【解決手段】軒樋支持具1は、軒樋40を表裏より挟持する挟持保持部10を有している。この挟持保持部10は表挟持片22と裏挟持片21とを組み合わせてなり、軒樋40を表裏より押圧する樋押圧部14と、軒樋40の後耳41を抱持する後耳抱持部13とを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記2種の軒樋支持具は、軒樋の支持の仕方こそ異なるが、いずれも軒樋の前耳と後耳のそれぞれを保持、係止する構造とされている。すなわち、軒樋受け具の場合、軒樋の裏面形状に略合致した形状の本体部の前端に前耳係止部が形成され、後端に後耳係止部が形成されている。また軒樋吊り具の場合、軒樋の前耳、後耳間を架け渡すようにした平板帯板状の本体部の前端に前耳係止部が形成され、後端に後耳係止部が形成されている。
【0005】
したがって従来では、軒樋支持具に対する軒樋の取り付けにおいて、前耳と後耳の両方をそれぞれの係止部に係止する作業が必須の作業として発生していた。従来には、それらの作業を効率的に実施するための新規な構造が種々提案されているが、離間した2箇所での係止作業が必要であるため、効率性の向上には限界があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、角形状の軒樋を効率的にかつ迅速に取り付けできる軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に軒樋支持具は、角形状の軒樋を表裏より挟持する挟持保持部を有した軒樋支持具であって、前記挟持保持部は表挟持片と裏挟持片とを組み合わせてなり、前記軒樋を表裏より押圧する樋押圧部と、前記軒樋の後耳を抱持する後耳抱持部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の軒樋支持具は、前記挟持保持部は、前記裏挟持片が前記軒樋の前壁部を覆わない寸法、形状とされることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の軒樋支持具は、前記表挟持片と前記裏挟持片のすくなくとも一方が板ばねで形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の軒樋支持具は、前記表挟持片が前記軒樋の前耳に係止されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の軒樋支持具は、前記表挟持片と前記裏挟持片との間に、前記軒樋を着脱するための樋着脱口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の軒樋支持具は上述した構成となっているため、角形状の軒樋を効率的にかつ迅速に取り付けできる。
【0013】
請求項2に記載の軒樋支持具は上述した構成となっているため、全体の寸法を小さくできる。そのため、材料費を低減化でき、梱包箱等への梱包の効率を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載の軒樋支持具は上述した構成となっているため、軒樋の取り付けをしやすくでき、また軒樋支持具を簡易に製造することもできる。
【0015】
請求項4に記載の軒樋支持具は上述した構成となっているため、表挟持片が軒樋の前後の耳に係止されて、しっかりと軒樋を押圧保持することができる。
【0016】
請求項5に記載の軒樋支持具は上述した構成となっているため、軒樋支持具に対して軒樋の装着をしやすくできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお以下の各実施形態の説明においては、建物の軒先面等(鼻隠、垂木等)に取り付ける取付部30側を後部とし、前方に突出した挟持保持部10側を前部とする。また、軒樋支持具1は、角形状の軒樋40、40Aの長手方向の適所(おおむね等間隔部位)に取り付けられ、前後方向に細長い帯板形状とされている。
【0019】
以下に説明する種々の実施形態に係る軒樋支持具1は、
図1〜
図4に示すように、軒樋40、40Aを表裏より挟持する挟持保持部10を有したものである。挟持保持部10は表挟持片22と裏挟持片21とを組み合わせてなり、軒樋40、40Aを表裏より押圧する樋押圧部14と、軒樋40、40Aの後耳41を抱持する後耳抱持部13とを備えている。
【0020】
また、いずれのものも挟持保持部10は、表挟持片22と裏挟持片21のうちのすくなくとも一方が、軒樋40、40Aが樋押圧部14で押圧された状態では軒樋40、40Aの前壁部45を覆わない寸法、形状とされている。なお、
図2〜
図4のものについては、裏挟持片21が前壁部45の下部をわずかに引っ掛けてあるが、前壁部45の中央部分には及ばない寸法とされている。もちろんこれらには限らず、表挟持片22と裏挟持片21の一方または両方が軒樋40、40Aの前耳42を覆うようにしたものとしてもよい。
【0021】
さらに、いずれのものも、表挟持片22が裏挟持片21とは別体の板ばねで形成されている。これについても、この構成には限らず、挟持保持部10を構成する表挟持片22と裏挟持片21とがヘアピンのような形状の一体構造のものであってもよい。また、裏挟持片21が板ばねで形成されたものとしてもよいし、いずれもが板ばねで形成されたものとしてもよい。
【0022】
軒樋支持具1の支持対象である軒樋40、40Aは、前耳42を上端側に有した前壁部45と、後耳41を上端側に有した後壁部43と、それらを下部どうしで接続した底部44とを備えた形状とされている(
図1〜
図4参照)。なお、
図1、
図2のものと、
図3、
図4のものとでは前耳42の構造が異なるがこれについては各実施形態の説明において後述する。
【0023】
ついで、実施形態ごとに図面を参照しながら順次説明する。
【0024】
図1に示した軒樋支持具1は、裏挟持片21と、鉛直軒先面50に取り付けられる取付部30とで本体16が構成され、この本体16に、板ばねより形成された表挟持片22を固着させて軒樋支持具1が構成されている。
【0025】
取付部30は、逆L字形状とされ、取り付け状態において略水平に配される杆部31と、鉛直軒先面50に取り付け固定される固定部32とを備えている。固定部32は、杆部31の基部より折曲延出された、鉛直軒先面50に当接するように配される添設部32aと、この添設部32aを前方より押さえるようにして鉛直軒先面50に固定具35止めされる固定片32bとよりなる。
【0026】
固定片32bは、
図1の拡大正面図に示すように、後部に凹部を有した中央基部32baと、その両側の押さえ部32bbとを備えた形状とされている。中央基部32baの裏側の凹部(不図示)には正面視で十字状となるように添設部32aが配され、両部はリベット36で固定されている。なお、これら両部の固定は現場へ持ち込む前にあらかじめなされていればよい。押さえ部32bbのそれぞれにはビス、釘等の固定具35で固定部32を鉛直軒先面50に固定するための固定具挿通孔(不図示)が開設してある。
【0027】
一方、裏挟持片21は、取付部30の杆部31の前端の前方に一体的に延びてなる。その形状は側面視において軒樋40の裏面形状におおむね合致した形状とされるが、軒樋40の前耳42、後耳41間全体に跨ることはなく、その前後方向の寸法は、後耳41から、後壁部43を経て、底部44の前端近傍に及ぶ程度の寸法とされる。
【0028】
裏挟持片21の後端部(杆部31との境界部に当たる部位)には、後方に凹んだ段差部21aが形成されている。軒樋40を設置したときには、この段差部21aの凹所に軒樋40の後耳41が配される。裏挟持片21は、この段差部21aの下方から前方に配される軒樋40の後壁部43から底部44までを裏側より接触状態で支持する形状とされている。
【0029】
表挟持片22は、軒樋40の表面側に配される部材であり、裏挟持片21の段差部21aに相当する部位で折曲されており、この折曲部22bを介した後方に、取り付け状態で略水平となるように延出形成された板ばね基部22aを備えている。この板ばね基部22aは杆部31の上面にリベット37で固着されている。
【0030】
また表挟持片22は、後部の板ばね基部22aが取付部30の杆部31に固着され、その前方に、折曲部22bを介して前方に下り傾斜した形状とされている。より具体的には、表挟持片22は、板ばね基部22aと、段差部21aの空間13aを前方より囲むようにした覆い部22cと、前方に向けて下り傾斜し前部に押さえ面を有した樋押圧部14と、ガイド部24とを備えている。そして、裏挟持片21のガイド部24と、表挟持片22の前端部との間に樋着脱口11が形成されている。
【0031】
ようするに本図例の軒樋支持具1では、挟持保持部10は表挟持片22と裏挟持片21とを組み合わせてなり、軒樋40を着脱するための開口とされる樋着脱口11と、軒樋40を表裏より押圧する樋押圧部14と、軒樋40を着脱するための挿通路とされる樋着脱路12と、軒樋40の後耳41を抱持する後耳抱持部13とを備えた構成とされている。
【0032】
角形状の軒樋40は後壁部43と底部44とのなす角度が略直角であるため、裏挟持片21と表挟持片22のいずれもが軒樋40と同形状であれば、たとえ表挟持片22が板ばねで形成されていても軒樋40の装着はしにくいが、
図1のもののように、表挟持片22が下り傾斜状に形成してあるため、表挟持片22を上方に弾性的に開くようにすることで、軒樋40を、後耳41側より樋着脱口11から挿入し樋着脱路12を通過させることができ、その結果、確実に適正な位置に装着することができる。
【0033】
図1に示すように、この軒樋支持具1は軒樋40を後部側で支持する片持ち吊り支持構造とされている。
図1の例では、軒樋40を挟持保持部10に取り付けたときには、その前耳42を含む前壁部45には挟持保持部10(裏挟持片21)は表れない。
【0034】
軒樋40は裏挟持片21の形状に沿うよう適切な位置に装着されると、表挟持片22と裏挟持片21との協働により作用する樋押圧部14により、表挟持片22、裏挟持片21間に挟持された状態となる。このとき、樋押圧部14が軒樋40内面に接触して下方に向けて押圧するように、表挟持片22が弾性付勢した状態となるように形成されていることが望ましい。
【0035】
以上のように、軒樋40は、いったん軒樋支持具1に取り付けられると、後耳41が後耳抱持部13で保持された状態が維持され、その底部44が挟持され、固定された状態となる。
【0036】
このように、この軒樋支持具1を用いれば、軒樋40を効率的にかつ迅速に取り付けることができる。また、表挟持片22および裏挟持片21はその前端が前耳42に及ばない寸法とされているため、従来のものより前後寸法を小さく形成でき、そのため材料費を低減化でき、梱包効率を向上させることもできる。さらに、表挟持片22が別体の板ばねで形成されているため、挟持保持部10を簡易に構成でき、軒樋支持具1を簡易に製造することができる。
【0037】
また、樋着脱口11は後耳抱持部13の樋着脱路12を介した前方に配されているため、軒樋40の後耳41を後耳抱持部13の空間13aに配するための操作は後耳41を樋着脱口11に挿入し、樋着脱路12をスライドさせていくだけでよく、操作を簡易に行うことができる。
【0038】
また、この軒樋支持具によれば、挟持保持部10の裏挟持片21が軒樋40の前壁部45の前面に縦に線状に表れないため、見栄えをよくすることができる。
【0039】
ついで、
図2に示した軒樋支持具1について説明する。この軒樋支持具1は、
図1のものとくらべれば、挟持保持部10を構成する表挟持片22と裏挟持片21の形状が異なる。より具体的には
図2に示すように、樋着脱口11、樋装着路12および樋押圧部14の形成位置が
図1のものとは異なる。また、裏挟持片21の前端部が
図1のものとは異なる。なお、これら以外の構成および軒樋40の形状については
図1のものと同様であるため、
図2に同一の符号を付して、その説明は省略する。以下、さらにくわしく説明する。
【0040】
この軒樋支持具1の表挟持片22は、
図2に示すように短く、折曲部22bより後耳抱持部13を介して軒樋40の後壁部43の略中央にいたるまでの長さとされている。つまり、樋着脱口11、樋装着路12および樋押圧部14は、軒樋40の後壁部43側に形成されている。ようするに、軒樋40は後壁部43側が押圧保持される。
【0041】
また、裏挟持片21は軒樋40の底部44の前端まで及んでおり、前端には前壁部45の下部に引っ掛けられるように前壁係合部21bが形成されている。
【0042】
このように表挟持片22が短く形成されているため軒樋40の装着はよりしやすくなる。また、挟持保持部10による軒樋40の挟持は軒樋40の後壁部43に対するものであるため、底部44や前壁部45の保持力が弱くなるおそれがあるが、裏挟持片21の前壁係合部21bが前壁部45の下部に係合するため、軒樋40を適切に保持することができる。なお、前壁係合部21bは前壁部45の中央部には及ばないため、それにより美観が低下するおそれはない。
【0043】
なお、
図1、
図2の形状の軒樋40を支持する挟持保持部10としては、
図1、
図2に示したものに限られず、
図1に示した表挟持片22と
図2に示した裏挟持片21とを組み合わせたものであってもよいし、
図2に示した表挟持片22と
図1に示した裏挟持片21とを組み合わせたものであってもよい。
【0044】
つぎに
図3に示した軒樋支持具1について説明する。この軒樋支持具1は、
図1のものとは前耳42の形状が異なる軒樋40Aを支持するものである。この軒樋40Aの前耳42は、内面側に開口を有した凹所42aを有した形状とされている。本軒樋支持具1は、軒樋40の凹所42aに表挟持片22が係止されることで、樋押圧部14が軒樋40Aを内面より押圧して軒樋40を支持する構成とされている。以下、さらにくわしく説明する。
【0045】
表挟持片22は
図3に示すように略V字形状とされ、その中央下部には樋押圧部14が形成され、その前方に上方に傾斜した係止片25が形成されている。この係止片25は軒樋40を装着するためのガイド部24としても作用し、裏挟持片21の前端部との間に樋着脱口11が形成されている。この係止片25は、その先端部に軒樋40Aの前耳42の凹所42aに入り込んで係止される係止部25aを有している。この係止部25aが係止された状態では、樋押圧部14が軒樋40Aの底部44を押圧し、挟持保持部10が軒樋40Aを挟持保持することとなる。
【0046】
軒樋40Aは、
図1のものと同様、後耳41を樋着脱口11から挿入し、後耳41が樋着脱路12を通って後耳抱持部13に配され、前耳42の凹所42aが表挟持片22の係止片25の先端に被さるようにして装着されればよい。
【0047】
この軒樋支持具1によれば、軒樋40Aはいったん装着されると前後で固定された状態となるため、表挟持片22(樋押圧部14)と裏挟持片21との間にしっかりと挟持される。なお、樋押圧部14は弾性的に軒樋40の底部44を押圧することが望ましいが、前端が上下に動作しない構成であるため、弾性付勢力によらず、前耳42による固定により底部44を押圧状態に保持するものであってもよい。また、裏挟持片21は前壁係合部21bを有しているため、軒樋40を前後にずれることなく挟持することができる。
【0048】
ついで
図4に示した軒樋支持具1について説明する。この軒樋支持具1は、
図3のものと同様、表挟持片22の係止片25が軒樋40Aの凹所42aに係止されて軒樋40Aの底部44を押圧するものであるが、表挟持片22は前後にわたり軒樋40Aの内面に沿った形状とされ、樋押圧部14が底部44のおおむね全幅を押圧する構成とされている点で
図3のものと異なる。
【0049】
このように、樋押圧部14が前後に長く形成してあるため、裏挟持片21との協働により安定した挟持保持を実施することができる。
【0050】
また、表挟持片22が板ばねで構成されていれば、表挟持片21を上方へ弾性変形させることで樋着脱口11を大きく開くことで、軒樋40Aを後耳41を樋着脱口11、樋着脱路12を通して後耳抱持部13に装着することができる。なお、前壁係合部21bの先端を前方に開いた形状にして後耳41をガイドできるようにしてもよい。
【0051】
このような前方からの装着方法に限らず、表挟持片21の係止部25aを前耳42に係止させた状態で軒樋40Aを裏挟持片21の上に載せ置くように配してから、表挟持片22を後付けするようにしてもよい。このように表挟持片22を後付けする場合には、
図4に示すように、板ばね基部22aは杆部31に対して、ボルト38、ナット39で固定されることが望ましい。
【0052】
図3および
図4に示した軒樋支持具1は、表挟持片22で軒樋40Aの前耳42を引っ掛けるようにしてあるため、取り付け作業は
図1や
図2のものよりは時間がかかるが、上記のような支持構造であるため強固に軒樋40Aを支持することができる。この支持構造は、前耳と後耳の両方を支持する両持ち支持構造であり、受け・吊り支持構造でもあり、さらに挟持保持構造でもあるため、軒樋40Aのずれや外れはきわめて発生しにくい。
【0053】
以上に示した4形態の軒樋支持具1は、表挟持片22に板ばねを用いているが、裏挟持片21に板ばねを用いたものとしてもよい。