特開2019-108538(P2019-108538A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-108538(P2019-108538A)
(43)【公開日】2019年7月4日
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20190614BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20190614BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20190614BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20190614BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20190614BHJP
【FI】
   C08G18/00 J
   C08G18/00 K
   C08G18/00 L
   C08K3/26
   C08K5/09
   C08L75/04
   C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-232808(P2018-232808)
(22)【出願日】2018年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-240428(P2017-240428)
(32)【優先日】2017年12月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌仁
(72)【発明者】
【氏名】岡田 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 忠史
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002DE226
4J002EF027
4J002FD036
4J002FD037
4J002GC00
4J002GN00
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DH06
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD12
4J034KE02
4J034MA03
4J034MA12
4J034MA18
4J034NA03
4J034QB01
4J034QB14
4J034QC10
4J034RA03
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームの製造に際し、発熱温度の上昇を抑えて、ポリウレタンフォームにスコーチを生じ難くでき、かつポリウレタンフォームを低密度にできるポリウレタンフォームの製造方法を目的とする。
【解決手段】ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム原料を混合、反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、ポリウレタンフォーム原料に炭酸水素ナトリウムと、クエン酸またはリンゴ酸などの有機固体酸を含み、炭酸水素ナトリウムと固体酸との吸熱反応、及び炭酸水素ナトリウムの熱分解によってポリウレタンフォーム製造時の発熱温度上昇を抑える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム原料を混合、反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記ポリウレタンフォーム原料に炭酸水素ナトリウムと有機固体酸を含むことを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
前記有機固体酸の融点が40〜190℃であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
前記有機固体酸がクエン酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比で前記クエン酸の添加量の3〜50倍であることを特徴とする請求項3に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール100重量部に対して炭酸水素ナトリウムの添加量は0.4〜15重量部、前記クエン酸の添加量は0.1〜0.8重量部であることを特徴とする請求項3または4に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項6】
前記有機固体酸がリンゴ酸であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
前記炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比で前記リンゴ酸の添加量の2〜50倍であることを特徴とする請求項6に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項8】
前記ポリオール100重量部に対して炭酸水素ナトリウムの添加量は0.4〜15重量部、前記リンゴ酸の添加量は0.1〜1.0重量部であることを特徴とする請求項6または7に記載のポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、衣類のパッド、家具類、寝具類、自動車の座席等のクッション材に、幅広く使用されている。
ポリウレタンフォームは、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、および触媒を含むポリウレタンフォーム原料を、混合、反応させて製造される。
【0003】
ポリウレタンフォームの特徴の一つとして軽量性がある。ポリウレタンフォームの軽量性を高めるには、発泡剤の量を増加させて低密度のポリウレタンフォームにする必要がある。しかし、低密度のポリウレタンフォームを製造するために、発泡剤として水のみを使用してその添加量を増加させると、反応(泡化反応と樹脂化反応)による発熱温度が170℃以上の高温に達するようになる。そして、その発熱により、ポリウレタンフォームにおいてスコーチ(焦げ、焼け)が発生し、品質の低下を引き起こすおそれがある。
発熱によるスコーチの発生を抑えるために、水の添加量増加に代えて、発泡助剤として塩化メチレンや液化炭酸ガスを添加する方法が知られている。
【0004】
しかし、塩化メチレンは、環境等に悪影響を与えるため、使用が規制されている。一方、液化炭酸ガスは、使用に際して液化炭酸ガスを高圧で供給する専用設備が必要になり、製造装置が複雑になると共に、製造コストが嵩む問題がある。
【0005】
発熱温度を抑える方法として、ポリウレタンフォーム原料に炭酸水素塩を添加し、ポリウレタンフォーム製造時の発熱によって炭酸水素塩を分解して水を生成し、その水の蒸発潜熱(気化熱)で発熱を抑制する方法が知られている(特許文献1)。炭酸水素塩の分解反応は吸熱反応であることから、それによってもポリウレタンフォーム製造時の発熱を抑えることができる。
【0006】
発熱温度を抑える別の方法として、ポリウレタンフォーム原料に分解温度が100〜170℃である無機化合物の水和物を添加し、無機化合物の水和物の分解により生成する水の蒸発によって発熱温度の上昇を抑制する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−199869号公報
【特許文献2】特許第4410665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ポリウレタンフォーム原料に炭酸水素塩を添加する方法は、炭酸水素塩の分解温度が、例えば炭酸水素ナトリウムの場合に270℃であり、ポリウレタンフォーム製造時の発熱温度が炭酸水素塩の分解温度以上になるまで炭酸水素塩の分解が始まらないため、その間にスコーチが進行するおそれがある。
【0009】
一方、ポリウレタンフォーム原料に無機化合物の水和物を添加する方法は、ポリウレタンフォーム原料に添加されている発泡剤としての水の量が多い場合、水とイソシアネートの反応が急激に行われるため、反応調整が難しい。そのため、この方法では、ポリウレタンフォーム原料注入機からの連続吐出時にポリウレタンフォームの表面に流れ縞が発生したり、硬化後の表面に割れが発生したりする等の外観不良が発生することがある。また、無機化合物の水和物の添加量が増えると、ポリウレタンフォームの密度が高くなるため、ポリウレタンフォームの密度を下げるためには、発泡剤としての水の添加量を増加させる必要があり、それによって、水とイソシアネートの反応が急激になったり、発熱が大きくなったりする。
【0010】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、ポリウレタンフォーム原料の混合、反応による発熱温度の上昇を抑えてスコーチを生じ難くでき、かつ低密度なポリウレタンフォームを得ることができる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒を含むポリウレタンフォーム原料を混合、反応させてポリウレタンフォームを製造する方法において、前記ポリウレタンフォーム原料に炭酸水素ナトリウムと有機固体酸を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記有機固体酸の融点が40〜190℃であることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記有機固体酸がクエン酸であることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項3において、前記炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比で前記クエン酸の添加量の3〜50倍であることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明は、請求項3または4において、前記ポリオール100重量部に対して炭酸水素ナトリウムの添加量は0.4〜15重量部、前記クエン酸の添加量は0.1〜0.8重量部であることを特徴とする。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1または2において、前記有機固体酸がリンゴ酸であることを特徴とする。
【0017】
請求項7の発明は、請求項6において、前記炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比で前記リンゴ酸の添加量の2〜50倍であることを特徴とする。
【0018】
請求項8の発明は、請求項5または6において、前記ポリオール100重量部に対して炭酸水素ナトリウムの添加量は0.4〜15重量部、前記リンゴ酸の添加量は0.1〜1.0重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によれば、ポリウレタンフォーム原料に添加された炭酸水素ナトリウムと有機固体酸は、ポリウレタンフォーム原料の混合後、第1段階の吸熱反応が緩やかに開始され、ポリウレタンフォーム原料の反応による温度上昇を抑えることができる。有機固体酸の融点が40〜190℃であれば、ポリウレタン製造時の反応(泡化反応または樹脂化反応)開始後に、炭酸水素ナトリウムとの第1段階の吸熱反応をより確実に進行させ、発熱温度を抑え、物性の低下も抑えることができる。さらに上記の融点範囲を有する有機固体酸であれば、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤等のポリウレタンフォーム原料にあらかじめ配合しておくことが可能となり、特別な製造設備を用いずにポリウレタンフォームを製造することができる。
【0020】
有機固体酸がクエン酸の場合における第1段階の吸熱反応は、図1に示す通りであり、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の反応によって、クエン酸三ナトリウムと水及び二酸化炭素が発生し、その際の吸熱により、ポリウレタンフォーム原料の反応による温度上昇を抑えることができる。
【0021】
また、前記第1段階の吸熱反応で消費されなかった炭酸水素ナトリウムは、ポリウレタンフォーム原料のその後の反応進行による発熱で、図1に示す第2段階の吸熱反応が行われ、ポリウレタンフォーム原料の反応による温度上昇をさらに抑えることができる。第2段階の吸熱反応では、第1段階の吸熱反応で消費されなかった炭酸水素ナトリウムが、炭酸ナトリウムと水及び二酸化炭素に熱分解する。
【0022】
有機固体酸がクエン酸の場合、第1段階の吸熱反応では、炭酸水素ナトリウムの3モルとクエン酸の1モルが反応するため、第2段階の吸熱反応を行わせるには、炭酸水素ナトリウムの添加量はモル比でクエン酸の3倍以上必要となる。また、炭酸水素ナトリウムの分子量は84、クエン酸の分子量は192であるため、第1段階の吸熱反応後に第2段階の吸熱反応を行わせるための炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比でクエン酸の1.32倍以上必要になる。炭酸水素ナトリウムの添加量の好ましい添加量は、重量比でクエン酸の添加量の3〜50倍、より好ましくは5〜40倍であり、この範囲とすることにより、第2段階の吸熱反応を充分に行わせることができる。
【0023】
また、有機固体酸がリンゴ酸の場合における第1段階の吸熱反応及び第2段階の吸熱反応を図2に示す。第1段階の吸熱反応では、炭酸水素ナトリウムの2モルとリンゴ酸の1モルが反応するため、第2段階の吸熱反応を行わせるには、炭酸水素ナトリウムの添加量はモル比でリンゴ酸の2倍以上必要となる。また、炭酸水素ナトリウムの分子量は84、リンゴ酸の分子量は134であるため、第1段階の吸熱反応後に第2段階の吸熱反応を行わせるための炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比でリンゴ酸の1.26倍以上必要になる。炭酸水素ナトリウムの添加量の好ましい添加量は、重量比でリンゴ酸の添加量の2〜50倍、より好ましくは2.5〜40倍であり、この範囲とすることにより、第2段階の吸熱反応を充分に行わせることができる。
【0024】
また、炭酸水素ナトリウムと有機固体酸(例えばクエン酸またはリンゴ酸)の反応分解物として水と二酸化炭素が発生し、発生した水は蒸発し、二酸化炭素もポリウレタンフォームから自然放出されるため、ポリウレタンフォームを軽くすることができる。
【0025】
さらに、原料として有機固体酸を添加するため、液化した有機酸により、ポリウレタンフォーム原料の急激な反応が抑えられることになり、ポリウレタンフォーム注入機からの吐出時の流れ縞や、硬化後の割れなどの外観不良の発生を抑えることができる。
【0026】
さらに、炭酸水素ナトリウムの単体添加や無機化合物の水和物の添加と比べ、炭酸水素ナトリウムと有機固体酸の添加は、少量の添加で大きな吸熱効果が得られる。このため、炭酸水素ナトリウムの単体添加や無機化合物の水和物の添加の場合と同じ発泡剤の添加量であっても、ポリウレタンフォームの低密度化(軽量化)が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】炭酸水素ナトリウムとクエン酸による吸熱反応を示す図である。
図2】炭酸水素ナトリウムとリンゴ酸による吸熱反応を示す図である。
図3】比較例の配合と物性測定結果を示す表である。
図4】実施例の配合と物性測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のポリウレタンフォームの製造は、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、炭酸水素ナトリウム、および有機固体酸を含むポリウレタンフォーム原料の混合・反応により行われる。
【0029】
ポリオールとしては、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができる。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0031】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0032】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が20〜300mgKOH/g、官能基数が2〜6、重量平均分子量が500〜15,000であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。
【0033】
イソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0034】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、80以上が好ましく、より好ましくは90〜130である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0035】
発泡剤としては、水が好ましい。水はポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡を行う。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して4〜10重量部が好ましい。
【0036】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N−エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒は、アミン触媒と金属触媒の何れか一方のみ、あるいは両者の併用でもよい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.05〜1.0重量部が好ましい。金属触媒の量は、0又は0.05〜0.5重量部が好ましい。
【0037】
炭酸水素ナトリウムは、ポリウレタフォーム原料に添加される。炭酸水素ナトリウムの添加量をポリオール100重量部に対して0.4〜15重量部の範囲が好ましい。前記添加量の範囲とすることにより、吸熱反応をより良好に行うことができる。
【0038】
有機固体酸は、常温(23℃)で固体状の有機酸である。有機固体酸は、融点が40℃〜190℃の有機酸、特にヒドロキシ酸、カルボン酸が好ましく、より好ましくは融点が100〜170℃である。前記範囲の融点を有する有機固体酸を使用することにより、ポリウレタン製造時の反応(泡化反応または樹脂化反応)開始後に、炭酸水素ナトリウムとの第1段階の吸熱反応をより確実に進行させ、発熱温度を抑え、物性の低下も抑えることができる。さらに上記の融点範囲を有する有機固体酸であれば、ポリオール、触媒、整泡剤、発泡剤等のポリウレタンフォーム原料にあらかじめ配合しておくことが可能となり、特別な製造設備を用いずにポリウレタンフォームを製造することができる。
【0039】
融点が40℃〜190℃の有機固体酸としては、脂肪族ヒドロキシ酸、芳香族ヒドロキシ酸、ヒドロキシ基を有する多塩基カルボン酸、さらにカルボン酸等が挙げられる。脂肪族ヒドロキシ酸としては、グリコール酸(融点:75℃)、リンゴ酸(融点:130℃)、酒石酸(融点:151〜170℃)、クエン酸(融点:153℃)、キナ酸(融点:168℃)、シキミ酸(融点:185〜187℃)等の脂肪族ヒドロキシ酸が挙げられる。芳香族ヒドロキシ酸としては、サリチル酸(融点:159℃)、オルセリン酸(融点:175℃)、マンデル酸(融点:119℃)、ベンジル酸(融点:150〜152℃)、フェルラ酸(融点:168〜172℃)、等が挙げられる。
【0040】
また、カルボン酸としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸が挙げられる。
飽和脂肪酸としては、12−ラウリン酸(融点:44〜46℃)、ミリスチン酸(融点:54.4℃)、ペンタデカン酸(融点:51〜53℃)、パルミチン酸(融点:62.9℃)、マルガリン酸(融点:61℃)、ステアリン酸(融点:69.9℃)、ベヘン酸(融点:74〜78℃)、リグノセリン酸(融点:84.2℃)、が挙げられる。
【0041】
不飽和脂肪酸としては、オレイン酸(融点:134℃)、ソルビン酸(融点:135℃)エライジン酸(融点:43〜45℃)、等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、安息香酸(融点:122.4℃)、ケイ皮酸(融点:133℃)、が挙げられ、ジカルボン酸としては、マロン酸(融点:135℃)、グルタル酸(融点:95〜98℃)、アジピン酸(融点:152℃)、マレイン酸(融点:131℃)、コハク酸(融点:185〜187℃)等が挙げられる。
【0042】
特にクエン酸(融点:153℃)とリンゴ酸(ヒドロキシ酸、融点:130℃)は、本発明において、より好ましい有機固体酸である。
クエン酸の添加量は、ポリオール100重量部に対して0.1〜0.8重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.6重量部である。前記添加量の範囲とすることにより、炭酸水素ナトリウムとの吸熱反応をより良好に行うことができる。
一方、リンゴ酸の添加量は、ポリオール100重量に対して0.1〜1.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8重量部であり、更に好ましくは0.1〜0.6重量部である。前記添加量の範囲とすることにより、炭酸水素ナトリウムとの吸熱反応をより良好に行うことができる。
【0043】
有機固体酸としてクエン酸を使用する場合、炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比でクエン酸の添加量の3〜50倍が好ましく、より好ましくは5〜40倍である。前記重量比の添加量とすることにより、図1の第1段階の吸熱反応後に第2段階の吸熱反応を行わせることができる。
一方、有機固体酸としてリンゴ酸を使用する場合、炭酸水素ナトリウムの添加量は、重量比でリンゴ酸の添加量の2〜50倍が好ましく、より好ましくは2.5〜40倍である。前記重量比の添加量とすることにより、図2の第1段階の吸熱反応後に第2段階の吸熱反応を行わせることができる。
【0044】
ポリウレタンフォーム原料には、その他の助剤を加えてもよい。助剤として、例えば、整泡剤や着色剤等を上げることができる。整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。着色剤としては、カーボン顔料等、ポリウレタンフォームの用途等に応じたものを使用できる。
【0045】
ポリウレタンフォームの製造における発泡は、スラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、ポリウレタンフォーム原料を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
【実施例】
【0046】
以下の成分を図3及び図4に示す配合で混合し、反応・発泡させて各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームを作製した。各成分の添加量の単位は重量部である。
・ポリオール1;ポリエーテルポリオール、数平均分子量:3000、官能基数3、水酸基価56.1mgKOH/g、品番:GP−3000、三洋化成工業社製
・ポリオール2;ポリマーポリオール、官能基数3、水酸基価32mgKOH/g、品番:EL−941、旭硝子社製
・発泡剤;水
・発泡助剤;塩化メチレン、品番:信越メチレンクロライド、信越化学工業株式会社製
・アミン触媒;品番:33LV、エアプロダクツ社製
・金属触媒;オクチル酸第一錫、品番:MRH110、城北化学工業社製
・整泡剤;シリコーン系整泡剤、品番:B8110、ゴールドシュミット社製
・炭酸水素ナトリウム
・クエン酸
・リンゴ酸
・二水石膏; 比重2.32、平均粒子径40μmの二水石膏、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製
・着色剤;カーボン顔料(カーボンコンテント20wt%の黒顔料)、品番;PC4114、大日本インキ化学工業株式会社製
・イソシアネート;2,4−TDI/2,6−TDI=80/20、品番:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業社製
【0047】
各比較例及び各実施例におけるポリウレタンフォームの製造時に、反応性を判断するためにクリームタイムとライズタイムを測定した。クリームタイムは、ポリウレタンフォーム原料が泡化反応を起こし、反応混合液が混合・吐出時の液状態からクリーム状に白濁しはじめるまでの時間であり、泡化反応の開始時間を意味する。一方、ライズタイムは、混合・吐出時から最大発泡高さになるまでの時間である。クリームタイムは、短い場合に初期の反応が急激であることを示し、長い場合に初期の反応が緩やかであることを示す。一方、ライズタイムは、最大発泡高さになるまでの時間であるため、ライズタイムからクリームタイムを減算した値が小の場合、クリームタイム以降の反応が急激であることを示し、逆に、減算した後の値が大の場合、クリームタイム以降の反応が緩やかであることを示す。
【0048】
また、発泡中の状態を目視で判断し、ダウンなどの発泡不良が発生した場合にフォーム状態を「×」、良好に発泡した場合にフォーム状態を「〇」にした。
発泡中の温度については、発泡時に熱電対をポリウレタンフォームの中央の位置にセットして、最高発熱温度を測定した。最高発熱温度の測定結果が170℃以上の場合に発熱レベル「高」、160℃以上〜170℃未満の場合に発熱レベル「中」、160℃未満の場合に発熱レベル「低」とした。
発泡後のポリウレタンフォームについては、外観を目視で観察し、表面に縞が明確に発生している場合に「×」、縞が薄い又は無い場合に「〇」とした。
【0049】
また、発泡後のポリウレタンフォームの物性について、密度(JIS K7220)、硬さ(JIS K6400)、引張強度(JIS K6400)、伸び(JIS K6400)、圧縮残留歪(JIS K6400)を測定した。
【0050】
比較例1は、ポリオールとしてポリオール1を100重量部、発泡剤として水を6重量部、アミン触媒を0.4重量部、金属触媒を0.4重量部、整泡剤を1重量部、着色剤としてカーボン顔料を13重量部、イソシアネートT−80を75.1重量部、イソシアネートインデックスを110とした例であり、炭酸水素ナトリウム、有機固体酸としてのクエン酸及びリンゴ酸、さらには無機化合物の水和物としての二水石膏の何れも添加しない例である。比較例1は、クリームタイム14秒、ライズタイム68秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度182℃、発熱レベル「高」、縞の状態「〇」、密度17.2kg/mであり、最高発熱温度が極めて高く、スコーチの問題がある。
【0051】
比較例2は、金属触媒を0.3重量部、二水石膏を20重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例2は、クリームタイム16秒、ライズタイム72秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度154℃、発熱レベル「低」、縞の状態「×」、密度22.4kg/mであり、最高発熱温度は低かった。しかし、二水石膏を20重量部添加した結果、明確な縞が発生したため、外観に問題があり、また密度が高い(重い)問題もある。
【0052】
比較例3は、発泡剤として水を4.9重量部、発泡助剤剤として塩化メチレンを6重量部、金属触媒を0.35重量部、イソシアネートT−80を63.3重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例3は、クリームタイム14秒、ライズタイム70秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度158℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度は20.0kg/mであり、発熱レベルも縞についても良好であった。しかし、発泡助剤として塩化メチレンを使用しているため、環境等に悪影響を与える問題がある。
【0053】
比較例4は、ポリオールとしてポリオール1の50重量部とポリオール2の50重量部を併用し、発泡剤として水を4.9重量部、発泡助剤として塩化メチレンを6重量部、金属触媒を0.35重量部、着色剤を0重量部、イソシアネートT−80を60.4重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例4は、クリームタイム15秒、ライズタイム82秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度156℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.3kg/mであり、発熱レベルも縞についても良好であった。しかし、発泡助剤として塩化メチレンを使用しているため、環境等に悪影響を与える問題がある。
【0054】
比較例5は、炭酸水素ナトリウムを6重量部添加した以外は、比較例1と同様である。比較例5は、クリームタイム12秒、ライズタイム60秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度172℃、発熱レベル「高」、縞の状態「×」、密度19.3kg/mであり、最高発熱温度が高く、また明確な縞が発生したため、外観に問題がある。
【0055】
比較例6は、リンゴ酸を1重量部添加した以外は、比較例1と同様である。比較例6は、クリームタイム32秒、ライズタイム125秒、フォーム状態「×」であり、発泡途中でダウンし、フォームが得られなかった。
【0056】
実施例1は、炭酸水素ナトリウムを3重量部、クエン酸を0.2重量部添加した以外は、比較例1と同様である。実施例1は、クリームタイム18秒、ライズタイム107秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度162℃、発熱レベル「中」、縞の状態「〇」、密度20.5kg/mであり、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の両方を添加した結果、比較例1と比べて反応が緩やかになり、最高発熱温度を低下させ、縞の発生を抑えることができた。また、二水石膏を添加した比較例2と比べ、低密度(軽量)である。
【0057】
実施例2は、炭酸水素ナトリウムの添加量を6重量部に増加した以外は、実施例1と同様である。実施例2は、クリームタイム15秒、ライズタイム95秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度157℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.0kg/mであった。実施例2は、クエン酸を0.2重量部添加し、炭酸水素ナトリウムの添加量を6重量部に増やした結果、実施例1及び比較例5よりも最高発熱温度を低下させることができた。
【0058】
実施例3は、炭酸水素ナトリウムの添加量を10重量部に増加し、クエン酸を0.5重量部に増加した以外は、実施例1と同様である。実施例3は、クリームタイム17秒、ライズタイム102秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度145℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.3kg/mであった。炭酸水素ナトリウムの添加量を10重量部に増やし、クエン酸を0.5重量部に増やした結果、実施例1及び実施例2よりも最高発熱温度を低下させることができた。
【0059】
実施例4は、ポリオールとしてポリオール1の50重量部とポリオール2の50重量部を併用し、着色剤の添加量を0重量部とし、イソシアネートT−80を72.1重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例4は、クリームタイム16秒、ライズタイム93秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度154℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.5kg/mであり、ポリオールとしてポリオール1を単独使用した実施例2とほぼ同程度の結果であった。
【0060】
実施例5は、クエン酸に代えてリンゴ酸を0.2重量部添加した以外は、実施例2と同様である。実施例5は、クリームタイム17秒、ライズタイム98秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度160℃、発熱レベル「中」、縞の状態「〇」、密度20.9kg/mであった。クエン酸に代えてリンゴ酸を添加した結果、実施例2よりも最高発熱温度が僅かに上昇したが、他は実施例2と同様に良好であった。
【0061】
実施例6は、発泡剤として水を5.4重量部、炭酸水素ナトリウムを0.5重量部、着色剤を0重量部、イソシアネートT−80を64.7重量部、イソシアネートインデックスを105とした以外は、実施例5と同様である。実施例6は、クリームタイム13秒、ライズタイム70秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度156℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.6kg/mであり、実施例5とほぼ同程度の結果であった。
【0062】
実施例7は、炭酸水素ナトリウムを1重量部とした以外は、実施例6と同様である。実施例7は、クリームタイム13秒、ライズタイム64秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度155℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.1kg/mであり、実施例6とほぼ同程度の結果であった。
【0063】
このように、本発明の製造方法は、ポリウレタンフォーム原料の混合、反応による発熱温度の上昇を抑えてスコーチを生じ難くでき、かつ低密度なポリウレタンフォームを製造することができる。
図1
図2
図3
図4