(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-109384(P2019-109384A)
(43)【公開日】2019年7月4日
(54)【発明の名称】カバーガラス、撮像装置、携帯用電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20060101AFI20190614BHJP
G03B 17/02 20060101ALI20190614BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20190614BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G03B17/02
H04N5/225 400
H04N5/225 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-242639(P2017-242639)
(22)【出願日】2017年12月19日
(71)【出願人】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】津守 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】小泉 達也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大刀夫
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AD01
2H044AD03
2H100AA02
2H100EE06
5C122DA09
5C122EA35
5C122FB02
5C122GE01
5C122GE07
5C122HB05
5C122HB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴースト現象を低減する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置1の内部構造を外界から保護するカバーガラス5であって、カバーガラスの内部構造側表面である第一カバーガラス面30が凸面又は凹面である特徴を持つカバーガラスを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置の内部構造を外界から保護するカバーガラスであって、
前記カバーガラスの前記内部構造側表面である第一カバーガラス面が凸面又は凹面である特徴を持つカバーガラス。
【請求項2】
前記第一カバーガラス面の曲率半径は5000mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のカバーガラス。
【請求項3】
前記第一カバーガラス面は、前記内部構造側が凹面であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカバーガラス。
【請求項4】
前記カバーガラスの前記外界側表面である第二カバーガラス面は、凸面であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載のカバーガラス。
【請求項5】
前記第二カバーガラス面の曲率半径が、前記第一カバーガラス面の曲率半径と略等しいことを特徴とする請求項4に記載のカバーガラス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の前記カバーガラスを備える前記撮像装置であって、
筐体と、
前記筐体に内蔵される光学レンズ群と、
前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子と
を更に備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
前記カバーガラスが前記筐体に直接固定されていることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項7に記載の前記撮像装置を備える携帯用電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置の内部構造を保護するカバーガラス及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、携帯電話等の携帯用電子機器に搭載されるカメラや、コンパクトデジタルカメラ等撮像装置の発達、及び、それらの画像を公開するインターネットサイトの一般化に伴い、撮像装置により撮像される画像はより良い品質が要求されるようになっている。具体的に良い品質の画像とは、解像度や色再現性が良く、また不要な虚像、すなわちゴーストやフレアが写り込んでいない画像である。特に明るい点光源の被写体、例えば太陽、夜間における街燈等が含まれるシーンを撮影した時のゴースト現象やフレアは問題になる場合が多くある。
【0003】
図7(A)は、携帯用電子機器の筐体107に搭載される撮像装置101の説明図である。撮像装置101の最も外界側には、撮像装置101の内部構造、具体的には光学レンズ群等を保護するためのカバーガラス105が備えられる。
【0004】
図7(B)は、撮像装置101の構成を説明する説明図である。撮像装置101は、外界側から携帯用電子機器の筐体107に固定されるカバーガラス105と、光学レンズ群(内部構造)110と、IRフィルタ(赤外光フィルタ)115と、撮像素子120を備える。外界からの平行光線は、図の破線のように撮像素子120の撮像面125に焦点を結ぶ。
【0005】
図8は、既存の携帯用電子機器に付属する撮像装置によって撮影された、ゴースト現象を伴う夜間の画像である。Reは街灯の実像であり、Gがそのゴーストである。明るい点光源を撮像すると、画像の中心に対して点対称の位置に、明確に焦点が合った点光源のゴーストが写りこむことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−230751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで光学レンズの両面に施す反射防止膜の構造や仕様を工夫し、レンズ面での不要な反射光を低減することや、カメラの内部構造における反射光を低減することで、ゴースト現象を低減する努力を続けられている(特許文献1参照)。しかし撮像装置においてゴースト現象を大きく低減することは困難であった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ゴースト現象を大幅に低減する撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者は、画質の改善について鋭意研究を行った。そして、撮像装置の全体構造における光線の反射特性に着目し、ゴースト現象の原因を明らかにして本願発明の構成に至った。
【0010】
図1は、ゴースト現象の原因についての説明図である。
図1には、光学レンズ群110やカバーガラス130、撮像素子120の法線Nに対してθ=2°の傾きを持つ入射光線Iを入射させた場合のシミュレーション結果を示す。入射光線Iは実線のように撮像素子120まで到達して撮像面125上に焦点を結んで実像Reを生成し、撮像面125で反射された後、第一反射光線R1のような光路を辿ってカバーガラス105に到達する。そしてカバーガラス105の内部構造側面である第一カバーガラス面130に反射され、第二反射光線R2の光路を辿って撮像面125上に焦点を結んでゴーストGを生成することがシミュレーションの結果わかった。すなわちゴーストの主な原因が、撮像面125、及び、内部構造側面である第一カバーガラス面130の二回の反射によるものであることが確認された。
【0011】
スマートフォン、スマートフォン等の携帯用電子機器に搭載されるカメラやコンパクトデジタルカメラの撮像素子にはCMOSセンサやCCDなどイメージセンサが使用されている。特にスマートフォン、携帯電話に搭載されるカメラは、カメラの構造が小型であるが故に、オートフォーカスは光学レンズ群全体をイメージセンサに対して前後に動かす構造になっている。この光学レンズ群110に手指等が触れないよう、光学レンズ群(内部構造)110の外界側にカバーガラス105を設けている。すなわち、このカバーガラス105を無くすことは不可能である。
【0012】
このゴーストを無くすためには、撮像面125の反射率を低くすることや、カバーガラス105の反射率を低くすること等が考えられる。しかし、それぞれの可視光領域における反射率が1%以下であっても、強い輝度を持つ点光源の被写体では、ゴーストが発生してしまう。またそれぞれの反射率を低くするには、反射防止のための誘電体多層膜等の構造が複雑になり、実用上作成が困難になる。
【0013】
そこで発明者は、ゴーストについて、撮像面で焦点が合っていることに着目して、ゴーストを無くすのではなく、その焦点が合わない状態にすれば、目障りにならない程度にゴーストの輝度を低減できると考えた。そしてカバーガラスを曲面にすればゴーストの焦点が撮像面からはずれることで画像が向上するという本願発明の構成に至った。
【0014】
(1)本発明は、撮像装置の内部構造を外界から保護するカバーガラスであって、前記カバーガラスの前記内部構造側表面である第一カバーガラス面が凸面又は凹面である特徴を持つカバーガラスを提供する。
【0015】
上記(1)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面である第一カバーガラス面が凸面又は凹面であるため、カバーガラスの内部構造側表面が撮像素子の撮像面からの反射光線をさらに反射した場合にも、撮像素子の撮像面で焦点を結ばなくなる。したがってゴーストがぼやけてゴーストが目立ち難くなり、撮像される画像の画質が向上するという優れた効果を奏する。
【0016】
(2)本発明は、前記第一カバーガラス面の曲率半径が5000mm以下であることを特徴とする上記(1)に記載のカバーガラスを提供する。
【0017】
上記(2)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面が撮像素子の撮像面からの反射光線をさらに反射した場合にも、撮像面で焦点を結ばなくなる。したがってゴーストがぼやけてゴーストが目立ち難くなり、撮像される画像の画質が向上するという優れた効果を奏する。
【0018】
(3)本発明は、前記第一カバーガラス面は、前記内部構造側が凹面であることを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載のカバーガラスを提供する。
【0019】
上記(3)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面が撮像素子の撮像面からの反射光線をさらに反射した場合にも、撮像面より光学レンズ群側で焦点を結ぶため、撮像面で焦点を結ばなくなる。したがってゴーストがぼやけてゴーストが目立ち難くなり、撮像される画像の画質が向上するという優れた効果を奏する。
【0020】
(4)本発明は、前記カバーガラスの前記外界側表面である第二カバーガラス面は、凸面であることを特徴とする上記(1)乃至上記(3)のうちのいずれかに記載のカバーガラスを提供する。
【0021】
上記(4)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面である第一カバーガラス面と空気の間の屈折効果と、カバーガラスの外界側表面である第二カバーガラス面と空気の間の屈折効果が打ち消し合い得るので、カバーガラスによるレンズ効果が低減されて、画像の歪みを生じ難くするという優れた効果を奏する。
【0022】
(5)本発明は、前記第二カバーガラス面の曲率半径が、前記第一カバーガラス面の曲率半径と略等しいことを特徴とする上記(4)に記載のカバーガラスを提供する。
【0023】
上記(5)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面である第一カバーガラス面と空気の間の屈折効果と、カバーガラスの外界側表面である第二カバーガラス面と空気の間の屈折効果が打ち消し合うため、カバーガラスによるレンズ効果が低減されて、画像の歪みを生じ難くするという優れた効果を奏する。
【0024】
(6)本発明は、上記(1)乃至上記(5)のうちのいずれかに記載の前記カバーガラスを備える前記撮像装置であって、筐体と、前記筐体に内蔵される光学レンズ群と、前記カバーガラス及び前記光学レンズ群を介して入射した光を受光する撮像素子とを更に備えることを特徴とする撮像装置を提供する。
【0025】
上記(6)に記載する発明によれば、カバーガラスの内部構造側表面が撮像素子の撮像面からの反射光線をさらに反射して生じるゴーストがぼやけるので、ゴーストが目立ち難くい撮像装置を実現できるという優れた効果を奏する。
【0026】
(7)本発明は、前記カバーガラスが前記筐体に固定されていることを特徴とする上記(6)に記載の撮像装置を提供する。
【0027】
上記(7)に記載する発明によれば、携帯用電子機器等が搭載する、オートフォーカス機構などを有するレンズ群を含む撮像装置の内部構造を保護するために必要なカバーガラスについて、ゴーストを生じ難くさせるという優れた効果を奏する。
【0028】
(8)本発明は、上記(7)に記載の前記撮像装置を備える携帯用電子機器を提供する。
【0029】
上記(8)に記載する発明によれば、ゴーストが生じにくい撮像装置を搭載する携帯用電子機器が実現され得るという優れた効果を奏する。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1〜8記載のカバーガラス、撮像装置、及び、携帯用電子機器によれば、ゴーストが低減される優れた画質の画像を取得できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】撮像装置の構成図であり、ゴースト現象の原因についての説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る撮像装置の構成を説明する説明図である。
【
図3】(A)通常のカバーガラスを用いた場合における、撮像素子近傍における入射光線、反射光線の光路についての説明図である。(B)本発明の実施形態に係るカバーガラスを用いた場合における、撮像素子近傍における入射光線、反射光線の光路についての説明図である。
【
図4】カバーガラスが有する曲率の効果についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図5】(A)カバーガラスが画像に与える影響を実験するための実験セットアップの構成図である。(B)通常の平板カバーガラスを用いた場合の実験結果である。(C)曲率半径 R=213mmのカバーガラスを用いた場合の実験結果である。
【
図6】(A)携帯用電子機器に付属する、通常の平板カバーガラスを用いた撮像装置によって撮影された、ゴースト現象を伴う夜間の街灯の画像である。(B)曲率半径 R=157mmのカバーガラスを用いた場合の夜間の街灯の画像である。
【
図7】(A)携帯用電子機器に付属する撮像装置の説明図である。(B)撮像装置の構成を説明する説明図である。
【
図8】携帯用電子機器に付属する撮像装置によって撮影された、ゴースト現象を伴う夜間の街灯の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図2〜
図6は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成は図に示す従来のものと同様である。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の構成を説明する説明図である。撮像装置1は、
図2上の左側が撮像装置1の外界であり、外界からカバーガラス5へ光がZ方向正の向きに入射して、最終的に撮像素子20に到達する。撮像装置1は、筐体7に固定されるカバーガラス5と、光学レンズ群(内部構造)10と、IRフィルタ15と、撮像素子20を備える。光学レンズ群(内部構造)10はレンズフォルダ(図示省略)によって互いに位置関係を固定され、光学レンズ群(内部構造)10は、ピント合わせのためアクチュエータ(図示省略)等でZ方向に移動され得る。IRフィルタ15は、具体的には赤外領域の光を吸収及び反射する機能を有することで、撮像素子20に入射する光を可視光領域に限定し、赤外領域に検出感度を持つ撮像素子20により取得される画像が自然な色合いになるように補正する。
【0035】
IRフィルタ15には、具体的にはブルーガラスと呼ばれる近赤外領域の光を吸収するリン酸塩あるいは弗リン酸塩を含むガラスを用いてよい。また赤外領域の光を反射するための誘電体多層膜構造を有してよい。
【0036】
撮像素子20は、具体的には例えばCMOSイメージセンサ、又は、CCDイメージセンサ等の固体撮像素子である。IRフィルタ、CMOSイメージセンサ、及び、CCDイメージセンサは、周知技術なので詳細については記載を省略する。
【0037】
カバーガラス5において、内部構造側表面である第一カバーガラス面30は、内部構造側に向かって凹面であり、その曲率半径Rは、5000mm以下である。またカバーガラス5において外界側表面である第二カバーガラス面35は、外界側に向かって凸面であり、その曲率半径は第一カバーガラス面30と略等しい。カバーガラス5は、外界側に防汚コーティングがなされ、第一カバーガラス面30側には誘電体多層膜による反射防止膜が形成されているが、周知技術なので詳細な記載は省略する。なおカバーガラス5の材料としては、例えば強化ガラスや、サファイアガラス、結晶化ガラスなどが考えられる。
【0038】
なおカバーガラス5の曲率半径Rは25mm以上がデザイン上、望ましい。Rが小さいと外界側へのカバーガラス5の出っ張りが例えば0.5mmとなってしまうからである。
【0039】
光学レンズ群(内部構造)10については、例えば4枚〜5枚の合成樹脂製レンズの組み合わせである。レンズの組み合わせ、個々のレンズの形状等については周知技術なので記載を省略する。
【0040】
カバーガラス5と光学レンズ群は別体であり、カバーガラス5と光学レンズ群の間の距離は0.3mm以上、望ましくは0.5mmである。
【0041】
なおカバーガラス5と筐体7については、一体の構造であってもよい。
【0042】
図3(A)は、通常のカバーガラスを用いた場合における、撮像素子近傍における入射光線、反射光線の光路についてのシミュレーション結果である。入射光は、撮像素子面25の法線N(
図1参照)に対してθ=3°の入射角度を有する。この場合、入射光は、撮像面25上に実像Reのように焦点を結び、撮像面25からの第一反射光R1は、カバーガラス5(
図1参照)向きの光路となる。そして、第一反射光線R1は、第一カバーガラス面30(
図1参照)で再び反射されて、第二反射光線R2となって撮像面25上に焦点を結びゴーストGを生成する。
【0043】
図3(B)には、本発明の実施形態に係るカバーガラス5を用いた場合における、撮像素子20近傍における入射光線I、第一反射光線R1、及び、第二反射光線R2の光路についてのシミュレーション結果を示す。本実験に用いたカバーガラス5において、第一カバーガラス面30の曲率半径は、R=210mmである。入射光は、
図3(A)と同様に、撮像素子面25の法線Nに対してθ=3°の入射角度を有する。この場合、入射光は、撮像面25上に実像Reのように焦点を結ぶ。このとき実像のスポットサイズをRSとする。さて撮像面25からの第一反射光R1は、カバーガラス5(
図1(B)参照)向きの光路となる。そして、第一反射光線R1は、第一カバーガラス面30で再び反射されて、第二反射光線R2となって撮像面25向きに向かうが、第一カバーガラス面30が内部構造側に凹面の曲率を持つために、焦点Fが撮像面25よりも光学レンズ群(内部構造)10側に結ばれ、撮像面25上では、ある程度広がったゴーストGが形成されることになる。このときゴーストのスポットサイズをGSとする。
【0044】
図4は、カバーガラス5の第一カバーガラス面30が曲率を有する場合の、ゴーストGに対する曲率の効果についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
図4のシミュレーションについては、入射光として、撮像素子面25の法線Nに対してθ=2°の入射角度を有する場合で計算した。光学レンズ群(内部構造)10としては、4つの場合、具体的には5Pレンズ、すなわち5枚のレンズで構成される光学レンズ群10のセットの場合と、4Pレンズすなわち4枚のレンズで構成される光学レンズ群10のセットの場合と、焦点距離8mmの単焦点レンズの場合と、焦点距離12mmの単焦点レンズの場合で比較した。
【0045】
縦軸をゴーストのスポットサイズGSと実像のスポットサイズRSの比(GS/RS))とし(
図3(B)参照)、横軸をカバーガラス5における第一カバーガラス面30(
図2参照)の曲率半径R(単位はmm)とする。いずれのレンズ群についても、ゴーストの面積が、実像の面積の2倍以上となり、ゴーストにおける単位面積あたりの光量が、実像の半分以下になるのは、GS/RSが1.5以上になる場合であり、具体的には、第一カバーガラス面30の曲率半径Rが5000mm以下の場合であることがわかる。
【0046】
図5(A)には、カバーガラス5が画像に与える影響を実験するための実験セットアップの構成図を示す。撮像装置1が備えるカバーガラス5の前で中心軸Cからずらした場所に、光源40としてLEDを5つ配置した。
【0047】
図5(B)は、カバーガラス5として通常の平板ガラスを用いている場合の実験結果である。画像中心に対して実像Reと点対称の位置にゴーストGが現れている。ゴーストGとして、光源である5つのLEDをそのまま反映した5つの虚像が形成されている。
【0048】
これに対して
図5(C)は、曲率半径 R=213mmのガラスをカバーガラスとして用いた場合の実験結果である。画像中心に対して実像Reと点対称の位置にゴーストGが生じてはいるが、その像は薄く目立たなくなっており焦点が撮像面25からはずれている効果が現れている(
図3(B)参照)。
【0049】
図6(A)は、携帯用電子機器に付属する、カバーガラス5として通常の平板カバーガラスを用いた撮像装置1によって撮影された、ゴースト現象を伴う夜間の街灯の画像である。画像中心に対して、街灯の実像Reと点対称の位置にゴーストGが現れている。
【0050】
これに対して
図6(B)は、曲率半径 R=157mmのガラスをカバーガラス5として用いた場合の実験結果である。画像中心に対して実像Reと点対称の位置にゴーストGが生じてはいるが、その像は薄く目立たなくなっており焦点が撮像面25からはずれている効果が現れている(
図3(B)参照)。
【0051】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、カバーガラス5の内部構造側表面である第一カバーガラス面30が凸面又は凹面であるため、カバーガラス5の内部構造側表面が撮像素子20の撮像面25からの反射光線R1をさらに反射した場合にも、撮像面25で焦点を結ばなくなる。したがってゴーストGがぼやけてゴーストが目立ち難くなり、撮像される画像の画質が向上するという優れた効果を奏する。
【0052】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、カバーガラス5の内部構造側表面が撮像素子20の撮像面25からの反射光線R1をさらに反射した場合にも、撮像面25より光学レンズ群10側で焦点Fを結ぶため、撮像素子20の撮像面25で焦点を結ばなくなる。したがってゴーストGがぼやけてゴーストが目立ち難くなり、撮像される画像の画質が向上するという優れた効果を奏する。
【0053】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、カバーガラス5の内部構造側表面である第一カバーガラス面30と空気の間の屈折効果と、カバーガラスの外界側表面である第二カバーガラス面35と空気の間の屈折効果が、打ち消し合い得るので、カバーガラス5によるレンズ効果が低減されて画像の歪みを生じ難くするという優れた効果を奏する。
【0054】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、カバーガラス5の内部構造側表面である第一カバーガラス面30と空気の間の屈折効果と、カバーガラスの外界側表面である第二カバーガラス面35と空気の間の屈折効果が打ち消し合うため、カバーガラス5によるレンズ効果が低減されて、画像の歪みを生じ難くするという優れた効果を奏する。
【0055】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、携帯用電子機器等が搭載する、オートフォーカス機構などを有する光学レンズ群10を含む撮像装置1の内部構造を保護するために必要なカバーガラス5について、ゴーストGを生じ難くさせるという優れた効果を奏する。
【0056】
本発明の実施形態にかかる撮像装置1によれば、ゴーストGが生じにくい撮像装置1を搭載する携帯用電子機器が実現され得るという優れた効果を奏する。
【0057】
尚、本発明のカバーガラス、撮像装置、及び、携帯用電子機器は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0058】
たとえば変形実施例として、カバーガラス5の第一カバーガラス面30が内部構造側に対して凸面になっている場合も考えられる。このとき第二カバーガラス面35が外界に対して凹面であり、第一カバーガラス面30と第二カバーガラス面35の曲率が略等しければ、レンズ効果が生じず、画像の歪みも生じ難い。
【0059】
他の変形実施例としては、カバーガラス5の第一カバーガラス面30が内部構造側に対して凹面で、第二カバーガラス面35が平面である場合も考えられる。第一カバーガラス面30の曲率が小さければ、レンズ効果も小さくなり画像の歪みも少なく、生産が容易であり、また筐体7の表面とカバーガラス5の表面が平坦に形成され得るので、デザイン的にも優れている。なお同様にカバーガラス5の第一カバーガラス面30が内部構造側に対して凸面で、第二カバーガラス面35が平面である場合も考えられる。
【0060】
もちろんカバーガラス5の第一カバーガラス面30が内部構造側に対して凹面で、且つ、第二カバーガラス面35が外界に対して凹面の場合や、逆に第一カバーガラス面30が内部構造側に対して凸面で、且つ、第二カバーガラス面35が外界に対して凸面の場合も考えられる。この変形実施例の場合は、それぞれの曲率半径が大きければレンズ効果が小さいので画像の歪みも少なくなる。
【符号の説明】
【0061】
1 撮像装置
5 カバーガラス
7 筐体
10 光学レンズ群(内部構造)
15 IRフィルタ
20 撮像素子
25 撮像面
30 第一カバーガラス面
35 第二カバーガラス面
40 光源
50 高反射材
55 低反射材
101 撮像装置
105 カバーガラス
107 携帯用電子機器の筐体
110 光学レンズ群(内部構造)
115 IRフィルタ
120 撮像素子
125 撮像面
130 第一カバーガラス面
C 画像中心軸C
F ゴーストを形成する光線の焦点F
G ゴーストG
I 入射光線I
R 実像Re
GS ゴーストのスポットサイズGS
RS 実像のスポットサイズRS
R1 第一反射光線R
R2 第二反射光線R