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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-111311(P2019-111311A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】バイポーラ電極プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20190621BHJP
【FI】
   A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-79159(P2018-79159)
(22)【出願日】2018年4月17日
(11)【特許番号】特許第6535121号(P6535121)
(45)【特許公報発行日】2019年6月26日
(31)【優先権主張番号】106145210
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】蔡 孟翰
(72)【発明者】
【氏名】呂 慧▲音▼
(72)【発明者】
【氏名】林 偉哲
(72)【発明者】
【氏名】林 銘麒
(72)【発明者】
【氏名】盧 紀瑩
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK23
4C160KK38
4C160MM32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電性ニードル、絶縁層、導電性スリーブ、及び絶縁スリーブを備えているバイポーラ電極プローブを提供する。
【解決手段】導電性ニードル110は、縦方向及びこの縦方向に直交する横方向を有する。絶縁層120は、導電性ニードルをカバーし、また第1開口を有する。導電性スリーブ130は、絶縁層をカバーし、また第2開口を有する。絶縁スリーブ140は導電性スリーブをカバーする。バイポーラ電極プローブを作動状態にするとき、縦方向に沿って導電性ニードルの前端部から導電性スリーブに至る縦方向電場が形成される。第1開口及び第2開口を経由して横方向に沿って導電性ニードルから導電性スリーブに至る横方向電場が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ電極プローブであって、
縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有する導電性ニードルと、
前記導電性ニードルをカバーし、少なくとも1個の第1開口を有する絶縁層と、
前記絶縁層をカバーし、少なくとも1個の第2開口を有する導電性スリーブと、
前記導電性スリーブをカバーする絶縁スリーブと
を備え、
前記バイポーラ電極プローブを作動状態にするとき、前記縦方向に沿って前記導電性ニードルの前端部から前記導電性スリーブに至る縦方向電場が形成され、
前記少なくとも1個の第1開口及び前記少なくとも1個の第2開口を経由して前記横方向に沿って前記導電性ニードルから前記導電性スリーブに至る横方向電場が形成される、バイポーラ電極プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記少なくとも1個の第1開口の面積は、前記少なくとも1個の第2開口の面積よりも小さい、バイポーラ電極プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域に、前記縦方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口の前端部と前記少なくとも1個の第1開口の前端部との間に縦方向絶縁距離が存在し、
前記横方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口における一方の端部と前記少なくとも1個の第1開口における同一側の端部との間に横方向絶縁距離が存在する、バイポーラ電極プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域における、前記少なくとも1個の第1開口によって露出する前記導電性ニードルの面積と前記少なくとも1個の第2開口の外側領域における前記導電性スリーブの面積との比が1:0.9〜1:1.1である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記縦方向電場が存在する導電領域の面積と前記横方向電場が存在する導電領域の面積との比が1:2.1〜1:2.6である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域に、前記縦方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口の前端部と前記少なくとも1個の第1開口の前端部との間に縦方向絶縁距離が存在し、
前記横方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口における一方の端部と前記少なくとも1個の第1開口における同一側の端部との間に横方向絶縁距離が存在し、
前記横方向電場の領域で、前記縦方向絶縁距離及び前記横方向絶縁距離が絶縁面積を画定し、前記少なくとも1個の第1開口によって露出する前記導電性ニードルの面積及び前記少なくとも1個の第2開口の外側における前記導電性スリーブの面積が導電面積を画定し、
前記絶縁面積と前記導電面積との比が1:8〜1:44である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記絶縁スリーブは、前記縦方向に沿って前後に移動可能である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記少なくとも1個の第1開口の数は、前記少なくとも1個の第2開口の数に等しい、バイポーラ電極プローブ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、さらに、
前記絶縁層及び前記導電性スリーブの後端部に配置された輸液部材を備え、
前記輸液部材は、液状物質が前記絶縁層と前記導電性スリーブとの間のギャップを通過して、前記少なくとも1個の第1開口と前記少なくとも1個の第2開口とから流出できるよう構成されている、バイポーラ電極プローブ。
【請求項10】
請求項9に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記輸液部材は、さらに、前記輸液部材と前記絶縁層との間の接合部、及び前記輸液部材と前記導電性スリーブとの間の接合部に配置された複数個のシール部材を有する、バイポーラ電極プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極プローブに関し、またより具体的にはバイポーラ電極プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床用途に使用されるRFA(高周波アブレーション:Radiofrequency Ablation)電極プローブに関して、現行のユニポーラ電極プローブは最も一般的に使用されているタイプである。しかし、このようなユニポーラ電極プローブはアブレーション範囲が大きく、またしたがって、皮膚下側の病変部を処置するのに使用するとき、正常な表層皮膚を容易に燃焼させるおそれがある。ユニポーラ電極プローブシステムは、心臓疾患がある又はペースメーカーを付けている患者、妊婦、胎児を危険に曝すおそれもある。
【0003】
ユニポーラ電極プローブの上述した問題を解決する試みとして、バイポーラ電極プローブが臨床用途向けに提案されている。しかし、既存のバイポーラ電極プローブは依然として以下の問題に直面している。第1に、バイポーラ電極プローブは、アクティブ電極、絶縁層、及びパッシブ電極を結合することによって形成するが、接合部において機械的強度が脆弱であり、またプローブは手術中に壊れ易い、又は内側の冷却水が接合部から漏洩するおそれがある。第2に、バイポーラ電極プローブに関して、アブレーション領域の長さを調整することができない。概して、バイポーラ電極プローブの導電領域の長さは約0.9mmとなるよう設計されており、またしたがって、バイポーラ電極プローブは、0.9mm又はそれより短い標的組織を焼灼するのには使用できない。第3に、バイポーラ電極プローブに関して、電気的に絶縁した導電ワイヤ及び内側のはんだ接合部を配置する必要がある。これを理由として、バイポーラ電極プローブは構造が複雑であり、また製造すること、及びコンパクトに形成することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の観点から、簡単な構造及び調整可能なアブレーション範囲を有するバイポーラ電極プローブをどのように設計するかは、この分野で対処すべき問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電性ニードル、絶縁層、導電性スリーブ、及び絶縁スリーブを備えているバイポーラ電極プローブを提供する。導電性ニードルは、縦方向及びこの縦方向に直交する横方向を有する。絶縁層は、導電性ニードルをカバーし、また第1開口を有する。導電性スリーブは、絶縁層をカバーし、また第2開口を有する。絶縁スリーブは導電性スリーブをカバーする。バイポーラ電極プローブを作動状態にするとき、縦方向に沿って導電性ニードルの前端部から導電性スリーブに至る縦方向電場が形成される。また第1開口及び第2開口を経由して横方向に沿って導電性ニードルから導電性スリーブに至る横方向電場が形成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバイポーラ電極プローブは、少なくとも以下の技術的効果を達成する。第1に、正常な器官に不必要な電流が流れるのを回避し、また従来型の付加的電極プレートを使用することなく、アクティブ電極及びパッシブ電極を同一ニードルに形成し、このことは、正常な器官に不必要な電流が流れるのを阻止し、また患者の安全性を向上させる。第2に、アブレーション領域が均一に形成され、このことは、ホットスポットを生ずるのを回避し、また上皮の表層組織をアブレーションするとき、患者の上皮が燃焼するのを防止する。第3に、バイポーラ電極プローブはスリーブ式構造の設計を有し、この設計は、全体の組立てを簡素化し、また機械的強度を弱めるのを回避する。さらに、絶縁層を移動可能に構成するとき、絶縁スリーブは縦方向に沿って前後に移動することができ、このことは、異なるサイズの標的組織(例えば、がん細胞)を1回の手術でアブレーションするよう横方向電場の範囲(アブレーション領域)を調整するのを容易にする。本発明の構造設計に起因して、横方向電場が均一強度を有し、また導電率の異なる長さを得るよう絶縁スリーブを縦方向に沿って移動するとき、標的組織が横方向電場周りに均一に加熱される。さらに、輸液部材を使用するとき、バイポーラ電極プローブは、処置中に患者の痛みを軽減する液状物質(例えば、麻酔剤)を注入するチャンネルを有する。
【0007】
上述したことをよりよく理解できるようにするため、幾つかの実施形態を添付図面につき以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの分解状態を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの組付け状態を示す概略図である。
図3図3Aは、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。図3Bは、図3Aの平面Iにおける概略的断面図である。
図4図4Aは、本発明の他の実施形態による、縦方向に沿って前後に移動する絶縁スリーブの状態を示す概略図である。図4Bは、本発明の他の実施形態による、縦方向に沿って前後に移動する絶縁スリーブの状態を示す概略図である。
図5】本発明の別の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。
図6図6Aは、図5の平面Oに沿う概略的断面図である。図6Bは、図5の平面Pに沿う概略的断面図である。図6Cは、図5の平面Qに沿う概略的断面図である。
図7図5のバイポーラ電極プローブの部分的拡大図である。
図8図5のバイポーラ電極プローブの部分的拡大図である。
図9】本発明の他の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。
図10】標的組織をアブレーション(焼灼)するのに使用する、図1図4Bのバイポーラ電極プローブと従来型のユニポーラ電極プローブとの間における比較表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの分解状態を示す概略図である。図2は、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの組付け状態を示す概略図である。図1及び図2につき説明すると、バイポーラ電極プローブ100は、内側から外側に向けて見て、導電性ニードル110、絶縁層120、導電性スリーブ130、及び絶縁スリーブ140を備えている。バイポーラ電極プローブ100の実施形態及び各コンポーネントの実施形態を以下に説明する。
【0010】
導電性ニードル110は、縦方向x及びこの縦方向xに直交する横方向yを有する。絶縁層120は、導電性ニードル110をカバーし、また第1開口122を有する。導電性スリーブ130は、絶縁層120をカバーし、また第2開口132を有する。絶縁スリーブ140は導電性スリーブ130をカバーする。バイポーラ電極プローブ100を作動状態にするとき、導電性ニードル110の前端部から縦方向xに導電性スリーブ130に至る縦方向電場E1が形成される。第1開口122及び第2開口132を経由して横方向yに導電性ニードル110から導電性スリーブ130に至る横方向電場E2が形成される。他の実施形態において、絶縁スリーブ140は縦方向xに沿って移動可能とし、これによりバイポーラ電極プローブ100のアブレーション(焼灼)範囲を調整することができるようになる(以下に説明する)。
【0011】
横方向電場E2が生ずる領域においては、第1開口122及び第2開口132を経由して縦方向xに沿って導電性ニードル110から導電性スリーブ130に至る短い縦方向電場が生じ得るが、その影響は無視できるものであり、したがって、ここでは説明しないことを付記しておきたい。さらに、一実施形態において、例えば、導電性ニードル110はアクティブ(能動)電極として作用するとともに、導電性スリーブ130はパッシブ(受動)電極として作用するが、これに限定するものではない。他の実施形態において、導電性ニードル110はパッシブ(受動)電極として作用するとともに、導電性スリーブ130はアクティブ(能動)電極として作用することができる。
【0012】
図2につき説明すると、バイポーラ電極プローブ100は前方アブレーション領域及び後方アブレーション領域を有する。とくに、前方の縦方向電場E1は標的組織の前方区域をアブレーションするためのものであり、後方の横方向電場E2は標的組織の後方区域をアブレーションするためのものである。バイポーラ電極プローブ100の構造の実施形態を以下に説明する。
【0013】
図3Aは本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。図3Aは、縦方向x、横方向y、及び縦方向x及び横方向yに対して直交する方向zを示す。図3B図3Aの平面Iにおける概略的断面図である。図1及び図3Aにつき説明すると、第1開口122の面積は第2開口132の面積より小さく、これにより絶縁層120は第2開口132によって露出し、また絶縁層120の露出した領域は縦方向絶縁距離dx及び横方向絶縁距離dyを有する。
【0014】
図2図3A及び3Bにつき説明すると、実施形態において、横方向電場E2の領域で縦方向絶縁距離dxは、縦方向xに沿って第2開口132の前端部から第1開口122の前端部までである。横方向絶縁距離dyは、横方向yに沿って第2開口132の一方の端部から第1開口122の一方の端部までである。縦方向絶縁距離dxは、導電性ニードル110と導電性スリーブ130との間の縦方向絶縁距離を確保して、短い絶縁距離に起因して組織への大電流流入を確実に阻止する。導電性ニードル110と導電性スリーブ130との間の絶縁距離が過剰に短い場合、大電流が組織に流入して温度を急激に上昇させ、この結果、短時間でコークス化を生ぜしめ、またアブレーション範囲はプローブ表面の約0.5mmのみとなる。このような小さいアブレーション範囲は臨床用途には不向きである。
【0015】
さらに、図3Bに示すように、横方向絶縁距離dyは、導電性ニードル110と導電性スリーブ130との間の横方向絶縁距離を確保して、横方向電場E2を発生するのに十分な電流経路を維持し、また短い電流経路に起因してアブレーション領域の減少を確実に阻止する。
【0016】
図3A及び3Bにつき説明すると、実施形態では、横方向電場E2の領域における第1開口122により露出する導電性ニードル110の面積の、第2開口132の外側領域における導電性スリーブ130の面積に対する比は、1:0.9〜1:1.1である。
【0017】
図3A及び3Bにつき説明すると、横方向電場E2の領域において、導電性ニードル110の面積はL1×W1であり、ここでL1は縦方向xに沿う導電性ニードル110の長さであり、またW1は導電性ニードル110の周方向長さであり、さらに、導電性スリーブ130の面積はL2×W2であり、ここでL2は縦方向xに沿う導電性スリーブ130の長さであり、またW2は導電性スリーブ130の周方向長さである。実施形態において、横方向電場E2を均一にするよう導電性ニードル110の面積は導電性スリーブ130の面積に等しくすることができる。他の実施形態において、導電性ニードル110の面積と導電性スリーブ130の面積との比を1:0.9〜1:1.1に設定するとき、横方向電場E2を均一に発生することができる。
【0018】
さらに、図3A及び3Bにつき説明すると、実施形態において、縦方向電場E1が存在する導電領域の面積と横方向電場E2が存在する導電領域との面積を1:2.1〜1:2.6とする。これにより、バイポーラ電極プローブ100の前方アブレーション領域(縦方向電場E1)及び後方アブレーション領域(横方向電場E2)を適正な比に設定することができる。
【0019】
さらに、図3A及び3Bにつき説明すると、横方向電場E2の領域において、縦方向絶縁距離dx及び横方向絶縁距離dyは絶縁面積を画定し、また第1開口122によって露出する導電性ニードル110の面積及び第2開口132の外側における導電性スリーブ130の面積は導電面積を画定し、絶縁面積と導電面積との比は1:8〜1:44である。
【0020】
図3A及び3Bに示すように、横方向電場E2の領域において、絶縁面積は、縦方向絶縁距離dx及び横方向絶縁距離dyの領域に存在する絶縁層120の面積である。横方向電場E2の領域において、導電面積は、導電性ニードル110の面積L1×W1と、導電性スリーブ130の面積L2×W2との合計である。計算によれば、絶縁面積と導電面積との比は1:8〜1:44であることが得られる。この設定により、均一アブレーションを実施するよう横方向電場E2は均一に発生する。
【0021】
図4A及び4Bは、本発明の他の実施形態による、縦方向に沿って前後に移動する絶縁スリーブの状態を示す概略図である。図4A及び4Bにつき説明すると、一定位置に配置される導電性ニードル110、絶縁層120及び導電性スリーブ130に対して、絶縁スリーブ140は、縦方向xに沿って前後に移動可能に構成する。図4A及び4Bに示すように、絶縁スリーブ140がバイポーラ電極プローブ100の前端部に向かって移動するとき、より大きい横方向電場E2がより小さい横方向電場E2′に変化する。
【0022】
換言すれば、横方向電場E2の範囲(アブレーション領域)は、絶縁スリーブ140を縦方向xに沿って前後に移動することにより調整することができる。上皮の表層組織をアブレーションするとき、絶縁スリーブ140は、横方向電場E2を完全に閉鎖するよう、またアブレーションのために縦方向電場E1のみを使用して患者の上皮が燃焼するのを防止するように、移動することができる。さらに、絶縁スリーブ140をバイポーラ電極プローブ100の前端部に向かって移動するとき、横方向電場E2の範囲が減少してより小さいアブレーション領域が得られ、他方、絶縁スリーブ140をバイポーラ電極プローブ100の後端部に向かって移動するとき、横方向電場E2の範囲が増大してより大きいアブレーション領域が得られる
【0023】
本発明において、絶縁スリーブ140が縦方向xに前後に移動する場合であっても、横方向yにおける横方向電場E2の強度は均一のままである。したがって、アブレーション領域は横方向yに均一に維持される。
【0024】
図1図4Bの実施形態において、第1開口122の数は第2開口132の数に等しい。第1開口122の数は1つ又はそれ以上、また第2開口132の数は1つ又はそれ以上とすることができる。これにより電極対が形成される(図3Bに示すように)。しかし、他の実施形態において、第1開口122の数及び第2開口132の数は、それぞれ2個、3個、4個、5個、6個等々とすることができる。
【0025】
図5は、本発明の別の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。図6A図5の平面Oに沿う概略的断面図である。図6B図5の平面Pに沿う概略的断面図である。図6C図5の平面Qに沿う概略的断面図である。バイポーラ電極プローブ102において、図1図4Bに示したのと同一の参照符号によって同一コンポーネントを表し、したがって、それらの詳細な説明は以下に繰り返さない。図5及び図6Bにつき説明すると、この実施形態において、第1開口122の数は4個であり、また第2開口132の数は4個であり、これにより4つの電極対(図6Bに示すように)を形成する。
【0026】
図7図5のバイポーラ電極プローブの部分的拡大図である。図7につき説明すると、バイポーラ電極プローブ102においても、絶縁層120によって露出される領域は、同じように縦方向絶縁距離dx及び横方向絶縁距離dyを有する。縦方向絶縁距離dxは、導電性ニードル110と導電性スリーブ130との間の縦方向絶縁距離を確保して、短い絶縁距離に起因して組織への大電流流入を確実に阻止する。さらに、横方向絶縁距離dyは、導電性ニードル110と導電性スリーブ130との間の横方向絶縁距離を確保して、横方向電場E2を発生するのに十分な電流経路を維持し、また短い電流経路に起因してアブレーション領域の減少を確実に阻止する。
【0027】
図8図5のバイポーラ電極プローブの部分的拡大図である。図3Bの説明と同様に、図8に示すように横方向電場E2の領域において、横方向電場E2を均一に発生するよう、導電性ニードル110の面積は導電性スリーブ130の面積に等しくすることができる。他の実施形態において、導電性ニードル110の面積と導電性スリーブ130の面積との比を1:0.9〜1:1.1に設定するとき、横方向電場E2は均一に発生し得る。
【0028】
図9は、本発明の他の実施形態によるバイポーラ電極プローブの概略図である。図1図8の実施形態におけるのと同一のコンポーネントは同一の参照符号によって表し、したがって、それらの詳細な説明は以下に繰り返さない。図9につき説明すると、この実施形態のバイポーラ電極プローブ104は、さらに、絶縁層120及び導電性スリーブ130の後端部に配置した輸液部材150を備える。この輸液部材150は、液状物質Lが絶縁層120と導電性スリーブ130との間におけるギャップを通過して、第1開口122及び第2開口132から排出されるよう配置する。
【0029】
図9につき説明すると、液状物質Lは、絶縁層120と導電性スリーブ130との間のギャップに矢印で示す方向に進入し、前端部における第1開口122及び第2開口132から流出して標的組織内に注入される。一実施形態においては、液状物質Lは、アブレーション領域における痛みを軽減する麻酔薬、又はアブレーション部の体積を増大させるための生理食塩水とすることができる。バイポーラ電極プローブ104を空気関連器官(例えば、肺)のアブレーションに使用するとき、生理食塩水の注入は、アブレーションを容易にし、またガスが電流及び熱を効果的に伝達できないことから生ずる劣悪アブレーション効果の問題を解決する。
【0030】
輸液部材150は、さらに、輸液部材150をバイポーラ電極プローブ104に適切に組み付けるよう、また輸液部材150と絶縁層120との間における接合部、及び輸液部材150と導電性スリーブ130との間における接合部に配置したシール部材152を有することができ、これにより輸液部材150をバイポーラ電極プローブ104に適切に組み付け、また液状物質Lを輸液部材150の入口内に適切に入力させ、次に絶縁層120と導電性スリーブ130との間におけるギャップを経由して第1開口122及び第2開口132から標的組織に出力することができる。
【0031】
図9に示すように、輸液部材150は、4個の第1開口122及び4個の第2開口132を有するバイポーラ電極プローブ104に組み付けるが、輸液部材150は、図3Aに示すような、1個の第1開口122及び1個の第2開口132を有するバイポーラ電極プローブ100に組み付けることもできる。
【0032】
図10は、標的組織をアブレーション(焼灼)するのに使用する、図1図4Bのバイポーラ電極プローブと従来型のユニポーラ電極プローブとの間における比較表である。図10につき説明すると、標的組織をアブレーションする標的長さが5mmであるとき、ユニポーラ電極プローブは、縦方向における6mmのアブレーション領域及び横方向における4mmのアブレーション領域を形成することが知られており、その他方で、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブ100は、縦方向における6mmのアブレーション領域及び横方向における3.5mmのアブレーション領域を形成し、これは少なくともユニポーラ電極プローブと同様のアブレーション効果を達成するものである。
【0033】
再び図10につき説明すると、標的組織をアブレーションする標的長さが7mmであるとき、ユニポーラ電極プローブは、縦方向における9mmのアブレーション領域及び横方向における4mmのアブレーション領域を形成することが知られており、その他方で、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブ100は、縦方向における6mmのアブレーション領域及び横方向における4mmのアブレーション領域を形成し、これは少なくともユニポーラ電極プローブと同様のアブレーション効果を達成するものである。上述のことから、ユニポーラ電極プローブによって縦方向に形成されるアブレーション領域の長さは9mmであることが知られており、このことは標的長さ7mmを超えるものであり、また手術精度が低下する。しかし、本発明のバイポーラ電極プローブ100によって形成される縦方向のアブレーション領域の長さは6mmであり、このことは標的長さ7mmに近似し、好ましい手術精度を達成している。
【0034】
再び図10につき説明すると、標的組織をアブレーションする標的長さが10mmであるとき、ユニポーラ電極プローブは、縦方向における11mmのアブレーション領域及び横方向における4mmのアブレーション領域を形成することが知られており、その他方で、本発明の実施形態によるバイポーラ電極プローブ100は、縦方向における11mmのアブレーション領域及び横方向における4.5mmのアブレーション領域を形成し、これは少なくともユニポーラ電極プローブと同様のアブレーション効果を達成するものである。
【0035】
要約すると、本発明バイポーラ電極プローブは少なくとも以下のことを達成する。第1に、正常な器官に不必要な電流が流れるのを回避し、また従来型の付加的電極プレートを使用することなく、アクティブ電極及びパッシブ電極を同一ニードルに形成し、このことは、正常な器官に不必要な電流が流れるのを阻止し、また患者の安全性を向上させる。第2に、アブレーション領域が均一に形成され、このことは、ホットスポットを生ずるのを回避し、また上皮の表層組織をアブレーションするとき、患者の上皮が燃焼するのを防止する。第3に、バイポーラ電極プローブはスリーブ式構造の設計を有し、この設計は、全体の組立てを簡素化し、また機械的強度を弱めるのを回避する。さらに、絶縁層を移動可能に構成するとき、絶縁スリーブは縦方向に沿って前後に移動することができ、このことは、異なるサイズの標的組織(例えば、がん細胞)を1回の手術でアブレーションするよう横方向電場の範囲(アブレーション領域)を調整するのを容易にする。本発明の構造設計に起因して、横方向電場が均一強度を有し、また導電率の異なる長さを得るよう絶縁スリーブを縦方向に沿って移動するとき、標的組織が横方向電場周りに均一に加熱される。さらに、輸液部材を使用するとき、バイポーラ電極プローブは、処置中に患者の痛みを軽減する液状物質(例えば、麻酔剤)を注入するチャンネルを有する。
【0036】
当業者には、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく本明細書に記載の実施形態に対して様々な変更及び改変を加えることができることは明らかであろう。上述の点を考慮すると、本発明は特許請求の範囲及び均等物に納まる変更及び改変をカバーすることを意図する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
バイポーラ電極プローブは臨床用途に使用することができる。
【符号の説明】
【0038】
100,102,104 バイポーラ電極プローブ
110 導電性ニードル
120 絶縁層
122 第1開口
130 導電性スリーブ
132 第2開口
140 絶縁スリーブ
150 輸液部材
152 シール部材
dx 縦方向絶縁距離
dy 横方向絶縁距離
E1 縦方向電場
E2 横方向電場
I,O,P,Q 平面
W1 導電性ニードルの周方向長さ
W2 導電性スリーブの周方向長さ
x 縦方向
y 横方向
z 縦方向及び横方向に直交する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2019年4月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ電極プローブであって、
縦方向及び前記縦方向に直交する横方向を有する導電性ニードルと、
前記導電性ニードルをカバーし、先端に前記導電性ニードルを縦方向に突出させる開口と、側面に少なくとも1個の第1開口を有する絶縁層と、
前記絶縁層をカバーし、先端に前記絶縁層を縦方向に突出させる開口と、側面に少なくとも1個の第2開口を有する導電性スリーブと、
前記導電性スリーブをカバーする絶縁スリーブと
を備え、
前記バイポーラ電極プローブを作動状態にするとき、前記縦方向に沿って前記導電性ニードルの前端部から前記導電性スリーブに至る縦方向電場が形成され、
前記少なくとも1個の第1開口及び前記少なくとも1個の第2開口を経由して前記横方向に沿って前記導電性ニードルから前記導電性スリーブに至る横方向電場が形成される、バイポーラ電極プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記少なくとも1個の第1開口の面積は、前記少なくとも1個の第2開口の面積よりも小さい、バイポーラ電極プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域に、前記縦方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口の前端部と前記少なくとも1個の第1開口の前端部との間に縦方向絶縁距離が存在し、
前記横方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口における一方の端部と前記少なくとも1個の第1開口における同一側の端部との間に横方向絶縁距離が存在する、バイポーラ電極プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域における、前記少なくとも1個の第1開口によって露出する前記導電性ニードルの面積と前記少なくとも1個の第2開口の外側領域における前記導電性スリーブの面積との比が1:0.9〜1:1.1である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記縦方向電場が存在する導電領域の面積と前記横方向電場が存在する導電領域の面積との比が1:2.1〜1:2.6である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記横方向電場の領域に、前記縦方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口の前端部と前記少なくとも1個の第1開口の前端部との間に縦方向絶縁距離が存在し、
前記横方向に沿って、前記少なくとも1個の第2開口における一方の端部と前記少なくとも1個の第1開口における同一側の端部との間に横方向絶縁距離が存在し、
前記横方向電場の領域で、前記縦方向絶縁距離及び前記横方向絶縁距離が絶縁面積を画定し、前記少なくとも1個の第1開口によって露出する前記導電性ニードルの面積及び前記少なくとも1個の第2開口の外側における前記導電性スリーブの面積が導電面積を画定し、
前記絶縁面積と前記導電面積との比が1:8〜1:44である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記絶縁スリーブは、前記縦方向に沿って前後に移動可能である、バイポーラ電極プローブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記少なくとも1個の第1開口の数は、前記少なくとも1個の第2開口の数に等しい、バイポーラ電極プローブ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、さらに、
前記絶縁層及び前記導電性スリーブの後端部に配置された輸液部材を備え、
前記輸液部材は、液状物質が前記絶縁層と前記導電性スリーブとの間のギャップを通過して、前記少なくとも1個の第1開口と前記少なくとも1個の第2開口とから流出できるよう構成されている、バイポーラ電極プローブ。
【請求項10】
請求項9に記載のバイポーラ電極プローブにおいて、
前記輸液部材は、さらに、前記輸液部材と前記絶縁層との間の接合部、及び前記輸液部材と前記導電性スリーブとの間の接合部に配置された複数個のシール部材を有する、バイポーラ電極プローブ。
【外国語明細書】
2019111311000001.pdf