特開2019-11281(P2019-11281A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人大阪産業技術研究所の特許一覧 ▶ 日光ケミカルズ株式会社の特許一覧 ▶ 日本サーファクタント工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社コスモステクニカルセンターの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-11281(P2019-11281A)
(43)【公開日】2019年1月24日
(54)【発明の名称】油増粘剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/42 20060101AFI20181221BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20181221BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20181221BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20181221BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20181221BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20181221BHJP
【FI】
   A61K8/42
   A61Q1/00
   A61Q19/00
   A61K9/06
   A61K9/10
   A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-128799(P2017-128799)
(22)【出願日】2017年6月30日
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000226437
【氏名又は名称】日光ケミカルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228729
【氏名又は名称】日本サーファクタント工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301068114
【氏名又は名称】株式会社コスモステクニカルセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】東海 直治
(72)【発明者】
【氏名】懸橋 理枝
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 勇也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悟
(72)【発明者】
【氏名】関根 憲
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA16
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD37A
4C076DD38A
4C076DD46A
4C076DD52G
4C076FF17
4C076FF35
4C083AA122
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC262
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC641
4C083AC642
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD352
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB60
4C083CC02
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC13
4C083CC23
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油類に容易に溶解し、かつ透明なオイルゲルを形成する油増粘剤の提供。
【解決手段】式(I)又は(II)に表される非対称ジアミド構造を有する化合物である油増粘剤。前記増粘剤を含有する化粧料及び皮膚外用剤並びに乳化組成物。

[R1はC9〜30の飽和又は不飽和直鎖アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基;AはC1〜10のアルキレン基、炭素数8〜10のアラルキレン基又はアリーレン基;R2は炭素数7〜30の飽和/不飽和分枝アルキル基]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)または(II)に表される非対称ジアミド構造を有する化合物である油増粘剤。
【化1】
(式中、R1は炭素数9〜30の飽和または不飽和直鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基数を表し、
Aは炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数8〜10のアラルキレン基、アリーレン基を表し、
2は炭素数7〜30の飽和または不飽和分枝アルキル基を表す。)
【請求項2】
一般式(I)のR2が炭素数17〜18の飽和または不飽和分枝アルキル基である、請求項1記載の油増粘剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の油増粘剤を含有するオイルゲル。
【請求項4】
請求項1または2記載の油増粘剤を含有する化粧料および皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1または2記載の油増粘剤を含有する乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の油への溶解性に優れ、かつ透明なオイルゲルを形成する飽和または不飽和直鎖アルキル基と飽和または不飽和分枝アルキル基を有する非対称ジアミド構造を有する化合物である油増粘剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲル形成能力や液体を増粘する能力を有する物質(ゲル化剤)により形成された三次元網目または紐状構造中に流体が含まれている構造体をゲルと呼び、一般に流体が水である場合をヒドロゲル(ハイドロゲル)、水以外の有機液体(有機溶媒や油剤等)の場合をオルガノゲル又はオイルゲルと呼んでいる。
オイルゲル(オルガノゲル)は、化粧品、医薬品、農薬、食品、接着剤、塗料、樹脂等の分野において有機液体の流動性の調整に利用されている。その他にも廃油をゲル化して固形物として水質汚染を防止したりする等、環境保全の分野においても幅広く利用されている。
【0003】
有機溶媒や油剤等を増粘化、ゲル化させる化合物は大きく分けて高分子増粘剤、低分子増粘剤に分類される。
高分子増粘剤は、その分子量のばらつきによって品質が安定しない問題があり、オイルゲルがべとついてしまいパーソナルケア製品に配合した際に使用感に悪影響が出ることが問題となっている。
一方の低分子増粘剤においては、安定した品質のものが得られ、かつチキソトロピー性を示すためパーソナルケア製品に配合した際に使用感に優れたオイルゲルが得られる。これまでに、オリゴデキストリン脂肪酸エステル(特許文献1)、N−アシルアミノ酸誘導体(特許文献2,3)、アミノアミド誘導体(特許文献4)、スクアリン酸アミド誘導体(特許文献5)などが開発されており実際に使用されている。
しかしながら、これら既存の低分子ゲル化剤は、有機溶媒や油剤を透明に溶解しない、溶解できる有機溶媒や油剤の選択の幅が非常に狭いことや、溶解できても100℃以上の高温にする必要がある等、利便性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−145851号公報
【特許文献2】特開2010−260795号公報
【特許文献3】特開2008−222759号公報
【特許文献4】特表2014−524901号公報
【特許文献5】特開2013−060496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の有機溶媒や油剤への溶解性に優れ、かつ透明なオイルゲルを形成する油増粘剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究した結果、一般式(I)または(II)で表される非対称ジアミド構造を有する油増粘剤が炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の有機溶媒や油剤に容易に溶解し、かつ透明なオイルゲルを形成し、さらに有機溶剤や油剤等の粘度を増大させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、下記一般式(I)または(II)に表される非対称ジアミド構造を有する化合物である油増粘剤を提供する。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1は炭素数9〜30の飽和または不飽和直鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基数を表し、
Aは炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数8〜10のアラルキレン基、アリーレン基を表し、
2は炭素数7〜30の飽和または不飽和分枝アルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の油増粘剤は、植物油、動物油、鉱物油、合成油、有機溶媒およびこれらの混合物等などの様々な有機溶媒や油剤に容易に溶解するオイルゲルを形成することができる。
さらに本発明の油増粘剤は、前記のように安定したオイルゲルを形成することで、化粧料、皮膚外用剤、乳化組成物に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油増粘剤は、一般式(I)または(II)で表される非対称ジアミド構造を有する化合物を含んでいるものである。
本発明の油増粘剤は、一般式(I)または(II)で表される非対称ジアミド構造を有する化合物のみからなるものでもよいし、本発明の効果が得られる範囲であれば公知の他の油増粘剤を含んでいてもよい。公知の他の油増粘剤を含む場合は、油増粘剤の全量中10質量%以下であることが好ましい。
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、R1は炭素数9〜30の飽和または不飽和直鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基数を表し、
Aは炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数8〜10のアラルキレン基、アリーレン基を表し、
2は炭素数7〜30の飽和または不飽和分枝アルキル基を表す。)
【0014】
一般式(I)または(II)中のR1は、炭素数9〜30の飽和または不飽和直鎖アルキル基、アルケニル基、アルキニル基であれば、油性成分をゲル化、増粘作用を付与する効果を十分に発揮するものであり、R1の炭素数が9より小さければ増粘効果が発揮されず、さらに炭素数が30より大きければ有機溶媒や油剤への溶解性が著しく減少する。好ましくはR1が炭素数12〜22の飽和直鎖アルキル基である。
【0015】
一般式(I)または(II)中のR2は、炭素数7〜30の飽和または不飽和分枝アルキル基であれば油性成分をゲル化、増粘作用を付与する効果を十分に発揮するものであり、この範囲外では有機溶媒や油剤への溶解性が著しく減少する。好ましくは、R2が炭素数17〜18の飽和または不飽和分枝アルキル基であり、例えば、2−ヘプチルウンデシル基、1−ヘプチルデシル基、2−(1,3,3−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチルオクチル基、1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルヘプチル基である。
【0016】
一般式(I)または(II)で表される非対称ジアミド構造を有する化合物は、カルボン酸とアミンの酸触媒を用いた脱水縮合、塩基触媒を用いた脱水縮合、カルボジイミドを用いた脱水縮合、エステル−アミド交換反応、酸ハロゲン化物とアミンの反応等、一般にアミドを形成する反応を用いて合成できる。
【0017】
本発明の油増粘剤は、従来の油増粘剤と比較して低温で有機溶媒や油剤に溶解することができ、チキソトロピー性のオイルゲルを得ることができる。ゲル強度は、本発明の油増粘剤の濃度により調整することが可能である。
有機溶媒や油剤への配合量については特に制限するものではないが、有機溶媒や油剤100質量部に対して0.05質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。
【0018】
本発明の油増粘剤は、植物油、動物油、鉱物油、合成油、有機溶媒およびこれらの混合物等の様々な有機溶媒や油剤に容易に溶解し、透明なオイルゲルを形成することができる。
これは、一般式(I)または(II)で表される非対称ジアミド構造を有する化合物の構造にある2つのアミド基の間で、水素結合と直鎖または不飽和のアルキル基等のファンデルワールス力により、有機溶媒や油剤中において網目または紐状のネットワーク構造を形成して、有機溶媒や油剤のゲル化、増粘効果を示し、さらに網目または紐状ネットワーク構造の外側に飽和または不飽和分枝アルキル基等が配向することで有機溶媒や油剤等を容易に溶解する性能を発揮しているものである。
【0019】
植物油としては、例えば、オリーブ油、からし油、小麦胚芽油、米ぬか油、ごま油、サフラワー油、大豆油、コーン油、菜種油、パーム油、ひまわり油、綿実油、ヤシ油、落花生油、ツバキ油、カカオ油等が挙げられる。
動物油としては、例えば、EPA油、DHA油、牛脂、鶏脂、豚脂、羊脂、まいわし油、さば油、たら油、鯨油等が挙げられる。
鉱物油としては、例えば原油、ナフサ、石油エーテル、流動パラフィン、ガソリン、ケロシン、灯油、軽油、重油、エンジンオイル等が挙げられ、合成油としては、各種エステル油、エーテル油、トリグリセリド、炭化水素油(スクワラン等)、ポリエステル油、その他にもシリコーン油等が挙げられる。
有機溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ピリジン、ピコリン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン等が挙げられる。また、廃油をゲル化して固形物として水質汚染を防止したりするにも有用である。
【0020】
本発明の油増粘剤の性状は、R1,R2,Aの種類、または分子量に依存して常温ではペースト状〜固体を呈する。
【0021】
次に本発明の油増粘剤を含有する化粧料および皮膚外用剤について詳述する。
本発明の化粧料は、本発明の油増粘剤を含有するもので、その剤型は任意であり、一般に従来の化粧料用油剤を含有する化粧料および皮膚外用剤をすべて含み、その用途は特に限定されるものではない。
例えば、シャンプー、洗顔剤、歯磨き、ボディシャンプー等の洗浄を目的とするもの、コールドクリーム、バニシングクリーム等のクリーム状化粧品、乳液、化粧水等の基礎化粧品、仕上げ化粧品、例えばパーマネントウェーブ、整髪料、ヘアーリキッド、ヘアーリンス等の頭髪用化粧品、バスオイル等が挙げられ、さらにクレンジング、パック、マッサージ料、美容液、美容オイル、ハンドクリーム、リップクリーム、しわ隠し化粧料、メークアップ下地、コンシーラー、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅等のメークアップ化粧料、制汗剤、日焼け止めオイルや日焼け止め乳液、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料等が挙げられる。さらに皮膚外用剤、医薬用軟膏等にも好適に使用できる。
【0022】
本発明の化粧料および皮膚外用剤中の油増粘剤の含有量は、配合する油剤の量にもよるが、化粧料および皮膚外用剤100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜3.0質量部である。
【0023】
本発明の油増粘剤を含有する化粧料および皮膚外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、通常の化粧料または皮膚外用剤に用いられる各種成分、例えば、界面活性剤、油性成分、高級アルコール、活性成分、保湿成分、抗菌成分、粘度調整剤、紫外線吸収剤、色素、香料等を配合できる。
【0024】
次に本発明の油増粘剤を含有する乳化組成物について詳述する。
本発明の油増粘剤をエマルション製剤に配合することで油相の流動性が低下し、乳化組成物の安定性が向上する。これらの乳化組成物の形態としては、水性エマルション、油性エマルション、油中水型エマルション、水中油型エマルション、W/O/WやO/W/Oなどのマルチエマルション等、種々の形態を選択することができる。
【0025】
本発明の乳化組成物は、水を含有する有機溶媒および油剤成分でも問題なくオイルゲルを形成することができ、また、各種電解質の影響を受けずに調製することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成1>
1,4−ジアミノブタン88gとパルミチン酸メチル270gをアセトニトリル1000gに溶解し、副生するメタノールを留去しながら加熱攪拌させた。
冷却後、生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、トリエチルアミン6.1gを加えた後、150℃で加熱攪拌しながら1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルオクタン酸284gを徐々に滴下した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで目的とする下記式(III)に示す非対称ジアミド化合物(本発明品1)を541g得た。
【0028】
【化2】
【0029】
実施例2<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成2>
無水コハク酸100gをテトラヒドロフラン1000gに溶解し、40℃で加熱攪拌しながらヘキサデシルアミン242gを徐々に滴下した。
冷却後、溶媒を留去して生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルオクチルアミン270gと10−カンファースルホン酸3gを加えた後、150℃で30分加熱攪拌した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで目的とする下記式(IV)に示す非対称ジアミド化合物(本発明品2)を532g得た。
【0030】
【化3】
【0031】
実施例3<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成3>
両末端ジアミノ化合物1モルと当量の直鎖カルボン酸メチルエステルをアセトニトリル1000gに溶解し、副生するメタノールを留去しながら加熱攪拌させた。
冷却後、生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、トリエチルアミン6.1gを加えた後、150℃で加熱攪拌しながら当量の分枝カルボン酸を徐々に滴下した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで各種非対称ジアミド化合物である本発明品3〜15および比較品1〜7を収率56〜97%で得た。得られた非対称ジアミド化合物のR1、A、R2は下記表1、表2に示す通りである。
【0032】
実施例4<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成4>
両末端カルボン酸化合物1モルをテトラヒドロフラン1000gに溶解し、40℃で加熱攪拌しながら、当量の直鎖アルキル基を有する1級アミンを徐々に滴下した。
冷却後、溶媒を留去して生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、当量の分枝アルキル基を有する1級アミンと10−カンファースルホン酸3gを加えた後、150℃で30分加熱攪拌した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで各種非対称ジアミド化合物である本発明品16〜28および比較品8〜14を収率63〜94%で得た。得られた非対称ジアミド化合物のR1、A、R2は下記表3、表4に示す通りである。
【0033】
実施例5
(オイルゲル化能の評価)
実施例1〜4で得た本発明品の油増粘剤0.1gを流動パラフィン20gに70℃で溶解し、室温に冷却した際の相対透過率を紫外・可視分光光度計(日本分光株式会社,V−600)を用いて測定し、下記に示す5段階の評価基準に従って表した。ここで示す相対透過率とは、流動パラフィンの透過率(100%)に対するオイルゲルの透過率を百分率で表したものである。
【0034】
(評価基準)
◎:相対透過率100%以下〜90%未満の透明なゲルを形成
○:相対透過率90%以上〜75%未満の透明なゲルを形成
△:相対透過率75%以下の不透明なゲルを形成
×:ゲル化も増粘もしない
−:流動パラフィンに不溶
【0035】
(評価結果)
評価結果を表1〜表4に示す。本発明品の油増粘剤を流動パラフィンに溶解することで、透明なオイルゲルを形成することができた。
比較品においては、R1に相当する直鎖アルキル基が極端に短いものはゲル化能が見られず、長いものは流動パラフィンを溶解しなかった。R2に相当する分枝アルキル基は、短い鎖長と長い鎖長の双方で溶解性が著しく低下した。Aに関しては、炭素数が10を超えると流動パラフィンに溶解するものの、ゲル化能が失われていた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
実施例6
本発明品1の油増粘剤の各種有機溶媒と油剤に対するゲル化評価を行った。
(1)使用有機溶媒および油剤と本発明品の濃度評価
本発明品1を表5に示す各種有機溶媒および油剤に70℃で均一溶解し、室温に冷却してオイルゲルを容器内に作成した。この時、容器を逆さにしても有機溶媒および油剤が完全に流れ落ちなくなる固さのゲルを形成するのに必要な濃度を求めた。
【0041】
(2)結果
結果を表5に示す。本発明品1において、動植物油、鉱物油、合成油に対してほとんどの油剤を0.5質量%以下、有機溶剤を3.0質量%以下の添加量でゲル化することを確認した。
【0042】
【表5】
【0043】
実施例7
本発明品1の油増粘剤を乳化物に添加した際の安定性評価を行った。
(1)乳化組成物の調製
本発明品1を用いて、表6に記載の処方にて乳化組成物を調製した。配合量は質量%である。A相成分、B相成分をそれぞれ量りとり、80℃に加温した。A相成分とB相成分をホモミキサー(5,000rpm、2分間)にて乳化組成物を得た。
(2)乳化組成物の安定性評価
(1)で調製した乳化組成物の安定性を評価した。乳化組成物を調製後、所定の温度に1週間静置したものを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0044】
(評価基準)
○:乳化粒子径が変化せず、分離ともになし
△:分離はしていないが、乳化粒子径が増大している
×:分離している
【0045】
(3)結果
結果を表6に示す。本発明品の油増粘剤は、乳化組成物の安定性を向上させることが確認できた。
【0046】
【表6】
【0047】
以下に本発明の油増粘剤を含有する化粧料および皮膚外用剤の応用例を示す。配合量は質量%(合計で100質量%)である。
実施例8〜12は、いずれも実施例5〜7の評価法によってゲル化や増粘効果、安定化が認められた。
【0048】
実施例8(オイルクレンジングジェル)
A相
本発明品2 0.4(質量%)
ラウリン酸ポリグリセリル−6 12.0
ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル−10 6.0
ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10 2.0
イソステアリン酸 0.5
ラウリン酸−2−オクチル 62.0
オリーブ油 1.0
トコフェロール 0.1
香料 適量
B相
エタノール 1.0
キサンタンガム 0.3
精製水 残部
(調製方法)
A相を加温して均一溶解した後、室温でB相を加えてディスパーミキサーで3000rpm,3分間攪拌して調製する。
【0049】
実施例9(スキンケアジェル)
A相
本発明品1 1.0(質量%)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 40.0
スクワラン 45.0
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 10.0
トコフェロール 0.1
防腐剤 適量
(調製方法)
A相を70℃で加温して均一溶解し、撹拌を続けて30℃まで冷却する。
【0050】
実施例10(リップクリーム[金皿成型])
A相
本発明品9 2.0(質量%)
カルナウバワックス 2.0
キャンデリラワックス 3.0
セレシン 6.0
トリエチルヘキサノイン 60.0
リンゴ酸ジイソステアリル 6.0
エチルヘキサン酸セチル 5.0
ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6 5.5
B相
着色料 3.5
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相を混合し、80℃で加熱する。ホモミキサーで撹拌しながら、B相を加えて5分間撹拌する。60℃まで冷却し、脱泡後、金皿へ流し込み室温まで冷却する。
【0051】
実施例11(保湿クリーム)
A相
セラミド2 0.1(質量%)
本発明品1 0.1
カプリル酸プロピレングリコール 3.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5.0
ステアリルアルコール 2.0
セタノール 2.0
B相
グリセリン 3.0
1,3−ブチレングリコール 8.0
キサンタンガム 0.3
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相成分およびB相成分をそれぞれ80℃に加温し、均一溶解後ホモミキサーで乳化する。その後、室温まで冷却する。
【0052】
実施例12(皮膚外用剤[軟膏製剤])
A相
POE(30)セチルエーテル 2.0(質量%)
本発明品1 0.3
モノステアリン酸グリセリル 9.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5.0
セタノール 6.0
バチルアルコール 1.0
B相
グリセリン 3.0
1,3−ブチレングリコール 8.0
プロピレングリコール 10.0
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相を加温して均一溶解した後、室温でB相を加えてディスパーミキサーで3000rpm,3分間攪拌して調製する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の油増粘剤は、炭化水素油、エステル油、トリグリセリド、動植物油、鉱物油など種類を問わず透明に増粘、ゲル化させることができ、化粧品、医薬品、農薬、食品、接着剤、塗料、樹脂等の分野において、流動性の調整に利用でき、さらに、廃油をゲル化して固形物として水質汚染を防止したりする等、環境保全の分野においても幅広く利用できる。