とは、連結して環状となっていてもよい。Yは、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。mは、0〜5の整数である。mが2以上の場合、Yは、同一でも異なっていてもよい。nは1〜3の整数である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(化合物)
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
【化3】
ただし、前記一般式(1)中、R
1は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。R
2は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。R
1とR
2とは、連結して環状となっていてもよい。Yは、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。mは、0〜5の整数である。mが2以上の場合、Yは、同一でも異なっていてもよい。nは1〜3の整数である。
【0010】
前記一般式(1)において、R
1及びR
2を含むAl配位子は、所謂β−ケトエノラート陰イオンであり、R
1及びR
2としては、β−ケトエノラート陰イオンを用いたアルミニウムキレートに適用可能な置換基であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
その点において、R
1は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基などを使用可能である。また、R
2は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基などを使用可能である。また、R
1とR
2とは、連結して環状となっていてもよい。
なお、R
1及びR
2を含むAl配位子は、所謂β−ケトエノラート陰イオンであることから、共鳴構造を取りうる。その点において、前記一般式(1)は、下記一般式(1−1)、下記一般式(1−2)と同義である。
【化4】
【0011】
前記一般式(1)において、−O−Si−[Ph−(Y)m]
3〔Phは、フェニル基を表す〕部位は、アリールシラノールに由来する部位であり、Yは、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。mは、0〜5の整数である。mが2以上の場合、Yは、同一でも異なっていてもよい。
また、Yとしては、例えば、電子吸引性基が使用可能である。
【0012】
R
1、R
2、及びYにおける前記炭素数1〜18のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基が特に好ましい。
前記炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0013】
R
1、R
2、及びYにおける前記炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が好ましく、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基が特に好ましい。
前記炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
前記炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基におけるハロゲンの置換位置、及び置換数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記炭素数1〜18のハロゲン化アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
【0014】
R
1、R
2、及びYにおける前記置換基を有していてもよいフェニル基における置換基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0015】
R
2における前記炭素数1〜18のアルコキシ基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜3のアルコキシ基が特に好ましい。
【0016】
R
1とR
2とが連結して形成する環状構造としては、例えば、フェニル基などが挙げられる。
【0017】
Yにおける前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0018】
前記電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン基(例えば、クロロ基、ブロモ基等)、トリフルオロメチル基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ホルミル基などが挙げられる。
置換基として電子吸引性基を使用することにより、エポキシ樹脂の硬化活性をより高めることができる。
【0019】
前記化合物を合成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、nが1又は2の場合、アルミニウムアルコキシドと、β−ケトエノラート陰イオンに対応するβ−ジケトンとを反応させた後に、−O−Si−[Ph−(Y)m]
3部位に対応するアリールシラノールを、前記一般式(1)においてnが所望の数となるように混合することが挙げられる。
nが3の場合、アルミニウムアルコキシドと、−O−Si−[Ph−(Y)m]
3部位に対応するアリールシラノールとを、前記一般式(1)においてnが所望の数となるように混合することが挙げられる。
【0020】
(カチオン硬化剤)
本発明のカチオン硬化剤は、多孔質粒子と、本発明の前記化合物〔前記一般式(1)で表される化合物〕とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の成分を有する。
前記カチオン硬化剤において、前記一般式(1)で表される化合物は、前記多孔質粒子に保持されている。
前記多孔質粒子は、例えば、その細孔内に前記一般式(1)で表される化合物を保持する。
前記カチオン硬化剤は、所謂潜在性の硬化剤である。
前記カチオン硬化剤において、前記多孔質粒子に保持される前記一般式(1)で表される化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0021】
<多孔質粒子>
前記多孔質粒子としては、多くの細孔を有する粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機樹脂で構成される多孔質有機樹脂粒子、無機化合物で構成される多孔質無機粒子などが挙げられる。
【0022】
前記多孔質粒子の細孔の平均細孔直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm〜300nmが好ましく、5nm〜150nmがより好ましい。
【0023】
<<多孔質有機樹脂粒子>>
前記多孔質有機樹脂粒子としては、有機樹脂で構成される多孔質粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記有機樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリウレア樹脂が好ましい。即ち、前記多孔質有機樹脂粒子は、少なくともポリウレア樹脂で構成されることが好ましい。
前記多孔質有機樹脂粒子は、更に、ビニル樹脂を構成成分に含んでいてもよい。
【0025】
<<<ポリウレア樹脂>>>
前記ポリウレア樹脂とは、その樹脂中にウレア結合を有する樹脂である。
前記多孔質有機樹脂粒子を構成する前記ポリウレア樹脂は、例えば、多官能イソシアネート化合物を乳化液中で重合させることにより得られる。前記ポリウレア樹脂は、樹脂中に、イソシアネート基に由来する結合であって、ウレア結合以外の結合、例えば、ウレタン結合などを有していてもよい。
【0026】
−多官能イソシアネート化合物−
前記多官能イソシアネート化合物は、一分子中に2個以上のイソシアネート基、好ましくは3個のイソシアネート基を有する化合物である。このような3官能イソシアネート化合物の更に好ましい例としては、トリメチロールプロパン1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた下記一般式(2)のTMPアダクト体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させた下記一般式(3)のイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モルのうちの2モルから得られるジイソシアネートウレアに残りの1モルのジイソシアネートが縮合した下記一般式(4)のビュウレット体が挙げられる。
【0028】
前記一般式(2)〜(4)中、置換基Rは、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた部分である。このようなジイソシアネート化合物の具体例としては、トルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−m−キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0029】
<<<ビニル樹脂>>>
前記ビニル樹脂とは、ラジカル重合性ビニル化合物を重合して得られる樹脂である。
前記ビニル樹脂は、前記多孔質有機樹脂粒子の機械的性質を改善する。これにより、カチオン硬化性組成物における硬化時の熱応答性、特に低温領域でシャープな熱応答性を実現することができる。
【0030】
前記ビニル樹脂は、例えば、多官能イソシアネート化合物を含有する乳化液に、ラジカル重合性ビニル化合物をも含有させておき、前記乳化液中で前記多官能イソシアネート化合物を重合させる際に、同時に前記ラジカル重合性ビニル化合物をラジカル重合させることにより得ることができる。
【0031】
−ラジカル重合性ビニル化合物−
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、分子内にラジカル重合性の炭素−炭素不飽和結合を有する化合物である。
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、いわゆる単官能ラジカル重合性化合物、多官能ラジカル重合性化合物を包含する。
前記ラジカル重合性ビニル化合物は、多官能ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。これは、多官能ラジカル重合性化合物を使用することにより、低温領域でシャープな熱応答性を実現することがより容易になるからである。この意味からも、前記ラジカル重合性ビニル化合物は、多官能ラジカル重合性化合物を30質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましい。
【0032】
前記単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、単官能ビニル系化合物(例えば、スチレン、メチルスチレン等)、単官能(メタ)アクリレート系化合物(例えば、ブチルアクリレートなど)など挙げられる。
前記多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能ビニル系化合物(例えば、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル等)、多官能(メタ)アクリレート系化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等)などが挙げられる。
これらの中でも、潜在性及び熱応答性の点から、多官能ビニル系化合物、特にジビニルベンゼンを好ましく使用することができる。
【0033】
なお、多官能ラジカル重合性化合物は、多官能ビニル系化合物と多官能(メタ)アクリレート系化合物とから構成されていてもよい。このように併用することにより、熱応答性を変化させたり、反応性官能基を導入できたりといった効果が得られる。
【0034】
前記ラジカル重合性ビニル化合物の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記多官能イソシアネート化合物100質量部に対して、1質量部〜80質量部が好ましく、10質量部〜60質量部がより好ましい。
【0035】
前記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm〜20μmが好ましく、1μm〜10μmがより好ましく、1μm〜5μmが特に好ましい。
【0036】
<<多孔質無機粒子>>
前記多孔質無機粒子としては、無機化合物で構成される多孔質粒子であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記多孔質無機粒子の材質としては、例えば、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化チタン、ホウ酸カルシウム、ホウケイ酸ナトリウム、酸化ナトリウム、リン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記多孔質無機粒子としては、例えば、多孔質シリカ粒子、多孔質アルミナ粒子、多孔質チタニア粒子、多孔質ジルコニア粒子、ゼオライトなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記多孔質無機粒子の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm〜5,000μmが好ましく、250nm〜1,000μmがより好ましく、500nm〜200μmが特に好ましい。
【0039】
<<多孔質粒子の表面>>
前記多孔質粒子は、潜在性をより高める点で、表面にシランカップリング剤の反応生成物を有することが好ましい。
前記反応生成物は、シランカップリング剤が反応して得られる。
前記反応生成物は、前記多孔質粒子の表面に存在する。
【0040】
前記一般式(1)で表される化合物を保持する前記多孔質粒子は、その構造上、その内部だけでなく表面にも前記一般式(1)で表される化合物が存在することになると思われる。
そのため、後述するカチオン硬化性組成物において、カチオン硬化成分として高い反応性を有する脂環式エポキシ樹脂を使用する場合には、前記カチオン硬化剤を用いるカチオン硬化性組成物は経時的に大きく増粘する。
そこで、前記多孔質粒子の表面に存在する前記一般式(1)で表される化合物を、以下に説明するように、シランカップリング剤で不活性化することが好ましい。
【0041】
前記シランカップリング剤は、以下に説明するように二つのタイプに分類される。
【0042】
第一のタイプは、前記多孔質粒子に保持された活性な前記一般式(1)で表される化合物に、分子内のアルコキシシリル基を反応させて生成したシロキサン構造の重合鎖で表面を被覆して活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカップリング剤としては、例えば、アルキル基を有するアルキルアルコキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0043】
第二のタイプは、前記多孔質粒子に保持された活性な前記一般式(1)で表される化合物に、分子内のエポキシ基を反応させて生成したエポキシ重合鎖で表面を被覆して活性を低下させるタイプのシランカップリング剤である。このタイプのシランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM−303、信越化学工業(株))、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業(株))等が挙げられる。
【0044】
<カチオン硬化剤の製造方法>
前記カチオン硬化剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、多孔質粒子として多孔質有機樹脂粒子を用いる場合には、前記一般式(1)で表される化合物以外の成分を保持する多孔質有機樹脂粒子を作製した後に、前記成分を除去し、前記一般式(1)で表される化合物を前記多孔質樹脂粒子に充填させる方法などが挙げられる。前記一般式(1)で表される化合物以外の成分を保持する多孔質有機樹脂粒子を作製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2009−203477号公報、特開2012−188596号公報、特開2009−221465号公報などを参照して行うことができる。
また、多孔質粒子として多孔質無機粒子を用いる場合には、前記多孔質無機粒子に前記一般式(1)で表される化合物を充填させる方法などが挙げられる。具体的には、例えば、特開2013−100382号公報などを参照して行うことができる。
【0045】
また、前記多孔質粒子の表面にシランカップリング剤の反応生成物を形成する方法としては、例えば、特開2016−056274号公報などを参照して行うことができる。
【0046】
(カチオン硬化性組成物)
本発明のカチオン硬化性組成物は、カチオン硬化成分と、カチオン硬化剤とを少なくとも含有し、好ましくは有機シラン化合物を含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0047】
<カチオン硬化成分>
前記カチオン硬化成分としては、カチオン硬化する有機材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、ビニルエーテル樹脂などが挙げられる。
【0048】
<<エポキシ樹脂>>
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0049】
前記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、液状でも固体状でもよく、エポキシ当量が通常100〜4000程度であって、分子中に2以上のエポキシ基を有するものが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。中でも、樹脂特性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂を好ましく使用できる。また、これらのエポキシ樹脂にはモノマーやオリゴマーも含まれる。
【0050】
前記脂環式エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビニルシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンモノ乃至ジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、エポキシ−[エポキシ−オキサスピロC
8−15アルキル]−シクロC
5−12アルカン(例えば、3,4−エポキシ−1−[8,9−エポキシ−2,4−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3−イル]−シクロヘキサン等)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボレート、エポキシC
5−12シクロアルキルC
1−3アルキル−エポキシC
5−12シクロアルカンカルボキシレート(例えば、4,5−エポキシシクロオクチルメチル−4’,5’−エポキシシクロオクタンカルボキシレート等)、ビス(C
1−3アルキルエポキシC
5−12シクロアルキルC
1−3アルキル)ジカルボキシレート(例えば、ビス(2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等)などが挙げられる。
【0051】
なお、脂環式エポキシ樹脂としては、市販品として入手容易である点から、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート〔(株)ダイセル製、商品名:セロキサイド♯2021P;エポキシ当量 128〜140〕が好ましく用いられる。
【0052】
なお、上記例示中において、C
8−15、C
5−12、C
1−3との記載は、それぞれ、炭素数が8〜15、炭素数が5〜12、炭素数が1〜3、であることを意味し、化合物の構造の幅があることを示している。
【0053】
前記脂環式エポキシ樹脂の一例の構造式を、以下に示す。
【化6】
【0054】
<<オキセタン化合物>>
前記カチオン硬化性組成物において、前記エポキシ樹脂に前記オキセタン化合物を併用することで、発熱ピークをシャープにすることができる。
【0055】
前記オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸 ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)]メチルエステル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、3−エチル−3−{[3−(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。
【0056】
前記カチオン硬化性組成物における前記カチオン硬化成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30質量%〜99質量%が好ましく、50質量%〜98質量%がより好ましく、70質量%〜97質量%が特に好ましい。
なお、前記含有量は、前記カチオン硬化性組成物の不揮発分における含有量である。以下においても同様である。
ここで、本明細書において「〜」を用いて規定される数値範囲は、下限値及び上限値を含む範囲である。即ち、「30質量%〜99質量%」は「30質量%以上99質量%以下」と同義である。
【0057】
<カチオン硬化剤>
前記カチオン硬化剤は、本発明の前記カチオン硬化剤である。
【0058】
前記カチオン硬化性組成物における前記カチオン硬化剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カチオン硬化成分100質量部に対して、1質量部〜70質量部が好ましく、1質量部〜50質量部がより好ましい。前記含有量が、1質量部未満であると、硬化性が低下することがあり、70質量部を超えると、硬化物の樹脂特性(例えば、可とう性)が低下することがある。
【0059】
<有機シラン化合物>
前記有機シラン化合物は、特開2002−212537号公報の段落0007〜0010に記載されているように、潜在性硬化剤に保持されているアルミニウムキレートと共働してエポキシ樹脂のカチオン重合を開始させる機能を有する。
前記カチオン硬化性組成物においても、前記カチオン硬化剤と、前記有機シラン化合物とを併用することにより、カチオン硬化性成分の硬化を促進するという効果が得られる。
【0060】
前記有機シラン化合物としては、例えば、アリールシラノール化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0061】
このような有機シラン化合物としては、高立体障害性のシラノール化合物や、分子中に1〜3の低級アルコキシ基を有するシランカップリング剤等を挙げることができる。なお、シランカップリング剤の分子中に前記カチオン硬化成分の官能基に対して反応性を有する基、例えば、ビニル基、スチリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を有していてもよいが、アミノ基やメルカプト基を有するカップリング剤は、アミノ基やメルカプト基が、カチオン硬化の際の発生カチオン種を実質的に捕捉しない場合に使用することができる。
【0062】
<<アリールシラノール化合物>>
前記アリールシラノール化合物は、例えば、下記一般式(A)で表される。
【化7】
ただし、前記一般式(A)中、mは2又は3、好ましくは3であり、但しmとnとの和は4である。Arは、置換基を有していてもよいアリール基である。
前記一般式(A)で表されるアリールシラノール化合物は、モノオール体又はジオール体である。
【0063】
前記一般式(A)におけるArは、置換基を有していてもよいアリール基である。
前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(例えば、1−ナフチル基、2−ナフチル基等)、アントラセニル基(例えば、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ベンズ[a]−9−アントラセニル基等)、フェナリル基(例えば、3−フェナリル基、9−フェナリル基等)、ピレニル基(例えば、1−ピレニル基等)、アズレニル基、フロオレニル基、ビフェニル基(例えば、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基等)、チエニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基などが挙げられる。これらの中でも、入手容易性、入手コストの観点からフェニル基が好ましい。m個のArは、いずれも同一でもよく異なっていてもよいが、入手容易性の点から同一であることが好ましい。
【0064】
これらのアリール基は、例えば、1〜5個の置換基を有することができる。
前記置換基としては、例えば、電子吸引性基、電子供与性基などが挙げられる。
前記電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン基(例えば、クロロ基、ブロモ基等)、トリフルオロメチル基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、ホルミル基などが挙げられる。
前記電子供与性基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等)、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基(例えば、モノメチルアミノ基等)、ジアルキルアミノ基(例えば、ジメチルアミノ基等)などが挙げられる。
【0065】
置換基を有するフェニル基の具体例としては、例えば、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基などが挙げられる。
【0066】
なお、置換基として電子吸引性基を使用することにより、シラノール基の水酸基の酸度を上げることができる。置換基として電子供与性基を使用することにより、シラノール基の水酸基の酸度を下げることができる。そのため、置換基により、硬化活性のコントロールが可能となる。
ここで、m個のAr毎に、置換基が異なっていてもよいが、m個のArについて入手容易性の点から置換基は同一であることが好ましい。また、一部のArだけに置換基があり、他のArに置換基が無くてもよい。
【0067】
前記アリールシラノール化合物としては、下記一般式(B)で表される化合物が、特性が優れかつ合成が比較的容易である点で、好ましい。
【化8】
ただし、前記一般式(B)中、Zは、電子吸引性基を表す。aは、0〜5の整数である。
【0068】
<<シランカップリング剤>>
前記シランカップリング剤としては、分子中に1〜3の低級アルコキシ基を有するものであり、分子中に熱硬化性樹脂の官能基に対して反応性を有する基、例えば、ビニル基、スチリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を有していてもよい。なお、アミノ基やメルカプト基を有するカップリング剤は、本発明において使用する潜在性硬化剤がカチオン型硬化剤であるため、アミノ基やメルカプト基が発生カチオン種を実質的に捕捉しない場合に使用することができる。
【0069】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0070】
前記カチオン硬化性組成物における前記有機シラン化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記カチオン硬化剤100質量部に対して、50質量部〜500質量部が好ましく、100質量部〜300質量部がより好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施例1−1)
<化合物Aの合成>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を具備した100ml3つ口フラスコにN
2を導入した状態で東京化成工業製アルミニウム−sec−ブトキシド5.0g(20.3mmol)とシクロヘキサン20gを投入した。そこに、室温で攪拌しながら関東化学製トリフェニルシラノール16.83g(60.9mmol)を投入したのち50℃まで昇温し、5時間反応を行った。反応終了後、析出した固体を減圧濾過により取り出し、シクロヘキサンで洗浄を行い、さらに25℃減圧下で24時間乾燥させることで、透明固体の化合物A17.1gを得た。
【化9】
【0073】
(実施例1−2)
<化合物Bの合成>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を具備した100ml3つ口フラスコにN
2を導入した状態で東京化成工業製アルミニウム−sec−ブトキシド5.0g(20.3mmol)とシクロヘキサン10gと酢酸エチル2gを投入した。そこに、室温で攪拌しながら東京化成工業製アセチルアセトン2.032g(20.3mmol)をシクロヘキサン10gに溶解させたものを10分間で添加した。10分攪拌しながら反応後、関東化学製トリフェニルシラノール11.22g(40.6mmol)を投入したのち50℃まで昇温し、5時間反応を行った。反応終了後、析出した固体を減圧濾過により取り出し、シクロヘキサンで洗浄を行い、さらに25℃減圧下で24時間乾燥させることで、白色固体の化合物B13.5gを得た。
【化10】
【0074】
(実施例1−3)
<化合物Cの合成>
実施例2において、アセチルアセトンを4.065g(40.6mmol)とし、トリフェニルシラノールを5.61g(20.3mmol)とした以外は、実施例1−2と同様にして、白色固体の化合物C9.9gを得た。
【化11】
【0075】
(実施例1−4)
<化合物Dの合成>
攪拌機、温度計、及び窒素導入管を具備した100ml3つ口フラスコにN
2を導入した状態で川研ファインケミカル製ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート)5.0g(18.2mmol)とシクロヘキサン20gを投入した。そこに、室温で攪拌しながら関東化学製トリフェニルシラノール10.1g(36.5mmol)を投入したのち76℃まで昇温し、シクロヘキサンと脱離したイソプロパノールを留去しながら2時間反応を行った。途中、留去により失ったシクロヘキサンの補充を2回ほど行った。反応終了後、シクロヘキサンの留去を1時間ほど継続した後冷却し、さらに30℃減圧下で48時間乾燥させることで、白色固体の化合物D12.5gを得た。
【化12】
【0076】
(製造例1)
<多孔質粒子1−1の作製>
特開2009−203477号公報に実施例1として記載されている方法で多孔質粒子1−1を作製した。
ポリウレア樹脂で構成される多孔質粒子1−1は、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を保持している。
【0077】
(製造例2)
<多孔質粒子1−2の作製>
特開2009−221465号公報に実施例1として記載されている方法で多孔質粒子1−2を作製した。
ポリウレア樹脂及びビニル樹脂で構成される多孔質粒子1−2は、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を保持している。
【0078】
(製造例3)
<多孔質粒子1−3の作製>
特開2009−221465号公報に実施例9として記載されている方法で多孔質粒子1−3を作製した。
ポリウレア樹脂及びビニル樹脂で構成される多孔質粒子1−3は、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を保持している。
【0079】
(製造例4)
<多孔質粒子1−4の作製>
特開2012−188596号公報に実施例1として記載されている方法で多孔質粒子1−4を作製した。
ポリウレア樹脂で構成される多孔質粒子1−4は、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を保持している。
【0080】
(使用例1)
特開2013−100382号公報の実施例6において使用している多孔質シリカ(AGCエスアイテック社製:商品名サンスフェアH−32)を多孔質粒子1−5として用意した。
【0081】
(実施例2−1)
<多孔質粒子2−1の作製>
まず、多孔質粒子1−1 3.0gと酢酸エチル30gを100mlナスフラスコに投入し、1時間室温にて攪拌後減圧濾過を行い、多孔質粒子を洗浄した。なお、係る洗浄は、多孔質粒子1−1からアルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を取り除く操作である。
そののち、濾過残渣として得られた多孔質粒子をN
2導入管を具備した100ml3つ口フラスコに移し、化合物A 3.0gと酢酸エチル30gを加え、N
2ガスを導入しながらオイルバスにて50℃にて15分攪拌後、オイルバスの温度を70℃に昇温し、攪拌しながら酢酸エチルを留去することにより液を濃縮し、多孔質粒子1−1内部に化合物Aを保持させた。濃縮終了後冷却し室温にて24時間放置後、シクロヘキサン60gを投入し1時間攪拌を行った。その後、減圧濾過後シクロヘキサン30gで洗浄を行い再度減圧濾過し、濾過残渣を30℃にて24時間減圧乾燥することで化合物Aが内部に保持された多孔質粒子2−1を作製した。
【0082】
(実施例2−2〜実施例2−7)
<多孔質粒子2−2〜2−7の作製>
実施例2−1と同様にして、後述の表1に記載の多孔質粒子と内部に保持させる化合物を替えることで化合物を内部に保持された多孔質粒子2−2〜2−7を作製した。
【0083】
(実施例2−8)
<多孔質粒子2−8の作製>
まず、多孔質粒子1−5 3.0gを100ml3つ口フラスコに入れ、100℃にて3時間減圧乾燥させた。冷却後、フラスコをオイルバス浴に移し、N
2導入管と温度計を設置し、N
2ガスを導入しながら化合物A 3.0gと酢酸エチル30gを加え、50℃にて15分攪拌後、オイルバスの温度を70℃に設定し、攪拌しながら酢酸エチルを留去することにより液を濃縮し、多孔質粒子1−5に化合物Aを保持させた。濃縮終了後冷却し室温にて24時間放置後、シクロヘキサン60gを投入し1時間攪拌を行った。その後、減圧濾過後シクロヘキサン30gで洗浄を行い再度減圧濾過し、濾過残渣を30℃にて24時間減圧乾燥することで化合物Aが内部に保持された多孔質粒子2−8を作製した。
【0084】
(比較例2−1)
<多孔質粒子3−1の作製>
実施例2−1において、化合物Aの代わりに川研ファインケミカル製アルミキレートD(アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液)を1.32g使用した以外は、実施例2−1と同様にして、多孔質粒子1−1の内部にアルミキレートDが内部に保持された多孔質粒子3−1を作製した。
【0085】
(比較例2−2〜比較例2−4)
<多孔質粒子3−2〜3−4の作製>
比較例2−1において、多孔質粒子1−1の代わりにそれぞれ多孔質粒子1−2〜1−4を使用した以外は、比較例2−1と同様にしてアルミキレートDが内部に保持された多孔質粒子3−2〜3−4を作製した。
【0086】
(比較例2−5)
<多孔質粒子3−5の作製>
実施例2−8において、化合物Aの代わりに川研ファインケミカル製アルミキレートD(アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)の24%イソプロパノール溶液)を1.32g使用した以外は、実施例2−8と同様にして、アルミキレートDが内部に保持された多孔質粒子3−5を作製した。
【0087】
上記実施例2−1〜実施例2−8における使用多孔質粒子と使用化合物を表1に記載する。
上記比較例2−1〜比較例2−5における使用多孔質粒子と使用化合物を表2に記載する。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表2において、AlキレートDは、川研ファインケミカル製アルミキレートD(アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)を表す。以下の表においても同様である。
【0091】
(実施例3−1)
<カチオン硬化性組成物A−1の調製>
YL980(三菱化学株式会社製ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂) 100質量部、関東化学株式会社製トリフェニルシラノール 5質量部、及び実施例2−1で作製した多孔質粒子2−1 2質量部を配合し、カチオン硬化性組成物A−1を調製した。
【0092】
(実施例3−2〜実施例3−8)
(カチオン硬化性組成物A−2〜A−8の調製)
実施例3−1において、使用する多孔質粒子を表3に記載の通りに代えた以外は、実施例3−1と同様にして、カチオン硬化性組成物A−2〜A−8を調製した。
【0093】
(比較例3−1〜比較例3−5)
<カチオン硬化性組成物B−1〜B−5の調製>
実施例3−1において、比較例2−1〜比較例2−5で作製した多孔質粒子3−1〜3−5を表4に記載の通りに用いた以外は、実施例3−1と同様にしてカチオン硬化性組成物B−1〜B−5を調製した。
【0094】
上記実施例3−1〜実施例3−8の内容を以下の表3にまとめる。
上記比較例3−1〜比較例3−5の内容を以下の表4にまとめる。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
<カチオン硬化性評価>
実施例3−1〜実施例3−8及び比較例3−1〜比較例3−5で調製したカチオン硬化性組成物の各5mgをDSC6200用のΦ5mmのアルミ容器に入れ、示差走査熱量測定を行い、その発熱ピーク温度を評価した。
当業界で良く知られているように、カチオン硬化は発熱反応であり、示差走査熱量測定による発熱ピーク温度はカチオン硬化における硬化性を反映しており、より低温である方がよい。
示差走査熱量測定の条件は以下のとおりである。
<<測定条件>>
昇温速度 10℃/min(25℃〜300℃)
N
2ガス 100ml/min
結果を表5及び表6に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
表5及び6より、同一多孔質粒子での比較(実施例3−1と比較例3−1、実施例3−2と比較例3−2、実施例3−3と比較例3−3、実施例3−4と比較例3−4、実施例3−8と比較例3−5)では、いずれも本発明の化合物が保持された多孔質粒子でピーク温度の低温化が実現している。すなわち、本発明の化合物が保持された多孔質粒子(カチオン硬化剤)は、硬化性が向上している。
また、本発明の化合物は、実施例3−3及び実施例3−5〜実施例3−7と比較例3−3との比較により、いずれも低温化が実現していることがわかる。
【0101】
(実施例4−1)
<多孔質粒子4−1の作製>
n−プロピルトリメトキシシラン(KBM−3033、信越化学工業(株))1.0gをシクロヘキサン9gに溶解して表面不活性化処理液を調製し、この処理液に実施例2−1で作製した多孔質粒子2−1 1.0gを投入し、その混合物を30℃で20時間撹拌した。その後、シクロヘキサン10gで洗浄しながら減圧濾過を行い、多孔質粒子を濾別し、40℃にて6時間減圧乾燥して、表面処理された多孔質粒子4−1を作製した。
【0102】
(実施例4−2〜実施例4−8)
<多孔質粒子4−2〜4−8の作製>
実施例4−1において、使用した多孔質粒子を表7に記載の通りに代えた以外は、実施例4−1と同様の操作を行い、表面処理された多孔質粒子4−2〜4−8を作製した。
【0103】
(比較例4−1〜比較例4−5)
<多孔質粒子5−1〜5−5の作製>
実施例4−1において、使用した多孔質粒子を表8に記載の通りに代えた以外は、実施例4−1と同様の操作を行い、表面処理された多孔質粒子5−1〜5−5を作製した。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
(実施例5−1)
<カチオン硬化性組成物C−1の調製>
YL980(三菱化学株式会社製ビスフェノールAタイプエポキシ樹脂) 60質量部、ダイセル化学工業製セロキサイド2021P 15質量部、東亞合成株式会社製アロンオキセタンOXT−221 25質量部、関東化学株式会社製トリフェニルシラノール 5質量部、及び実施例4−1で作製した多孔質粒子4−1 2質量部を配合し、カチオン硬化性組成物C−1を調整した。
【0107】
(実施例5−2〜実施例5−8)
<カチオン硬化性組成物C−2〜C−8の調製>
実施例5−1において、使用する多孔質粒子を表9に記載の多孔質粒子に代えた以外は、実施例5−1と同様にして、カチオン硬化性組成物C−2〜C−8を調製した。
【0108】
(比較例5−1〜比較例5−5)
<カチオン硬化性組成物D−1〜D−5の調製>
比較例4−1〜比較例4−5で作製した多孔質粒子5−1〜5−5を表10に記載の通りに用い、実施例5−1と同様にしてカチオン硬化性組成物D−1〜D−5を調製した。
【0109】
上記実施例5−1〜実施例5−8の内容を以下の表9にまとめる。
上記比較例5−1〜比較例5−5の内容を以下の表10にまとめる。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
<カチオン硬化性評価>
実施例5−1〜実施例5−8及び比較例5−1〜比較例5−5で調製したカチオン硬化性組成物の各5mgをDSC6200用のΦ5mmのアルミ容器に入れ、示差走査熱量測定を行い、その発熱ピーク温度を前述と同様に評価した。
【0113】
<カチオン硬化性組成物の保存安定性の評価>
実施例5−1〜実施例5−8及び比較例5−1〜比較例5−5で調製したカチオン硬化性組成物を密閉容器中で25℃にて1日(24時間)保管し、保管前後の示差走査熱量測定での発熱量を比較することで、保管中の反応率を見積もった。硬化性と併せ、結果を表11及び12に記載する。
なお、反応率は、以下の式により求めた。
反応率(%)=
100×〔(保管前の発熱量)−(保管後の発熱量)〕/(保管前の発熱量)
【0114】
【表11】
【0115】
【表12】
【0116】
表11及び表12より、同一多孔質粒子での比較(実施例5−1と比較例5−1、実施例5−2と比較例5−2、実施例5−3と比較例5−3、実施例5−4と比較例5−4、実施例5−8と比較例5−5)ではいずれも本発明の化合物が保持された多孔質粒子でピーク温度の低温化が実現している。すなわち、本発明の化合物が保持された多孔質粒子(カチオン硬化剤)は、硬化性が向上している。
また、本発明の化合物は実施例5−3及び実施例5−5〜実施例5−7と比較例5−3との比較により、いずれも低温化が実現していることがわかる。
さらに、25℃1day保管での反応率は本発明と比較例でほとんど差はなく、本発明の多孔質粒子は保存性を損なわずに硬化性を上げられているといえる。すなわち、本発明の化合物が保持された多孔質粒子(カチオン硬化剤)は、潜在性を損なわずに硬化性が向上している。
なお、実施例3−1〜実施例3−8、及び比較例3−1〜実施例3−5では、カチオン硬化性組成物の保存安定性の評価を行わなかった。これは、カチオン硬化成分の組成上、保存性が低くないためであるが、実施例3−1〜実施例3−8、及び比較例3−1〜比較例3−5においても、本発明の化合物が保持された多孔質粒子(カチオン硬化剤)は、潜在性を損なわずに硬化性が向上している点は、同様である。