(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-112275(P2019-112275A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20190621BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20190621BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20190621BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20190621BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20190621BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20190621BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20190621BHJP
【FI】
C01G25/00
C08K3/28
C08L101/00
C09D201/00
C09D7/12
C09D5/00 Z
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-248647(P2017-248647)
(22)【出願日】2017年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】小西 隆史
(72)【発明者】
【氏名】影山 謙介
【テーマコード(参考)】
2H291
4G048
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2H291FA14Y
2H291FB04
2H291FB12
2H291FB14
2H291FB21
2H291FC10
2H291FC37
2H291LA03
4G048AA01
4G048AB02
4G048AC05
4G048AD02
4G048AE05
4J002AA001
4J002BG021
4J002DF016
4J002FD096
4J002GH00
4J002GP03
4J038CG001
4J038HA066
4J038HA216
4J038HA306
4J038JA62
4J038JB01
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA12
4J038KA20
4J038MA09
4J038NA03
4J038NA04
4J038NA19
4J038PA18
4J038PB08
4J038PC03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】黒色顔料として紫外線透過性に優れて高解像度のパターニング特性を有する黒色遮光膜を形成するとともに形成した黒色遮光膜が高い遮光性能と高い耐候性を有する黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法を提供する。
【解決手段】BET法により測定される比表面積が20〜90m
2/gであって、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する黒色遮光膜形成用粉末である。マグネシウムを含有するとき、マグネシウムの含有割合が黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%であり、アルミニウムを含有するとき、アルミニウムの含有割合が黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法により測定される比表面積が20〜90m2/gであって、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する黒色遮光膜形成用粉末であって、
前記マグネシウムを含有するとき、前記マグネシウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%であり、前記アルミニウムを含有するとき、前記アルミニウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%であることを特徴とする黒色遮光膜形成用粉末。
【請求項2】
二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末又は窒化マグネシウムと、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末とを、前記金属マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して25〜150質量%、前記酸化マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して15〜500質量%、前記酸化アルミニウム又は前記窒化アルミニウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.02〜5.0質量%の各割合になるように、混合し、得られた混合粉末を窒素ガス単体の雰囲気下、窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気下、窒素ガスとアンモニアガスの混合ガス雰囲気下又は窒素ガスと不活性ガス雰囲気下で650〜900℃の温度で焼成することにより、前記混合粉末を還元して黒色遮光膜形成用粉末を製造する方法。
【請求項3】
請求項1記載の黒色遮光膜形成用粉末又は請求項2記載の方法により製造された黒色遮光膜形成用粉末を黒色顔料として含む黒色感光性組成物。
【請求項4】
請求項3記載の黒色感光性組成物を用いて黒色遮光膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性の黒色顔料として好適に用いられる窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法に関する。更に詳しくは、黒色顔料として紫外線透過性に優れて高解像度のパターニング特性を有する黒色遮光膜を形成するとともに形成した黒色遮光膜が高い遮光性能と高い耐候性を有する黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
この種の黒色顔料は、感光性樹脂に分散されて黒色感光性組成物に調製され、この組成物を基板に塗布してフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー法でフォトレジスト膜に露光してパターニング特性を有する黒色遮光膜(以下、パターニング膜ということもある。)を形成することで、液晶ディスプレイのカラーフィルター等の画像形成素子のブラックマトリックスに用いられる。従来の黒色顔料としてのカーボンブラックは導電性があるため、絶縁性が要求される用途には向かない。
【0003】
従来、絶縁性の高い黒色顔料として、特定の組成のチタンブラックとも称されるチタン酸窒化物からなる黒色粉末と、Y
2O
3、ZrO
2、Al
2O
3、SiO
2、TiO
2、V
2O
5を少なくとも1種からなる絶縁粉末とを含有する高抵抗黒色粉末が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この黒色粉末によれば、黒色膜にしたときに、抵抗値が高く、遮光性に優れるので、カラーフィルターのブラックマトリックスとして好適であるとされている。
【0004】
また、遮光材としてチタン窒化物粒子を含有し、CuKα線をX線源とした場合の少なくとも1種のチタン窒化物粒子の(200)面に由来するピークの回折角2θが42.5°以上42.8°以下であり、かつ該チタン窒化物粒子の(200)面に由来するX線回折ピークの半値幅より求めた結晶子サイズが10nm以上20nm以下である黒色樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この黒色樹脂組成物は、無彩色でありながら、高OD値、かつ、高抵抗値を有する樹脂ブラックマトリクスが得られ、液晶表示装置に用いた際に黒らしい黒表示が可能となるカラーフィルターを提供できるとされている。
【0005】
また、バナジウム又はニオブの一種又は二種の酸窒化物からなる黒色粉末であり、酸素含有量16wt%以下及び窒素含有量10wt%以上であって、粉末濃度50ppmの分散液透過スペクトルにおいて450nmの透過率Xが10.0%以下であることを特徴とし、450nmの透過率Xと550nmの透過率Yの比(X/Y)が2.0以下であり、及び/又は450nmの透過率Xと650nmの透過率Zの比(X/Z)が1.5以下である青色遮蔽黒色粉末が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この青色遮蔽黒色粉末は、高い黒色度と青色光に対する優れた遮光性を有し、更に好ましくは高い絶縁性を有するとされている。
【0006】
更に、絶縁性の黒色顔料であって窒化ジルコニウムを含むものとして、X線回折プロファイルにおいて、低次酸化ジルコニウムのピークと窒化ジルコニウムのピークを有し、比表面積が10〜60m
2/gであることを特徴とする微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。この微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体は、二酸化ジルコニウム又は水酸化ジルコニウムと、酸化マグネシウムと、金属マグネシウムとの混合物を、窒素ガス又は窒素ガスを含む不活性ガス気流中、650〜800℃で焼成する工程を経て製造される。上記微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体は、黒色系で電気伝導性の低い微粒子材料として使用でき、カーボンブラックなどが使用されているテレビなどのディスプレイ用のブラックマトリクスなどへ、より電気伝導性の低い微粒子黒色顔料として使用することができるとされ、また上記製造方法によれば、上記微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体を工業的規模で製造(量産)することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−266045号公報(請求項1、段落[0002]、段落[0010])
【特許文献2】特開2009−58946号公報(要約)
【特許文献3】特開2012−96945号公報(請求項1、請求項2、段落[0008])
【特許文献4】特開2009−091205号公報(請求項1、請求項2、段落[0015]、段落[0016])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるチタンブラックと称される黒色粉末、特許文献2に示されるチタン窒化物粒子を含有する黒色樹脂組成物、特許文献3に示されるバナジウム又はニオブの酸窒化物からなる黒色粉末、並びに特許文献4に示される微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体は、黒色顔料として用いる場合、より高い遮光性を得るために顔料濃度を高くして黒色感光性組成物を調製し、この組成物を基板に塗布してフォトレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー法でフォトレジスト膜に露光して黒色パターニング膜を形成するときにフォトレジスト膜中の黒色顔料が紫外線であるi線(波長365nm)も遮蔽してしまうため、紫外線がフォトレジスト膜の底部まで届かず、底部にアンダーカットが発生し、高解像度のパターニング膜を形成することができない問題があった。
【0009】
また特許文献4に示される微粒子低次酸化ジルコニウム・窒化ジルコニウム複合体は、粒径が細かくなると、耐酸化性が弱くなり、耐湿耐熱性試験で黒色度が低下する、即ち耐候性が低下する問題があった。
【0010】
本発明の目的は、黒色顔料として紫外線透過性に優れて高解像度のパターニング特性を有する黒色遮光膜を形成するとともに形成した黒色遮光膜が高い遮光性能と高い耐候性を有する黒色遮光膜形成用粉末及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末にマグネシウム及び/又はアルミニウムを含ませると、ナノ粒子化した窒化ジルコニウム粒子の極表面層にアルミニウムないしはマグネシウムの酸化被膜層又は窒化被膜層が生じて、この粉末を黒色顔料として形成した黒色遮光膜が高い遮光性能を発揮することに加えて、高い耐光性が得られることに着目し、本発明に到達した。
【0012】
本発明の第1の観点は、BET法により測定される比表面積が20〜90m
2/gであって、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及び/又はアルミニウムを含有する黒色遮光膜形成用粉末であって、前記マグネシウムを含有するとき、前記マグネシウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%であり、前記アルミニウムを含有するとき、前記アルミニウムの含有割合が前記黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%であることを特徴とする黒色遮光膜形成用粉末である。
【0013】
本発明の第2の観点は、二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末とを、前記金属マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して25〜150質量%、前記酸化マグネシウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して15〜500質量%、前記酸化アルミニウム又は前記窒化アルミニウムが前記二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.02〜5.0質量%の各割合になるように、混合し、得られた混合粉末を窒素ガス単体の雰囲気下、窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気下、窒素ガスとアンモニアガスの混合ガス雰囲気下又は窒素ガスと不活性ガス雰囲気下で650〜900℃の温度で焼成することにより、前記混合粉末を還元して黒色遮光膜形成用粉末を製造する方法である。
【0014】
本発明の第3の観点は、第1の観点の黒色遮光膜形成用粉末又は第2の観点の方法により製造された黒色遮光膜形成用粉末を黒色顔料として含む黒色感光性組成物である。
【0015】
本発明の第4の観点は、第3の観点の黒色感光性組成物を用いて黒色遮光膜を形成する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点の黒色遮光膜形成用粉末は、比表面積が20m
2/g以上であるため、レジストとした場合の沈降抑制の効果があり、また90m
2/g以下であるため、十分な遮光性を有する効果がある。窒化ジルコニウムを主成分とすることにより、紫外線をより一層透過する特長がある。この結果、黒色顔料として高解像度のパターニング膜を形成することができ、しかも形成したパターニング膜は高い遮光性能を有するようになる。またアルミニウムを0.01〜1.0質量%含有することにより、黒色顔料として黒色遮光膜を形成したときに形成した黒色遮光膜の遮光性能を低下させずに、その耐候性を著しく向上させることができる。更にマグネシウムも0.01〜1.0質量%の割合で含有することにより、同様に上記黒色遮光膜の遮光性能を低下させずに、その耐候性を向上させる効果がある。
【0017】
本発明の第2の観点の黒色遮光膜形成用粉末の製造方法では、二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末とを所定の割合で焼成することにより、マグネシウムが0.01〜1.0質量%、アルミニウムが0.01〜1.0質量%含有する黒色遮光膜形成用粉末が製造される。また所定のガス雰囲気下で焼成することにより、還元反応がより促進され、反応効率がより高まって、より少ない金属マグネシウム量でも窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末を製造することができる。
【0018】
本発明の第3の観点の黒色感光性組成物によれば、黒色顔料として窒化ジルコニウム粉末が主成分であるため、この組成物を用いて黒色パターニング膜を形成すれば、高解像度のパターニング膜を形成することができ、形成したパターニング膜が高い遮光性能を有し、更に窒化ジルコニウム粉末中にアルミニウムを含有するため、形成したパターニング膜が高い耐候性を有するようになる。
【0019】
本発明の第4の観点の黒色遮光膜の形成方法によれば、高解像度のパターニング特性を有する黒色遮光膜を形成することができ、しかも形成した黒色遮光膜が高い遮光性能と高い耐候性を有するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
〔ZrO
2、金属Mg、MgO、Al
2O
3の焼成による黒色遮光膜形成用粉末の製法〕
本実施形態では、二酸化ジルコニウム(ZrO
2)、金属マグネシウム(金属Mg)、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化アルミニウム(Al
2O
3)の各粉末を出発原料として用い、所定の雰囲気下、所定の温度と時間で焼成することにより、窒化ジルコニウム(ZrN)を主成分とする黒色遮光膜形成用粉末を製造する。酸化アルミニウム粉末の代わりに窒化アルミニウム(AlN)粉末を用いてもよい。
【0022】
〔二酸化ジルコニウム粉末〕
本実施形態の二酸化ジルコニウム粉末としては、例えば、単斜晶系二酸化ジルコニウム、立方晶系二酸化ジルコニウム、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム等の二酸化ジルコニウムの粉末がいずれも使用可能であるが、窒化ジルコニウム粉末の生成率が高くなる観点から、単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末が好ましい。
【0023】
〔金属マグネシウム粉末]
本実施形態の金属マグネシウム粉末は、粒子径が小さ過ぎると、反応が急激に進行して操作上危険性が高くなるので、粒子径が篩のメッシュパスで100〜1000μmの粒状のものが好ましく、特に100〜500μmの粒状のものが好ましい。ただし、金属マグネシウムは、すべて上記粒子径範囲内になくても、その80質量%以上、特に90質量%以上が上記範囲内にあればよい。
【0024】
二酸化ジルコニウム粉末に対する金属マグネシウム粉末の添加量の多寡は、二酸化ジルコニウムの還元力に影響を与える。金属マグネシウムの量が少な過ぎると、還元不足で目的とする窒化ジルコニウム粉末が得られにくくなり、多過ぎると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。金属マグネシウム粉末は、その粒子径の大きさによって、金属マグネシウムが二酸化ジルコニウム100質量%に対して25〜150質量%の割合になるように、金属マグネシウム粉末を二酸化ジルコニウム粉末に添加して混合する。25質量%未満では、二酸化ジルコニウムの還元力が不足し、150質量%を超えると、過剰な金属マグネシウムにより反応温度が急激に上昇し、粉末の粒成長を引き起こす恐れがあるとともに不経済となる。好ましくは40〜100質量%である。
【0025】
〔酸化マグネシウム粉末〕
本実施形態の酸化マグネシウム粉末は、焼成時に金属マグネシウムの還元力を緩和して、窒化ジルコニウム粉末の焼結及び粒成長を防止する。酸化マグネシウム粉末は、その粒子径の大きさによって、酸化マグネシウムが二酸化ジルコニウム100質量%に対して15〜500質量%の割合になるように、二酸化ジルコニウムに添加して混合する。15質量%未満では窒化ジルコニウム粉末の焼結防止にならず、500質量%を超えると、焼成後の酸洗浄時に要する酸性溶液の使用量が増加し不経済である。好ましくは25〜400質量%である。酸化マグネシウム粉末は、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒子径1000nm以下であることが好ましく、粉末の取扱い易さから、平均一次粒子径500nm以下で10nm以上であることが好ましい。なお、酸化マグネシウムのみではなく、窒化マグネシウムも窒化ジルコニウムの焼結予防に有効であるため、酸化マグネシウムに一部窒化マグネシウムを混合して使用することも可能である。金属マグネシウム及び酸化マグネシウムの上記添加量により、後述する黒色遮光膜形成用粉末中のマグネシウムの含有量を0.01〜1.0質量%になる。
【0026】
〔酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末〕
本実施形態の酸化アルミニウム粉末は、黒色遮光膜形成用粉末を黒色顔料として黒色遮光膜を形成したときに、この黒色遮光膜の耐候性を向上させる。また焼成時に金属マグネシウムの還元力を緩和して、窒化ジルコニウム粉末の焼結及び粒成長を防止する。酸化アルミニウム粉末は、その粒子径の大きさによって、酸化アルミニウムが二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.02〜5.0質量%の割合になるように、二酸化ジルコニウムに添加して混合する。0.02質量%未満では上記黒色遮光膜の耐候性が向上せず、5.0質量%を超えると、上記黒色遮光膜の遮光性能が低下する。好ましくは0.05〜1.0質量%である。酸化アルミニウム粉末は、比表面積の測定値から球形換算した平均一次粒子径1000nm以下であることが好ましく、粉末の取扱い易さから、平均一次粒子径500nm以下で10nm以上であることが好ましい。なお、窒化アルミニウム粉末も上記黒色遮光膜の耐候性の向上させるため、酸化アルミニウム粉末の代わりに、窒化アルミニウム粉末を使用することも可能である。窒化アルミニウム粉末の添加割合は酸化アルミニウム粉末と同じである。酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末の上記添加量により、後述する黒色遮光膜形成用粉末中のアルミニウムの含有量が0.01〜1.0質量%になる。
【0027】
〔金属マグネシウム粉末による還元反応〕
本実施形態の窒化ジルコニウム粉末を生成させるための金属マグネシウムによる還元反応時の温度は、650〜900℃、好ましくは700〜800℃である。650℃は金属マグネシウムの溶融温度であり、温度がそれより低いと、二酸化ジルコニウムの還元反応が十分に生じない。また、温度を900℃より高くしても、その効果は増加せず、熱エネルギーの無駄になるとともに粒子の焼結が進行し好ましくない。また還元反応時間は10〜90分が好ましく、15〜60分が更に好ましい。
【0028】
上記還元反応を行う際の反応容器は、反応時に原料や生成物が飛び散らないように、蓋を有するものが好ましい。これは、金属マグネシウムの溶融が開始されると、還元反応が急激に進行し、それに伴って温度が上昇して、容器内部の気体が膨張し、それによって、容器の内部のものが外部に飛び散るおそれがあるからである。
【0029】
〔金属マグネシウム粉末による還元反応時の雰囲気ガス〕
本実施形態の上記還元反応時の雰囲気ガスは、窒素ガス単体の雰囲気下、窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気下、窒素ガスとアンモニアガスの混合ガス雰囲気下又は窒素ガスと不活性ガス雰囲気下である。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等が挙げられる。これらの中でアルゴンが最も好ましい。混合ガスの場合、上記還元反応中、窒素ガスと水素ガスを併用するか、窒素ガスとアンモニアガスを併用すうか、又は窒素ガスと不活性ガスを併用する方法の他に、最初に水素ガス雰囲気、アンモニアガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気で還元反応させて続いて窒素ガス単体の雰囲気で還元反応させてもよい。上記還元反応は上記混合ガスの気流中で行われる。この混合ガスは、金属マグネシウムや還元生成物と酸素との接触を防ぎ、それらの酸化を防ぐとともに、窒素をジルコニウムと反応させ、窒化ジルコニウムを生成させる役割を有する。
【0030】
〔焼成後の反応物の処理〕
二酸化ジルコニウム粉末と、金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末の混合物を上記混合ガスの雰囲気下又は窒素ガス雰囲気下、或いは水素ガス雰囲気、アンモニアガス雰囲気又は不活性ガス雰囲気に続いて窒素ガス単体の雰囲気下で焼成することにより得られた反応物は、反応容器から取り出し、最終的には室温まで冷却した後、塩酸水溶液などの酸溶液で洗浄して、金属マグネシウムの酸化によって生じた酸化マグネシウムや生成物の焼結防止のため反応当初から含まれていた酸化マグネシウム、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムを除去する。ここで、洗浄時間、洗浄pHを調整することにより、マグネシウムの残存量を本発明の範囲である0.01〜1.0質量%に調整することができる。この酸洗浄に関しては、pH0.5以上、特にpH0.7以上、温度は90℃以下で行うのが好ましい。これは酸性度が強過ぎる、又は温度が高過ぎると窒化ジルコニウムが酸化してしまうおそれがあるためである。そして、その酸洗浄後、アンモニア水などでpHを5〜6に調整した後、濾過又は遠心分離により固形分を分離し、その固形分を乾燥した後、粉砕して窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末を得る。
【0031】
金属マグネシウム粉末と、酸化マグネシウム粉末と、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末の各添加量の多寡により、最終的に得られた黒色遮光膜形成用粉末中にマグネシウム及び/又はアルミニウムが含まれる。即ち、金属マグネシウム粉末及び/又は酸化マグネシウム粉末の各添加量が多ければ、黒色遮光膜形成用粉末中にマグネシウムが0.01〜1.0質量%含まれる。一方、金属マグネシウム粉末及び/又は酸化マグネシウム粉末の各添加量が少なければ、黒色遮光膜形成用粉末中にマグネシウムは含まれない。同様に、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末の各添加量が多ければ、黒色遮光膜形成用粉末中にアルミニウムが0.01〜1.0質量%含まれる。一方、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末の添加量が少なければ、黒色遮光膜形成用粉末中にアルミニウムは含まれない。
【0032】
<得られた黒色遮光膜形成用粉末の特性>
本実施形態で得られた黒色遮光膜形成用粉末は、窒化ジルコニウムを主成分とし、マグネシウム及びアルミニウムを含有する。この黒色遮光膜形成用粉末は、BET値より測定される比表面積が20〜90m
2/gである。黒色遮光膜形成用粉末の上記比表面積が20m
2/g未満では、黒色レジストとしたときに、長期保管時に顔料が沈降し、90m
2/gを超えると、黒色顔料としてパターニング膜を形成したときに、遮光性が不足する。25〜80m
2/gがより好ましい。上記比表面積値から次の式(1)により球状に見なした平均粒子径を算出することができる。このBET比表面積値から算出される平均粒子径は10〜50nmが好ましい。式(1)中、Lは平均粒子径(μm)、ρは粉末の密度(g/cm
3)、Sは粉末の比表面積値(m
2/g)である。
L=6/(ρ×S) (1)
【0033】
マグネシウムを含有するときのマグネシウムの含有割合は黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1.0質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%であり、アルミニウムを含有するときのアルミニウムの含有割合は黒色遮光膜形成用粉末100質量%に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。マグネシウムの含有割合が0.01質量%未満では、黒色顔料として黒色遮光膜を形成したときに形成した黒色遮光膜の耐候性を向上させることができず、1.0質量%を超えると、窒化ジルコニウムの含有割合が減少し、遮光性が低下する。アルミニウムの含有割合が0.01質量%未満では、黒色顔料として黒色遮光膜を形成したときに形成した黒色遮光膜の耐候性を向上させることができず、1.0質量%を超えると、上記黒色遮光膜の遮光性能を低下させる。
【0034】
〔黒色遮光膜形成用粉末を黒色顔料として用いたパターニング膜の形成方法〕
上記黒色遮光膜形成用粉末を黒色顔料として用いた、ブラックマトリックスに代表されるパターニング膜の形成方法について述べる。先ず、上記黒色遮光膜形成用粉末を感光性樹脂に分散して黒色感光性組成物に調製する。次いでこの黒色感光性組成物を基板上に塗布した後、プリベークを行って溶剤を蒸発させて、フォトレジスト膜を形成する。次にこのフォトレジスト膜にフォトマスクを介して所定のパターン形状に露光したのち、アルカリ現像液を用いて現像して、フォトレジスト膜の未露光部を溶解除去し、その後好ましくはポストベークを行うことにより、所定の黒色パターニング膜、即ち黒色遮光膜が形成される。
【0035】
形成されたパターニング膜(黒色遮光膜)の遮光性(透過率の減衰)を表す指標として光学濃度、即ちOD(Optical Density)値が知られている。本実施形態の黒色遮光膜形成用粉末を用いて形成されたパターニング膜は高いOD値を有する。ここでOD値は、光がパターニング膜を通過する際に吸収される度合を対数で表示したものであって、次の式(2)で定義される。式(2)中、Iは透過光量、I
0は入射光量である。
OD値=−log
10(I/I
0) (2)
【0036】
上記基板としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を挙げることができる。また上記基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。黒色感光性組成物を基板に塗布する際には、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布法を採用することができる。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、0.1〜10μm、好ましくは0.2〜7.0μm、更に好ましくは0.5〜6.0μmである。パターニング膜を形成する際に使用される放射線としては、本実施形態では、波長が250〜370nmの範囲にある放射線が好ましい。放射線の照射エネルギー量は、好ましくは10〜10,000J/m
2 である。また上記アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等の水溶液が好ましい。上記アルカリ現像液には、例えばメタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができ、現像条件は、常温で5〜300秒が好ましい。このようにして形成されたパターニング膜は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材。光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に好適に用いられる。
【実施例】
【0037】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0038】
<実施例1>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒子径が50nmの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均一次粒子径が100μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均一次粒子径が20nmの酸化マグネシウム粉末3.6gを添加し、更に平均一次粒子径が20nmの酸化アルミニウム粉末0.04gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して98質量%であり、酸化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して49質量%であり、酸化アルミニウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.5質量%であった。上記混合物を窒素ガス雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成することにより、二酸化ジルコニウムの窒化反応を実施して焼成物を得た。この焼成物を、1リットルの水に分散し、17.5%塩酸を徐々に添加して、pHを1以上で、温度を100℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7〜8に調整し、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう一度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度が120℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末を得た。
【0039】
<実施例2>
酸化アルミニウム粉末の代わりに、平均一次粒子径が100nmの窒化アルミニウム粉末0.06gを用いた。このとき窒化アルミニウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.8質量%であった。これ以外は実施例1と同様にして、窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末を得た。
【0040】
<比較例1>
BET法により測定される比表面積から算出される平均一次粒子径が50nmの単斜晶系二酸化ジルコニウム粉末7.4gに、平均一次粒子径が100μmの金属マグネシウム粉末7.3gと平均一次粒子径が20nmの酸化マグネシウム粉末0.7gを添加し、更に平均一次粒子径が20nmの酸化アルミニウム粉末0.04gを添加し、石英製ガラス管に黒鉛のボートを内装した反応装置により均一に混合した。このとき金属マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して98質量%であり、酸化マグネシウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して10質量%であり、酸化アルミニウムの添加量は二酸化ジルコニウム100質量%に対して0.5質量%であった。上記混合物を窒素ガス雰囲気下、700℃の温度で60分間焼成することにより、二酸化ジルコニウムの窒化反応を実施して焼成物を得た。この焼成物を、1リットルの水に分散し、17.5%塩酸を徐々に添加して、pHを0.5で、温度を100℃以下に保ちながら洗浄した後、25%アンモニア水にてpH7〜8に調整し、濾過した。その濾過固形分を水中に400g/リットルに再分散し、もう三度、前記と同様に酸洗浄、アンモニア水でのpH調整をした後、濾過した。このように酸洗浄−アンモニア水によるpH調整を2回繰り返した後、濾過物をイオン交換水に固形分換算で500g/リットルで分散させ、60℃での加熱攪拌とpH7への調整をした後、吸引濾過装置で濾過し、更に等量のイオン交換水で洗浄し、設定温度が120℃の熱風乾燥機にて乾燥することにより、窒化ジルコニウムを主成分とする比較例1の黒色遮光膜形成用粉末を得た。
【0041】
<実施例3〜6及び比較例2〜6>
実施例3〜6及び比較例3〜6について、実施例1と同様に、金属マグネシウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、窒化アルミニウム粉末の二酸化ジルコニウムに対する添加割合(質量%)、雰囲気ガスである反応ガスの種類とその体積%の割合、焼成温度と焼成時間を表1に示すように、それぞれ設定して、黒色遮光膜形成用粉末を製造した。
【0042】
【表1】
【0043】
<比較試験と評価その1>
実施例1〜6及び比較例1〜6で得られた最終製品の黒色遮光膜形成用粉末をそれぞれ試料として、以下に詳述する方法で、(1) 比表面積、(2) マグネシウム及び/又はアルミニウムの含有量、(3) 粉末濃度50ppmの分散液における光透過率、(4) 製造後室温下に保持したときのOD値、及び(5) 製造後85℃、相対湿度85%の高温高湿雰囲気下で500時間保持したときのOD値を測定した。それぞれの測定結果を表2に示す。
【0044】
(1) 比表面積: 全ての試料について、比表面積測定装置(柴田化学社製、SA−1100)を用いて、窒素吸着によるBET1点法により比表面積値を測定した。
【0045】
(2) マグネシウム及び/又はアルミニウムの含有量:
ICP発光分光測定(PerkinElmer社製Optima 4300DV)によりマグネシウム、アルミニウムの含有量を測定した。
【0046】
(3) 粉末濃度50ppmの分散液における分光曲線: 実施例1〜6と比較例1〜6の各試料について、これらの試料を循環式横型ビーズミル(メディア:ジルコニア)に各別に入れ、アミン系分散剤を添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGM−Ac)溶剤中での分散処理を行った。得られた11種類の分散液を10万倍に希釈し粉末濃度を50ppmに調整した。この希釈した分散液における各試料の光透過率を日立ハイテクフィールディング((株)(UH−4150)を用い、波長240nmから1300nmの範囲で測定し、i線(365nm)近傍の波長370nmと、波長550nmにおける各光透過率(%)を求めた。
【0047】
【表2】
【0048】
<比較試験と評価その2>
実施例1〜6、比較例1〜6で得られた試料を光透過率の測定に用いた分散液にアクリル樹脂を、質量比で黒色顔料:樹脂=6:4となる割合で添加し混合して黒色感光性組成物を調製した。この組成物をガラス基板上に焼成後の膜厚が1μmになるようにスピンコートし、250℃の温度で60分間焼成して被膜を形成した。この被膜を室温下に保持し、その状態で被膜の可視光(中心波長560nm及び中心波長650nm)のOD値を、前述した式(2)に基づき、マクベス社製のX-Rite 361T(V)濃度計を用いて、測定した。また同一の被膜を85℃、相対湿度85%の高温高湿雰囲気下で500時間保持したときのOD値を同様に測定した。その結果を表2に示す。
【0049】
表2から明らかなように、比較例1では、焼成物を洗浄するときのpHを0.5と低くしたため、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末におけるマグネシウムの含有割合が0.001質量%と極めて少なくなった。このため、室温下のOD値と比較して高温高湿下のOD値は、中心波長が560nm及び650nmにおいて、それぞれ0.2及び0.3ずつ低くなり、最終製品は耐候性に劣っていた。
【0050】
比較例2では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末におけるアルミニウムの含有割合が0.002質量%と少な過ぎたため、マグネシウムと同様に、室温下のOD値と比較して高温高湿下のOD値は、中心波長が560nm及び650nmの双方において、0.5ずつ低くなり、最終製品は耐候性に劣っていた。
【0051】
比較例3では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末におけるアルミニウムの含有割合が1.50質量%と多過ぎたため、室温下のOD値も高温高湿下のOD値も2.9以下となり、最終製品は遮光性に劣っていた。
【0052】
比較例4では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末におけるマグネシウムの含有割合が1.5質量%と多過ぎたため、室温下のOD値も高温高湿下のOD値も2.8以下となり、最終製品は遮光性に劣っていた。
【0053】
比較例5では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末の比表面積が19m
2/gと小さ過ぎたため、粉末濃度50ppmの分散液における波長370nmの光透過率が9.0%と低く、紫外線透過率が悪かった。
【0054】
比較例6では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末の比表面積が92m
2/gと大き過ぎたため、粉末濃度50ppmの分散液における波長550nmの光透過率が7.0%と高く、可視光透過率が悪かった。
【0055】
これに対して、実施例1〜6では、最終製品の黒色遮光膜形成用粉末の比表面積が20〜90m
2/gであり、粉末濃度50ppmの分散液における波長370nm及び波長550nmの各光透過率が10.1〜29.6%と3.0〜6.8%であり、室温下のOD値も高温高湿下のOD値も3.0以上あって、室温下のOD値と比較して高温高湿下のOD値は殆ど変化がなかった。その結果、実施例1〜6における最終製品の黒色遮光膜形成用粉末は、紫外線透過率、可視光透過率、遮光性及び耐候性に優れていることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の窒化ジルコニウムを主成分とする黒色遮光膜形成用粉末は、高精細の液晶、有機EL用ブラックマトリックス材、イメージセンサー用遮光材、光学部材用遮光材、遮光フィルター、IRカットフィルター等に利用することができる。