【課題】本発明は、ピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成される半導体圧力センサチップを使用した圧力センサにおいて、温度変化による半導体圧力センサチップ、支持部材、接着剤の線膨張係数の相違により生じる半導体圧力センサチップの歪を低減し、圧力センサの精度の向上を図ることを目的とする。
【解決手段】本発明の圧力センサ100は、内部にダイヤフラム部126a1を有する半導体圧力センサチップ126と、半導体圧力センサチップ126を支持する支柱125と、半導体圧力センサチップ126と支柱125を接着して固定する接着剤層125Aとを備える。接着剤層125Aの接着領域は、半導体圧力センサチップ126のダイヤフラム部126a1の支柱125の投影面積よりも小さいことを特徴とする。
前記接着剤層の接着領域の位置は、前記半導体圧力センサチップの前記ダイヤフラム部の支持部材に対する投影箇所の内側であることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような半導体圧力センサチップを使用した圧力センサでは、周囲温度が変化すると、半導体圧力センサチップ、これを支持する支持部材、及び、接着剤の線膨張係数の差異により熱応力が発生する。つまり、例えば周囲温度が低下した場合には半導体圧力センサチップと比較して線膨張係数の大きい接着剤が収縮し、逆に周囲温度が上昇した場合には半導体圧力センサチップと比較して接着剤が膨張する。この場合に半導体センサチップは、接着剤で拘束されているため、半導体センサチップと接着剤の間には熱応力が発生する。また、接着剤と支持部材の間にも同様の理由で熱応力が発生する。
【0006】
このような熱応力の発生により半導体圧力センサが歪み、半導体圧力センサチップの出力特性が変化し、センサ出力の精度が低下するという問題が従来から知られている。これは、半導体圧力センサチップでは、上述のように内部に形成されたダイヤフラム部に流体を導入して圧力を検出するため、半導体センサチップが歪むと、内部のダイヤフラム部も歪み、正確に圧力を検出することができないことが原因となっている。
【0007】
また、接着剤の粘弾性の性質により、圧力センサの温度応答性の遅れにより精度が悪化するという問題も従来から知られている。
【0008】
従って、本発明の圧力センサは、ピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成される半導体圧力センサチップを使用した圧力センサにおいて、温度変化による半導体圧力センサチップ、支持部材、接着剤等の線膨張係数の差異により生じる半導体圧力センサチップの歪を低減し、圧力センサの精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の圧力センサは、内部にダイヤフラム部を有する半導体圧力センサチップと、前記半導体圧力センサチップを支持する支持部材と、前記半導体圧力センサチップと前記支持部材を接着して固定する接着剤層とを備える圧力センサにおいて、前記接着剤層の接着領域は、前記半導体圧力センサチップの前記ダイヤフラム部の支持部材に対する投影面積よりも小さいことを特徴とすることを特徴とする。
【0010】
また、前記接着剤層の接着領域の位置は、前記半導体圧力センサチップの前記ダイヤフラム部の支持部材に対する投影箇所の内側であるものとしてもよい。
【0011】
また、前記支持部材には、前記接着剤層の接着領域に合わせた領域の平坦面を有する突起部が設けられるものとしてもよい。
【0012】
また、前記支持部材は、外部に対して絶縁して固定される金属性の支柱であるものとしてもよい。
【0013】
また、前記支持部材は、前記圧力センサの筐体を構成するベースであるものとしてもよい。
【0014】
また、前記支持部材には、さらに、前記ベースと前記半導体圧力センサチップとの間に配置され、取付基板が含まれるものとしてもよい。
【0015】
また、前記取付基板の前記半導体圧力センサチップが固定される一方の面に、導電層が形成されるものとしてもよい。
【0016】
また、前記ベースは、導電性の材質で形成されるものとしてもよい。
【0017】
また、前記ベースは、絶縁性の材質で形成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧力センサによれば、ピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成される半導体圧力センサチップを使用した圧力センサにおいて、温度変化による半導体圧力センサチップ、支持部材、接着剤等の線膨張係数の差異により生じる半導体圧力センサチップの歪を低減し、圧力センサの精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態の圧力センサ100の半導体圧力センサチップ126の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0022】
図1において、半導体圧力センサチップ126は、接着剤を塗布して形成される接着剤層125Aを介して支柱125等の支持部材に取り付けられる。その後、半導体圧力センサチップ126のリード端子(図示を省略する)と、複数のリードピン128は、ワイヤボンディング工程により、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126Aにより接続される。
【0023】
半導体圧力センサチップ126としては、ここではピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成されるものが使用される。ピエゾ抵抗効果を利用した半導体圧力センサチップ126は、ピエゾ抵抗効果を有する材料(例えば、単結晶シリコン)からなるダイヤフラム部126a1を有する半導体基板部126aと、ガラス等からなる台座部126bとから主に構成される。半導体基板部126aと、台座部126bは、陽極接合法などにより接合され、半導体基板部126aのダイヤフラム部126a1と、台座部126bとの間の空間は、基準圧力チャンバとなる。半導体基板部126aのダイヤフラム部126a1には、複数の半導体歪みゲージが形成され、これらの半導体歪みゲージをブリッジ接続したブリッジ回路が構成される。このブリッジ回路により、外気圧と基準圧力チャンバとの圧力差により生じたダイヤフラム部126a1の変形を、半導体歪みゲージのゲージ抵抗の変化として、電気信号を取り出し、流体の圧力が検出される。
【0024】
接着剤層125Aとしては、シリコーン系、ウレタン系、フッ素系の接着剤、ゲル、ゴム、エラストマーが使用されるものとしてもよい。
【0025】
図1に示すように、本発明の圧力センサ100では、支柱125と半導体圧力センサチップ126を固定する接着剤層125Aの接着領域が所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積よりも小さくなっている。
【0026】
この接着剤層125Aの接着領域について、
図3に示す従来の圧力センサ300を使用して説明する。
【0027】
図3は、従来の圧力センサ300の半導体圧力センサチップ126の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0028】
図3において、従来の圧力センサ300の半導体圧力センサチップ126は、支柱125の全面に塗布された接着剤により形成される接着剤層325Aにより固定される。半導体圧力センサチップ126のリード端子(図示を省略する)と、複数のリードピン128は、ワイヤボンディング工程により、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126Aにより接続される。
【0029】
図3に示す従来の圧力センサ300の半導体圧力センサチップ126の取り付け構造では、接着剤層325Aが支柱125の全面に形成されているため、半導体圧力センサチップ126に対する、接着剤層325A及び支柱125の拘束力が強くなっていた。このため、これらの線膨張係数の差異により発生する熱応力の影響により、半導体圧力センサチップ126が歪み、半導体圧力センサチップ126の出力特性が変化し、半導体圧力センサチップ326の出力精度が低下するという問題があった。また、接着剤層325Aの粘弾性の性質により、熱応力が変化した際に応力が平衡状態になるまでに時間がかかるため、圧力センサの温度応答性が悪化することも知られているが、上述のように拘束力が強いため、この影響も考慮すべきという問題もあった。
【0030】
これに対して、
図1に示す本発明の第1の実施形態の圧力センサ100では、接着剤を塗布して形成される接着剤層125Aの接着領域が、所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積よりも小さくなっている。このように接着剤層125Aの接着領域を小さくすることにより、半導体圧力センサチップ126に対する拘束力が弱くなり、互いの線膨張係数の差異による熱応力を抑制でき、半導体圧力センサチップ126の歪を防止できる。
【0031】
なお、接着剤層125Aの接着領域を、半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積よりも小さくすることにより、更なる効果が期待できる。つまり、半導体圧力センサチップ126の圧力検出部であるダイヤフラム部126a1は、上述のように、検出されるべき流体が導入され変形を繰り返している。ダイヤフラム部126a1のような変形部分に対応する場所のみを接着領域とした場合には、歪が生じにくいが、変形していないダイヤフラム部126a1の周囲の部分を接着領域とした場合には、半導体圧力センサチップ126はより強固に拘束され熱応力による歪が生じ易くなり、検出精度が悪化する。
【0032】
このため、本実施形態のように、接着剤層125Aの接着領域を所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ126のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積より小さくすることにより、温度変化による半導体圧力センサチップ126、支柱125、接着剤層125Aの線膨張係数の相違により生じる半導体圧力センサチップ126の歪を低減し、精度向上及び温度応答性の改善を図ることができる。また、さらに、上述と同様の理由により、接着剤層125Aの接着領域の位置は、半導体圧力センサチップ126のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影箇所の内側であることが望ましい。
【0033】
また、接着剤層は斯かる例に限られることなく、たとえば、薄いフィルムの両面に接着剤層が形成されている、粘着性フィルムであってもよい。
【0034】
ここで、
図1に示す半導体圧力センサチップ126の取り付け構造を有する本発明の圧力センサの一例として、液封型の圧力センサ100の全体構造を説明する。
【0035】
図2は、本発明の第1の実施形態の圧力センサである液封形の圧力センサ100の全体を示す縦断面図である。
【0036】
図2において、液封型の圧力センサ100は、圧力検出される流体を後述する圧力室112Aに導入する流体導入部110と、圧力室112Aの流体の圧力を検出する圧力検出部120と、圧力検出部120で検出された圧力信号を外部に送出する信号送出部130と、流体導入部110、圧力検出部120、及び、信号送出部130を覆うカバー部材140とを備える。
【0037】
流体導入部110は、圧力検出される流体が導かれる配管に接続される金属製の継手部材111と、継手部材111の配管に接続される端部と別の端部に溶接等により接続されるお椀形状を有する金属製のベースプレート112とを備える。
【0038】
継手部材111には、配管の接続部の雄ねじ部にねじ込まれる雌ねじ部111aと、配管から導入された流体を圧力室112Aに導くポート111bとが形成される。ポート111bの開口端は、ベースプレート112の中央に設けられた開口部に溶接等により接続される。なお、ここでは、継手部材111に雌ねじ部111aが設けられるものとしたが、雄ねじが設けられるものとしてもよく、または、継手部材111の代わりに、銅製の接続パイプが接続されるものとしてもよい。ベースプレート112は、継手部材111と対向する側に向かい広がるお椀形状を有し、後述するダイヤフラム122との間に圧力室112Aを形成する。
【0039】
圧力検出部120は、貫通孔を有するハウジング121と、上述の圧力室112Aと後述する液封室124Aとを隔絶するダイヤフラム122と、ダイヤフラム122の圧力室112A側に配置されるダイヤフラム保護カバー123と、ハウジング121の貫通孔内部にはめ込まれるハーメチックガラス124と、ハーメチックガラス124の圧力室112A側の凹部とダイヤフラム122との間にシリコーンオイル、または、フッ素系不活性液体等の圧力伝達媒体PMが充填される液封室124Aと、ハーメチックガラス124の中央の貫通孔に配置される支柱125と、支柱125に固定され液封室124A内部に配置される半導体圧力センサチップ126と、液封室124Aの周囲に配置される電位調整部材127と、ハーメチックガラス124に固定される複数のリードピン128と、ハーメチックガラス124に固定されるオイル充填用パイプ129とを備える。
【0040】
ハウジング121は、例えばFe・Ni系合金やステンレス等の金属材料により形成される。ダイヤフラム122と、ダイヤフラム保護カバー123は、共に金属材料で形成され、共にハウジング121の圧力室112A側の貫通孔の外周縁部において溶接される。ダイヤフラム保護カバー123は、ダイヤフラム122を保護するために圧力室112A内部に設けられ、流体導入部110から導入された流体が通過するための複数の連通孔123aが設けられる。ハウジング121は、圧力検出部120が組み立てられた後、流体導入部110のベースプレート112の外周縁部において、溶接等により接続される。
【0041】
支柱125は、液封室124A側に、半導体圧力センサチップ126が接着剤層125Aにより接着して固定されるものである。上述したように、本発明の圧力センサ100では、支柱125と半導体圧力センサチップ126を固定する接着剤層125Aの接着領域が所定の領域、ここでは半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積より小さくなっている。半導体圧力センサチップ126は、上述のように流体導入部110から圧力室112Aに導入された流体の圧力を、ダイヤフラム122を介して液封室124A内の圧力伝達媒体PMの圧力変動として検出するものである。
【0042】
電位調整部材127は、特許文献2に記載されているように、半導体圧力センサチップ126を無電界(ゼロ電位)内に置き、フレームアースと2次電源との間に生じる電位の影響でチップ内の回路などが悪影響を受けないようにするために設けられる。電位調整部材127は、液封室124A内の半導体圧力センサチップ126とダイヤフラム122との間に配置され、金属等の導電性の材料で形成され、半導体圧力センサチップ126のゼロ電位に接続される端子に接続される。
【0043】
ハーメチックガラス124には、複数のリードピン128と、オイル充填用パイプ129が貫通状態でハーメチック処理により固定される。本実施形態では、リードピン128として、全部で8本のリードピン128が設けられている。すなわち、外部入出力用(Vout)、駆動電圧供給用(Vcc)、接地用(GND)の3本のリードピン128と、半導体圧力センサチップ126の調整用の端子として5本のリードピン128が設けられている。なお、
図2においては、8本のリードピン128のうち4本が示されている。複数のリードピン128は、例えば、金またはアルミニウム製のボンディングワイヤ126Aにより半導体圧力センサチップ126に接続され、半導体圧力センサチップ126の外部入出力端子を構成している。
【0044】
オイル充填用パイプ129は、液封室124Aの内部に圧力伝達媒体PMを充填するために設けられる。なお、オイル充填用パイプ129の一方の端部は、オイル充填後、
図2の点線で示されるように、押し潰されて閉塞される。
【0045】
信号送出部130は、圧力検出部120の圧力室112Aに対向する側に設けられ、複数のリードピン128を配列する端子台131と、端子台131に接着剤132aにより固定され、複数のリードピン128に接続される複数の接続端子132と、複数の接続端子132の外端部に半田付け等により電気的に接続される複数の電線133と、ハウジング121の上端部と端子台131の間にシリコーン系接着剤で形成される静電気保護層134とを備える。なお、静電気保護層134は、エポキシ樹脂などの接着剤でも良い。
【0046】
端子台131は、略円柱形状であって、当該円柱の中段付近に、上述の複数のリードピン128をガイドするためのガイド壁を有する形状に形成され、樹脂材料、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により形成される。端子台131は、例えば、静電気保護層134に使用されている接着剤により、圧力検出部120のハウジング121の上部に固定される。
【0047】
接続端子132は、金属材料で形成され、端子台131の上述の固定壁より上段の円柱側壁に垂直に接着剤132aにより固定される。なお、本実施形態では、外部入出力用(Vout)、駆動電圧供給用(Vcc)、接地用(GND)の3本の接続端子132が設けられる。3本の接続端子132の内端部は、それぞれ対応するリードピン128に溶接等により電気的に接続されるが、この接続方法には限定されず、その他の方法で接続してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、3本の接続端子132に接続するために3本の電線133が設けられる。電線133は、電線133のポリ塩化ビニル(PVC)等で形成された被覆をはがした芯線133aに予め予備半田を行い、その撚り線を束ねたものを、上述の接続端子132に半田付けや溶接等により接続端子132に電気的に接続されるが、この接続方法には限定されず、その他の方法で接続してもよい。また、3本の電線133は、圧力センサ100の周囲を覆うカバー部材140から引き出された後、3本束ねた状態にしてポリ塩化ビニル(PVC)等で形成された保護チューブ(図示を省略する)で覆われる。
【0049】
静電気保護層134は、ESD保護回路の有無に影響されることなく、圧力検出部120の静電気耐力を向上させるために設けられるものである。静電気保護層134は、主に、ハーメチックガラス124の上端面を覆うようにハウジング121の上端面に塗布され、シリコーン系接着剤により形成される所定の厚さを有する環状の接着層134aと、複数のリードピン128が突出するハーメチックガラス124の上端面全体に塗布され、シリコーン系接着剤からなる被覆層134bとから構成される。端子台131の空洞部を形成する内周面であって、ハーメチックガラス124の上端面に向き合う内周面には、ハーメチックガラス124に向けて突出する環状突起部131aが形成されている。環状突起部131aの突出長さは、被覆層134bの粘性等に応じて設定される。このように環状突起部131aが形成されることにより、塗布された被覆層134bの一部が、表面張力により環状突起部131aと、端子台131の空洞部を形成する内周面のうちハーメチックガラス124の上端面に略直交する部分との間の狭い空間内に引っ張られて保持されるので、被覆層134bが端子台131の空洞部内における一方側に偏ることなく塗布されることとなる。また、被覆層134bは、ハーメチックガラス124の上端面に所定の厚さで形成されるが、
図2の部分134cに示すように、ハーメチックガラス124の上端面から突出する複数のリードピン128の一部分をさらに覆うように形成されてもよい。
【0050】
カバー部材140は、略円筒形状で圧力検出部120及び信号送出部130の周囲を覆う防水ケース141と、端子台131の上部に被される端子台キャップ142と、防水ケース141の内周面とハウジング121の外周面及び端子台131の外周面との間を充填する封止剤143とを備える。
【0051】
端子台キャップ142は、例えば樹脂材料により形成される。端子台キャップ142は、本実施形態では、上述の円柱形状の端子台131の上部を塞ぐ形状に形成され、ウレタン系樹脂等の封止剤143が充填される前に端子台131の上部に被される。しかしながら、端子台キャップ142はこの形状には限定されず、端子台131の上部及び防水ケース141の上部を一体として塞ぐ形状に形成され、封止剤143が充填された後に被されるものとしても、または、端子台キャップ142とは別に新たな蓋部材が設けられ、端子台キャップ142及び封止剤143が配置された後に、防水ケース141の上部に新たな蓋部材が被されるものとしてもよい。
【0052】
防水ケース141は、樹脂材料、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)により略円筒形状に形成され、円筒形状の下端部には、内側に向かうフランジ部が設けられている。このフランジ部には、防水ケース141の上部の開口部から挿入された信号送出部130及び圧力検出部120が接続された流体導入部110のベースプレート112の外周部が当接する。この状態で封止剤143を充填することにより圧力検出部120等の内部の部品が固定される。
【0053】
以上のように、本発明の第1の実施形態の圧力センサ100によれば、接着剤層125Aの接着領域を、所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱125に対する投影面積よりも小さくすることにより、半導体圧力センサチップ126に対する拘束力が弱くなる。従って、互いの線膨張係数の差異による熱応力の影響を抑制でき、半導体圧力センサチップ126の歪を防止でき、圧力センサ100の温度応答性の改善による圧力センサ100の精度の向上を図ることができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0055】
図4は、本発明の第2の実施形態の圧力センサ400の半導体圧力センサチップ126の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0056】
図4において、圧力センサ400は、
図1に示す圧力センサ100と比較して、支柱425の表面に、接着剤層425Aの接着領域に合わせた大きさの平坦面を有する突起部425aが設けられ、その部分にのみ接着剤層425Aが形成される点が異なり、その他の点は圧力センサ100と同じである。なお、突起部425aの平坦面は、半導体圧力センサチップ126の内部のダイヤフラム部126a1の支柱425に対する投影面積よりも小さいものとしてもよい。同様の構成要素には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0057】
以上のように、本発明の第2の実施形態の圧力センサ400によっても、第1の実施形態の圧力センサ100と同様の作用効果を奏することができる。さらに、突起部425aの平坦面の大きさに合わせて、安定した接着剤層の広さで接着剤層425Aを形成できるので、半導体圧力センサチップ126を容易に取り付けることができ、圧力センサ400の更なる精度の向上を図ることができる。
【0058】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0059】
図5は、本発明の第3の実施形態の圧力センサ500の半導体圧力センサチップ526の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0060】
図5において、圧力センサ500は、
図1に示す圧力センサ100と比較して、支持部材として、支柱125の代わりに、圧力センサ500の筐体を構成するベース525が設けられ、半導体圧力センサチップ526がこのベース525に接着剤層525Aを介して固定される点が異なる。
【0061】
なお、本実施形態において、ベース525は、半導体圧力センサチップ526のシールド性を高めるため、ステンレスを含む金属のような導電性の材料で形成される。このため、ボンディングワイヤ526Aにより半導体圧力センサチップ526に接続された複数のリードピン528のそれぞれは、絶縁性のハーメチックガラス524を介して、ベース525に貫通して固定される。
【0062】
本実施形態でも、ベース525に形成される接着剤層525Aの接着領域は、所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ526の内部のダイヤフラム部526a1のベース525に対する投影面積よりも小さくなっている。このように接着剤層525Aの接着領域を小さくすることにより、半導体圧力センサチップ526に対する拘束力が弱くなり、互いの線膨張係数の差異による熱応力の影響を抑制でき、半導体圧力センサチップ526の歪を防止できる。
【0063】
以上のように、本発明の第3の実施形態の圧力センサ500によっても、第1の実施形態の圧力センサ100と同様の作用効果を奏することができる。さらに、支柱125の代わりに導電性の材料で形成されたベース525に接着剤層525Aを介して半導体圧力センサチップ526を取り付けた場合であっても、半導体圧力センサチップ526の歪を抑制して取り付けることができる。
【0064】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0065】
図6は、本発明の第4の実施形態の圧力センサ600の半導体圧力センサチップ526の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0066】
図6において、圧力センサ600は、
図5に示す圧力センサ500と比較して、ステンレス製のような導電性の材料により形成されたベース625の表面に、接着剤層625Aの接着領域に合わせた大きさの平坦面を有する突起部625aが設けられ、その部分にのみ接着剤層625Aが形成される点が異なり、その他の点は圧力センサ500と同じである。同様の構成要素には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
以上のように、本発明の第4の実施形態の圧力センサ600によっても、第3の実施形態の圧力センサ500と同様の作用効果を奏することができる。さらに、突起部625aの平坦面の大きさに合わせて、安定した接着剤層の広さで接着剤層625Aを形成できるので、半導体圧力センサチップ526を容易に取り付けることができ、圧力センサ600の更なる精度の向上を図ることができる。
【0068】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0069】
図7は、本発明の第5の実施形態の圧力センサ700の半導体圧力センサチップ726の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0070】
図7において、圧力センサ700は、
図5に示す圧力センサ500と比較して、支持部材として、金属のような導電性の材料で形成されたベース525の代わりに、樹脂、セラミック等の絶縁性の材料で形成されたベース725が設けられ、半導体圧力センサチップ726がこのベース725に接着剤層725Aを介して固定される点が異なる。
【0071】
なお、本実施形態において、ベース725として、樹脂、セラミック等の絶縁材を使用することにより、材料の加工性が向上し工数が削減でき、さらに、導電性の複数のリードピン728を固定するために、絶縁性のハーメチックガラスを使用する必要もなくなり、製造原価も低廉に抑制できる。
【0072】
本実施形態でも、ベース725に形成される接着剤層725Aの接着領域は、所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ726の内部のダイヤフラム部726a1のベース725に対する投影面積よりも小さくなっている。このように接着剤層725Aの接着領域を小さくすることにより、半導体圧力センサチップ726に対する拘束力が弱くなり、互いの線膨張係数の差異による熱応力の影響を抑制でき、半導体圧力センサチップ726の歪を防止できる。
【0073】
以上のように、本発明の第5の実施形態の圧力センサ700によっても、第3の実施形態の圧力センサ500と同様の作用効果を奏することができ、さらに、導電性の材料で形成されたベース525の代わりに絶縁性の材料で形成されたベース725に接着剤層725Aを介して半導体圧力センサチップ726を取り付けた場合であっても、半導体圧力センサチップ726の歪を抑制して取り付けることができる。
【0074】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0075】
図8は、本発明の第6の実施形態の圧力センサ800の半導体圧力センサチップ726の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0076】
図8において、圧力センサ800は、
図7に示す圧力センサ700と比較して、樹脂、セラミック等の絶縁性の材料により形成されたベース825の表面に、接着剤層825Aの接着領域に合わせた大きさの平坦面を有する突起部825aが設けられ、その部分にのみ接着剤層825Aが形成される点が異なり、その他の点は圧力センサ700と同じである。同様の構成要素には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
以上のように、本発明の第6の実施形態の圧力センサ800によっても、第5の実施形態の圧力センサ700と同様の作用効果を奏することができる。さらに、突起部825aの平坦面の大きさに合わせて、安定した接着剤層の広さで接着剤層825Aを形成できるので、半導体圧力センサチップ726を容易に取り付けることができ、圧力センサ800の更なる精度の向上を図ることができる。
【0078】
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
【0079】
図9は、本発明の第7の実施形態の圧力センサ900の半導体圧力センサチップ526の取り付け構造を示す縦断面図である。
【0080】
図9において、圧力センサ900は、
図5に示す圧力センサ500と比較して、金属等の導電性の材料で形成されたベース525と、半導体圧力センサチップ526との間に、取付基板925が配置されることが異なり、その他の点は圧力センサ500と同じである。同様の構成要素には、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0081】
取付基板925は、例えば、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁材料で形成され、ベース525に接着剤層525a等で固定される。これにより半導体圧力センサチップ526は、金属等の導電性の材料で形成されたベース525に対して電気的に絶縁される。
【0082】
また、取付基板925のベース525に対向する側には、半導体圧力センサチップ526が接着剤層925Aにより固定される。本実施形態でも、取付基板925に形成される接着剤層925Aの接着領域は、所定の領域、例えば半導体圧力センサチップ526の内部のダイヤフラム部526a1の取付基板925に対する投影面積よりも小さくなっている。
【0083】
ここで、取付基板925の半導体圧力センサチップ526が固定される一方の面に、貼着、蒸着、めっき、フォトリソグラフィ等により、導電層925aが形成されるものとしてもよい。この導電層925aは、金、銀、銅、アルミニウム等のうちのいずれかの金属および合金膜により形成されるものとしてもよい。導電層925aは半導体圧力センサチップ526のゼロ電位に接続される端子に接続されている。このように、取付基板925に導電層925aを設け、ゼロ電位に接続されることにより、半導体圧力センサチップ526は制御回路側のゼロ電位に配置されるため、半導体圧力センサチップ526の電位が不安定な状態に配置されることを解消できると共に、半導体圧力センサチップ526のベース525に対する絶縁性の向上を図ることができる。さらに、取付基板925単体で接着剤層925Aの接着領域に該当する箇所にレーザー照射、ブラスト処理などの表面改質を行うことができる。そうすることにより、接着剤の流動性に応じて、接着剤層925Aの接着領域の大きさを調整することが可能となる。
【0084】
なお、本実施形態では、取付基板925を、金属等の導電性の材料で形成されたベース525に固定するものとしたが、これには限定されず、
図7に示す圧力センサ700のように、樹脂、セラミック等の絶縁性の材料で形成されたベース725に固定するものとしてもよい。また、本実施形態では、取付基板925に導電層925aを設けるものとしたが、導電層925aを設けず、樹脂、ガラス、セラミックなどの絶縁材料のみで形成されるものとしてもよい。
【0085】
またさらに、取付基板925の表面に、接着剤層925Aの接着領域に合せた大きさの平坦面を有する突起部が設けられ、その部分にのみ接着剤層925Aが形成されていてもよい。このような構成により、接着領域に該当する突起部の形成が取付基板925のみで行うことができる。従来のベース525、ベース725に接着領域を形成する方法よりも容易な加工が可能である。
【0086】
またさらに、
図1に示す圧力センサ100や、
図4に示す圧力センサ200のように、液封室124A内の支柱125、支柱425の表面に取付基板925を介して半導体圧力センサチップ126を固定してもよい。またさらに、
図1に示す圧力センサ100や
図4に示す圧力センサ200において、支柱125、支柱425がなく、液封室124A内のハーメチックガラス124に、取付基板925を介して半導体圧力センサチップ126を固定してもよい。
図1及び
図4の形態において、取付基板925は絶縁材料に限らず、導電性材料であってもよいし、絶縁性材料に導電層が形成されているものでもよい。
【0087】
以上のように、本発明の第7の実施形態の圧力センサ900によっても、第3の実施形態の圧力センサ500と同様の作用効果を奏することができ、さらに、ベース525の材質によらず、取付基板単体で接着領域を形成できるため、ベースに直接加工を行う形態よりも安易な加工で実現ができ、半導体圧力センサチップ526を固定することができる。
【0088】
なお、本発明の第1乃至第7の実施形態の液封型の圧力センサを例にとり、本発明の圧力センサを説明してきたが、これには限定されず、ピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成される半導体圧力センサチップを使用する他の圧力センサに適用することもできる。
【0089】
以上のように、本発明の圧力センサによれば、ピエゾ抵抗効果方式のように内部にダイヤフラム部が形成される半導体圧力センサチップを使用した圧力センサにおいて、温度変化による半導体圧力センサチップ、支持部材、接着剤の線膨張係数の相違により生じる半導体圧力センサチップの歪を低減し、圧力センサの精度の向上を図ることができる。