【解決手段】開口端部にカール部を有するボトル缶の前記カール部に装着されるライナー付きキャップであって、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、天面部の内面に設けられ、天面部の内面に接触する摺動層と、カール部に接触する密封層とが積層されてなるライナーとを有し、ライナーの密封層の外周縁部に、カール部に装着されてライナーの密封層がカール部の天頂部に圧接されたときに、カール部の外周側下部に密接可能な突条部が周方向に沿って設けられている。
開口端部にカール部を有するボトル缶の前記カール部に装着されるライナー付きキャップであって、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けられ、前記天面部の内面に接触する摺動層と、前記カール部に接触する密封層とが積層されてなるライナーとを有し、前記ライナーの前記密封層の外周縁部に、前記カール部に装着されて前記ライナーの前記密封層が前記カール部の天頂部に圧接されたときに、前記カール部の外周側下部に密接可能な突条部が周方向に沿って設けられていることを特徴とするライナー付きキャップ。
開口端部にカール部を有するボトル缶の前記カール部に請求項1記載のキャップが装着されてなり、前記カール部の外周側下部に前記キャップの前記突条部が密接していることを特徴とするキャップ付きボトル缶。
前記ライナーは、前記カール部の天頂部と前記カール部の外周側下部との密接部位の間に前記カール部の外周面から離間して隙間を形成していることを特徴とする請求項2記載のキャップ付きボトル缶。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填される容器として、スチールやアルミニウム合金等からなるボトル形状の缶(ボトル缶)の開口部に金属製キャップを装着し、キャップ内面のライナーによって内部を密封する構造のものが知られている。
例えば、特許文献1に開示のボトル缶(ボトル型缶)では、開口部の切断端部を外側に二重以上に折り畳みながら巻き込むようにして外巻きのカール部が形成されており、そのカール部にキャップが装着されている。この場合、カール部の頂部がライナー(シール部)に食い込むように密接している。
【0003】
一方、特許文献2に開示のボトル缶(缶本体)では、開口部の切断端部を上端で折り返してなるカール状部分の外周面に、半径方向外方から潰し加工が施されて缶軸方向に沿う円筒面状の平面部を有するカール部が形成されており、キャップ装着時に、キャップ上端の側面部をカシメて、キャップ天面部の外周部から側面部にかけて段部を形成することにより、ライナー(パッキン)をカール部の天頂部から平面部にかけて密接させることが開示されている。
また、特許文献3に開示のボトル缶でも、カール部は、外周面に缶軸方向に沿う円筒面状の平面部が形成されており、ライナーの密封層がカール部の天頂部から平面部にかけて圧接されている。また、この特許文献3では、キャップのライナーが摺動層と密封層との二層構造とされており、ボトル缶のカール部にキャップが装着されると、ライナーの密封層がカール部に圧接されるようになっている。
これら特許文献2及び特許文献3記載のボトル缶では、ライナーがカール部の天頂部から外周面の平面部にかけた広い範囲で密接するとともに、カール部の天頂部と外周面の平面部との間の屈曲部がライナーに食い込むため、高い密封性を確保することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のボトル缶において、コーヒー等の飲料を充填する場合に、100℃を超える高温で高圧のレトルト殺菌がなされる場合がある。このレトルト殺菌が施されるボトル缶においては、ライナーが変性しやすい為、密封性や落下強度、低開栓トルクを実現することが難しい。また、特に口径が大きい(例えばネジ外径が32mm〜40mm)のボトル缶では、炭酸飲料を充填する場合、缶を落下させた時に、缶内圧が急上昇するので、高い落下強度特性が必要である。
特許文献1や2に記載のボトル缶では、レトルト殺菌された場合に、十分な落下強度を得られにくい。また、開栓トルクも大きくなる傾向にある。
特許文献3に開示のボトル缶では、レトルト殺菌された場合でも、十分な落下強度と低い開栓トルクとを達成しているが、炭酸飲料用には不十分である。
炭酸飲料が充填される場合、自動販売機で缶が落下した際に内圧が急上昇するため、さらなる落下強度の向上が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、レトルト殺菌される場合だけでなく、炭酸飲料用としても優れた密封性を維持し、かつ低い開栓トルクとすることができるライナー付きキャップ及びキャップ付きボトル缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のライナー付きキャップは、開口端部にカール部を有するボトル缶の前記カール部に装着されるライナー付きキャップであって、天面部と該天面部の周縁から略垂下されてなる円筒部とを備えるキャップ本体と、前記天面部の内面に設けられ、前記天面部の内面に接触する摺動層と、前記カール部に接触する密封層とが積層されてなるライナーとを有し、前記ライナーの前記密封層の外周縁部に、前記カール部に装着されて前記ライナーの前記密封層が前記カール部の天頂部に圧接されたときに、前記カール部の外周側下部に密接可能な突条部が周方向に沿って設けられている。
【0008】
このライナー付きキャップにおいては、ボトル缶のカール部に装着されたときに、カール部の天頂部のみならず、カール部の外周側下部にも突条部が密接するので、キャップに内圧が作用する際には、キャップの突条部がカール部の外周側下部表面に、より強く密接することになり、高い密封性を維持することができる。
密封性が高いキャップは一般に開栓のためのトルクが大きくなって開けづらくなるが、キャップ本体の天面部に接する面が摺動層によって形成され、開栓時にキャップ本体とライナーとが摺動するので、密封性が高いにもかかわらず開栓も容易である。
また、レトルト殺菌時に密封層は、軟化するのでボトル缶のカール部を食い込ませ得る柔軟性を有する。一方、内容物が炭酸飲料の場合、熱殺菌工程がないので、カール部を強固に密封層に食い込ませるのが難しい。そこで本発明では、密封層に突条部を形成しており、キャップ天面の外周端を絞り成形することにより、突条部がカール部の外周側下部まで到達するので、高い面圧が得られ、落下強度特性が飛躍的に向上する。
【0009】
本発明のキャップ付きボトル缶は、開口端部にカール部を有するボトル缶の前記カール部に前記キャップが装着されてなり、前記カール部の外周側下部に前記キャップの突条部が密接している。
【0010】
本発明のキャップ付きボトル缶の好適な実施態様として、前記ライナーは、前記カール部の天頂部から前記カール部の高さの3/4までの範囲にわたって当接してもよい。
カール部の天頂部からカール部の外周側の広い範囲にライナーが密接することにより、密封性をより高めることができる。
【0011】
本発明のキャップ付きボトル缶の好適な実施態様として、前記ライナーは、前記カール部の天頂部と前記カール部の外周側下部との密接部位の間に前記カール部の外周面から離間して隙間を形成していてもよい。
カール部の天頂部からカール部の外周側下部までの広い範囲の全面にライナーが密接する場合に比べて、カール部の外周側下部への接触面積が小さくなる分、キャップの絞り量を増やして突条部の押圧力を高めることができる。
また、本発明のキャップ付きボトル缶は陽圧缶に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キャップの天面部が内圧で持ち上がるように膨出する場合でも、突条部がカール部の外周側下部に強く密接して優れた密封性を維持することができ、また、摺動層を有するので、開栓トルクも低くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るライナー付きキャップ及びキャップ付きボトル缶の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態のライナー付きキャップ1は、
図1に示すように、例えば直径38mm口径(ボトル側ねじ部35の外径が36mm〜38mm)のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶3の口金部33に装着されて密栓するピルファープルーフキャップとなるものである。
このライナー付きキャップ1は、アルミニウム又はアルミニウム合金板材をカップ状に成形することにより、天面部4とその天面部4の周縁から略垂下する円筒部5とを形成してなるキャップ本体6と、そのキャップ本体6の内面に設けたライナー2とを有する。
【0015】
キャップ本体6の円筒部5は、その下端部に周方向に断続的に形成されたスリット7を介して上下に分割された筒上部8と筒下部9とを有し、隣接するスリット7間に形成される複数のブリッジ7aによって筒上部8と筒下部9とを連結した形状とされている。
このキャップ本体6に挿入されるライナー2は、キャップ本体6の天面部4の内面と摺動する摺動層21と、この摺動層21に積層された密封層22との二層構造とされている。摺動層21は、密封層22よりも高い硬度を有し、ポリプロピレン樹脂等によりほぼ均一厚さの円板状に形成されている。密封層22は、柔軟なエラストマー樹脂等で形成され、ボトル缶3の口金部33に装着されたときに後述のカール部37に当接してボトル缶3内部を密封するシール機能を有している。
【0016】
また、この密封層22は、実施形態では摺動層21よりも外径がわずかに小さく形成されており、比較的薄肉の中央部23に対して、外周部に厚肉のシール部24が周方向に沿う環状に形成されている。例えば、摺動層21は厚み0.2mm〜0.6mmに形成され、密封層22のシール部24は厚み0.6mm〜0.9mmに形成される。摺動層21より密封層22を厚く形成することが好ましい。また、シール部24の外周縁部に、シール部24の表面からさらに立ち上がるように突条部25が周方向に沿って形成されている。
この突条部25は、突出方向の先端に向かうにしたがってわずかに拡径するように、缶軸方向に対して傾斜して設けられている。その内周の傾斜面25aとシール部24の表面とのなす角度θは55°〜85°が好適である。また、突条部25の突出高さH1は、後述するようにボトル缶3のカール部37にキャップ1を装着したときに、カール部37の外周側下部に密接し得る寸法とされ、例えば1.3mm〜2.5mmに形成される。
【0017】
なお、キャップ1の円筒部5の天面部4近傍には、
図1に示すように、複数のナール凹部11と、周方向にスリット状に開口形成され開栓時に内圧を開放する複数のベントホール12とが円筒部5の周方向に沿って例えば交互に並んで設けられている。ベントホール12は、上側開口端部12aと下側開口端部12bとの間に形成されており、これら上側開口端部12aと下側開口端部12bとは円筒部5の半径方向内方に向けて屈曲形成されている。
【0018】
ナール凹部11、ベントホール12の上側開口端部12a及び下側開口端部12bは、円筒部5の外周面において凹形状をなしており、これらが間隔をあけて配置されることにより、円筒部5の外周面に凹凸表面が形成され、開栓時にライナー付きキャップ1を保持する指との間の摩擦抵抗を増大させることができる。これにより、手を滑らせることなくライナー付きキャップ1を把持することが可能となり、開栓を容易にしている。
また、ベントホール12の上側開口端部12aの先端は、
図2及び
図3に示すように、挿入された際のライナー2の外周縁よりも半径方向内方に位置されているとともに、下側開口端部12bの先端と半径方向で同位置又はその先端よりもわずかに半径方向内方に位置している。
【0019】
なお、キャップ本体6へのライナー2の取り付けは、キャップ本体6を開口端部が上向きとなるように載置した状態で、別に作製したライナー2を上方からキャップ本体6内に挿入し、円筒部5の半径方向内方に突出しているベントホール12の下側開口端部12b及び上側開口端部12aを乗り越えて、天面部4と上側開口端部12aとの間にライナー2を配置することにより行われる。あるいは、開口端部が上向きとなるように載置した状態のキャップ本体6内に溶融状態の合成樹脂球を落とし込み、キャップ本体6内でモールド成形することにより、ライナー2を形成することも可能である。キャップ本体6内でモールド成形する場合、摺動層21は別にシートから形成して、キャップ本体6内に挿入し、その摺動層21の上に密封層22をモールド成形する、あるいは、摺動層21もキャップ本体6内でモールド成形し、その上に重ねて密封層22をモールド成形する、等の方法を採用することができる。
【0020】
このうち、摺動層21をモールド成形によって形成する場合、ライナー付きキャップ1をボトル缶3に装着した後の開栓時に、摺動層21がキャップ本体6との間で摺動し得るように、キャップ本体6の内面塗料としては、摺動層21を構成するポリプロピレン樹脂等がモールド時に接着しないエポキシフェノール系樹脂を用いたものが好ましく、これにオリーブ油等のグリセリン・脂肪酸エステルを含むものを用いることができる。ポリオレフィン系樹脂を含む塗料の場合は、摺動層21が強固に固着しない程度に配合を調整するとよい。また、キャップ本体6の内面にシリコーンオイルを塗布することにより、摺動層21が天面に接着することが防止され、ライナー2のガスバリア性も向上する。この場合、キャップ本体6の内面塗料にポリオレフィンワックスを添加することができ、ボトル側ねじ部35との摩擦を減らしてトルクを下げることができる。
【0021】
一方、ライナー付きキャップ1が装着されるボトル缶3は、ストレートの円筒状の胴部31の上に縮径部32が形成され、その縮径部32の上方に口金部33が形成されている。その口金部33には、その下端部に半径方向外方に突出する膨出部34が形成され、その上方にボトル側ねじ部35が形成され、ボトル側ねじ部35の上方に、上方に向かうにしたがって漸次縮径するテーパ部36が形成され、そのテーパ部36の上端に、切断端部を缶軸方向に折り返してなるカール部37が形成されている。
【0022】
このボトル缶3を製造するには、まず、アルミニウム板材を打ち抜いて絞り加工することにより、
図6(a)に示すように比較的大径で浅いカップ51を成形した後、このカップ51に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて、
図6(b)に示すように所定高さの筒体52を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える。このDI加工により、筒体52の底部は最終のボトル缶3としての底部3aの形状に成形される。
【0023】
次いで、筒体52の開口端部を縮径加工(ネックイン加工)することにより、胴部31及び縮径部32を形成するとともに、縮径部32の上方で缶軸方向に延びる円筒部54を形成した後、その円筒部54を再度拡径及び縮径することにより、ねじ加工する前の筒状部55を形成し、この筒状部55にねじ加工を施してボトル側ねじ部35を形成する。このボトル側ねじ部35の上方には、テーパ部36を介して開口筒部57が形成されており、この開口筒部57を加工してカール部37を形成する。
【0024】
この実施形態のカール部37は、
図4に示すように、缶軸方向に沿う縦断面において、テーパ部36の上端から半径方向外方に向けて折り返されながら半径方向内方に向けて凸となるように屈曲する内周側屈曲部41と、内周側屈曲部41の上端から缶軸方向の下方に向けて折り返されながら缶軸方向の先端方向に向けて凸となるように屈曲する天頂屈曲部42と、天頂屈曲部42の外周端(折り返し端)から缶軸方向下方に延びるほぼ円筒状の外周筒部43と、外周筒部43の下端から屈曲しながら半径方向内方に向けて延びるカール端部44とを備えている。
【0025】
このカール部37は、開口筒部57(
図7(b)参照)の切断端部を折り返すように丸めた後、その外周部を半径方向内方に向けて押し潰すように加工して形成されており、このため、外周側に円筒状の外周筒部43が形成されている。この外周筒部43と天頂屈曲部42との間にはわずかな曲率半径の円弧接続部45が形成される。この場合、外周筒部43は、缶軸方向にほぼ平坦な円筒面を形成する場合だけでなく、曲率半径が8mm程度の、ほぼ平坦とみなしてよい程度の大きな曲率半径の湾曲面に形成されていてもよい。また、カール端部44は、その外面の曲率半径は0.2mm〜1.2mm程度である。この場合、カール端部44は全体に屈曲した円弧面状に形成されているが、缶軸方向の下方に向かうにしたがって漸次半径方向内方に傾斜するストレートの傾斜面状に形成されたものでもよく、カール端部44と外周筒部43との間にわずかな曲率半径の円弧接続部が形成される形状としてもよい。
【0026】
このボトル缶3の口金部33にライナー付きキャップ1を装着する場合、例えば、
図8に示すようなキャッピングヘッド70を複数備えるキャッピング装置が用いられる。
このキャッピングヘッド70は、キャップ押さえ61を備えたプレッシャーブロック62と、ねじ部成形ロールとしての第1ロール63と、ピルファープルーフロールとしての第2ロール64とを備えている。プレッシャーブロック62は下端部が筒状に形成されており、その内側に配置されるキャップ押さえ61との間で缶軸方向に相対移動可能であり、キャップ押さえ61との間にばね65が設けられている。また、第1ロール63及び第2ロール64はプレッシャーブロック62の周囲を旋回可能かつ缶軸方向に移動可能に支持されている。
【0027】
そして、
図5に示すように、ボトル缶3の口金部33にキャップ1を被せた状態でキャップ押さえ61がキャップ1の天面部4を押さえ、その状態でプレッシャーブロック62が天面部4の外周部を絞り成形する。このようにキャップ装着時にプレッシャーブロック62でキャップ1が絞り加工されることにより、キャップ1の天面部4の外周部から円筒部5の上端部にかけた部分が縮径され、その部分のキャップ1の外面に絞り部4aが環状に形成される。そして、キャップ1の内側においては、ライナー2の密封層22におけるシール部24がカール部37の天頂屈曲部42に押し付けられるとともに、天頂屈曲部42よりも半径方向外側の部分が円弧接続部45から外周筒部43の外面形状に沿って下方に折り曲げられ、その折り曲げられた部分が半径方向内方に押し付けられる。これにより、シール部24は、カール部37の天頂屈曲部42から外周筒部43の上端部の表面にかけて密着する。また、シール部24の外周部に設けられていた突条部25の先端も、絞り部4aにおいてキャップ1が縮径することによって半径方向内方に押圧され、カール部37のカール端部44の外周面に圧接する。また、この
図5に示すように、ライナー2は、カール部37の円弧接続部45とキャップ本体6との間で最も圧縮させられ、その厚みtが小さくなる。
【0028】
このプレッシャーブロック62による絞り加工が施された後、第1ロール63によりキャップ1の筒上部8にボトル側ねじ部35に沿ってキャップ側ねじ部38を成形するとともに、第2ロール64により筒下部9を膨出部15に巻き込んで固定する。これにより、ライナー2がカール部37に圧接し、キャップ1が口金部33に装着され、ボトル缶3を密封状態としてキャップ付きボトル缶10となる。キャップ1天面の絞り深さSは1.5mm〜2.0mmが好ましい。
【0029】
このようにして密封されたキャップ付きボトル缶10はレトルト殺菌が施されるコーヒー等の飲料を内容物とする場合は、液体窒素が充填され陽圧缶となる。また、炭酸飲料を内容物とする陽圧缶として用いる場合にも好適である。すなわち、陽圧缶としてボトル缶3に作用する内圧は、キャップ1の天面部4に対しては缶軸方向の上方に持ち上げるように作用し、それに伴い、シール部24の内周部分においてはカール部37の内周側屈曲部41への押圧力が小さくなる方向に作用するが、シール部24の突条部25においては、最も圧縮されている付近を中心とするモーメントにより、逆にカール端部44への押圧力を大きくする方向に作用する。このため、カール部37の天頂屈曲部42から外周筒部43の上部にかけた部分とカール端部44においてライナー2のシール部24がカール部37に圧接し、高い密封性を維持することができる。
【0030】
また、レトルト殺菌の場合は100℃を超える温度で熱処理されることにより、密封層22が軟化し、カール部37により大きく食い込んで密接するので、密封性が高く、落下強度も優れる。内容物が炭酸飲料の場合は、熱殺菌されないため、カール部37による密封層22のシール部24への食い込みが不十分である。そこで、カール部37に密接する範囲をカール部37の天頂屈曲部42から外周筒部43の上部までの範囲に加えて、カール端部44においてもシール部24の突条部25を圧接させることにより、広い範囲でカール部37に圧接して密封性を高めている。
一方、カール部37とキャップ1の密封層22とが広い範囲で密接していると、開栓トルクが高くなるおそれがあるが、本実施形態のキャップ1は、キャップ本体6に摺動層21が接しているので、開栓時にキャップ本体6と摺動層21とが摺動することにより、開栓トルクの増大を抑制することができる。
【0031】
前述の実施形態では、ライナー2のシール部24の外周縁部に設けた突条部25をカール部37のカール端部44に密接するようにし、カール部37の天頂屈曲部42から外周筒部43の上部までの密接部分と、突条部25による密接部分との間が離間し、両密接部位の間では、カール部37とシール部24との間に隙間gが形成されている(
図5参照)。このため、突条部25とカール部37との接触面積が小さくなっており、突条部25によるカール部37への押圧力を高めることができる。
【0032】
以上の第1実施形態に対して、
図9及び
図10に示す第2実施形態、
図11及び
図12に示す第3実施形態、
図13に示す第4実施形態としてもよい。
第2実施形態では、キャップ100のライナー2における密封層22に、シール部24の外周縁から缶軸を通る縦断面で三角形状をなす突条部27が設けられている。この突条部27は、第1実施形態の突条部25に比べて突出高さH2が高く、また、傾斜面27aのシール部24表面に対する角度θも大きく形成されている。この角度θは、60°〜90°が好適である。また、突条部27の先端から摺動層21表面までの外周面も、わずかではあるが、突出方向の先端に向かうにしたがって漸次拡径するように傾斜している。突条部27の突出高さH2は1.5mm〜2.7mmが好ましい。
【0033】
そして、このキャップ100をボトル缶3のカール部37に装着したキャップ付きボトル缶110においては、シール部24の外周部から突条部27の傾斜面27aの全体がカール部37に圧接するようになっている。この場合、カール部37に密接するシール部24の範囲は、カール部37の天頂屈曲部42から外周筒部43を経由してカール端部44の下部屈曲部45付近にまで到達し、その範囲で隙間なく密接する。この実施形態では、ライナー2のカール部37への密接範囲は、缶軸方向に沿う長さLで捉えると、カール部37の高さH(
図4参照)の3/4以上の範囲に及んでいる。また、本実施形態では、突条部27はカール端部44の先端までには到達しないが、カール端部44の基端をわずかに超えた位置までの範囲に当接している。
この実施形態のキャップ付きボトル缶110では、ライナー2のシール部24がカール部37に広い範囲で密接して、優れた密封性を発揮することができ、また、摺動層21が設けられていることにより、開栓トルクも低くすることができる。
【0034】
図11及び
図12に示す第3実施形態のキャップ120では、
図9及び
図10に示す第2実施形態のキャップ100のように、キャップ120のライナー2における密封層22に、シール部24の外周縁から缶軸を通る縦断面で三角形状をなす突条部28が設けられているが、この突条部28は、シール部24の外周縁の直径が第2実施形態のものより大きく、かつ、突条部28の突出高さH3も大きく形成されている。この場合、突条部28の内周側の傾斜面28aの角度θ2は第2実施形態のものと同じである。突出高さH3としては1.7mm〜2.9mmが好ましい。突条部28の先端は、凸円弧面状に形成される。
【0035】
そして、このキャップ120をボトル缶3のカール部37に装着したキャップ付きボトル缶130においては、シール部24の外周部から突条部28の傾斜面28aの全体がカール端部44の先端まで含めたカール部37の外周面の全面に圧接している。
これにより、密封性をより向上させることができる。
【0036】
また、
図13に示す第4実施形態のキャップ付きボトル缶150では、キャップ140の突条部29を第3実施形態のものより若干大きくして、ボトル缶3のカール部37に装着したときに、シール部24の外周部から突条部29の傾斜面29aの全体がカール端部44の先端まで含めたカール部37の外周面の全面に圧接するとともに、突条部29の先端がボトル缶3のテーパ部36の外面に当接するようにしている。この場合、突条部29の先端は凸円弧面状でなくても、鋭利な先端としてもよい。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
カール部37として、カール端部44が缶軸方向の下方に向けて設けられているものを例示したが、本発明のキャップが装着されるボトル缶のカール部としては、特許文献1記載のように開口部の切断端部を二重以上に折り畳んで巻き込むようにした外巻きのカール部、開口部の切断端部を上端で丸く折り返して縦断面を円筒状に形成したカール部、などにも適用することができる。
その場合、カール部の外周側下部は、缶軸方向に対して斜め下向きに凸となる屈曲部(特許文献1記載のカール部における外周下部の屈曲部)を介してほぼ傾斜面状のカール端部が連続するもの、あるいは、上端で折り返されて下向きとなった切断端部により形成され、この屈曲部又は切断端部もしくは切断端部の近傍にライナーの突条部が密接する。カール部に下部屈曲部が形成されている場合は、ライナーの突条部は、少なくとも下部屈曲部の上端(外周筒部との接続端)を超える位置までは密接しているとよい。
また、カール部の外周筒部は、実施形態では、ほぼ缶軸方向に沿う円筒状に形成されているが、必ずしもストレートの筒状でなくてもよく、半径方向に緩やかに膨出する凸面に形成されていてもよい。また、缶軸方向の先端からから缶底方向に向かうにしたがって漸次縮径する、あるいは、漸次拡径するように、缶軸方向に対してわずかに傾斜していてもよい。
【実施例】
【0038】
直径38mm口径(公称径)のアルミニウム又はアルミニウム合金製(金属製)のボトル缶に、缶内圧が室温で0.9KPaとなるようにガス水を充填し、その口金部に、
図2に示す第1実施形態のライナー付きキャップ(実施例1)、及び
図9及び
図10に示す第2実施形態のライナー付きキャップ(実施例2)を装着した。
また、比較例として、
図14(a)(b)(c)で示す各キャップ101,102,103を装着したボトル缶も作製した。ボトル缶のカール部104,106は
図14(a)(c)では、前述した実施形態と同様の形状であるが、
図14(b)では、特許文献1記載のように二重に折り畳んだカール部105とした。これら比較例のキャップ101〜103において、ライナー107,108,109はいずれもキャップ本体内にモールド成形することによって形成されている。また、
図14(a)、(b)のキャップ101,103は、カール部104,106の内側に配置される突条110,112と、カール部104,106の外側に配置される突条111,113とが形成されている。
図14(c)のキャップ103は、カール部106の内側に配置される突条114のみが形成されているが、カール部106には接触していない。
【0039】
ボトル缶の概略的寸法は以下の通りであった。
・ボトル缶のねじ山外径:36mm〜38mm
・カール部外径:33.0mm〜33.8mm
・スカート部(膨出部34)外径:37mm〜39mm
・缶高さ:128mm〜132mm
・絞り部(4a)の深さ:1.4mm〜1.8mm
・ねじ山高さ:0.65mm(10缶を周方向の3箇所で測定した平均値)
・首部(膨出部34の下方部分)肉厚:0.300mm〜0.34mm
・壁部(胴部31の最薄部)肉厚:0.120mm〜0.130mm
・缶重量:19.5g〜20.5g
【0040】
キャップの仕様は以下の通りであった。
・キャップ外径38mm
・内外面塗装した厚さ0.25mmのアルミニウム合金製のキャップ本体
・摺動層は、厚さ0.5mmのポリプロピレン製のシート樹脂をキャップ本体に挿入し、密封層はシール部24の厚さ0.8mm、突条部25の突出高さH1の寸法は、2.4mmとした。
【0041】
これらキャップ付きボトル缶について、充填後、1日放置してから、開栓トルクの測定及び傾斜落下試験を実施した。
開栓トルクは、開栓時にキャップが回り始める際のトルク(第1トルク)と、その後にブリッジが破断される際のトルク(第2トルク)を室温で10缶測定し、平均値を求めた。
傾斜落下試験は、水平面から10°傾けた鋼板の上に、各種の高さからキャップを下向きにしてボトル缶を10缶落下させ、漏れの有無を確認した。漏れの有無は、落下試験の前後の重量を測定し、その差が20mg以上となった場合を漏れ缶とし、その数を表に記載した。
これらの結果を表1に示す。表中、「−」は実施しなかったことを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、実施例のキャップ付きボトル缶は、開栓トルクが低く、かつ、80cmの高さの傾斜落下試験でも漏れはなかった。