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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-105277(P2019-105277A)
(43)【公開日】2019年6月27日
(54)【発明の名称】電動弁用ステータ及び電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20190607BHJP
   F16K 27/00 20060101ALI20190607BHJP
   H02K 37/04 20060101ALI20190607BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20190607BHJP
【FI】
   F16K31/04 A
   F16K27/00 B
   H02K37/04 B
   H02K5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-236211(P2017-236211)
(22)【出願日】2017年12月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H051
3H062
5H605
【Fターム(参考)】
3H051AA04
3H051CC14
3H051FF08
3H062AA07
3H062AA12
3H062CC01
3H062FF38
3H062GG06
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD03
5H605GG04
(57)【要約】
【課題】マグネットロータ22を収容するキャン40を弁本体30に組み付けた弁装置に対してモータ部を構成するステータを取り付けるようにした電動弁において、ステータ21をキャン40に固定するためのブラケット1とステータ21との固定の緩みを防止してステータ21をキャンに堅牢に取り付ける。
【解決手段】ステータ21の弁本体30側の開口部21H1の周囲にブラケット1を取り付ける。ブラケット1を基部11と弾性片12とで構成する。基部11の側板11a,11bに爪11a1,11b1を形成し、固定ブロック21Bを側板11a,11bで挟み付けて固定する。基部11を開口部21H1の近くに設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着されて該弁装置側のマグネットロータと共に前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、前記弁装置を嵌め込む嵌挿孔を有するとともに、前記弁装置に係合して当該電動弁用ステータと前記弁装置とを固定する弾性部材を備え、
前記嵌挿孔の開口部の外周に、該嵌合孔の径方向と直交する壁面を有する固定ブロックが形成されるとともに、前記弾性部材は、前記弁装置と係合する弾性片と、前記固定ブロックに固定される基部とを有し、
前記弾性部材の前記基部が、該基部の一部を前記嵌挿孔の軸線側から前記壁面に当接させた状態で、前記固定ブロックに固定されていることを特徴とする電動弁用ステータ。
【請求項2】
前記弾性部材の前記基部は、前記軸線と平行に延設されて前記径方向に並ぶ2枚の側板を有し、前記径方向の内側の前記側板を前記壁面に当接させて、前記基部が前記2枚の側板により前記固定ブロックを挟持していることを特徴とする請求項1に記載の電動弁用ステータ。
【請求項3】
前記弾性部材の前記基部は、前記軸線と平行に延設された側板と、該側板と前記弾性片とを連結して前記径方向と平行に配置される連結板とを有し、
前記固定ブロックは前記連結板側に前記壁面を有し、
前記連結板には、前記固定ブロック側に曲げられて前記弾性片とは反対側に端部を有する係止爪が形成され、前記係止爪の端部を前記壁面に当接させて、前記基部が前記固定ブロックを挟持していることを特徴とする請求項1に記載の電動弁用ステータ。
【請求項4】
前記弾性部材の前記弾性片が、前記嵌挿孔の前記軸線回りで該軸線と平行な折り曲げ部を介して該軸線と交差する方向に延在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁用ステータ。
【請求項5】
前記弾性部材の前記弁装置に係合する前記弾性片は、前記軸線側に突出、又は、突出と反対側に凹んだ第一係合部を有し、
前記弾性片の前記第一係合部が、前記弁装置の外周に形成された第二係合部に係合されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電動弁用ステータ。
【請求項6】
前記弾性片における前記第一係合部は、前記軸線側に突出し、前記弁装置側の前記第二係合部としての凹部に係合する凸部であることを特徴とする請求項5に記載の電動弁用ステータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電動弁用ステータを前記弁装置に備えてなることを特徴とする電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁用ステータ及びそれを備えた電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動弁として、ステッピングモータ等のモータ部のマグネットロータの回転により弁本体内の弁部材を作動させるものがある。このような電動弁では流体の流路を密閉する必要があり、弁本体と共に密閉構造をなす円筒形状のキャン内に、モータ部のマグネットロータを収容している。そして、モータ部のステータはキャンの外周に配置する構造となっている。例えば特開2006−20479号公報(特許文献1)及び特開2012−124987号公報(特許文献2)に同様な電動弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−20479号公報
【特許文献2】特開2012−124987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空気調和機の室外機の省スペース化が盛んであり、また、省エネ性の向上も重要視されており、室外機内の配管形状なども多様化して複雑になっている。このように複雑に配管された室外機内はスペースが狭いため、弁装置の形状に制約がある。特許文献1のものでは、ステータを固定するためのブラケットがステータの上側に設けられ、このブラケットとキャンがステータから上に飛び出す構造となっている。このため、省スペースという点で改良の余地がある。これに対して特許文献2のものは、ブラケットがステータの下側に設けられ、キャンが上に飛び出す長さを抑えることができる。しかしながら、この特許文献2のものは、ブラケットとステータとの固定を溶着により行っているので、固定が不確実で、固定部が緩み易いという問題がある。
【0005】
本発明は、弁装置のマグネットロータとともにモータ部を構成する電動弁用ステータにおいて、弁装置のキャン等の円筒部に固定するための弾性部材の取り付け構造を改良し、弾性部材を堅牢に固定できる電動弁用ステータ、及び電動弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の電動弁用ステータは、モータ部の駆動により作動する弁装置に対して装着されて該弁装置側のマグネットロータと共に前記モータ部を構成する電動弁用ステータであって、前記弁装置を嵌め込む嵌挿孔を有するとともに、前記弁装置に係合して当該電動弁用ステータと前記弁装置とを固定する弾性部材を備え、前記嵌挿孔の開口部の外周に、該嵌合孔の径方向と直交する壁面を有する固定ブロックが形成されるとともに、前記弾性部材は、前記弁装置と係合する弾性片と、前記固定ブロックに固定される基部とを有し、前記弾性部材の前記基部が、該基部の一部を前記嵌挿孔の軸線側から前記壁面に当接させた状態で、前記固定ブロックに固定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の電動弁用ステータは、請求項1に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性部材の前記基部は、前記軸線と平行に延設されて前記径方向に並ぶ2枚の側板を有し、前記径方向の内側の前記側板を前記壁面に当接させて、前記基部が前記2枚の側板により前記固定ブロックを挟持していることを特徴とする。
【0008】
請求項3の電動弁用ステータは、請求項1に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性部材の前記基部は、前記軸線と平行に延設された側板と、該側板と前記弾性片とを連結して前記径方向と平行に配置される連結板とを有し、前記固定ブロックは前記連結板側に前記壁面を有し、前記連結板には、前記固定ブロック側に曲げられて前記弾性片とは反対側に端部を有する係止爪が形成され、前係止爪の端部を前記壁面に当接させて、前記基部が前記固定ブロックを挟持していることを特徴とする。
【0009】
請求項4の電動弁用ステータは、請求項1または2に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性部材の前記弾性片が、前記嵌挿孔の前記軸線回りで該軸線と平行な折り曲げ部を介して該軸線と交差する方向に延在されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の電動弁用ステータは、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性部材の前記弁装置に係合する前記弾性片は、前記軸線側に突出、又は、突出と反対側に凹んだ第一係合部を有し、前記弾性片の前記第一係合部が、前記弁装置の外周に形成された第二係合部に係合されることを特徴とする。
【0011】
請求項6の電動弁用ステータは、請求項5に記載の電動弁用ステータであって、前記弾性片における前記第一係合部は、前記軸線側に突出し、前記弁装置側の前記第二係合部としての凹部に係合する凸部であることを特徴とする。
【0012】
請求項7の電動弁は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電動弁用ステータを前記弁装置に備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至6の電動弁用ステータによれば、弾性部材の基部が嵌挿孔の開口部の外周の固定ブロックに固定され、基部の一部が嵌挿孔の軸線側から、径方向と直交する壁面に当接させた状態となっているので、嵌挿孔に弁装置を嵌め込む時に弾性片が受ける径方向の負荷を前記壁面で受けることができ、弾性部材とステータとの固定の緩みを防止でき、この弾性部材を堅牢に固定することができる。
【0014】
請求項7の電動弁によれば、請求項1乃至6と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の一部断面側面図である。
図2図1のB−B矢視断面図である。
図3】第1実施形態におけるブラケットと固定ブロックを示す図である。
図4】第1実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図である。
図5】第2実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図である。
図6】第3実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図である。
図7】実施形態におけるボビンに対する継鉄の露出部分を説明する図である。
図8】実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の電動弁用ステータ及び電動弁の実施形態を図面を参照して説明する。図1は実施形態の電動弁の一部断面側面図、図2図1のB−B矢視断面図、図3は第1実施形態におけるブラケットと固定ブロックを示す図、図4は第1実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図であり、図4(A)は図4(B)のA−A断面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。
【0017】
図1及び図4に示すように、この電動弁は、「弾性部材」としてのブラケット1と、「モータ部」としてのステッピングモータ20と、弁本体30と、非磁性体からなる円筒形状のキャン40とを備えている。ステッピングモータ20は、キャン40の外周に取り付けられた後述説明する「電動弁用ステータ」としてのステータ21と、キャン40の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ22とで構成されている。なお、マグネットロータ22の外周面とキャン40の内周面との間には所定の隙間が設けられている。
【0018】
弁本体30はステンレス等のハウジング310を有し、このハウジング310の内部に弁部材等を内蔵している。そして、この弁本体30はステッピングモータ20の駆動(マグネットロータ22の回転)により作動し、第1継手管31から第2継手管32へ流れる流体の流量、または第2継手管32から第1継手管31へ流れる流体の流量を制御する。
【0019】
弁本体30のハウジング310の上端には、キャン40が溶接等によって気密に組み付けられ、これにより、弁本体30及びキャン40は「弁装置」を構成している。
【0020】
ステータ21は、樹脂製のボビン21aにコイル21b,21bを巻装することで、軸線L方向に一対のコイル部を積層して構成されている。また、ボビン21aには、磁極歯21dを持つ継鉄(ヨーク)21cがモールド成形により一体に組み付けられている。さらに、ステータ21は、中央に軸線Lを中心とする円柱形状の嵌挿孔21Hを有しており、この嵌挿孔21Hの内周面の一部に継鉄21cの磁極歯21dが配置されている。そして、この磁極歯21dはキャン40の外周面に対向配置されている。
【0021】
以上の構成により、ステッピングモータ20では、コイル21bへのパルス出力の印加によりコイル21bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯21dに磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ22に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ22が回転する。これにより弁本体30内部の弁部材が作動し弁口の開度が可変に制御されることで、前記のように第1継手管31から第2継手管32へ、あるいは第2継手管32から第1継手管31へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0022】
ステータ21のボビン21aの弁本体30側の底部には、嵌挿孔21Hの開口部21H1から弁本体30側に拡径された袴部21Kを有している。また、キャン40は軸線Lを中心軸とし、マグネットロータ22の外周に対向する小径部40Aと、小径部40Aから弁本体30側に拡径された大径部40Bとから構成されている。そして、ステータ21の嵌挿孔21H内にキャン40の小径部40Aが嵌め込まれるとともに、キャン40の大径部40Bが、開口部21H1の弁本体30側に位置する状態で、ステータ21の袴部21K内に、その一部が収容されている。これにより、ステータ21が弁装置に装着されている。ステータ21の底部には、「弾性部材」としてのブラケット1が取り付けられている。
【0023】
図3に示すように、ブラケット1は、金属板のプレス加工等により形成され、3つの板状部からなる溝構造の基部11と、基部11と一体に該基部11の側部から延設された弾性片12とを有している。基部11は、側板11aと、この側板11aに対向する短手の側板11bと、両側板11a,11bを連結する連結板11cとで構成されている。また、両側板11a,11bは基部11の内側に切り出された爪11a1,11b1をそれぞれ有している。この爪11a1,11b1は、軸線Lと交差する方向に曲げられ、その先端部の縁線が軸線Lと交差する方向で互いに平行になるように配置されている。弾性片12は、この弾性片12と一体に形成された「第一係合部」としての凸部12aと、弾性片12の基部11とは反対側の一部を折り曲げることで形成された押圧部12bと、支点部12cと、弾性片12の側辺の一箇所に形成された突起12dとを有している。
【0024】
ステータ21の袴部21Kの一部には、ボビン21aによって直方体状の固定ブロック21Bが形成されており、この固定ブロック21Bにブラケット1が取り付けられている。すなわち、図3に示すように、ボビン21aにおいて固定ブロック21Bの外側にはスリット21a1が形成されている。そして、そして、ブラケット1の取り付け時には、スリット21a1にブラケット1の側板11aと爪11a1を嵌め込むとともに、側板11bを固定ブロック21Bの内側に嵌め込み、側板11aの爪11a1を固定ブロック21Bの端部に係止させる。なお、ブラケット1の自然状態において、側板11a,11bの連結部11c側の内寸法W1と、側板11a,11bの端部の間隔W2とは、
W2<W1
の関係に設定されている。これにより、ブラケット1の取り付け状態では、その弾性力により側板11a,11bが固定ブロック21Bを挟み付けるように作用している。また、ボビン21aは樹脂製であり、固定ブロック21Bは、軸線L側に嵌挿孔21Hの径方向と直交する壁面21B1を有している。そして、ブラケット1の取り付け状態では、側板11bの爪11b1は固定ブロック21Bの壁面21B1に食い込むようになる。これにより、ブラケット1は固定ブロック21Bから軸線L方向の抜けが防止されるとともに、固定ブロック21Bに堅牢に固定される。
【0025】
以上のようにブラケット1はステータ21に取り付けられた状態で、弾性片12は、ステータ21の嵌挿孔21Hの開口部21H1の周囲の外側にある袴部21K内において、開口部21H1を臨む位置に配置される。また、図2に示すように、弾性片12の凸部12aは、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出している。さらに、キャン40は大径部40Bの外周に、ブラケット1の凸部12aに係合する形状をした凹部40aが複数形成されている。この実施形態では5つ形成されている。そして、図1に示すように、ブラケット1の凸部12aとキャン40の凹部40aとは、ステータ21が弁装置に組み付けた状態で係合する。これにより、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされるとともに、ステータ21は軸線L方向の抜け防止をされた状態でキャン40に取り付けられている。また、図2に示すように、弾性片12は、押圧部12bをキャン40の外周に当接させた状態で、支点部12cを袴部21Kの内周に当接される。これにより、弾性片12は、この弾性片12の自己の弾性力により、支点部12cを支点としてキャン40を押圧している。これにより、弾性片12と開口部21H1の弾性片12とは反対側の対向内壁とでキャン40を挟み付けた状態となっている。
【0026】
そして、ブラケット1の基部11が嵌挿孔21Hの開口部21H1の外周の固定ブロック21Bに固定され、基部11の側板11bが嵌挿孔21Hの軸線L側から、径方向と直交する壁面21B1に当接させた状態となっている。したがって、嵌挿孔21Hにキャン40を嵌め込む時に弾性片12が受ける径方向の負荷を壁面21B1で受けることができ、ブラケット1とステータ21との固定の緩みを防止でき、ブラケット1を固定ブロック21Bに堅牢に固定することができる。なお、この実施形態では、ブラケット1の基部11が嵌挿孔21Hの開口部21H1の外周の固定ブロック21Bに固定されているので、この基部11と、嵌挿孔21Hに嵌め込まれるキャン40と係合する弾性片12との距離が近くなり、弾性片12は軸線L方向に撓み難くい構造となっている。さらに、ブラケット1において、弾性片12は基部11側に折り曲げ部1Aを有している。ブラケット1がステータ21に取り付けられた状態で、この折り曲げ部1Aは軸線Lと平行となっている。すなわち、弾性片12は、折り曲げ部1Aを介して軸線Lと直交する(交差する)方向に延在されている。したがって、ステータ21に軸線L方向に荷重が加わっても、弾性片12は軸線L方向に撓み難くい構造となっている。これにより、ステータ21は、弁装置のキャン40との係合状態を確実に保持することができ、弁装置に対して位置ずれすることなく堅牢に固定することができる。
【0027】
図7は実施形態におけるボビン21aに対する継鉄21cの露出部分を説明する図であり、斜線の部分がボビン21aのモールド樹脂の部分である。この実施形態では、継鉄21cがモールド成形により組み付けられることにより、嵌挿孔21Hの開口部21H1の外周に、部分的に継鉄21cが露出している。そして、ブラケット1は前記のように凸部12a及びキャン40の凹部40aを介してキャン40と電気的に接地されるとともに、弾性片12に形成された突起12dを介して継鉄21cと電気的に接地される。なお、突起12dは弾性片12の継鉄21c側に形成されているが、分かり易くするために図7ではこの突起12dを実線で図示してある。このように、弾性片12を介して、継鉄21cとキャン40とがそれぞれ確実に接地され、この継鉄21cとキャン40との間の電気的ノイズを防止することができる。
【0028】
図5は第2実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図であり、図5(A)は図5(B)のA−A断面図である。なお、以下の第2実施形態及び第3実施形態において、第1実施形態と同様な要素は同様な作用効果を奏するものであり、図1乃至図4と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。この第2実施形態は、ステータ21の底部には、「弾性部材」としてのブラケット1′が取り付けられている。
【0029】
ブラケット1′は、金属板のプレス加工等により形成され、第1実施形態と同様な基部11と、基部11と一体に該基部11の側部から延設された第1の弾性片13と、基部11に対して第1の弾性片13とは反対側に延設された第2の弾性片14とを有している。第1の弾性片13はこの第1の弾性片13と一体に形成された「第一係合部」としての凸部13aと、弾性片13の側片の一箇所に形成された突起13dとを有している。また、第2の弾性片14はこの第2の弾性片14と一体に形成された凸部14aを有している。なお、ブラケット1′の基部11は第1実施形態と同様に、その弾性力により側板11a,11bが固定ブロック21Bを挟み付け爪11b1は固定ブロック21Bの壁面21B1に食い込むようになる。これにより、ブラケット1′は固定ブロック21Bに堅牢に固定される。
【0030】
そして、ブラケット1′はステータ21に取り付けられた状態で、弾性片13,14は、ステータ21の嵌挿孔21Hの開口部21H1の周囲の外側にある袴部21K内において、開口部21H1を臨む位置に配置される。また、第1の弾性片13の凸部13aは、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出しており、第1実施形態と同様にキャン40の大径部40Bの凹部40aに係合し、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされるとともに、ステータ21は軸線L方向の抜け防止をされた状態でキャン40に取り付けられる。また、第2の弾性片14の凸部14aは、キャン40の外周に当接させた状態となる。そして、第1の弾性片13と第2の弾性片14は、その自己の弾性力により、キャン40を押圧している。これにより、弾性片13,14と開口部21H1の弾性片13,14とは反対側の対向内壁とでキャン40を挟み付けた状態となっている。
【0031】
そして、第1実施形態と同様に、基部11の側板11bが嵌挿孔21Hの軸線L側から、径方向と直交する壁面21B1に当接させた状態となり、嵌挿孔21Hにキャン40を嵌め込む時に弾性片13,14が受ける径方向の負荷を壁面21B1で受けることができ、ブラケット1′の基部11が撓むことを防止でき、ブラケット1′を固定ブロック21Bに堅牢に固定することができる。
【0032】
また、ブラケット1′の基部11が嵌挿孔21Hの開口部21H1の外周の固定ブロック21Bに固定されているので、この基部11と弾性片13,14との距離が近くなり、弾性片13,14は軸線L方向に撓み難くい構造となっている。さらに、ブラケット1′において、弾性片13,14は基部11側に折り曲げ部1A,1Aを有している。ブラケット1′がステータ21に取り付けられた状態で、この折り曲げ部1A,1Aは軸線Lと平行となっている。すなわち、弾性片13,14は、それぞれ折り曲げ部1A,1Aを介して軸線Lと直交する(交差する)方向に延在されている。したがって、ステータ21に軸線L方向に荷重が加わっても、弾性片13,14は軸線L方向に撓み難くい構造となっている。これにより、ステータ21は、弁装置のキャン40との係合状態を確実に保持することができ、弁装置に対して位置ずれすることなく堅牢に固定することができる。
【0033】
図6は第3実施形態の電動弁用ステータの縦断面図及び底面図であり、図6(A)は図6(B)のA−A断面図である。この第3実施形態は、ステータ21の底部には、「弾性部材」としてのブラケット1″が取り付けられている。
【0034】
ブラケット1″は、金属板のプレス加工等により形成され、3つの板状部からなる溝構造の基部15と、基部15と一体に延設された弾性片16とを有している。基部15は、側板15aと、この側板15aと弾性片16とを連結する連結板15bとで構成されている。側板15aは基部15の内側に切り出された爪15a1を有し、連結板15bは、基部15の内側に切り出された「係止爪」としての爪15b1を有している。また、この爪15a1,15b1は、軸線Lと交差する方向に曲げられ、その先端部の縁線が軸線Lと交差する方向で互いに平行になるように配置されている。弾性片16はこの弾性片16と一体に形成された「第一係合部」としての凸部16aを有している。
【0035】
ステータ21の袴部21Kの一部には、ボビン21aによって直方体状の固定ブロック21B′が形成されており、この固定ブロック21B′にブラケット1″が取り付けられている。第1実施形態と同様に固定ブロック21B′の外側にはスリット21a2が形成されている。そして、ブラケット1″の取り付け時には、スリット21a2にブラケット1″の側板15aと爪15a1を嵌め込み、側板15aの爪15a1を固定ブロック21B′の端部に係止させる。ここで、固定ブロック21B′の連結板15b側の面には係合凹部21B2′が形成されるとともに、この係合凹部21B2′の軸線Lに対向する面が径方向と直交する壁面21B1′となっている。そして、連結板15bの爪15b1を係合凹部21B2′内に嵌め込むことにより、爪15b1の端部が壁面21B1′に当接された状態となる。これにより、ブラケット1″の弾性力により側板15aの爪15a1と連結板15bの爪15b1が固定ブロック21B′を挟み付けるように作用している。これにより、ブラケット1″は固定ブロック21B′に堅牢に固定される。
【0036】
そして、ブラケット1″はステータ21に取り付けられた状態で、弾性片16は、ステータ21の嵌挿孔21Hの開口部21H1の周囲の外側にある袴部21K内において、開口部21H1を臨む位置に配置される。また、弾性片16の凸部16aは、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出しており、第1実施形態と同様にキャン40の大径部40Bの凹部40aに係合し、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされるとともに、ステータ21は軸線L方向の抜け防止をされた状態でキャン40に取り付けられる。
【0037】
以上のように、この第3実施形態では、ブラケット1″の連結板15bの爪15b1の端部が、嵌挿孔21Hの軸線L側から径方向と直交する壁面21B1′に当接された状態となり、嵌挿孔21Hにキャン40を嵌め込む時に弾性片16が受ける径方向の負荷を壁面21B1′で受けることができ、ブラケット1″の基部15が撓むことを防止でき、ブラケット1″を固定ブロック21B′に堅牢に固定することができる。なお、この実施形態でも、ブラケット1″の基部15が嵌挿孔21Hの開口部21H1の外周の固定ブロック21B′に固定されているので、この基部15と、嵌挿孔21Hに嵌め込まれるキャン40と係合する弾性片16との距離が近くなり、弾性片16は軸線L方向に撓み難くい構造となっている。これにより、ステータ21は、弁装置のキャン40との係合状態を確実に保持することができ、弁装置に対して位置ずれすることなく堅牢に固定することができる。
【0038】
図8は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号100は膨張弁を構成する本発明の実施形態の電動弁、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0039】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒液は電動弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0040】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、電動弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外内熱交換器200が蒸発器として機能する。電動弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する冷媒液、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する冷媒液を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0041】
各実施形態では、弾性部材の弾性片が嵌挿孔の開口部を臨む位置に配置されているが、この弾性部材の弾性片は、弁装置の円筒部と係合できるように、少なくともこの円筒部と対向する位置に配置されていればよい。
【0042】
なお、弾性片と一体に成形された第一係合部は、前記軸線側に突出する前記凸部に限ることはなく、前記凸部の突出に対し、軸線側と反対側に凹んだ凹部であってもよい。また、円筒部としてのキャンの第二係合部は、キャンの外周の前記軸線側に凹んだ複数箇所の凹部に限ることはなく、キャンの外周の外径から外側方向に突出した複数箇所の凸部であってもよい。なお、弾性片の第一係合部が凹部の場合、キャン側の第二係合部は凸部となり、第一係合部と第二係合部が確実に係合する関係の組み合わせとなる。また、第二係合部は、キャンの大径部だけでなく、小径部に設けても良いし、弁本体に設けても良い。さらに、弾性片の折り曲げ部は、各実施形態の図のように折り目があるものと、緩やかにRの形状で曲げられるもの、すなわち明確な折り目が無いものでもよい。
【0043】
ブラケットの基部と固定ブロックとを固着する方法は、かしめや溶着など、その他の方法でもよい。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1 ブラケット(弾性部材)
11 基部
11a 側板
11b 側板
11c 連結板
11a1 爪
11b1 爪
12 弾性片
12a 凸部(第一係合部)
20 ステッピングモータ(モータ部)
21 ステータ(電動弁用ステータ)
21a ボビン
21a1 スリット
21b コイル
21H 嵌挿孔
21H1 開口部
21K 袴部
21B 固定ブロック
21B1 壁面
21B′ 固定ブロック
21B1′ 壁面
22 マグネットロータ
30 弁本体(弁装置)
40 キャン(弁装置)
40A 小径部
40B 大径部
1′ ブラケット
13 第1の弾性片
14 第2の弾性片
13a 凸部(第一係合部)
1″ ブラケット(弾性部材)
15 基部
15a 側板
15b 連結板
15a1 爪
15b1 爪(係止爪)
16 弾性片
16a 凸部(第一係合部)
L 軸線
100 電動弁
200 室外熱交換器
300 室内熱交換器
400 流路切換弁
500 圧縮機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8