【課題】UO成形により鋼管を成形する際に上型に発生する局部的な摩耗を減少させて上型の使用可能な期間を延ばしながら最終製品である管の形状を設計通りの形状にするとともに、被加工材のバラつきが管の形状に影響するのを抑制して品質を高める。
【解決手段】第1側部金型23及び第2側部金型24を互いに接近する方向に移動させて被加工材100の開放幅を狭める。その後、中間金型25の成形面25cを被加工材100の上部に押圧する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、UO成形におけるO曲げ工程では、上方に開放する断面略U字状に成形された被加工材に対して、下方に開放する半円状凹面を有する上型を上方から押し付けることになる。このとき、被加工材の両端部は上に向いているので、この両端部が上型の凹面に強く摺接しながら成形が進むことになり、上型の凹面が被加工材の端部によって削り取られるような摩耗(かじり摩耗という)が進行し易いという問題がある。上型の凹面の摩耗が進行すると凹面の形状が変化してしまい、最終製品である管の形状が設計通りの形状にならず、ひいては品質の悪化を招く。
【0006】
このことに対して、特許文献1では、O曲げ工程で使用する上型をNi−Cr−Mo合金鋼製とし、その凹面に硬質クロムメッキを施すことによって凹面の摩耗を抑制している。また、特許文献2では、溶接硬化材料による肉盛り溶接を行うことによって凹面の摩耗を抑制している。さらに、特許文献3では、球状黒鉛鋳鉄を高周波焼入れすることによって凹面の摩耗を抑制している。
【0007】
ところが、近年、管の軽量化ニーズにより、被加工材の超高張力化が進んでおり、特許文献1〜3のような上型の材質による対策では対応しきれず、摩耗の抑制が困難になってきた。
【0008】
また、被加工材の材料強度や板厚等がバラつくことによるスプリングバック量の変化が、U曲げ工程後の被加工材の形状バラつきの原因となることがある。U曲げ工程後の被加工材の形状がバラつくと最終製品である管の形状が設計通りの形状にならず、ひいては品質の悪化を招く。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、UO成形により鋼管を成形する際に上型に発生する局部的な摩耗を減少させて上型の使用可能な期間を延ばしながら最終製品である管の形状を設計通りの形状にするとともに、被加工材のバラつきが管の形状に影響するのを抑制して品質を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、U曲げ工程後の被加工材の開口幅を狭めた後に、被加工材の上部を成形する金型を該被加工材に接触させるようにした。
【0011】
第1の発明は、上方に開放する略U字状に成形された金属製板材からなる被加工材の下側が載置されるとともに、該被加工材の下側の外面を成形する凹面を有する下型と、上記下型の上方に配置される上型と、上記上型を上記下型に対して接離する方向に駆動する駆動装置とを備え、上記被加工材を管にする際に使用される造管装置において、上記上型は、上記被加工材の一方の側面の上側を成形する成形面を有する第1側部金型と、該第1側部金型から水平方向に離れて配置され、上記被加工材の他方の側面の上側を成形する成形面を有する第2側部金型と、上記第1側部金型及び上記第2側部金型の間に配置され、上記被加工材の上部を成形する成形面を有する中間金型とを備え、上記造管装置は、上記中間金型の上記成形面が上記被加工材の上部に接触する前に、上記第1側部金型及び上記第2側部金型を互いに接近する方向に移動させて上記被加工材の一方の側面及び他方の側面を上記第1側部金型の成形面及び上記第2側部金型の成形面でそれぞれ押圧して上記被加工材の開放幅を狭める側部金型移動機構をさらに備えていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、上方に開放する略U字状に成形された被加工材の下側を下型の凹面に載置した後、上型を駆動装置により下型に接近する方向に駆動する過程で、側部金型移動機構により第1側部金型及び第2側部金型が互いに接近する方向に移動する。すると、第1側部金型の成形面が被加工材の一方の側面を押圧し、第2側部金型の成形面が被加工材の他方の側面を押圧して被加工材の上部の開放幅が狭まる。この被加工材の上部の開放幅が狭まった後に、中間金型の成形面が被加工材の上部に接触する。これにより、被加工材が上型及び下型によって管に近い断面を有するまで成形される。つまり、開放幅が狭まった状態の被加工材の上部に中間金型の成形面が接触するので、成形時に被加工材の両端部が中間金型の成形面を摺動する距離が短くなり、中間金型の成形面が被加工材の端部によって削り取られるような摩耗が起こり難くなる。
【0013】
また、第1側部金型及び第2側部金型の間に被加工材が配置されて、第1側部金型及び第2側部金型が互いに接近する方向に移動することになるので、被加工材の材料強度や板厚等のバラつきによってスプリングバック量が変化してU曲げ工程後の被加工材に形状バラつきが起こっていたとしても、その形状バラつきが吸収される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記側部金型移動機構は、上記下型に設けられ、上記上型の上記下型への接近方向への移動に伴って上記第1側部金型及び上記第2側部金型にそれぞれ係合して該第1側部金型及び該第2側部金型を互いに接近する方向に移動させる第1カム及び第2カムを備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、駆動装置によって上型が下型に接近する方向に移動すると、下型に設けられている第1カム及び第2カムが第1側部金型及び第2側部金型にそれぞれ係合し、第1側部金型及び第2側部金型を互いに接近する方向に移動させて被加工材の開放幅を狭めることができる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記第1カム及び上記第2カムは、上記第1側部金型及び上記第2側部金型の下方にそれぞれ配置され、上記第1カムの上面には、上記第2カム側へ行くほど下に位置するように形成された第1カム面が形成され、上記第1側部金型の下面には、上記第1カム面に沿って延びるように形成された第1係合面が形成され、上記第2カムの上面には、上記第1カム側へ行くほど下に位置するように形成された第2カム面が形成され、上記第2側部金型の下面には、上記第2カム面に沿って延びるように形成された第2係合面が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、駆動装置によって上型が下型に接近する方向に移動すると、第1カム面が第1側部金型の第1係合面に接触し、このとき、第1カム面が第2カム側へ行くほど下に位置しているので、第1側部金型が第2側部金型側へ移動する。また、上型が下型に接近する方向に移動して第2カム面が第2側部金型の第2係合面に接触すると、第2カム面が第1カム側へ行くほど下に位置しているので、第2側部金型が第1側部金型側へ移動する。これにより、第1側部金型及び第2側部金型が互いに接近する方向に移動する。
【0018】
第4の発明は、第1の発明において、上記側部金型移動機構は、上記第1側部金型及び上記第2側部金型を互いに接近する方向に移動させる側部金型駆動装置と、上記上型の上記下型に対する接離方向の位置を検知する検知部と、上記側部金型駆動装置及び上記検知部が接続され、該検知部による検知結果に基づいて上記側部金型駆動装置を制御する制御装置とを備え、上記制御装置は、上記上型が上死点位置よりも上記下型に接近し、かつ、上記中間金型の上記成形面が上記被加工材の上部に接触する前であることを上記検知部により検知すると、上記第1側部金型及び上記第2側部金型が互いに接近する方向に移動するように上記側部金型駆動装置を制御することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、上型が下型に接近していくと、中間金型の成形面が被加工材の上部に接触する前の段階で、第1側部金型及び第2側部金型が互いに接近する方向に移動し、被加工材の上部の開放幅が狭まる。その後、被加工材の上部に中間金型の成形面が接触する。
【0020】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記上型は、上記駆動装置に連結された上側可動盤と、該上側可動盤の下方に配置され、該上側可動盤に対して上下方向に変位可能に連結された下側可動盤とを備え、上記上側可動盤の下側に上記中間金型が取り付けられ、該中間金型の下側は上記下側可動盤から下方へ突出するように形成され、上記下側可動盤の下側に上記第1側部金型及び上記第2側部金型が取り付けられていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、駆動装置によって上側可動盤を下型に接近する方向に移動させると、下側可動盤も下方へ移動していき、中間金型、第1側部金型及び第2側部金型が下型に接近する。このとき、中間金型が取り付けられた上側可動盤と、第1側部金型及び第2側部金型が取り付けられた下側可動盤とが上下方向に相対的に変位可能となっていることで、例えば第1側部金型及び第2側部金型を下型に当接させて下方向への移動を停止させた状態で、中間金型を下方へ移動させることが可能になる。つまり、中間金型と、第1側部金型及び第2側部金型との個別移動が可能になる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明において、上記下側可動盤の下側には、上記第1側部金型及び上記第2側部金型を水平方向に案内する案内部材が設けられていることを特徴とする。
【0023】
第7の発明は、金属製板材からなる被加工材を管にする造管方法において、上記被加工材を上方に開放する略U字状に予め成形し、該被加工材の下側を下型の凹面に載置した後、第1側部金型で上記被加工材の一方の側面の上側を押圧し、第2側部金型で上記被加工材の他方の側面の上側を押圧するとともに、該第1側部金型と該第2側部金型とを互いに接近する方向に移動させて上記被加工材の開放幅を狭め、その後、上記第1側部金型及び上記第2側部金型の間に配置した中間金型によって上記被加工材の上部を押圧することを特徴とする。
【0024】
第8の発明は、第7の発明において、上記第1側部金型及び上記第2側部金型を互いに接近する方向に移動させて停止させた後に、上記中間金型によって上記被加工材の上部を押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、上型が、被加工材の一方の側面を成形する第1側部金型と、被加工材の他方の側面を成形する第2側部金型と、これら側部金型の間に配置されて被加工材の上部を成形する中間金型とを備え、中間金型が被加工材の上部に接触する前に、第1側部金型及び第2側部金型を互いに接近する方向に移動させて被加工材の開放幅を狭めることができる。これにより、中間金型の局部的な摩耗を減少させることができるので、上型の使用可能な期間を延ばしながら最終製品である管の形状を設計通りの形状にすることができ、しかも、U曲げ工程後の被加工材の形状バラつきを吸収することができるので、形状バラつきが管の形状に影響するのを抑制して品質を高めることができる。
【0026】
第2の発明によれば、上型を駆動する駆動装置の動力を利用して第1側部金型及び第2側部金型を互いに接近する方向に移動させることができるので、側部金型移動機構に専用の動力源を設けずに済み、構成をシンプルにすることができる。
【0027】
第3の発明によれば、第1カム及び第2カムによって第1側部金型及び第2側部金型を互いに接近する方向に確実に移動させることができる。
【0028】
第4の発明によれば、上型の位置に基づいて第1側部金型及び上記第2側部金型の動きを制御することができる。
【0029】
第5の発明によれば、上側可動盤に中間金型を取り付け、下側可動盤の下側に第1側部金型及び第2側部金型を取り付けるようにしたので、中間金型と、第1側部金型及び第2側部金型との個別移動が可能になり、成形の自由度が向上する。
【0030】
第6の発明によれば、第1側部金型及び第2側部金型を下側可動盤に取り付けた状態で水平方向に移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0033】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る造管装置1の縦断面図である。造管装置1は、
図2に示す金属製板材からなる被加工材100を管200にする際に使用される装置であり、この造管装置1によって本発明の造管方法を実施することができる。
【0034】
被加工材100を構成する金属製板材は、例えば鋼鈑等を挙げることができる。具体的には、高張力鋼板や超高張力鋼板の板材を被加工材100として使用することができる。被加工材100の寸法は、最終製品として得る管200の径や長さに応じて任意に設定することができる。管200は、例えば、自動車のサスペンション装置を構成する部材として用いることができる他、各種流体を流通させる管として用いることができる。
【0035】
この実施形態において、最終製品となる管200は円管であるが、円管に限られるものではなく、図示しないが、楕円形断面を有する管や長円形断面を有する管等であってもよい。
【0036】
(造管装置1の全体構成)
造管装置1は、下型10と、上型20と、駆動装置30とを備えている。下型10は、上方に開放する略U字状に成形された金属製板材からなる被加工材100を載置することができるとともに、被加工材100の下側を成形する部材である。また、上型20は、被加工材100の上側を成形する部材であり、下型10の上方に配置される。駆動装置30は、上型20を下型10に対して接離する方向(上下方向)に駆動する装置であり、例えば流体圧シリンダ等で構成することができる。
【0037】
尚、この実施形態の説明では、造管装置1の左側を
図1等の左側とし、造管装置1の右側を
図1等の右側と定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであって実際の使用状態における方向を限定するものではない。
【0038】
(下型10の構成)
下型10は、工場等の床面に対して動かないように固定される固定盤11と、固定盤11の上面に対して動かないように取り付けられた下側金型12と、第1カム13及び第2カム14とを少なくとも備えている。下側金型12は、固定盤11の上面から上方へ突出するように配設されている。下側金型12の上面には、下方に窪む形状の凹面12aが形成されている。凹面12aは、被加工材100の下側が載置される面であるとともに、被加工材100の下側の外面を成形する成形面でもある。凹面12aは、
図2に示す管200の下側の最終形状を決定する面になるものであるため、管200の下側が最終形状となるように形状設定されている。この実施形態では、管200が円管であるため凹面12aは円弧面で構成されている。図示しないが、管が円管以外の場合には、その管の外面形状が得られるように凹面12aの形状を設定すればよい。
【0039】
第1カム13は、固定盤11の上面において下側金型12の右側方に配設されており、固定盤11の上面から上方へ突出している。また、第2カム14は、固定盤11の上面において下側金型12の左側方に配設されており、固定盤11の上面から上方へ突出している。従って、下側金型12は、第1カム13と第2カム14との間に位置付けられることになる。また、第1カム13及び第2カム14の上端部は、下側金型12の上端部よりも上に位置している。
【0040】
第1カム13の上面には、第2カム14側(造管装置1の左側)へ行くほど下に位置するように形成された第1カム面13aが形成されている。第1カム面13aは、第1カム13の左端部から右側へ向かって左右方向中間部まで延びている。第1カム13の上面における第1カム面13aよりも右側は、略水平に延びる面で構成されている。
【0041】
第2カム12の上面には、第1カム13側(造管装置1の右側)へ行くほど下に位置するように形成された第2カム面14aが形成されている。第2カム面14aは、第2カム14の右端部から左側へ向かって左右方向中間部まで延びている。第2カム14の上面における第2カム面14aよりも左側は、略水平に延びる面で構成されている。第1カム13及び第2カム14は左右対称形状である。
【0042】
(上型20の構成)
上型20は、上側可動盤21と、下側可動盤22と、第1側部金型23と、第2側部金型24と、中間金型25と、弾性部材26とを備えている。上側可動盤21は、水平方向に延びる部材で構成されており、その上部が駆動装置30の下端部に連結されている。よって、上側可動盤21は駆動装置30によって直接駆動されて上下方向に移動する。
【0043】
下側可動盤22は、水平方向に延びる部材で構成されており、上側可動盤21の下方に配置され、該上側可動盤21に対して上下方向に変位可能に連結されている。上側可動盤21と下側可動盤22とは弾性部材26によって連結されている。よって、下側可動盤22は、上側可動盤21を介して駆動装置30によって間接的に駆動されて上下方向に移動する。
【0044】
弾性部材26は、上下方向に伸縮するコイルスプリングやガススプリング等で構成することができるが、これら以外にも上下方向に弾性変形する部材で構成することができる。弾性部材26の上端部が上側可動盤21の下部に連結され、弾性部材26の下端部が下側可動盤22の上部に連結されている。上側可動盤21と下側可動盤22とを弾性部材26によって連結した状態で、例えば下側可動盤22を停止させたまま、上側可動盤21を下方へ移動させることが可能になる。このとき、弾性部材26は上下方向に縮んで上下方向の寸法が短くなる。また、弾性部材26が上下方向に縮んだ状態から上下方向の寸法が長くなるように伸長することで、上側可動盤21と下側可動盤22との間隔が広がることになる。従って、弾性部材26の上下方向の寸法が変化することで上側可動盤21と下側可動盤22との間隔を変化させることができる。
図1に示すように、上型20が上死点位置にあるときには、下側可動盤22の重量によって弾性部材26が伸長した状態になり、上側可動盤21と下側可動盤22との間隔が広がっている。
【0045】
第1側部金型23及び第2側部金型24は下側可動盤22の下側に取り付けられており、上側可動盤21に対して上下方向に変位可能となっている。一方、中間金型25は、第1側部金型23及び第2側部金型24の間に配置されており、被加工材100の上部を成形する成形面25cを有している。上側可動盤21の下側には、中間金型25の上部に設けられている取付部25aが取り付けられており、中間金型25は上側可動盤21と共に上下方向に移動可能となっている。中間金型25の取付部25aよりも下側は、下方へ向けて延びる縦板部25bとされている。中間金型25の縦板部25bは下側可動盤22を上下方向に貫通して該下側可動盤22の下面から下方へ突出するように形成されており、第1側部金型23と第2側部金型24との間に配置される。縦板部25bの下端面は成形面25cとされており、この成形面25cは、
図1に示すように水平面で構成することもできるし、
図6に示す変形例のように円弧面で構成することもできる。
【0046】
第1側部金型23は、被加工材100の右側の側面(一方の側面)の上側を成形する成形面23bを有している。第1側部金型23の成形面23bは、該第1側部金型23の左側面の下半部に形成されており、管200が円管であるため円弧面で構成されている。図示しないが、管が円管以外の場合にはその管の外面形状が得られるように成形面23bの形状を設定すればよい。第1側部金型23の成形面23bの上縁部は、該第1側部金型23の左側面の上下方向中間部に位置している。第1側部金型23の成形面23bの下縁部は、該第1側部金型23の左側面の下部に位置しており、
図4に示す被加工材100の開放幅を狭めた状態のときに、下側金型12の凹面12aの右側の上縁部と略一致するように形成されている。
【0047】
また、第2側部金型24は、第1側部金型23から水平方向(この実施形態では左方向)に離れて配置され、被加工材100の左側の側面(他方の側面)の上側を成形する成形面24bを有している。第2側部金型24の成形面24bは、該第2側部金型24の右側面の下半部に形成されており、管200が円管であるため円弧面で構成されている。図示しないが、管が円管以外の場合にはその管の外面形状が得られるように成形面24bの形状を設定すればよい。第2側部金型24の成形面24bの上縁部は、該第2側部金型24の右側面の上下方向中間部に位置している。第2側部金型24の成形面24bの下縁部は、該第2側部金型24の右側面の下部に位置しており、
図4に示す被加工材100の開放幅を狭めた状態のときに、下側金型12の凹面12aの左側の上縁部と略一致するように形成されている。第1側部金型23の成形面23bと、第2側部金型24の成形面24bとは、左右対称に形成することができる。
【0048】
下側可動盤22の下側には、第1側部金型23及び第2側部金型24を水平方向に案内する第1案内部材22a及び第2案内部材22bが設けられている。第1案内部材22aは、下側可動盤22の右側に位置しており、第1側部金型23が係合するレール状に形成することができる。第2案内部材22は、下側可動盤22の左側に位置しており、第2側部金型24が係合するレール状に形成することができる。第1側部金型23及び第2側部金型24は、第1案内部材22a及び第2案内部材22bにそれぞれ係合した状態で個別に左右方向に移動することが可能になっている。また、第1側部金型23及び第2側部金型24は、第1案内部材22a及び第2案内部材22bを介して下側可動盤22に取り付けられ、第1側部金型23及び第2側部金型24と、下側可動盤22との上下方向の相対変位が殆ど生じないようになっている。
【0049】
また、第1案内部材22a及び第2案内部材22bには、図示しないがそれぞれ付勢部材が内蔵されている。第1案内部材22aの付勢部材は、第1側部金型23を右側へ常時付勢している。第2案内部材22bの付勢部材は、第2側部金型24を左側へ常時付勢している。
【0050】
第1側部金型23及び第2側部金型24の下方に下型10の第1カム13及び第2カム14が位置するように、第1側部金型23及び第2側部金型24が配設されている。第1側部金型23の下面には、第1カム面13aに沿って延びるように形成された第1係合面23aが形成されている。つまり、第1係合面23aは、第2側部金型24側(造管装置1の左側)へ行くほど下に位置するように傾斜している。また、この第1係合面23aは、第1側部金型23の右端部から左側へ向かって左右方向中間部まで延びている。第1側部金型23の下面における第1係合面23aよりも左側は、略水平に延びる面で構成されている。
【0051】
第2側部金型24の下面には、第2カム面14aに沿って延びるように形成された第2係合面24aが形成されている。つまり、第2係合面24aは、第1側部金型23側(造管装置1の右側)へ行くほど下に位置するように傾斜している。また、この第2係合面24aは、第2側部金型24の左端部から右側へ向かって左右方向中間部まで延びている。第2側部金型24の下面における第2係合面24aよりも右側は、略水平に延びる面で構成されている。
【0052】
第1側部金型23の下降に伴って第1係合面23aが下型10の第1カム13の第1カム面13aに当接して係合すると、第1カム面13aが左側に向かって下降傾斜しているので、その第1カム面13aによって第1側部金型23に対して左方向への力が作用し、第1側部金型23が左方向へ移動する。また、第2側部金型24の下降に伴って第2係合面24aが下型10の第2カム14の第2カム面14aに当接して係合すると、第2カム面14aが右側に向かって下降傾斜しているので、その第2カム面14aによって第2側部金型24に対して右方向への力が作用し、第2側部金型24が右方向へ移動する。
【0053】
第1側部金型23が左方向へ移動するタイミング及び移動量は、第1カム面13a及び第1係合面23aの上下方向の位置及び傾斜角度によって任意に設定することができる。例えば、第1側部金型23が左方向へ移動するタイミングは、第1カム面13a及び第1係合面23aの上下方向の位置を変更することで調整可能であり、第1カム面13aが低くなればなるほど第1側部金型23が左方向へ移動を開始するタイミングが遅くなる。また、第1カム面13aの傾斜角度が急になればなるほど第1側部金型23の左側への移動量は少なくなる。第1側部金型23の移動速度は、第1側部金型23の下降速度によって調整可能である。第2側部金型24が右方向へ移動するタイミング及び移動量も、同様であり、第2カム面14a及び第2係合面24aの上下方向の位置及び傾斜角度によって任意に設定することができる。
【0054】
この実施形態では、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部に接触する前に、第1側部金型23及び第2側部金型24を互いに接近する方向に移動させて被加工材100の右側面及び左側面を第1側部金型23の成形面23b及び第2側部金型24の成形面24bでそれぞれ押圧して被加工材100の開放幅を狭めることができるように、第1カム面13a及び第1係合面23aの位置及び形状と、第2カム面14a及び第2係合面24aの位置及び形状とが設定されている。本発明の側部金型移動機構3は、第1カム13及び第2カム14と、第1案内部材22a及び第2案内部材22bと、第1係合面23a及び第2係合面24aとで構成されている。
【0055】
また、後述するように、側部金型移動機構3は、第1側部金型23及び第2側部金型24を互いに接近する方向に移動させて停止させた後に、中間金型25によって被加工材100の上部を押圧するように、第1側部金型23及び第2側部金型24の移動タイミング及び移動量を設定している。
【0056】
(造管方法)
次に、造管方法について説明する。UO成形により鋼管を成形する場合には、まず、
図2の左側に示すように、平板状の被加工材100を準備する。この被加工材100の両端部を上方へ僅かに折り曲げていてもよい。被加工材100の両端部の折り曲げ加工工程は、図示しないプレス加工装置で行うことができる。
【0057】
その後、U曲げ工程(Uing工程)を行う。U曲げ工程では、
図2の中央に示すように、被加工材100を断面略U字状に成形する。U曲げ工程は、図示しないが、凹面を有する下型の上に被加工材100を載置した後、凸面を有する上型を下降させて凸面を被加工材100に押し付けて凹面に沿うように成形することで断面略U字状の被加工材100を得ることができる。この実施形態では、上方に開放する略U字状の被加工材100を得ている。従って、U曲げ工程後の被加工材100の上部には、該被加工材100の両端部が左右方向に所定の隙間をあけて配置されることになり、被加工材100の両端部の間が開放部となる。被加工材100の材料強度や板厚等がバラつくことによるスプリングバック量の変化が、U曲げ工程後の被加工材100の形状バラつきの原因となることがあり、被加工材100の開放部の幅は一定になるとは限らないが、後工程を行うことができる程度の範囲内に収まるようになっている。
【0058】
U曲げ工程後にO曲げ工程(Oing工程)を行う。O曲げ工程では、上記した造管装置1を使用する。
図1に示すように、上型20を駆動装置30によって上昇させて上死点位置に配置する。上型20が上死点位置にあるときには、下側可動盤22の重量によって弾性部材26が伸長した状態になっており、上側可動盤21と下側可動盤22との間隔が広がっている。また、第1側部金型23は図示しない付勢部材の付勢力によって右側へ移動して停止しており、また、第2側部金型24は図示しない付勢部材の付勢力によって左側へ移動して停止している。
【0059】
上型20を上死点位置にしてから略U字状の被加工材100の下側を下型10の凹面12aに載置する。このとき、被加工材100の下側を下型10に対して位置決め手段(図示せず)によって位置決めするようにしてもよい。
【0060】
その後、上型20を駆動装置30によって下降させて下型10に接近させていく。上型20の移動速度は一定速とすることができる。下型10の第1カム13及び第2カム14が、第1側部金型23及び第2側部金型24の下方にそれぞれ配置されているので、上型20が下降していくと、第1側部金型23の第1係合面23aが第1カム13の第1カム面13aに当接して係合し、第2側部金型24の第2係合面24aが第2カム14の第2カム面14aに当接して係合する。また、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部に接触する前に、第1係合面23aと第1カム面13aとが係合し、第2係合面24aと第2カム面14aとが係合する。第1係合面23aと第1カム面13aとが係合するタイミングと、第2係合面24aと第2カム面14aとが係合するタイミングとは等しく設定されている。
【0061】
この間、上型20は下降し続けており、第1係合面23aと第1カム面13aとが係合した状態で上型20が下降することで第1側部金型23が左方向へ移動し、第2係合面24aと第2カム面14aとが係合した状態で上型20が下降することで第2側部金型24が右方向へ移動する。
【0062】
第1側部金型23が左方向へ移動すると、第1側部金型23の成形面23bが被加工材100の右側面の上側に当接して該右側面を左に押圧する。これと同時に、第2側部金型24が右方向へ移動しているので、第2側部金型24の成形面24bが被加工材100の左側面の上側に当接して該左側面を左に押圧する。そして、第1側部金型23と第2側部金型24とが互いに接近する方向に移動しているので、被加工材100の開放幅が狭まるように該被加工材100が塑性変形する。
図4に示すように、第1側部金型23及び第2側部金型24は、互いに接近する方向に移動して中間金型25の縦板部25bに近接または当接して停止する。このとき、第1側部金型23及び第2側部金型24の下面が下側金型12の上面に当接するので、第1側部金型23及び第2側部金型24が下方へ移動しなくなる。
【0063】
駆動装置30は上側可動盤21を下降させ続けており、第1側部金型23及び第2側部金型24の下面が下側金型12の上面に当接することで下側可動盤22が下降しなくなるので、弾性部材26が縮んでいき、上側可動盤21の下降が許容される。その後、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部を押圧して該上部を成形する。
【0064】
以上のようにして被加工材100を成形した後、脱型してから被加工材100の両端部を付き合わせて溶接することで
図2の右側に示すような管200を得ることができる。溶接部を符号200aで示す。中間金型25の成形面25cが平坦面である場合には、被加工材100が断面略O字状になるように、後工程で別途成形すればよい。
図6に示すように、中間金型25の成形面25cが円弧面である場合には、被加工材100が断面略O字状になるので、後工程は不要になる。
【0065】
(実施形態の作用効果)
この実施形態によれば、上方に開放する略U字状に成形された被加工材100の下側を下型10の凹面12aに載置した後、上型20を駆動装置30により下型10に接近する方向に駆動する過程で、側部金型移動機構3により第1側部金型23及び第2側部金型24が互いに接近する方向に移動する。すると、第1側部金型23の成形面23bが被加工材100の右側面を押圧し、第2側部金型24の成形面24bが被加工材100の左側面を押圧して被加工材100の上部の開放幅を狭めることができる。
【0066】
被加工材100の上部の開放幅が狭まった後に、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部に接触する。これにより、被加工材100が上型20及び下型10によって管200に近い断面を有するまで成形される。つまり、開放幅が狭まった状態の被加工材100の上部に中間金型25の成形面25cが接触するので、成形時に被加工材100の両端部が中間金型25の成形面25cを摺動する距離が短くなり、中間金型25の成形面25cが被加工材100の端部によって削り取られるような摩耗が起こり難くなる。
【0067】
また、第1側部金型23及び第2側部金型24の間に被加工材100が配置されて、第1側部金型23及び第2側部金型24が互いに接近する方向に移動することになるので、被加工材100の材料強度や板厚等のバラつきによってスプリングバック量が変化してU曲げ工程後の被加工材100に形状バラつきが起こっていたとしても、その形状バラつきが吸収される。
【0068】
したがって、UO成形により管200を成形する際に上型20に発生する局部的な摩耗を減少させて上型20の使用可能な期間を延ばしながら最終製品である管200の形状を設計通りの形状にすることができるとともに、被加工材100のバラつきが管200の形状に影響するのを抑制して品質を高めることができる。
【0069】
(実施形態2)
図7〜
図10は、本発明の実施形態2に係る造管装置1を示すものである。この実施形態2では、第1側部金型23及び第2側部金型24を移動させる構造が実施形態1の造管装置1とは異なっており、他の部分は実施形態1の造管装置1と同じである。以下、実施形態1の造管装置1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0070】
実施形態2の側部金型移動機構3は、側部金型駆動装置31、32と、検知部28と、制御装置40とを備えている。側部金型駆動装置31は、第1側部金型23を左右方向に移動させるための装置である。側部金型駆動装置32は、第2側部金型24を左右方向に移動させるための装置である。側部金型駆動装置31、32は、例えば流体圧シリンダ等で構成することができ、第1側部金型23及び第2側部金型24を互いに接近する方向に移動させる。
【0071】
検知部28は、上型20の下型10に対する接離方向(上型20の上下方向)の位置を検知するためのものであり、例えばリミットスイッチや近接センサ等で構成することができる。検知部28は、下側可動盤22に固定されたステー27に取り付けられており、下側可動盤22と共に上下方向に移動する。一方、固定盤11には、検知部28の直下方に、検知部28に接触する接触部材15が設けられている。検知部28が下降して接触部材15に接触すると、上型20の上下方向の位置(上型20の高さ)を検知することができる。この実施形態では、上型20が
図7に示す上死点位置よりも下型10に接近し、かつ、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部に接触する前であることを検知部28により検知することができるように、検知部28の位置及び接触部材15の高さが設定されている。
【0072】
制御装置40には、側部金型駆動装置31、32及び検知部28が接続されている。制御装置40は、検知部28による検知結果に基づいて側部金型駆動装置31、32を制御するように構成されており、従来から周知のCPU(中央演算処理装置)やROM、RAM等を内蔵したマイクロコンピュータやシーケンサ等で構成することができる。
【0073】
具体的には、制御装置40は、上型20が
図7に示す上死点位置よりも下型10に接近し、かつ、中間金型25の成形面25cが被加工材100の上部に接触する前であることを検知部28により検知すると、第1側部金型23及び第2側部金型24が互いに接近する方向に移動するように側部金型駆動装置31、32を制御する。これにより、
図9及び
図10に示すように、被加工材100の開放幅を狭めた後に、中間金型25によって被加工材100の上部を押圧することができるので、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0074】
尚、実施形態2においても
図6に示すように中間金型25の成形面25cを円弧状にすることができる。
【0075】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。