特開2019-111678(P2019-111678A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-111678(P2019-111678A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】筆記具の軸筒
(51)【国際特許分類】
   B43K 5/00 20060101AFI20190621BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20190621BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20190621BHJP
   B43K 8/00 20060101ALI20190621BHJP
   B43K 21/00 20060101ALI20190621BHJP
【FI】
   B43K5/00 100
   B43K3/00 X
   B43K7/00 100
   B43K8/00 100
   B43K21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-245188(P2017-245188)
(22)【出願日】2017年12月21日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 義明
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350GA03
2C350GA04
2C350KF01
2C350NA01
2C350NA02
2C350NC05
2C350NC13
2C350NC20
2C350NC42
2C350NE01
2C350NE08
2C353FE01
2C353MC04
(57)【要約】
【課題】筆記具の軸筒に用いた母材金属の結晶模様の質感を失うことなく、カラーバリエーションに富み、耐擦過性に優れた筆記具の軸筒を提供すること。
【解決手段】筆記具の軸筒の母材として結晶模様を有する金属を用い、その母材に、着色層、プライマー層、表面保護層を順次設けた筆記具の軸筒とした。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材金属の結晶模様を有する筆記具の軸筒において、着色層、プライマー層、表面保護層を順次設けたことを特徴とする筆記具の軸筒。
【請求項2】
前記母材金属が、チタンまたはチタン合金である請求項1に記載の筆記具の軸筒。
【請求項3】
前記表面保護層が耐擦過性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具の軸筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具の軸筒に関する。更に詳細には、美観に優れ、耐擦過性に優れた筆記具の軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具の表面を各種方法で加飾して、高級化案を醸し出したり、美観を高めたりしている筆記具が知られている。
一方、金属を再結晶温度以上に加熱をして、結晶模様を形成することが知られている。この方法で得られた金属は、その表面に結晶模様と微妙な凹凸による独特な光沢と肌触りを付与することができ、さらに、着色ができることから、各種装飾品などに用いられている(例えば特許文献1〜5)。しかしながらこれらの装飾品は、その表面が擦過に弱く、折角の美観を損ねてしまうなど十分満足するものではなかった。また、これらを筆記具の軸筒として用いることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−81083号公報
【特許文献2】実開昭62−162259号公報
【特許文献3】特開昭50−123537号公報
【特許文献4】特開2014−128434号公報
【特許文献5】特開2017−121944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筆記具の軸筒に用いた母材金属の結晶模様の質感を失うことなく、カラーバリエーションに富み、耐擦過性に優れた筆記具の軸筒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筆記具の軸筒の母材として特定の金属を用い、その母材に着色層、プライマー層、表面保護層を設けることなどにより、前記課題が解決された。
すなわち、本発明は、
「1.母材金属の結晶模様を有する筆記具の軸筒において、着色層、プライマー層、表面保護層を順次設けたことを特徴とする筆記具の軸筒。
2.前記母材金属が、チタンまたはチタン合金である第1項に記載の筆記具の軸筒。
3.前記表面保護層が耐擦過性を有することを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具の軸筒。」に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着色層を設けたことによりカラーバリエーションに富んだ筆記具の軸筒とすることができる。また、プライマー層を設けたことにより着色層と表面保護層の密着性が向上し、表面保護層が簡単に剥がれることがない。さらに、光沢や肌触りなど質感を失うことなく、擦過に対しても耐性を有しているなど、優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の筆記具の軸筒は、母材金属の結晶模様を有し、その上に着色層、プライマー層、表面保護層を順次設けたことが、ひとつの特徴である。
【0008】
本発明の筆記具の軸筒に母材金属の結晶模様を発現させるには、母材金属を再結晶温度以上に加熱処理をし、結晶を成長させることにより得ることができる。この方法で得られた軸筒は、再結晶温度以上に加熱したことにより、歪が無くなるため、保存性が向上するとともに、加工する際に寸法安定性が向上する。
本発明に用いる筆記具の軸筒に用いる金属としては、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、チタン、それぞれの合金などが挙げられる。中でも、チタン、チタン合金は、再結晶により結晶模様を形成した後の後加工を必要とせず、また、硬いため落とした際にも変形しにくいなど、耐衝撃性が優れているため好ましい。また、チタンの有している特性から、軽量で酸や食塩水などに対して高い耐蝕性を持ち、金属アレルギーをおこさないので直接人体が接する筆記具用の母材として特に好ましい。
【0009】
本発明の筆記具の軸筒に用いる着色層としては、一般的な塗料や電着法などの各種塗装、乾式や湿式法によるめっき、陽極酸化などにより設けることができるが、母材金属の結晶模様や、肌さわりなどの質感を損なうことなく、色も多種多様に設けることができ、目的とする色を得やすいことから、陽極酸化により着色層を設けることが好ましい。
【0010】
本発明による筆記具の軸筒は、着色層の上にプライマー層を設けてなるが、後述する表面保護層の密着性を向上し、母材金属が着色された状態でその質感を失うことなく、表面保護層を設けることができる。従来筆記具の表面保護層は、その厚みが厚く、母材金属の結晶模様や肌さわりなどの質感を失う恐れがあった。厚みを薄くすることで、その質感を失うことなく設ける事ができるが、着色層との密着性が弱いため、筆記具として把持した際や、表面の擦過により表面保護層が剥がれる恐れがあった。本発明に用いるプライマー層を設けることにより、着色層とプライマー層、プライマー層と表面保護層の密着性を向上でき、また、プライマー層、表面保護層の厚みを薄くすることができるため、母材金属の結晶模様や肌ざわりなどの質感や、着色層の色を変化させることがなく、耐擦過性を付与することができる。
本発明に用いるプライマー層としては、着色層と、表面保護層と密着性を持たすことができ、母材金属の結晶模様や肌触りなどの質感や着色層の色を変化させることがなければ良いが、樹脂などが用いられる。具体的には、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。これらのうち、シリコーン系樹脂は、層間での密着効果が、樹脂のもつ官能基の影響などにより、高くなるため好ましい。
【0011】
前記プライマー層としては、その厚さが、10〜500nmであると好ましい。より好ましくは、50〜300nmであり、80〜250nmであると特に好ましい。この範囲にあると、母材金属の結晶模様や肌触りなどの質感を変化することなく、着色層と、表面保護層と、の密着性を向上することができるためである。
【0012】
前記プライマー層を設ける方法としては、スプレーなどの吹き付けや、刷毛塗り、スピンコート、ディップ法などの方法で設けることができる。
【0013】
本発明に用いる表面保護層は、母材金属が着色された状態でその質感を失うことなく、プライマー層と密着することができれば良いが、ガラスなどの無機材や樹脂などが用いられる。具体的には、樹脂としては、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。これらのうち、フッ素樹脂は、耐擦過性を向上することができるため、好ましい。
【0014】
前記表面保護層は、その厚さが、1〜500nmであると好ましい。より好ましくは、5〜100nmであり、10〜50nmであると特に好ましい。この範囲にあると、プライマー層との密着性を向上することができ、耐擦過性などの表面保護層として機能するほか、母材金属が着色された状態でその質感を失うことがないためである。
【0015】
本発明の筆記具の軸筒は、一端又は両端にペン先を備えたキャップ式筆記具や、押圧出没式、回転繰り出し式、スライドレバー式、サイドノック式などの出没式筆記具形態、複数の筆記ユニットを収容する複合筆記具の軸筒として用いることができる。また、軸筒だけでなく、筆記具を構成する部材、例えば、キャップ、口金、クリップなどに同じ処理、すなわち、母材金属に結晶模様を設け、その上に着色層、プライマー層、表面保護層順次設けて用いることもできる。
【0016】
本発明の筆記具の軸筒の製造方法の一例を挙げると以下の通りである。円筒形状に加工をした母材金属を、再結晶温度以上で加熱処理を行い、結晶模様を形成する工程と、陽極酸化などにより着色層を形成する工程と、着色層の上にプライマー層をディッピングなどにより設ける工程と、プライマー層の上に表面保護層を設ける工程とを順次行うことにより、得ることができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
(筆記具の軸筒の製造)
母材金属の、外径13mm、厚さ1mm、長さ150mmのパイプ状のチタン材を、1000℃で5時間加熱した後冷却し、チタン材を再結晶温度以上に加熱し、結晶模様を形成した。この母材を陽極酸化することで、着色層を設けた。着色層の上にシリコーン系樹脂を用い、ディッピングした後、常温で1時間乾燥硬化して200nmのプライマー層を設けた。このプライマー層上に、フッ素樹脂を用いディッピングした後、120℃で3時間乾燥硬化して40nmの表面保護層を設け、筆記具の軸筒を得た。
【0018】
(比較例1)
プライマー層、表面保護層を設けなかった以外は、実施例1と同じ方法で筆記具の軸筒を得た。
【0019】
(比較例2)
プライマー層を設けなかった以外は、実施例1と同じ方法で筆記具の軸筒を得た。
【0020】
(比較例3)
表面保護層としてアクリル樹脂を用いてスプレーした後、150℃で1時間乾燥硬化して10μm設けた以外は、比較例2と同じ方法で筆記具の軸筒を得た。
【0021】
実施例1、比較例1〜3で得た筆記具の軸筒について、下記要領にて評価を行った。結果を(表1)に示す。
【0022】
【表1】

質感:筆記具の軸筒を目視により評価した。
○ :結晶模様が綺麗に現れており、微妙な凹凸による独特な光沢が得られている。
△ :若干光沢が弱くなっているが、結晶模様が綺麗に現れている。
× :光沢がなくなっており、結晶模様も見えづらくなっている。
発色性:筆記具の軸筒の着色層による発色を目視により評価した。
○ :結晶模様が綺麗に現れており、着色した色の独特な光沢が得られている。
△ :着色層の影響で若干光沢が弱くなっているが、結晶模様が綺麗に現れている。
× :着色層の影響で光沢がなくなっており、結晶模様も見えづらくなっている。
色調変化:筆記具の軸筒を目視により評価した。
○ :プライマー層、表面保護層の影響がなく、結晶模様が綺麗に現れており、着色した色の独特な光沢が得られている。
△ :プライマー層、表面保護層の影響により、着色層の色調が若干変わっているが、結晶模様は綺麗に確認できる。
× :プライマー層、表面保護層の影響により、着色層の色調が変わっており、光沢もなくなっており、結晶模様も見えづらくなっている。
耐擦過性:筆記具の軸筒を、学振型摩擦堅牢度試験機(テスター産業社製)を用いて、荷重200g下・綿布にて500往復擦り、擦った後の状態を初期と比べて評価した
○ :筆記具の軸筒に傷などが見られず、初期と同じ状態を保っている。
△ :筆記具の軸筒に若干傷が見られるが、着色した色の独特な光沢、結晶模様は見られる。
× :擦過により、傷が見られ、着色層の色や結晶模様が消えてしまっている。
【0023】
実施例1の筆記具の軸筒は、質感、発色性が良好で、色調の変化もなく、耐擦過性に優れていた。一方、比較例1、2の筆記具の軸筒は、質感、発色性が良好で、色調の変化はなかったが、耐擦過性が劣っており、擦過後は、結晶模様が見えづらくなり、着色した色の独特な光沢が失われてしまっていた。比較例3の筆記具の軸筒は、耐擦過性は有していたが、質感が失われ、色調も変化しており、独特の光沢、肌触りが失われ、目的とする色も得られておらず、筆記具の軸筒として、劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の筆記具の軸筒は、万年筆、ボールペン、シャープペンシル、マーカー類、など出没式、繰り出し式、キャップ式などの各種筆記具の軸筒として利用可能である。