【解決手段】回転子積層鉄心1は、複数の打抜部材Wが積層された積層体10を備える。複数の打抜部材Wは、積層体10の積層方向において最外層をなす打抜部材W2と、打抜部材W2と隣接する打抜部材W1とを含む。打抜部材W2には、長孔状を呈する貫通孔22が設けられている。打抜部材W1には、貫通孔22に嵌合するように構成され且つ貫通孔22に向けて突出する山型状を呈するカシメ20が設けられている。貫通孔22の一対の長辺の中央部にはそれぞれ、一対の長辺の対向方向において外方に突出する切欠部28が設けられている。
前記対向方向における前記切欠部の高さは、前記第2のダイ孔と前記第2のパンチとの間のクリアランスの大きさに5μmを加算した大きさ以上である、請求項5又は6に記載の装置。
前記対向方向における前記切欠部の高さは、前記第2のダイ孔と前記第2のパンチとの間のクリアランスの大きさに5μmを加算した大きさ以上である、請求項9又は10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
[回転子積層鉄心]
まず、
図1〜
図3を参照して、回転子積層鉄心1(積層鉄心)の構成について説明する。回転子積層鉄心1は、回転子(ロータ)の一部である。回転子は、回転子積層鉄心1に端面板及びシャフト(共に図示せず)が取り付けられてなる。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0014】
回転子積層鉄心1は、
図1に示されるように、積層体10と、複数の永久磁石12と、複数の固化樹脂14とを備える。
【0015】
積層体10は、
図1に示されるように、円筒状を呈している。積層体10の中央部には、積層体10の積層方向(以下、単に「積層方向」ともいう。)において積層体10を貫通する軸孔10aが設けられている。すなわち、軸孔10aは、積層体10の中心軸Axに沿って延びている。本実施形態において、積層体10は中心軸Ax周りに回転するので、中心軸Axは回転軸でもある。軸孔10a内には、シャフトが挿通可能である。
【0016】
積層体10には、複数の磁石挿入孔16が形成されている。磁石挿入孔16は、
図1に示されるように、積層体10の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔16は、
図2に示されるように、中心軸Axに沿って延びるように積層体10を貫通している。すなわち、磁石挿入孔16は積層方向に延びている。
【0017】
磁石挿入孔16の形状は、本実施形態では、積層体10の外周縁に沿って延びる長孔である。磁石挿入孔16の数は、本実施形態では6個である。磁石挿入孔16の位置、形状及び数は、モータの用途、要求される性能などに応じて変更してもよい。
【0018】
積層体10は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ESが所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体10に対応する形状を呈している。本明細書において、積層体10を構成する複数の打抜部材Wのうち最下層以外をなすものを「打抜部材W1」(第2の打抜部材)と称し、積層体10を構成する複数の打抜部材Wのうち最下層をなすものを「打抜部材W2」(第1の打抜部材)と称することがある。
【0019】
積層体10は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体10の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0020】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、
図1〜
図3に示されるように、カシメ部18によって締結されている。具体的には、カシメ部18は、
図2及び
図3に示されるように、打抜部材W1に形成されたカシメ20と、打抜部材W2に形成された貫通孔22とを含む。
【0021】
カシメ20は、打抜部材W1の表面側に形成された凹部20aと、打抜部材W1の裏面側に形成された凸部20bとで構成されている。
図3のX軸方向から見て、カシメ20は、全体として山型状を呈している。より詳しくは、カシメ20は、凸部20bの突出量が最も大きい頂部24と、
図3のY軸方向において頂部24の両側に位置する裾野部26とを含む。頂部24は、本実施形態において平坦状を呈している。裾野部26の突出量は、頂部24から
図3のY軸方向外側に向かうにつれて、徐々に小さくなっている。このような形状のカシメ20は、「Vカシメ」とも言われる。
【0022】
一の打抜部材W1の凹部20aは、当該一の打抜部材W1の表面側に隣り合う他の打抜部材W1の凸部20bと接合される。一の打抜部材W1の凸部20bは、当該一の打抜部材W1の裏面側において隣り合う更に他の打抜部材W1の凹部20aと接合される。
【0023】
貫通孔22は、
図3に示されるように、矩形状を呈している。より詳しくは、貫通孔22は、
図3のY軸方向に延びる長孔である。貫通孔22の長辺の長さA1は、例えば、3mm〜5mm程度であってもよい。貫通孔22の短辺の長さB1は、例えば、0.5mm〜2mm程度であってもよい。
【0024】
貫通孔22の一対の長辺の中央部にはそれぞれ、切欠部28が設けられている。切欠部28は、貫通孔22の当該中央部から
図3のX方向外側に向けて突出している。切欠部28は、本実施形態において、矩形状を呈している。貫通孔22の長手方向(
図3のY軸方向)における切欠部28の長さA2は、長さA1よりも小さくなるように設定されている。長さA2は、カシメ20の頂部24の長さA3と同程度以上であってもよいし、長さA1の1/3程度に設定されていてもよい。貫通孔22の短手方向(
図3のX軸方向)における切欠部28の長さB2は、ダイ孔D2aとパンチP2との間のクリアランスCL(詳しくは後述する)の大きさに5μmを加算した大きさ以上に設定されていてもよい。長さB2は、例えば、15μm以上であってもよいし、15μm〜20μm程度であってもよい。
【0025】
貫通孔22には、打抜部材W2に隣接する打抜部材W1の凸部20bが嵌合される。貫通孔22は、積層体10を連続して製造する際、既に製造された積層体10に対し、続いて形成された打抜部材Wがカシメ20(凸部20b)によって締結されるのを防ぐ機能を有する。
【0026】
図3に示されるように、貫通孔22の内壁面のうちの一部の領域R(
図3において斜線で示されている領域)に、カシメ20の裾野部26の外表面が当接することで、カシメ20が貫通孔22に嵌合する。一方、カシメ20が貫通孔22内に嵌合される際、カシメ20の頂部24は切欠部28の側方を通過する。そのため、頂部24の外表面は、貫通孔22と当接していない。
【0027】
永久磁石12は、
図1及び
図2に示されるように、各磁石挿入孔16内に一つずつ挿入されている。永久磁石12の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石12の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0028】
固化樹脂14は、永久磁石12が挿入された後の磁石挿入孔16内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂14は、永久磁石12を磁石挿入孔16内に固定する機能と、積層方向で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂14を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0029】
[回転子積層鉄心の製造装置]
続いて、
図4〜
図10を参照して、回転子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
【0030】
製造装置100は、
図4に示されるように、帯状の金属板である電磁鋼板ES(被加工板)から回転子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、磁石取付装置(図示せず)と、コントローラ140(制御部)とを備える。
【0031】
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ140からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて間欠的に順次送り出す。
【0032】
打抜装置130は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを複数のパンチ部により順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体10を製造する機能とを有する。
【0033】
打抜装置130は、ベース131と、下型132と、ダイプレート133と、ストリッパ134と、上型135と、天板136と、プレス機137(駆動部)と、複数のパンチとを含む。
【0034】
ベース131は、床面上に設置されており、ベース131に載置された下型132を支持する。下型132は、下型132に載置されたダイプレート133を保持する。下型132には、電磁鋼板ESから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される排出孔が所定の位置に設けられている。
【0035】
ダイプレート133は、複数のパンチと共に、打抜部材Wを成形する機能を有する。ダイプレート133には、各パンチに対応する位置にダイがそれぞれ設けられている。各ダイには、対応するパンチが挿通可能に構成されたダイ孔が設けられている。
【0036】
ストリッパ134は、各パンチで電磁鋼板ESを打ち抜く際に、電磁鋼板ESをダイプレート133との間で挟持する機能と、各パンチに食いついた電磁鋼板ESを各パンチから取り除く機能とを有する。上型135は、ストリッパ134の上方に位置している。上型135には、各パンチの基端部が固定されている。そのため、上型135は、各パンチを保持している。
【0037】
天板136は、上型135の上方に位置している。天板136は、上型135を保持している。プレス機137は、天板136の上方に位置している。プレス機137のピストンは、天板136に接続されており、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。プレス機137が動作すると、ピストンが伸縮して、ストリッパ134、上型135、天板136、各パンチが全体的に上下動する。
【0038】
磁石取付装置は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。磁石取付装置は、打抜装置130によって得られた積層体10の各磁石挿入孔16に永久磁石12を挿通する機能と、永久磁石12が挿通された磁石挿入孔16内に溶融樹脂を充填する機能とを有する。
【0039】
コントローラ140は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120、打抜装置130及び磁石取付装置をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120、打抜装置130及び磁石取付装置に当該指示信号をそれぞれ送信する。
【0040】
ここで、打抜装置130が含む複数のパンチ及び複数のダイについて、より詳しく説明する。打抜装置130は、例えば、
図5〜
図9に示されるように、パンチ部P10,P20,P30を含む。
【0041】
パンチ部P10(第1のパンチ部)は、打抜部材W2に貫通孔22を形成する機能を有する。パンチ部P10は、
図5及び
図7(a)に示されるように、パンチP1(第1のパンチ)及びダイD1(第1のダイ)の組み合わせにより構成されている。
【0042】
ダイD1には、
図5(b)に示されるように、ダイ孔D1a(第1のダイ孔)が形成されている。ダイ孔D1aは、矩形状を呈している。より詳しくは、ダイ孔D1aは、
図5(b)のY軸方向に延びる長孔である。ダイ孔D1aの長辺の長さA11は、貫通孔22の長辺の長さA1と同程度であり、例えば、3mm〜5mm程度であってもよい。ダイ孔D1aの短辺の長さB11は、貫通孔22の短辺の長さB1と同程度であり、例えば、0.5mm〜2mm程度であってもよい。
【0043】
ダイ孔D1aの一対の長辺の中央部にはそれぞれ、切欠部D1bが設けられている。切欠部D1bは、ダイ孔D1aの当該中央部から
図5(b)のX方向外側に向けて突出している。切欠部D1bは、本実施形態において、矩形状を呈している。ダイ孔D1aの長手方向(
図5(b)のY軸方向)における切欠部D1bの長さA12は、長さA1と同程度であり、長さA11よりも小さくなるように設定されている。長さA12は、長さA11の1/3程度に設定されていてもよい。ダイ孔D1aの短手方向(
図5(b)のX軸方向)における切欠部D1bの長さB12は、ダイ孔D2aとパンチP2との間のクリアランスCL(詳しくは後述する)の大きさに5μmを加算した大きさ以上に設定されていてもよい。長さB12は、長さB2と同程度であり、例えば、15μm以上であってもよいし、15μm〜20μm程度であってもよい。
【0044】
パンチP1は、
図5(a)に示されるように、直方体形状を呈しており、ダイ孔D1aに対応する形状を有する。パンチP1は、一対の突条P1aを含む。一対の突条P1aはそれぞれ、パンチP1の短手方向において対向する一対の側面の中央部に位置している。突条P1aは、直方体形状を呈しており、切欠部D1bに対応する形状を有する。パンチP1は、
図7(a)に示されるように、ストリッパ134の貫通孔134aを通じてダイ孔D1a内に対して挿抜可能に構成されている。
【0045】
パンチ部P20(第2のパンチ部)は、打抜部材W1にカシメ20を形成する機能を有する。パンチ部P20は、
図6及び
図7(b)に示されるように、パンチP2(第2のパンチ)及びダイD2(第2のダイ)の組み合わせにより構成されている。
【0046】
ダイD2には、
図6(b)に示されるように、ダイ孔D2a(第2のダイ孔)が形成されている。ダイ孔D2aは、矩形状を呈している。ダイ孔D2aの大きさは、ダイ孔D1aの大きさと同程度であってもよい。
【0047】
パンチP2は、
図6(a)に示されるように、直方体形状を呈しており、ダイ孔D2aに対応する形状を有する。パンチP2は、
図7(b)に示されるように、ストリッパ134の貫通孔134bを通じてダイ孔D2a内に対して挿抜可能に構成されている。
図7(b)に示されるように、パンチP2の外形は、ダイ孔D2aの外形よりも若干小さく設定されている。ダイ孔D2aとパンチP2との間のクリアランスCLは、カシメ20と貫通孔22との間で生じさせようとする嵌合力に応じて種々の大きさに設定しうるが、例えば10μm〜20μm程度であってもよいし、10μm〜15μm程度であってもよい。クリアランスCLが20μmを超えると、カシメ20の凸部20bが凹部20aに嵌入しがたくなる傾向にある。
【0048】
パンチP2の先端部P2aは、全体として山型状を呈している。より詳しくは、先端部P2aは、突出量が最も大きい頂部P2bと、
図5(a)のY軸方向において頂部P2bの両側に位置する裾野部P2cとを含む。頂部P2bは、本実施形態において平坦状を呈している。ここで、切欠部D1bの長さA12は、
図5(a)のY軸方向における頂部P2bの幅A13と同程度以上であってもよい。裾野部P2cの突出量は、頂部P2bから
図5(a)のY軸方向外側に向かうにつれて、徐々に小さくなっている。
【0049】
パンチ部P30(第3のパンチ部)は、電磁鋼板ESを打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能を有する。パンチ部P30は、
図8に示されるように、パンチP3(第3のパンチ)及びダイD3(第3のダイ)の組み合わせにより構成されている。
【0050】
ダイD3には、ダイ孔D3a(第3のダイ孔)が形成されている。ダイ孔D3aは、打抜部材Wの外形形状に対応する形状を呈している。
【0051】
パンチP3は、ダイ孔D3aに対応する形状を有する。パンチP3は、ストリッパ134の貫通孔134cを通じてダイ孔D3a内に対して挿抜可能に構成されている。パンチP3の先端面には、
図9に示されるように、複数の押圧突起P3aが設けられている。押圧突起P3aは、当該先端面から当該先端面に対して交差する方向に突出している。複数の押圧突起P3aは、電磁鋼板ESに設けられているカシメ20に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0052】
ダイD3の下方の空間132a内には、シリンダ132bと、ステージ132cと、プッシャ132dとが配置されている。シリンダ132bは、コントローラ140からの指示信号に基づいて上下方向に移動可能に構成されている。具体的には、シリンダ132bは、シリンダ132b上に打抜部材Wが積み重ねられるごとに間欠的に下方に移動する。シリンダ132b上において打抜部材Wが所定枚数まで積層され、積層体10が形成されると、
図10に示されるように、シリンダ132bの表面がステージ132cの表面と同一高さとなる位置へとシリンダ132bが移動する。
【0053】
ステージ132cには、シリンダ132bが通過可能な孔132eが設けられている。プッシャ132dは、コントローラ140からの指示信号に基づいて、ステージ132cの表面上において水平方向に移動可能に構成されている。シリンダ132bの表面がステージ132cの表面と同一高さとなる位置にシリンダ132bが移動した状態で、プッシャ132dは、積層体10をシリンダ132bからステージ132cに払い出す。ステージ132cに払い出された積層体10は、図示しないコンベア等により後続の工程に搬送される。
【0054】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、回転子積層鉄心1の製造方法について、
図4、
図7〜
図10を参照して説明する。
【0055】
図4に示されるように、電磁鋼板ESが送出装置120によって打抜装置130に送り出され、電磁鋼板ESの加工対象部位が所定のパンチに到達すると、軸孔10aに対応する貫通孔の形成(いわゆる内径抜き)、各磁石挿入孔16に対応する貫通孔の形成、カシメ20又は貫通孔22の形成、電磁鋼板ESからの打抜部材Wの打ち抜き(いわゆる外径抜き)がそれぞれ行われる。
【0056】
カシメ20及び貫通孔22は、選択的に形成される。すなわち、電磁鋼板ESのうち打抜部材W1が形成される予定の領域にカシメ20が形成され、電磁鋼板ESのうち打抜部材W2が形成される予定の領域に貫通孔22が形成される。
【0057】
貫通孔22は、次のように形成される。すなわち、
図7(a)に示されるように、コントローラ140からの指示信号に基づいて打抜装置130が動作すると、ストリッパ134がダイプレート133に向けて降下して、電磁鋼板ESがダイプレート133及びストリッパ134によって挟持される。この状態でさらに打抜装置130が動作すると、ストリッパ134の貫通孔134aを通じてパンチP1が降下して、ダイプレート133に保持されたダイD1のダイ孔D1a内へと電磁鋼板ESをパンチP1の先端部が押し出す。これにより、パンチP1によって電磁鋼板ESに貫通孔22が形成される。
【0058】
カシメ20は次のように形成される。すなわち、
図7(b)に示されるように、コントローラ140からの指示信号に基づいて打抜装置130が動作すると、ストリッパ134がダイプレート133に向けて降下して、電磁鋼板ESがダイプレート133及びストリッパ134によって挟持される。この状態でさらに打抜装置130が動作すると、ストリッパ134の貫通孔134bを通じてパンチP2が降下して、ダイプレート133に保持されたダイD2のダイ孔D2a内へと電磁鋼板ESをパンチP2の先端部が押し出す。これにより、パンチP2によって電磁鋼板ESにカシメ20が形成される。
【0059】
電磁鋼板ESからの打抜部材Wの打ち抜きは次のように行われる。すなわち、
図8に示されるように、コントローラ140からの指示信号に基づいて打抜装置130が動作すると、ストリッパ134がダイプレート133に向けて降下して、電磁鋼板ESがダイプレート133及びストリッパ134によって挟持される。この状態でさらに打抜装置130が動作すると、ストリッパ134の貫通孔134cを通じてパンチP3が降下して、ダイプレート133に保持されたダイD3のダイ孔D3a内へとパンチP3の先端部が挿入される。これにより、パンチP3によって電磁鋼板ESから打抜部材Wが打ち抜かれる。
【0060】
パンチP3によって電磁鋼板ESから打抜部材W2が打ち抜かれる際には、押圧突起P3aは、貫通孔22内に挿入され、電磁鋼板ESを加工しない。一方、パンチP3によって電磁鋼板ESから打抜部材W1が打ち抜かれる際には、押圧突起P3aが、対応するカシメ20の凹部20aを押圧する(
図9参照)。これにより、カシメ20の凸部20bは、カシメ20の凹部20a内又は貫通孔22内に圧入され、両者が嵌合する。
【0061】
パンチP3によって電磁鋼板ESから打ち抜かれた打抜部材Wは、
図8に示されるように、シリンダ132b上において積層され、積層体10が構成される。積層体10は、
図10に示されるように、プッシャ132dによってシリンダ131bからステージ132cに払い出される。その後、磁石取付装置において、積層体10の磁石挿入孔16内に永久磁石12及び溶融樹脂が充填され、固化樹脂14によって永久磁石12が磁石挿入孔16内に固定される。これにより、回転子積層鉄心1が完成する。
【0062】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0063】
例えば、ダイ孔D1aに設けられている切欠部D1bは、矩形状以外の形状(例えば、三角形状、台形状、半円形状、弓形状など)を呈していてもよい。
【0064】
2つ以上の永久磁石12が組み合わされた一組の磁石組が、一つの磁石挿入孔16内にそれぞれ挿入されていてもよい。この場合、一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の長手方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が磁石挿入孔16の延在方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔16内において、複数の永久磁石12が当該長手方向に並ぶと共に複数の永久磁石12が当該延在方向において並んでいてもよい。
【0065】
上記の実施形態では、回転子積層鉄心1について説明したが、固定子積層鉄心に本発明を適用してもよい。この場合、複数の鉄心片が組み合わされてなる分割型の固定子積層鉄心であってもよいし、非分割型の固定子積層鉄心であってもよい。
【0066】
[本開示の概要]
ところで、貫通孔22に切欠部28が設けられていない場合、
図11に示されるように、カシメ20の凸部20bが貫通孔22に圧入された際に、凸部20bが貫通孔22の内壁面を擦って、貫通孔22内にバリWaが生ずることがある(
図11参照)。このようなバリWaを有する打抜部材Wを含む回転子積層鉄心1を用いてモータを構成すると、モータの動作に伴いバリWaに振動、遠心力等が作用して、バリWaが脱落しうる。そのため、バリWaがモータの構成部品と衝突して、モータから異音が生じたり、モータの特性に影響を与えたりする虞がある。特に近年、ハイブリッド自動車、電気自動車などの開発が進められており、モータを動力源として搭載した自動車が急増している。そのため、よりいっそう安全性が高められた車載モータの需要が高まっている。
【0067】
以下の例示的な形態は、本発明を説明するための一例として提示されるものである。
【0068】
例1.例1に係る積層鉄心(1)は、複数の打抜部材(W)が積層された積層体(10)を備える。複数の打抜部材(W)は、積層体(10)の積層方向において最外層をなす第1の打抜部材(W2)と、第1の打抜部材(W2)と隣接する第2の打抜部材(W1)とを含む。第1の打抜部材(W2)には、長孔状を呈する貫通孔(22)が設けられている。第2の打抜部材(W1)には、貫通孔(22)に嵌合するように構成され且つ貫通孔(22)に向けて突出する山型状を呈するカシメ(20)が設けられている。貫通孔(22)の一対の長辺の中央部にはそれぞれ、一対の長辺の対向方向において外方に突出する切欠部(28)が設けられている。この場合、V字形状のカシメ(20)が貫通孔(22)に圧入される際に、カシメ(20)の頂部(24)近傍は、切欠部(28)の側方を通過し、貫通孔(22)と接触し難い。そのため、カシメ(20)の突起によって貫通孔(22)の内壁面が強く擦られることが生じ難くなり、バリの発生が極めて抑制される。一方、V字形状のカシメ(20)が貫通孔(22)に圧入される際に、カシメ(20)の突起(20a)の裾野部(26)近傍は貫通孔(22)の内壁面と接触する。これにより、カシメ(20)と貫通孔(22)とが嵌合する。以上より、カシメ(20)と貫通孔(22)との嵌合を実現しつつ、切欠部(28)の存在によりバリの発生を極めて簡便に抑制することが可能となる。
【0069】
例2.上記例1の積層鉄心(1)において、カシメ(20)の頂部(24)は平坦状を呈しており、貫通孔(22)の長手方向における切欠部(28)の長さ(A2)は、当該長手方向に対応する方向におけるカシメ(20)の頂部(24)の幅(A3)以上であってもよい。この場合、カシメ(20)の頂部(24)近傍がいっそう貫通孔(22)と接触し難くなる。そのため、バリの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0070】
例3.上記例2又は例3の積層鉄心(1)において、対向方向における切欠部(28)の高さは15μm以上であってもよい。一般に、カシメ(20)を形成するために用いられるダイ孔(D2a)とパンチ(P2)との間のクリアランス(CL)は10μm以上に設定されることがある。すなわち、例3によれば、切欠部28の高さがクリアランス(CL)を超える大きさに設定されている。そのため、カシメ(20)が貫通孔(22)内に圧入されて、カシメ(20)の頂部(24)近傍が切欠部(28)内にまで迫り出しても切欠部(28)の内壁面と接触し難い。従って、バリの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0071】
例4.上記例1〜例3のいずれかの積層鉄心(1)において、積層方向から見て、切欠部(28)は矩形状を呈していてもよい。この場合、貫通孔(22)及び切欠部(28)の輪郭に対応する形状を有するパンチ(P1)を形成しやすくなる。
【0072】
例5.例5に係る積層鉄心の製造装置(100)は、帯状の金属板(ES)に貫通孔(22)を形成するように構成された第1のパンチ部(P10)と、金属板(ES)にカシメ(20)を形成するように構成された第2のパンチ部(P20)と、金属板(ES)を打ち抜き加工して打抜部材(W)を形成するように構成された第3のパンチ部(P30)と、第1〜第3のパンチ部(P10〜P30)を駆動させる駆動部(137)と、制御部(140)とを備える。第1のパンチ部(P10)は、長孔状を呈する第1のダイ孔(D1a)が設けられた第1のダイ(D1)と、第1のダイ孔(D1a)に対応する形状を呈し且つ第1のダイ孔(D1a)に対して挿抜可能に構成された第1のパンチ(P1)とを含む。第1のダイ孔(D1a)の一対の長辺の中央部にはそれぞれ、一対の長辺の対向方向において外方に突出する切欠部(D1b)が設けられている。第2のパンチ部(P20)は、長孔状を呈する第2のダイ孔(D2a)が設けられた第2のダイ(D2)と、第2のダイ孔(D2a)に対応する形状を呈し且つ第2のダイ孔(D2a)に対して挿抜可能に構成された第2のパンチ(P2)とを含む。第2のパンチ(P2)は、先端に向かうにつれて窄まる山型状を呈している。第3のパンチ部(P30)は、打抜部材(W)の外形に対応する形状を呈する第3のダイ孔(D3a)が設けられた第3のダイ(D3)と、第3のダイ孔(D3a)に対応する形状を呈し且つ第3のダイ孔(D3a)に対して挿抜可能に構成された第3のパンチ(P3)とを含む。制御部(140)は、第1のパンチ部(P10)を制御して、金属板(Es)に貫通孔(22)を形成することと、第3のパンチ部(P30)を制御して、貫通孔(22)を含む第1の打抜部材(W2)を金属板(ES)から打ち抜くことと、第2のパンチ部(P20)を制御して、金属板(ES)にカシメ(20)を形成することと、第3のパンチ部(P30)を制御して、カシメ(20)を含む第2の打抜部材(W1)を金属板(ES)から打ち抜きつつカシメ(20)を貫通孔(22)内に嵌合させることにより、第1及び第2の打抜部材(W2,W1)を積層することとを実行する。この場合、例1の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0073】
例6.上記例5の装置(100)において、第2のパンチ(P2)の頂部(P2b)は平坦状を呈しており、第1のダイ(D1)の長手方向における切欠部(D1b)の長さ(A12)は、当該長手方向に対応する方向における第2のパンチ(P2)の頂部(P2b)の幅(A13)以上であってもよい。この場合、例2の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0074】
例7.上記例5又は例6の装置(100)において、対向方向における切欠部(D1b)の高さは、第2のダイ孔(D2a)と第2のパンチ(P2)との間のクリアランス(CL)の大きさに5μmを加算した大きさ以上であってもよい。この場合、例3の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0075】
例8.上記例5〜例7のいずれかの装置(100)において、第1のダイ孔(D1a)への第1のパンチ(P1)の挿通方向から見て、切欠部(D1b)は矩形状を呈していてもよい。この場合、例4の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0076】
例9.例9に係る積層鉄心(1)の製造方法は、長孔状を呈する第1のダイ孔(D1a)に、第1のダイ孔(D1a)に対応する形状を呈する第1のパンチ(P1)を挿入させることで、帯状の金属板(ES)に貫通孔(22)を形成することと、長孔状を呈する第2のダイ孔(D2a)に、第2のダイ孔(D2a)に対応する形状を呈し且つ先端に向かうにつれて窄まる山型状を呈する第2のパンチ(P2)を挿入させることで、金属板(ES)にカシメ(20)を形成することと、所定形状を呈する第3のダイ孔(D3a)に、第3のダイ孔(D3a)に対応する形状を呈する第3のパンチ(P3)を挿入させることで、貫通孔(22)を含む第1の打抜部材(W2)を金属板(ES)から打ち抜くことと、第3のダイ孔(D3a)に第3のパンチ(P3)を挿入させることで、カシメ(20)を含む第2の打抜部材(W1)を金属板(ES)から打ち抜きつつカシメ(20)を貫通孔(22)内に嵌合させることにより、第1及び第2の打抜部材(W2,W1)を積層することとを含む。第1のダイ孔(D1a)の一対の長辺の中央部にはそれぞれ、一対の長辺の対向方向において外方に突出する切欠部(D1b)が設けられている。この場合、例1の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0077】
例10.上記例9の方法において、第2のパンチ(P2)の頂部(24)は平坦状を呈しており、第1のダイ(D1)の長手方向における切欠部(D1b)の長さ(A12)は、当該長手方向に対応する方向における第2のパンチ(P2)の頂部(P2b)の幅(A13)以上であってもよい。この場合、例2の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0078】
例11.上記例9又は例10の方法において、対向方向における切欠部(D1b)の高さは、第2のダイ孔(D2a)と第2のパンチ(P2)との間のクリアランス(CL)の大きさに5μmを加算した大きさ以上であってもよい。この場合、例3の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。
【0079】
例12.上記例9〜例11のいずれかの方法において、第1のダイ孔(D1a)への第1のパンチ(P1)の挿通方向から見て、切欠部(D1b)は矩形状を呈していてもよい。この場合、例4の積層鉄心(1)と同様の作用効果が得られる。