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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-105045(P2019-105045A)
(43)【公開日】2019年6月27日
(54)【発明の名称】排水処理システム
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/16 20060101AFI20190607BHJP
【FI】
   E03F5/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-236815(P2017-236815)
(22)【出願日】2017年12月11日
(11)【特許番号】特許第6322330号(P6322330)
(45)【特許公報発行日】2018年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】591082328
【氏名又は名称】橋本産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501482732
【氏名又は名称】下田エコテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500510261
【氏名又は名称】JR東日本ビルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏文
(72)【発明者】
【氏名】横堀 洋一
(72)【発明者】
【氏名】仲川 ゆり
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DB08
(57)【要約】
【課題】排水を自然流下できないところでも大がかりな設備を要せず、排水を円滑に流すとともに清掃の容易化を図る。
【解決手段】排水処理システム1は、油脂類を排水から分離する分離槽32、及び分離槽内の処理水を槽外に案内して処理水排出口33aから下方へ排出する処理水排出管33を備え、上方に位置するシンク槽21からの排水を分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、退避位置との間を進退可能な阻集器3と、阻集器が受入れ位置にある時に処理水排出口33aの下方にギャップを隔てて対向配置され、処理水排出口から排出された排水を受入れる受入れ口41aを有した受水部41、及び受水部と外部排水配管5との間に設置され、受水部が受入れた排水を外部排水配管5に送出する排水ポンプ42を備えるポンプユニット4と、を具備し、ギャップは、阻集器3が受入れ位置と退避位置との間を進退する際の処理水排出口と受入れ口との干渉を回避させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に含まれる分離対象物を前記排水から分離する分離槽、及び前記分離槽内の前記排水を槽外に案内して排水口から下方へ排出する排水部を備え、上方に位置するシンク槽からの排水を前記分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、該受入れ位置から側方へ退避した退避位置との間を進退可能な阻集器と、
前記阻集器が前記受入れ位置にある時に前記排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記排水口から排出された前記排水を受入れる受入れ口を有した受水部、及び前記受水部と外部排水配管との間に設置され、前記受水部が受入れた前記排水を前記外部排水配管に送出する排水ポンプを備えるポンプユニットと、を具備し、
前記ギャップは、前記阻集器が前記受入れ位置と前記退避位置との間を進退する際の前記排水口と前記受入れ口との干渉を回避させる構成を備えていることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記シンク槽からの前記排水をシンク排水口から排出するシンク排水部を備え、
前記阻集器は、
前記受入れ位置において、前記シンク排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記シンク排水口が排出した前記排水を受入れて前記分離槽に導く導入部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記ポンプユニットは、
前記受水部に貯留された前記排水の量が規定量以上の場合に第1状態になり、規定量未満の場合に第2状態になる検出部と、
前記検出部が前記第1状態の場合に前記排水ポンプを動作させ、前記検出部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わったことに伴って前記排水ポンプの動作を停止させる制御部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記検出部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わった場合、前記第2状態に切り替わってから規定時間が経過するまでは前記排水ポンプの動作を継続させることを特徴とする請求項3に記載の排水処理システム。
【請求項5】
前記排水ポンプは、定格動作時において、前記排水部から排出可能な最大水量以上の水量を前記外部排水配管に送出可能であり、
前記受水部の容積は、前記排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って前記最大水量の前記排水を受入れた場合であっても、越流を防止可能な容積であることを特徴とする請求項3又は4に記載の排水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レストランの厨房や家庭のキッチンに設けられたシンクから排出される排水には多量の分離対象物が含まれており、そのまま下水処理設備に排出すると種々の不都合が生じる。例えば、厨房においてシンクから排出される排水には、食物残渣、食器や調理器具から洗い流された油脂類が含まれており、これらがそのまま下水処理設備に向けて排出されると、食物残渣が排水管内に堆積・固着して、あるいは、油脂類が排水配管の内壁面に付着して排水の流れを阻害する恐れがある。また、油脂類によって水質を悪化させる恐れもある。
このため、シンクからの排水経路中にグリストラップなどの阻集器を設置し、分離対象物の含有量を低減することが行われている。例えば、特許文献1(特許第4875438号公報)には、シンク槽が排出した排水を案内して排水口から排出する器具排水管と、シンク槽下方の受入れ位置で器具排水管が排出した排水を受け入れるとともに、受入れ位置から側方へ移動可能な阻集器と、油脂類を分離した排水(処理水)を床面に設けた床排出口に案内する可撓性を備えた移送管とを備える排水処理システムが記載されている。
【0003】
この排水処理システムでは器具排水管が阻集器に固定されていないので、移送管の長さに応じた範囲内で阻集器を側方へ移動させることができる。したがって、阻集器の清掃作業やメンテナンス作業を行う場合には、阻集器を側方へ移動させることで作業の容易化が図れる。阻集器を移動可能にすることで、これまで清掃作業やメンテナンス作業を行うことが困難であったシンク下スペースなどに阻集器を設置でき、厨房スペースなどの有効活用も可能になる。
また、シンクなどの排水器具から排水マスあるいは排水立管までの排水管に対して、排水が自然流下するための傾斜を付与できない場合がある。この場合、排水器具が備える排水管に排水ポンプを接続し、排水器具からの排水を排水マスあるいは排水立管などに圧送することが考えられる。特許文献2(特許第5872340号公報)に記載された排水ポンプは、シンク下などに設置してシンク排水管に直接接続することができるため、排水ピットと水中ポンプを使用する場合に比べて容易に施工でき、スペース・コストを大幅に削減することができる。
【0004】
一方、阻集器から排水マスあるいは排水立管まで自然流下するための傾斜を設けることができないレストランの厨房や家庭のキッチンなどで阻集器の清掃作業を容易にするためには、特許文献1に記載される阻集器の排出側に特許文献2に記載される排水ポンプを設置することで、容易に施工可能であってスペース・コストを大幅に削減可能な排水処理システムを構成できる。
ただし、特許文献1に記載される排水処理システムでは阻集器と床排水口とが可撓性のある移送管で接続されており、阻集器の移動範囲を拡げるためにはこの移送管を長くする必要がある。特許文献2に記載される排水ポンプを併設する場合も同様に、阻集器とポンプ受水口(流入口)とを接続する移送管を長くする必要がある。
移送管を長くする場合、阻集器からポンプ受水口まで排水を円滑に流すためには移送管全体を下り傾斜させる必要があるが、阻集器の移動距離を大きくするため移送管を長くすると移送管全体を下り傾斜させることが困難になり、移送管の途中にエア溜まりができて排水の流れを阻害してしまう恐れがある。また、移送管の清掃が困難になるなどの不都合も生じ得る。
この排水処理システムでは、以上の点に改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4875438号公報
【特許文献2】特許第5872340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、排水を自然流下させるための傾斜がとれないところでも、排水を円滑に流すとともに清掃が容易で厨房スペースなどを有効活用可能な排水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る排水処理システムは、排水に含まれる分離対象物を前記排水から分離する分離槽、及び前記分離槽内の前記排水を槽外に案内して排水口から下方へ排出する排水部を備え、上方に位置するシンク槽からの排水を前記分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、該受入れ位置から側方へ退避した退避位置との間を進退可能な阻集器と、前記阻集器が前記受入れ位置にある時に前記排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記排水口から排出された前記排水を受入れる受入れ口を有した受水部、及び前記受水部と外部排水配管との間に設置され、前記受水部が受入れた前記排水を前記外部排水配管に送出する排水ポンプを備えるポンプユニットと、を具備し、前記ギャップは、前記阻集器が前記受入れ位置と前記退避位置との間を進退する際の前記排水口と前記受入れ口との干渉を回避させる構成を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、排水を自然流下させるための傾斜がとれないところでも、排水を円滑に流すとともに清掃の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る排水処理システムの全体構成を説明する図である。(b)は、受入れ位置に阻集器が位置した時の排水部と受水部、及びシンク排水管と導入開口部の平面方向の位置関係を説明する図である。
図2】(a)は、阻集器が備える分離槽、及び処理水排出管を説明する平面図である。(b)は、(a)のX−X断面図であって、排水から油脂類を分離する状態を説明する図である。
図3】(a)は、排水ポンプの平面図である。(b)は、(a)にY−Yで示す位置で排水ポンプの下側半分を切り欠いた部分断面図である。
図4図3(b)のZ−Z断面図である。
図5】ポンプケーシングの構成例を示す斜視図である。
図6】制御基板の構成例を示すブロック図である。
図7】(a)〜(d)は、制御回路による排水ポンプの運転制御を説明する図である。
図8】(a)は、排水ポンプの設置後、受入れ位置の阻集器から最初の処理水が排出された時の様子を説明する図である。(b)は、空圧スイッチがオン状態に切り替わった時の様子を説明する図である。(c)は、排水ポンプの定格動作時の様子を説明する図である。
図9】(a)は、空圧スイッチがオフ状態に切り替わった時の様子を説明する図である。(b)は、排水ポンプの動作停止状態を説明する図である。(c)は、阻集器から処理水が再度排出された時の様子を説明する図である。
図10】(a)は、阻集器が受入れ位置から前方に移動を開始した時の様子を説明する図である。(b)は、(a)の状態における排水部と受水部、及びシンク排水管と導入開口部の平面方向の位置関係を説明する図である。
図11】退避位置に阻集器が位置した時の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る排水処理システム1の全体構成を説明する図である。図1(b)は、受入れ位置に阻集器3が位置した時の排水部と受水部、及びシンク2排水管と導入開口部31の平面方向の位置関係を説明する図である。
<排水処理システム1の概略>
本実施形態に係る排水処理システム1は、シンク槽21、及びシンク排水管22を備えるシンク2と、シンク排水管22(シンク排水口22a)が排出した排水を導入開口部31(導入部)から受け入れて食物残渣や油脂類(分離対象物)を分離する分離槽32、及び分離槽32内の処理水(油脂類分離後の排水)を槽外に案内して処理水排出口33a(排水口)から下方へ排出する処理水排出管33(排水部)を備え、シンク槽21の下方に位置し、シンク排水管22からの排水を分離槽32内に受入れ可能な受入れ位置と、受入れ位置から前方、左方、あるいは右方へ退避した退避位置(図11参照)との間を進退可能な阻集器3と、阻集器3が受入れ位置にある時に処理水排出口33aの下方にギャップGP2を隔てて対向配置され、処理水排出口33aから排出された処理水を受入れる受入れ口41aを有した受水部41、及び受水部41と外部排水配管5との間に設置され、受水部41が受入れた処理水を外部排水配管5に送出する排水ポンプ42を備えるポンプユニット4と、を具備する。
【0011】
以下、排水処理システム1が備える各部について具体的に説明する。
<シンク2について>
最初にシンク2について説明する。本実施形態において「シンク」とは、厨房や台所に備え付けられた流し台に限らず、化粧室の洗面台、工場の手洗い場、下水溝、及び汚水溜めを含む。例えば、厨房に設置されたシンクの排水は、料理に使用された食器や調理器具から洗い流された油脂類を含む場合がある。同様に、工場の手洗い場に設置されたシンクの排水は、手洗い時に洗い流された油脂類を含む場合がある。
本実施形態では、油脂類を含んだ排水を処理する排水処理システム1を例に挙げる。したがって、この排水処理システム1では、シンク2が排出した排水を阻集器3に導入して油脂類を分離し、油脂類が分離された処理水を排水ポンプ42で送出する。
【0012】
シンク2は、シンク槽21と、シンク槽21を挿通する開口を設け、開口に挿通したシンク槽21の外周部分を支持する長方形枠形状の天板23と、天板23の四隅のそれぞれから下方に向けて取り付けた4本の脚部24と、シンク槽21の底面に取り付けたシンク排水管22(シンク排水部)とを備える。
天板23及び脚部24でシンク槽21を支持することにより、シンク槽21の下方に阻集器3を収容可能な空間を形成している。また、シンク槽21の底面に設けた槽排水口21aには菊割れ蓋21bを取り付けており、臭気の拡散を抑制している。
シンク排水管22は、槽排水口21aに接続した有底円筒形状の流入部22bと、一端が流入部22bに連通するとともに他端がシンク排水口22aとなる円筒形状の案内部22cとを備える。案内部22cは、排水が淀みなく流れるように下り傾斜しており、案内部22cの他端は、シンク排水口22aが下向きになるように屈曲している。シンク排水管22は、流入部22bに流入したシンク槽21からの排水を案内部22cで導き、シンク排水口22aから下方に排出する。
シンク排水口22aは、阻集器3が受入れ位置にある時、導入開口部31の上方にギャップGP1を隔てて対向配置される。したがって、シンク排水口22aが排出した排水は導入開口部31に向かって落下し、導入開口部31から阻集器3に導入される。
なお、例示したシンク2は1つのシンク槽21を備えているが、複数のシンク槽21を備えてもよい。複数のシンク槽21を備える場合、各シンク槽21が排出した排水を個別に設けたシンク排水管22を用いて導入開口部31へ案内してもよい。また、各シンク槽21が排出した排水を個別に案内した後に案内部22cの途中で合流させ、共通のシンク排水口22aから排出してもよい。
【0013】
<阻集器3について>
次に、阻集器3について説明する。図2(a)は、阻集器3が備える分離槽32、及び処理水排出管33を説明する平面図である。図2(b)は、図2(a)のX−X断面図であって、排水から油脂類FOを分離する状態を説明する図である。
阻集器3は、導入開口部31が設けられた蓋部材34、導入開口部31を通じて導入された排水から油脂類FOを分離する分離槽32、分離槽32内の処理水WWを排出する処理水排出管33、及び分離槽32の下面に設けたキャスタ35(車輪)を備える。
【0014】
図2(a)、(b)に示すように、蓋部材34は、分離槽32の上面開口を上方から覆うことで分離槽32からの臭気の拡散を抑制したり、排水の蒸発を抑制したりする金属製の板部材である。蓋部材34は、平面視で略正方形状をした蓋本体34aと蓋本体34aの各辺から下方に延びる側縁部34bとを備える。蓋本体34aと側縁部34bとを備える蓋部材34を分離槽32の上面に覆い被せることで、分離槽32からの臭気の拡散や排水の蒸発を抑制している。
蓋部材34の上面には導入開口部31を設けている。本実施形態では、図1(a)に示すように、導入開口部31を蓋本体34aにおける右前方に設けている。導入開口部31には菊割れ蓋31aを取り付けており、分離槽32からの臭気の拡散を抑制している。
【0015】
図2(a)、(b)に示すように、分離槽32は、上面が開放した有底中空箱形状の槽本体32aと、槽本体32aの内部空間を仕切る仕切り板32bと、槽本体32aの内部空間に配置されるダストボックス32cと、槽本体32aの前面に取り付けられた把手32dとを備える。
槽本体32aは、例えばステンレス鋼によって作製される。槽本体32aにおける右後面であって高さ方向の中間よりも上方には、円筒形状の取付筒部32eが槽本体32aと一体に設けられている。この取付筒部32eは処理水排出管33を取り付けるために設けられており、槽本体32aの内外を連通している。
仕切り板32bは、例えばステンレス鋼板で作製され、槽本体32aの内部空間を前後方向の略中間と左右方向の略中間のそれぞれで仕切る。仕切り板32bにより槽本体32aの内部空間は4分割される。図2(b)に示すように、仕切り板32bの上縁は槽本体32aの上面と略同じ高さであり、仕切り板32bの下縁は槽本体32aの底面よりも上方の高さである。したがって、図2(a)に示すように、槽本体32aの排水は仕切り板32bよりも下方の空間を符号CUの矢印の方向に流れる。排水に含まれる油脂類FOは、水よりも比重が軽いことから、槽本体32aの内部空間において排水から分離して浮上する。図2(a)には、分離された油脂類FOが処理水WWの上に蓄積されている状態が描かれている。油脂類FOが分離されることで、処理水WWにおける油脂類FOの含有量が低減する。
【0016】
ダストボックス32cは、排水とともに排出された食物残渣などの固形物SOを集めるための部材であり、例えば上面が開放した有底箱形状である。ダストボックス32cの上面前縁及び上面後縁は下向きに屈曲され、フック32fが形成されている。このダストボックス32cは、例えばパンチングメタルなどの通水性を有した金属板によって作製される。本実施形態において、ダストボックス32cは導入開口部31の真下に配置し、排水ととともに排出された固形物SOを捕集する。したがって、仕切り板32bで区画される槽本体32aの右前方の空間の上端付近には、ダストボックス32cのフック32fを掛ける受け金具32gが取り付けられている。
把手32dは、阻集器3を前後方向に移動させる場合に、作業者によって把持される丸棒状部材である。
【0017】
図2(a)、(b)に示すように、処理水排出管33は、円筒管によって作製され、一部分が槽本体32aの内部空間に位置し、残りの部分が槽本体32aの外部に位置する。処理水排出管33における槽内に配置される部分は、処理水流入口33bが下向きとなるように屈曲されている。同様に、処理水排出管33における槽外の部分は、処理水排出口33aが下向きとなるように屈曲されている。処理水排出管33には、例えば塩化ビニル管などの樹脂管が用いられる。本実施形態では、処理水排出管33を、槽内に配置される内側排出管33cと槽外に配置される外側排出管33dとに分けて作製している。そして、内側排出管33cにおける処理水流入口33bとは反対側の部分、及び外側排出管33dにおける処理水排出口33aとは反対側の部分を、それぞれ槽本体32aの取付筒部32eにネジ込みあるいは圧入して水密状態としている。
この処理水排出管33では、排水から油脂類FOが除去された処理水WWを処理水流入口33bから取り込み、槽外に案内して処理水排出口33aから下方へ排出する。
【0018】
図2(b)に示すように、キャスタ35は、槽本体32aの下面に取り付けられ、阻集器3を移動可能に支持する。本実施形態において、キャスタ35は、例えば槽本体32aの下面における左前部、右前部、左後部、及び右後部の4箇所に取り付ける。キャスタ35を取り付けることで、人力であっても阻集器3を容易に移動できる。
【0019】
<ポンプユニット4について>
次に、ポンプユニット4について説明する。図1(a)、(b)に示すように、ポンプユニット4は、処理水排出口33aから排出された処理水を受入れる受水部41と、受水部41が受入れた処理水を外部排水配管5に送出する排水ポンプ42と、排水ポンプ42の動作を制御する制御盤43とを備える。
受水部41は、上向きの受入れ口41aを有する有底円筒状の受水容器41bと、受水容器41bの下端に側方から連通する連結筒部41cとを備える。連結筒部41cは、受水容器41bを排水ポンプ42に接続する円筒状部分である。
受水容器41bの受入れ口41aは、阻集器3が受入れ位置にある時に処理水排出口33aの下方にギャップGP2を隔てて対向配置される。受水容器41bの容積(有効容積)は、排水ポンプ42の動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って、処理水排出口33aから排出し得る最大水量の処理水を受入れた場合であっても、処理水の越流を防止可能な容積に定める。例えば、処理水排出口33aから排出し得る最大水量を1.4L/秒、排水ポンプ42の動作開始から定格動作に至るまでの時間を1.5秒、及び裕度を2と想定した場合、受水容器41bの容積Vは4.2L(=1.4×1.5×2)に定める。なお、これらの数値は一例であり、適宜に変更され得る。
【0020】
排水ポンプ42について説明する。図3(a)は、排水ポンプ42の平面図である。図3(b)は、図3(a)にY−Yで示す位置で排水ポンプ42の下側半分を切り欠いた部分断面図である。図4は、図3(b)のZ−Z断面図である。図5は、ポンプケーシングの構成例を示す斜視図である。
排水ポンプ42は、定格動作時において、処理水排出管33から排出可能な最大水量以上の水量を外部排水配管5に送出可能なものとしている。図1に示すように、外部排水配管5の下流側には上向きに立ち上がった上向き配管部5aがあり、上向き配管部5aには処理水の逆流を防止する逆流防止弁CV、及び上向き配管部5a内の通水を遮断したり、許容したりするボールバルブBBを取り付ける。
例示した排水ポンプ42は、床面上に設置され、連結筒部41cと外部排水配管5との間に配置される床上設置型であるが、半地下のポンプ設置マス、あるいは地下ピット等、設置場所は問わない。なお、本実施形態では、床面上に防振ゴムRCを配置して排水ポンプ42から発生する振動、騒音を吸収緩和している。
【0021】
排水ポンプ42は、下部から出力軸51aを突出させた縦軸型のモータ51、及び出力軸51aに軸心部を固定されることにより出力軸51aと一体回転する羽根車52を備えたモータユニット53と、モータユニット53を支持した状態で連結筒部41c及び外部排水配管5とそれぞれ連通接続されるポンプケーシング54と、を備える。
ポンプケーシング54は、羽根車52を内部に収容した状態でモータ51を水密的に支持する中空筒状の内胴部55と、内胴部55の下部との間に空間60を介して離間配置され、内胴部55よりも大径の外胴部56と、外胴部56に設けられて連結筒部41c及び外部排水配管5と夫々接続される流入ノズル57及び排水ノズル58と、流入ノズル57に設けられ管体状の空気室59(図1参照)と連通する開口59aと、を備える。内胴部55と外胴部56とは、例えば一体成形により一体化される。
ポンプケーシング54は、内胴部55と外胴部56とからなる二重胴部構造であり、内胴部55と外胴部56との間に空間60を形成した構成である。
【0022】
図4及び図5に示すように、内胴部55は、羽根車52を包囲するように羽根車52の外径方向から下方に相当する部位に形成されたボリュート部61と、ボリュート部61の下部中央に形成されたボリュート吸い込み口62とを備えている。また、図3(b)に示すように、内胴部55は、ボリュート部61に形成されて排水ノズル58と連通する吐出開口部61aと、水の外部への漏れを防止する軸封部64と、軸封部64に供給される潤滑油を貯留するオイル溜り65と、を備える。
図3(b)に示すように、外胴部56の下部には底板68を備え、ボリュート部61の下部との間に底部空間66を形成する。また、外胴部56とボリュート部61の外径との間に、ボリュート部61を包囲するとともに流入ノズル57と連通した側部空間67を形成する。このように空間60は、底部空間66と、底部空間66と連通した側部空間67と、を備えている。
【0023】
図1(a)に示すように、側部空間67には上向きに延びる管体状の空気室59の下端部を、流入ノズル57に設けた開口59aに対して連通させた状態で固定している。さらに、図7(a)に示すように、空気室59の側壁に設けた貫通穴59b(大気連通部)に対してL字状の通気管69(大気連通部)を連通接続する。通気管69は、横方向へ延びる横管69aと、横管69aの先端部から上向きに延びる縦管69bとから構成されており、大気と連通している。
【0024】
以上の説明から明らかなように、排水ポンプ42は、受水部41の連結筒部41cと外部排水配管5との間に配置され、出力軸51aを備えたモータ51、及び該出力軸51aに固定された羽根車52を備えたモータユニット53と、モータユニット53を支持した状態で連結筒部41c及び外部排水配管5と夫々連通接続されるポンプケーシング54と、を備える。
ポンプケーシング54は、羽根車52を内部に収容した状態でモータ51を支持する中空の内胴部55と、該内胴部55の下部および底板68との間に空間60を介して離間配置され内胴部55よりも大径の外胴部56と、該外胴部56に設けられて連結筒部41c及び外部排水配管5と夫々接続される流入ノズル57及び排水ノズル58と、流入ノズル57に設けられて管体状の空気室59と連通する開口59aと、を備える。
内胴部55は、羽根車52に相当する部位に形成されたボリュート部61と、該ボリュート部61の下部に形成されたボリュート吸い込み口62と、該ボリュート部61の側壁に形成され排水ノズル58と連通する吐出開口部61aと、を備える。
【0025】
内胴部55の下部と外胴部56との間に形成される空間60は、上述したように底部空間66と側部空間67とを備えている。側部空間67には空気室59が連通されており、空気室59には、接点端子対71b(空圧検出器、図1参照)を備え且つ外気と連通しない空圧スイッチ71(図1参照)が連通して形成されている。
空圧スイッチ71よりも下方位置には、空気室59を大気と連通させる貫通穴59b及び通気管69が設けられており、通気管69の上端部は大気開放されている。
なお、本例では空気室59から上方へ直線状に延びる空圧スイッチ71を配置し、分岐してL字状に延びる通気管69を大気連通用としたが、これを逆にしてもよい。
【0026】
<空圧スイッチ71及び制御盤43について>
図1(a)に示すように、空気室59内の上部(具体的には図7(a)の貫通穴59bよりも上方)には、空圧スイッチ71(検出部)、及び制御盤43を設置する。
空圧スイッチ71は、空気室59と空圧ホース72によって連通されて内部の圧力に応じて変形する気密室71a(空気圧検出室)と、大気と連通した非気密室71dと、導通状態と非導通状態とに切り替わる接点端子対71bとを備える。気密室71aの一部は、弾性を有する隔膜71cによって形成され、気密室71aの圧力が高くなるほど非気密室71d側に膨出変形する。隔膜71cの外表面には接点端子対71bの一方を取り付け、接点端子対71bの一方と対向する位置に接点端子対71bの他方を取り付ける。接点端子対71bは、気密室71a内の圧力が所定圧力以上になると隔膜71cの膨出変形によって接触して導通状態(図7(b)参照)となり、所定圧力未満の場合には離隔して非導通状態となる。本実施形態では、接点端子対71bの導通状態を空圧スイッチ71のオン状態とし、接点端子対71bの非導通状態を空圧スイッチ71のオフ状態としている。
【0027】
図6に示すように、制御盤43が備える制御基板43aは、排水ポンプ42の動作を制御する制御回路81(制御部)と、交流電源を降圧して制御基板43aに供給するトランス82と、排水ポンプ42が備えるモータ51に対して交流電源の供給を制御するリレー83と、排水ポンプ42に供給される電流を変換して制御回路81に入力する変流器84と、を備える。
制御回路81は、ROM81bに記憶された動作プログラムをRAM81cに展開して実行するCPU81aを備え、排水ポンプ42を動作させるための各種制御を行う。例えば、制御回路81は、空圧スイッチ71(接点端子対71b)からの検出信号に応じてリレー83の動作を制御したり、変流器84からの電流に基づいて排水ポンプ42の動作を監視したりする。
【0028】
<制御回路81による排水ポンプ42の運転制御>
制御回路81による排水ポンプ42の運転制御について説明する。
図7(a)は、排水ポンプ42を設置した初期状態を説明する図である。図7(b)は、排水ポンプ42が動作している状態を説明する図である。図7(c)は、空圧スイッチ71がオフ状態に切り替わった直後の状態を説明する図である。図7(d)は、排水ポンプ42の動作が停止した状態を説明する図である。
【0029】
図7(a)に示すように、排水ポンプ42(モータ51)の始動前(初期状態)では、残水の水位が通気管69との分岐位置(貫通穴59b)よりも下方なので、空気室59の上方に延びる空圧スイッチ71では気密室71aが大気開放されている。したがって、接点端子対71bが離隔して空圧スイッチ71はオフ状態である。
図7(b)に示すように、処理水WWが受水部41に排出されると、受水容器41b内の水位の上昇に伴って空気室59内の水位が上昇し、水位が分岐位置を越えて高くなると、空圧スイッチ71が備える気密室71aの圧力が上昇する。気密室71aの圧力が規定値以上になると、接点端子対71bが接触して空圧スイッチ71がオン状態になる。空圧スイッチ71がオン状態になると、制御回路81は、リレー83を制御して交流電源をモータ51に供給し、排水ポンプ42を始動させる。
図7(c)に示すように、空気室59内の水位が低下し、該水位が貫通穴59bの上端部よりも低くなると、空圧スイッチ71の気密室71aが大気開放されて接点端子対71bが離隔し、空圧スイッチ71がオン状態からオフ状態に切り替わる。空圧スイッチ71がオフ状態に切り替わった場合、制御回路81は、オフ状態に切り替わってから規定時間(例えば10秒間)が経過するまではモータ51に交流電源を供給し、排水ポンプ42の動作を継続させる。したがって、受水容器41bの水位は、空圧スイッチ71がオフ状態に切り替わった後も低下する。
図7(d)に示すように、規定時間が経過すると、制御回路81は、リレー83を制御して交流電源のモータ51への供給を遮断する。これに伴い、排水ポンプ42が停止するが、上向き配管部5aには逆流防止弁CVが取り付けられているので、外部排水配管5における処理水WWの逆流が防止される。したがって、排水ポンプ42において、流入ノズル57側における処理水WWの水位はボリュート吸い込み口62の高さと略等しく、排水ポンプ42の動作が停止している期間に亘って該水位が維持される。
【0030】
<排水処理システム1による排水処理動作>
次に、本実施形態の排水処理システム1による排水処理動作について説明する。上述したように、この排水処理動作は阻集器3が受入れ位置に位置する時に行われる。
図8(a)は、排水ポンプ42の設置後、受入れ位置の阻集器3から最初に処理水WWが排出された時の様子を説明する図である。図8(b)は、空圧スイッチ71がオン状態に切り替わった時の様子を説明する図である。図8(c)は、排水ポンプ42の定格動作時の様子を説明する図である。図9(a)は、空圧スイッチ71がオフ状態に切り替わった時の様子を説明する図である。図9(b)は、排水ポンプ42の動作停止状態を説明する図である。図9(c)は、阻集器3から処理水WWが再度排出された時の様子を説明する図である。
【0031】
図8(a)に示すように、排水ポンプ42の設置後、受入れ位置の阻集器3から最初の処理水WWが排出され、図8(b)に示すように、受水容器41b内における処理水WWの水位が空気室59における通気管69との分岐位置を越えて高くなると、空圧スイッチ71がオン状態になって排水ポンプ42が始動する。排水ポンプ42の始動直後において、処理水排出管33から受水容器41bに受入れる処理水WWの量が排水ポンプ42から外部排水配管5へ送出する処理水WWの量よりも多い場合には、受水容器41bにおける処理水WWの水位が上昇する。
前述したように、受水容器41bの容積は、排水ポンプ42の動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って、処理水排出口33aから排出し得る最大水量の処理水WWを受入れた場合であっても、処理水WWの越流を防止可能な容積に定めている。したがって、図8(c)に示すように、排水ポンプ42は、処理水WWが受水容器41bからあふれ出す前に定格動作状態になる。排水ポンプ42は、定格動作時において、処理水排出管33から排出可能な最大水量以上の水量を外部排水配管5に送出可能であることから、処理水WWが受水容器41bからあふれ出す不都合が抑制される。
図9(a)に示すように、処理水排出管33からの処理水WWの排出が終了し、受水容器41bの水位が空気室59における通気管69との分岐位置よりも低くなると、空圧スイッチ71がオフ状態になる。制御回路81は、空圧スイッチ71がオフ状態に切り替わった後も、規定時間に亘って排水ポンプ42の動作を継続させるので、図9(b)に示すように排水ポンプ42の停止時において、流入ノズル57側における処理水WWの水位はボリュート吸い込み口62の高さと略等しくなっている。外部排水配管5には逆流防止弁CVが取り付けられているので、流入ノズル57側における処理水WWの水位は排水ポンプ42の非動作期間に亘って維持される。図9(c)に示すように、処理水排出管33から処理水WWが再度排出されると、受水容器41b内における処理水WWの水位が上昇する。この水位が空気室59における通気管69との分岐位置を越えて高くなると、図8(b)で説明したように排水ポンプ42が始動する。以降は、上述した処理が繰り返し行われる。
【0032】
<阻集器3の清掃作業等について>
以上の排水処理を行うと、分離槽32における処理水WWよりも上方には排水から分離された油脂類FO(図2(b)参照)が蓄積される。また、ダストボックス32cには、食物残渣などの固形物SOが捕集される。蓄積された油脂類FOや捕集された固形物SOは、阻集器3の清掃作業で除去される。また、阻集器3の性能を維持するため、メンテナンス作業が適宜行われる。阻集器3に対する清掃作業やメンテナンス作業を行う場合、受入れ位置の阻集器3を退避位置まで移動させる。
図10(a)は、阻集器3が受入れ位置から前方に移動を開始した時の様子を説明する図である。図10(b)は、図10(a)の状態における排水部と受水部41、及びシンク排水管22と導入開口部31の平面方向の位置関係を説明する図である。図11は、退避位置に阻集器3が位置した時の様子を説明する図である。
阻集器3を受入れ位置から移動させる場合、作業者は、例えば分離槽32の前面に取り付けた把手32dを持って阻集器3を前方に引き出す。前述したように、処理水排出管33の処理水排出口33aと受水容器41bの受入れ口41aとが高さ方向にギャップGP2を隔てて対向配置され、シンク排水管22のシンク排水口22aと分離槽32の導入開口部31とが高さ方向にギャップGP1を隔てて対向配置されているので、図10(a)、(b)に示すように、阻集器3を前方に移動させた場合において、処理水排出口33aと受入れ口41aとの干渉を回避でき、シンク排水口22aと導入開口部31との干渉を回避できる。
【0033】
したがって、図11に示すように、阻集器3を退避位置まで円滑に移動できる。退避位置では、周囲に干渉するものがないことから、阻集器3に対する清掃作業やメンテナンス作業を容易に行える。例えば、蓋部材34を分離槽32から容易に取り外すことができ、蓄積された油脂類FOや捕集された固形物SOを分離槽32から容易に除去できる。また、受水容器41bの上方から処理水排出管33が退避しているので、受水容器41bの清掃も容易である。
阻集器3に対する清掃作業等が終了したならば、退避位置の阻集器3を受入れ位置まで移動させる。阻集器3を退避位置から移動させる場合、作業者は、例えば把手32dを持って阻集器3を後方に押し込む。受入れ位置への移動時においても、退避位置への移動時と同様に、処理水排出口33aと受入れ口41aとの干渉を回避でき、シンク排水口22aと導入開口部31との干渉を回避できる。
【0034】
本実施形態の排水処理システム1において、シンク排水管22、及び受水部41は、阻集器3に固定されていない。また、阻集器3の移動時において、処理水排出口33aと受入れ口41aとの干渉が回避されるとともに、シンク排水口22aと導入開口部31との干渉も回避される。したがって、阻集器3は、シンク排水管22や受水部41による制限、及びシンク排水口22aや導入開口部31による制限を受けることなく、受入れ位置と退避位置との間を移動できる。
阻集器3が受入れ位置に位置する時、シンク排水口22aが排出した排水を導入開口部31で受入れ、処理水排出口33aが排出した処理水WWを受水部41で受入れるので、シンク槽21から阻集器3への排水の流れ、及び阻集器3から受水部41への処理水WWの流れは、受入れ位置と退避位置との距離による影響を受けない。したがって、排水を円滑に流すとともに清掃の容易化を図ることができる。
【0035】
<変形例について>
前述した実施形態において阻集器3は前後方向に移動していたが、移動方向は前後方向に限定されるものではない。阻集器3の移動方向は、処理水排出口33aと受入れ口41aとの干渉を回避でき、シンク排水口22aと導入開口部31との干渉を回避できる方向(床面に沿った側方)であればよい。
前述した実施形態においてポンプユニット4を阻集器3よりも後方に設置していたが、ポンプユニット4の設置位置は当該位置に限定されるものではない。ポンプユニット4の設置位置は、阻集器3を受入れ位置と退避位置との間で進退移動させる場合に、処理水排出口33aと受入れ口41a、及びシンク排水口22aと導入開口部31の干渉が避けられる位置であればよい。
前述した実施形態においてシンク槽21から阻集器3への排水の導入は、導入開口部31とギャップGP1を隔てて対向配置されたシンク排水口22aを通じて行っていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、シンク槽21の槽排水口21aと阻集器3の導入開口部31との間を可撓性のシンク排水ホースで接続し、シンク槽21からの排水を、シンク排水ホースを介して分離槽32に導入してもよい。
前述した実施形態において受水容器41bは上面が開放した円筒形状であったが、この形状に限定されるものではない。例えば、受水容器41bを上面が開放された直方体形状で構成してもよい。
前述した実施形態において空圧スイッチ71は受水容器41bに貯留された処理水WWの量が規定量以上の場合にオン状態になり、規定量未満の場合にオフ状態になっていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、空圧スイッチ71に代えて、受水容器41bにおける処理水WWの水位が規定水位以上の場合にオフ状態になり、規定水位未満の場合にオン状態になる水位センサを用いてもよい。この水位センサを用いた場合、制御回路81は、水位センサがオン状態からオフ状態に切り替わった時に排水ポンプ42を始動させ、水位センサがオフ状態からオン状態に切り替わったことに伴って排水ポンプ42を停止させる。加えて、空圧スイッチ71や水位センサ以外のセンサであっても、受水容器41bに貯留された処理水WWの水位を検出できれば使用できる。
また、前述した実施形態の排水ポンプ42では、ボリュート部61内の排水量が所定値を下回った場合に、羽根車52の回転に対する抵抗が低下する。そこで、変流器84からの電流に基づいてこの抵抗の低下を制御回路81に検知させ、排水ポンプ42の動作を制御させてもよい。
また、前述の実施形態では、油脂類を排水から分離する阻集器3を例示したが、油脂類3以外の除去対象物を排水から分離する阻集器であってもよい。
【0036】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様に係る排水処理システム(排水処理システム1)は、排水に含まれる分離対象物(油脂類FO)を排水から分離する分離槽(分離槽32)、及び分離槽内の排水(処理水WW)を槽外に案内して排水口(処理水排出口33a)から下方へ排出する排水部(処理水排出管33)を備え、上方に位置するシンク槽(シンク槽21)からの排水を分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、該受入れ位置から側方へ退避した退避位置との間を進退可能な阻集器(阻集器3)と、阻集器が受入れ位置にある時に排水口の下方にギャップ(ギャップGP2)を隔てて対向配置され、排水口から排出された排水を受入れる受入れ口(受入れ口41a)を有した受水部(受水部41)、及び受水部と外部排水配管(外部排水配管5)との間に設置され、受水部が受入れた排水を外部排水配管に送出する排水ポンプ(排水ポンプ42)を備えるポンプユニット(ポンプユニット4)と、を具備し、ギャップは、阻集器が受入れ位置と退避位置との間を進退する際の排水口と受入れ口との干渉を回避させる構成を備えていることを特徴とする。
本態様において、受水部は阻集器に固定されておらず、阻集器の移動時には排水口と受入れ口との干渉が回避される。したがって、阻集器は、受水部による制限を受けることなく、受入れ位置と退避位置との間を移動できる。阻集器が受入れ位置に位置する時、排水部が排出した排水を受水部で受入れるので、阻集器から受水部への排水の流れは、受入れ位置と退避位置との距離による影響を受けない。したがって、排水を自然流下させるための傾斜がとれないところでも排水を円滑に流すことができ、清掃の容易化を図ることができる。
【0037】
<第二の実施態様>
本態様に係る排水処理システムは、シンク槽からの排水をシンク排水口(シンク排水口22a)から排出するシンク排水部(シンク排水管22)を備え、阻集器は、受入れ位置において、シンク排水口の下方にギャップ(GP1)を隔てて対向配置され、シンク排水口が排出した排水を受入れて分離槽に導く導入部(導入開口部31)を備えることを特徴とする。
本態様において、シンク排水部は阻集器に固定されておらず、阻集器の移動時にはシンク排水口と導入部との干渉が回避される。したがって、阻集器は、シンク排水部による制限を受けることなく、受入れ位置と退避位置との間を移動できる。阻集器が受入れ位置に位置する時、シンク排水部が排出した排水を導入部で受入れるので、シンク排水部から阻集器への排水の流れは、受入れ位置と退避位置との距離による影響を受けない。したがって、本態様でも、排水を円滑に流すとともに清掃の容易化を図ることができる。
【0038】
<第三の実施態様>
本態様に係る排水処理システムにおいて、ポンプユニットは、受水部に貯留された排水の量(処理水WWの量)が規定量以上の場合に第1状態(オン状態)になり、規定量未満の場合に第2状態(オフ状態)になる検出部(空圧スイッチ71)と、検出部が第1状態の場合に排水ポンプを動作させ、検出部が第1状態から第2状態に切り替わったことに伴って排水ポンプの動作を停止させる制御部(制御回路81)と、を備えることを特徴とする。
本態様において、制御部は、受水部に貯留された排水の量に応じて排水ポンプの動作を制御するので、排水ピットなどの大がかりな設備を用いなくても排水を円滑に流すことができるとともに、省スペースで施工コストを削減できる。
【0039】
<第四の実施態様>
本態様に係る排水処理システムにおいて、制御部は、検出部が第1状態から第2状態に切り替わった場合、第2状態に切り替わってから規定時間が経過するまでは排水ポンプの動作を継続させることを特徴とする。
本態様において、排水ポンプは、受水部に貯留された排水の量が規定量未満になった後も規定時間に亘って排水を送出するので、受水部に貯留された排水の量を減少でき、悪臭の発生を抑制できる。
【0040】
<第五の実施態様>
本態様に係る排水処理システムにおいて、排水ポンプは、定格動作時において、排水部から排出可能な最大水量以上の水量を外部排水配管に送出可能であり、受水部の容積(受水容器41bの容積)は、排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って最大水量の排水を受入れた場合であっても、越流を防止可能な容積であることを特徴とする。
本態様において、排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って、受水部が最大水量の排水を受け入れた場合であっても、受水部から排水があふれ出す不都合を抑制できる。
【符号の説明】
【0041】
1…排水処理システム,2…シンク,3…阻集器,4…ポンプユニット,5…外部排水配管,5a…上向き配管部,21…シンク槽,21a…槽排水口,22…シンク排水管,22a…シンク排水口,22b…流入部,22c…案内部,31…導入開口部,32…分離槽,32a…槽本体,32b…仕切り板,32c…ダストボックス,33…処理水排出管,33a…処理水排出口,34…蓋部材,35…キャスタ,41…受水部,41a…受入れ口,41b…受水容器,41c…連結筒部,42…排水ポンプ,43…制御盤,43a…制御基板,5…外部排水配管,5a…上向き配管部,51…モータ,51a…出力軸,52…羽根車,55…内胴部,56…外胴部,57…流入ノズル,58…排水ノズル,59…空気室,59a…開口,59b…貫通穴,60…空間,61…ボリュート部,62…ボリュート吸い込み口,66…底部空間,67…側部空間,68…底板,69…通気管,69a…横管,69b…縦管,71…空圧スイッチ,71a…気密室,71b…接点端子対,71c…隔膜,71d…非気密室,72…空圧ホース,81…制御回路,82…トランス,83…リレー,84…変流器,WW…処理水,FO…油脂類,SO…固形物,CV…逆流防止弁,BB…ボールバルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2018年3月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に含まれる分離対象物を前記排水から分離する分離槽、及び前記分離槽内の前記排水を槽外に案内して排水口から下方へ排出する排水部を備え、上方に位置するシンク槽からの排水を前記分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、該受入れ位置から側方へ退避した退避位置との間を進退可能な阻集器と、
前記阻集器が前記受入れ位置にある時に前記排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記排水口から排出された前記排水を受入れる受入れ口を有した受水部、及び前記受水部と外部排水配管との間に設置され、前記受水部が受入れた前記排水を前記外部排水配管に送出する排水ポンプを備えるポンプユニットと、を具備し、
前記ギャップは、
前記阻集器が前記受入れ位置と前記退避位置との間を進退する際の前記排水口と前記受入れ口との干渉を回避させる構成を備え
前記阻集器は、
前記受入れ位置において、前記シンク槽からの前記排水を排出するシンク排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記シンク排水口が排出した前記排水を受入れて前記分離槽に導く導入部を備え、
前記ポンプユニットは、
前記受水部に貯留された前記排水の量が規定量以上の場合に第1状態になり、規定量未満の場合に第2状態になる検出部と、
前記検出部が前記第1状態の場合に前記排水ポンプを動作させ、前記検出部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わったことに伴って前記排水ポンプの動作を停止させる制御部と、を備えていることを特徴とする排水処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記検出部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わった場合、前記第2状態に切り替わってから規定時間が経過するまでは前記排水ポンプの動作を継続させることを特徴とする請求項に記載の排水処理システム。
【請求項3】
前記排水ポンプは、定格動作時において、前記排水部から排出可能な最大水量以上の水量を前記外部排水配管に送出可能であり、
前記受水部の容積は、前記排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って前記最大水量の前記排水を受入れた場合であっても、越流を防止可能な容積であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る排水処理システムは、排水に含まれる分離対象物を前記排水から分離する分離槽、及び前記分離槽内の前記排水を槽外に案内して排水口から下方へ排出する排水部を備え、上方に位置するシンク槽からの排水を前記分離槽内に受入れ可能な受入れ位置と、該受入れ位置から側方へ退避した退避位置との間を進退可能な阻集器と、前記阻集器が前記受入れ位置にある時に前記排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記排水口から排出された前記排水を受入れる受入れ口を有した受水部、及び前記受水部と外部排水配管との間に設置され、前記受水部が受入れた前記排水を前記外部排水配管に送出する排水ポンプを備えるポンプユニットと、を具備し、前記ギャップは、前記阻集器が前記受入れ位置と前記退避位置との間を進退する際の前記排水口と前記受入れ口との干渉を回避させる構成を備え、前記阻集器は、前記受入れ位置において、前記シンク槽からの前記排水を排出するシンク排水口の下方にギャップを隔てて対向配置され、前記シンク排水口が排出した前記排水を受入れて前記分離槽に導く導入部を備え、前記ポンプユニットは、前記受水部に貯留された前記排水の量が規定量以上の場合に第1状態になり、規定量未満の場合に第2状態になる検出部と、前記検出部が前記第1状態の場合に前記排水ポンプを動作させ、前記検出部が前記第1状態から前記第2状態に切り替わったことに伴って前記排水ポンプの動作を停止させる制御部と、を備えていることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
また、本態様に係る排水処理システムは、シンク槽からの排水をシンク排水口(シンク排水口22a)から排出するシンク排水部(シンク排水管22)を備え、阻集器は、受入れ位置において、シンク排水口の下方にギャップ(GP1)を隔てて対向配置され、シンク排水口が排出した排水を受入れて分離槽に導く導入部(導入開口部31)を備えることを特徴とする。
本態様において、シンク排水部は阻集器に固定されておらず、阻集器の移動時にはシンク排水口と導入部との干渉が回避される。したがって、阻集器は、シンク排水部による制限を受けることなく、受入れ位置と退避位置との間を移動できる。阻集器が受入れ位置に位置する時、シンク排水部が排出した排水を導入部で受入れるので、シンク排水部から阻集器への排水の流れは、受入れ位置と退避位置との距離による影響を受けない。したがって、本態様でも、排水を円滑に流すとともに清掃の容易化を図ることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
さらに、本態様に係る排水処理システムにおいて、ポンプユニットは、受水部に貯留された排水の量(処理水WWの量)が規定量以上の場合に第1状態(オン状態)になり、規定量未満の場合に第2状態(オフ状態)になる検出部(空圧スイッチ71)と、検出部が第1状態の場合に排水ポンプを動作させ、検出部が第1状態から第2状態に切り替わったことに伴って排水ポンプの動作を停止させる制御部(制御回路81)と、を備えることを特徴とする。
本態様において、制御部は、受水部に貯留された排水の量に応じて排水ポンプの動作を制御するので、排水ピットなどの大がかりな設備を用いなくても排水を円滑に流すことができるとともに、省スペースで施工コストを削減できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
<第の実施態様>
本態様に係る排水処理システムにおいて、制御部は、検出部が第1状態から第2状態に切り替わった場合、第2状態に切り替わってから規定時間が経過するまでは排水ポンプの動作を継続させることを特徴とする。
本態様において、排水ポンプは、受水部に貯留された排水の量が規定量未満になった後も規定時間に亘って排水を送出するので、受水部に貯留された排水の量を減少でき、悪臭の発生を抑制できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
<第の実施態様>
本態様に係る排水処理システムにおいて、排水ポンプは、定格動作時において、排水部から排出可能な最大水量以上の水量を外部排水配管に送出可能であり、受水部の容積(受水容器41bの容積)は、排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って最大水量の排水を受入れた場合であっても、越流を防止可能な容積であることを特徴とする。
本態様において、排水ポンプの動作開始から定格動作に至るまでの期間に亘って、受水部が最大水量の排水を受け入れた場合であっても、受水部から排水があふれ出す不都合を抑制できる。