【解決手段】車両用ドア開閉装置10は、レール16bおよびスライドドアと連結されレール16bに沿って移動するアーム22と組み合わされる。車両用ドア開閉装置10は、アーム22に接続されたベルト40がレール16bの形状に沿って循環するようにガイドするベルトガイド部24と、ベルト40を駆動させる駆動部27とを有する。駆動部27はボディパネルに設けられた挿入孔から車室内に突出し、ベルト40の一部を車室内に迂回させる迂回部29と、ベルト40を駆動するモータ28とを備える。車両用ドア開閉装置10はレール16bと別体構造であり、ボディパネルに対してレール16bよりも後に取り付け可能である。
車両のボディパネルの前後方向に沿う直線状の長尺面及び該長尺面の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲面に沿って、無端ベルトが循環するようにガイドするベルトガイド部と、
前記湾曲面に設けられた挿入孔から後方または斜め後方に向けて車室内に突出し、前記無端ベルトの一部を車室内に迂回させて駆動させる駆動部と、
を有する車両用ドア開閉装置であって、
前記無端ベルトは前記ベルトガイド部でアームを介してスライドドアに接続され、前記アームは前記ボディパネルに取り付けられたレールによってガイドされ、前記ベルトガイド部は前記レールと別体構造であることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
車両のボディパネルの前後方向に沿う直線状の長尺面及び該長尺面の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲面に沿って無端ベルトが循環するようにガイドするベルトガイド部と、
前記湾曲面を含む箇所に設けられた挿入孔から後方または斜め後方に向けて車室内に突出し、前記無端ベルトの一部を車室内に迂回させて駆動させる駆動部とを有し、
前記無端ベルトに接続されたアーム、および前記長尺面及び前記湾曲面に沿って前記アームをガイドするレールに対して組み合わされる車両用ドア開閉装置を前記ボディパネルに取り付ける車両用ドア開閉装置の取付方法であって、
前記レールを前記ボディパネルに取り付けるレール取付工程と、
前記ボディパネルに取り付けられた前記レールを前記ボディパネルとともに塗装するレール塗装工程と、
前記レール塗装工程の後、前記車両用ドア開閉装置を前記ボディパネルに取り付ける本体取付工程と、
を有することを特徴とする車両用ドア開閉装置の取付方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおりワイヤの代わりにベルトを用いる車両用ドア開閉装置も提案されているが、軽量化や車両への取付方法にはいまだ改善の余地が残る。特許文献1および特許文献2に記載の装置では、ワイヤを案内する部分とアームを案内するレールとが一体構造であって重量が重く、またワイヤやプーリに塗料が付着しないようにレールだけを塗装することは難しい。
【0007】
さらに、車両用ドア開閉装置は本体性能以外にも車両に取り付ける工程において課題がある。すなわち、レール部材は取り付けまたは運搬する際に傷つけると発錆原因となることから注意が必要である。特に塗装された鋼材は塗膜が剥げると錆びやすいので注意を要する。レール部材は視認されるものであり、車両用ドア開閉装置をボディパネルの塗装後に取り付ける場合には、塗装色は不自然に目立つことがないように黒とされることが多い。レール部材をボディパネルと同色にするという要請もあるが、ボディ塗装と別工程で塗装をすると工程が増えるとともに色味の完全な一致が難しい場合がある。さらに、車両用ドア開閉装置はいまだ十分に軽量化されているとはいえず、特に取付工程での労力の観点から一層の軽量化が望まれる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、車両への取り付けが容易で、レールをボディと同色に塗装可能で発錆しにくい車両用ドア開閉装置およびその取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる車両用ドア開閉装置は、車両のボディパネルの前後方向に沿う直線状の長尺面及び該長尺面の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲面に沿って、無端ベルトが循環するようにガイドするベルトガイド部と、前記湾曲面に設けられた挿入孔から後方または斜め後方に向けて車室内に突出し、前記無端ベルトの一部を車室内に迂回させて駆動させる駆動部と、を有する車両用ドア開閉装置であって、前記無端ベルトは前記ベルトガイド部でアームを介してスライドドアに接続され、前記アームは前記ボディパネルに取り付けられたレールによってガイドされ、前記ベルトガイド部は前記レールと別体構造であることを特徴とする。
【0010】
前記ボディパネルは前記スライドドアを閉状態に保持するドアロック用のストライカを備え、前記挿入孔は前記ストライカの下方に設けられていてもよい。
【0011】
前記ベルトガイド部は、前記湾曲面に沿った部分を含む前方ガイド部と、前記前方ガイド部に対して連結された後方ガイド部とを有し、前記駆動部は、前記前方ガイド部から車室内に突出していてもよい。
【0012】
前記後方ガイド部は、前記前方ガイド部との連結箇所を中心として水平面上で回転可能に連結されていてもよい。
【0013】
前記後方ガイド部は、前記前方ガイド部に対して前後方向に進退可能に連結されていてもよい。
【0014】
前記前方ガイド部と前記後方ガイド部との間で前後方向にずれた位置に設けられた2組の嵌合機構を有し、前記2組の嵌合機構はそれぞれ、前記前方ガイド部および前記後方ガイド部のいずれか一方から車幅方向に突出する凸部と、他方に設けられて前記凸部が嵌合する嵌合孔と、を有し、前記嵌合孔は前記凸部よりも前後方向幅が長くてもよい。
【0015】
前記2組の嵌合機構のうち少なくとも一方で、前記凸部は前記嵌合孔から突出した部分に抜止部を有してもよい。
【0016】
前記ベルトガイド部は前記駆動部の周囲に前記ボディパネルに固定する取付座を備え、前記レールおよび前記ベルトガイド部は前記ボディパネルに設けられる凹部に取り付けられ、前記凹部は一部がフィニッシャーで覆われ、前記ベルトガイド部または前記取付座は、前記フィニッシャーを固定するフィニッシャー固定部を有し、前記フィニッシャーが取り付けられる方向視で、前記フィニッシャー固定部は前記取付座で囲まれる範囲内に設けられていてもよい。
【0017】
前記ベルトガイド部は前記駆動部の周囲に前記ボディパネルに固定する取付座を備え、前記取付座の下方突出部は前記レールと前記挿入孔の下部の前記ボディパネルとの隙間に入り込んでいてもよい。
【0018】
前記ベルトガイド部の前端部に前記無端ベルトの方向転換をするプーリを有し、前記ボディパネルに取り付けるヒンジブラケットを前記プーリと同軸構造で回転可能に設けられていてもよい。
【0019】
前記ベルトガイド部の後端部は、車幅方向で係合するスナップフィットによって前記ボディパネルまたは前記レールに固定されていてもよい。
【0020】
前記ベルトガイド部で前記レールに沿った形状に形成されるベース枠体が樹脂製であってもよい。
【0021】
前記無端ベルトはタイミングベルトであって、前記タイミングベルトと前記アームとを接続するベルト接続具は、前記タイミングベルトの歯を3または4挟み込むようにして固定されていてもよい。
【0022】
前記無端ベルトはタイミングベルトであって、歯面に設けられた歯布と、前記歯面を形成する歯ゴム層と、前記歯ゴム層の周囲に設けられ、周方向に巻かれた複数の心線と、前記心線を介して前記歯ゴム層の外側に設けられた背ゴム層と、を有してもよい。
【0023】
前記歯面の頂部には、無端ベルトの幅方向に延在する窪み部が設けられていてもよい。
【0024】
前記スライドドアはリア側ドアであり、前記レールはセンターレールであって、側面視で、前記駆動部はリア側シートベルトリトラクタ、フューエルパイプカバー及びリア側タイヤハウスに囲まれる空間に配置されていてもよい。
【0025】
また、本発明にかかる車両用ドア開閉装置の取付方法は、車両のボディパネルの前後方向に沿う直線状の長尺面及び該長尺面の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲面に沿って無端ベルトが循環するようにガイドするベルトガイド部と、前記湾曲面を含む箇所に設けられた挿入孔から後方または斜め後方に向けて車室内に突出し、前記無端ベルトの一部を車室内に迂回させて駆動させる駆動部とを有し、前記無端ベルトに接続されたアーム、および前記長尺面及び前記湾曲面に沿って前記アームをガイドするレールに対して組み合わされる車両用ドア開閉装置を前記ボディパネルに取り付ける車両用ドア開閉装置の取付方法であって、前記レールを前記ボディパネルに取り付けるレール取付工程と、前記ボディパネルに取り付けられた前記レールを前記ボディパネルとともに塗装するレール塗装工程と、前記レール塗装工程の後、前記車両用ドア開閉装置を前記ボディパネルに取り付ける本体取付工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる車両用ドア開閉装置およびその取付方法では、車両用ドア開閉装置とレールが別体であり、それぞれ単体では軽いために車体への取り付けが容易となる。また、レールと車両用ドア開閉装置を別々に車体に取り付けることから、レールを取り付けた後で車両用ドア開閉装置を取り付ける前にレールをボディパネルとともに同色に塗装でき、しかも発錆しにくくなる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる車両用ドア開閉装置およびその取付方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態にかかる車両用ドア開閉装置10は小型ワゴンタイプの車両12に搭載されており、後側のドア14を自動開閉させるものである。以下の車両用ドア開閉装置10の説明では断りのない限り、その向きを車両12を基準とした前方、後方、前後方向、車幅方向、車幅内側方向、高さ方向として表す。高さ方向は鉛直方向とも呼ぶ。また、図面中には方向を容易に認識可能なように、前後方向をX、前方をX1、後方をX2、車幅方向をY、車幅内側方向をY1、車幅外側方向をY2、高さ方向をZとして矢印で適宜示す。
【0030】
ドア14はスライドドアであり、アッパーレール16a、センターレール16b(以下、レール16bとも呼ぶ。)及びロワーレール16cによって三点を支持されながら安定して開閉される。車両用ドア開閉装置10のほとんどは車体と同色のフィニッシャー17によって覆われている。
【0031】
車両12における給油口18は左後部のクオータパネル(ボディパネル)20におけるタイヤハウス21のやや上方に設けられており、レール16bは給油口18とタイヤハウス21の中間高さに設けられている。
図1で例示する車両12に限らず小型車における給油口18は概ね左右いずれかのこの位置に設けられていることが多い。
【0032】
図2および
図3に示すように、車両用ドア開閉装置10は、レール16bおよび、レール16bに沿って移動するアーム22と組み合わされてドア14を駆動するものである。車両用ドア開閉装置10およびレール16bはそれぞれクオータパネル20に固定することにより相対的な位置決めがなされ、両者が直接的に固定される必要はない。
【0033】
レール16bはドア14を案内する部材であり、車両12におけるボディ側面の前後方向に沿う直線状の長尺部32と、該長尺部32の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲部34とを備える。湾曲部34の車幅内側を指向する前方端部はわずかに直線状となっている。
【0034】
レール16bは鋼材で、断面が側方開口部を有する角型の変形C字形状である。アーム22はドア14に接続されるとともに複数のローラがレール16bの開口内部に当接しており、ドア14を安定かつスムーズに案内することができる。レール16bは内側面に設けられた複数の取付孔38を有する。後述するように、レール16bの上部室内側面124(
図15(a)参照)とレール取付用凹部114の面との間には隙間126が形成される。
【0035】
図3および
図4に示すように、車両用ドア開閉装置10はベルトガイド部24と、取付座26と、駆動部27とを有する。駆動部27はベルト40の駆動源であるモータ28と、ベルト40の一部を車室内に迂回させる迂回部29と、モータ28の回転を減速させて迂回部29に伝達させるギア部30とを有する。迂回部29およびギア部30はケース33の内部に設けられており、モータ28はケース33に取り付けられている。
【0036】
ベルトガイド部24は、レール16bの上方に配置され、レール16bの形状に沿ってゴム製で環状のベルト(無端ベルト)40を循環駆動させるためのものである。ベルト40は引っ張り強度の強い可撓性部材であり内面に一定間隔で設けられた多数の歯を有するタイミングベルトである。ベルト40の詳細な構成については後述する。
【0037】
ベルトガイド部24は、ベルト40を案内する前方ガイド部42aおよび後方ガイド部42bを有する。ベルト40はベルトガイド部24でベルト接続具44を介してアーム22に接続され、さらにアーム22を介してドア14に接続される。
【0038】
車両用ドア開閉装置10は、3つの大きな樹脂材45a,45b,45cを有する。樹脂材45aは取付座26の下側部分、前方ガイド部42aの下側部分およびケース33の下側部分を形成する。樹脂材45bは取付座26の上側部分、前方ガイド部42aの上側部分およびケース33の上側部分を形成する。樹脂材45aには2つのボルト孔88(
図7参照)が設けられている。樹脂材45aと樹脂材45bとは2つのボルト孔88からそれぞれボルトを螺入することにより一体的に締結される。樹脂材45aと樹脂材45bとは一部が嵌め合い構造となっており、安定して固定される。そして、樹脂材45aと樹脂材45bが上下に組み合わさることにより取付座26、前方ガイド部42aおよびケース33が一体的に形成される。このように取付座26、前方ガイド部42aおよびケース33は、それぞれ樹脂材45aおよび45bによって分割されるものであり、さらに他の部分と一体的に形成されているものであるが、便宜上それぞれが独立的な構成要素であるものとして説明する。樹脂材45cは後方ガイド部42bのベースとなっている。
【0039】
取付座26はクオータパネル20の挿入孔116(
図14参照)の周囲に固定する部分であり、適度に厚く形成されている。取付座26は挿入孔116の周囲形状に適合した鉛直面で構成されており、平面視では湾曲している。取付座26は四隅に孔26aを有する。前方の2つの孔26aは略前後方向に貫通し、後方の2つの孔26aは略車幅方向に貫通している。取付座26の内側面にはクオータパネル20との間に挟持されるシール46が設けられる。シール46は防水・防塵材で四隅R状の矩形環状に形成されている。
【0040】
前方ガイド部42aは、後方のやや短い直線部48と、直線部48の前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲部50とを備え、平面視でレール16bの湾曲部34に沿った形状となっている。前方ガイド部42aは直線部48から湾曲部50に亘って設けられた上板52と、下板54と、ガイド板56とを有する。ガイド板56は上板52と下板54とを接続しており、直線部48から湾曲部50に亘って滑らかな面を形成し、ベルト40のガイド作用を奏する。
【0041】
前方ガイド部42aは、さらに湾曲部50の前方端に設けられたタイミングプーリ60と、タイミングプーリ60と同軸回転可能に設けられたヒンジブラケット62とを有する。
【0042】
タイミングプーリ60は、回転軸が鉛直方向となる向きで、上板52および下板54によって回転自在に設けられている。タイミングプーリ60はベルトガイド部24の前端でベルト40を方向転換させる。つまり、ベルト40はタイミングプーリ60を経由して180°折り返し、ガイド板56の表側位置と裏側位置との間を移る。
【0043】
また、前方ガイド部42aは、直線部48における上板52の上面で前後に並んで設けられたフィニッシャー固定部64およびプレート取付座66を有する。フィニッシャー固定部64は、フィニッシャー17(
図2参照)の固定部の1つである。フィニッシャー17の取付方向視で、フィニッシャー固定部64は取付座26で囲まれる範囲内に設けられている。フィニッシャー固定部64の内側部は取付座26とつながっている。プレート取付座66にはL字型の保護プレート67が取り付けられる。保護プレート67は側面からの外力に対してベルトガイド部24を保護する。
【0044】
後方ガイド部42bは、前方ガイド部42aよりもやや長く、平面視でレール16bの長尺部32に沿った直線形状となっている。後方ガイド部42bは、上板72と、下板74と、ガイド板76とを有する。上板72、下板74、ガイド板76は、前方ガイド部42aの上板52、下板54、ガイド板56に相当する。
【0045】
後方ガイド部42bは、さらにストッパリブ80と、プーリ保持具84と、タイミングプーリ86とを有する。ストッパリブ80は上板72の前端近傍上面および下板74の前端近傍下面に設けられている。プーリ保持具84は後方ガイド部42bの後端に設けられている。タイミングプーリ86はプーリ保持具84によって鉛直軸で回転可能に保持されている。タイミングプーリ86はベルトガイド部24の後端でベルト40を方向転換させる。つまり、ベルト40はタイミングプーリ86を経由して180°折り返し、ガイド板76の表側位置と裏側位置との間を移る。
【0046】
ガイド板56,76、上板52,72および下板54,74は、ベルトガイド部24においてレール16bに沿った形状に形成されるベース枠体であり、その他のヒンジブラケット62、プーリ保持具84およびプーリ類を保持している。ベース枠体であるガイド板56,76、上板52,72および下板54,74は大きい部品であるが樹脂材45a,45b,45cで形成されており軽量である。また、レール16bはドア14を支持する強度の観点から一般的に金属製であるが、ベルトガイド部24はレール16bとは別体であることから、樹脂化が可能となっている。さらに、ベルトガイド部24はレール16bとは別体で樹脂製であることから、前方ガイド部42aと後方ガイド部42bとに分けた構成が容易に実現されるとともに、後方ガイド部42bの進退・回転機構の構成実現が容易である。
【0047】
駆動部27は、取付座26の内側面から斜め後方に向けて突出しており、クオータパネル20の挿入孔116(
図14参照)から車室内に突出する部分であり、上記のとおりモータ28と、迂回部29と、ギア部30とを有する。
【0048】
図5に示すように、モータ28は円柱形状であり、ヨーク28aと、前段ギア部28bと、出力軸28cと、コネクタ28dとを有する。ヨーク28aの回転は前段ギア部28bにおける遊星歯車機構で減速されて同軸上の出力軸28cに伝達される。コネクタ28dはレセプタクル型で前段ギア部28bの側面に設けられている。なお、前段ギア部28bは後段のギア部30とともに減速機構を構成しているが、ヨーク28aおよびコネクタ28dと一体的な構成となっていることから、説明の便宜上モータ28の一部分としている。
【0049】
出力軸28cの先端には小径傘歯車28eが設けられていて、斜め前方のギア部30内に挿入されている。モータ28はコネクタ28dを介して接続されるコントローラ138(
図17参照)によって回転制御される。モータ28には回生ブレーキが設定されており、クラッチやトルクリミッターが不要となっている。また、モータ28は静音型であるとよい。
【0050】
ギア部30は迂回部29と共通の鉛直軸110を中心として構成されており、小径傘歯車28eと、大径傘歯車112とを有する。小径傘歯車28eはピニオンギアであり、上記のとおりモータ28の出力軸28cに設けられている。大径傘歯車112は、鉛直軸110の上部に固定されており、下面の外周に沿って歯が設けられている。小径傘歯車28eは大径傘歯車112の下面の歯に噛合しており、前段ギア部28bとともに減速機構を構成して十分な減速比が得られる。小径傘歯車28eは金属製であるのに対し、これに噛合する大径傘歯車112は樹脂製であって、噛合面からの音の発生を低減させている。
【0051】
迂回部29はベルトガイド部24からベルト40の一部を車室内に迂回させる部分であり、タイミングプーリ29aと、2つのガイドプーリ29b,29cとを有する。タイミングプーリ29aは鉛直軸110の下部に固定されていて、鉛直軸110および大径傘歯車112と一体的に回転する。鉛直軸110は上端および下端をベアリング110aで軸支されている(ただし下端側については図示を省略している)。大径傘歯車112とタイミングプーリ29aとの間にはギアカップリング110bが設けられている。
【0052】
前側のガイドプーリ29bおよび後側のガイドプーリ29cは略前後方向に並列されており、回転軸が鉛直方向となる向きで樹脂材45aおよび45bによって回転自在に設けられている。またガイドプーリ29b,29cはベルト40を介してタイミングプーリ29aの前後に設けられており、タイミングプーリ29aに対して約260°巻かれるようにベルト40をガイドしている。これにより、ベルト40にはタイミングプーリ29aの駆動力が十分に伝達され、正逆両方向に循環回転する。
【0053】
ベルト40はベルトガイド部24の前端および後端でタイミングプーリ60および86によってUターンし方向転換される。また、ベルト40は循環経路の内側部で2つのガイドプーリ29bおよび29cの間から迂回部29内のタイミングプーリ29aへと迂回する。さらに、ベルト40は循環経路の外側部における湾曲部50の箇所ではガイド板56によって円弧状に案内される。このようにしてベルト40はベルトガイド部24で回転駆動され、ベルト40に固定されたベルト接続具44は外側面に沿って前端部から後端部まで往復動が可能となっている。
【0054】
図6に示すように、駆動部27は前方ガイド部42aにおける湾曲部50に接続されており、このような接続形態をとることにより駆動部27は車室内側へ斜め後方に突出することになり、突出量が抑えられて室内スペースをほとんど低減させることがない。
【0055】
また、平面視で、モータ28の回転軸は、湾曲部50から後へ向かう方向、つまりX2方向を基準として車室内側への角度θが15°に設定されている。角度θは0°〜30°の範囲内に設定すると好適である。湾曲部50に合わせて駆動部27を接続することによりモータ28の回転軸をこの角度範囲内に設定することが可能であり、これによりヨーク28aの車幅方向への突出を抑えることができる。特にヨーク28aはセンターレール16bの車幅方向の幅W内に配置されていると全体としてコンパクトになり、車室内側への突出はほとんどなくなる。
【0056】
さらに、平面視で、後側のガイドプーリ29cとタイミングプーリ29aとの軸心間距離L2は、前側のガイドプーリ29bとタイミングプーリ29aとの軸心間距離L1よりも小さく設定されている。これにより角度θを小さくする構成をとりやすく、ヨーク28aの車幅方向への突出を一層抑えることができる。
【0057】
図7に示すように、前方ガイド部42aにおけるガイド板56の後端部には、内側に突出し前後方向に並列する2つの長孔用ポスト(凸部)68aおよび70aが設けられている。長孔用ポスト68aはガイド板56の後端近傍であり、長孔用ポスト70aはそれよりやや前方に設けられている。長孔用ポスト70aは長孔用ポスト68aよりもやや長く、中心にはボルト孔70cが設けられている。
【0058】
後方ガイド部42bにおけるガイド板76の前端部には、車幅方向に貫通し、前後方向に並列する2つの長孔(嵌合孔)68bおよび70bが設けられている。長孔70bはガイド板76の前端近傍であり、長孔68bはそれよりやや後方に設けられている。取付座26の下方突出部26bは下板54の下面よりhだけ下方に突出している。
【0059】
図8に示すように、長孔用ポスト68aは長孔68bに挿入されており、両者は嵌合機構68を形成している。長孔用ポスト70aは長孔70bに挿入されており、両者は嵌合機構70を形成している。長孔用ポスト68aはガイド板76の厚さとほぼ同じ長さである。長孔用ポスト70aはガイド板76の厚さよりも長く、ガイド板76の内面よりも内側にやや突出している。長孔68b,70bの上下方向の幅は長孔用ポスト68a,70aがほぼ隙間なく嵌合する寸法である。長孔68b,70bの前後方向の幅は長孔用ポスト68a,70aよりもやや長尺である。
【0060】
また、長孔用ポスト70aのボルト孔70cには、ワッシャ(抜止部)90を介してボルト91が螺入される。ワッシャ90は長孔用ポスト70aの端部でフランジ状となって固定される。ワッシャ90が設けられていることにより長孔用ポスト70aが長孔70bから抜けてしまうことはなく、作業者は前方ガイド部42aと後方ガイド部42bとを一体として扱うことができる。
【0061】
ガイド板76とワッシャ90との間には隙間93が形成される。後方ガイド部42bの前端部は隙間93の範囲内で車幅方向に変位可能であることから、後方ガイド部42bはガイド板56の後端部56a(
図6参照)を中心として水平面上でわずかに回転可能となっている(
図6の仮想線参照)。すなわち、このような前後に設けられた2組の嵌合機構68,70により、後方ガイド部42bは連結相手の前方ガイド部42aに対して前後方向に進退可能であるとともに回転可能に構成されている。2組の嵌合機構68,70は簡易構造であって、組み立てが容易であるとともに製造コストが低廉である。嵌合機構68と嵌合機構70は前後方向にやや離れて設けられていることから、後方ガイド部42bは前後方向の進退動作が安定するとともに、鉛直面上で回転することが防止できる。後方ガイド部42bの前端部は前方ガイド部42aの上板52および下板54で挟まれていることから、進退動作が一層安定する。
【0062】
ワッシャ90は、上記のとおり長孔用ポスト70aの抜け止めの機能を有するが、後方ガイド部42bの回転リミッタの機能も兼ねる。長孔用ポスト70aよりも回転中心(後端部56a)に近い長孔用ポスト68aをやや長く設定してワッシャ90を長孔用ポスト68aに設けることも可能であるが、回転中心から遠い長孔用ポスト70aに設ける方が回転リミッタとしての角度精度が高く、しかも作用圧が小さくて安定する。
【0063】
ストッパリブ80は、後方ガイド部42bが前方ガイド部42aに過度に接近することを防止するとともに、この部分における強度を確保している。また、ストッパリブ80と上板52および下板54の後端部との隙間の範囲内で、後方ガイド部42bは前方ガイド部42aに対して進退可能となっている。進退の移動代は必要十分な長さに設定されており、車両用ドア開閉装置10の取付工程において後方ガイド部42bが過度に前方に移動してベルト40に無駄な弛みが発生することがない。なお、上記の長孔68b,70bにおける長孔用ポスト68a,70aに対する長手方向の隙間は、ストッパリブ80と上板52および下板54の後端部との隙間よりも大きく設定されている。後方ガイド部42bのガイド板76は、前方ガイド部42aのガイド板56よりもやや内側に配置されており、ベルト40とは接触しないようになっている。これによりベルト40を駆動する際の抵抗を減少することができる。
【0064】
図9に示すように、ヒンジブラケット62は前方ガイド部42aの先端でタイミングプーリ60と同軸構造であり、回転可能に設けられている。ヒンジブラケット62は、断面が一辺開放の矩形であり、側板62aと、ボルト孔62bと、上板62cと、下板62dとを有する。ボルト孔62bは側板62aの中央に設けられている。上板62cは側板62aの上辺からつながっている。下板62dは側板62aの下辺からつながっている。上板62cは一部が前方ガイド部42aの上板52とタイミングプーリ60の上面との間に挟まり、下板62dは一部が前方ガイド部42aの下板54とタイミングプーリ60の下面との間に挟まってそれぞれ軸支されている。このようにしてヒンジブラケット62はタイミングプーリ60と同軸でかつ独立的に回転可能となっている。前方ガイド部42aの先端には小さい爪42cが設けられている。爪42cは上板62cの一部に当接することにより回転を制限するストッパとなる。ヒンジブラケット62は、車両側の取り付け面の角度誤差を許容でき、固定しやすい。また、ヒンジブラケット62はタイミングプーリ60と同軸構造であって、ヒンジ構造を合理的かつ容易に実現できる。
【0065】
図10および
図11に示すように、プーリ保持具84は後方ガイド部42bの端部に設けられて、タイミングプーリ86を鉛直軸で回転可能に保持している。後方ガイド部42bはプーリ保持具84との接続部分において、上板72および下板74の端部に設けられた上下の爪92と、上板72と下板74を接続するブロック体94とを有する。
【0066】
プーリ保持具84は、タイミングプーリ86の後端側を覆う半筒板84aと、半筒板84aの上辺からつながる上板84bと、下辺からつながる下板84cと、上板84bおよび下板84cの一部がさらに前方に突出した上下の被係合片84dと、被係合片84dにそれぞれ設けられた爪孔84eと、被係合片84dにそれぞれ設けられたブロック体84fとを有する。
【0067】
上板84bおよび下板84cはタイミングプーリ86の上下を挟持して回転可能に保持している。
図10および
図11では省略しているベルト40はタイミングプーリ86に巻かれて半筒板84aとの間を通る。プーリ保持具84は、後方ガイド部42bの後端部に前方に向かって押し付けることにより、2つの爪92が爪孔84eにそれぞれ係合してワンタッチで固定可能である。後方ガイド部42bとプーリ保持具84との接続部分では、ブロック体94の上下面にそれぞれブロック体84fが当接して安定する。
【0068】
プーリ保持具84は、さらに後端部に係合片86gを有する。係合片86gは平面視でU字形状であり、U字底部が内向きで、一端が半筒板84aとつながっている。係合片86gの側面には爪86hが設けられている。係合片86gはクオータパネル20に設けられた固定ブラケット96に対して固定する部材である。
【0069】
固定ブラケット96は、内板96aと、内板96aの上辺からつながる上板96bと、下辺からつながる下板96cと、後辺からつながる後板96dとを有する。上板96bおよび下板96cの前端にはそれぞれ低いリブ96eが対向する向きに突出している。上板96bにはタイミングプーリ86の軸との干渉を避ける切欠96fが設けられている。後板96dは、上板96bおよび下板96cとは非接続であり、中央には爪孔96gが設けられている。
【0070】
プーリ保持具84は、固定ブラケット96に押し付けることにより、爪86hが爪孔96gに係合してワンタッチで固定可能である。固定ブラケット96は、上板96bおよび下板96cがプーリ保持具84の上下面にそれぞれ当接するとともに、リブ96eが被係合片84dの全面に当接してプーリ保持具84を全ての方向に対して安定して保持する。固定ブラケット96はレール16bの上面後端に固定されていてもよい。
【0071】
爪92と爪孔84eとの係合構造、および爪86hと爪孔96gとの係合構造はいわゆるスナップフィットであり、図示の構造に限らず、一方の部品に設けた凸部を材料の弾性を利用して他方の凹部にはめ込んで引っ掛ける構造であればよい。
【0072】
図12に示すように、ベルト接続具44はベルト40に接続されるものであり、ベルト40の歯に噛合して固定する噛合部100と、噛合部100とアーム22(
図2参照)との間を連結する連結部102とを有する。
【0073】
噛合部100は、噛合板100aと、噛合板100aの上辺からつながる上板100bと、下辺から突出する係合片100cとを有する。噛合板100aは、ベルト40の幅よりもやや高く、鉛直方向に延在する5つの山部100dと、各山部100dの間に形成される4つの谷部100eとを有し、ベルト40の4つの歯に噛合する。噛合板100aは例えばプレス加工により形成される。上板100bには2つのボルト孔100fが並列して設けられている。係合片100cは断面がアングル形状であり、先端が下向きとなっている。
【0074】
連結部102は上から順に、締結片102aと、ベルト挟持片102bと、屈曲片102cと、アーム接続片102dとを有する。締結片102aは水平であり、2つのボルト孔102eが並列して設けられている。ボルト孔100fとボルト孔102eにボルトが螺入されることにより、上板100bと締結片102aが締結される。ベルト挟持片102bは噛合板100aとともにベルト40を挟持する垂直な部材であり、係合片100cが係合する長矩形の係合孔102fを有する。屈曲片102cは上下にやや長い部材であり、緩い角度で2段に屈曲しながらベルト挟持片102bとアーム接続片102dとをつないでいる。アーム接続片102dはやや横長の部材であり、並列する2つのボルト孔102gにボルトが螺入されてアーム22と接続される。
【0075】
このように構成されるベルト接続具44では、噛合板100aの山部100dおよび谷部100eがベルト40の歯に噛合することからベルト40に確実に固定される。また、噛合板100aが噛合するのはベルト40の4つの歯であり、十分な固定強度が得られるとともに、前後方向の幅を狭くすることができる。ベルト接続具44の前後方向の幅を狭くすることにより、それだけドア14の開度を広くすることができる。
【0076】
噛合板100aが噛合するベルト40の歯の数は、ベルト接続具44の幅を狭くすることと固定強度との兼ね合いから4歯又は3歯が望ましい。
【0077】
図13に示すようにベルト40は、歯面側に幅方向(車両12を基準にすると高さ方向)に延在する山部40aと谷部40bとが交互に配列されている形状であり、歯布40cと、歯ゴム層40dと、複数の心線40eと、背ゴム層40fとを有する。歯布40cは歯面に設けられている。歯ゴム層40dは山部40aおよび谷部40bを形成している。複数の心線40eは歯ゴム層40dの周囲に設けられて周方向に巻かれている。背ゴム層40fは心線40eを介して歯ゴム層40dの外側に設けられている。山部40aが歯に相当する。山部40aの頂部には幅方向に延在する浅い窪み部40gが設けられている。歯布40cは潤滑処理されたナイロン織布である。心線40eはグラスファイバー製である。歯ゴム層40dおよび背ゴム層40fはクロロプレンゴムである。
【0078】
ベルト40では、心線40eにより十分な引張り強度が得られ、さらに歯布40cにより十分な歯面強度が得られる。また、窪み部40gが設けられていることにより、山部40aは噛合する相手方の谷部形状に応じて弾性変形して確実に噛み合い、さらに谷部40bも相手方の山部に隙間なく接触することができる。ベルト40は、車両用ドア開閉装置10の組み立て時に、他の機器に接触したとしても互いに傷がつきにくくて好適である。また、ベルト40は鉄製のワイヤと違って発錆がなくグリス塗布などの処置が不要である。ベルト40は予めベルトガイド部24に組み込まれており、引き回し作業が不要である。
【0079】
ベルト40は、例えば以下のように製造される。まず、外周面に軸方向の歯型が設けられた円柱金型に対して、筒状に縫合された歯布40cを巻く。その周囲に心線40eを狭い間隔のスパイラル状に巻く。さらにその周囲にクロロプレンゴムを巻いた後に、加熱、加圧および加硫してクロロプレンゴムを可塑化させて一部を心線40eの隙間から浸出させ、歯布40cを金型歯面に押し付けて山部40aと谷部40bとを形成する。心線40eの隙間から浸出した部分が歯ゴム層40dとなり、心線40eの外側部分が背ゴム層40fとなる。こうして得られた成形体は金型から取り外された後に輪切りにしてベルト40が得られる。
【0080】
このように構成される車両用ドア開閉装置10は、前方ガイド部42a、後方ガイド部42b、取付座26などの比較的大きい部品が樹脂で形成されており、全体として軽量になっている。車両用ドア開閉装置10とレール16bとは別体構成であり、それぞれ単体では軽量であって可搬性に優れる。車両用ドア開閉装置10はセンターレール16bと組み合わされることから、ロワーレール16cに駆動部がなく、後部座席の足元スペースを広くしたり、又は他の機器を搭載するレイアウト上の自由度が高まり、さらにプラットフォームの床部分の強度に影響がなく補強材が不要である。
【0081】
次に、車両用ドア開閉装置10が取り付けられるクオータパネル20について説明し、さらに車両用ドア開閉装置10をクオータパネル20に取り付ける方法について
図14〜
図17を参照しながら説明する。
【0082】
図14に示すように、クオータパネル20はタイヤハウス21と、給油口18と、ドア後端区画113と、レール取付用凹部114とを有する。ドア後端区画113はドア14が閉状態のときにその後端側を支持し収める区画である。
【0083】
レール取付用凹部114はレール16b及びベルトガイド部24が取り付けられる凹部であり、給油口18とタイヤハウス21との間に設けられ、車両12の前後方向に延在し、さらに前方部分がドア後端区画113に沿って車室内側に湾曲している。レール取付用凹部114は、挿入孔116と、複数のレール取付孔118と、複数のポスト120とを有する。また、レール取付用凹部114は、後方で前後方向に沿う直線状の長尺面114b及び該長尺面114bの前方から連続的に車幅内側方向に向かって湾曲する湾曲面114aに区分できる。湾曲面114aはレール16bの湾曲部34および前方ガイド部42aの湾曲部50が取り付けられる部分である。長尺面114bはレール16bの長尺部32、前方ガイド部42aの直線部48、および後方ガイド部42bが取り付けられる部分である。
【0084】
挿入孔116は駆動部27が挿入される矩形孔であり、ストライカ117と湾曲部34との間で、湾曲面114aに設けられている。ストライカ117はドア14のロック部と係合してドア14を閉状態に保持させる部材である。スライド式のドア14を備える車両12においては、ストライカ117は一般的にドア後端区画113における区画後面113aで、前方に突出するように設けられている。区画後面113aは前後方向に対して概ね垂直面(Y−Z平面)となっており、挿入孔116は区画後面113aでストライカ117の下方に設けることが合理的で好ましい。ポスト120はフィニッシャー17を取り付ける固定部である。
【0085】
挿入孔116の高さ幅は駆動部27の高さよりもh(
図7参照)以上大きく設定されている。挿入孔116の四隅近傍にはボルト孔121が設けられている。このうち前方の2つは挿入孔116よりも室内側に設けられ、後方の2つは挿入孔116よりも後方に設けられている。つまり4つのボルト孔121は全て挿入孔116の側方に設けられており、上下方向の必要幅が小さく、取付座26およびレール取付用凹部114を狭く設定できる。
【0086】
レール取付用凹部114の前方部分である湾曲面114aはレール16bの湾曲部34に対応した曲面を形成している。レール取付用凹部114の後端近傍には固定ブラケット96が設けられている。湾曲面114aの前端近傍にはボルト孔122が設けられている。
【0087】
車両用ドア開閉装置10をクオータパネル20に取り付ける方法は、まず、
図14に示すように、レール16bをレール取付用凹部114に取り付ける(レール取付工程)。レール16bは取付孔38とレール取付孔118のボルト締結により固定される。取り付けられたレール16bの上面と挿入孔116の下辺116aは高さ方向がほぼ同じレベルになる。
【0088】
次に、レール16bをクオータパネル20とともに同色に塗装する(レール塗装工程)。これにより、レール16bとクオータパネル20を完全に同色にすることができ見栄えが向上する。また、レール16bは、この時点まで少なくとも仕上げ塗装については省略できる。レール16bはすでにレール取付用凹部114に取り付けられており、この後作業員によって単体で搬送されるということはなく、傷や塗膜剥げの恐れがない。したがって高価なステンレス材ではなく、廉価な鋼材を用いても発錆しにくい。また、この時点では車両用ドア開閉装置10はレール取付用凹部114に取り付けられていないため、ベルト40やプーリ類に塗料が付着することがない。
【0089】
この後、車両用ドア開閉装置10をレール取付用凹部114に取り付ける(本体取付工程)。この工程では、まず、
図14に示すように、駆動部27が挿入孔116に挿入されるように車両用ドア開閉装置10全体を移動させる。この際、車両用ドア開閉装置10を動かす方向は駆動部27および挿入孔116の大きさや向きに応じて後方または斜め後方とするが、モータ28の軸心の角度θ(
図6参照)に合わせて移動させると駆動部27が挿入孔116に挿入されやすい。
【0090】
図15(a)に示すように、取付座26の下方突出部26bをレール16bの上方を通過させ、駆動部27を挿入孔116に挿入させて車室内に突出させる。このとき、レール16bの上部室内側面124とレール取付用凹部114の面との間には隙間126が確保されている。隙間126の深さはhよりもやや大きい。そして、白抜き矢印で示すように、迂回部29および取付座26をレール取付用凹部114の面に沿って下方、または斜め下方に降ろす。
【0091】
図15(b)に示すように、取付座26の下方突出部26bが隙間126に入り込むことにより、上部室内側面124が下方突出部26bの抜け止めとなる。特に、隙間126はレール16bの湾曲部34に沿って設けられており、これに対応するように下方突出部26bは前方ガイド部42aの湾曲部50に沿って設けられていることから下方突出部26bは前後方向および車幅方向の両方向に対して抜け止めとして作用し、ベルトガイド部24が安定する。また、下板54の下面がレール16bの上面に当接する。これにより、
図16に示すように、ベルトガイド部24はレール16bの上面に安定して仮載置されることになり、作業者が手を放しても落下することがなく、位置ずれもほとんどない。さらに、側面視で下方突出部26bはレール16bと重なることから、その分だけ取付座26は下方に配置されることになり、レール取付用凹部114およびフィニッシャー17の高さ幅を狭くすることができる。また、車両12の開発においてクオータパネル20の設計自由度と意匠自由度が向上する。
【0092】
なお、
図16に示すように、駆動部27を挿入孔116に後方に向けて挿入する際には、後方ガイド部42bを前方ガイド部42aに対して平面視で時計方向にやや回転させておき、後端のプーリ保持具84が固定ブラケット96と干渉しない位置まで外方向に退避させておく。その後、後方ガイド部42bを前方ガイド部42aに対して平面視で反時計方向に回転させ、後端のプーリ保持具84を室内側に向けて変位させて固定ブラケット96に挿入することによりベルトガイド部24の後端を固定する(
図2、
図10参照)。この際、係合片86g(
図10参照)の爪86hを爪孔96gに係合させるスナップフィットにより容易な作業が可能である。爪86hと爪孔96gとによるスナップフィットは車幅方向の係合構造であり、この部分で高さ方向の変位余裕は不要であり、レール取付用凹部114の高さ幅を狭く設定することができる。また、車両用ドア開閉装置10はレール16bとは別体構造であることから軽量であり、作業者が扱いやすい。車両用ドア開閉装置10はワイヤのないベルト式であり、ワイヤ引き回しによる周囲との接触が防止できる。
【0093】
なお、後方ガイド部42bの作用は後端のタイミングプーリ86によってベルト40の方向を転換させるものであり、それ以外に大きな荷重がかかることはない。また、タイミングプーリ86はプーリ保持具84に保持され、該プーリ保持具84は固定ブラケット96を介してレール取付用凹部114に固定されていて安定している。したがって、後方ガイド部42bはそれ以外の箇所でレール取付用凹部114に固定しなくてもよく、ボルト締結が不要となっている。
【0094】
次に、ヒンジブラケット62のボルト孔62bからボルトを螺入しボルト孔122に対して締結する。これによりベルトガイド部24がレール取付用凹部114に固定される。ところで、ベルトガイド部24の先端が固定されるボルト孔122と後端が固定される固定ブラケット96との離間距離は製造誤差により多少のばらつきがあり得るが、
図7および
図8で示したように長孔用ポスト68a,70aが長孔68b,70bに挿入されていることから、後方ガイド部42bは前方ガイド部42aに対して前後方向に進退可能に連結されており、離間距離の製造誤差を吸収することができる。なお、プーリ保持具84と固定ブラケット96によるベルトガイド部24の後端の固定作業と、ヒンジブラケット62によるベルトガイド部24の前端の固定作業との順序は問わない。
【0095】
さらに、
図2に示すように、フィニッシャー17をレール取付用凹部114に取り付ける。フィニッシャー17は、レール取付用凹部114の複数のポスト120と、取付座26のフィニッシャー固定部64に対して固定される。取付座26はある程度の面積を占めていてこの部分にはポスト120を設けることはできないが、上記のようにフィニッシャー17の取付方向視でフィニッシャー固定部64は取付座26で囲まれる範囲内に設けられており、該フィニッシャー固定部64をポスト120の1つとして代用することにより、フィニッシャー17を多くの箇所で偏りなく固定することができる。また、フィニッシャー固定部64は背面が取付座26とつながっており、さらに該取付座26を介して4つの孔26aによってレール取付用凹部114に固定されるため安定しており、フィニッシャー17を確実に支持できる。なお、ベルトガイド部24はフィニッシャー17によって覆われることから、特に塗装する必要はない。
【0096】
図17に示すように、車室内から4つのボルト孔121および孔26aにボルトを螺入して取付座26をレール取付用凹部114に固定する。取付座26とレール取付用凹部114との間にはシール46が介在して防水及び防塵が図られる。このようにして、別体構造のレール16bと車両用ドア開閉装置10とはそれぞれ個別にレール取付用凹部114に取り付けられる。
【0097】
クオータパネル20の室内側面は、タイヤハウス21とフューエルパイプカバー128が膨出している。フューエルパイプカバー128は、給油口18から燃料タンクに連通するフューエルパイプを覆っており、給油口18の部分から下方に向かって次第に膨出して、その下部はタイヤハウス21の上部とつながっている。
【0098】
タイヤハウス21のやや上方でフューエルパイプカバー128の前方には、シートベルト130を巻き取るシートベルトリトラクタ132がその下部のアンカー134によってクオータパネル20の内側面に取り付けられている。国内外における近時の多くの車両は後部座席にも三点式シートベルトが採用されており、対応するシートベルトリトラクタ132はこの位置に設けられることが多い。シートベルトリトラクタ132の斜め上前方にはオーディオ用のスピーカ136が設けられている。タイヤハウス21の下端前方でクオータパネル20の下隅部には車両用ドア開閉装置10を制御するコントローラ138が設けられている。
【0099】
図17から了解されるように、側面視で、車両用ドア開閉装置10の駆動部27はシートベルトリトラクタ132、フューエルパイプカバー128及びタイヤハウス21に囲まれる空間140に配置されている。すなわちタイヤハウス21の前半分における上方で、フューエルパイプカバー128の下方部における前方で、且つシートベルトリトラクタ132の下方の空間140である。上記のとおり駆動部27は車幅方向及び高さ方向の寸法が小さく抑えられていることから比較的狭い空間140への配置が可能となっている。
【0100】
また、この空間140に駆動部27を配置することにより、他の機器との干渉のないレイアウトが可能であって、しかも駆動部27の車室内側への突出量が抑えられる。タイヤハウス21、フューエルパイプカバー128及びシートベルトリトラクタ132は通常の配置であって、駆動部27が存在することによるレイアウト上の影響をほとんど受けない。
【0101】
クオータパネル20の室内側は窓142を除き、スピーカ136の部分だけメッシュ状とされた図示しないインテリアパネルで覆われる。駆動部27の室内側への突出が抑えられていることから、インテリアパネルの駆動部27を覆う部分も不自然な膨出を設ける必要がない。なお、立体的位置関係が把握可能となるように
図17は斜視図としているが、この
図17から側面視の状態も明確に理解されよう。
【0102】
車両用ドア開閉装置10のクオータパネル20への取り付けは、ボルト締結に関しては4つのボルト孔121および1つのボルト孔122の5か所だけであり、これらはドア14の開口部に近くて作業性のよい場所に設けられている。
【0103】
上記の例では車両用ドア開閉装置10は給油口18が設けられた車両12の左側に適用されているが、右側については対称形の装置を用いるとよい。車両用ドア開閉装置10はリア側のドア14の開閉用に限らず、例えば2ドア車のドアに適用してもよい。
【0104】
レール16bは車両12に取り付けられた後に塗装されるが、必要に応じてあらかじめ下塗り塗装、防錆塗装またはその他の下処理を施してもよい。また、レール16bは設計条件によりステンレス材、カーボン、アルミニウム、樹脂などで形成してもよい。
【0105】
レール16bとベルトガイド部24は一部が直接的に固定されていてもよく、例えば固定ブラケット96をレール16bの後端上部に設けておくことにより両者を直接的に固定してもよい。ベルトガイド部24はレール16bよりも後に取り付け可能であればよい。
【0106】
長孔用ポスト68a,70aが挿入される長孔68b,70bは必ずしも長孔形状である必要はなく、長孔用ポスト68aよりも前後方向幅が長ければよく、高さ方向の動作規制は他の部分で担ってもよい。2つの長孔68bと長孔70bは、側面視でこれらを囲い込む包絡線形状の1つの長孔で代用してもよい。この場合、長孔用ポスト68a,70aについても、側面視でこれらを囲い込む包絡線形状の1つの凸部で代用してもよい。2組の嵌合機構68,70は上記の形態に限らず、前方ガイド部42aおよび後方ガイド部42bのいずれか一方から車幅方向に突出する凸部と、他方に設けられて凸部が嵌合する嵌合孔によって形成されていればよい。後方ガイド部42bが前方ガイド部42aに対して回転可能にする構成は上記の形態に限らず、例えば鉛直回転軸を設けてもよい。後方ガイド部42bが前方ガイド部42aに対して進退可能にする構成は上記の形態に限らず、例えば前後方向の嵌め合い機構を設けてもよい。
【0107】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。