【解決手段】ガードレールGRの接続固定に用いられるガードレール用締結具は、頭部11及び軸部15を備えたボルト10と、このボルトに螺合されるナット20と、を備え、頭部11は、上面がドーム状に湾曲して形成されていると共に、その頂部に工具と嵌合する六角穴13が穿設されている。また、軸部15は、ガードレールGRを接続固定した際に、所定余長が得られる長さ寸法に形成されている。また、ナット20は、軸部15と螺合することによって、ボルト10が緩まる方向に回転したときに軸部15に押し付けられるコイルバネ体と、これを収容する本体とを備える。
頭部と該頭部の下面から突出する軸部とを備えたボルトと、ガードレールの締結部に挿入された該軸部に螺合し締付けるナットと、によって該ガードレールを接続固定するガードレール用締結具であって、
前記頭部は、上面がドーム状に湾曲して形成されていると共に、その頂部に工具と嵌合する穴が穿設され、
前記軸部は、前記ガードレールを接続固定した際に、所定余長が得られる長さ寸法に形成されており、
前記ナットは、巻回されたコイル素線で構成された第1のコイルバネ部と、該第1のコイルバネ部のコイル素線の一端から延びたコイル素線の領域であり、かつ、前記第1のコイルバネ部の外側に配置された端部領域と、前記第1のコイルバネ部を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、前記第1のコイルバネ部と略同心状にかつ半円以上の大きさの円弧状に巻回された領域である円弧状領域および前記第1のコイルバネ部と略同心状にかつ多角形状に少なくとも1周巻回された領域である多角形状領域を含み、かつ、前記第1のコイルバネ部の巻回径よりも大きい巻回径を含む第2のコイルバネ部とを有するコイルバネ体と、
外形が多角形であり、かつ、互いに対向する一方の端面と他方の端面との間を貫通した貫通孔の内部に、前記コイルバネ体が前記貫通孔と同軸上に収容されており、かつ、前記貫通孔に向けて多角形の各辺から突出した突出部を有し、かつ、前記コイルバネ体の前記端部領域を挿入可能な凹部が内側面に形成された、または前記コイルバネ体の前記端部領域を挿入可能であり、かつ、内側面と外側面との間を貫通する開口部が形成された本体とを備える、ことを特徴とするガードレール用締結具。
前記突出部は、前記本体の一方の端面よりも、前記貫通孔が延びる方向において前記コイルバネ体に近い位置に配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガードレール用締結具。
前記多角形状領域は、前記第1のコイルバネ部を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、前記第1のコイルバネ部と略同心状に、かつ、六角形状に少なくとも1周巻回された領域であり、
前記本体の外形は六角形である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一に記載のガードレール用締結具。
請求項1ないし4のいずれか一に記載のガードレール用締結具と、道路に設置されたガードレール支柱に取付けられるガードレールとを備えるガードレール接続構造であって、
前記ガードレールは、複数のビームが接続されることにより構成されていると共に、その表面が道路の車道側に向けて配置され、
前記ボルトは、前記頭部の上面が前記車道側に向けられ、前記ガードレールの表面側から、該ガードレールの隣接するビーム同士の重ね合わせ部である前記締結部に設けられた孔に前記軸部が挿入され、且つ前記軸部に前記ナットが螺合され、前記車道側から締付けられることにより前記ビーム同士を接続固定していることを特徴とするガードレール接続構造。
請求項1ないし4のいずれか一に記載のガードレール用締結具と、道路に設置されたガードレール支柱を挟んで且つ背面を相対向させて該支柱に取付けられる2組のガードレールとを備えるガードレール接続構造であって、
前記ガードレールは、複数のビームが接続されることにより構成されていると共に、その表面が道路の車道側に向けて配置され、
前記ボルトは、前記頭部の上面が前記車道側に向けられ、前記ガードレールの表面側から、該ガードレールの隣接するビーム同士の重ね合わせ部である前記締結部に設けられた孔に前記軸部が挿入され、且つ前記軸部に前記ナットが螺合され、前記車道側から締付けられることにより前記ビーム同士を接続固定していることを特徴とするガードレール接続構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術のガードレール接続構造は、ボルト(丸頭ボルト)及びナット(六角ナット)の緩みや脱落が生じる虞があるという技術的課題を有している。具体的には、従来技術のガードレール接続構造は、ボルトの構造上、ガードレールの表面側(道路の車道側)からの締付作業を行うことができないため、ガードレールの裏面側でスパナによる締付け作業を行う必要がある。そして、従来技術のガードレール接続構造は、十分な余長(ボルト締結後の余長)が得られる長さ寸法のボルト(所定以上の「呼び長さ」を有するボルト)を用いた場合に、ガードレールの裏面部分(ガードレールのビーム裏面に設けられている間隔材等)とスパナとが緩衝し、締付け作業ができないようになっている。すなわち、上述した従来技術は、その構造上、ボルトの長さ寸法(呼び長さ)が制限され(所定以上の長さ寸法のボルトを用いることができず)、その結果、余長不足が生じ、ボルト・ナットの緩みや脱落が生じることがあった。
【0006】
また、上述した従来技術によるガードレール接続構造は、施工(接続・固定作業)に長時間費やされると共に、作業労力が大きいという技術的課題を有している。
具体的には、上述した従来技術では、ガードレールの裏面側の狭隘な空間において、スパナによる手作業を行う必要があるため、施工時間が長くなると共に、作業者の労力が多大なものとなっている。さらに、上記の従来技術は、前記狭隘な空間でスパナによる手作業を行っているため、締付作業の最中に、スパナが外れることによる、作業者に対する安全上のリスクも有していた。特に、背面を相対向させ配置した2組のガードレールを、ガードレール支柱を挟んで設置する場合、ガードレールの裏面側が非常に狭隘な空間であるため、作業負担が非常に大きかった。
【0007】
本発明は上記技術的課題に鑑みてなされたものであって、ボルト・ナットの緩み及び脱落を防止すると共に、施工時間の短縮及び作業負担の軽減を図るガードレール用締結具及びガードレール接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、頭部と該頭部の下面から突出する軸部とを備えたボルトと、ガードレールの締結部に挿入された該軸部に螺合し締付けるナットと、によって該ガードレールを接続固定するガードレール用締結具であって、前記頭部は、上面がドーム状に湾曲して形成されていると共に、その頂部に工具と嵌合する穴が穿設され、前記軸部は、前記ガードレールを接続固定した際に、所定余長が得られる長さ寸法に形成されており、前記ナットは、巻回されたコイル素線で構成された第1のコイルバネ部と、該第1のコイルバネ部のコイル素線の一端から延びたコイル素線の領域であり、かつ、前記第1のコイルバネ部の外側に配置された端部領域と、前記第1のコイルバネ部を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、前記第1のコイルバネ部と略同心状にかつ半円以上の大きさの円弧状に巻回された領域である円弧状領域および前記第1のコイルバネ部と略同心状にかつ多角形状に少なくとも1周巻回された領域である多角形状領域を含み、かつ、前記第1のコイルバネ部の巻回径よりも大きい巻回径を含む第2のコイルバネ部とを有するコイルバネ体と、外形が多角形であり、かつ、互いに対向する一方の端面と他方の端面との間を貫通した貫通孔の内部に、前記コイルバネ体が前記貫通孔と同軸上に収容されており、かつ、前記貫通孔に向けて多角形の各辺から突出した突出部を有し、かつ、前記コイルバネ体の前記端部領域を挿入可能な凹部が内側面に形成された、または前記コイルバネ体の前記端部領域を挿入可能であり、かつ、内側面と外側面との間を貫通する開口部が形成された本体とを備える、ことを特徴とする。
【0009】
このように、本発明のガードレール用締結具は、頭部(ドーム状の頂部)に、工具と嵌合する穴(六角穴等の穴)が設けられている。この構成によれば、ガードレールのビーム同士の接続固定や前記ビームとガードレール支柱とを接続固定する工程において、ビームの表面側(道路の車道側)から、前記穴に工具を嵌合させ、当該ボルトを締付けることができる。すなわち、本発明によれば、頭部の頂部に工具と嵌合する穴を設けることで、ガードレールの裏面側でスパナによる締付け作業を行わざるを得ないというガードレール特有の課題が解消される。そのため、本発明では、軸部を、所定余長(ボルト締結後の余長)が得られる長さ寸法(例えば、呼び長さを40mm)に形成することが可能になり、その結果、ボルト・ナットの緩み及び脱落が防止される。
【0010】
また、本発明によれば、ガードレールの表面側から締付作業を行うことができ、ガードレールの裏面側の狭隘な空間での作業から開放されるため、施工時間の短縮及び作業労力の軽減が図られる。また、本発明によれば、ガードレールの表面側の広い空間で作業ができるため、スパナが外れる等の作業者に対する安全上のリスクが軽減される。さらに、本発明によれば、道路の車道側から締付作業を行うことができるため、電動工具を使用することが可能になり、施工時間の大幅な短縮が図られると共に、作業労力が大幅に軽減される。
【0011】
また、本発明のガードレール接続構造は、前記ガードレール用締結具と、道路に設置されたガードレール支柱に取付けられるガードレールとを備えるガードレール接続構造であって、前記ガードレールは、複数のビームが接続されることにより構成されていると共に、その表面が道路の車道側に向けて配置され、前記ボルトは、前記頭部の上面が前記車道側に向けられ、前記ガードレールの表面側から、該ガードレールの隣接するビーム同士の重ね合わせ部である前記締結部に設けられた孔に前記軸部が挿入され、且つ前記軸部に前記ナットが螺合され、前記車道側から締付けられることにより前記ビーム同士を接続固定していることを特徴とする。
【0012】
このように、本発明のガードレール接続構造は、ボルトに上記ナットを用いているため、上述した効果に加え、さらに、ボルト・ナットの緩み及び脱落を防止する効果が高められる。
【0013】
また、本発明のガードレール接続構造は、前記ボルトと、道路に設置されたガードレール支柱を挟んで且つ背面を相対向させて該支柱に取付けられる2組のガードレールとを備えるガードレール接続構造であって、前記ガードレールは、複数のビームが接続されることにより構成されていると共に、その表面が道路の車道側に向けて配置され、前記ボルトは、前記頭部の上面が前記車道側に向けられ、前記ガードレールの表面側から、該ガードレールの隣接するビーム同士の重ね合わせ部である前記締結部に設けられた孔に前記軸部が挿入され、且つ前記軸部に前記ナットが螺合され、前記車道側から締付けられることにより前記ビーム同士を接続固定していることを特徴とする。
【0014】
このように、本発明のガードレール接続構造は、背面を相対向させ配置した2組のガードレールを、ガードレール支柱を挟んで設置する場合のようなガードレールの裏面側が非常に狭隘な空間になっているケースにも適用される。そして、本発明によれば、上述した従来技術に比べて、施工時間の短縮及び作業負担の軽減が大幅に達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボルト・ナットの緩み及び脱落を防止すると共に、施工時間の短縮及び作業負担の軽減を図るガードレール用締結具及びガードレール接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のガードレール接続構造W1は、ガードレール用ボルト(以下、単に「ボルト」という)10と、ボルト10に螺合する緩み止めナット(以下、単に「ナット」という)20と、支柱(ガードレール支柱(
図1には示さず))60に取付けられるガードレールGRとを備えている。尚、ガードレールGRは、複数のビーム40(山部と谷部が交互に形成された波形状のガードレールビーム(
図8参照))が接続されて構成されていると共に、その表面が道路の車道側に向けて配置されている。
【0019】
そして、ガードレール接続構造W1は、ガードレールGRの隣接するビーム40同士の接続固定やビーム40と前記支柱60とを接続固定するようになっている。具体的には、ガードレール接続構造W1では、ボルト10の頭部11上面が道路の車道側に向けて配置され、軸部15がガードレールGRの接続部(図示する例では、ガードレールGRの隣接するビーム40同士の重ね合わせ部50の孔51)に挿通されると共にナット20が螺合され、車道側から締付けられている。これにより、前記接続部が、ボルト10及びナット20により挟持され、ガードレールGR(図示する例では、隣接するビーム40同士)が接続固定される。
【0020】
また、
図2に示すように、ボルト10は、平面視円形の頭部(ボルト頭)11と、頭部11の下面(一端面)から突出する棒状の軸部15とを備えている。また、頭部11は、上面(他端面)が略ドーム状(略円弧凸状)に湾曲して形成され、頭部11上面の頂部に、工具と嵌合する六角穴13が穿設されている。また、軸部15は、ガードレールGRを接続固定した際に、所定余長が得られる長さ寸法(例えば、首下長さが40mm)に形成されていると共に、その側面には、ナット20と螺合するネジ部15aが形成されている。
【0021】
このように、ボルト10は、頭部11上面の頂部に、六角穴13が穿設された構成になっていると共に、従来技術のボルトと比べ、首下長さ(呼び長さ)の寸法が長くなっている。
【0022】
また、ボルト10は、その材料として、例えば、冷間圧造用炭素鋼線(SWCH45K)により形成されている。このような材料を用いることにより、頭部11に六角穴13を設けることにより生じる頭部11の強度低下を防止している。
【0023】
また、ボルト10は、熱処理(QT処理(焼入れ焼戻し処理)等の熱処理)が施された上で、溶融亜鉛メッキ処理が施されている。このように、本実施形態のボルト10は、前記熱処理を施すことにより、溶融亜鉛メッキ処理後の強度と粘り強さが高められている。
【0024】
また、ボルト10の大きさ寸法は、例えば、
図2に示すように形成される。具体的には、ボルト10は、ネジの呼び径が「M16」、呼び長さが「la=40mm」、ネジ部15aの長さが「lb=35mm」に形成されている。また、頭部11の直径(頭部径φda)が、一般的なボルトと同様の大きさ寸法に形成され(「φda=33mm」に形成され)、頭部11の高さ(頭部高さ径k)が「k=8mm」に形成され、六角穴13の幅(二面幅の呼びS1)が「S1=10mm」に形成されている。
【0025】
また、
図3に示すように、ナット20は、コイルバネ体80と、本体90とからなる。
【0026】
ここで、コイルバネ体80は、
図3ないし
図5に示すように、第1のコイルバネ部81と、端部領域82と、第2のコイルバネ部83とを有する。
【0027】
また、第1のコイルバネ部81は、所定の径で巻回されたコイル素線で構成されている。ここで、第1のコイルバネ部81の内径は、ボルトの軸部15の外径よりもわずかに小さい。
【0028】
また、端部領域82は、第1のコイルバネ部81のコイル素線の一端から延びたコイル素線の領域であり、かつ、第1のコイルバネ部81の外側に配置されている。
【0029】
また、第2のコイルバネ部83は、第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線で構成されている。また、第2のコイルバネ部83を構成するコイル素線は、第1のコイルバネ部81の巻回径よりも大きい巻回径で巻回されている。
【0030】
すなわち、第2のコイルバネ部83は、第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、第1のコイルバネ部81と略同心状に、かつ、半円の大きさの円弧状に巻回された領域である円弧状領域85Aを含む。
【0031】
また、第2のコイルバネ部83は、第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、第1のコイルバネ部81と略同心状に、かつ、六角形状に少なくとも1周巻回された領域である多角形状領域85Bを含む。従って、多角形状領域85Bには少なくとも6箇所の角部84が存在する。
【0032】
また、円弧状領域85Aは、第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端に連接している。すなわち、円弧状領域85Aを構成するコイル素線は、第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端から延びている。
【0033】
また、多角形状領域85Bは、円弧状領域85Aに隣接している。すなわち、多角形状領域85Bを構成するコイル素線は、円弧状領域85Aを構成するコイル素線の終端から延びている。
【0034】
また、本実施形態のナット20の本体90には、
図6に示すように、互いに対向する一方の壁部の一方の端面と他方の壁部の他方の端面との間を貫通する貫通孔91が形成されている。
【0035】
また、本体90の外形は六角形である。すなわち、貫通孔91の中心軸線と直交する方向における本体90の断面形状は六角形状である。また、本体90の外形は必ずしも六角形でなくてもよいことは勿論である。
【0036】
また、六角形の本体90は、本体90の6つの辺それぞれから、貫通孔91に向けて突出した突出部92を有する。
【0037】
また、本体90の一方の壁部の上端には、本体90の内側面まで延びる窪み部93が形成されている。また、突出部92は、窪み部93に連接している。
【0038】
なお、本体90の各辺から1つの突出部92が突出しているが、必ずしも各辺から1つの突出部92が突出していなくてもよく、各辺から2つ以上の突出部92が突出していてもよい。
【0039】
また、突出部92は、本体90の一方の壁部の一方の端面よりも、貫通孔91が延びる方向すなわち貫通孔91の中心軸線が延びる方向において、コイルバネ体80に近い位置に配置されている。
【0040】
また、突出部92を有する本体90を備える本実施形態のナット20は、例えば次のようにして製造される。
【0041】
コイルバネ体80を、外形が六角形の本体90の貫通孔91の内部に、貫通孔91と同軸上に収容する。なお、このときの本体90には、本体90の6つの辺それぞれから突出した突出部92や窪み部93は形成されていない。
【0042】
次に、本体90の一方の壁部の上端に対して略直交する方向に、この一方の壁部の上端に熱を加えながら加圧できる器具を押し当てて加圧し、この一方の壁部の上端を塑性変形させる。このとき、本体90の内側面に、一緒に熱を加えながら加圧する。
【0043】
その結果、六角形の本体90の6つの辺それぞれに、本体90の内側面まで延びる1つの窪み部93と、窪み部93に連接した、かつ、貫通孔91に向けて突出した突出部92を形成する。
【0044】
また、
図6に示すように、本体90の貫通孔91は、内径が互いに異なる3つの空間に分けられている。すなわち、一方の壁部の上端から上段差部94Aと略同一平面までの空間である上部空間30と、上段差部94Aと略同一平面から下段差部94Bと略同一平面までの空間である中部空間31と、下段差部94Bと略同一平面から本体90の一方の壁部の下端までの空間である下部空間32である。
【0045】
また、上部空間30の内径が一番大きく、中部空間31の内径が二番目に大きく、下部空間32の内径が一番小さい。すなわち、上段差部94Aの分だけ中部空間31の内径は上部空間30の内径より小さい。また、下段差部94Bの分だけ下部空間32の内径は中部空間31の内径より小さい。
【0046】
また、上部空間30を形成する本体90には、六角形の本体90の突き出た部分に相当する位置の内側面に隅部95が形成されている。また、本体90の各辺の内側面、すなわち隅部95と隅部95との間に突出部92が設けられている。
【0047】
また、本体90には、本体90の内側面の一部と外側面との間を貫通し、コイルバネ体80の端部領域82を挿入可能な開口部96が形成されている。また、開口部96は、端部領域82を挿入可能な凹みであってもよい。
【0048】
また、下部空間32を形成する本体90の内側面にはネジ溝とネジ山が形成されている。すなわち、本体90はネジ部97を有し、このネジ部97がボルト10の軸部15と螺合する。
【0049】
また、コイルバネ体80を、本体90の貫通孔91の内部に貫通孔91と同軸上に収容した状態では、第2のコイルバネ部83は貫通孔91の上部空間30内に位置する。
【0050】
また、突出部92は、貫通孔91が延びる方向においてコイルバネ体80に近い位置に配置されている。
【0051】
また、隅部95は、貫通孔91の内部に貫通孔91と同軸上に収容されたコイルバネ体80の第2のコイルバネ部83の多角形状領域85Bの角部84に対応するものである。
【0052】
また、コイルバネ体80を、本体90の貫通孔91の内部に貫通孔91と同軸上に収容した状態では、第1のコイルバネ部81は貫通孔91の中部空間31内に位置する。
【0053】
従って、
図7に示すように、コイルバネ体80を、本体90の貫通孔91の内部に貫通孔91と同軸上に収容した状態では、端部領域82が第1のコイルバネ部81の外側に配置され、開口部96に挿入される。
【0054】
また、第1のコイルバネ部81の巻回径と、下部空間32の内径すなわちネジ部97の内径は略同じである。また、第1のコイルバネ部81は、下部空間32内には位置しない。
【0055】
また、第1のコイルバネ部81と第2のコイルバネ部83は互いに略同心状に形成されており、しかも、コイルバネ体80は、本体90の貫通孔91の内部に貫通孔91と同軸上に収容されている。
【0056】
従って、本体90のネジ部97を通ったボルト10の軸部15は、第1のコイルバネ部81に到達し、そして、第1のコイルバネ部81のコイル素線がボルト10の軸部15に形成されたネジ溝と係合する。
【0057】
なお、コイルバネ体80は本体90に固着されていない。なぜなら、六角形の本体90の6つの辺それぞれから貫通孔91に向けて突出した突出部92がコイルバネ体80に近い位置に配置されているので、コイルバネ体80と突出部92とが接触して、コイルバネ体80が本体90に固着されていなくても、コイルバネ体80は本体90から容易に離脱しないからである。
【0058】
次に本実施形態に係るボルト10とナット20の取り扱い方法について説明する。
【0059】
図8に示すように、ガードレールGRを固定するためには、
図9及び
図10に示すように、ガードレールGRを固定するために本実施形態に係るナット20を、締め付ける方向98Aである右方向へ回転させて、ボルト10の軸部15に装着させる。
【0060】
また、本実施形態のナット20をボルト10の軸部15から離脱させる場合は、
図11及び
図12に示すように、ナット20を、緩める方向98Bである左方向へ回転させる。
【0061】
また、
図10に示すように、多角形状領域85Bの角部84は、ナット20を締め付ける方向98Aへ回転させたとき、本体90の内側面に形成された隅部95と対応する位置にある。
【0062】
一方、
図12に示すように、多角形状領域85Bの角部84は、ナット20を緩める方向98Bである左方向へ回転させたとき、本体90の内側面に形成された隅部95と対応する位置から移動する。そして、角部84が本体90の内側面に当接する。
【0063】
すなわち、本実施形態のナット20を緩める方向98Bへ回転させると、コイルバネ体80は縮径する。このとき、第1のコイルバネ部81のコイル素線がボルト10の軸部15に形成されたネジ溝に押し付けられる。
【0064】
一方、コイルバネ体80は縮径するので、第1のコイルバネ部81のコイル素線の一端から延びたコイル素線の領域である端部領域82は、開口部96の縁へ向けて移動し、開口部96の縁に当たる。
【0065】
そして、さらに本実施形態のナット20を緩める方向98Bへ回転させ続けると、開口部96の縁が端部領域82を拡径方向へ押す。
【0066】
また、このとき、第2のコイルバネ部83の多角形状領域85Bの角部84が本体90の内側面に当接する。従って、コイルバネ体80全体が回らなくなるので、コイルバネ体80は拡径した状態が維持され、本実施形態のナット20を緩める方向98Bへ回転させ続けることができる。
【0067】
なお、本実施形態のナット20を緩める方向98Bへ回転させ続けなければ、すなわち、本実施形態のナット20に対して緩める方向98Bへ所定の力を加え続けなければ、本実施形態のナット20は緩まないため、振動が本実施形態のナット20に加えられても、ガードレールGRの緩み抑制の点で支障はない。また、上述の通り、ナット20を締め付けた又は緩めた際のナット20の機能について説明したが、ボルト10を締め付けた又は緩めた際も同様である。
【0068】
また、本体90の一方の壁部の上端に、必ずしも本体90の内側面まで延びる窪み部93が形成されていなくてもよく、また、突出部92は必ずしも窪み部93に連接していなくてもよい。
【0069】
しかし、このような窪み部93が形成されており、突出部92が窪み部93に連接していれば、本体90の一方の壁部の上端に対して略直交する方向に、窪み部93に工具を挿入し、かつ、突出部92に工具を押し当てて、本実施形態のナット20を回転させることができるので好ましい。
【0070】
また、突出部92は、必ずしも本体90の一方の壁部の一方の端面よりも、貫通孔91が延びる方向において、コイルバネ体80に近い位置に配置されていなくてもよい。しかし、突出部92が、本体90の一方の壁部の一方の端面よりも、貫通孔91が延びる方向において、コイルバネ体80に近い位置に配置されていれば、突出部92がコイルバネ体80に近くなるので、コイルバネ体80がずれることを抑制し易くなり、好ましい。
【0071】
また、多角形状領域85Bは、必ずしも第1のコイルバネ部81を構成するコイル素線の他端から延びたコイル素線が、第1のコイルバネ部81と略同心状に、かつ、六角形状に少なくとも1周巻回されていなくてもよい。また、本体90の外形は必ずしも六角形でなくてもよい。
【0072】
しかし、多角形状領域85Bが、このようにコイル素線が、第1のコイルバネ部81と略同心状に、かつ、六角形状に少なくとも1周巻回された領域であり、本体90の外形も六角形であれば、多角形状領域85Bの形状に突出部92の位置が対応しているので、ボルト10をコイルバネ体80に挿入する前に、コイルバネ体80が本体90から脱落することをより一層抑制でき、好ましい。
【0073】
このように、本実施形態では、ボルト10の頭部11に、工具と嵌合する六角穴13が穿設されているため、ガードレールGRのビーム40の表面側である車道側から、六角穴13に工具を嵌合させ、ボルト・ナットの締付けを行うことができる。すなわち、本実施形態のボルト10を用いることで、ガードレールGRの裏面側でのスパナによる締付け作業を行う必要がなくなるため、上述した従来技術のように、ボルト10の長さ寸法(呼び長さ)が制限されることがない。その結果、十分な余長が得られる長さ寸法(呼び長さ)のボルト10を用いて締付けを行うことができるため(従来技術のような余長不足が生じることが防止されるため)、ボルト・ナットの緩み及び脱落が防止される。
【0074】
また、本実施形態によれば、ガードレールGRの裏面側の狭隘な空間での作業から開放されるため、施工時間が短縮されると共に、作業負担が軽減される。また、本実施形態によれば、車道側からボルト10の締付作業を行うことができるため、締付用の電動工具を使用することが可能になる。そして、前記電動工具を使用することにより、大幅な施工時間の短縮が図られると共に、作業労力が大幅に軽減される。また、締付作業の最中に、スパナが外れることによる、作業者に対する安全上のリスクが解消される。
【0075】
また、本実施形態のナット20は、貫通孔に向けて多角形の各辺から突出した突出部を有しているので、ナット20をボルト10に装着するとき、すなわちボルト10をコイルバネ体80に挿入するときに、コイルバネ体80と突出部92とが接触してコイルバネ体80がずれることを抑制し、コイルバネ体80がボルト10のリードに沿って一定の位置でボルト10を誘い込むことができる。従って、緩み止め性能を安定的に発揮できる。
【0076】
また、本実施形態のナットは、貫通孔91に向けて多角形の各辺から突出した突出部92を有しているので、ナット20をボルト10に装着する前、すなわちボルト10をコイルバネ体80に挿入する前に、コイルバネ体80が本体90から脱落することを抑制できる。
【0077】
また、
図13に示すように、コイルバネ体80は、端部領域82(
図4参照)のコイル素線の先端から、端部領域82と略直交する方向に延びた先端領域85Cを有していてもよい。すなわち、
図13に示す例では、図示されていないネジ部が設けられた側へ向けて、先端領域85Cが延びており、
図13で言うと下側へ向けて先端領域85Cが延びている。
【0078】
コイルバネ体80が、このような先端領域85Cを有することで、先端領域85Cが本体90に係り易くなり、コイルバネ体80が本体90から離脱し難くなる。
【0079】
尚、本実施形態のガードレール接続構造は、
図8に示すような、背面を相対向して配置した2組(一対)のガードレールGRを、支柱60を挟んで設置する場合にも適用され、このようなケースに特に有効である。ここで、
図8は、本実施形態のガードレール接続構造W2の適用例を示した模式図である。
【0080】
図8に示すガードレール接続構造W2は、ボルト10と、ナット20と、支柱(ガードレール支柱)60を挟んで且つ背面を相対向させて支柱60に取付けられた2組(一対)のガードレールGRとを備えている。また、支柱60には、道路の進行方向と直交方向に向けられた1対の間隔部材70が取付けられている。また、2組のガードレールGRは、いずれも、間隔部材70を介して、支柱60に取付けられている。尚、支柱60は、例えば、道路の中央分離帯に設置されている。また、ガードレールGRは、複数のビーム40が接続されることにより構成されていると共に、その表面(前面)が道路の車道側に向けて設置されている(道路の進行方向と平行に配置されている)。
【0081】
このガードレール接続構造W2では、ボルト10は、頭部11上面が道路の車道側に向けて配置されている。そして、ボルト10は、ガードレールGRを構成するビーム40の表面側から、隣接するビーム40同士の重ね合わせ部50に設けられた孔51に軸部15が挿入されるようになっている。また、前記挿入された軸部15に、ナット20が挿入され、車道側からボルト10及びナット20が工具により締付けられて、ガードレールGRを接続固定するようになっている。このように、本実施形態は、ガードレールGRの裏面側が非常に狭隘な空間になっているケースにも適用できるため、上述した従来技術に比べ、施工時間の短縮及び作業負担の軽減が大幅に達成される。
【0082】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲において種々の変更が可能である。
【0083】
上記実施形態において例示した、ボルト10の軸部15の長さ(呼び長さ)は、あくまでも、一例に過ぎない。軸部15は、ガードレールGRを接続固定した際に、所定余長(例えば、9mm)が得られる長さ寸法(例えば、40mm)に形成されていればよい。
【0084】
また、上記実施形態で用いた、ボルト10、ナット20は、ガードレールGR以外のもの(被締結体)であっても、上述したガードレールGRと類似する課題を有するものに利用すれば、上記実施形態と同様の効果が得られる。