【解決手段】プリフォームを自転させる搬送部と、搬送部による各プリフォームの搬送速度に合わせて搬送ラインに沿って移動可能に設けられプリフォームが搬送治具と共に自転しながら移動している状態でプリフォームの外周部に設けられた凹部又は凸部と係合してプリフォームの自転を停止させてプリフォームの向きを所定の向きに整える係合装置と、を備え、係合装置は複数の係合部材310Aを備え、各係合部材310Aには、搬送ライン側に向かって突出する突出部320Aを先端側に備える支持部材319Aが揺動可能に設けられ、この突出部320Aが水平方向に回転可能に支持部材319Aに設けられたローラ部材327で構成されている構成とする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(実施形態1)
まずは、本発明に係る搬送装置を有する成形装置の全体構成について
図1を参照して説明する。
【0018】
図1に示すように、成形装置100は、中空容器となるプリフォーム200を射出成形する射出成形部110と、射出成形部110で成形されたプリフォーム200を冷却する冷却部120と、プリフォーム200を加熱する加熱部130と、ブローキャビティ型内に配されたプリフォーム200をブロー成形するブロー成形部140と、を備えている。
【0019】
成形装置100は、冷却部120から加熱部130及びブロー成形部140を搬送ライン151に沿って搬送させる搬送部(搬送手段)150を含む搬送装置を備えている。この搬送ライン151は、本実施形態では、一対の搬送レール(外側搬送レール151a及び内側搬送レール151b)で構成されている。この搬送部150により、冷却部120から加熱部130にプリフォーム200を搬送すると共に、加熱部130で加熱されたプリフォーム200をブロー成形部140に搬送する。
【0020】
本発明は、搬送部150を含む搬送装置の構成に特徴を有するものである。以下、この搬送装置について詳しく説明する。なお射出成形部110、冷却部120、加熱部130及びブロー成形部140の構成は、公知のものであるため、ここでは簡単に説明する(必要であれば、本件出願人による国際公開第2013/027692号公報など参照)。
【0021】
射出成形部110は、型締め機構111を備え、図示は省略するが上方に配されたコア型と下方に配されたキャビティ型とをこの型締め機構111によって型締めする。射出成形部110では、これらコア型とキャビティ型とで画成される射出空間内に射出装置によって樹脂材料(原材料)を充填することでプリフォーム200が射出成形される。
【0022】
なお射出成形部110では、例えば、最大で24個(3列×8個)程度のプリフォーム200を同時に成形することができる。またプリフォーム200は、本実施形態では、その径方向の厚みが周方向において異なるものであり、プリフォーム200の外周面の所定位置には、向きを揃えるための凹部(切欠き部)201(
図2参照)が設けられている。
【0023】
冷却部120は、射出成形されたプリフォーム200を強制冷却する。射出成形部110で射出成形されたプリフォーム200は、搬送部150によって搬送ライン151に沿って搬送され、射出成形部110から冷却部120に供給される。プリフォーム200は、この冷却部120で強制冷却され、所定温度まで冷却されると冷却部120から搬出されて搬送ライン151に沿って連続的に搬送される。
【0024】
なおプリフォーム200は、射出成形部110にてネック部を上向きとした正立状態に成形され、この状態で射出成形部110から冷却部120に搬送される。冷却部120では、正立状態で搬送されたプリフォーム200を、ネック部を下向きとした倒立状態に反転させる反転機構(図示なし)を有する。プリフォーム200は、冷却部120での冷却中に、この反転機構によって倒立状態に反転され、搬送部150が備える搬送治具(搬送部材)152に保持される。
【0025】
搬送ライン151は、複数の搬送治具152がスプロケット154等の駆動力によって連続して順次搬送されるように構成されている。搬送治具152は、例えば、冷却部120の下方に複数列に配置されており、プリフォーム200を保持すると、搬送ライン151に搬出される。その後、搬送治具152は、プリフォーム200を保持した状態で搬送ライン151に沿って搬送されて加熱部130に搬入される。
【0026】
加熱部130では、冷却部120で冷却されたプリフォーム200を搬送ライン151に沿って移動させながら延伸適正温度まで加熱する。本実施形態では、加熱部130内でプリフォーム200を自転させながら加熱することで、プリフォーム200全体を均一に加熱するようにしている。
【0027】
搬送ライン151の加熱部130よりも下流側には、所定半径で湾曲する湾曲搬送部155が設けられている。この湾曲搬送部155に対応する位置には、搬送装置を構成する位置決め部(位置決め手段)300が設けられている。この位置決め部300は、搬送治具152によって搬送されている各プリフォーム200の搬送ライン151に対する向き(水平方向の向き)を全て所定の向きに揃える。すなわち湾曲搬送部155を通過した各プリフォーム200は、位置決め部300によって全て所定の方向を向いた状態に揃えられる。その後、プリフォーム200が保持された搬送治具152は、湾曲搬送部155から搬送ライン151に沿って搬送され、転送部160を介してブロー成形部140に搬入される。
【0028】
位置決め部300の構成は、特に限定されないが、その一例について
図2〜
図6を参照して説明する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、湾曲搬送部155に対応して設けられた位置決め部300は、搬送されている各プリフォーム200の向きを全て所定の向きに整えるための係合装置301を備える。係合装置301は、搬送ライン151に沿って搬送されているプリフォーム200の凹部201に係合し、プリフォーム200の向きを所定の向きに整える係合部材310を複数備えている。
【0030】
係合装置301は、湾曲搬送部155の湾曲している部分に対応して湾曲した湾曲部302を有する台座部303を具備する。台座部303には、柱状部304が設けられている。柱状部304は、その中心を軸中心として水平方向に自転可能であるように構成されている。柱状部304の自転方向は、搬送方向と同一となるように設定されている。即ち、
図2及び
図3中では柱状部304の自転方向は反時計回りに設定されている。この柱状部304には、各係合部材310が所定の距離だけ互いに離間した状態で固定されている。柱状部304は、上面視において略円形状ともいえる多角形状であるから、各係合部材310は、周方向に所定の間隔で設けられているといえる。
【0031】
また、台座部303は、上面視において略円環状の環状溝部305が形成されている。環状溝部305はカム構造を有するものである。詳しくは後述する係合部材310の転動部材314がこの環状溝部305に挿入される。環状溝部305は所定の位置において柱状部304側、即ち内側に凹んだ退避部306を有する。
【0032】
図4に示すように、各係合部材310は、第1支持部312を備える。第1支持部312は、側面視においてコの字状の部材である。第1支持部312の底面を構成する底面部313には、例えばカムフォロア等の転動部材314が垂直下方に向かって延在するように設けられている。転動部材314は、底面部313において締結部材315により締結されている。この転動部材314が上述したようにカム構造を有する環状溝部305(
図2参照)に挿入される。
【0033】
また、第1支持部312の上面を構成する上面部316の上方には第2支持部317が設けられている。第2支持部317の搬送ライン151(
図2、
図3参照)側に形成された略L字状の先端部318には支持部材319が設けられている。支持部材319は、第2支持部317の略L字状の先端部318に水平方向に揺動可能に支持されている。すなわち支持部材319は、いわゆる片持ち状態に支持されている。また支持部材319は、先端側(一端側)が第2支持部317よりも外側(第2支持部317とは逆側)に位置するように付勢されている。すなわち支持部材319は、搬送ライン151を搬送されるプリフォーム200に向かって付勢されている。
【0034】
支持部材319の先端側(一端側)は、搬送ライン151(
図2、
図3参照)側に向かって突出した突出部320となっている。この突出部320は、詳しくは後述するようにプリフォーム200の凹部201(
図2参照)に対応した形状となっている。そして支持部材319は、この突出部320が搬送ライン151に対向する領域まで常に張り出した状態となるように、第2支持部317とは逆側に向かって付勢されている(
図3参照)。
【0035】
第1支持部312の底面部313と上面部316との間を構成する背面部321には二つの貫通孔322が形成され、各貫通孔322には円柱部323がそれぞれ貫通して設けられている。各円柱部323の基端側(少なくとも一方)は柱状部304(
図2、
図3参照)に固定されている。各円柱部323の先端側には、各円柱部323に亘って板状部324が固定されている。柱状部304に設けられた係合部材310間の所定の距離は、各搬送治具152間の距離、即ちプリフォーム200の距離に一致している。
【0036】
次に、位置決め部300の作動状態について説明する。
【0037】
まず、各係合部材310は、転動部材314が環状溝部305に挿入されているので、柱状部304が自転を開始すると(自転方向を
図2、
図3において矢印で示す)、柱状部304の自転に従って環状溝部305に沿って移動する。即ち、環状溝部305は係合部材310のガイド溝として機能する。ここで、環状溝部305は所定の位置において柱状部304側に(内側に)凹んだ退避部306を有する。このため、係合部材310は、退避部306まで移動すると退避部306の形状に沿って内側へ退避し、退避部306を通過すると、また環状溝部305に沿って移動する。
【0038】
次いで、湾曲搬送部155近辺で搬送方向(
図2、
図3に矢印で示す)に搬送されるプリフォーム200の動きについて説明する。
【0039】
湾曲部302におけるプリフォーム200間の距離と係合部材310との距離は一致している。またプリフォーム200の搬送速度と、柱状部304の回転に伴う係合部材310の移動速度とは実質的に一致している。これにより、湾曲部302において常に係合部材310とプリフォーム200とは互いに対向しながら移動する。すなわち、これら係合部材310とプリフォーム200とが互いに対向するタイミングで係合部材310とプリフォーム200とを移動させている。
【0040】
また搬送治具152は、湾曲搬送部155付近においても、保持しているプリフォーム200を水平方向に回転(自転)可能に構成されている。具体的には、搬送治具152は、
図5に示すように、先端部(上端部)にプリフォーム200を支持する支持シャフト171と、この支持シャフト171を回転(自転)可能に保持するハウジング172と、を備えている。本実施形態では、支持シャフト171は、例えば、ボールベアリング等の軸受け部材173を介してハウジング172に回転可能に保持されている。また支持シャフト171の下端部にはスプロケット174が設けられ、このスプロケット174が搬送ライン151に設けられたローラーチェーン(図示なし)と嵌合している。このような構成により、搬送治具152は、下記自転領域RR(
図2等参照)において、プリフォーム200を保持する支持シャフト171が回転(自転)可能となっている。なお、この自転の回転方向は、特に限定されず、時計回り又は反時計回りの何れでもよい。
【0041】
搬送ライン151の搬送方向における支持シャフト171(プリフォーム200)の自転が開始される位置を自転開始位置R1とし、支持シャフト171(プリフォーム200)の自転が終了する位置を自転終了位置R2としたとき、この自転開始位置R1から自転終了位置R2までの領域が自転領域RRとなる(
図2等参照)。自転領域RRは、本実施形態では退避部306に対向する位置よりも搬送方向の上流側で終了している。
【0042】
なお、例えば上記のように支持シャフト171に設けられたスプロケット174が搬送ライン151に設けられたローラーチェーンと嵌合することで支持シャフト171が自転するように構成されている場合には、この自転領域RRに亘ってローラーチェーンが設けられていることになる。そして、この自転領域RRは、プリフォーム200が係合部材310と係合しなければ自転開始位置R1から自転終了位置R2までに少なくとも一回転することができるように構成されている。
【0043】
また
図2に示すように、プリフォーム200は、湾曲搬送部155よりも上流側を搬送されている際には、プリフォーム200の向きは一定にはならず、凹部201の位置がそれぞれ別の方向を向いた不整列状態となる。プリフォーム200は、この不整列状態で自転領域RRに流入する。そして自転領域RR内では、プリフォーム200は自転しながら搬送される。プリフォーム200が自転しながら搬送ライン151に沿って搬送される間に、プリフォーム200に設けられた凹部201に係合部材310の突出部320が嵌合する。なお、凹部201に突出部320が嵌合すると、プリフォーム200はこの係合により回転が停止し、その後は、搬送治具152の支持シャフト171のみが自転する。
【0044】
そして、この自転領域RRからプリフォーム200が流出するのと同時に係合部材310が退避部306により退避するので、プリフォーム200から支持部材319(突出部320)が外れ、プリフォーム200はその状態で搬送される。すなわち、退避部306に対応する位置よりも搬送方向の下流側におけるプリフォーム200は、全て凹部201が同一の向きに揃った整列状態で搬送される。
【0045】
この点について、
図6を用いてさらに具体的に説明する。
図6は、湾曲搬送部155における一つのプリフォーム200の搬送状態を示すものであり、時間毎のプリフォーム200の搬送位置と、プリフォーム200に対向して係合する一の係合部材310とを示している。すなわち、
図6には複数のプリフォーム200と係合部材310とが記載されているが、全て同一のプリフォーム200及び係合部材310であり、各時間におけるそれぞれの位置を示している。
【0046】
上述したようにプリフォーム200が湾曲搬送部155を搬送される際、このプリフォーム200の搬送に併せて係合部材310が環状溝部305に沿って移動している。時刻t1において、プリフォーム200は湾曲搬送部155の自転開始位置R1の直前まで搬送されている。この時刻t1におけるプリフォーム200(t1)は、凹部201が外側を向いている。この時点では、係合部材310(t1)はプリフォーム200(t1)と未だ対向していない。
【0047】
そして、プリフォーム200が自転開始位置R1に到達すると、この自転開始位置R1から搬送治具152の支持シャフト171の自転が開始されることでプリフォーム200の自転も開始する。自転方向は矢印で示す方向である。プリフォーム200は、自転領域RR中では自転しながら搬送される。自転開始位置R1近傍での時刻t2のプリフォーム200(t2)は、この時点ではまだ係合部材310(t2)とは対向しない。
【0048】
プリフォーム200がさらに搬送され、時刻t3においてプリフォーム200(t3)は係合部材310(t3)と対向する。この時点では係合部材310の突出部320はプリフォーム200(t3)の凹部201と係合していない。このため突出部320を有する支持部材319は、プリフォーム200(t3)に押圧されて第2支持部317側に押し込まれた状態となっている。
【0049】
その後、プリフォーム200は突出部320を押圧したまま搬送されながら自転を続け、時刻t4でプリフォーム200(t4)の凹部201が内側を向いた時点で、係合部材310(t4)の突出部320がこの凹部201に係合される。
【0050】
このようにプリフォーム200が自転領域RRにおいて自転することで、プリフォーム200がどの位置を向いて湾曲搬送部155に搬送されてきたとしても、自転領域RRにおいて必ずプリフォーム200の凹部201が係合部材310の支持部材319と係合する。そしてプリフォーム200が自転領域RRの外に搬送される際、プリフォーム200と係合部材310との距離が徐々に開き、係合部材310が備える支持部材319(突出部320)とプリフォーム200の凹部201との係合状態が解除される。また支持シャフト171(プリフォーム200)の自転は、自転領域RRを通り過ぎると終了する。したがって、その後、各プリフォーム200は、その向きが保持されたままブロー成形部140に向かって搬送される。
【0051】
さらに本発明では、搬送治具152が、位置決め部300によって向きが揃えられた各プリフォーム200の自転を規制する規制部材を備えており、これにより各プリフォーム200をより確実に所定の向きに保持したままブロー成形部140に向かって搬送することができる。
【0052】
規制部材は搬送治具152に移動可能に設けられており、その移動は搬送ライン151の側方(搬送レール上に設置された移動機構部によって行われる。移動機構部は、ハウジング172に保持された支持シャフト171を自転不能な状態に固定するための移動規制部材(ロック部材)501と、支持シャフト171を再び自転可能な状態へと戻す規制解除部材(アンロック部材)502、とからなる。
【0053】
以下、規制部材及び移動機構部の構成について詳しく説明する。
【0054】
搬送治具152は、
図7に示すように、規制部材としてのスライド部材175及び昇降部材(昇降手段)176と、狭持部材177と、を備えている。スライド部材175は、支持シャフト171の外周部に上下方向(支持シャフト171の軸方向)にスライド可能に設けられている。このスライド部材175は、上面視において略矩形の外形を有しており、搬送ライン151に対して所定の向きで搬送される。つまりスライド部材175は、回転(自転)することなく搬送ライン151に沿って搬送されるように形成されている。
【0055】
昇降部材176は、位置決め部300によってプリフォーム200の向きが揃えられたタイミングで、すなわち自転終了位置R2を通過するタイミングで、スライド部材175を上方に移動させる。本実施形態では、昇降部材176は、スライド部材175に設けられたカムフォロア178によって構成されている。カムフォロア178は、搬送ライン151に沿った方向に回転可能に設けられている。搬送ライン151を形成する少なくとも一方の搬送レール、例えば、外側搬送レール151a上には、このカムフォロア178がその上面を転動するカム部材179(移動規制部材501)が設けられている。カム部材179は、本実施形態では、上り傾斜部179aが自転終了位置R2よりも上流側に位置するように設けられている(
図2等参照)。なおカム部材179は、プリフォーム200の向きが揃えられたタイミングで、支持シャフト171の自転が規制されるように、搬送ライン151の自転終了位置R2付近に設けられていればよく、例えば、上り傾斜部179aは、自転終了位置R2の下流側に配置されていてもよい。
【0056】
そして、プリフォーム200が自転終了位置R2を通過すると、規制部材を構成するカムフォロア178がカム部材179(移動規制部材501)の上り傾斜部179aを転動することで、スライド部材175が所定高さまで上昇する。その後、カムフォロア178がカム部材179の平面部179b上を転動する間、スライド部材175がその高さに維持されるようになっている。
【0057】
狭持部材177は、支持シャフト171の外周部に設けられ、上述のように昇降部材176によってスライド部材175が所定高さまで移動された際に、支持シャフト171とスライド部材175との間に狭持される部材である。例えば、本実施形態では、狭持部材177は弾性部材からなるOリングである。支持シャフト171の外周面には、周方向に亘って連続する溝部171aが設けられており、狭持部材177は、この溝部171aに装着されている(
図5参照)。
【0058】
搬送治具152が自転領域RRを通過している際には、
図7(a)に示すように、スライド部材175は狭持部材177よりも下方に位置しており、狭持部材177がスライド部材175に接触することはない。したがって、上述のようにプリフォーム200を保持した支持シャフト171が自転し、各プリフォーム200が所定の向きに揃えられる。
【0059】
搬送治具152が自転領域RRを通り抜けると、すなわち自転終了位置R2を通過すると、カム部材179の上り傾斜部179aをカムフォロア178が転動することで、
図7(b)に示すようにスライド部材175が所定の高さまで上昇する。これにより、支持シャフト171とスライド部材175との隙間がOリングである狭持部材177によってシールされる。
【0060】
支持シャフト171とスライド部材175との隙間が狭持部材177によってシールされると、つまり狭持部材177が支持シャフト171とスライド部材175との間に狭持されると、その摩擦力により支持シャフト171の回転(自転)が規制される。したがって、自転領域RRで所定向きに揃えられた各プリフォーム200を、自転領域RRを通り抜けた後もそのままの向きに保持して搬送することができる。
【0061】
また本実施形態では、隣接する二つのスライド部材175が、個別にスライド可能(昇降可能)に、それぞれ連結されている。これにより、各スライド部材175の水平方向での回転(自転)を抑制することができ、各プリフォーム200をより確実に所望の向きに保持して搬送することができる。勿論、スライド部材175を三つ以上連結するようにしても、同様の効果が得られる。
【0062】
所定の向きに揃えられたプリフォーム200が供給される転送部160では、倒立状態で保持されているプリフォーム200を、図示しない搬送アームによって所定個数(例えば、8個)ずつ反転させて正立状態として取り出す(
図1参照)。ブロー成形部140では、転送部160より受け取った所定個数のプリフォーム200を、一対の割型からなるブローキャビティ型141に搬送し、ブローキャビティ型141でプリフォーム200をブロー成形する。
【0063】
上述のようにプリフォーム200は、その向きが揃えられたままの状態で搬送されるので、ブロー成形部140に搬入された状態でもプリフォーム200の向きが揃っている。これにより、プリフォーム200の形状がプリフォーム200の周方向において均一でない場合(例えばプリフォーム200の断面形状が楕円形状である場合や、プリフォーム200の厚みが均一でない場合等)であっても、ブロー成形部140において所望のブロー成形を行うことができる。
【0064】
なお、転送部160から初期位置(冷却部120)に戻される搬送治具152は、加熱部130への搬入前に自転可能な状態に復帰させておく必要がある。この復帰を確実に行うため、転送部160と加熱部130の間の搬送ライン151を形成する少なくとも一方の搬送レール、例えば、内側搬送レール151b上には、スライド部材175を下降させるためのカム部材180(規制解除部材502)が設置されている。このカム部材180(規制解除部材502)は、好ましくは、転送部160と冷却部120の間に設けられる。本実施形態では、カム部材180は、転送部160に近接して配置されている。
【0065】
また本実施形態では、カム部材179(移動規制部材501)が外側搬送レール151a上に形成され、カム部材180(規制解除部材502)が内側搬送レール151b上に形成されているが、これらの配置は特に限定されない。例えば、カム部材179(移動規制部材501)を内側搬送レール151b上に設け、カム部材180(規制解除部材502)を外側搬送レール151a上に設けてもよい。またカム部材179(移動規制部材501)及びカム部材180(規制解除部材502)を、外側搬送レール151a又は内側搬送レール151bの何れか一方の上に設けるようにしてもよい。さらにカム部材179(移動規制部材501)及びカム部材180(規制解除部材502)は、搬送ライン151の両側、すなわち外側搬送レール151a及び内側搬送レール151bの両方の上にそれぞれ設けられていてもよい。
【0066】
また上述の実施形態では、搬送治具152が、規制部材としてのスライド部材175及び昇降部材(昇降手段)176と、狭持部材177と、を備えている構成を例示したが、規制部材の構成は、特に限定されず、各プリフォーム200の自転を規制できるものであればよい。
【0067】
図8は、規制部材を含む搬送治具の変形例を説明する図である。
図8に示す例では、搬送治具152は、規制部材としての当接部材181及びこの当接部材181を移動させる移動部材(移動手段)182を備えている。当接部材181は、上下方向に所定間隔で配置される一対の当接部183と、一対の当接部183同士を連結する連結部184とを有し、縦断面が略コ字形状に形成されている。換言すれば、各当接部183は、連結部184の上下方向両端部から各支持シャフト171に向かって突出して設けられている。これらの当接部183には、
図9に示すように、上面視において支持シャフト171と同程度の直径の半円形の窪み部185が形成されている。
【0068】
また移動部材182は、当接部材181の連結部184から延設された延設部186に設けられたカムフォロア187で構成されている。カムフォロア187は、搬送ライン151に沿った方向に回転可能に設けられている。このような構成の場合にも、搬送ライン151を形成する少なくとも一方の搬送レール、例えば、外側搬送レール151a上には、このカムフォロア187がその上面を転動するカム部材188(移動規制部材501)が設けられている。カム部材188は、上述のように搬送ライン151の自転終了位置R2付近に設けられている(
図2等参照)。
【0069】
そして、このような当接部材181が移動部材182によって移動し、当接部183が支持シャフト171に当接することで、支持シャフト171の自転が規制されるようになっている。
【0070】
詳しくは、搬送治具152Aが自転領域RRを通過している際には、
図8(a)に示すように、当接部材181は支持シャフト171と若干離れた位置に配置されており、当接部183が支持シャフト171に接触することはない。したがって、上述のようにプリフォーム200を保持した支持シャフト171が自転し、各プリフォーム200が所定の向きに揃えられる。そして搬送治具152が自転領域RRを通り抜けると、すなわち自転終了位置R2を通過すると、カム部材188(移動規制部材501)の上り傾斜部188aを規制部材としてのカムフォロア187が転動することで延設部186が上昇する。この上昇に伴い、当接部材181は、
図8(b)に示すように支持シャフト171側に移動し、各当接部183が支持シャフト171に当接する。これにより、支持シャフト171の回転(自転)が規制される。したがって、自転領域RRで所定向きに揃えられた各プリフォーム200を、自転領域RRを通り抜けた後もそのままの向きに保持して搬送することができる。
【0071】
またこのような構成の場合にも、支持シャフト171を自転可能な状態に復帰させるため、転送部160と加熱部130との間の搬送ライン151を形成する少なくとも一方の搬送レール、例えば、内側搬送レール151b上には、カムフォロア187(当接部材181)を下降させるためのカム部材180(規制解除部材502)が設けられている(
図2参照)。勿論、この場合も、カム部材179(移動規制部材501)及びカム部材180(規制解除部材502)は、搬送ライン151の片側のみ、すなわち外側搬送レール151a又は内側搬送レール151bの一方のみに設けてもよい。またカム部材179(移動規制部材501)及びカム部材180(規制解除部材502)は、必要に応じて、搬送ライン151の両側、すなわち、外側搬送レール151aと内側搬送レール151bの両方に設けても構わない。
【0072】
(実施形態2)
図10は、実施形態2に係る搬送装置を示す平面図である。
図11は、実施形態2に係る搬送装置を構成する係合部材の側面図である。
図12は、実施形態2に係る搬送装置を構成する係合部材の斜視図である。
図13は、実施形態2に係る係合部材の上面図である。
図14は、実施形態2に係る搬送部材の構成及び動作を説明する側面図である。
【0073】
本実施形態は、係合装置及び搬送部材の構成が実施形態1とは異なり、他の構成は実施形態1と同様である。図中、同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
図10〜
図12に示すように、本実施形態に係る係合装置301Aは、実施形態1と同様に、複数の係合部材310Aを備えている。これらの各係合部材310Aは、実施形態1の構成とは異なり、係合装置301Aが備える円環状の環状台座部307上に搭載されている。環状台座部307上には、各係合部材310Aに対応する位置に、環状台座部307の径方向に沿ってガイドレール部材308が設けられている。すなわち環状台座部307には、複数のガイドレール部材308が所定間隔で放射状に設けられている。ガイドレール部材308には、このガイドレール部材308上をスライド可能な摺動部材309が設けられている。各係合部材310Aは、摺動部材309上にそれぞれ固定されている。つまり各係合部材310Aは、環状台座部307上に、その径方向に沿ってスライド可能に搭載されている。
【0075】
本実施形態に係る係合部材310Aの第1支持部312Aは、実施形態1と同様に転動部材314が垂直下方に向かって延在するように設けられる底面部313Aと、この底面部313Aから上方に延設される背面部321Aと、を有する(
図12参照)。係合部材310Aは、さらに背面部321Aから環状台座部307の中心側に向かって突出して設けられる背面突出部325を有し、この背面突出部325が摺動部材309上に固定されている(
図11参照)。
【0076】
また係合部材310Aは、コイルバネ等で構成されるバネ部材326によって常に環状台座部307の中心側に向かって付勢されている。すなわち、バネ部材326は、その一端側が背面突出部325に固定され、バネ部材326の他端側が環状台座部307に固定されている(
図11参照)。
【0077】
また各係合部材310Aの背面部321A上には第2支持部317Aが設けられている。実施形態1と同様に、第2支持部317Aの搬送ライン151側の略L字状の先端部318には支持部材319Aが水平方向に揺動可能に設けられている。また支持部材319Aは、先端側(一端側)が第2支持部317Aよりも外側(第2支持部317Aとは逆側)に位置するように付勢されている。本実施形態では、この支持部材319Aの一端側(先端部)には、例えば、ボールベアリング等で構成されるローラ部材327が水平方向に回転可能に設けられており、このローラ部材327によって突出部320Aが形成されている。
【0078】
そして、このローラ部材327からなる突出部320Aが、自転領域RRにおいてプリフォーム200の凹部201に嵌合することで、各プリフォーム200が所定の向きに揃えられるようになっている。
【0079】
本実施形態の構成では、突出部320Aがローラ部材327で構成されていることで、自転領域RRにおいて突出部320Aがプリフォーム200に当接した際の押圧力や摩擦力が低減される。したがって、自転領域RRにおける不整列状態のプリフォーム200の回転(自転)の阻害を抑制することができ、各プリフォーム200をより確実に所定の向きに整列させることができる。
【0080】
ところで、本実施形態に係る搬送装置では、隣接する二つの搬送治具152A(152a,152b)を一組として搬送ライン151を搬送させている。このため、これら二つの搬送治具152A(152a,152b)のそれぞれは、ハウジング172自体の回転が規制されている。これにより、ハウジング172の回転に伴うプリフォーム200の位置ずれを防止することができる。
【0081】
搬送ライン151には搬送治具152Aとの間に若干のクリアランスが存在する。したがって、二つの搬送治具152a,152bを一組として搬送する場合、自転領域RRを含む湾曲搬送部155において、後方の搬送治具152bは前方の搬送治具152aよりも若干外側の搬送経路を通過することになる。このような二つの搬送治具152a,152bの搬送経路のずれを考慮して、各搬送治具152a,152bに対応する第2支持部317A(317a,317b)を異なる形状としている。
【0082】
具体的には、前方の搬送治具152aに対応する第2支持部317aは、
図13(a)に示すように、支持部材319Aが支持される略L字状の先端部318の第2支持部317aの側面317sに対する角度θが略直角となるように形成されている。一方、後方の搬送治具152bに対応する第2支持部317bは、
図13(b)に示すように、略L字状の先端部318の第2支持部317aの側面317sに対する角度θが鈍角となるように形成されている。つまり、後方の搬送治具152bに対応する第2支持部317bの先端部318が、前方の搬送治具152aに対応する第2支持部317aの先端部318よりも搬送ライン151側に突出している。言い換えれば、後方の搬送治具152bに対応する第2支持部317bが備える突出部320Aが、前方の搬送治具152aに対応する第2支持部317aが備える突出部320Aよりも搬送ライン151側に突出可能に構成されている。
【0083】
これにより、二つの搬送治具152A(152a,152b)の搬送経路のずれが生じた場合でも、各プリフォーム200を所定の向きに整列させることができる。
【0084】
なお、例えば、搬送ライン151の搬送治具152Aとのクリアランスが比較的小さく、搬送経路のずれを考慮する必要がない場合、二つの搬送治具152(152a,152b)を一組として搬送する場合であっても、各搬送治具152a,152bに対応する第2支持部317を同一形状としてもよい。
【0085】
また本実施形態に係る搬送治具152Aは、規制部材の構成が実施形態1とは異なる。具体的には、
図14に示すように、搬送治具152Aは、規制部材としての縦スライド部材401、付勢部材402及び横スライド部材403を備えている。縦スライド部材401は、支持シャフト171の外周部に上下方向(縦方向)にスライド可能に設けられている。支持シャフト171には、縦スライド部材401の下方側に、支持シャフト171の径方向に張り出したフランジ部404が形成されており、縦スライド部材401の下端部は、このフランジ部404に当接した状態で保持されている。
【0086】
本実施形態では、フランジ部404は、支持シャフト171に一体的に形成された一体フランジ部405と、この一体フランジ部405の外側に固定された固定板406とで構成されている。なお一体フランジ部405は、ハウジング172を回転可能に保持する軸受け部材173の受けとして機能するものであるが、勿論、このような機能を有するものである必要はない。
【0087】
付勢部材402は、例えば、皿バネ等からなり、縦スライド部材401をフランジ部404側に向かって付勢する。本実施形態では、この付勢部材402の上方には、付勢部材402の上端側を保持するための保持部材407が設けられている。保持部材407は支持シャフト171に固定されている。この保持部材407と縦スライド部材401との間に付勢部材402が狭持されることで、付勢部材402によって縦スライド部材401が下方(フランジ部404側)に付勢される。
【0088】
なお縦スライド部材401の下端がフランジ部404(一体フランジ部405)に当接している状態では、縦スライド部材401と保持部材407との隙間は十分に確保される。このため、この状態では、縦スライド部材401は、付勢部材402によって付勢されていない。
【0089】
横スライド部材403は、支持シャフト171の外周部を囲って、フランジ部404(固定板406)上を支持シャフト171の径方向にスライド可能に設けられている。詳しくは、横スライド部材403は、中央部に貫通部408を有し、この貫通部408内で、支持シャフト171の径方向でスライド可能となっている。
【0090】
このような本実施形態の構成では、横スライド部材403が支持シャフト171と同心位置にある状態では(
図14(a))、縦スライド部材401は、横スライド部材403の貫通部408内に位置し、その下端がフランジ部404に当接する。このため縦スライド部材401は、付勢部材402によって付勢されない。したがって支持シャフト171の回転(自転)が規制されることはなく、各プリフォーム200が所定の向きに揃えられる。
【0091】
一方、横スライド部材403をその外側から押圧し、支持シャフト171の径方向にスライドさせると、横スライド部材403は、縦スライド部材401を押し上げながらフランジ部404と縦スライド部材401との間に入り込む(
図14(b))。縦スライド部材401が上方に押し上げられることに伴い、縦スライド部材401と保持部材407との隙間が狭まり、これらの間に付勢部材402が狭持される。すなわち、横スライド部材403は、付勢部材402の付勢力に抗して縦スライド部材401を押し上げながらフランジ部404と縦スライド部材401との隙間に係合される。したがって、横スライド部材403が支持シャフト171と非同心位置にある状態では、縦スライド部材401が、付勢部材402により下方に付勢される。さらに縦スライド部材401により横スライド部材403が下方に付勢され、支持シャフト171に設けられたフランジ部404(固定板406)に押し付けられる。これにより、支持シャフト171の回転(自転)が規制される。
【0092】
ここで、横スライド部材403の移動は、実施形態1と同様に、搬送ライン151の側方(搬送レール上)に設置された移動機構部によって行われる。移動機構部は、ハウジング172に保持された支持シャフト171を自転不能な状態に固定するための移動規制部材501と、支持シャフト171を再び自転可能な状態へと戻す規制解除部材502、とからなる(
図1,
図2参照)。
【0093】
すなわち、横スライド部材403は、搬送ライン151を形成する外側搬送レール151a上に設けられ、搬送ライン(外側搬送レール151aと内側搬送レール151bとの間)151に対向する領域に突出する第1の凸状部材409(移動規制部材501)に当接することによって同心位置から非同心位置にスライドするようになっている(
図10参照)。第1の凸状部材409は、搬送ライン151の湾曲搬送部155に設けられ、位置決め部300によってプリフォーム200の向きが揃えられたタイミング、すなわち自転終了位置R2を通過したタイミングで、横スライド部材403が非同心位置まで移動するように自転終了位置R2付近に配置されている。本実施形態では、第1の凸状部材409は、自転終了位置R2よりも上流側に設けられている。第1の凸状部材409の配置は、特に限定されず、搬送ライン151の自転終了位置R2の上流側から下流側まで延設されていてもよいし、自転終了位置R2の下流側に設けられていてもよい。何れの配置としても、プリフォーム200の向きが揃えられたタイミングで支持シャフト171の自転が規制できればよい。
【0094】
このような構成では、自転領域RRでプリフォーム200が所定向きに揃えられた段階で、支持シャフト171の回転(自転)が規制される。したがって、自転領域RRで所定向きに揃えられた各プリフォーム200を、自転領域RRを通り抜けた後もそのままの向きに保持して搬送することができる。
【0095】
なお、実施形態1の場合と同様に、転送部160から初期位置(冷却部120)に戻される搬送治具152は、加熱部130への搬入前に自転可能な状態に復帰させておく必要がある。図示は省略するが、転送部160と加熱部130の間の搬送ライン151の側部(第1の凸状部材409とは反対側の側部)、本実施形態では、内側搬送レール151b上に規制解除部材502である第2の凸状部材が設けられている。この規制解除部材502である第2の凸状部材は、横スライド部材403の外周部が当接することで、横スライド部材403が非同心位置から同心位置までスライドするように配置されている。
【0096】
なお移動規制部材501である第1の凸状部材409は、本実施形態では、搬送ライン151を形成する外側搬送レール151a上に設けられているが、搬送ライン151を形成する内側搬送レール151b上に設けられていてもよい。この場合には、規制解除部材502である第2の凸状部材は搬送ライン151を形成する外側搬送レール151a上に設けられることになる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能なものである。
【0098】
例えば、上述の実施形態では、プリフォームに設けられた凹部(切欠き部)に係合部材の突出部が嵌合することで、各プリフォームを所定の向きに整列させるようにしたが、プリフォームの向きを揃えるための構造はこれに限定されるものではない。例えば、プリフォームに凸部を設け、この凸部が係合部材に設けられた凹部(切欠き部)に嵌合するようにしてもよい。