。消火剤ガスは、例えば、手動で放出される、あるいは噴射ノズル53などが熱を感知することにより自動的に放出される。
【0036】
消火剤ガスには消火に用いることが可能な各種の消火剤ガスを用いることができる。窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス(イナートガス)は、人体への悪影響が少ないため、消火剤ガスとして好ましく用いることができる。
【0037】
消火剤ガスは、消火剤ガスの風圧により可燃物20の火が吹き消されない圧力、風量、及び報告で放出されることが好ましい。
【0038】
消火剤ガスは、例えば、放出から所定時間経過後に手動で、あるいは自動で停止する。自動で停止する場合には、例えばガス貯蔵容器54に貯蔵されている消火剤ガスがほぼ放出し尽きる場合が含まれる。なお、消火剤ガスの放出から所定時間経過するまでの間に、例えば、ガス貯蔵容器54の貯蔵量の90%以上の消火剤ガスが試験区画60内へ放出されることが好ましい。
【0039】
(可燃物20の消火状態を確認する工程)
次に、消火剤ガスの放出から所定時間経過後(例:2分後、1分後)、可燃物20の消火状態を確認する。可燃物20の消火状態の確認は、例えば、消火剤ガスの放出が停止(ほぼ停止しているとみなせる場合を含む。)してから行うことが好ましく、消火剤ガスの放出が停止してから所定時間経過後(例えば10分経過後)に行うことがより好ましい。確認を行う前に、試験区画60内を換気することが好ましい。
【0040】
可燃物20の消火状態の確認とは、例えば、可燃物20が十分に消火されているかどうか、つまり、可燃物20の燃焼が完全に停止しているかどうか、可燃物20の重量や温度の計測、可燃物20における炎の有無の目視による確認などをいう。可燃物20の重量を計測する場合は、火災模型1を配置する工程あるいは着火用燃料に着火する工程の前に、可燃物20の重量をあらかじめ測定しておくことが好ましい。このようにすれば、燃焼の前後における可燃物20の重量を比較することができる。
【0041】
以上説明した実施形態に係る火災模型及びこれを用いたガス系消火設備の性能評価方法によれば、ケーブルが配置された電気室や通信機械室などで実際に起こり得る火災の特徴を捉えて、これを適切に表現する火災模型1が提供される。したがって、本実施形態に係る火災模型1に対して消火設備の消火性能を評価すれば、ケーブルが配置された電気室や通信機械室などで実際に火災が生じた場合における、当該消火設備の有効性を客観的に示すことができる。
【0042】
[実施形態に係るガス系消火設備50の性能評価方法のその他の例]
図6は実施形態に係るガス系消火設備の性能評価方法のその他の例を説明する模式図である。
図6では、火災模型1の一部を破線により透過的に示している。
図6に示すように、試験区画60内には、火災模型1を囲むように風よけ部材70を配置することができる。このようにすれば、消火剤ガスの風圧で可燃物20の燃焼が停止することを抑制することができる。したがって、酸素濃度の低下自体によって可燃物20の燃焼がどれだけ消火されたかをより適切に評価することができる。
【0043】
風よけ部材70には例えば鉄製やステンレス製の部材を用いることができる。
【0044】
風よけ部材70は、例えば、筒状の第1部材と、第1部材上に重ねて配置される筒状の第2部材と、を有している。この場合、筒の内部、つまり、第1部材と第2部材とに囲まれた空間に火災模型1を配置することができる。ただし、平面視において、第1部材と第2部材はずれていること、つまり、下側に配置される第1部材の上面開口が第2部材の下面開口と完全には重なっておらず、十分な空隙が形成されていることが好ましい。このようにすれば、可燃物20の燃焼により生じた煙を囲みの内部から外部へ逃がして、囲み内に煙が充満することにより酸化濃度の低下を抑制することができる。また、消火剤ガスを例えば火災模型1の側面側から囲みの内部へ十分に流入させることができる。
【0045】
一般に、単位区画体積あたりの火災規模(以下「火災荷重」という。単位W/M
3)が大きくなるほど、可燃物の燃焼自体によって区画内の酸素濃度が低下する。このため、区画内は消火しやすい状況となり、可燃物の消火時間は短くなる。したがって、ガス系消火設備の性能評価実験を行うにあたっては、火災荷重が大きくなり過ぎないよう、例えば可燃物20を構成するケーブル22の本数や長さなどを調整して、最低限の火災荷重を持つ火災模型を用いることが好ましい。このようにしても、実際に消火設備が配備される防護区画(例:電気室、通信機械室)での火災荷重は、実験室における試験区画での火災荷重より大きくなるのが一般的であるため、火災模型を用いた実験によれば、実際の防護区画での火災に対する消火設備の有効性を十分に判断することができる。
【0046】
以上、実施形態について説明したが、これらの説明によって特許請求の範囲に記載された構成は何ら限定されるものではない。