(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-113004(P2019-113004A)
(43)【公開日】2019年7月11日
(54)【発明の名称】高圧直噴用のレール
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20190621BHJP
【FI】
F02M55/02 360B
F02M55/02 360A
F02M55/02 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2017-247196(P2017-247196)
(22)【出願日】2017年12月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000501
【氏名又は名称】特許業務法人 銀座総合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀司
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AB02
3G066AD05
3G066BA36
3G066BA61
3G066BA63
3G066CB05
3G066CB19
3G066CD10
3G066CD14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】燃料圧力が50MPa以上の高圧直噴向けの場合でも、分岐孔付近を肉厚に、且つメタルシール部を硬度の高い素材にて形成可能とするとともに、軽量且つコストを低く抑えることができるガソリン直噴用のフューエルレールを提供する。
【解決手段】燃料の圧力が50MPa以上で使用される鉄鋼製のガソリン直噴用のフューエルレールにおいて、複数のブロック部材2と、このブロック部材2の間隔を連結するパイプ部材1とを備え、上記ブロック部材2は、上記パイプ部材1と連通する分岐孔とインジェクターを締結するためのメタルシール部とを備えるとともに、このブロック部材2の硬度を上記パイプ部材1の硬度よりも高いものとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料の圧力が50MPa以上で使用される鉄鋼製のガソリン直噴用のフューエルレールにおいて、複数のブロック部材と、このブロック部材の間隔を連結するパイプ部材とを備え、上記ブロック部材は、上記パイプ部材と連通する分岐孔と、インジェクターを締結するためのメタルシール部とを備えるとともに、このブロック部材の硬度が、上記パイプ部材の硬度よりも高いことを特徴とするガソリン直噴用のフューエルレール。
【請求項2】
上記ブロック部材の間隔には、上記パイプ部材の配置方向に補強部材を架設することにより、上記ブロック部材間の剛性を向上可能としたことを特徴とする請求項1のガソリン直噴用のフューエルレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン直噴レールの高圧化に対応するものであり、燃料圧力が50MPa以上の高圧で使用する高圧直噴用のレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より一般的に知られているガソリン直噴用のシステムの燃料圧力は20MPa以下であり、内部に燃料通路を設けたレール本体に対し、インジェクタホルダーや取付ボス等をろう付けにて接続して使用するのが一般的である。そしてこの燃料圧力の領域では、レール本体の肉厚が比較的薄肉であっても耐圧強度を確保することができるとともに、インジェクタホルダーとインジェクターとの連結にはOリングシールのみで十分に対応することができる。そのため、特にレールに高強度材を用いる必要はない。
【0003】
一方、燃料圧力が高圧であるディーゼルコモンレールシステムでは、レール自身の高耐圧性を確保するため、鍛造と切削によって製作されている。しかし、燃料圧力が高圧であるためインジェクターの連結にはOリングが使用できず、レールとインジェクターとの間にパイプを配置してメタルシールにより連結しなければならないものとなっていた。
【0004】
更に近年では、燃料の改善や排出ガス規制の強化によりガソリン直噴システムの燃料圧力は高圧化しており、50MPaを超えるようになった。そのため、フューエルレールを高耐圧化するために厚肉に形成する必要が生じるとともに、従来のパイプ部材にブロックをろう付けした構造では耐圧性を十分に確保することは難しいという問題が生じていた。また、従来はインジェクターとの連結にOリングを使用していたが、高圧化によりOリングでのシール限界を迎えるため、上記ディーゼルコモンレールシステムと同様にメタルシールで連結する必要がある。そこで、高耐圧のレールを上記ディーゼルコモンレールシステムと同様の構造とするために、レールを特許文献1に示す如く鍛造にて一体的なものとすることが考えられる。
【特許文献1】WO2016/042897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、耐圧性の弱点はメタルシール部につながる分岐孔付近であることが知られており、この分岐孔付近を肉厚化する必要がある。しかし、特許文献1に示す如く鍛造レールの場合には、分岐孔付近以外の部分も肉厚化を余儀なくされるため、重量増加が避けられないものとなっていた。
【0006】
また、このように重量が増加した肉厚の鍛造レールをガソリンシステムに多く用いられるステンレス素材にて製作すると、非常に高価なものとなる。更に、鍛造の場合には継手部分の位置や形成方向が一定方向に定まるためレイアウト性が低いものとなる。また、メタルシール部では、締結による変形を防ぐためにある程度硬度の高い材料が必要となるが、高圧レールの全ての部分に高強度材料を使用すると、コストが高くつくものとなる。
【0007】
そこで、本発明は上記の如き課題を解決しようとするものであって、燃料圧力が50MPa以上の高圧直噴向けの場合でも、分岐孔付近を肉厚に、且つメタルシール部を硬度の高い素材にて形成可能とするとともに、軽量且つコストを低く抑えることができるガソリン直噴用のフューエルレールを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は上述の如き課題を解決したものであって、燃料の圧力が50MPa以上で使用される鉄鋼製のガソリン直噴用のフューエルレールにおいて、複数のブロック部材と、このブロック部材の間隔を連結するパイプ部材とを備え、上記ブロック部材は、上記パイプ部材と連通する分岐孔と、インジェクターを締結するためのメタルシール部とを備えるとともに、このブロック部材の硬度が、上記パイプ部材の硬度よりも高いものである。
【0009】
尚、上記ブロック部材の硬度は、パイプ部材の硬度よりも30HV以上高いことが好ましく、これにより、ブロック部材の分岐孔付近の耐圧性を良好に保ちながら、製品全体の軽量化に寄与することができるとともに材料のコストを低廉なものとすることが出来るという効果をより顕著なものとすることができる。
【0010】
また、上記ブロック部材の間隔には、上記パイプ部材の配置方向に補強部材を架設することにより、上記ブロック部材間の剛性を向上させたものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明は上記の如く、複数のブロック部材とパイプ部材とを備えるとともに、ブロック部材に分岐孔とメタルシール部とを設けることにより、特に耐圧性を重要視する必要のないパイプ部材を薄肉に形成して分岐孔付近のみを肉厚にすることができる。そのため、従来の鍛造品と比較して製品全体の重量を軽量なものとすることができる。
【0012】
また、ブロック部材の硬度がパイプ部材の硬度よりも高いため、このブロック部材のメタルシール部での強度を高めることにより、インジェクターとの締結の際のメタルシール部における変形を防ぐことができる。このように、ブロック部材にのみ硬度の高い材料を使用するものであるから、製品全体に高価な高硬度の材料を使用する必要がなくコストを低く抑えることが可能となる。以上より、ブロック部材の分岐孔付近の耐圧性を良好に保ちながら、製品全体の軽量化に寄与することができるとともに材料のコストを低廉なものとすることが可能となる。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1について、
図1、2において以下に説明すると、 (1)はパイプ部材であって、このパイプ部材(1)の両端には、このパイプ部材(1)とは別体に形成したブロック部材(2)をそれぞれ設けている。またこのブロック部材(2)は、
図2に示す如く分岐孔(3)を設けている。この分岐孔(3)は、
図2に示す如く断面T字型であって、パイプ部材(1)の配置方向に延びるとともにこのパイプ部材(1)に連通する連通路(4)と、この連通路(4)の長さ方向中央部から垂直方向に伸びる分岐路(5)とから成るものである。
【0015】
上記の如くブロック部材(2)に分岐孔(3)を設けることにより、耐圧性を特に重視しなくてもよいパイプ部材(1)については薄肉に形成し、耐圧性を必要とする分岐孔(3)付近のみを肉厚に形成することができる。またこの分岐路(5)の先端側には、インジェクターを締結するためのメタルシール部(6)を突設している。
【0016】
また、ブロック部材(2)とパイプ部材(1)とを別体に形成していることから、このブロック部材(2)とパイプ部材(1)との材料を異なるものとすることができる。従って、高い耐圧性を必要とするブロック部材(2)に、パイプ部材(1)の硬度よりも高い硬度の材料を使用することができる。
【0017】
例えば上記ブロック部材(2)の素材としては、SUS系の場合はDuplex、SUS630、EN1.4418、SUS304N2、スチール系の場合はS45C、S55C、SCM420、SCM430、SCM435、SCM440等を使用することができる。またパイプ部材(1)の素材としては、上記に例示したブロック部材(2)の素材よりも硬度が低いものであって、SUS系の場合はSUS304、SUS304L、SUS316、SUS316L、スチール系の場合はSTS370、STKM17、STKM20、STKM13等を使用することができる。
【0018】
上記の如くブロック部材(2)のみに高硬度の高価な素材を使用することができるため、コストを低く抑えることができる。またブロック部材(2)に高硬度の材料を使用することにより、高い燃料圧力の場合でも分岐孔(3)の破損を防止することができるとともに、ブロック部材(2)に設けたメタルシール部(6)も高硬度となるため、このメタルシール部(6)での耐圧性を高めることが可能となり、インジェクターとの締結の際の変形を防ぐことが可能となる。
【実施例2】
【0019】
また、上記実施例1ではパイプ部材(1)に2個のブロック部材(2)を連結しているが、本実施例2に示す如く、パイプ部材(12)に4個のブロック部材(11)を連結したものであっても良く、更に異なる実施例ではこれに限らず、3個又は5個以上のブロック部材を連結したものであってもよい。尚、ブロック部材(11)及びパイプ部材(12)の各構成については上記実施例1と同様としている。
【実施例3】
【0020】
また、本実施例3でも上記実施例2と同じく、パイプ部材(22)に4個のブロック部材(21)を連結している。更に、隣接するブロック部材(21)の間隔には、
図4に示す如く上記パイプ部材(22)の配置方向に補強部材(23)を架設している。このように補強部材(23)を架設することにより、上記ブロック部材(21)間の剛性を向上させることができる。尚、本実施例においても実施例2と同様に、ブロック部材(21)及びパイプ部材(22)の各構成については上記実施例1と同じとしている。
【符号の説明】
【0021】
1、12、22 パイプ部材
2、11、21 ブロック部材
3 分岐孔
6 メタルシール部
23 補強部材