【解決手段】鋳造装置50は、上部フレーム5と、下部フレーム6と、開閉機構21と、その上端部が上部フレーム5に回動可能に連結され、その下端部が下部フレーム6に回動可能に連結され、その中央部に傾動回転軸10を備えた第1主リンク部材7aと、その上端部が上部フレーム5に回動可能に連結され、その下端部が下部フレーム6に回動可能に連結され、その中央部に軸受42を備えた第1副リンク部材8aと、傾動回転軸10を中心に第1主リンク部材7aを回転させる回転アクチュエータ16と、軸受42が載置されることにより、軸受42を介して第1副リンク部材8aを回転可能に支持する回転軸41を有するベースフレーム17と、軸受42が載置可能な位置から、回転軸41を退避させる退避機構40と、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。また、「上」「下」「左」「右」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
【0015】
(第1実施形態)
図1及び
図2を参照して、鋳造装置50の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る鋳造装置の正面図である。
図2は、
図1の鋳造装置の側面図である。図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。以下ではX方向を左右方向、Z方向を上下方向ともいう。
【0016】
鋳造装置50は、重力を利用して溶融金属が注湯され、開閉可能かつ傾動可能な上金型1及び下金型2を用いて鋳物を鋳造する、いわゆる重力式傾動金型鋳造装置である。注湯される溶融金属の材質は問わない。溶融金属として、例えばアルミニウム合金及びマグネシウム合金等が用いられる。鋳造装置50は、コントローラを有し、構成要素の動作を制御可能に構成されている。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、鋳造装置50は、例えば、ベースフレーム17、上部フレーム5、下部フレーム6、開閉機構21、左右一対の主リンク部材7(第1主リンク部材7a、第2主リンク部材7b)、左右一対の副リンク部材8(第1副リンク部材8a、第2副リンク部材8b)、回転アクチュエータ16(駆動部)、退避機構40及びラドル25を備えている。
【0018】
ベースフレーム17は、基台18、駆動側支持フレーム19、従動側支持フレーム20、及び一対の回転軸41(第2回転軸及び第4回転軸)を有している。基台18は、複数の部材の組み合わせにより構成された略平板状をなす部材であり、鋳造装置50の設置面上に水平に設けられている。駆動側支持フレーム19と従動側支持フレーム20とは、基台18上において、上金型1及び下金型2と、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8とを挟んで左右方向(水平方向)に互いに対向して立設(配置)されている。上金型1及び下金型2の外側には、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8が配置され、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8の外側には、駆動側支持フレーム19及び従動側支持フレーム20が配置されている。駆動側支持フレーム19と従動側支持フレーム20とは、基台18に固定されている。
【0019】
駆動側支持フレーム19の上端部及び従動側支持フレーム20の上端部には、一対の傾動回転軸受9が設けられている。一対の傾動回転軸受9には、後述の一対の傾動回転軸10が連結される。一対の回転軸41は、一対の傾動回転軸10と同じ高さ位置で駆動側支持フレーム19及び従動側支持フレーム20に設けられている。一対の回転軸41は、通常、駆動側支持フレーム19及び従動側支持フレーム20よりも一対の副リンク部材8側であって、後述の軸受42が載置可能な載置位置に配置されている。一対の回転軸41は、互いに同軸である。一対の回転軸41は、一対の傾動回転軸10の軸方向と平行な軸方向を有している。一対の傾動回転軸10及び一対の回転軸41の軸方向は、左右方向(水平方向ここではX方向)である。一対の回転軸41は、例えば、円柱状の部材である。
【0020】
上部フレーム5は、ベースフレーム17の上方に配置されている。上部フレーム5には、上金型1が装着されている。具体的には、上部フレーム5の下面には、上型ダイベース3を介して上金型1が取り付けられている。上部フレーム5には、上金型1を昇降する開閉機構21が設けられている。具体的には、上部フレーム5は、開閉機構21を内蔵し、開閉機構21により上金型1を昇降可能に保持している。
【0021】
開閉機構21は、第1油圧アクチュエータ22、左右一対のガイドロッド23、及び、左右一対の案内筒24を有している。第1油圧アクチュエータ22は、上金型1及び下金型2のいずれか一方を昇降させることによって、上金型1及び下金型2の型閉め又は型開きを行う。本実施形態においては、第1油圧アクチュエータ22は上金型1を昇降させる。第1油圧アクチュエータ22の下端部は、上型ダイベース3の上面に取り付けられている。上型ダイベース3は、上金型とともに昇降する。第1油圧アクチュエータ22は、上下方向(垂直方向ここではZ方向)に伸長することにより、上型ダイベース3を介して上金型1を降下させるとともに、上下方向に短縮することにより、上型ダイベース3を介して上金型1を上昇させる。第1油圧アクチュエータ22は、一例として油圧シリンダである。ガイドロッド23は、上部フレーム5に取り付けられた案内筒24を通して、上型ダイベース3の上面に取り付けられている。
【0022】
下部フレーム6は、ベースフレーム17の上方であって、上部フレーム5の下方に配置されている。下部フレーム6には、下金型2が装着されている。具体的には、下部フレーム6の上面には、下型ダイベース4を介して下金型2が取り付けられている。
図1及び
図2に示される状態では、上部フレーム5と下部フレーム6とは、上下方向で互いに対向している。同様に、上金型1と下金型2とは、上下方向で互いに対向している。開閉機構21は、上金型1を昇降させることによって、上金型1及び下金型2の型閉め又は型開きを行う。
【0023】
図3(a)は、第1主リンク部材、第1副リンク部材、及び回転軸を示す図である。
図3(a)は、これらの部材を駆動側支持フレーム19側から見た図であり、駆動側支持フレーム19が一点破線で示されている。
図3(b)は、第1副リンク部材、及び回転軸及び駆動側支持フレームを示す図である。
図3(b)は、これらの部材を
図2の右側から見た図である。
図1〜
図3に示されるように、第1主リンク部材7aは、長尺状部材である。第1主リンク部材7aは、例えば、断面矩形状の棒状部材である。第1主リンク部材7aは、その上端部が上部フレーム5に回動可能に連結され、その下端部が下部フレーム6に回動可能に連結され、その中央部に傾動回転軸10(第1回転軸、第3回転軸)を備える。第1主リンク部材7aは、その上端部に主リンク上部回転軸11、及び、その下端部に主リンク下部回転軸12を有している。第2主リンク部材7bは、第1主リンク部材7aと同一構成である。一対の主リンク部材7は、左右方向(水平方向ここではX方向)に対向配置され、それぞれ、上部フレーム5と下部フレーム6とを連結している。ここでは、一対の主リンク部材7は、上金型1及び下金型2を挟んで平行に対向配置される。
【0024】
一対の主リンク部材7の中央部は、一対の傾動回転軸10を介して、一対の傾動回転軸受9に回転可能に連結されている。一対の主リンク部材7の上端部は、上部フレーム5の一対の側面5aに一対の主リンク上部回転軸11を介して、回転可能に連結されている。一対の主リンク部材7の下端部は、下部フレーム6の一対の側面6aに一対の主リンク下部回転軸12を介して、回転可能に連結されている。上金型1及び下金型2を型閉めしたときに、左右方向及び上下方向に直交する奥行き方向(Y方向)において、一対の主リンク部材7が上金型1及び下金型2それぞれの中心に位置するように、一対の主リンク部材7の上部フレーム5及び下部フレーム6への取り付け位置が設定されている。
【0025】
第1副リンク部材8aは、長尺状部材である。第1副リンク部材8aは、例えば、断面矩形状の棒状部材である。第1副リンク部材8aは、第1主リンク部材7aと平行に配置され、その上端部が上部フレーム5に回動可能に連結され、その下端部が下部フレーム6に回動可能に連結され、その中央部に軸受42(第1軸受)を備える。第1副リンク部材8aは、その上端部に副リンク上部回転軸13、及び、その下端部に副リンク下部回転軸14を有している。第2副リンク部材8b(不図示)は、第1副リンク部材8aと同一構成である。第2副リンク部材8bは、第2主リンク部材7bと平行に配置され、その上端部が上部フレーム5に回動可能に連結され、その下端部が下部フレーム6に回動可能に連結され、その中央部に軸受42(第2軸受)を備える。一対の副リンク部材8は、左右方向に対向配置され、上部フレーム5と、下部フレーム6とを連結している。一対の副リンク部材8は、一対の側面5a及び一対の側面6aに、一対の主リンク部材7と平行を成すように配設されている。副リンク部材8の長さは、主リンク部材7の長さと同じである。
【0026】
軸受42は、回転軸41の外周面における周方向の半分以下に当接可能な溝部43を有している。溝部43は、軸受42の副リンク下部回転軸14側に配置されている。溝部43は、例えば、左右方向(水平方向ここではX方向)に延在し、断面半円状を呈している。溝部43は湾曲面から成る。軸受42は、溝部43が回転軸41と当接するように、回転軸41上に載置される。上述のように、回転軸41は、通常は載置位置に配置されている。載置位置に配置された回転軸41は、軸受42が回転軸41上に載置されることにより、軸受42を介して第1副リンク部材8aを回転可能に支持する。
【0027】
退避機構40は、回転軸41を載置位置から退避させる。退避機構40が回転軸41を退避させる退避位置は、軸受42が傾動回転軸10を中心にして回転する際に、回転軸41が軸受42と干渉しない位置である。退避機構40は、回転軸41をその軸方向に移動させることにより、回転軸41を退避させる。退避機構40は、ベースフレーム17に設けられている。退避機構40は、例えば、駆動側支持フレーム19及び従動側支持フレーム20に設けられた一対の油圧アクチュエータを有している。一対の油圧アクチュエータは、先端に回転軸41が設けられた油圧シリンダからなっている。退避機構40は、油圧アクチュエータの左右方向(水平方向ここではX方向)の伸長動作により、回転軸41を載置位置に配置すると共に、油圧アクチュエータの左右方向(水平方向ここではX方向)の短縮動作により、回転軸41を退避位置に退避させる。
【0028】
一対の副リンク部材8の上端部は、上部フレーム5の一対の側面5aに一対の副リンク上部回転軸13を介して、回転可能に連結されている。副リンク部材8の下端部は、下部フレーム6の一対の側面6aに一対の副リンク下部回転軸14を介して、回転可能に連結されている。副リンク部材8の取り付け位置は、主リンク部材7に対して、ラドル25が配置されている側となっている。
【0029】
このように、上部フレーム5、下部フレーム6、第1主リンク部材7a及び第1副リンク部材8aで平行リンク機構(第1平行リンク機構)が構成されている。同様に、上部フレーム5、下部フレーム6、第2主リンク部材7b及び第2副リンク部材8bで平行リンク機構(第2平行リンク機構)が構成されている。2つの平行リンク機構は、上金型1及び下金型2を挟んで互いに対向して平行に配置されている。
【0030】
一対の傾動回転軸10は、第1平行リンク機構及び第2平行リンク機構の外側に設けられた一対の傾動回転軸受9を介してベースフレーム17に保持(支持)されている。第1主リンク部材7aの傾動回転軸10の回転中心と、型閉め又は型開きされた上金型1及び下金型2、上部フレーム5及び下部フレーム6を含む回転体の重心とが一致している。第2主リンク部材7bの傾動回転軸10の回転中心と、型閉め又は型開きされた上金型1及び下金型2、上部フレーム5及び下部フレーム6を含む回転体の重心とが一致している。ここで、「一致」とは、両者が完全に一致している場合に限られず、上金型1の重量と下金型2の重量との相違により誤差を有する場合も含まれる意味である。
【0031】
回転アクチュエータ16は、駆動側支持フレーム19上に配置されている。回転アクチュエータ16は、一対の主リンク部材7のうちの一方の傾動回転軸10に連結され、傾動回転軸10を中心に一対の主リンク部材7のうちの一方を回転させる。本実施形態では、回転アクチュエータ16は、第1主リンク部材7aの傾動回転軸10に連結され、傾動回転軸10を中心に第1主リンク部材7aを回転させる。回転アクチュエータ16は、電動、油圧、空圧のいずれで動作するものであってもよい。一例として、回転アクチュエータ16は、サーボモータである。サーボモータは、電源に接続され、電力が供給されることにより動作する。回転アクチュエータ16は、上金型1と下金型2とを傾動又は水平方向に離間させる駆動部として機能する。
【0032】
上金型1と下金型2との傾動は、開閉機構21によって上金型1と下金型2とを型閉めした状態で、回転アクチュエータ16によって、第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を45°〜130°回転させることでなされる。上金型1と下金型2との水平方向への離間は、開閉機構21によって上金型1と下金型2とを型開きした状態で、回転アクチュエータ16によって、第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を所定角度回転させることでなされる。上金型1と下金型2との水平方向への離間は、回転アクチュエータ16により第1平行リンク機構が作用することで実現する。このとき、第1平行リンク機構の動きに合わせて第2平行リンク機構も作用する。なお、第2平行リンク機構は必須ではなく、例えば、第1平行リンク機構と第2主リンク部材7bのみで上部フレーム5及び下部フレーム6を連結してもよいし、第1平行リンク機構と第2副リンク部材8bのみで上部フレーム5及び下部フレーム6を連結してもよい。
【0033】
ラドル25は、下金型2の側面の上端部に取り付けられている。ラドル25の内部には、溶湯を貯留する貯留部が画成されている。ラドル25の注湯口25a(
図6参照)は、下金型2の受湯口2a(
図6参照)に接続されている。
【0034】
図4は、
図1において上金型及び下金型の断面を示す図である。ここでは、下金型2の上面に複数の中子34を納めた状態を示す。
図4に示されるように、鋳造装置50は、押出し板28(上押出し板)と、一対の押出しピン26(上押出しピン)と、一対のリターンピン27と、複数の押し棒29(規制部材)と、を有する押出し機構37を備えている。押出し機構37は、上部フレーム5に設けられている。
【0035】
押出し板28は、上金型1の上端側の内部に形成された内部空間に配置される。押出し板28は、昇降自在な状態で内部空間に収容されている。各押出しピン26は、押出し板28の下面に設けられている。各押出しピン26は、上金型1の内部空間から鋳物を形成するキャビティ(上キャビティ)へ貫通する孔を昇降する。各押出しピン26は、その先端でキャビティ内の鋳物を押し出す。各リターンピン27は、押出し板28の下面の押出しピン26とは異なる位置に設けられている。各リターンピン27は、上金型1の内部空間から上金型1の下面へ貫通する孔を昇降する。各リターンピン27は、上金型1と下金型2とが型閉めされる過程で、その先端が下金型2の上面に突き当てられることで押出し板28を上昇させる。
【0036】
各押し棒29は、上部フレーム5の下面に設けられている。各押し棒29は、上部フレーム5の下面に、上型ダイベース3を貫通して配設されている。各押し棒29は上金型1の上面から内部空間へ貫通する孔に挿入された状態で、その先端が該内部空間内の押出し板28の上方に配置される。各押し棒29の長さは、第1油圧アクチュエータ22が短縮して上金型1が上昇端になったとき、押出し板28を押し下げる長さに設定されている。なお、上昇端とは、第1油圧アクチュエータ22が短縮することにより、上金型1の取り得る最も上方の位置である。即ち、各押し棒29は、上金型1の上面から、上金型1の上部位置に形成された内部空間へ貫通する孔を通って該内部空間内に所定長さ進入され、押出し板28の上昇を阻止する。
【0037】
下部フレーム6には、第2油圧アクチュエータ30が内蔵されている。第2油圧アクチュエータ30は、一例として油圧シリンダである。第2油圧アクチュエータ30は上端部が押出し部材31の下面に取り付けられている。左右一対のガイドロッド32は、下部フレーム6に取り付けられた案内筒33を通して、押出し部材31の下面に取り付けられている。
【0038】
下金型2は、上金型1と同様に、一対の押出しピン26(下押出しピン)と一対のリターンピン27とが連結された押出し板28(下押出し板)を内蔵している。下金型2では、第2油圧アクチュエータ30の伸長動作により、押出し部材31が上昇して、押出し板28を押し上げることで、一対の押出しピン26とリターンピン27とが上昇する位置関係になっている。各押出しピン26は、その先端でキャビティ(下キャビティ)内の鋳物を押し出す。なお、上金型1及び下金型2のリターンピン27は、型閉め時に、リターンピン27の先端が対向する金型の合せ面、あるいは対向するリターンピン27の先端により押し戻される。これに伴い、押出し板28に連結された押出しピン26も押し戻される。また、型閉め時は、第2油圧アクチュエータ30の短縮動作で押出し部材31は、下降端の位置になる。なお、下降端とは、第2油圧アクチュエータ30が短縮することにより、下金型2の取り得る最も下方の位置である。
【0039】
上金型1の下部周囲(側面下端部)には、一対の位置決めキー35が取り付けられている。下金型2の上部周囲(側面上端部)には、一対のキー溝36が一対の位置決めキー35と嵌合可能に設けられている。位置決めキー35とキー溝36とは、上金型1と下金型2とを水平方向に位置決めする位置決め部を構成している。この位置決め部によれば、上金型1と下金型2とが水平方向に位置決めされるので、上金型1と下金型2とがずれて型閉めされることを抑制することができる。
【0040】
続いて、
図5〜
図17を参照して、鋳造装置50による鋳造方法の例について説明する。
図5及び
図6に示されるように、鋳造装置50は、電源起動時においては、上金型1は上昇端にあり、一対の主リンク部材7と一対の副リンク部材8とが、鋳造装置50の設置面に対して垂直をなしている(装置起動状態:ステップS11)。一対の回転軸41は、載置位置に配置された状態である。上金型1の重心は、傾動回転軸10よりも回転軸41側に位置するように設定されている。このため、軸受42は下方に向かう力を受け、溝部43が回転軸41の外周面に押し付けられるようにして、回転軸41上に載置される。これにより、回転軸41は、軸受42を介して副リンク部材8を支持した状態となっている(
図3参照)。
【0041】
なお、鋳造装置50は、作業スペース(不図示)と給湯装置(不図示)との間に配置されている。鋳造装置50は、ラドル25がY方向で作業スペース(不図示)と対向するように配置されている。作業スペースは、中子納め等の作業を作業員が行うためのスペースである。給湯装置は、ラドル25に溶湯を給湯する装置である。また、鋳造装置50と作業スペースとの間には、例えばコンベア(不図示)が配置されている。コンベアは、鋳造装置50により鋳造された鋳物(鋳物製品)を搬送する装置である。コンベアは、例えば後工程の装置(例えば、製品冷却装置、砂落装置、製品仕上装置等)まで延びている。
【0042】
続いて、
図5、
図7及び
図8に示されるように、鋳造装置50は、一連の鋳造工程の初期状態とされる(ステップS12)。鋳造装置50は、
図6に示される状態から
図7に示される初期状態へと変更される。ステップS12では、回転アクチュエータ16が駆動し、第1主リンク部材7aの傾動回転軸10が時計回転方向に回転する。本実施形態では、時計回転方向の回転を右回転とし、反対回転を左回転とする。平行リンク機構の作用により、上金型1と下金型2とが相反する方向に弧を描いてスライドする。具体的には、互いに対向した上金型1と下金型2とが傾動回転軸10を中心にして右回転の円運動をすることにより、上金型1と下金型2とが水平方向に離間するように移動する。このとき、上金型1が給湯装置側に移動した状態(第2離間状態)となる。この第2離間状態が一連の鋳造工程の初期状態である。本実施形態では、下金型2が給湯装置側に移動した状態を第1離間状態とし、上金型1が給湯装置側に移動した状態を第2離間状態とする。つまり、第1離間状態(
図15参照)は、回転アクチュエータ16によって上金型1が給湯装置から遠ざかる方向へ移動するとともに下金型2が給湯装置に近づく方向へ移動して、上金型1及び下金型2が水平方向に離間した状態である。第2離間状態(
図7参照)は、回転アクチュエータ16によって上金型1が給湯装置に近づく方向へ移動するとともに下金型2が給湯装置から遠ざかる方向へ移動して、上金型1及び下金型2が水平方向に離間した状態である。
【0043】
次に、中子34(
図4参照)が下金型2の所定の位置に収められる(ステップS13)。中子34を収める中子納めは、例えば、作業員により行われる。中子34は、例えば、中子造型機(不図示)により造型される。第2離間状態では、下金型2は、上方が開放された状態であって、下金型2に取り付けられたラドル25が上金型1に接触しない状態となっている。このように、下金型2の上方が開放されているので、下金型2に中子34を安全に納めることができる。
【0044】
続いて、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を左回転して、
図6の装置起動状態に一旦戻る(ステップS14)。続いて、
図5及び
図9に示されるように、鋳造装置50は、第1油圧アクチュエータ22を伸長して、上金型1と下金型2とを型閉めする(ステップS15)。このとき、上金型1の位置決めキー35と、下金型2のキー溝36とが嵌合し、上金型1と下金型2とが水平方向に固定される。また、型閉めにより、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8と、主リンク上部回転軸11、主リンク下部回転軸12、副リンク上部回転軸13、及び副リンク下部回転軸14とが回転しないようになり、上金型1、下金型2、上部フレーム5、下部フレーム6、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8が一体化する。
【0045】
次に、上金型1と下金型2とが型閉めされた型閉状態となったときに、給湯装置がラドル25に溶湯を供給する(ステップS16)。続いて、
図5、
図10及び
図11に示されるように、鋳造装置50は、退避機構40により回転軸41を載置位置から退避位置に退避させる。その後、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を概ね10°右回転させて、上金型1と下金型2とを右回転の傾動状態とする(ステップS17)。これにより、軸受42は傾動回転軸10を中心にして右回転し、回転軸41が設けられた高さ位置よりも下方に移動する。なお、
図11では、溝部43の軌跡が二点鎖線で示されている。
【0046】
続いて、
図5、
図12及び
図13に示されるように、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を概ね100°左回転させて、上金型1と下金型2とを左回転の傾動状態とする(ステップS18)。これに伴い、型閉めされて一体化された上金型1、下金型2、上部フレーム5、下部フレーム6、一対の主リンク部材7及び一対の副リンク部材8が回転して、ラドル25内の溶湯が上金型1と下金型2との間に形成されるキャビティに傾動注湯される(ステップS19)。軸受42は傾動回転軸10を中心にして左回転し、回転軸41が設けられた高さ位置よりも上方に移動する。なお、
図13では、溝部43の軌跡が二点鎖線で示されている。
【0047】
上記ステップS19の工程が終了した後、
図12の状態を所定時間保持して、注湯された溶湯の凝固(冷却)を待つ(ステップS20)。なお、上記のとおり、ここでは回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を概ね100°左回転しているが、45°〜130°の範囲内の所要の角度で回転させてもよいし、45°〜90°の範囲内の所要の角度で回転させてもよい。
【0048】
続いて、鋳造装置50は、退避機構40により回転軸41を載置位置に配置する。その後、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を概ね90°右回転させて、
図9の状態に一旦戻る(ステップS21)。続いて、下金型2からの抜型及び型開きを並行して行う(ステップS22)。
図5及び
図14に示されるように型開きが行われ、同時に下金型2からの抜型も行われる。型開きは、鋳造装置50が第1油圧アクチュエータ22を動作することで開始する。そして、第1油圧アクチュエータ22の短縮動作と同時に、第2油圧アクチュエータ30の伸長動作が開始される。第2油圧アクチュエータ30が伸長することにより、下金型2に内蔵された押出しピン26(
図4参照)が押し出される。これにより、上金型1及び下金型2内で溶湯が凝固して成る鋳物(不図示)が下金型2から抜型され、上金型1に保持された状態となる。そして、鋳造装置50は、所定の位置まで上金型1を上昇させて、型開きを完了する。所定の位置は、押し棒29の先端と上金型1の押出し板28の上面とが接触しない位置である。言い換えれば、所定の位置は、押し棒29の先端と上金型1の押出し板28の上面との間に隙間がある位置である。
【0049】
次に、
図5、
図15及び
図16に示されるように、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を左回転させる(ステップS23)。平行リンク機構の作用により、鋳造装置50は、上金型1と下金型2とを弧を描いてスライドさせ、水平方向に離間させる。このとき、上金型1がコンベア側に移動した状態、すなわち、下金型2が給湯装置に近づく方向に移動した第1離間状態となる。このときの回転アクチュエータ16の左回転の角度は、上金型1の下方が開放された状態となる30°〜45°程度とする。
【0050】
次に、
図5及び
図17に示されるように、鋳造装置50は、第1油圧アクチュエータ22を短縮することにより、上金型1を上昇端まで上昇させる。これにより、押し棒29の先端が上金型1に内蔵されている押出し板28を介して、押出しピン26(
図4参照)を上金型1に対して相対的に押出す。この結果、上金型1に保持されていた鋳物が上金型1から抜型される(ステップS24)。上金型1から抜型された鋳物は落下し、上金型1の下方に設けられたコンベア上に受け取られる。即ち、コンベアは鋳物を受け取る受け取り部としても機能する。その後、鋳物は、コンベアにより、例えば、製品冷却装置、砂落装置、及びバリ取りを行う製品仕上装置等へと搬送される。
【0051】
続いて、
図5に示されるように、鋳造装置50は、回転アクチュエータ16を駆動させて第1主リンク部材7aの傾動回転軸10を右回転させる(ステップS25)。これにより、鋳造装置50は、初期状態に戻る(
図7参照)。以上のようにして、一連の鋳造工程が完了し、鋳造装置50により鋳物が鋳造される。また、連続して鋳造工程を行う場合には、ステップS13の中子セット工程から処理を繰り返すことにより、鋳物を連続して鋳造することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図18は、第2実施形態に係る鋳造装置の正面図である。
図18に示されるように、第2実施形態に係る鋳造装置50Aは、主に、下金型2を昇降する開閉機構21が下部フレーム6に設けられる点で、第1実施形態に係る鋳造装置50と相違している。開閉機構21が下部フレーム6に設けられることにより、鋳造装置50Aでは、下金型2が昇降可能とされている。以下では、第2実施形態に係る鋳造装置50Aと第1実施形態に係る鋳造装置50との相違点を中心に説明し、共通する説明は省略する。
【0053】
図19は、
図18において上金型及び下金型の断面を示す図である。
図19に示されるように、鋳造装置50Aでは、第2油圧アクチュエータ30が上部フレーム5に設けられ、押出し機構37が下部フレーム6に設けられている。鋳造装置50Aでは、押出し板28は、下金型2の下端側の内部に形成された内部空間に配置される。各押出しピン26は、押出し板28の上面に設けられている。各押出しピン26は、下金型2の内部空間から鋳物を形成するキャビティへ貫通する孔を昇降する。各押出しピン26は、その先端でキャビティ内の鋳物を押し出す。各リターンピン27は、押出し板28の上面の押出しピン26とは異なる位置に設けられている。各リターンピン27は、下金型2の内部空間から下金型2の上面へ貫通する孔を昇降する。各リターンピン27は、上金型1と下金型2とが型閉めされる過程で、その先端が上金型1の下面に突き当てられることで押出し板28を下降させる。
【0054】
各押し棒29は、下部フレーム6の上面に設けられている。各押し棒29は、下部フレーム6の上面に、下型ダイベース4を貫通して配設されている。各押し棒29は下金型2の下面から内部空間へ貫通する孔に挿入された状態で、その先端が該内部空間内の押出し板28の下方に配置される。各押し棒29の長さは、第1油圧アクチュエータ22が短縮して下金型2が下降端になったとき、押出し板28を押し上げる長さに設定されている。即ち、各押し棒29は、下金型2の下面から、下金型2の下部位置に形成された内部空間へ貫通する孔を通って該内部空間内に所定長さ進入され、押出し板28の下降を阻止する。
【0055】
鋳造装置50Aによる鋳造方法では、上記ステップS22において、上金型1からの抜型及び型開きを並行して行う。具体的には、鋳造装置50Aは、下部フレーム6に設けられた開閉機構21により、下金型2を下降させて、上金型1と下金型2との型開きを開始する。これと同時に、上部フレーム5に設けられた第2油圧アクチュエータ30の伸長動作を開始する。第2油圧アクチュエータ30の伸長により、上金型1に内蔵された押出しピン26を押し出す。これにより、上金型1及び下金型2内で溶湯が凝固して成る鋳物(不図示)が上金型1から抜型され、下金型2に保持された状態となる。また、上記工程S23において、下金型2からの抜型を行う。具体的には、開閉機構21により、下金型2を下降端まで下降させる。これにより、押し棒29の先端が下金型2に内蔵されている押出し板28を介して、押出しピン26を下金型2に対して相対的に押出す。この結果、下金型2に保持されていた鋳物が下金型2から抜型される。
【0056】
以上説明したように、鋳造装置50,50Aでは、一対の副リンク部材8はそれぞれ、その中央部に軸受42を備えている。ベースフレーム17は、回転軸41を有し、回転軸41は、軸受42が載置されることにより、軸受42を介して副リンク部材8を回転可能に支持する。退避機構40は、載置位置から回転軸41を退避させるので、上金型1及び下金型2は、軸受42が回転軸41から持ち上げられる方向(すなわち、左回転による傾動)だけでなく、逆方向にも傾動することができる。
【0057】
退避機構40は、ベースフレーム17に設けられている。ベースフレーム17は、回転アクチュエータ16により回転しないので、退避機構40が回転アクチュエータ16により回転する部分に設けられている場合に比べて、回転アクチュエータ16に対する負荷を抑制することができる。
【0058】
退避機構40は、回転軸41をその軸方向に移動させるので、回転軸41を載置位置から容易に退避させることができる。
【0059】
軸受42は、回転軸41の外周面における周方向の半分以下に当接可能な溝部43を有している。このため、載置位置に配置された回転軸41上に軸受42が容易に載置される。また、回転軸41上に載置された軸受42は、傾動回転軸10の左回転に伴い、回転軸41から容易に持ち上げられるので、上金型1及び下金型2は容易に傾動することができる。
【0060】
以上、各実施形態について説明したが、本開示は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば鋳造装置50,50Aでは、退避機構40は回転軸41を退避位置に退避させることができればよく、回転軸41を軸方向以外に移動させてもよい。回転軸41は、駆動側支持フレーム19及び従動側支持フレーム20に限らず、ベースフレーム17の他の部分に設けられていてもよい。
【0061】
上記ステップS17は省略されてもよい。すなわち、上金型1と下金型2とは、型閉めされた型閉状態とされた後、右回転の傾動状態とされることなく、左回転の傾動状態とされてもよい。この場合、軸受42が回転軸41から持ち上げられると共に、上金型1と下金型2とが傾動する。
【0062】
第2油圧アクチュエータ30により、上金型1又は下金型2からの鋳物の抜型を行う代わりに、スプリングで押出し板28を押し出してもよい。その場合、上金型1及び下金型2の型閉め時に上金型1により下金型2のリターンピン27を押し下げて押出しピン26を下げることになり、型閉め力がリターンピン27の押し下げ力分相殺されることになるが、アクチュエータ数を減らすことができる。
【0063】
また、鋳造装置50,50Aを複数配置してもよい。このとき、給湯装置により給湯可能であれば、鋳造装置50,50Aの配置に制限はない。また、中子納めは作業員によらず、例えば、多関節構造のアームを備えた中子納め用ロボットによって行われてもよい。また、開閉機構21は、上金型1及び下金型2の両方を昇降させてもよい。