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特開2019-111497活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-111497(P2019-111497A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20190621BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20190621BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20190621BHJP
【FI】
   B05D7/24 301T
   B05D3/06 B
   B05D5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-247571(P2017-247571)
(22)【出願日】2017年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】多田 修悟
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 俊良
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AB32
4D075AB52
4D075AC72
4D075AC92
4D075BB08Z
4D075BB18Y
4D075BB18Z
4D075BB26Z
4D075BB37Z
4D075BB46Z
4D075BB50Z
4D075BB92Z
4D075CA07
4D075CB06
4D075DA04
4D075DB36
4D075DB48
4D075DC24
4D075EA07
4D075EA21
4D075EB19
4D075EB22
4D075EB33
4D075EB35
4D075EB37
4D075EB38
4D075EC37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】剥離工程において破断の発生を抑制することができる活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法の提供。
【解決手段】長尺の第1の支持フィルムS1を長手方向に移送させながら、第1の支持フィルムS1上に重合性組成物を塗工して第1の支持フィルムS1の幅方向及び長手方向に塗工膜を形成する塗工工程と、第1の支持フィルムS1上に長手方向に移送される塗工膜を覆う長尺の第2の支持フィルムS2を積層して積層体Lを形成する積層工程と、第1及び第2の支持フィルムS1,S2の少なくとも一方側から積層体Lに活性エネルギー線を照射して塗工膜を硬化させる硬化工程と、積層体から第1及び第2の支持フィルムS1,S2を剥離する剥離工程と、を順に備える活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法であって、剥離工程において硬化された塗工膜の幅方向における端部の膜厚が4μm以上であるエネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の第1の支持フィルムを長手方向に移送させながら、前記第1の支持フィルム上に重合性組成物を塗工して、前記第1の支持フィルムの幅方向及び長手方向に塗工膜を形成する塗工工程と、前記第1の支持フィルム上に、前記長手方向に移送される前記塗工膜を覆う長尺の第2の支持フィルムを積層して、積層体を形成する積層工程と、前記第1の支持フィルム及び前記第2の支持フィルムの少なくとも一方側から前記積層体に活性エネルギー線を照射して、前記塗工膜を硬化させる硬化工程と、前記積層体から前記第1の支持フィルム及び前記第2の支持フィルムを剥離する剥離工程と、を順に備える活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法であって、
前記塗工工程及び前記硬化工程の間において、前記塗工膜の流動性を低下させる流動性低下工程をさらに備え、
前記剥離工程において、硬化された前記塗工膜の前記幅方向における端部の膜厚が4μm以上であることを特徴とする活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記流動性低下工程は、前記塗工膜に活性エネルギー線を照射して、前記塗工膜の流動性を低下させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記流動性低下工程は、前記塗工膜を冷却して、前記塗工膜の流動性を低下させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記流動性低下工程において、前記塗工膜の少なくとも前記端部における流動性を低下させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記流動性低下工程において、前記塗工膜の全面における流動性を低下させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記硬化工程と前記剥離工程の間において、前記積層体をスリットするスリット工程を備えないことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記重合性組成物は紫外線硬化樹脂組成物であり、前記硬化工程において、前記活性エネルギー線は紫外線であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法に関し、詳しくは重合性組成物が活性エネルギー線により硬化されて形成される活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイなどの保護フィルムや透明電極などの基材フィルムにおいて、またガラスの代替として、表面硬度が高く、耐熱性に優れる活性エネルギー線硬化樹脂フィルムが用いられている。活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法としては、例えば特許文献1に記載されるように、長尺の第1の支持フィルム上に重合性組成物を塗工する塗工工程、その上から長尺の第2の支持フィルムを積層する積層工程、これに活性エネルギー線を照射して塗工膜を硬化させる硬化工程、硬化された塗工膜から第1及び第2の支持フィルムを剥離する剥離工程をロールトゥロール方式で連続的に行うものが知られている。
【0003】
この製造方法においては、剥離工程の際、活性エネルギー線硬化樹脂フィルム特有の性質から、剥離による応力によって破断するおそれがあった。このため、特許文献1には、硬化工程の際、遮光マスクを用いて、塗工膜の幅方向における端部に照射する活性エネルギー線の照射光量を中央部よりも低くして、硬化された塗工膜(活性エネルギー線硬化樹脂フィルム)の端部における表面硬度を中央部よりも低くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−127019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法によると、破断の発生が抑制できるものの、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの端部において反応率や表面硬度が低くなっていることから、別アプローチによる製造方法が求められた。
【0006】
そこで本発明は、剥離工程において破断の発生を抑制することができる活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法は、長尺の第1の支持フィルムを長手方向に移送させながら、前記第1の支持フィルム上に重合性組成物を塗工して、前記第1の支持フィルムの幅方向及び長手方向に塗工膜を形成する塗工工程と、前記第1の支持フィルム上に、前記長手方向に移送される前記塗工膜を覆う長尺の第2の支持フィルムを積層して、積層体を形成する積層工程と、前記第1の支持フィルム及び前記第2の支持フィルムの少なくとも一方側から前記積層体に活性エネルギー線を照射して、前記塗工膜を硬化させる硬化工程と、前記積層体から前記第1の支持フィルム及び前記第2の支持フィルムを剥離する剥離工程と、を順に備える活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法であって、前記塗工工程及び前記硬化工程の間において、前記塗工膜の流動性を低下させる流動性低下工程をさらに備え、前記剥離工程において、硬化された前記塗工膜の前記幅方向における端部の膜厚が4μm以上であることを特徴とする。
【0008】
従来、剥離工程においては、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムを取得する際、剥離の応力によって幅方向における端部に割れが起こり、これをきっかけに破断が発生していた。これに対して、本発明の構成によれば、剥離工程において、硬化された塗工膜の幅方向における端部の膜厚が4μm以上となっているため、端部に割れが起こりにくく、これにより破断の発生を抑制することができる。端部における4μm以上の膜厚は、流動性低下工程において、第1の支持フィルム上における塗工膜の流動性を低下させ、塗工膜の幅方向への広がりを抑止することで達成することができる。
【0009】
本発明においては、前記流動性低下工程として、前記塗工膜に活性エネルギー線を照射して、前記塗工膜の流動性を低下させる工程を挙げることができる。
【0010】
また、前記流動性低下工程として、前記塗工膜を冷却して、前記塗工膜の流動性を低下させる工程も挙げることができる。
【0011】
本発明においては、前記流動性低下工程で、前記塗工膜の少なくとも前記端部における流動性を低下させることができる。これにより、端部の膜厚を、効率よく4μm以上にすることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記流動性低下工程で、前記塗工膜の全面における流動性を低下させることができる。これにより、端部の膜厚を、確実に4μm以上にすることができる。また、均一に硬化された塗工膜を取得することができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、前記硬化工程と前記剥離工程の間において、前記積層体をスリットするスリット工程を備えないことができる。これによると、硬化された塗工膜にはスリットによるクラックが起こっていないことになり、剥離工程において、このクラックに起因する破断の発生を抑制することができる。
【0014】
そして、本発明の製造方法においては、前記重合性組成物として紫外線硬化樹脂組成物を選択することができる。この場合、前記硬化工程における前記活性エネルギー線としては紫外線を選択する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法によれば、剥離工程において破断の発生を抑制することができる。これにより、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムを安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法を適用した製造ライン10の概略図である。
図2】塗工工程の後における塗工膜Wが形成された第1の支持フィルムS1を上方からみた平面図である。
図3】塗工工程の後における塗工膜Wが形成された第1の支持フィルムS1を幅方向に沿って切断した場合の端部S1b側の拡大断面図である。
図4】積層工程の後における積層体Lを幅方向に沿って切断した場合の端部S1b側の拡大断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法を適用した製造ライン20の概略図である。
図6】紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚と破断の発生の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法を適用した、ロールトゥロール方式で連続的に行う製造ライン10の概略図である。図1に示すように、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法は、繰出装置11により長尺の第1の支持フィルムS1及び長尺の第2の支持フィルムS2をそれぞれ繰り出す繰出工程と、塗工装置12により第1の支持フィルムS1上に重合性組成物を塗工する塗工工程と、その上からニップロール13に沿って第2の支持フィルムS2を積層し、積層体Lを形成する積層工程と、第1の活性エネルギー線照射装置14により第2の支持フィルムS2側から塗工膜Wに活性エネルギー線を照射して塗工膜Wの流動性を低下させる流動性低下工程と、第2の活性エネルギー線照射装置15により第2の支持フィルムS2側から塗工膜Wに活性エネルギー線を照射し、硬化させる硬化工程と、ニップロール13に沿って硬化された塗工膜Wから第1の支持フィルムS1及び第2の支持フィルムS2を剥離する剥離工程と、巻取装置16により剥離して取得された活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFを巻き取る巻取工程から構成される。工程の順を追って、各工程を詳細に説明する。
【0019】
<繰出工程>
繰出工程においては、公知の繰出装置11により、ロール状に巻き取られた長尺の第1の支持フィルムS1及び、ロール状に巻き取られた長尺の第2の支持フィルムS2をそれぞれ繰り出していく。第1の支持フィルムS1及び第2の支持フィルムS2は、それぞれ複数のガイドロール17に沿って長手方向に移送され、移送速度は例えば0.1〜100m/minに設定される。
【0020】
第1の支持フィルムS1及び第2の支持フィルムS2としては、例えばポリエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂によって形成された合成樹脂フィルムが用いられ、ハンドリング性及びコストの観点から、好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの厚みは例えば25〜250μmであり、幅方向の長さは例えば200〜1350mmである。また、合成樹脂フィルムの表面には、離型処理などを施すことができる。
【0021】
<塗工工程>
塗工工程においては、塗工装置12により、移送される第1の支持フィルムS1上に、第1の支持フィルムS1の幅方向における端部S1a、S1bより内側で重合性組成物を塗工する。また、塗工厚みは例えば20〜200μmとなるように塗工する。これにより、図2及び図3に示すように、第1の支持フィルムS1上に幅方向及び長手方向で塗工膜Wが形成される。塗工工程の後においては、塗工膜Wの幅方向における端部Wa、Wbがそれぞれ、第1の支持フィルムS1の端部S1a、S1b(幅方向外側)に向かって広がろうとするため、流動性低下工程を省略した場合、取得される活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFは端部が極端に薄くなる場合がある。
【0022】
塗工装置12としては、例えばダイコータ、リップコータ、コンマコータ、ロールコータ、バーコータ、カーテンコータが用いられ、幅方向に均一に塗工する観点から、好ましくはダイコータが用いられる。
【0023】
ここで、重合性組成物としては、例えば光(紫外線、可視光線、赤外線)、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射によって硬化されるものが用いられる。光照射によって硬化される光重合性組成物としては、例えば重合性モノマーと、重合性オリゴマーと、光重合開始剤と、任意の添加剤(安定剤、フィラー等)を含有するものが用いられる。光重合性組成物としては、反応する光の波長(光重合開始剤の吸収する光の波長)によって、例えば紫外線硬化樹脂組成物、可視光線硬化樹脂組成物に分類され、好ましくは紫外線硬化樹脂組成物が用いられる。また、光重合性組成物は、その反応機構から、例えばラジカル重合型とカチオン重合型に分類される。ラジカル重合型の光重合性組成物については、重合性モノマーとして例えばアクリレートモノマーが、重合性オリゴマーとして例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレートが、光重合開始剤として例えばベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系の化合物が挙げられる。カチオン重合型の光重合性組成物については、重合性モノマーとして例えばビニルエーテルモノマーが、重合性オリゴマーとしてビニルエーテルオリゴマー、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエーテルエポキシが、光重合開始剤として例えばスルホニウム系、ヨードニウム系の化合物が挙げられる。
【0024】
また、重合性組成物の粘度は、例えば100〜50000mPa・s、好ましくは500〜30000mPa・sに調整される。ここで粘度は、例えばブルックフィールド社製B型粘度計を用いて25℃の温度設定で測定される。
【0025】
<積層工程>
積層工程においては、ニップロール13に沿って、第1の支持フィルムS1上に塗工膜Wの全面を覆う第2の支持フィルムS2を積層して、積層体Lを形成する。図4に示すように、積層体Lは、第1の支持フィルムS1、塗工膜W及び第2の支持フィルムS2を下方から順に有するものであり、また積層体Lの幅方向における端部は、第1の支持フィルムS1の端部S1a、S1bと第2の支持フィルムS2の端部S2a、S2bがそれぞれ接触した形となる。これにより硬化工程において、空気中の酸素による光重合性組成物の反応阻害を抑制することができる。そして、塗工膜Wの端部Wa、Wbは、積層工程の後においては特に、第2の支持フィルムS2の重力や積層体Lに加わる搬送張力により、幅方向外側に向かって広がろうとする。
【0026】
<流動性低下工程>
流動性低下工程においては、第2の支持フィルムS2上方に設置された第1の活性エネルギー線照射装置14により、第2の支持フィルムS2側から塗工膜Wに活性エネルギー線を照射して、塗工された重合性組成物の粘度を上げることで、塗工膜Wの流動性を低下させる。これにより、硬化された塗工膜Wの幅方向における端部Wa、Wbの膜厚が4μm以上となるように、塗工膜Wの端部Wa、Wbの幅方向外側への広がりを抑止することができる。
【0027】
第1の活性エネルギー線照射装置14としては、例えば光(紫外線、可視光線、赤外線)、X線、電子線等の活性エネルギー線を照射するものが用いられる。光照射する光照射装置としては、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、無電極ランプ、LEDを備えるものが用いられる。紫外線硬化樹脂組成物の場合、塗工膜Wの流動性を簡便に(省スペース、省コストで)低下させる観点から、好ましくはUV−LED照射装置が用いられる。
【0028】
第1の活性エネルギー線照射装置14は、光照射装置の場合、塗工膜Wにおける積算光量が例えば20〜1000mJ/cmとなるように光を照射する。光の波長領域としては、例えば紫外線領域(200nm〜380nm)、可視光線領域(380nm〜780nm)、赤外線領域(780nm〜1000μm)が挙げられる。
【0029】
そして、流動性低下工程においては、塗工膜Wの流動性として、塗工された重合性組成物の粘度が例えば4000mPa・s以上、好ましくは12000mPa・s以上となるように光の照射量によって調整される。ここで、粘度は、例えば上述の装置を用いて25℃の温度設定で測定される。
【0030】
流動性低下工程においては、塗工膜Wの端部のみに活性エネルギー線を照射することで、塗工膜Wの端部Wa、Wbのみの流動性を低下させることができる。これにより、硬化された塗工膜Wの端部Wa、Wbの膜厚を、効率よく4μm以上にすることができる。
【0031】
また、流動性低下工程においては、塗工膜Wの全面に活性エネルギー線を照射することで、塗工膜Wの全面の流動性を低下させることができる。これにより、端部の膜厚を、確実に4μm以上にすることができる。また、均一に硬化された塗工膜Wを取得することができる。
【0032】
なお、流動性低下工程においては、第1の紫外線照射装置14を第1の支持フィルムS1下方に設置し、また両方に設置することができる。そして、第1の支持フィルムS1側、S2側の片側から活性エネルギー線を照射することもできるし、また両側から照射することもできる。
【0033】
<硬化工程>
硬化工程においては、第2の支持フィルムS2上方に設置された第2の活性エネルギー線照射装置15により、第2の支持フィルムS2側から塗工膜Wに活性エネルギー線を照射し、第2の支持フィルムS2を透過した活性エネルギー線により重合性組成物を反応させて硬化させる。
【0034】
第2の活性エネルギー線照射装置15は、例えば光、X線、電子線の活性エネルギー線等を照射するものが用いられる。光照射する光照射装置としては、光重合性組成物を硬化させる波長領域の光を照射するものであって、例えばメタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、無電極ランプ、LEDを備えるものが用いられる。紫外線硬化樹脂組成物の場合、塗工膜Wを効率よく(光エネルギーだけでなく熱エネルギーから)硬化させる観点から、好ましくは無電極ランプを備えるものが用いられる。
【0035】
第2の活性エネルギー線照射装置15は、光照射装置の場合、塗工膜Wにおける積算光量が例えば50〜5000mJ/cmとなるように光を照射する。光の波長領域としては、例えば紫外線領域(200nm〜380nm)、可視光線領域(380nm〜780nm)、赤外線領域(780nm〜1000μm)が挙げられる。
【0036】
そして、硬化工程においては、重合性組成物の反応率が例えば50%以上、好ましくは80%以上となるように硬化される。反応率としては、重合性組成物が紫外線硬化樹脂組成物の場合、例えば、赤外イメージングシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet iS5)を用いて、紫外線照射前の紫外線硬化樹脂組成物及び紫外線照射後である紫外線硬化樹脂フィルムについてIRスペクトルを測定し、ビニル基のCH面外変角振動の吸収ピーク(810cm−1付近)の高さの比から算出することができる。
【0037】
なお、硬化工程においては、第2の紫外線照射装置15を第1の支持フィルムS1下方に設置し、また両方に設置することができる。そして、第1の支持フィルムS1側、S2側の片側から活性エネルギー線を照射することもできるし、また両側から照射することもできる。
【0038】
<剥離工程>
剥離工程においては、ニップロール13に沿って、積層体Lの移送ラインから第1の支持フィルムS1及び第2の支持フィルムS2を分岐させ、積層体Lからこれらを剥離して、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFを取得する。この際、硬化された塗工膜Wの幅方向における端部Wa、Wbの膜厚が4μm以上となっているため、剥離の応力が加わっても端部Wa、Wbに割れが起こりにくく、この割れをきっかけとする破断の発生を抑制することができる。また、硬化工程と剥離工程の間において、スリット工程を備えない場合(硬化された塗工膜Wがスリットされていない場合)には、端部にはスリットによるクラックも起こっていないため、これに起因する破断の発生も抑制することができる。
【0039】
<巻取工程>
巻取工程において、公知の巻取装置16により、取得された活性エネルギー線硬化樹脂フィルムF、剥離した第1の支持フィルムS1、剥離した第2の支持フィルムS2をそれぞれロール状に巻き取る。巻き取られる活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFには、そのいずれか一方側または両側に、公知のプロテクトフィルムを貼合したり、合紙を挿入したりすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法について、説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法を適用した、ロールトゥロール方式で連続的に行う製造ライン20の概略図である。図5に示すように、活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの製造方法は、繰出装置11により長尺の第1の支持フィルムS1及び長尺の第2の支持フィルムS2をそれぞれ繰り出す繰出工程と、塗工装置12により第1の支持フィルムS1上に重合性組成物を塗工する塗工工程と、冷却装置24により塗工膜Wを冷却して塗工膜Wの流動性を低下させる流動性低下工程と、塗工膜Wの上からニップロール13に沿って第2の支持フィルムS2を積層する積層工程と、第2の活性エネルギー線照射装置15により第2の支持フィルムS2側から塗工膜Wに活性エネルギー線を照射し、硬化させる硬化工程と、ニップロール13に沿って硬化された塗工膜Wから第1の支持フィルムS1及び第2の支持フィルムS2を剥離する剥離工程と、剥離して取得された活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFを巻き取る巻取工程から構成される。上述の第1実施形態とは流動性低下工程が異なるため、流動性低下工程について説明する。
【0041】
<流動性低下工程>
流動性低下工程においては、塗工工程から硬化工程までを覆う公知の冷却装置24により、塗工工程及び硬化工程の間において塗工膜Wを冷却して、塗工された重合性組成物の粘度を上げることで、塗工膜Wの流動性を低下させる。これにより、硬化された塗工膜Wの幅方向における端部Wa、Wbの膜厚が4μm以上となるように、塗工膜Wの端部Wa、Wbの幅方向外側への広がりを抑止することができる。
【0042】
冷却装置24の温度としては、例えば0〜15℃に設定される。そして、流動性低下工程においては、塗工膜の流動性として、塗工された重合性組成物の粘度が例えば4000mPa・s以上、好ましくは12000mPa・s以上となるように冷却によって調整される。ここで、粘度は、例えば上述の装置を用いて冷却時の温度設定で測定される。
【0043】
なお、流動性低下工程は、塗工工程と積層工程の間、積層工程と硬化工程の間のそれぞれの間で行うこともできる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態に係る活性エネルギー線硬化樹脂フィルムの製造方法について説明したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、剥離工程と巻取工程の間で、スリット装置により、取得された活性エネルギー線硬化樹脂フィルムFの端部をスリットするスリット工程を備えることができる。これにより、フィルム幅を調整することができる。スリット装置としては、例えばレーザーによりスリットするものが用いられる。
【0045】
また、上記実施形態においては、流動性低下工程を必須の工程としたが、重合性組成物にチキソトロピー性を付与する添加剤を含有させることができる。これにより、せん断のかかる塗工工程においては重合性組成物の流動性を高くし、せん断のかからない塗工工程後においては流動性を低くすることで、硬化された塗工膜Wの端部Wa、Wbにおける膜厚を4μm以上にすることが可能となる。この場合、流動性低下工程を省略することもできる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
重合性組成物としては、粘度が3000mPa・sの紫外線硬化樹脂組成物を準備した。第1の支持フィルムとしては厚みが100μmの長尺のポリエチレンテレフタレートフィルムを、第2の支持フィルムとしては厚みが100μmの長尺のポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。また、上述の製造方法において、塗工工程における塗工装置としてはダイコータを、流動性低下工程における第1の紫外線照射装置としてはLED−UV照射装置(株式会社アイテックシステム製、LLRG−UVシリーズ)を、硬化工程における第2の紫外線照射装置としては無電極紫外線ランプ(ヘレウス株式会社製、Hバルブ)を備えるものを用いた。その他の条件としては、移送速度を2m/minにし、塗工厚みを40μmに設定した。そして、流動性低下工程においては塗工膜の全面に、積算光量が290mJ/cmとなるように紫外線を照射した。また、硬化工程において塗工膜の全面に、積算光量が1200mJ/cmとなるように紫外線を照射した。なお、積算光量は、紫外線測定器(EIT社製、マイクロキュアMC−10)で測定したものである。これらの条件によると、剥離工程において、破断が発生することなく、紫外線硬化樹脂フィルムを取得することができた。取得した紫外線硬化樹脂フィルムについて、幅方向における端部の膜厚を、膜厚計(株式会社ミツトヨ製、ID−F125)を用いて、長手方向100cmの範囲で10cmごと測定すると、最小膜厚は4μmであった。また、幅方向における中央部の平均膜厚は42μmであった。
【0048】
(実施例2〜4)
塗工厚みをそれぞれ50μm(実施例2)、70μm(実施例3)、100μm(実施例4)に設定すること以外は、実施例1と同じ条件にした。これらの条件においても、破断が発生することはなかった。そして、取得した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、実施例2では端部の最小膜厚は8μm、中央部の平均膜厚は48μmであり、実施例3では端部の最小膜厚は10μm、中央部の平均膜厚は64μmであり、実施例4では端部の最小膜厚は15μm、中央部の平均膜厚は109μmであった。
【0049】
(比較例1)
流動性低下工程を行わなかったこと(第1の紫外線照射装置により紫外線を照射しなかったこと)以外は、実施例1と同じ条件にした。この場合、破断が発生し、紫外線硬化樹脂フィルムを安定して取得することができなかった。破断した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚が1μmであり、中央部の平均膜厚は44μmであった。
【0050】
(比較例2)
流動性低下工程を行わなかったこと(第1の紫外線照射装置により紫外線を照射しなかったこと)以外は、実施例4と同じ条件にした。この場合においても、破断が発生した。破断した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚が1μmであり、中央部の平均膜厚は112μmであった。
【0051】
(実施例5)
粘度が1500mPa・sの紫外線硬化樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例3と同じ条件にした。この場合においては、破断が発生しなかった。そして、取得した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚は15μmであり、中央部の平均膜厚は71μmであった。
【0052】
(実施例6)
流動性低下工程において、塗工膜の両端部のみに紫外線を照射すること以外は、実施例5と同じ条件にした。この場合においても、破断が発生しなかった。そして、取得した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚は16μmであり、中央部の平均膜厚は69μmであった。
【0053】
(実施例7)
流動性低下工程において、冷却装置により設定温度を13℃とし、塗工工程から硬化工程までの間における塗工膜の流動性を低下させること以外は、実施例5と同じ条件にした。この場合においても、破断が発生しなかった。流動性低下工程における重合性組成物の粘度を測定したところ4400mPa・sであった。そして、取得した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚は14μmであり、中央部の平均膜厚は73μmであった。
【0054】
(比較例3)
流動性低下工程を行わなかったこと(第1の紫外線照射装置により紫外線を照射しなかったこと)以外は、実施例5と同じ条件とした。この場合においては、破断が発生した。破断した紫外線硬化樹脂フィルムの膜厚を測定したところ、端部の最小膜厚が1μmであり、中央部の平均膜厚は72μmであった。
【0055】
実施例1〜7及び比較例1〜3の紫外線硬化樹脂フィルムの結果を、表1及び図6にまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
表1及び図6に示す比較例1及び2より、流動性低下工程を行わない場合、中央部の平均膜厚が44μm(比較例1)、112μm(比較例2)であるにもかかわらず、端部の膜厚が1μmとなる箇所があり、破断が発生している。これに対して、実施例1〜4より、塗工面の全面に紫外線を照射する流動性低下工程を行うと、端部の膜厚が4μm以上となって、破断が発生していない。これらのことから、流動性低下工程を行うことにより、端部の膜厚が4μm以上となって、破断の発生が抑制できたことがわかる。破断の原因としては、端部に膜厚が4μm未満の箇所があると、中央部の膜厚に関わらず、剥離の応力によってそこから割れが起こることが考えらえる。
【0058】
また、比較例2より、中央部の平均膜厚を112μmと厚くしたとしても、端部の膜厚は1μmとなって単純に厚くなるものではないことがわかる。このことから、端部の厚みを4μm以上にするためには、流動性低下工程が効果的といえる。
【0059】
さらに、比較例3及び実施例5〜7より、流動性低下工程としては、実施例5の塗工面の全面に紫外線を照射することだけでなく、実施例6の塗工面の端部のみに紫外線を照射することや、実施例7の塗工面の全面を冷却することも効果的であることがわかる。
【符号の説明】
【0060】
10 第1実施形態に係る製造ライン
11 繰出装置
12 塗工装置
13 ニップロール
14 第1の活性エネルギー線照射装置
15 第2の活性エネルギー線照射装置
16 巻取装置
17 ガイドロール
20 第2実施形態に係る製造ライン
24 冷却装置
F 活性エネルギー線硬化樹脂フィルム
L 積層体
S1 第1の支持フィルム
S1a、S1b 第1の支持フィルムの幅方向における端部
S2 第2の支持フィルム
S2a、S1b 第2の支持フィルムの幅方向における端部
W 塗工膜
Wa、Wb 塗工膜の幅方向における端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6