特開2019-112908(P2019-112908A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-112908(P2019-112908A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】軒樋吊り具
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/072 20060101AFI20190621BHJP
【FI】
   E04D13/072 501A
   E04D13/072 501J
   E04D13/072 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-249333(P2017-249333)
(22)【出願日】2017年12月26日
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】軒樋吊り具および軒樋の施工を簡易、迅速に行うことができる軒樋吊り具を提供する。
【解決手段】樋支持具本体15は、相互別体とされる、軒樋5の前耳5aを係止する前耳係止体20と、軒樋5の後耳5bを係止する後耳係止体30とを、相互に回動自在となるように連結状態にして備えており、前耳係止体20と後耳係止体30の回動により、吊りボルト11に対する挟持固定と、その解除とを自在とされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が屋根板に取り付けられる吊りボルトと、該吊りボルトの下部に固定され、軒樋を吊り下げ支持する樋支持具本体とを備えた軒樋吊り具において、
前記樋支持具本体は、相互別体とされる、軒樋の前耳を係止する前耳係止体と、軒樋の後耳を係止する後耳係止体とを、相互に回動自在となるように連結状態にして備えており、前記前耳係止体と前記後耳係止体の回動により、前記吊りボルトに対する挟持固定と、その解除とを自在としたことを特徴とする軒樋吊り具。
【請求項2】
請求項1において、
前記前耳係止体と前記後耳係止体とは連結桿を介して連結されていることを特徴とする軒樋吊り具。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記前耳係止体および前記後耳係止体はそれぞれ、回動により相互に向き合い近接し得、近接した状態で前記吊りボルトの径方向の片側に係合する半割係合部を備えていることを特徴とする軒樋吊り具。
【請求項4】
請求項3において、
前記前耳係止体および前記後耳係止体はそれぞれ、相互に近接する部位に前記半割係合部を有した板状部を備えており、
前記半割係合部は前記板状部の端部より略垂直に下方に延びていることを特徴とする軒樋吊り具。
【請求項5】
請求項4において、
前記吊りボルトを前後より挟持した前記半割係合部どうしが離反することを禁止した離反禁止手段をさらに備えていることを特徴とする軒樋吊り具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根板に取り付けられた吊りボルトを介して軒樋を吊り支持する軒樋吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の上記種類の軒樋吊り具は、吊りボルトの上部では屋根板に対して2つのナットで固定され、下部では樋支持具本体に対して2つのナットで固定される構成とされている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−190561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献のものは上述したように、上下2箇所でナットを2つずつ用いなければならず、取り付け作業がきわめて面倒であった。特に吊りボルトの下部では、水勾配を設定するために、吊りボルトに対するナットの螺合位置により高さ調整をしなければならず、施工には時間を要していた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、軒樋吊り具および軒樋の施工を簡易、迅速に行うことができる軒樋吊り具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の軒樋吊り具は、上部が屋根板に取り付けられる吊りボルトと、該吊りボルトの下部に固定され、軒樋を吊り下げ支持する樋支持具本体とを備えた軒樋吊り具において、前記樋支持具本体は、相互別体とされる、軒樋の前耳を係止する前耳係止体と、軒樋の後耳を係止する後耳係止体とを、相互に回動自在となるように連結状態にして備えており、前記前耳係止体と前記後耳係止体の回動により、前記吊りボルトに対する挟持固定と、その解除とを自在としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の軒樋吊り具は、前記前耳係止体と前記後耳係止体とは連結桿を介して連結されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の軒樋吊り具は、前記前耳係止体および前記後耳係止体はそれぞれ、回動により相互に向き合い近接し得、近接した状態で前記吊りボルトの径方向の片側に係合する半割係合部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の軒樋吊り具は、前記前耳係止体および前記後耳係止体はそれぞれ、相互に近接する部位に前記半割係合部を有した板状部を備えており、前記半割係合部は前記板状部の端部より略垂直に下方に延びていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の軒樋吊り具は、前記吊りボルトを前後より挟持した前記半割係合部どうしが離反することを禁止した離反禁止手段をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の軒樋吊り具は上述した構成とされているため、樋支持具本体を吊りボルトに対して着脱しやすくでき、その結果、軒樋吊り具および軒樋の施工を簡易、迅速に行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の軒樋吊り具は上述した構成となっているため、前耳係止体と後耳係止体とを連結桿とを介して間接的に連結でき、その結果、樋支持具本体の製造をしやすくすることができる。
【0013】
請求項3に記載の軒樋吊り具は上述した構成となっているため、樋支持具本体を吊りボルトに対してしっかりと固定することができる。
【0014】
請求項4に記載の軒樋吊り具は上述した構成となっているため、挟持状態では耳係止部側は下方に回動することを防止することができる。
【0015】
請求項5に記載の軒樋吊り具は上述した構成となっているため、軒樋の施工中あるいは軒樋の施工後に、回動により半割係合部どうしが弛んだり外れたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る軒樋吊り具の正面図である。
図2】(a)は図1のX−X線に対応した断面図、(b)は同軒樋吊り具の半割係合部の拡大斜視図(前耳係止体、後耳係止体の共通の図)である。
図3】同軒樋吊り具の着脱途中の状態を示す正面図である。
図4】(a)(b)は、離反禁止手段の2例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面をもとに説明する。
まず、軒樋吊り具10の基本構成について説明する。
【0018】
軒樋吊り具10は、上部が屋根板1に取り付けられる吊りボルト11と、吊りボルト11の下部に固定され、軒樋5を吊り下げ支持する樋支持具本体15とを備えた軒樋吊り具10である。樋支持具本体15は、相互別体とされる、軒樋5の前耳5aを係止する前耳係止体20と、軒樋5の後耳5bを係止する後耳係止体30とを、相互に回動自在となるように連結状態にして備えている。前耳係止体20および後耳係止体30の回動により、吊りボルト11に対する挟持固定と、その解除とを自在とした構成とされている。
【0019】
ついで、本軒樋吊り具10の詳細について図1図3を参照しながら説明する。
【0020】
吊りボルト11は、樋支持具本体15および軒樋5を屋根板1より吊り下げ支持するためのボルト体であり、長さ方向の略全長に雄ねじが形成されており、その上部が折板屋根の山部などの屋根板1に開設された孔に通されて上下のナット12、13(上部のナット12は山座付きナット)で固定される構成とされている。
【0021】
樋支持具本体15は、前耳係止体20と後耳係止体30との連結体を備えて構成されている。本実施形態では、樋支持具本体15は2本の連結桿40を備えており、これらの連結桿40により連結体の連結構造を担っている。
【0022】
前耳係止体20は、板状部21と、板状部21の一端側に配された、軒樋5の前耳5aを係止する前耳係止部22と、板状部21の他端側に配された半割係合部23とを備えている。後耳係止体30は、板状部31と、板状部31の一端側に配された、軒樋5の後耳5bを係止する後耳係止部32と、板状部31の他端側に配された半割係合部33とを備えている。
【0023】
いずれの係止体20、30も、半割係合部23、33が板状部21、31の端部より略直角に折曲され垂下して延びた形状とされている。図1のように両係止体20、30を、軒樋5が支持され得るように吊りボルト11に取り付けたときには、両板状部21、31が直線状に略水平状態に配される。このとき、半割係合部23、33どうしは最近接して対向した平行な状態にある。なお、係止体20、30がスムーズに回動するために、この状態で半割係合部23、33間に隙間G(図2(a)参照)が形成されていることが望ましい。
【0024】
図2(a)(b)に示すように、半割係合部23、33は、板状部21、31と同幅寸法とされ、幅方向の略中央には上下方向に延びる雌ねじ凹部23a、33aが形成され、その幅方向の両側には平板状の対向部23b、33bが形成されている。半割係合部23、33は、雌ねじ凹部23a、33aどうしが最近接して雌ねじが吊りボルト11の雄ねじに螺合して半割係合部23、33どうしで吊りボルト11を挟持する。その結果、半割係合部23、33(樋支持具本体15)は吊りボルト11に固定される。なお、半割係合部23、33の雌ねじの代わりに、吊りボルト11の雄ねじの溝に嵌合する微小な凸部が形成されていてもよい。
【0025】
連結桿40は、前耳係止体20と後耳係止体30とが相互に回動できるように両係止体20、30の幅方向の両側に配した棒状材とされる。この連結桿40は、図1および図2(a)に示すように、一端が前耳係止体20の板状部21の幅方向の端部にヒンジ結合され、他端が後耳係止体30の板状部31の幅方向の端部にヒンジ結合されている。
【0026】
ようするに、前耳係止体20は連結桿40の一方の端部側のヒンジ部42aに連結され、後耳係止体30は連結桿40の他方の端部側のヒンジ部42aに連結されて、それぞれの係止体20、30が個別に回動する構成とされている。ここで、両係止体20、30において、板状部21、31におけるヒンジ部42aと、折曲角部24、34との間の寸法L1、L2は略同一とされる。
【0027】
また、連結桿40は図1に示すように、前後で対称的に折曲された形状としたことが望ましい。図例のものは、上部に凹所を有するように2つの折曲部43を有しており、両端側のヒンジ結合部42と、それらを結ぶ連結部41とを備えてなる。
【0028】
半割係合部23、33どうしが最近接した図1の状態では、前後に連なる両板状部21、31と、連結桿40の連結部41との間には、吊りボルト11を中心として前後で対称的な台形状の2つの空間45が、軒樋5の長手方向に貫通するように形成される。この両空間45は、両半割係合部23、33が離反することを禁止した固定部材50が装着される貫通空間である。このような空間45は、連結桿40を折曲形状としたことにより形成され得た。この固定部材50については、図4の説明とともに後述する。なお、図1において2点鎖線で示したS1、S2、S3、S4は、固定部材50が装着される装着部位である。
【0029】
つぎに図2を参照して、本軒樋吊り具10の取り付け態様について説明する。
【0030】
樋支持具本体15は両係止体20、30が回動自在とされるため、前耳係止部22および後耳係止部32を上方に回動させることで、図3に示すように、突合せ状態にある半割係合部23、33は下部が開口した状態となる。この状態では板状部21、31も回動しているため、折曲角部24、34間も開いている。
【0031】
このような状態に保持された樋支持具本体15は、屋根板1に取り付けた吊りボルト11の下端より挿入され、矢印方向に移動調整した後、適切な高さ位置で前耳係止部22、後耳係止部32をともに下方に回動して半割係合部23、33どうしを平行な状態にすることで、吊りボルト11を挟持し、それにより吊りボルト11に固定される(図1参照)。
【0032】
このように、本軒樋吊り具10は簡単な操作で屋根板1に取り付けされ得る。特に、樋支持具本体15の吊りボルト11への取り付けに煩わしいナット止め作業をしなくてもよいため、迅速な作業が行える。また、吊りボルト11の雄ねじに高さ位置を示すマーキングをしておけば、樋支持具本体15を水勾配に対応させて取り付けることができる。なお、半割係合部23、33間に隙間G(図2(a)参照)があるため、両係止体20、30は折曲角部24、34が接触することなく回動がしやすい。
【0033】
また、半割係合部23、33が板状部21、31の下方に延びているから、図1の状態で軒樋5を取り付けると、前耳係止部22、後耳係止部32のそれぞれが重力で下方に回動するように作用する。そのため、図3に示すように半割係合部23、33どうしの下部が開くおそれはなく、また図1の状態から前後の係止部が下方に回動するおそれはないから半割係合部23、33の挟持状態が維持され、樋支持具本体15は図1の状態を維持することができる。
【0034】
また、本樋支持具本体15は連結桿40を有しているため、両係止体20、30を間接的に連結させることができ、そのため樋支持具本体15の製造をしやすくできる。さらに、製造過程における両係止体20、30の間隔の調整もしやすい。
【0035】
つぎに、本軒樋吊り具10に用いられる離反禁止手段の2例について、図4(a)(b)をもとに説明する。なお図4(a)(b)において、吊りボルト11(半割係合部23、33の中央部)の配置位置を2点鎖線P1で示し、連結桿40の配置位置を2点鎖線P2で示した。
【0036】
離反禁止手段は、吊りボルト11を前後より挟持した半割係合部23、33どうしが離反することを禁止した手段である。換言すれば、図1の状態において軒樋5を取り付ける際に前耳係止部22および後耳係止部32が上方に回動しないようにした手段であり、たとえば図4(a)(b)に示した固定部材50A、50Bで構成される。図4のいずれのものも、図1における前後の空間45に挿し込まれることで両半割係合部23、33が離反しない構成とされている。
【0037】
図4(a)の固定部材50Aは、板体を折曲、切除加工して形成され、図1における装着部位S1、S2、S3、S4に挿入される4本の挿入部52a、52bと、基部51とを有して構成されている。
【0038】
この固定部材50Aは、4つの挿入部52aが装着部位S1、S2、S3、S4に挿入され、空間45においては前後の挿入部52a間に両半割係合部23、33が挟持され、連結桿40の下方においては他の挿入部52b間で両半割係合部23、33が挟持されるように構成されている。つまり、半割係合部23、33は固定部材50Aの上下2つの間隙53に入り込み、連結桿40は前後2つの間隙54に入り込む。上下の間隙53の幅寸法は、挿入部52a、52bが半割係合部23、33に圧接する程度の寸法であることが望ましい。
【0039】
この固定部材50Aによれば、上下2箇所で半割係合部23、33を挟持する構成とされているため、軒樋5の取り付け中において回動により半割係合部23、33が離反するおそれはほとんどなく、半割係合部23、33間の弛み、外れを有効に防止することができる。また、板体の加工にて形成されているため、固定部材50Aを低コストで製造することができる。
【0040】
また、この固定部材50Aは軒樋5の取り付け後において装着したまま放置してもよく、そうすることで、軒樋5の施工後においても樋支持具本体15が吊りボルト11からずれたり、外れたりすることを防止することができる。
【0041】
また、図4(b)の固定部材50Bは、木材、プラスチックなどで形成され、図1における装着部位S1、S2に挿入される挿入部52cと、基部51とを有して構成されている。また固定部材50Bの挿入部52cは、先端に向けてすぼまった楔形状とされている。なお、固定部材50Bは中実、中空のいずれでもよい。
【0042】
この固定部材50Bは、挿入部52cの開放端部が装着部位S1、S2に挿入され、空間においては挿入部52c間に両半割係合部23、33が挟持されるように構成されている。なお、間隙53の幅寸法は、挿入部52aが半割係合部23、33に圧接する程度の寸法であることが望ましい。
【0043】
この固定部材50Bによれば、固定部材50Aと同様、半割係合部23、33間の弛み、外れを防止することができる。また挿入部52cが楔形状とされているため、軒樋5の施工後も取り付けたままにしておいても外れにくく、施工後の長期間において半割係合部23、33の離反を防止することができる。
【0044】
なお、離反禁止手段としては、上記のような固定部材50A、50Bには限定されず、たとえばクリップ部材で装着部位S3、S4において半割係合部23、33を挟持する手段を用いてもよい。また、2本の棒材を装着部位S1、S2に挿入するだけの手段を用いてもよい。
【0045】
以上の実施形態には、前耳係止体20と後耳係止体30とが連結桿40で連結された樋支持具本体15を例示したが、そのような連結桿40を用いずに、前耳係止体20と後耳係止体30とが直接的に回動自在に連結されたものであってもよい。
【0046】
また、樋支持具本体15の吊りボルト11に対する固定は、係止体20、30の半割係合部23、33の挟持によるものに限定されず、係止体20、30間の他の挟持手段によるものであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 屋根板
5 軒樋
5a 前耳
5b 後耳
10 軒樋吊り具
11 吊りボルト
15 樋支持具本体
20 前耳係止体(係止体)
21 板状部
22 前耳係止部
23 半割係合部
30 後耳係止体(係止体)
31 板状部
32 後耳係止部
33 半割係合部
40 連結桿
41 連結部
42 ヒンジ結合部
42a ヒンジ部
43 折曲部
50A、50B 固定部材(離反禁止手段)
51 基部

図1
図2
図3
図4