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特開2019-104006液相と気相の少なくとも一方の相を反応容器内に分配するシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-104006(P2019-104006A)
(43)【公開日】2019年6月27日
(54)【発明の名称】液相と気相の少なくとも一方の相を反応容器内に分配するシステム
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20190607BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20190607BHJP
   C07C 2/02 20060101ALI20190607BHJP
【FI】
   B01J4/00 104
   C07C11/02
   C07C2/02
   B01J4/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-231785(P2018-231785)
(22)【出願日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】1761897
(32)【優先日】2017年12月11日
(33)【優先権主張国】FR
(71)【出願人】
【識別番号】504143038
【氏名又は名称】アクセンス
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】エティエンヌ ニーダーコルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャフレー デルタンル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル−ジャン ヴィネル
【テーマコード(参考)】
4G068
4H006
【Fターム(参考)】
4G068AA03
4G068AB01
4G068AB07
4G068AB11
4G068AC16
4G068AC20
4G068AD41
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC21
4H006BD81
(57)【要約】
【課題】反応器の内部に介入することなく、洗浄のために反応器から容易に取り外すことができ、その後で容易に動作位置に戻すことができる分配器を提供する。
【解決手段】本発明のシステムは、液相と気相の少なくとも一方の相を注入するための少なくとも1つの注入口1hを有する反応容器1g内に、上記少なくとも一方の相を分配するシステムであって、複数の穿孔部2dを有する少なくとも1つのチューブ1dによって上記少なくとも一方の相を分配する分配器1dと、反応容器1g内に配置された分配器1dを取り外し可能に固定する取り外し可能な固定手段1iとを有している。分配器1dの断面積は、反応容器1gの注入口1hの断面積よりも小さく、それにより、容器1gの注入口1hを通じた分配器の挿入と取り外しの少なくとも一方が可能になる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相と気相の少なくとも一方の相を注入するための少なくとも1つの注入口(1h)を有する反応容器(1g)内に、前記少なくとも一方の相を分配するシステムであって、
複数の穿孔部(2d,3d)を有する少なくとも1つのチューブ(1d)を有し、前記少なくとも一方の相を分配する分配器(1d)と、
前記容器(1g)の前記注入口(1h)内に配置された前記分配器を取り外し可能に固定する取り外し可能な固定手段(1i)と、を有し、
前記分配器(1d)の断面積が、前記注入口(1h)の断面積よりも小さいことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記取り外し可能な固定手段(1i)が、前記分配器(1d)の両端部の少なくとも一方を前記容器(1g)の前記注入口(1h)に可逆的に固定する組立体からなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記組立体が、少なくとも1つのフランジと、シールと、少なくとも1つのねじ込み継手とを有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記容器(1g)のうち前記注入口とは反対側の少なくとも1箇所で前記分配器を支持する支持手段(2b,2e,3d,3e)をさらに有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記支持手段(2b,2e,3d,3e)が、前記分配器(1d)の前記チューブに沿って固定されるレール(2b)と、前記レール(2b)を収容して保持するように前記容器(1g)の壁上に垂直に固定される2つのプレート(2e)とを有し、少なくとも前記分配器(1d)と前記レール(2b)とから構成された前記組立体の断面積が、前記容器(1g)の前記注入口(1h)の断面積よりも小さい、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記支持手段(2b,2e,3d,3e)が、樋部(3b)と前記樋部(3b)のための支持体(3e)とを有し、前記樋部(3b)および前記支持体(3e)は、前記分配器(1d)がスライドすることを可能にし、かつ前記分配器(1d)と前記注入口(1h)を一直線に保持することを可能にするように、前記反応容器(1g)に固定される、請求項4または5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記支持手段(2b,2e,3d,3e)が、前記反応容器(1g)の前記壁に固定される円弧状部分であって、前記分配器(1d)と前記注入口(1h)を一直線に保持することを可能にする円弧状部分を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記分配器(1d)の前記容器(1g)内への挿入時と前記容器(1g)からの取り外し時の少なくとも一方において前記分配器(1d)を案内する案内手段(2a,3a)をさらに有し、少なくとも前記分配器(1d)と前記分配器(1d)上に配置された前記案内手段(2a、3a)とから構成された前記組立体の断面積が、前記容器(1g)の注入口(1h)の断面積よりも小さい、請求項1から7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記案内手段が、前記分配器(1d)の前記容器(1g)の注入口(1h)内への挿入時と前記注入口(1h)からの取り外し時の少なくとも一方において前記分配器(1d)のセンタリングを実現させる、前記分配器(1d)の前記チューブ上の長手方向に分布した複数のフィン(2a,3a)を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記容器(1g)の外側に配置される、前記分配器(1d)を前記容器(1g)内に設置するための設置手段を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記分配器(1d)を設置する前記設置手段が、前記容器の前記注入口(1h)の高さにあるデッキを備えた移動可能なプラットフォームを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記設置手段が、レールと、プーリーシステムと、カウンターウェイトとを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
反応容器(1g)であって、液相と気相の少なくとも一方の相を分配する少なくとも1つの、請求項1から12のいずれか1項に記載のシステムを有する反応容器。
【請求項14】
石油精製プロセスのための、液相と気相の少なくとも一方の相を分配する少なくとも1つの、請求項1から12のいずれか1項に記載のシステムを有する反応容器の使用。
【請求項15】
前記精製プロセスが限定的な重合プロセスである、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油精製の分野に関し、より詳細には、液相と気相の少なくとも一方の相を反応容器内に分配することに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、二相反応器に関する場合があるが、その反応物質の1つは、例えば、限定的なエチレン重合(二量化、三量化、または四量化)を用いたアルファオレフィン製造方法用に実装される均一触媒反応器の場合のように、任意の媒質(気体媒質、液体媒質、固体媒質、またはこれらの混合物)中、好ましくは汚染固体媒質または汚染液体媒質中に気相または液相で注入される。
【背景技術】
【0003】
実際、限定的な重合では、少量の副生成物(ポリエチレンなど)が形成されることがあり、このような副生成物は、反応媒質中に蓄積して内部構造物のすべてに堆積し、特に分配器を汚染させる可能性がある。分配器は、定期的に取り外して洗浄した後、所定の位置に戻す必要がある。
【0004】
一例として、AlphaButol(登録商標)プロセスが検討されてもよく、そのプロセスでは、分配器によって、エチレン単体と、反応条件下の液体炭化水素(例えば、ブテン−1、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン)と、エチレン(ガス)と反応条件下の液体炭化水素(例えば、ブテン−1、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン)とからなる混合相と、のいずれかが、(基本的に沸点にあるブテン−1から構成された)液体反応媒質中に注入される。したがって、この分配器は、ガス分配器、液体分配器、またはガス液体分配器である。使用される分配器は頻繁に洗浄される必要があるが、それには、分配器の取り外し時および再設置時にユニットを閉鎖する必要がある。したがって、この処置をできるだけ容易にし、それに要する時間を制限して本来の生産の損失を制限する必要がある。さらに、AlphaButolプロセスの場合、液体反応媒質は、流量が最大にされた1つ以上の再ポンピングループ(ループ流)によって完全に攪拌される。分配器は、その特性(主として液体への気体注入)とこのような非常に高いループ流量とに起因して、高い機械的応力および振動応力を受ける。したがって、液相と気相の少なくとも一方の相を供給するための分配器にとって、少なくとも、高い機械的応力および振動応力を受けるこのようなプロセスに関しては、その動作位置において完全に支持される必要がある。
【0005】
さらに、均一触媒プロセスの場合、酸素および周囲の空気湿度は有害物質として知られている。したがって、反応器への空気の流入口を制限する必要があり、さらに外部への開口部(マンホールやハンドホールなど)を制限する必要がある。したがって、このような外部への開口部を制限することが重要である。
【0006】
例えば、特許文献1には、穴部を有する複数の円板状の分配器が記載されている。この文献では、分配器は、反応容器の壁に永久的に固定されている。実際、関連する反応(気相アンモニアの酸化)を考慮すると、この分配器を洗浄する必要はない。
【0007】
特許文献2には、互いに上下に配置された別個のガス分配器および液体分配器が記載されている。この文献では、各分配器は、反応器の壁を貫通して有孔チューブ上に開口する主管によって永久的に取り付けられている。実際、関連する反応(シクロヘキシルベンジンと水溶性有機触媒(イミド)を含有する液体への気体酸素の注入)には分配器を洗浄する必要はない。
【0008】
さらに、特許文献3には、耐火材料で裏打ちされ、まとめて反応容器に溶接された複数のチューブからなる分配器が記載されている。各チューブは、液相の流動化石炭が気化する際に引き起こされる腐食に耐えるように補強されている。このような分配器は、反応器の壁を貫通して延びており、洗浄の必要がないため、この壁に永久的に固定されている。
【0009】
最後に、特許文献4には、多数の穿孔部を備えた複数のリングまたはロッドと、場合によっては気体を注入する複数のノズルとを有する、液相と固相(スラリー相とも呼ばれる)の両方におけるガス分配器が記載されている。この場合、分配器に設けられた穿孔部の詰まりを防止するために、分配器の上方には多孔板が配置され、その多孔板の穴部は、自身を詰まらせる可能性がある触媒粒子の通過を抑制するほど十分に小さい。したがって、分配器が取り付けられた反応容器から分配器を取り外す必要はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0321529号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/003643号
【特許文献3】米国特許第4198210号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0209351号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、上述した特許文献のいずれにも、反応器の内部に介入することなく、洗浄のために反応器から容易に取り外すことができ、その後で容易に動作位置に戻すことができる分配器は記載されていない。このような分配器は、分配器が汚染環境で動作する場合に特に有利である。本発明の分配器により、これらの欠点は解消される。本発明の分配器は、気体または液体を注入するか、あるいはそれらの混合物を注入するために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、液相と気相の少なくとも一方の相を注入するための少なくとも1つの注入口を有する反応容器内に、上記少なくとも一方の相を分配するシステムに関する。本発明のシステムは、
複数の穿孔部を有する少なくとも1つのチューブを有し、上記相を分配する分配器と、
容器の注入口内に配置された分配器を取り外し可能に固定する取り外し可能な固定手段と、を有している。
【0013】
さらに、本発明によれば、少なくとも分配器の断面積が、注入口の断面積よりも小さい。
【0014】
本発明の一実装態様によれば、取り外し可能な固定手段が、分配器の両端部の少なくとも一方を容器の注入口に可逆的に固定する組立体からなっていてもよい。
【0015】
有利なことに、上記組立体が、少なくとも1つのフランジと、シールと、少なくとも1つのねじ込み継手とを有していてもよい。
【0016】
本発明の一変形態様によれば、本システムが、容器のうち注入口の反対側の少なくとも1箇所で分配器を支持する支持手段をさらに有していてもよい。
【0017】
有利なことに、上記支持手段が、分配器のチューブに沿って固定されるレールと、レールを収容して保持するように容器の壁上に垂直に固定される2つのプレートとを有していてもよく、少なくとも分配器とレールとから構成される組立体の断面積が、容器の注入口の断面積よりも小さい。
【0018】
代替的または追加的には、上記支持手段が、樋部とこの樋部のための支持体とを有していてもよく、樋部および支持体は、分配器がスライドすることを可能にし、かつ分配器と注入口を一直線に保持することを可能にするように、反応容器に固定される。
【0019】
本発明の別の設計によれば、上記支持手段が、反応容器の壁に固定される円弧状部分であって、分配器と注入口を一直線に保持することを可能にする円弧状部分を有していてもよい。
【0020】
本発明の別の変形態様によれば、本システムが、分配器の容器内への挿入時と容器からの取り外し時の少なくとも一方において分配器を案内する案内手段を有していてもよく、少なくとも分配器と分配器上に配置された案内手段とから構成された組立体の断面積が、容器の注入口の断面積よりも小さい。
【0021】
有利なことに、上記案内手段が、分配器の容器の注入口内への挿入時と容器の注入口からの取り外し時の少なくとも一方において分配器のセンタリングを実現させる、分配器のチューブ上の長手方向に分布した複数のフィンを有していてもよい。
【0022】
さらに、本システムが、容器の外側に配置される、分配器を容器内に設置するための設置手段を有していてもよい。
【0023】
本発明の第1の設計によれば、分配器を設置する上記設置手段が、容器の注入口の高さにあるデッキを備えた移動可能なプラットフォームを有していてもよい。
【0024】
本発明の第2の設計によれば、上記設置手段が、レールと、プーリーシステムと、カウンターウェイトとを有していてもよい。
【0025】
本発明は、液相と気相の少なくとも一方の相を分配する少なくとも1つの上述したシステムを有する反応容器にも関する。
【0026】
本発明は、石油精製プロセスのための、液相と気相の少なくとも一方の相を分配する少なくとも1つの上述したシステムを有する反応容器の使用にも関する。
【0027】
本発明の一実装態様によれば、上記精製プロセスが限定的な重合プロセスである。
【0028】
本発明のシステムの他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら示す、非制限的な例として与えられる以下の実施形態の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】液相と気相の少なくとも一方の相を分配する本発明のシステムを備えた反応容器の一例を示す図である。
図2A】分配器が反応容器内の動作位置にあるときの、本発明の一実装形態に係る相分配システムの断面図である。
図2B】反応容器の注入口の側から見た、図2Aに示すシステムの正面図である。
図2C】反応容器の注入口とは反対側から見た、図2Aに示すシステムの正面図である。
図2D】反応容器の注入口とは反対側から見た、図2Aに示すシステムの部分上面図である。
図3A】本発明の他の実装形態に係る相分配システムの断面図である。
図3B】反応容器の注入口の側から見た、分配器が筐体のフランジに挿入されたときの図3Aに示すシステムの正面図である。
図3C】反応容器の注入口とは反対側から見た、図3Aに示すシステムの正面図である。
図3D】反応容器の注入口とは反対側から見た、図3Aに示すシステムの部分上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般的には、本発明の目的は、液相と気相の少なくとも一方の相を分配するシステムであって、対象となる相を分配する分配器を有するシステムに関する。筐体とも呼ばれ、本発明の分配器が内部に配置され反応容器は、通常、本発明の分配器によって分配される相のための少なくとも1つの注入口を有している。本発明の分配器は、液相と気相の少なくとも一方の相を注入するために反応容器に設けられた注入口と協働するようになっている。通常、分配される気相または液相を注入するための反応容器の注入口は、反応容器の壁、好ましくは垂直な壁に隣接して配置された管状のものである。通常、反応容器は、半球状または平坦な底部を含む円筒形を有していてもよい。
【0031】
本発明によれば、液相と気相の少なくとも一方の相を分配するシステムは、少なくとも1つのチューブ状の分配器と、反応容器内に配置された分配器を取り外し可能に固定する固定手段とを有している。本発明によれば、分配器を取り外し可能に固定する固定手段により、分配器を反応容器内の動作位置に保持して固定することが可能になる一方、特にメンテナンスを目的として、分配器を取り外すことが可能になる。本発明によれば、分配器の断面積は、対象となる相を注入するために容器に設けられた注入口の断面積よりも小さい。こうして、上記相を注入するための反応容器の注入口に分配器を通すことで、分配器の反応容器内への挿入と反応容器からの取り外しの少なくとも一方が可能になる。したがって、反応容器内に分配器を取り外し可能に固定する固定手段との組合せにより、液相と気相の少なくとも一方の相を注入するために反応容器に設けられた注入口を通じた、本発明の分配器の挿入と取り外しの少なくとも一方が可能になる。そのため、反応容器に対する分配器の取り外しおよび設置を行うにあたり、マンホールもハンドホールも必要としない。
【0032】
本発明の一実装形態によれば、本発明の分配器のチューブの直径は、好ましくは30mmから600mmまでの範囲にあり、より好ましくは50mmから400mmまでの範囲にあり、本発明によれば、この直径は反応容器の注入管の直径よりも小さい。したがって、特に、分配器上に被膜を形成するポリエチレンなどの重合副生成物で分配器が詰まっている場合に分配器を取り外す際に、分配器が反応容器の注入管を通過するのに伴ってこれらの副生成物が分配器からはがれて底部に落下し、それにより、反応容器を汚染させるリスクが低減される。
【0033】
本発明の別の実装形態によれば、分配器は多分岐分配器である。この実装形態の変形例によれば、分配器は主チューブを有し、主チューブは、直径が主チューブよりも小さい穿孔された補助チューブの束に分割されている。この実装形態の別の変形例によれば、分配器は、主チューブと、直径が主チューブよりも小さい穿孔された複数の補助チューブとを有し、補助チューブは、主チューブの外面にゼロ以外の角度で設けられている。本発明によれば、主チューブとその補助チューブとから構成された組立体の最大寸法は、注入管の直径を超えることはなく、それにより、この注入口を通じた分配器の挿入と取り外しの少なくとも一方が可能になる。
【0034】
本発明によれば、分配器のチューブは、分配器によって反応容器内に注入される相を通過させるための複数の穿孔部を有している。本発明の一実装形態によれば、穿孔部は、分配器のチューブ上に不規則に設けられている。本発明の別の実装形態によれば、穿孔部は、分配器のチューブに沿って設けられたらせん構造に沿って分布している。本発明の別の代替実装形態によれば、穿孔部は、分配器のチューブに沿って設けられた複数の等距離円に沿って分布している。本発明の好ましい実装形態によれば、穿孔部は、チューブの長手方向の1つ以上の線に沿って設けられていてもよく、分配器に対して下向き、横向き、または上向きであってもよい。本発明の別の好ましい実装形態によれば、穿孔部は、分配器の軸を通る2つの平面であってそれらの間の角度が60°である2つの平面とチューブとの交差部に沿って分布している。有利なことに、分配器の外側にある目印により、穿孔部の位置を表示することが可能になる。
【0035】
本発明の一実装形態によれば、分配器のチューブは、一方の端部に(例えば、ボルト止めされるか、ねじ止めされるか、あるいはクリップ止めされた)取り外し可能なエンドキャップを備え、そのエンドキャップの断面積は、反応容器に設けられた相の注入口の直径よりも小さい。取り外し可能なエンドキャップの形状は、多角形、六角形、三角形、または四角形であることが好ましい。こうして、注入管を通じた分配器の反応容器内への設置と反応容器からの取り外しの少なくとも一方が可能になり、分配器のチューブ上に被膜を形成する重合副生成物が付着する可能性のある箇所を制限することができる。
【0036】
本発明の第1の実装変形例によれば、分配器を取り外し可能に固定する固定手段は、分配器の少なくとも一方の端部を反応容器の注入管に可逆的に固定する組立体からなる。本発明の一実装形態によれば、分配器を反応容器の注入口に固定するこの組立体は、少なくとも1つのフランジと、シールと、少なくとも1つのねじ込み継手とを有している。本発明のこのような第1の実装変形例によれば、分配器の他方の端部は、分配器を取り外し可能に固定する手段を有していない。機械的応力および振動応力が制限される場合(例えば、小型の分配器の場合)に、そのような変形例を使用することができる。
【0037】
本発明の第2の実装変形例によれば、本発明のシステムは、上述した第1の実装変形例の取り外し可能な固定手段(すなわち、分配器のチューブの単一の端部を可逆的に固定するための取り外し可能な固定手段)に加えて、分配器を動作位置に保持するための分配器支持手段を有している。本発明のこのような実装変形例は、分配器を整列させることが重要な場合、例えば、機械的応力および振動応力が中程度から高程度までの場合に好適である。本発明のこのような実装変形例は、分配器を整列させることが必要な場合、例えば、機械的応力および振動応力が中程度から高程度までの場合に好適である。本発明のこのような実装変形例により、チューブを動作可能な状態に維持しながら、チューブの両端部に取り外し可能な固定手段を設ける必要をなくすことができる。
【0038】
本発明の第2の実装変形例の第1の実施形態によれば、分配器支持手段は、反応容器のうち注入口とは反対側の箇所に取り付けられる部材からなる。好ましくは、分配器支持手段は、反応容器の壁の所定の箇所に固定されており、分配器の端部を支持するための当業者に公知の任意の手段、例えば、短い円弧、2つのV字形プレート片、またはT字型支持プレートなどから構成されていてもよい。支持手段は金属製であることが好ましい。本発明の一実装形態によれば、支持手段は、筐体の壁の点に直接溶接されている。本発明の別の実装形態によれば、支持手段は、分配器の管に配置される短い円弧からなり、その管は、分配される相を注入するための注入管とは反対側に設けられている。このような特定の実装形態の態様では、円弧の形状はこの第2の管の形状と一致し、円弧の形状により、反応容器の注入口を通る軸に沿って分配器を維持することが可能になる。
【0039】
本発明の第2の実装変形例の第2の実施形態によれば、本発明の分配器支持手段は、分配器のチューブに沿って固定される少なくとも1つのレールと、反応容器の壁に垂直に固定され、レールを収容して保持するように互いに間隔を置いて配置される少なくとも2つのプレートとを有している。本発明のそのような実装形態の態様は、機械的応力および振動応力が中程度の場合に好適であり、この場合、分配器を注入口とは反対側の箇所で所定の位置にしっかりと維持する必要がない。チューブとレールとから構成された組立体の断面積は、設置動作中と取り外し動作中の少なくとも一方において、筐体に設けられた注入口を通じたこの組立体の挿入と取り外しの少なくとも一方が可能になるように、反応容器の注入管の断面積よりも小さい必要がある。レールとレールが固定されたチューブとの洗浄が容易になるように、レールは、分配器のチューブに取り外し可能に固定されていてもよい。あるいは、レールは、溶接によってチューブに固定されていてもよい。分配器が複数の補助チューブの束からなる形態の多分岐分配器である本発明の一実施形態によれば、本発明の支持手段は、分配器の補助チューブからなる少なくとも1つの部分組立体を支持するための複数のレールを有していてもよい。分配器が主チューブからなる形態の多分岐分配器である本発明の一実施形態であって、主チューブが、主チューブとの間の角度がゼロでない複数の補助チューブを外面上に有する、本発明の一実施形態によれば、本発明の支持手段は、分配器の主チューブを支持するためのレールを有していてもよい。
【0040】
本発明の第2の実装変形例の第3の実施形態によれば、本発明の分配器支持手段は、樋部とこの樋部のための少なくとも1つの支持体とを有し、それにより、分配器のチューブは、反応容器内の動作位置にあるときにこの樋部の上に置かれることになる。本発明のそのような実装形態の態様は、機械的応力および振動応力が中程度から高程度の場合に好適であり、この場合、分配器に沿って全体を支持する必要がない。さらに、この樋部により、チューブの反応容器内への設置時と反応容器からの取り外し時の少なくとも一方において、チューブをスライドさせることで案内することも可能になる。本発明の一実装形態によれば、樋部の一方の端部は、注入管内にあり、他方の端部は、反応容器のうち注入口とは反対側の箇所に固定された樋部支持体の上に置かれている。本発明の一実装形態によれば、樋部は、ねじ手段によって樋部支持体に固定されている。
【0041】
本発明の第2の実装変形例の第4の実施形態によれば、本発明の第2の実装変形例の第2の実施形態と第3の実施形態が組み合わされる。このような第4の実施形態によれば、支持手段は、例えば、分配器のチューブに沿って固定されるレールと、樋部とを有していてもよく、樋部の断面積により、チューブとレールとから構成された組立体が、樋部内に配置されてスライドすることが可能になる。このような第4の実施形態によれば、樋部は、単一の部材からなる形態であってもよく、あるいは2つの部材からなる形態であってもよい。
【0042】
上述した第1の変形例と第2の変形例との少なくとも一方と組み合わせることが可能な本発明の第3の実装変形例によれば、本発明の分配器は、分配器のその最終軸に対するセンタリングと反応容器内への設置時の位置決めとを容易にする案内手段をさらに有している。したがって、取り外し可能な固定手段が上述のフランジを有する場合、特に、本発明の案内手段は、好ましくはボルト止めによる固定後に組立体が完全にシールされるように、分配器のフランジと反応容器のフランジを完全に一直線に合わせるように構成されていてもよい。本発明の一実装形態によれば、案内手段は、上述の第2の実装変形例および第3の実装変形例と組み合わされた場合、容器のうち相の注入口とは反対側の少なくとも1箇所にある最終保持点に分配器を容易に位置決めすることを可能にする。
【0043】
上述した実装変形例のいずれか1つと組み合わせることが可能な本発明の第3の実装変形例の第1の実施形態によれば、案内手段は、分配器上に位置する複数のフィンを有し、フィンと分配器のチューブとから構成された組立体の断面積は、反応容器の注入管の断面積よりも小さい必要がある。本発明の分配器のチューブ上には、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは2つから5つ、さらに好ましくは2つから8つのフィンが配置されている。有利なことに、本発明の支持手段が樋部と単一の樋部支持体とを有する場合、樋部は、注入管内に配置される部分に少なくとも1つのフィンをさらに有し、それにより、分配器の最終軸に沿ったセンタリングに寄与することができる。
【0044】
本発明の第1の実装変形例と第2の実装変形例と第3の実装変形例の少なくとも1つと任意に組み合わせることが可能な本発明の第4の実装変形例によれば、本発明の相分配システムは、容器の外側に配置される、分配器を反応容器内に設置するための設置手段を有している。
【0045】
本発明の第4の変形例の第1の実装形態によれば、分配器の設置手段は、容器の注入口の高さにあるデッキを備えた移動可能なプラットフォームを有している。有利なことに、デッキは、管内での分配器のスライドを可能にする玉軸受システムを有している。
【0046】
本発明の第4の変形例の第2の実装形態によれば、分配器の設置手段は、外側レールと、カウンターウェイトと、プーリーシステムまたは任意の均等物とを有している。このような実装形態によれば、分配器は、外側レールに沿って係合され、プーリーシステムとカウンターウェイトにより、組立体を反応容器の注入口の高さに保持することが可能になる。
【0047】
さらに、本発明は、上述した実装変形例の組み合わせのいずれかによる少なくとも1つの分配器を有する反応容器に関する。
【0048】
分配器は、流体を容器に送り込むために容器の底部に配置されていてもよい。
【0049】
本発明の一態様によれば、容器は複数の管状分配器を有していてもよい。これらの分配器は、容器に対して同じ高さまたは異なる高さで互いに平行に配置されていてもよい。このような構成により、容器内の分配の均一性を向上させることが可能になる。
【0050】
さらに、本発明は、石油精製プロセス、特に限定的な重合プロセスのための、そのような容器の使用に関する。
【0051】
特に、容器は、AlphaButol(登録商標)プロセスに使用されてもよく、そのプロセスでは、分配器によって、エチレン単体と、反応条件下の液体炭化水素(例えば、ブテン−1、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン)と、エチレン(ガス)と反応条件下の液体炭化水素(例えば、ブテン−1、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン)とからなる混合相と、のいずれかが、(基本的に沸点にあるブテン−1から構成された)液体反応媒質中に注入される。本発明の分配器の構成により、取り外しおよび設置が簡単になり、したがって、洗浄とメンテナンスの少なくとも一方がより容易になる。
【0052】
実施形態
本発明のシステムの特徴および利点は、以下の実施形態の説明から明らかとなろう。
【0053】
図1は、一例として、本発明の分配器1dを備え、限定的な重合反応器に対応する反応容器1gの非制限的な構成を示している。この反応容器は、(ここでは任意にマンホール上に示す)気相を排出するための排出口1aと、ガス状排出物または混合排出物を排出するための排出口1bと、(特定の分配器を設置可能な)液体注入口1cと、(液体排出口として使用可能であり、かつ渦防止装置を設置可能な)ドレーン1fと置き換え可能な液体排出口1eとをさらに有している。なお、容器内の液位は点線Lによって表されている。また、液体排出口1eは、接線TLの下方にある筐体底部の溶接線の下方に配置されていてもよい。
【0054】
図2Aは、本発明の相分配システムの非制限的な例を詳細に示しており、このシステムは、複数の穿孔部2dを備えたチューブ状の分配器1dと、取り外し可能な固定手段1iと、レール2bとレール2bを固定して保持するための2つのプレート2eとからなる形態の支持手段と、複数のフィン2aと六角形の取り外し可能なエンドキャップ2cとからなる形態の案内手段と、を有している。この図では、本発明の相分配システムは、相のための管状の注入口1hを有する反応容器1g内の動作位置にある。本発明のこのような構成によれば、レール2bは、分配器に沿って延びる単一のロッドに対応する。支持レール2bは、図2Cおよび図2Dに示すように、筐体の壁に直接溶接され、レール2bがぴったりと適合するように配置された2つの部材2eと協働する。本発明のこのような構成によれば、特に図2Aおよび図2Bに詳細に示すように、フィン2aおよびレ−ル2bによって、相のための注入口1hの中心にチューブを配置することが可能になる。したがって、本発明のこのような構成による分配器は、その設置時に、自身を単に押し込むことで容易に位置決め可能であり、その後、所定の位置に維持される。
【0055】
図3Aは、本発明の第2の実装変形例の一実施形態を示しており、この実施形態は、複数の穿孔部3dを備えたチューブ状の分配器1dと、樋部3bと樋部支持体3eとからなる形態の支持手段と、フィン3aの形態である案内手段と、取り外し可能な四角形のエンドキャップ3cと、を有している。図3Cおよび図3Dは、反応容器1gの壁上の固定点にこの樋部を固定することに関しての考えられる構成をより詳細に示している。このような構成によれば、分配器チューブの穿孔部3dはさらに、互いに間隔を置いて配置され、上方を向き、単一の線に沿って分布している。その上、本発明のこのような特定の構成によれば、樋部支持体は、T字形であって反応容器1gの壁に溶接されているとともに、樋部を固定するために用いられ樋部自体を貫通するねじ棒を備え、樋部の固定は、ねじ棒上のねじボルト連結部3fによって行われる。本発明のこのような構成によれば、チューブは、分配器が動作する際に注入管1hの内部に位置する部分に配置された2つのフィン3aを備えている。本発明のこのような構成によれば、図3Bに示すように、樋部自体は、分配器が動作する際に注入管1hの内部に位置する部分に配置された2つのフィン3a’を備えている。分配器チューブとフィンと樋部とから構成された組立体の断面積は、反応容器1gの注入管1hの断面積よりも小さい。したがって、ここでは少なくとも1つのシールフランジ1iを有する本発明の取り外し可能な固定手段との組み合わせによって、メンテナンスまたは洗浄を目的として、反応容器の注入口を通じた分配器の容器への挿入および容器からの取り外しが可能になる。分配器のこのような設置または取り外しは、樋部に沿ったスライドによって実現され、フィン3a,3a’は、分配器の最終軸に沿ったセンタリングに寄与する。
【符号の説明】
【0056】
1a,1b 排出口
1c 液体注入口
1d 分配器
1e 液体排出口
1f ドレーン
1g 反応容器
1f 注入口
1i 取り外し可能な固定手段
2a,3a,3a’ フィン
2b レール
2c,3c エンドキャップ
2d,3d 穿孔部
2e プレート
3b 樋部
3e 樋部支持体
3f ねじボルト連結部
L 液位
TL 接線
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D