【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成1>
1,4−ジアミノブタン88gとパルミチン酸メチル270gをアセトニトリル1000gに溶解し、副生するメタノールを留去しながら加熱攪拌させた。
冷却後、生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、トリエチルアミン6.1gを加えた後、150℃で加熱攪拌しながら1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルオクタン酸284gを徐々に滴下した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで目的とする下記式(III)に示す非対称ジアミド化合物(本発明品1)を541g得た。
【0028】
【化2】
【0029】
実施例2<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成2>
無水コハク酸100gをテトラヒドロフラン1000gに溶解し、40℃で加熱攪拌しながらヘキサデシルアミン242gを徐々に滴下した。
冷却後、溶媒を留去して生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、1−(1,3,3−トリメチルブチル)−4,6,6−トリメチルオクチルアミン270gと10−カンファースルホン酸3gを加えた後、150℃で30分加熱攪拌した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで目的とする下記式(IV)に示す非対称ジアミド化合物(本発明品2)を532g得た。
【0030】
【化3】
【0031】
実施例3<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成3>
両末端ジアミノ化合物1モルと当量の直鎖カルボン酸メチルエステルをアセトニトリル1000gに溶解し、副生するメタノールを留去しながら加熱攪拌させた。
冷却後、生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、N,N−ジメチルホルムアミド500gに溶解し、トリエチルアミン6.1gを加えた後、150℃で加熱攪拌しながら当量の分枝カルボン酸を徐々に滴下した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで各種非対称ジアミド化合物である本発明品3〜15および比較品1〜7を収率56〜97%で得た。得られた非対称ジアミド化合物のR
1、A、R
2は下記表1、表2に示す通りである。
【0032】
実施例4<非対称ジアミド構造を有する化合物(油増粘剤)の合成4>
両末端カルボン酸化合物1モルをテトラヒドロフラン1000gに溶解し、40℃で加熱攪拌しながら、当量の直鎖アルキル基を有する1級アミンを徐々に滴下した。
冷却後、溶媒を留去して生成した結晶をメタノール300gで洗浄、乾燥した後、当量の分枝アルキル基を有する1級アミンと10−カンファースルホン酸3gを加えた後、150℃で30分加熱攪拌した。
冷却後、得られた結晶を加温した酢酸エチルに溶解して分液ロートで水洗し、メタノールから再結晶することで各種非対称ジアミド化合物である本発明品16〜28および比較品8〜14を収率63〜94%で得た。得られた非対称ジアミド化合物のR
1、A、R
2は下記表3、表4に示す通りである。
【0033】
実施例5
(オイルゲル化能の評価)
実施例1〜4で得た本発明品の油増粘剤0.1gを流動パラフィン20gに70℃で溶解し、室温に冷却した際の相対透過率を紫外・可視分光光度計(日本分光株式会社,V−600)を用いて測定し、下記に示す5段階の評価基準に従って表した。ここで示す相対透過率とは、流動パラフィンの透過率(100%)に対するオイルゲルの透過率を百分率で表したものである。
【0034】
(評価基準)
◎:相対透過率100%以下〜90%未満の透明なゲルを形成
○:相対透過率90%以上〜75%未満の透明なゲルを形成
△:相対透過率75%以下の不透明なゲルを形成
×:ゲル化も増粘もしない
−:流動パラフィンに不溶
【0035】
(評価結果)
評価結果を表1〜表4に示す。本発明品の油増粘剤を流動パラフィンに溶解することで、透明なオイルゲルを形成することができた。
比較品においては、R
1に相当する直鎖アルキル基が極端に短いものはゲル化能が見られず、長いものは流動パラフィンを溶解しなかった。R
2に相当する分枝アルキル基は、短い鎖長と長い鎖長の双方で溶解性が著しく低下した。Aに関しては、炭素数が10を超えると流動パラフィンに溶解するものの、ゲル化能が失われていた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
実施例6
本発明品1の油増粘剤の各種有機溶媒と油剤に対するゲル化評価を行った。
(1)使用有機溶媒および油剤と本発明品の濃度評価
本発明品1を表5に示す各種有機溶媒および油剤に70℃で均一溶解し、室温に冷却してオイルゲルを容器内に作成した。この時、容器を逆さにしても有機溶媒および油剤が完全に流れ落ちなくなる固さのゲルを形成するのに必要な濃度を求めた。
【0041】
(2)結果
結果を表5に示す。本発明品1において、動植物油、鉱物油、合成油に対してほとんどの油剤を0.5質量%以下、有機溶剤を3.0質量%以下の添加量でゲル化することを確認した。
【0042】
【表5】
【0043】
実施例7
本発明品1の油増粘剤を乳化物に添加した際の安定性評価を行った。
(1)乳化組成物の調製
本発明品1を用いて、表6に記載の処方にて乳化組成物を調製した。配合量は質量%である。A相成分、B相成分をそれぞれ量りとり、80℃に加温した。A相成分とB相成分をホモミキサー(5,000rpm、2分間)にて乳化組成物を得た。
(2)乳化組成物の安定性評価
(1)で調製した乳化組成物の安定性を評価した。乳化組成物を調製後、所定の温度に1週間静置したものを目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0044】
(評価基準)
○:乳化粒子径が変化せず、分離ともになし
△:分離はしていないが、乳化粒子径が増大している
×:分離している
【0045】
(3)結果
結果を表6に示す。本発明品の油増粘剤は、乳化組成物の安定性を向上させることが確認できた。
【0046】
【表6】
【0047】
以下に本発明の油増粘剤を含有する化粧料および皮膚外用剤の応用例を示す。配合量は質量%(合計で100質量%)である。
実施例8〜12は、いずれも実施例5〜7の評価法によってゲル化や増粘効果、安定化が認められた。
【0048】
実施例8(オイルクレンジングジェル)
A相
本発明品2 0.4(質量%)
ラウリン酸ポリグリセリル−6 12.0
ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル−10 6.0
ジイソステアリン酸ポリグリセリル−10 2.0
イソステアリン酸 0.5
ラウリン酸−2−オクチル 62.0
オリーブ油 1.0
トコフェロール 0.1
香料 適量
B相
エタノール 1.0
キサンタンガム 0.3
精製水 残部
(調製方法)
A相を加温して均一溶解した後、室温でB相を加えてディスパーミキサーで3000rpm,3分間攪拌して調製する。
【0049】
実施例9(スキンケアジェル)
A相
本発明品1 1.0(質量%)
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 40.0
スクワラン 45.0
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル 10.0
トコフェロール 0.1
防腐剤 適量
(調製方法)
A相を70℃で加温して均一溶解し、撹拌を続けて30℃まで冷却する。
【0050】
実施例10(リップクリーム[金皿成型])
A相
本発明品9 2.0(質量%)
カルナウバワックス 2.0
キャンデリラワックス 3.0
セレシン 6.0
トリエチルヘキサノイン 60.0
リンゴ酸ジイソステアリル 6.0
エチルヘキサン酸セチル 5.0
ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6 5.5
B相
着色料 3.5
酸化防止剤 適量
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相を混合し、80℃で加熱する。ホモミキサーで撹拌しながら、B相を加えて5分間撹拌する。60℃まで冷却し、脱泡後、金皿へ流し込み室温まで冷却する。
【0051】
実施例11(保湿クリーム)
A相
セラミド2 0.1(質量%)
本発明品1 0.1
カプリル酸プロピレングリコール 3.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5.0
ステアリルアルコール 2.0
セタノール 2.0
B相
グリセリン 3.0
1,3−ブチレングリコール 8.0
キサンタンガム 0.3
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相成分およびB相成分をそれぞれ80℃に加温し、均一溶解後ホモミキサーで乳化する。その後、室温まで冷却する。
【0052】
実施例12(皮膚外用剤[軟膏製剤])
A相
POE(30)セチルエーテル 2.0(質量%)
本発明品1 0.3
モノステアリン酸グリセリル 9.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 5.0
セタノール 6.0
バチルアルコール 1.0
B相
グリセリン 3.0
1,3−ブチレングリコール 8.0
プロピレングリコール 10.0
防腐剤 適量
精製水 残部
(調製方法)
A相を加温して均一溶解した後、室温でB相を加えてディスパーミキサーで3000rpm,3分間攪拌して調製する。