【解決手段】プリン用油脂組成物は、パーム系油脂のエステル交換油脂(A)とパーム系油脂の非エステル交換油脂(B)とを含んでいる。エステル交換油脂(A)の原料油脂であるパーム系油脂は、上昇融点が25℃未満のパーム分別低融点部であってもよい。非エステル交換油脂(B)は、上昇融点が25℃未満のパーム分別低融点部を含んでいてもよい。
非エステル交換油脂(B)が、上昇融点が25℃未満のパーム分別低融点部と、上昇融点が25〜35℃のパーム分別中融点部との混合油である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリン用油脂組成物。
5℃におけるSFC(固体脂含量)が、45〜60%であり、20℃におけるSFCが10〜25%であり、かつ、35℃におけるSFCが、0%を超えて2%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリン用油脂組成物。
エステル交換油脂(A)の非エステル交換油脂(B)に対する質量比(A/B)が、35/65〜50/50である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプリン用油脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[プリン用油脂組成物]
本発明のプリン用油脂組成物は、パーム系油脂のエステル交換油脂(A)とパーム系油脂の非エステル交換油脂(B)とを含んでいる。
【0009】
(A)パーム系油脂のエステル交換油脂
エステル交換油脂の原料油脂であるパーム系油脂は、パーム油又はその加工油脂である限り特に制限されず、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油(部分又は極度硬化油)、これら2種以上の混合油が挙げられる。
上記パーム系油脂のうち、パーム分別油が好ましい。分別方法としては、溶剤分別法、ウインタリング法、乳化分別法、自然分別法などが一般的であるが、これらに限定されない。また、分別回数は、1回又は2回が一般的であるが、3回以上であってもよい。
上記パーム分別油は、パーム分別低融点部、パーム分別中融点部、パーム分別高融点部に分類することができる。
本明細書において、「パーム分別低融点部」とは、上昇融点が25℃未満のパーム分別油を意味し、例えば、パーム油を分別して得られる低融点画分(パームオレイン)、パームオレインを分別して得られる低融点画分(パームダブルオレイン)、これらの混合油を包含する。パーム分別低融点部のヨウ素価は、通常、50を超える(例えば、55以上の)範囲から選択される。
「パーム分別中融点部」とは、上昇融点が25〜35℃のパーム分別油を意味し、例えば、パームオレインを分別して得られる高融点画分(パームミッドフラクション)を包含する。パーム分別中融点部のヨウ素価は、通常、30〜50の範囲から選択される。
「パーム分別高融点部」とは、上昇融点が35℃を超えるパーム分別油を意味し、例えば、パーム油を分別して得られる高融点画分(パームステアリン)を包含する。パーム分別高融点部のヨウ素価は、通常、40未満(例えば、10〜40)の範囲から選択される。
上記パーム分別油のうち、上昇融点が25℃未満(例えば、5℃以上25℃未満)のパーム分別低融点部が好ましい。該パーム分別低融点部のヨウ素価は、55〜70であるのが好ましく、55〜65であるのがより好ましい。例えば、ヨウ素価が55〜65のパーム分別低融点部は、パーム油からヨウ素価が55〜65の低融点画分を分別したものであってもよく、パーム油からヨウ素価が55〜60の低融点画分を分別したものと、パーム油(又はヨウ素価が55以上のパーム油低融点画分)からヨウ素価が60〜65の低融点画分を分別したものとの混合油であってもよい。
なお、上昇融点は、基準油脂分析試験法「2.2.4.2−1996 融点(上昇融点)」に記載の方法に基づいて測定される。なお、上昇融点が低い油脂の測定においては、水の代わりにエタノールを用いる場合がある。ヨウ素価は、基準油脂分析試験法「3.3.3−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に記載の方法に基づいて測定される。
パーム系油脂のエステル交換油脂は、選択的エステル交換油脂及びランダムエステル交換油脂のいずれであってもよいが、ランダムエステル交換油脂が好ましい。
パーム系油脂のエステル交換油脂の含有量は、プリン用油脂組成物の総質量(又は該油脂組成物中の植物油脂の総質量)に対して、例えば、15〜65質量%、好ましくは20〜60質量%(例えば、25〜55質量%)、さらに好ましくは30〜50質量%(例えば、35〜50質量%)である。パーム系油脂のエステル交換油脂の含有量が少なすぎると、乳脂肪を配合した場合と異なる食感及び油性感になりやすく、パーム系油脂のエステル交換油脂の含有量が多すぎると、乳脂肪を配合した場合と異なる口どけになりやすい。
【0010】
(B)パーム系油脂の非エステル交換油脂
パーム系油脂の非エステル交換油脂は、パーム油又はその加工油脂である限り特に制限されず、例えば、例えば、パーム油、パーム分別油、これらの硬化油(部分硬化油、極度硬化油)、これら2種以上の混合油が挙げられる。
上記パーム系油脂は、乳脂肪を配合したときのような口どけを得る点から、上昇融点が25℃未満(例えば、5℃以上25℃未満)のパーム分別低融点部を含むことが好ましい。該パーム分別低融点部のヨウ素価は、55〜70であるのが好ましく、55〜65であるのがより好ましい。上記パーム系油脂は、乳脂肪を配合したときのような食感及び油性感に調整する点から、上記パーム分別低融点部と、上昇融点が25〜35℃のパーム分別中融点部との混合油であってもよい。上記パーム分別中融点部の含有量は、上記混合油の総質量に対して、1〜60質量%(例えば、5〜60質量%)であるのが好ましく、10〜55質量%(例えば、15〜55質量%)であるのがより好ましく、20〜50質量%(例えば、25〜45質量%)であるのが特に好ましい。上記パーム分別中融点部の含有量が多すぎると、乳脂肪を配合した場合よりも硬すぎる食感になる。
パーム系油脂の非エステル交換油脂の含有量は、プリン用油脂組成物の総質量(又は該油脂組成物中の植物油脂の総質量)に対して、例えば、35〜85質量%、好ましくは40〜80質量%(例えば、45〜75質量%)、さらに好ましくは50〜70質量%(例えば、50〜65質量%)である。パーム系油脂の非エステル交換油脂の含有量が少なすぎると、乳脂肪を配合した場合と異なる口どけになりやすく、パーム系油脂の非エステル交換油脂の含有量が多すぎると、乳脂肪を配合した場合と異なる食感及び油性感になりやすい。
エステル交換油脂(A)の非エステル交換油脂(B)に対する質量比(A/B)は、特に制限されないが、食感、口どけ及び油性感のバランスの点から、例えば、15/85〜65/35であり、20/80〜60/40(例えば、25/75〜55/45)であるのが好ましく、30/70〜50/50(例えば、35/65〜50/50)であるのがより好ましい。
【0011】
本発明のプリン用油脂組成物は、エステル交換油脂(A)及び非エステル交換油脂(B)のみで構成してもよいが、さらに、その他の油脂を含んでいてもよい。その他の油脂としては、パーム系油脂以外の植物油脂(例えば、ヤシ油、パーム核油、これらの混合油、分別油、硬化油(部分又は極度硬化油)などのラウリン系油脂;液状油脂(大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、亜麻仁油、胡麻油、これらの混合油など)又はその硬化油(部分又は極度硬化油)など)、動物油脂(例えば、ラード、牛脂、乳脂肪、魚油など)が挙げられる。
その他の油脂のうち、パーム系油脂以外の植物油脂の含有量は、プリン用油脂組成物の総質量(又は該油脂組成物中の植物油脂の総質量)に対して、例えば、10質量%以下であってもよく、5質量%以下(例えば、0.1〜1質量%)であってもよい。食感及びコストの点から、ラウリン系油脂を含まないことが好ましく、食感及び油性感の点から、液状油脂を含まないことが好ましい。
また、その他の油脂のうち、動物油脂の含有量は、プリン用油脂組成物の総質量(又は該油脂組成物中の植物油脂の総質量)に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下(例えば、0.5〜5質量%)である。
本発明のプリン用油脂組成物は、エステル交換油脂(A)と非エステル交換油脂(B)の組み合わせにより、乳脂肪を配合したときのような食感、口どけ、及び油性感が得られるため、乳脂肪の代替として使用することができる。
【0012】
本発明のプリン用油脂組成物は、さらに種々の添加剤、例えば、乳化剤、安定剤、糖類、保存料、着色料、香料、酸化防止剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の含有量は、特に制限されず、プリン用油脂組成物の総質量に対して、例えば、0.01〜2質量%である。
【0013】
本発明のプリン用油脂組成物の5℃におけるSFC(固体脂含量)は、特に制限されないが、乳脂肪を配合したときのような食感を得る点から、40〜65%(例えば、45〜60%)であるのが好ましく、48〜60%(例えば、49〜55%)であるのがさらに好ましい。
本発明のプリン用油脂組成物の20℃におけるSFCは、特に制限されないが、乳脂肪を配合したときのような油性感を得る点から、10〜25%であるのが好ましく、12〜20%であるのがより好ましい。
本発明のプリン用油脂組成物の35℃におけるSFCは、特に制限されないが、乳脂肪を配合したときのような口どけを得る点から、0%を超えて2%以下であるのが好ましく、0.1〜1.5%であるのがより好ましい。
また、本発明のプリン用油脂組成物のSFCは、例えば、5℃〜35℃の範囲で、乳脂肪のSFCと類似しているのが好ましく、両者のSFCの差は±5%以内であるのが好ましい。
なお、SFCは、後述の実施例に記載のように、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」(2013年)に記載の「2.2.9固体脂含量(NMR法)」に準拠して測定することができる。
【0014】
[プリン用水中油型乳化物]
本発明は、上記のプリン用油脂組成物(油相)と水(水相)とを含むプリン用水中油型乳化物も包含する。このプリン用水中油型乳化物は、各種添加剤、例えば、乳化剤、安定剤、糖類、乳成分、増粘剤(ゲル化剤)、保存料、着色料、香料、酸化防止剤、pH調整剤などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤のうち、乳化剤、糖類、乳成分が汎用される。具体的には、プリン用油脂組成物及び乳化剤を含む油相と、水、糖類及び乳成分を含む水相とを含むプリン用水中油型乳化物、或いは、プリン用油脂組成物を含む油相と、水、糖類、乳成分及び乳化剤を含む水相とを含むプリン用水中油型乳化物が汎用される。なお、ゲルプリンを調製する場合には、通常、増粘剤が使用され、水相に増粘剤を配合する場合が多い。
【0015】
乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリド;酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン)、酵素分解レシチンなどが例示できる。これらの乳化剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0016】
乳化剤の割合は、水相に対する油相の分散性に応じて適宜選択でき、例えば、プリン用水中油型乳化物の総質量に対して、0.05〜5質量%であってもよい。
【0017】
糖類としては、単糖(例えば、ブドウ糖、果糖)、二糖類(例えば、麦芽糖、乳糖、ショ糖、砂糖(上白糖、グラニュー糖など)、トレハロース)、オリゴ糖、澱粉分解物(例えば、水飴、粉飴)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール)などが例示できる。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
糖類の割合は、プリンの風味などに応じて適宜選択され、例えば、プリン用水中油型乳化物の総質量に対して、1〜20質量%であってもよい。
【0019】
乳成分としては、乳蛋白、例えば、牛乳、脱脂乳(スキムミルク)、全脂粉乳(全粉乳)、脱脂粉乳、無糖練乳、加糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、ホエー(乳清)、ホエーパウダー、バターミルク、バターミルクパウダー、カゼイン、カゼインナトリウムなどが例示できる。これらの乳成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
乳成分の割合は、乳成分の種類にもよるが、例えば、プリン用水中油型乳化物の総質量に対して、1〜20質量%であってもよい。
【0021】
増粘剤としては、寒天、ゼラチン、カラギーナン、ペクチンなどが例示できる。これらの増粘剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0022】
増粘剤の割合は、例えば、プリン用水中油型乳化物の総質量に対して、0.05〜5質量%であってもよい。
【0023】
油相と水相との割合(質量比)は、例えば、1/99〜50/50、好ましくは5/95〜40/60、さらに好ましくは10/90〜30/70であってもよい。
【0024】
プリン用水中油型乳化物は、慣用の方法、例えば、プリン用油脂組成物を含む油相と水相とを混合する工程(予備乳化工程)と、前記工程で得られた混合物(予備乳化物)を均質化する工程(均質化工程)とを含む方法により、調製できる。
【0025】
予備乳化工程において、油相と水相の混合温度は、通常、50〜80℃である。混合温度が上記の範囲にあると、次の均質化工程において、油相(油滴)の分散性を向上させることができる。
【0026】
均質化工程において、予備乳化物の均質化は、慣用の均質化装置、例えば、低速撹拌機、高速ブレンダー、ホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波式装置、静止型混合器を用いて行うことができる。均質化圧力は、通常、50〜350kg/cm
2である。均質化工程は、油滴のサイズや分散性に応じて、1回又は複数回行ってもよい。均質化工程を複数回行う場合、各回の均質化圧力は、同一であってもよく、異なってもよい。
【0027】
プリン用水中油型乳化物の調製方法は、さらに、必要に応じて、殺菌(滅菌)工程、冷却工程、及びエージング(熟成)工程の少なくとも1つの工程を含んでいてもよい。
【0028】
殺菌工程において、殺菌方法は、特に限定されないが、通常、加熱殺菌である。加熱温度は、通常、75〜150℃である。殺菌工程は、均質化工程の前又は後に行ってもよい。
【0029】
冷却工程において、冷却到達温度は、特に限定されず、エージング工程に供する場合はエージング温度に応じて選択され、エージング工程に供することなくプリンを調製する場合は卵成分の凝固温度等に応じて選択され、例えば、50℃以下である。
【0030】
エージング工程において、エージングは、通常、5℃〜10℃で6〜24時間行う。
【0031】
[プリン]
本発明は、上記プリン用油脂組成物(又は上記プリン用水中油型乳化物)を含むプリンも包含する。上記プリンは、蒸しプリン(焼きプリン又はカスタードプリン)であってもよく、ゲルプリンであってもよい。
【0032】
蒸しプリンは、卵成分を含むプリン用水中油型乳化物で構成される。卵成分としては、全卵、卵黄、卵白、これらの加工物(例えば、加温物、加糖物、乾燥物、凍結物、酵素処理物)などが例示できる。これらの卵成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
卵成分の割合は、例えば、プリン用水中油型乳化物の総質量に対して、5〜30質量%である。
【0034】
蒸しプリンは、慣用の方法、例えば、卵成分を含むプリン用水中油型乳化物を加熱する方法(直焼き、蒸し、蒸し焼きなど)により調製できる。加熱温度は、通常、80〜200℃である。
【0035】
ゲルプリンは、増粘剤を含むプリン用水中油型乳化物で構成される。ゲルプリンは、プリン用水中油型乳化物の項に記載の方法により、調製される。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
[プリン用油脂組成物の評価方法]
<SFC(固体脂含量)>
試料のSFCは、日本油化学会編「基準油脂分析試験法」(2013年)に記載の「2.2.9固体脂含量(NMR法)」に準拠して測定した。具体的には、試料を70℃の恒温槽で加熱し、均一にして試験管に入れた。試験管に入れた試料を60.0±0.2℃で30分間保持した。この試料を0±0.2℃に30分間保持し、さらに25±0.2℃に移し30分間保持した。再び0±0.2℃に30分間保持した後、測定温度(T±0.2℃)に30分間保持して、試料のNMRシグナルを測定した。測定後は試料を次の測定温度に移し、30分間保持した後、試料のNMRシグナルを測定した。以下、同様の操作を繰り返した。測定温度は5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃であり、低温から順に測定した。
【0038】
[プリンの評価方法]
<食感>
プリンの食感を5名のパネラーの協議により、以下の基準で評価した。
◎:乳脂肪を配合した場合と同等の硬さである
〇:乳脂肪を配合した場合とほぼ同等の硬さである
△:乳脂肪を配合した場合に比べて硬い又は軟らかい
×:乳脂肪を配合した場合に比べて非常に硬い又は軟らかい
<口どけ>
プリンの口どけを5名のパネラーの協議により、以下の基準で評価した。
◎:乳脂肪を配合した場合と同等の口どけである
〇:乳脂肪を配合した場合とほぼ同等の口どけである
△:乳脂肪を配合した場合に比べて口どけが速い又は口残りがある
×:乳脂肪を配合した場合に比べて口どけが非常に速い又は口残りが非常に多い
<油性感>
プリンの油性感を5名のパネラーの協議により、以下の基準で評価した。
◎:乳脂肪を配合した場合と同等の油性感である
〇:乳脂肪を配合した場合とほぼ同等の油性感である
△:乳脂肪を配合した場合と比べて油性感が強い又は弱い
×:乳脂肪を配合した場合と比べて油性感が非常に強い又は非常に弱い
【0039】
[ゲルプリンの調製]
油脂組成物15.82部と乳化剤[グリセリン脂肪酸エステル、商品名「エマルジーMP」(理研ビタミン株式会社製)]0.18部とを混合し、油相を調製した。
水65.8部と砂糖10.0部と脱脂粉乳8.0部とゲル化剤[増粘多糖類、商品名「ゲルアップPI」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)]0.2部とを混合し、水相を調製した。
上記油相16部と上記水相84部とを合わせて、65℃で予備乳化を行い、85℃で加熱殺菌し、ホモジナイザーを用いて150kg/cm
2の圧力、次いで20kg/cm
2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。該水中油型乳化物をプリンカップに充填し、5℃に冷却することにより、ゲルプリンを得た。
なお、油脂組成物として乳脂肪を使用する比較例では、上記油相16部の代わりに乳脂肪47質量%含有生クリーム34.0部を用いる点、水の量を49.3部に変更した点、及び、脱脂粉乳の量を6.5部に変更した点を除き、上記と同様にしてゲルプリンを調製した。
【0040】
[予備実験]
本発明者は、本発明の課題を解決すべく油脂の種類について鋭意検討を重ねたところ、パーム系油脂をエステル交換することにより、プリンの食感及び油性感が改善することを見出した。
具体的には、油脂組成物として、パーム分別低融点部、そのエステル交換油脂、又は乳脂肪(コントロール)を使用し、ゲルプリンを調製したところ、以下の表1に示す結果が得られた。
【0041】
【表1】
(1) パーム分別低融点部1のエステル交換油:パーム分別低融点部1に対して、0.12%のナトリウムメチラートを触媒とし、90℃で30分間、ランダムエステル交換反応を行い、脱色、脱臭することにより得た。
(2) パーム分別低融点部1:パームオレイン(ヨウ素価60、上昇融点20.0℃)
【0042】
表1の結果から明らかなように、パーム系油脂をエステル交換することにより、乳脂肪を配合したときのような良好な食感及び油性感が得られた。
【0043】
[本試験]
しかし、パーム系油脂のエステル交換油脂(A)単独では、乳脂肪を配合したときのような口どけが得られなかった。そこで、本発明者は、以下の表2に示す油脂組成物を用いて、ゲルプリンを調製し、食感、口どけ、及び油性感について評価した。
【0044】
【表2】
(3) パーム分別低融点部2:パームオレイン(ヨウ素価56、上昇融点22.5℃)
(4) パーム分別中融点部:パームミッドフラクション(ヨウ素価45、上昇融点27.5℃)
【0045】
【表3】
【0046】
表2〜3の結果から明らかなように、パーム系油脂のエステル交換油脂(A)とパーム系油脂の非エステル交換油脂(B)とを組み合わせることにより、乳脂肪を配合したときのような良好な食感、口どけ、及び油性感が得られた。
【0047】
[蒸しプリンの調製]
油脂組成物14.85部と乳化剤[グリセリン脂肪酸エステル、商品名「エマルジーMP」(理研ビタミン株式会社製)]0.15部とを混合し、油相を調製した。
水54.0部と砂糖11.0部と脱脂粉乳8.0部とを混合して水相を調製し、該水相を60℃まで加熱した後、上記油相と合わせて、65℃で予備乳化を行い、85℃で加熱殺菌し、40℃に冷却し、予備乳化物を得た。
上記予備乳化物に卵12部を混合し、ホモジナイザーを用いて130kg/cm
2の圧力、次いで50kg/cm
2の圧力で均質化し、水中油型乳化物を得た。該水中油型乳化物をプリンカップに分注し、該プリンカップを、水を張ったトレイに置き、85℃で50分間湯煎焼きし、5℃に冷却し、蒸しプリンを得た。
なお、油脂組成物として乳脂肪を使用する比較例では、上記油相15部の代わりに乳脂肪47質量%含有生クリーム31.81部を用いた点、及び、水の量を38.52部に変更した点を除き、上記と同様にして蒸しプリンを調製した。
【0048】
【表4】
【0049】
表4に示されるとおり、蒸しプリンの場合でも、ゲルプリンの場合と同様の結果が得られた。すなわち、パーム系油脂のエステル交換油脂(A)とパーム系油脂の非エステル交換油脂(B)とを組み合わせることにより、乳脂肪を配合したときのような良好な食感、口どけ、及び油性感が得られた。