【実施例】
【0046】
以下の成分を
図3及び
図4に示す配合で混合し、反応・発泡させて各比較例及び各実施例のポリウレタンフォームを作製した。各成分の添加量の単位は重量部である。
・ポリオール1;ポリエーテルポリオール、数平均分子量:3000、官能基数3、水酸基価56.1mgKOH/g、品番:GP−3000、三洋化成工業社製
・ポリオール2;ポリマーポリオール、官能基数3、水酸基価32mgKOH/g、品番:EL−941、旭硝子社製
・発泡剤;水
・発泡助剤;塩化メチレン、品番:信越メチレンクロライド、信越化学工業株式会社製
・アミン触媒;品番:33LV、エアプロダクツ社製
・金属触媒;オクチル酸第一錫、品番:MRH110、城北化学工業社製
・整泡剤;シリコーン系整泡剤、品番:B8110、ゴールドシュミット社製
・炭酸水素ナトリウム
・クエン酸
・リンゴ酸
・二水石膏; 比重2.32、平均粒子径40μmの二水石膏、株式会社ノリタケカンパニーリミテド製
・着色剤;カーボン顔料(カーボンコンテント20wt%の黒顔料)、品番;PC4114、大日本インキ化学工業株式会社製
・イソシアネート;2,4−TDI/2,6−TDI=80/20、品番:コロネートT−80、日本ポリウレタン工業社製
【0047】
各比較例及び各実施例におけるポリウレタンフォームの製造時に、反応性を判断するためにクリームタイムとライズタイムを測定した。クリームタイムは、ポリウレタンフォーム原料が泡化反応を起こし、反応混合液が混合・吐出時の液状態からクリーム状に白濁しはじめるまでの時間であり、泡化反応の開始時間を意味する。一方、ライズタイムは、混合・吐出時から最大発泡高さになるまでの時間である。クリームタイムは、短い場合に初期の反応が急激であることを示し、長い場合に初期の反応が緩やかであることを示す。一方、ライズタイムは、最大発泡高さになるまでの時間であるため、ライズタイムからクリームタイムを減算した値が小の場合、クリームタイム以降の反応が急激であることを示し、逆に、減算した後の値が大の場合、クリームタイム以降の反応が緩やかであることを示す。
【0048】
また、発泡中の状態を目視で判断し、ダウンなどの発泡不良が発生した場合にフォーム状態を「×」、良好に発泡した場合にフォーム状態を「〇」にした。
発泡中の温度については、発泡時に熱電対をポリウレタンフォームの中央の位置にセットして、最高発熱温度を測定した。最高発熱温度の測定結果が170℃以上の場合に発熱レベル「高」、160℃以上〜170℃未満の場合に発熱レベル「中」、160℃未満の場合に発熱レベル「低」とした。
発泡後のポリウレタンフォームについては、外観を目視で観察し、表面に縞が明確に発生している場合に「×」、縞が薄い又は無い場合に「〇」とした。
【0049】
また、発泡後のポリウレタンフォームの物性について、密度(JIS K7220)、硬さ(JIS K6400)、引張強度(JIS K6400)、伸び(JIS K6400)、圧縮残留歪(JIS K6400)を測定した。
【0050】
比較例1は、ポリオールとしてポリオール1を100重量部、発泡剤として水を6重量部、アミン触媒を0.4重量部、金属触媒を0.4重量部、整泡剤を1重量部、着色剤としてカーボン顔料を13重量部、イソシアネートT−80を75.1重量部、イソシアネートインデックスを110とした例であり、炭酸水素ナトリウム、有機固体酸としてのクエン酸及びリンゴ酸、さらには無機化合物の水和物としての二水石膏の何れも添加しない例である。比較例1は、クリームタイム14秒、ライズタイム68秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度182℃、発熱レベル「高」、縞の状態「〇」、密度17.2kg/m
3であり、最高発熱温度が極めて高く、スコーチの問題がある。
【0051】
比較例2は、金属触媒を0.3重量部、二水石膏を20重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例2は、クリームタイム16秒、ライズタイム72秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度154℃、発熱レベル「低」、縞の状態「×」、密度22.4kg/m
3であり、最高発熱温度は低かった。しかし、二水石膏を20重量部添加した結果、明確な縞が発生したため、外観に問題があり、また密度が高い(重い)問題もある。
【0052】
比較例3は、発泡剤として水を4.9重量部、発泡助剤剤として塩化メチレンを6重量部、金属触媒を0.35重量部、イソシアネートT−80を63.3重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例3は、クリームタイム14秒、ライズタイム70秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度158℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度は20.0kg/m
3であり、発熱レベルも縞についても良好であった。しかし、発泡助剤として塩化メチレンを使用しているため、環境等に悪影響を与える問題がある。
【0053】
比較例4は、ポリオールとしてポリオール1の50重量部とポリオール2の50重量部を併用し、発泡剤として水を4.9重量部、発泡助剤として塩化メチレンを6重量部、金属触媒を0.35重量部、着色剤を0重量部、イソシアネートT−80を60.4重量部とした以外は、比較例1と同様である。比較例4は、クリームタイム15秒、ライズタイム82秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度156℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.3kg/m
3であり、発熱レベルも縞についても良好であった。しかし、発泡助剤として塩化メチレンを使用しているため、環境等に悪影響を与える問題がある。
【0054】
比較例5は、炭酸水素ナトリウムを6重量部添加した以外は、比較例1と同様である。比較例5は、クリームタイム12秒、ライズタイム60秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度172℃、発熱レベル「高」、縞の状態「×」、密度19.3kg/m
3であり、最高発熱温度が高く、また明確な縞が発生したため、外観に問題がある。
【0055】
比較例6は、リンゴ酸を1重量部添加した以外は、比較例1と同様である。比較例6は、クリームタイム32秒、ライズタイム125秒、フォーム状態「×」であり、発泡途中でダウンし、フォームが得られなかった。
【0056】
実施例1は、炭酸水素ナトリウムを3重量部、クエン酸を0.2重量部添加した以外は、比較例1と同様である。実施例1は、クリームタイム18秒、ライズタイム107秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度162℃、発熱レベル「中」、縞の状態「〇」、密度20.5kg/m
3であり、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の両方を添加した結果、比較例1と比べて反応が緩やかになり、最高発熱温度を低下させ、縞の発生を抑えることができた。また、二水石膏を添加した比較例2と比べ、低密度(軽量)である。
【0057】
実施例2は、炭酸水素ナトリウムの添加量を6重量部に増加した以外は、実施例1と同様である。実施例2は、クリームタイム15秒、ライズタイム95秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度157℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.0kg/m
3であった。実施例2は、クエン酸を0.2重量部添加し、炭酸水素ナトリウムの添加量を6重量部に増やした結果、実施例1及び比較例5よりも最高発熱温度を低下させることができた。
【0058】
実施例3は、炭酸水素ナトリウムの添加量を10重量部に増加し、クエン酸を0.5重量部に増加した以外は、実施例1と同様である。実施例3は、クリームタイム17秒、ライズタイム102秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度145℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.3kg/m
3であった。炭酸水素ナトリウムの添加量を10重量部に増やし、クエン酸を0.5重量部に増やした結果、実施例1及び実施例2よりも最高発熱温度を低下させることができた。
【0059】
実施例4は、ポリオールとしてポリオール1の50重量部とポリオール2の50重量部を併用し、着色剤の添加量を0重量部とし、イソシアネートT−80を72.1重量部とした以外は、実施例2と同様である。実施例4は、クリームタイム16秒、ライズタイム93秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度154℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.5kg/m
3であり、ポリオールとしてポリオール1を単独使用した実施例2とほぼ同程度の結果であった。
【0060】
実施例5は、クエン酸に代えてリンゴ酸を0.2重量部添加した以外は、実施例2と同様である。実施例5は、クリームタイム17秒、ライズタイム98秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度160℃、発熱レベル「中」、縞の状態「〇」、密度20.9kg/m
3であった。クエン酸に代えてリンゴ酸を添加した結果、実施例2よりも最高発熱温度が僅かに上昇したが、他は実施例2と同様に良好であった。
【0061】
実施例6は、発泡剤として水を5.4重量部、炭酸水素ナトリウムを0.5重量部、着色剤を0重量部、イソシアネートT−80を64.7重量部、イソシアネートインデックスを105とした以外は、実施例5と同様である。実施例6は、クリームタイム13秒、ライズタイム70秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度156℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.6kg/m
3であり、実施例5とほぼ同程度の結果であった。
【0062】
実施例7は、炭酸水素ナトリウムを1重量部とした以外は、実施例6と同様である。実施例7は、クリームタイム13秒、ライズタイム64秒、フォーム状態「〇」、最高発熱温度155℃、発熱レベル「低」、縞の状態「〇」、密度21.1kg/m
3であり、実施例6とほぼ同程度の結果であった。
【0063】
このように、本発明の製造方法は、ポリウレタンフォーム原料の混合、反応による発熱温度の上昇を抑えてスコーチを生じ難くでき、かつ低密度なポリウレタンフォームを製造することができる。