特開2019-104964(P2019-104964A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-104964スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-104964(P2019-104964A)
(43)【公開日】2019年6月27日
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20190607BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-237947(P2017-237947)
(22)【出願日】2017年12月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 嗣人
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC16
4K029DC22
4K029DC24
(57)【要約】
【課題】プラズマが回り込みIn材が溶けてもターゲット外周まで漏れ出さないスパッタリングターゲット、及び当該スパッタリングターゲットを製造する方法を提供すること。
【解決手段】複数の小片20に分割されたターゲット材2を備え、ターゲット材2がバッキングプレート1にインジウムを含む接合剤3により接合され積層された積層体により構成され、分割されたターゲット材2の複数の小片20の外周縁から小片20の中心側の所定の位置に小片20をバッキングプレート1に接合する接合剤3の外周縁が位置していることにより、小片20とバッキングプレート1との間に、接合剤3が存在しない空間35が形成されているスパッタリングターゲットである。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小片に分割されたターゲット材を備え、前記ターゲット材がバッキングプレートにインジウムを含む接合剤により接合され積層された積層体により構成されるスパッタリングターゲットであって、
分割された前記ターゲット材の複数の小片の外周縁から前記小片の中心側の所定の位置に前記小片を前記バッキングプレートに接合する前記接合剤の外周縁が位置していることにより、前記小片と前記バッキングプレートとの間に、前記接合剤が存在しない空間が形成されているスパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記空間は、前記小片の外周縁から前記小片の中心側へ向って、前記スパッタリングターゲットの長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の長さの位置に至るまで広がる、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記接合剤は、前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚さを確保するための厚さ確保部材が前記接合剤には存在しない状態で、前記ターゲット材と前記バッキングプレートの間に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚みは、0.1mm以上0.5mm以下である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
ターゲット材をバッキングプレートにインジウムを含む接合剤により接合することにより積層させてスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
複数の小片に分割された前記ターゲット材の間隙を含む前記バッキングプレートに対向する前記ターゲット材上の間隙周辺領域と、前記ターゲット材上の間隙周辺領域に対向する前記バッキングプレート上の間隙周辺領域と、複数の小片に分割された前記ターゲット材の全体の外周縁を含む前記バッキングプレートに対向する前記ターゲット材上の外周縁周辺領域と、前記ターゲット材上の外周縁周辺領域に対向する前記バッキングプレート上の外周縁周辺領域とに、マスキングテープを配置させる工程と、
前記マスキングテープによってとり囲まれる前記バッキングプレート上の領域に前記接合剤を配置する工程と、
複数の小片に分割された前記ターゲット材を、前記接合剤を介して前記バッキングプレートに接合し積層して積層体とする工程と、
前記積層体の温度を低下させている途中で、前記積層体から前記マスキングテープを除去する工程と、を備えるスパッタリングターゲットを製造する方法。
【請求項6】
複数の小片に分割された前記ターゲット材の全体は、1000mm以上の長尺の矩形を有し、
前記マスキングテープを除去する工程では、複数の小片に分割された前記ターゲット材の間隙と、前記ターゲット材上の前記間隙周辺領域と、前記ターゲット材上の前記外周縁周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記間隙周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記外周縁周辺領域と、において、前記接合剤が存在しない状態とする、請求項5に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法。
【請求項7】
前記マスキングテープを配置させる工程では、前記ターゲット材上の前記間隙周辺領域及び前記外周縁周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記間隙周辺領域及び前記外周縁周辺領域とを、複数の小片に分割された小片の各前記ターゲット材の外周縁から小片の各前記ターゲット材の中心側へ向って、前記スパッタリングターゲットの長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の長さの位置に至るまで広げる、
請求項5又は請求項6に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法。
【請求項8】
前記接合剤を配置する工程では、前記マスキングテープによってとり囲まれる前記バッキングプレート上の領域において、前記積層体の積層方向における厚さを確保するための厚さ確保部材を用いずに、前記マスキングテープの厚さにより、前記接合剤の厚みを所定の厚さに確保する、請求項5〜請求項7のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを製造する方法。
【請求項9】
前記接合剤を配置する工程では、前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚みが、0.1mm以上0.5mm以下となるように、接合剤を配置する、請求項5〜請求項8のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜形成技術としてスパッタリング法が知られている(例えば、特許文献1参照)。スパッタリング法では、ターゲット(材料)表面に荷電粒子を衝突させ、叩き出されたターゲット材質を基板等の表面に付着させ薄膜を形成させる。
また、スパッタリングターゲットとしては、薄膜を形成しようとする材料からなるターゲット材を、導電性・熱伝導性に優れた材質からなるバッキングプレートに接合した構成のものが知られている(例えば、特許文献2参照)。スパッタリングターゲットとバッキングプレートとの接合には、熱伝導が良好な低融点ハンダによるメタルボンディングが用いられる。低融点ハンダとしては、例えばIn(インジウム)やIn合金等の金属により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−209476号公報
【特許文献2】特許第5686017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ時のパワーや装置のマグネット形状によっては、プラズマがターゲット側面や、分割ターゲットの場合には分割ターゲットの連結部にも回り込み、バッキングプレートにターゲットを接合しているIn材を溶かし、異常放電の原因や光学特性不良となる。これらの対策としてプラズマが回り込みIn材が溶けてもターゲット外周まで漏れ出さないターゲットの設計が必要となる。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、プラズマが回り込みIn材が溶けてもターゲット外周まで漏れ出さないスパッタリングターゲット、及び、当該スパッタリングターゲットを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、複数の小片(例えば、後述の小片20)に分割されたターゲット材(例えば、後述のターゲット材2)を備え、前記ターゲット材がバッキングプレート(例えば、後述のバッキングプレート1)にインジウムを含む接合剤(例えば、後述の接合剤3)により接合され積層された積層体により構成されるスパッタリングターゲット(例えば、後述のスパッタリングターゲット100)であって、分割された前記ターゲット材の複数の小片の外周縁から前記小片の中心側の所定の位置に前記小片を前記バッキングプレートに接合する前記接合剤の外周縁が位置していることにより、前記小片と前記バッキングプレートとの間に、前記接合剤が存在しない空間が形成されているスパッタリングターゲットを提供する。
【0007】
前記空間は、前記小片の外周縁から前記小片の中心側へ向って、前記スパッタリングターゲットの長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の長さの位置に至るまで広がっていてもよい。
【0008】
前記接合剤は、前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚さを確保するための厚さ確保部材が前記接合剤には存在しない状態で、前記ターゲット材と前記バッキングプレートの間に配置されていてもよい。また、前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚みは、0.1mm以上0.5mm以下であってもよい。
【0009】
また、本発明は、ターゲット材(例えば、後述のターゲット材2)をバッキングプレート(例えば、後述のバッキングプレート1)にインジウムを含む接合剤(例えば、後述の接合剤3)により接合することにより積層させてスパッタリングターゲットを製造する方法であって、複数の小片(例えば、後述の小片20)に分割された前記ターゲット材の間隙(例えば、後述の間隙22)を含む前記バッキングプレートに対向する前記ターゲット材上の間隙周辺領域(例えば、後述の間隙周辺領域24)と、前記ターゲット材上の間隙周辺領域に対向する前記バッキングプレート上の間隙周辺領域(例えば、後述の間隙周辺領域12)と、複数の小片に分割された前記ターゲット材の全体の外周縁を含む前記バッキングプレートに対向する前記ターゲット材上の外周縁周辺領域(例えば、後述の外周縁周辺領域25)と、前記ターゲット材上の外周縁周辺領域に対向する前記バッキングプレート上の外周縁周辺領域(例えば、後述の外周縁周辺領域15)とに、マスキングテープ(例えば、後述のマスキングテープ101、102)を配置させる工程と、前記マスキングテープによってとり囲まれる前記バッキングプレート上の領域に前記接合剤(例えば、後述の接合剤3)を配置する工程と、複数の小片に分割された前記ターゲット材を、前記接合剤を介して前記バッキングプレートに接合し積層して積層体とする工程と、前記積層体の温度を低下させている途中で、前記積層体から前記マスキングテープを除去する工程と、を備えるスパッタリングターゲットを製造する方法を提供する。
【0010】
複数の小片に分割された前記ターゲット材の全体は、1000mm以上の長尺の矩形を有し、前記マスキングテープを除去する工程では、複数の小片に分割された前記ターゲット材の間隙と、前記ターゲット材上の前記間隙周辺領域と、前記ターゲット材上の前記外周縁周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記間隙周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記外周縁周辺領域と、において、前記接合剤が存在しない状態としてもよい。
【0011】
前記マスキングテープを配置させる工程では、前記ターゲット材上の前記間隙周辺領域及び前記外周縁周辺領域と、前記バッキングプレート上の前記間隙周辺領域及び前記外周縁周辺領域とを、複数の小片に分割された小片の各前記ターゲット材の外周縁から小片の各前記ターゲット材の中心側へ向って、前記スパッタリングターゲットの長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の長さの位置に至るまで広げてもよい。
【0012】
前記接合剤を配置する工程では、前記マスキングテープによってとり囲まれる前記バッキングプレート上の領域において、前記積層体の積層方向における厚さを確保するための厚さ確保部材を用いずに、前記マスキングテープの厚さにより、前記接合剤の厚みを所定の厚さに確保してもよい。
【0013】
前記接合剤を配置する工程では、前記積層体の積層方向における前記接合剤の厚みが、0.1mm以上0.5mm以下となるように、接合剤を配置してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラズマが回り込みIn材が溶けてもターゲット外周まで漏れ出さないスパッタリングターゲットを製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るマスキングテープを配置させる工程を示す概略平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る接合剤を配置する工程を示す概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る積層体とする工程を行い始めた状態を示す側方概略断面図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る積層体とする工程を示す概略断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る積層体とする工程において、接合剤の表面酸化膜分と余分な接合剤とが流出した状態を示す側方概略断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る積層体からマスキングテープを除去する工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態について詳しく説明する。
本実施形態によるスパッタリングターゲットを製造する方法により製造されるスパッタリングターゲット100は、インジウムを含む接合剤3によりターゲット材2がバッキングプレート1に接合されることにより積層されて積層体が構成されている。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るマスキングテープを配置させる工程を示す概略平面図である。
図1に示すように、ターゲット材2は、複数の小片20に分割されており、このように複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体は、1000mm以上、より具体的には1900mm以上の長尺の矩形を有している。ターゲット材2の全体の幅は、127mm程度である。ターゲット材2は、例えば、脆弱材料であるITO(酸化インジウム)により構成される金属、Si、酸化物系ターゲットである。
バッキングプレート1は、ターゲット材2の全体よりも縦及び横の長さが長く面積が広い長尺の矩形を有している。バッキングプレート1は、例えば、無酸素銅製バッキングプレート1により構成されている。
接合剤3(図2等参照)は、In(インジウム)や、In合金等のIn系の一般的な組成の金属により構成される低融点ハンダにより構成される。マスキングテープ101、201は、例えば、主にテフロン(登録商標)材により構成され、一部カプトン材が使用されてもよい。バッキングプレート1の長手方向(図1における左右方向)に延びるマスキングテープ101、201の厚さ(図4B等における上下方向の厚さ)は、バッキングプレート1の幅方向(図1における上下方向)に延びるマスキングテープ101、201の厚さ(図4A等における上下方向の厚さ)よりも薄く構成されている。
図2は、本発明の一実施形態に係る接合剤を配置する工程を示す概略断面図である。
【0018】
上記ターゲット材2、バッキングプレート1、及び、接合剤3は、図5に示すように、バッキングプレート1に接合剤3を介してターゲット材2が積層されている。
図5は、本発明の一実施形態に係る積層体からマスキングテープを除去する工程を示す概略断面図である。
分割されたターゲット材2の複数の小片20同士には、図5に示すようにスパッタリングターゲットの製造工程において間隙22が形成されるが、最終的に製造されるスパッタリングターゲットにおいては、後述のように、バッキングプレート1が収縮することにより、隣接する小片20同士は、互いに当接し合うことになる。また、ターゲット材2の小片20をそれぞれバッキングプレート1に接合している接合剤3は、接合剤3間に間隙32が形成された状態とされている。従って、スパッタリングターゲットの製造工程において生ずるターゲット材2の小片20間隙22、及び、接合剤3の間隙32には、接合剤3が存在していないため、接合剤3に含まれるInも存在しない。
【0019】
接合剤3の間隙32は、ターゲット材2の小片20の間隙22よりも広い。具体的には、図5に示すように、複数の小片20に分割されたターゲット材2の間隙22に対向するバッキングプレート1上の領域のみならず、この領域を含む間隙周辺領域12、24(間隙32と同一の領域)に広がっている。
【0020】
同様に、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁に対向するバッキングプレート1上の位置よりも外側の領域23と内側の領域13との両方を含む外周縁周辺領域15、25にも、接合剤3が存在していない。このため、この領域においては、接合剤3に含まれるInも存在しない。
【0021】
間隙周辺領域12、24及び外周縁周辺領域15、25は、複数の小片20の外周縁から、小片20の図5における各中心側へ向かって、スパッタリングターゲット100の長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の長さの位置まで広がっている。従って、図5に示すように、ターゲット材2の小片20の外周縁は、隣接する小片20同士が互いに近接する方向へ突出するオーバーハング形状を有している。
【0022】
積層体の積層方向である図5の上下方向における接合剤3の厚みは、0.1mm以上0.5mm以下である。接合剤3においては、積層体の積層方向における厚さを確保するための厚さ確保部材、例えば、ワイヤ等は設けられていないため存在しておらず、このような厚さ確保部材が用いられずに、前述のような値の上下方向における接合剤3の厚みが確保されている。
【0023】
次に、上記スパッタリングターゲットを製造する方法について説明する。
スパッタリングターゲットを製造する方法においては、先ず、マスキングテープ101、201を配置させる工程を行う。マスキングテープ101、201を配置させる工程では、バッキングプレート1に対向する側であって複数の小片20の周縁部に対向する部分にマスキングテープ201を配置させる。
【0024】
具体的には、ターゲット材2において、マスキングテープ201は、複数の小片20を連結するように配置される。即ち、ターゲット材2において、マスキングテープ201は、複数の小片20に分割されたターゲット材2の間隙22を含むバッキングプレート1に対向するターゲット材2上の間隙22の周辺の領域(間隙周辺領域24)と、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁を含むバッキングプレート1に対向するターゲット材2上の外周縁の周辺の領域(外周縁周辺領域25)と、に配置される。
【0025】
また、バッキングプレート1において、マスキングテープ101は、複数の小片20の間隙22に対向するバッキングプレート1上の領域を含むバッキングプレート1上の間隙周辺領域12と、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁に対向するバッキングプレート1上の領域を含むバッキングプレート1上の外周縁周辺領域15と、に配置される。以上のマスキングテープ101、201を配置させる工程により、図1に示すように、マスキングテープ101、201が配置される。
【0026】
次に、接合剤3を配置する工程を行う。接合剤3を配置する工程では、バッキングプレート1上においてマスキングテープ101によってとり囲まれた領域に接合剤3を流し込み、マスキングテープ101上にも配置させる。マスキングテープ101は、バッキングプレート1及びターゲット材2が積層されることにより構成される積層体の積層方向(図2における上下方向)に所定の厚さを有する。これにより、図2図3図4A図4Bに示すように、バッキングプレート1上においてマスキングテープ101によってとり囲まれた領域、及び、マスキングテープ101の上面にわたって、接合剤3も同方向において、マスキングテープ101の厚さよりも厚い所定の厚さで配置された状態となる。
図3は、積層体とする工程を行い始めた状態を示す側方概略断面図である。図4Aは、積層体とする工程を示す概略断面図である。図4Bは、積層体とする工程において、接合剤3の表面酸化膜分301と余分な接合剤3とが流出した状態を示す側方概略断面図である。
【0027】
次に、積層体とする工程を行う。積層体とする工程では、複数の小片20に分割されたターゲット材2を、接合剤3を介してバッキングプレート1に接合し積層する。具体的には、図3に示すように、接合剤3が配置された状態のバッキングプレート1の上側から、図1に示すターゲット材2を接合する。この際、先ず、図3に示す右側のマスキングテープ101とマスキングテープ201とで、接合剤3を挟む。次に、左側のマスキングテープ101とマスキングテープ201とを接近させてゆき、左側のマスキングテープ101とマスキングテープ201とで接合剤3を挟む。これにより、図4Bに示すように、接合剤3の表面酸化膜分301と余分な接合剤3とが流出する。また、ターゲット材2に配置されたマスキングテープ201と、バッキングプレート1に配置されたマスキングテープ101とが一致した位置関係で重なり合う位置関係とされて、図4A図4Bに示すように、バッキングプレート1へのターゲット材2の接合による積層が行われて積層体が構成される。積層体における、バッキングプレート1の長手方向(図1における左右方向)に延びるマスキングテープ101と、バッキングプレート1の長手方向(図1における左右方向)に延びるマスキングテープ201との間には、接合剤3が存在する間隙302が形成されている。一方、積層体における、バッキングプレート1の幅方向(図1における上下方向)に延びるマスキングテープ101と、バッキングプレート1の幅方向(図1における上下方向)に延びるマスキングテープ201との間には、接合剤3が存在する間隙302は形成されておらず、マスキングテープ101とマスキングテープ201とは、互いに当接し合っている。
【0028】
次に、マスキングテープ101、201を除去する工程を行う、マスキングテープ101、201を除去する工程では、バッキングプレート1及びターゲット材2に配置されたマスキングテープ101、201を除去する。マスキングテープ101、201の除去は、接合剤3によるバッキングプレート1へのターゲット材2の接合の際に、180℃程度に加熱された積層体の温度を、接合した後に低下させてゆく途中の段階で温度が140℃程度のときに行う。温度が低下し過ぎて、例えば100℃程度となると、接合剤3が固化し、また、バッキングプレート1が収縮してしまい、マスキングテープ101、201の除去が困難になるためである。
【0029】
マスキングテープ101、201が引き抜かれて除去されると、図5に示すように、複数の小片20の間隙22と、隣接する接合剤3の間隙32とには、接合剤3が存在していない状態となり、接合剤3を構成するInは存在しない。また、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁から接合剤3の端縁までの間の部分にも、接合剤3が存在していない状態となり、接合剤3を構成するInは存在しない。即ち、マスキングテープ101、201が配置されていた、ターゲット材2の間隙周辺領域24、外周縁周辺領域25と、バッキングプレート1上の間隙周辺領域12、外周縁周辺領域15とには、接合剤3が残っておらず存在しない空間35がそれぞれ形成されている。空間35は、分割されたターゲット材2の複数の小片20の外周縁から小片20の中心側の所定の位置に小片20をバッキングプレート1に接合する接合剤3の外周縁が位置していることにより、小片20とバッキングプレート1との間に形成されている。
【0030】
マスキングテープ101、201を除去した後に、温度が低下して100℃程度となると、バッキングプレート1の収縮により、複数の小片20に分割されたターゲット材2の間隙22が小さくなり、常温になると、ターゲット材2の各小片20同士は、図5における横方向において互いに所定の間隙22で離間した状態となる。以上の工程を経て、スパッタリングターゲットが製造される。
【0031】
以上説明した本実施形態のスパッタリングターゲット、スパッタリングターゲットを製造する方法によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態においては、複数の小片20に分割されたターゲット材2の間隙22を含むバッキングプレート1に対向するターゲット材2上の間隙周辺領域24と、ターゲット材2の間隙周辺領域24に対向するバッキングプレート1上の間隙周辺領域12と、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁を含むバッキングプレート1に対向するターゲット材2の外周縁周辺領域25と、ターゲット材2上の外周縁周辺領域に対向するバッキングプレート1上の外周縁周辺領域15とに、マスキングテープ101、201を配置させる工程と、を有する。
【0032】
これにより、ターゲット材2の間隙周辺領域24と、ターゲット材2の外周縁周辺領域25と、バッキングプレート1上の間隙周辺領域12と、バッキングプレート1上の外周縁周辺領域15とにマスキングテープ101を配置させるため、マスキングテープ101、201が配置されていた部分には、接合剤3が存在せず、Inは存在しない。このため、プラズマが回り込み接合剤3が溶けてもターゲット材2の小片20の外周までは漏れ出さないスパッタリングターゲットを製造することができる。この結果、ターゲット材2の小片20間と、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁とにおいて、Inに起因するアーキングの発生が抑えられたスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【0033】
また、複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体は、1000mm以上の長尺の矩形を有している。そしてマスキングテープ101、201を除去する工程では、複数の小片20に分割されたターゲット材2の間隙22と、ターゲット材2の間隙周辺領域24と、ターゲット材2の外周縁周辺領域25と、バッキングプレート1上の間隙周辺領域12と、バッキングプレート1上の外周縁周辺領域15と、において、接合剤3が存在しない状態とする。
【0034】
ターゲット材2の全体が1000mm以上の長尺の矩形を有している場合に、バッキングプレートの外周に枠を設置してIn溜まりを形成させた状態で行うボンディングとしては、ターゲット奥側を支点にして手前に倒す方法が採られる場合が知られている。しかし、この場合には、手前側にエッジボイドが発生しやすい。
【0035】
これに対して、上記本実施形態では、マスキングテープ101により取囲まれる領域に接合剤3が配置されるため、バッキングプレート1の外周における枠は不要となる。また、バッキングプレート1に配置されたマスキングテープ101と、ターゲット材2に配置されたマスキングテープ201と、を重ね合わせるようにして、バッキングプレート1とターゲット材2とを接合することができるため、接合剤3の表面酸化膜分301と余分な接合剤3を同時に流出させることが可能であるため、マスキングテープ101により取囲まれる領域には、酸化していない綺麗な接合剤3しか残らず、且つ、接合剤3が存在する間隙302が形成されるため、Inを含む接合剤3の収縮が発生しても、接合剤3におけるエッジボイドの発生を抑えることが可能となる。
【0036】
また、マスキングテープ101、201を配置させる工程では、ターゲット材2の間隙周辺領域24及び外周縁周辺領域25と、バッキングプレート1上の間隙周辺領域12、及び外周縁周辺領域15とを、小片20の各ターゲット材2の外周縁(複数の小片20に分割されたターゲット材2の全体の外周縁、及び、間隙22を形成している小片20の外周縁)から小片20の中心側へ向かって、スパッタリングターゲット100の長手方向に対する幅方向の長さの2%以上4%以下の距離Lの長さの位置に至るまでとする。
【0037】
これにより、接合剤3は、積層体の積層方向から見て、小片20の中央寄りに配置され、小片20の各ターゲット材2によって十分に隠された位置関係とされる。このため、Inに起因するアーキングの発生が確実に抑えられたスパッタリングターゲットを製造することが可能となる。
【0038】
また、接合剤3を配置する工程では、積層体の積層方向(図2における上下方向)における接合剤3の厚みが、0.1mm以上0.5mm以下となるように、接合剤3を配置する。これにより、十分な接合剤3により、ターゲット材2のバッキングプレート1への接合を行うことが可能となる。
【0039】
また、接合剤3を配置する工程では、マスキングテープ101によってとり囲まれるバッキングプレート1上の領域において、積層体の積層方向における厚さを確保するための厚さ確保部材としてのワイヤ等を用いずに、マスキングテープ101の厚さにより、接合剤3の厚みを所定の厚さに確保する。
【0040】
従来よりIn層の厚さ確保のためにワイヤを接合剤3内に配置させることが行われているが、ワイヤの周辺にはボイドが発生しやすい。しかし、上述の実施形態では、ワイヤは用いられないため、ボイドの発生を抑えることが可能となる。
【0041】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、本実施形態におけるターゲット材やバッキングプレート1やマスキングテープや接合剤等の材質や形状等の構成は、本実施形態におけるターゲット材2やバッキングプレート1やマスキングテープ101、201や接合剤3等の材質や形状等の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0042】
1…バッキングプレート
2…ターゲット材
3…接合剤
12…間隙周辺領域
15…外周縁周辺領域
20…小片
22…間隙
24…間隙周辺領域
25…外周縁周辺領域
100…スパッタリングターゲット
101、102…マスキングテープ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5