【実施例】
【0012】
(シート)
本開示に係る結束具に用いられるシート10は、基材12と、この基材12の一面のみに設けられた自己粘着層14とから基本的に構成されている(
図2参照)。シート10は、自己粘着層14が基材12の一面全体に亘って設けられ、自身の厚み方向へ曲げ変形可能な可撓性を有している。基材12は、1つの素材からなる単層構造、または複数の素材を重ね合わせた複層構造の何れでもよく、
図2の拡大図に示すように複層構造であれば、例えば、保護層13aと緩衝材層13bとから構成することが好ましく、この場合、保護層13aが外側に露出してシート10の表面を構成し、自己粘着層14が緩衝材層13b側に設けられる。
【0013】
基材12の保護層13aは、その素材がある程度の伸び性がある樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフィルム等が用いられている。保護層13aをなすフィルムとしては、延伸フィルム(一軸延伸、二軸延伸等)、無延伸フィルム、延伸フィルムと無延伸フィルムの積層体等を用いることができ、保護層13aに求められる特性に応じて、適宜使用すればよい。延伸フィルムは、厚みを薄くでき、剛性や耐摩耗性に優れ、無延伸フィルムは、特に柔軟性に優れている。なお、延伸フィルムと無延伸フィルムの積層方法は、特に限定されず、公知の方法である、ウエットラミネート(水系接着剤または水分散系接着剤を使用)、ドライラミネート(溶剤系接着剤または反応系接着剤)、ホットメルトラミネート(ホットメルト接着剤)などの接着剤を使用したラミネート法や、押出しラミネート法などを採用可能である。
【0014】
基材12の緩衝材層13bは、合成樹脂中に細かい気泡を有する発泡状または多孔質状に成形されたシート状物を用いることができる。その素材となる合成樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂(主にポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP))、ポリウレタン系樹脂(PUR)、ポリスチレン系樹脂(PS)等を採用可能である。なお、緩衝材層13bとしては、ポリオレフィン系樹脂発泡体またはポリウレタン樹脂発泡体が好ましい。緩衝材層13bの気泡構造は、気泡が互いに繋がる連通構造が好ましいが、気泡が互いに独立した独立構造であってもよい。緩衝材層13bとして発泡体を用いる場合は、発泡倍率が2倍〜100倍、好ましくは10倍〜30倍の範囲である。また、緩衝材層13bの厚みは、0.3mm〜6mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5mm〜3.0mmの範囲である。
【0015】
自己粘着層14は、自己粘着性を有するものである。ここで、自己粘着性とは、自己粘着層14,14同士でしか粘着性を示さないことをいい、同じ材料の自己粘着層14,14同士を重ね合わせて軽く押圧することによって互いに粘着して、適度な強度で接合する。例えば、自己粘着層14は、基材12や配線H等の自己粘着層14以外と接触させたとしても、自身の粘着性は働かない。自己粘着層14は、例えば、ベース樹脂となる天然ゴムラテックスに、タッキファイヤー(粘着付与剤)としてのテルペン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油系樹脂(脂肪族系、芳香族系)や、フェノール系酸化防止剤などを配合したものが用いられる。なお、図面では、自己粘着層14の厚みを強調して表している。
【0016】
(結束具の概要)
以下に説明する実施形態の結束具Vは、何れも、複数の配線Hを束ねるものである。結束具Vは、基材12の一面のみに該一面全体に設けられた自己粘着層14を有し、自己粘着層14,14同士でしか接合しない2枚のシート10,10を組み合わせて構成されている。ここで、2枚のシート10,10のうち一方を第1シート10Aといい、第1シート10Aの構成要素の符号に「A」を付し、2枚のシート10,10のうち他方を第2シート10Bといい、第2シート10Bの構成要素の符号に「B」を付して区別する場合がある。なお、第1シート10Aと第2シート10Bとの層の構成は、同一または異なるものの何れでもよく、例えば後述するように第1シート10Aより内側に配置される第2シート10Bについて、保護層13aを省略するなど、適宜変更可能である。
【0017】
例えば
図2や
図6や
図13に示すように、結束具Vは、第1基材12Aの一面のみに該一面全体に設けられた第1自己粘着層14Aを有する第1シート10Aと、第2基材12Bの一面のみに該一面全体に設けられた第2自己粘着層14Bを有する第2シート10Bとを備えている。結束具Vは、第1シート10Aにおける一縁部の第1自己粘着層14Aと第2シート10Bにおける一縁部の第2自己粘着層14Bとで貼り付くと共に、第1シート10Aにおける他縁部の第1自己粘着層14Aと第2シート10Bにおける他縁部の第2自己粘着層14Bとで貼り付いている。そして、結束具Vは、第1シート10Aおよび第2シート10Bが環状に繋がっている。また、第1シート10Aは、第1自己粘着層14Aが配線Hに接するように、第1自己粘着層14Aを内側に向けて第1シート10Aが配置されている。更に、第2自己粘着層14Bを外側に向けた第2シート10Bは、第1シート10Aより内側に配置されている。
【0018】
結束具Vによれば、第1シート10Aと第2シート10Bとを組み合わせた簡単な構成で、複数の配線Hを適切に束ねることができる。結束具Vは、第1自己粘着層14Aを内側に向けて第1シート10Aが配置されているので、第1自己粘着層14Aを第2シート10Bで第1シート10Aを覆う必要はなく、第2シート10Bを第1シート10Aの縁部同士を繋ぐのに足りる最小限の寸法で設定可能である。すなわち、比較的小さな第2シート10Bでよいので、結束具Vにかかるコストを抑えることができる。そして、結束具Vは、外側が基材12で基本的に構成されるので、傷つき難く、基材12の保護層13aに由来する耐摩耗性や摺動性などの特性を発揮させることができる。しかも、結束具Vは、保持する配線Hに第1自己粘着層14Aが接する構成であるので、基材12よりも高い第1粘着層14Aの摩擦抵抗によって、配線Hをずれ難くすることができる。このように、結束具Vは、配線Hがずれ難いので、車両走行時などにワイヤーハーネスWが振動しても、結束具Vと配線Hとの摺動に起因する異音の発生を防止できる。
【0019】
結束具Vは、第1シート10Aと第2シート10Bとの重なる部分を小さくできるので、配線Hを束ねる保持部分16の外形寸法を小さくできたり、束ねた配線Hの曲げを妨げない柔軟性を確保できたりするなど、ワイヤーハーネスWに要求される仕様に応じた自由度が高く、利便性を向上することができる。また、結束具Vは、巻き方によって、所謂「の」の字巻きの結束形態(第1の結束形態、
図2)と、拝み貼りされた鍔部分18が配線Hを保持する保持部分16から延出する結束形態(第2の結束形態、例えば
図4、
図7および
図8)と、第1の結束形態および第2の結束形態を併有する結束形態(
図13)とを選択することができ、利便性に優れている。
【0020】
(ワイヤーハーネスの概要)
例えば
図1に示すように、複数の配線Hが、直線部分や、配線Hの向きが分かれる分岐部分や、該分岐部分近傍などの適宜箇所で、結束具Vによって束ねられて、ワイヤーハーネスWが構成される。なお、ワイヤーハーネスWは、複数の結束具Vで束ねられている態様に限らず、1つの結束具Vで束ねられていてもよい。ワイヤーハーネスWは、低廉なコストで利便性のよい結束具Vを用いているので、コストを抑えつつ利便性を向上することができる。
【0021】
(第1実施形態)
図2に示すように、第1実施形態に係る結束具V1は、第1シート10Aの全体が、複数の配線Hに巻き付くように配置され、内側に向いた第1自己粘着層14Aが配線Hに接するようになっている。また、第2シート10Bは、自身の第2自己粘着層14Bを第1シート10Aの第1自己粘着層14Aに貼り合わせて、複数の配線Hに巻き付いた第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように配置されている。第1シート10Aは、束ね合わせる複数の配線Hの周回りの寸法と略同じに設定される。複数の配線Hの周回りの寸法に対して、同じまたは該寸法より小さく設定した場合、複数の配線Hに巻き掛けた際に、第1シート10Aの縁部同士が重ならず、ワイヤーハーネスWが振動しても摺動に起因する異音の発生を防止できる。また、複数の配線Hの周回りに対するほとんどの領域において、第1シート10Aのみ(1重)で巻き付けられているため、柔軟性に優れ、曲げ易くなっている。複数の配線Hの周回りの寸法に対して、第1シート10Aを大きく設定した場合、巻き付け後に、第1シート10Aの余った部分をカットしたり、第1シート10Aの第1自己粘着層14A同士を接合したりするなどすれば、異音の発生を低減または防止することができる。また、複数の配線Hの周回りの寸法に対して、第1シート10Aを大きく設定すると、第1シート10Aの他縁部と第2シート10Bの他縁部とを合わせ易くなり、組み付けの作業性を向上させることができる。第2シート10Bは、一縁部と他縁部との間の寸法が、第1シート10Aにおける一縁部と他縁部との間の寸法よりも小さく設定されている。結束具V1は、第1シート10Aにおいて配線Hに巻き付いて対向する縁同士を突き当てた状態で第2シート10Bにより第1シート10Aを繋ぐと、外側を向く第2自己粘着層14Bが第1シート10Aで覆われるので好ましい。なお、結束具V1は、第1シート10Aにおいて配線Hに巻き付いて対向する縁の間に、隙間があくようにしてもよく、また重なるようにしてもよい。結束具V1は、複数の配線Hを囲う保持部分16からフランジ状に延出する鍔部分18を有していない所謂「の」の字巻きの結束形態(第1の結束形態)で複数の配線Hを束ねる構成であり、結束具V1が配線Hの延在方向に曲げ易い柔軟性を有している。
【0022】
次に、第1実施形態の結束具V1を用いたワイヤーハーネスWの製造方法について、
図3を参照して説明する。第1シート10Aの一縁部と第2シート10Bの一縁部とを、互いの自己粘着層14A,14Bが重なるように配置して(
図3(a))、互いの自己粘着層14A,14Bを貼り合わせて接合した接合シートを得る(
図3(b))。この際、第2シート10Bの他縁部は、第1シート10Aの一縁部の外側へ延出している。第1シート10Aの第1自己粘着層14Aが内側になると共に、第2シート10Bの第2自己粘着層14Bが外側に向くように、第1シート10Aを複数の配線Hの外周に巻き掛ける(
図3(c)および(d)参照)。第1シート10Aにおける第2シート10Bが接合された一縁部を配線Hの外周に沿わせて配置した後、第1シート10Aにおける第2シート10Bが接合された一縁部と反対の他縁部を、第1シート10Aから延出して外側を向く第2シート10Bの第2自己粘着層14Bに重ね合わせる(
図3(e))。これにより、第1シート10Aにおける他縁部において内側に向く第1自己粘着層14Aと、第2シート10Bの第2自己粘着層14Bとが重なって互いに粘着して接合し(
図2参照)、結束具V1で複数の配線Hが束ねられたワイヤーハーネスWが得られる。
【0023】
第1実施形態の結束具V1によれば、前述した作用効果の他に、以下のような作用効果が生じる。結束具V1は、シート10が合掌状に貼り合わさった鍔部分18が形成される構成ではなく、所謂「の」の字巻きの結束形態である。また、結束具V1は、配線Hを保持する部分のほとんどが、第1シート10Aだけの1重になっている。これにより、結束具V1は、自身をある程度曲げ変形可能である柔軟性を有しており、結束具V1の存在によって配線Hの変形を妨げることを防止できる。従って、結束具V1を有するワイヤーハーネスWの組み付け作業性を向上し得る。このような結束具V1は、例えば、配線Hの仮止めに適している。結束具V1は、第2シート10Bの幅を第1シート10Aの幅よりも小さく設定して、第1シート10Aと第2シート10Bとが重なる範囲を小さくしている。これにより、結束具V1を、配線Hの延在方向と交差する方向へ変形し易くできる。しかも、結束具V1は、第2シート10Bを幅狭に設定することで、該結束具V1の厚みを抑えてワイヤーハーネスWをコンパクトにすることができる。
【0024】
結束具V1は、第1シート10Aの第1自己粘着層14Aを内側に向けるので、配線Hに巻き掛けた第1シート10Aを第2シート10Bに貼り合わせる際に、第1自己粘着層14A同士を誤って接合してしまうことを回避できる。また、結束具V1は、第2シート10Bが貼り付いた第1シート10Aの一縁部を基準として、第1シート10Aの他縁部の第1自己粘着層14Aを第2シート10Bの第2自己粘着層14Bに貼り付ければ、第1シート10Aが斜めになるなどの位置ずれを防止できると共に、配線Hを適切にまとめて結束することができる。そして、結束具V1は、同じ層構成の第1シート10Aと第2シート10Bを組み合わせて配線Hに巻き付けるだけの簡単な手順で得ることができ、ワイヤーハーネスWの製造について、作業性の向上に寄与し得る。
【0025】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態に係る結束具V2は、第1シート10Aによって、複数の配線Hに巻き付くように配置される保持部分16と、この保持部分16から延出する鍔部分18とが構成されている。鍔部分18は、第1シート10において複数の配線Hを囲う環状に形成された保持部分16から延出する部位を重ね合わせて、互いの第1自己粘着層14A,14Aを貼り合わせて形成される。また、結束具V2において、第2シート10Bが、第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように配置されている。結束具V2は、第1シート10Aが束ね合わせる複数の配線Hの周回りの寸法よりも大きく設定されており、複数の配線Hに巻き掛けた際に、第1シート10Aを合掌状に重ねることができる余剰ができるようになっている。このように、結束具V2は、複数の配線Hを囲う保持部分16からフランジ状に延出する鍔部分18を有する結束形態(第2の結束形態)で複数の配線Hを束ねる構成であり、鍔部分18により結束具V2が配線Hの延在方向に曲げ難い剛直性を有している。
【0026】
第2実施形態の結束具V2をより具体的に説明する。
図4および
図5に示すように、第1シート10Aは、保持部分16から延出し、縁を第1自己粘着層14A,14A同士が対面するように折り返した一縁部と、保持部分16から延出し、第1自己粘着層14Aが該一縁部の第1自己粘着層14Aに対面するように配置される他縁部とによって、鍔部分18を形成している。なお、保持部分16は、第1自己粘着層14Aが内側になるように形成されており、保持している配線Hに第1自己粘着層14Aが接するようになっている。また、第2シート10Bは、第1シート10Aの一縁部において折り返された縁の第1自己粘着層14Aに第2自己粘着層14Bを貼り合わせると共に、第1シート10Aの他縁部の第1自己粘着層14Aに第2自己粘着層14Bを貼り合わせて、鍔部分18に配置される第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように、鍔部分18に配置されている。そして、結束具V2には、第2シート10Bを挟む両側に、鍔部分18において対面する第1自己粘着層14A,14A同士が貼り付いた接合部が形成されている。
【0027】
次に、第2実施形態の結束具V2を用いたワイヤーハーネスWの製造方法について、
図6を参照して説明する。第1シート10Aの一縁部と第2シート10Bの一縁部とを、互いの自己粘着層14A,14Bが重なるように配置して、互いの自己粘着層14A,14Bを貼り合わせて接合した接合シートを得る(
図6(a))。この際、第2シート10Bの他縁部は、第1シート10Aの一縁部の外側へ延出している。第1自己粘着層14Aが内側になるように、第1シート10Aを複数の配線Hを挟むように巻き掛けて保持部分16を形成する(
図6(b))。第1シート10Aにおいて保持部分16から延出して合掌状に向かい合わせた縁部のうち、他縁部の縁を折り返して、一縁部に接合されている第2シート10Bの第2自己粘着層14Bに第1自己粘着層14Aを貼り付ける(
図6(c))。また、第1シート10Aにおいて合掌状に向かい合う一縁部と他縁部とを第1自己粘着層14A,14A同士で貼り合わせると共に、折り返した他縁部の縁を第1自己粘着層14A,14A同士で貼り合わせる。これにより、第1シート10Aからなる保持部分16によって複数の配線Hを保持すると共に保持部分16から延出する鍔部分18を有する結束具V2で複数の配線Hが束ねられたワイヤーハーネスWが得られる。
【0028】
実施形態2の結束具V2によれば、前述した作用効果の他に、以下のような作用効果が生じる。結束具V2は、シート10が合掌状に貼り合わさった鍔部分18が保持部分16から延出するように形成される結束形態である。結束具V2は、配線Hを保持する保持部分16が第1シート10Aだけの1重になっているが、鍔部分18によって、自身が変形し難い剛直性を有し、配線Hの変形を防止することができる。従って、結束具V2を有するワイヤーハーネスWは、形状を保持し易く、車両への組み付け状態を保つことができる。このような結束具V2は、ワイヤーハーネスWの形状を維持する支持手段として適している。ここで、結束具V2は、鍔部分18において第1シート10Aが2重に重なるだけでなく、更に第2シート10Bが鍔部分18に配置されて、鍔部分18にシート10A,10Bが3重に重なる構成であるので、鍔部分18を硬くすることができ、剛直性を有する結束態様として良好である。また、鍔部分18は、折り返された第1シート10Aの他縁部によって端縁が形成されるので、折り返した第1シート10Aに引っ掛かって、単に拝み貼りした態様と比べて配線Hが抜け難い。結束具V2の鍔部分18における第1シート10Aと第2シート10Bとの接合部位は、目的に応じて、保持部分16の近くに配置しても、保持部分16から離して配置しても、何れであってもよい。
【0029】
(第2実施形態の変形例1)
図7に示すように、第2実施形態の変形例1に係る結束具V2aは、第1シート10Aによって、複数の配線Hに巻き付くように配置される保持部分16と、この保持部分16から延出する複数(2つ)の鍔部分18とが構成されている。鍔部分18は、第1シート10Aにおいて複数の配線Hを囲う環状に形成された保持部分16から延出させた部位を重ね合わせて、互いの第1自己粘着層14A,14Aを貼り合わせて形成される。また、結束具V2aにおいて、第2シート10Bが、複数の配線Hを囲うように配置された第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように配置されている。結束具V2aは、第1シート10Aの一部を折り畳んで拝み貼りすることで鍔部分18が形成され、鍔部分18の数や保持部分16に対する鍔部分18の位置を簡単に変更することができる。結束具V2aは、第1シート10Aの両縁部が配線Hを囲う位置に配置され、第2シート10Bが配線Hに重なる位置に配置されて、保持部分16の一部を形成している。このように、結束具V2aは、複数の配線Hを囲う保持部分16からフランジ状に延出する鍔部分18を有する結束形態(第2の結束形態)で複数の配線Hを束ねる構成であり、複数の鍔部分18により結束具V2aが配線Hの延在方向に曲げ難い剛直性を有している。このように、結束具V2aは、前述した作用効果に加えて、鍔部分18を複数設けてあるので、剛直性を向上させることができる。
【0030】
(第2実施形態の変形例2)
図8に示すように、第2実施形態の変形例2に係る結束具V2bは、第1シート10Aによって、複数の配線Hに巻き付くように配置される2つの保持部分16,16と、2つの保持部分16,16を繋ぐように設けられた鍔部分18とが構成されている。鍔部分18は、第1シート10Aにおいて複数の配線Hを囲う環状に形成された保持部分16,16間に亘る部位と該第1シート10Aの両縁部とを重ね合わせて、互いの第1自己粘着層14A,14Aを貼り合わせて形成される。また、結束具V2bにおいて、第2シート10Bが、鍔部分18を構成する第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように配置されている。そして、結束具V2bには、第2シート10Bを挟む両側に、鍔部分18において対面する第1自己粘着層14A,14A同士が貼り付いた接合部が形成されている。このように、結束具V2bは、複数の配線Hを囲う保持部分16からフランジ状に延出する鍔部分18を有する結束形態(第2の結束形態)によって、複数の配線Hを複数(本例では2つ)のまとまりに束ねる構成であり、複数の鍔部分18により結束具V2bが配線Hの延在方向に曲げ難い剛直性を有している。結束具V2bは、前述した作用効果に加えて、剛直性を有する結束態様で、1つの結束具V2bにより、複数の配線Hを複数のまとまりに束ねることができ、ワイヤーハーネスWにおいて結束具V2bの数を減らすことができる。
【0031】
(第2実施形態の変形例3)
前述した第2実施形態の結束具V2(V2b)の構成に付加して、配線Hを束ねると共に位置決めできる保持片32を、第1シート10Aに設けてもよい。例えば、
図9(c)に示すように、第2実施態様の変形例3に係る結束具V2cは、第1シート10Aの内側に配置して、一辺を残して第1シート10Aから切り離された保持片32を有している。保持片32は、第1シート10Aと繋がる辺を根元として第1自己粘着層14Aを内側にして環状に曲げて、複数の配線Hに巻き付け可能である。また、保持片32は、先端の第1自己粘着層14Aを第1シート10Aにおいて鍔部分18を構成する部位の第1自己粘着層14Aに向かい合わせるように、更に曲げ変形可能である。なお、結束具V2cは、基本構成が前述の第2実施形態の結束具V2と同じであり、共通する構成の説明は省略する。
【0032】
図9に示すように、結束具V2cには、1つまたは複数の保持片32が設けられており、本実施形態では、配線Hの延在方向に離して2つの保持片32,32が設けられている。保持片32は、第1シート10Aに切り込みを設けることで形成されて、切り込みの延在ラインに応じて、長方形状(本実施形態)や三角形状や半円形状などの適宜形状に形作られる。また、保持片32を形成する切り込みは、シート10の端縁まで延在しないように第1シート10Aの内側に配置されている。保持片32は、束ねる配線Hが通る位置に沿って第1シート10Aに繋がる辺が設定されて、配線Hの延在方向と直交する方向へ曲げて、配線Hを跨いだ当該辺と反対側で先端が第1シート10Aに接合される。
【0033】
次に、第2実施態様の変形例3に係る結束具V2cを用いたワイヤーハーネスWの製造方法について、
図9を参照して説明する。配線Hの延在する位置に合わせて、シート10に厚み方向に貫通する切り込みを形成して、保持片32を設ける(
図9(a))。配線Hを第1シート10Aの第1自己粘着層14A側に配置する。保持片32を第1シート10Aに繋がる辺を根元として配線Hを跨ぐように折り曲げ、保持片32の先端の第1自己粘着層14Aを第1シート10Aの第1自己粘着層14Aに押し付けて、配線Hに巻き掛けた保持片32の先端を第1シート10Aに接合する(
図9(a))。第1シート10Aを配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った第1自己粘着層14A,14A同士を接合する(
図9(b))。第1シート10Aの他縁部を折り返して、第2シート10Bと重ねて貼り合わせる(
図9(c))。これにより、複数の配線Hを保持片32で束ねると共に第1シート10Aにより配線Hを挟んだ結束具V2cによって、配線Hが保持されたワイヤーハーネスWが得られる。
【0034】
第2実施態様の変形例3に係る結束具V2cによれば、保持片32が第1シート10Aと一体的に設けられているので、保持片32で配線Hを保持することで、第1シート10Aと配線Hとを位置決めすることができ、結束具V2cを配線Hに対して適切な位置に配置することができる。結束具V2cを用いることで、複数の配線Hを結束具V2cとは別のビニールテープなどで仮止めする必要はなく、ワイヤーハーネスWに関する部品点数や作業工数等を減らすことができる。結束具V2cは、第1シート10Aおよび保持片32の自己粘着層14が何れも内側に向くように配置される。従って、結束具V2cは、外側が基材12で基本的に構成されるので、傷つきにくく、基材12の保護層13aに由来する耐摩耗性や摺動性などの特性を発揮させることができる。そして、結束具V2cは、保持片32を配線Hに巻き掛けてから第1シート10Aを折り返すだけの簡単な手順で得ることができ、ワイヤーハーネスWの製造について、作業性の向上に寄与し得る。
【0035】
図10(b)に示すように、第2実施態様の変形例3に係る結束具V2cによって、複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分において複数の配線Hを束ねて、ワイヤーハーネスWを構成することができる。この場合、配線Hが分岐する前の部分と、2つに分岐した後の部分のそれぞれとに対応して、保持片32を設けて、各経路の配線Hを保持片32で保持するとよい(
図10(a))。結束具V2cは、第2シート10Bが接合された第1シート10Aの一縁部を折り返して第1シート10A,10A同士を接合した鍔部分18に重ねて、分岐後の配線Hの一方を通してある。結束具V2cは、第1シート10Aの他縁部側を分岐部分に重ねるように折り曲げて、向かい合わせた第1自己粘着層14A,14A同士を接合すると共に、第1シート10Aの他縁部の第1自己粘着層14Aを第2シート10Bの第2自己粘着層14Bに重ねて貼り合わせる。これにより、複数の配線Hを保持片32で束ねると共に第1シート10Aにより配線Hを挟んだ結束具V2cによって、配線Hが保持されたワイヤーハーネスWが得られる(
図10(b))。
【0036】
(第2実施形態の変形例4)
前述した第2実施形態の結束具V2(V2b,V2c)の構成に付加して、配線Hを束ねると共に位置決めできる挿通部42を、第1シート10Aに設けてもよい。例えば、
図11に示すように、第2実施態様の変形例4に係る結束具V2dは、第1シート10Aの内側に設けられて、配線Hが第1シート10Aの表裏に挿通できるように開口可能に形成された挿通部42を備えている。なお、結束具V2dは、基本構成が前述の第2実施形態の結束具V2cと同じであり、共通する構成の説明は省略する。
【0037】
図11に示すように、結束具V2dには、1つ(本実施形態)または複数の保持片32と、1つ(本実施形態)または複数の挿通部42とが設けられている。本実施形態では、配線Hの延在方向に離して、保持片32と挿通部42とがそれぞれ1つずつ設けられている。挿通部42は、第1シート10Aに形成された切り込みによって構成され、配線Hが第1シート10Aの表裏に通るように開口可能になっている。挿通部42は、第1シート10Aの内側に、配線Hが通る位置と交錯するように配置されて、切り込みの開口縁を第シート10Aの厚み方向にずらして開口するようになっている。また、挿通部42を形成する切り込みは、シート10の端縁まで延在しないように第1シート10Aの内側に配置されている。なお、第2実施態様の変形例4では、変形例3で説明した保持片32を有しているが、保持片32を省略しても、保持片32に代えて挿通部42としたり、あるいは第1実施形態で説明した結束具V1を組み合わせてもよい。また、挿通部42を直線的な切り込みで形成することに限らず、L字状、V字状、X字状、H字状、コの字状、円形状などとしてもよく、長孔や丸孔など開口する貫通孔で挿通部42を形成してもよい。
【0038】
次に、第2実施態様の変形例4に係る結束具V2dを用いたワイヤーハーネスWの製造方法について、
図11を参照して説明する。配線Hの延在する位置に合わせて、第1シート10Aに厚み方向に貫通する切り込みを形成して、挿通部42を設ける(
図11(a))。配線Hを第1シート10Aの第1自己粘着層14A側に配置する(
図11(a))。配線Hを挿通部42に通し、保持片32を第1シート10Aに繋がる辺を根元として配線Hを跨ぐように折り曲げ、保持片32の先端の第1自己粘着層14Aを第1シート10Aの第1自己粘着層14Aに押し付けて、配線Hに巻き掛けた保持片32の先端を第1シート10Aに接合する(
図11(a))。第1シート10Aを配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った第1自己粘着層14A,14A同士を接合する(
図11(b))。第1シート10Aの他縁部を折り返して、第2シート10Bと重ねて貼り合わせる(
図11(c))。これにより、複数の配線Hを保持片32および挿通部42で束ねると共に第1シート10Aにより配線Hを挟んだ結束具V2dによって、配線Hが保持されたワイヤーハーネスWが得られる。
【0039】
第2実施態様の変形例4に係る結束具V2dによれば、挿通部42が第1シート10Aと一体的に設けられているので、挿通部42で配線Hを保持することで、第1シート10Aと配線Hとを位置決めすることができ、前述した変形例3と同様の作用効果を奏する。特に、挿通部42は、配線Hを挿通可能な1本の切り込みで構成することができるので、構成を簡略化することができる。
【0040】
図12(b)に示すように、第2実施態様の変形例4に係る結束具V2dによって、複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分において複数の配線Hを束ねて、ワイヤーハーネスWを構成することができる。この場合、配線Hが分岐する前の部分と、2つに分岐した後の部分のそれぞれとに対応して、保持片32および/または挿通部42を設けて、各経路の配線Hを保持するとよい(
図12(a))。結束具V2dは、第2シート10Bが接合された第1シート10Aの一縁部を折り返して第1シート10A,10A同士を接合した鍔部分18の裏側(本実施形態では、第1シート10Aの第1基材12A側)を通して、挿通部42に通した分岐後の配線Hの一方が配置される。結束具V2dは、第1シート10Aの他縁部側を分岐部分に重ねるように折り曲げて、向かい合わせた第1自己粘着層14A,14A同士を接合すると共に、第1シート10Aの他縁部の第1自己粘着層14Aを第2シート10Bの第2自己粘着層14Bに重ねて貼り合わせる。これにより、複数の配線Hを保持片32と挿通部42とで束ねると共に第1シート10Aにより配線Hを挟んだ結束具V2dによって、配線Hが保持されたワイヤーハーネスWが得られる(
図12(b))。
【0041】
なお、複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分において複数の配線Hを束ねて、ワイヤーハーネスWを構成する際に、後述する参考例で説明する保持片32および挿通部42の構成を適用してもよい。
【0042】
(第3実施形態)
図13に示すように、前述した第1の結束態様による第1結束部分50aと第2の結束態様による第2結束部分50bとを併有した結束具V3であってもよい。第3実施形態の結束具V3は、一縁部および/または他縁部のそれぞれから切れ込まれたスリット52によって第1シート10Aが内側の一部を残して区分されている(
図13(a))。また、区分された第1シート10Aの一縁部には、第2シート10Bが接合されている。ここで、第1シート10Aにおいて、第1結束部分50aとなる区分は、第2結束部分50bとなる区分と比べて、一縁部と他縁部との間の寸法が短く設定されている。そして、第1結束部分50aとなる区分と第2結束部分50bとなる区分とのそれぞれによって、前述した結束形態になるように配線Hを束ねることで、第1の結束態様による第1結束部分50aと第2の結束態様による第2結束部分50bとが配線Hの延在方向に並んで設けられた結束具V3によって配線Hを束ねたワイヤーハーネスWが得られる(
図13(b))。このように第3実施形態の結束具V3によれば、柔軟性を有する第1結束部分50aと剛直性を有する第2結束部分50bとを、正確な位置関係で隣り合わせて設けることができる。結束具V3は、第1シート10Aと第2シート10Bとを接合した後、接合シートの不要部分をカットしたり、スリット52を入れることのみで、容易に作製することができる。
【0043】
(結束形態)
第1シート10Aと第2シート10Bとを接合した接合シートによって、用途などに応じて、前述した第1の結束態様(第1実施形態)または第2の結束態様(第2実施形態)を選択して、ワイヤーハーネスWを製造することができる。接合シートは、第1基材12Aの一面のみに該一面全体に設けられた第1自己粘着層14Aを有する第1シート10Aの一縁部と、第2基材12Bの一面のみに該一面全体に設けられた第2自己粘着層14Bを有する第2シート10Bの一縁部とを、互いの自己粘着層14A,14B同士で貼り合わせることで、第1シート10Aと第2シート10Bとを組み合わせたものである。例えば、柔軟性が要求されるときは、第1実施形態で説明した第1の結束態様とする。具体的には、第1シート10Aを、第1自己粘着層14Aを内側にして複数の配線Hに巻き付けて、第1シート10Aの他縁部と第2シート10Bの他縁部とを互いの自己粘着層14A,14B同士で貼り合わせて、複数の配線Hを束ねる。このように、鍔部分18を備えていない第1の結束形態にすることで、ワイヤーハーネスW(結束具V1)が変形し易くなる。
【0044】
例えば、剛直性が要求されるときは、第2実施形態で説明した第2の結束態様とする。具体的には、第1シート10Aで、第1自己粘着層14Aを内側にして複数の配線Hに巻き掛けて該配線Hを保持する保持部分16を形成すると共に、合掌状に向かい合わせた第1シート10A,10A同士を互いの第1自己粘着層14A,14Aで貼り合わせて保持部分16から延出する鍔部分18を形成する。そして、第1シート10Aの縁部同士を繋ぐように第2シート10Bを配置することで、複数の配線Hを束ねる。このように、鍔部分18を備えている第2の結束形態にすることで、ワイヤーハーネスW(結束具V2)が変形し難くなる。このように、1枚の接合シートによって、配線Hの結束態様を簡単に変更することができ、用途などに応じた適切な仕様にすることができ、利便性が非常に高い。
【0045】
(第1シートの変更例)
図14に示すように、第1シート10Aにおける第2シート10Bが接合される一縁部と反対の他縁部に、切れ目24を設けてもよい。この場合、第1シート10Aには、切れ目24が他縁部から一縁部へ向けて延在するように設けられている。また、切れ目24は、単数でもよいが、複数設ける場合、第1シート10Aにおいて配線Hの延在方向に離して形成される。切れ目24の形状は、第1シート10Aを切断した線状の切れ込みや、幅がある隙間形状や、一縁部側から他縁部に向かうにつれて広くなるV字形状など、何れも採用可能である。
【0046】
第1シート10Aは、第2シート10Bが接合される一縁部と反対の他縁部が、切れ目24によって分割されて片状になるので、配線Hを束ねる際に、当該片状部分毎に第2シート10Bに貼り合わせることができる。従って、第1シート10Aの第2シート10Bへの接合作業が行い易くなり、また複数の配線Hをまとめ易くなるので、ワイヤーハーネスWの製造効率を向上させることができる。
【0047】
(結束具の使用例1)
図15および
図16に示すように、複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分を、第1の結束態様による結束具V1と第2の結束態様による結束具V2によって保持してもよい。この場合、配線Hの分岐部分の近傍を、例えば前述した結束具V1で束ねておくとよい。ワイヤーハーネスWは、結束具V2における第1シート10Aの一縁部側(第2シート10Bが貼り合わされている側)を折り返し、第1自己粘着層14A,14A同士を接合し、次いで、複数の配線Hを配置する。その後、配線Hに沿って、結束具V2における第1シート10Aを、結束具V1により束ねられた配線Hと分岐部分全体とを挟むように合掌状に重ね合わせて、互いに対向する第1自己粘着層14A,14A同士を接合する。更に、結束具V2における第1シート10Aの他縁部の第1自己粘着層14Aと第2シート10Bの他縁部の第2自己粘着層14Bとを接合する。このように、結束具V1は、配線Hを所定形態で保持する前に、複数の配線Hをまとめておく仮止めとしても用いることができる。なお、結束具V1は、結束具V2と重ならない位置に配置してもよい。
【0048】
(結束具の使用例2)
図17および
図18に示すワイヤーハーネスWのように、前述した結束具Vによって、配線Hと配線H以外の部材26とを保持してもよい。配線H以外の部材としては、例えば、ワイヤーハーネスWを対象へ取り付けるためのクリップ26や、ワイヤーハーネスWに付属するその他の部材がある。クリップ26は、対象への取付片26aを挟んで該取付片26aと直交する方向へ延出する一対の接続片26b,26bを有するT字形状であり、配線Hに沿わせて配置した接続片26bが、結束具Vでそれぞれ保持される。
【0049】
(参考例1)
図19(d)および
図20(b)に示すように、参考例1に係る結束具S1は、複数の配線Hを束ねるものである。複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分で結束具S1によって配線Hが束ねられると共に保持されて、ワイヤーハーネスYが構成されている。なお、ワイヤーハーネスYは、結束具S1で分岐部分を保持する態様に限らず、別の箇所を結束具S1で保持してもよい。
【0050】
図19(a)および
図20(a)に示すように、結束具S1は、基材12の一面のみに該一面全体に設けられた自己粘着層14を有し、自己粘着層14,14同士でしか接合しない1枚のシート10で構成されている。結束具S1は、シート10において自己粘着層14を内側にして複数の配線Hを挟むように重ね合わせて、向かい合う自己粘着層14,14同士が接合されるシート本体10aを有している。また、結束具S1は、シート10の内側に配置して、一辺を残してシート本体10aから切り離された保持片32を有している。保持片32は、シート本体10aと繋がる辺を根元として自己粘着層14を内側にして環状に曲げて、複数の配線Hに巻き付け可能である。また、保持片32は、先端の自己粘着層14をシート本体10aの自己粘着層14に向かい合わせるように、更に曲げ変形可能である。
【0051】
図19および
図20に示すように、結束具S1には、1つまたは複数の保持片32が設けられており、本参考例では、配線Hが分岐する前の部分と、2つに分岐した後の部分のそれぞれとに対応して、保持片32が設けられている。保持片32は、シート10に切り込みを設けることで形成されて、切り込みの延在ラインに応じて、長方形状(本実施形態)や三角形状や半円形状などの適宜形状に形作られる。また、保持片32を形成する切り込みは、シート10の端縁まで延在しないようにシート10の内側に配置されている。保持片32は、束ねる配線Hが通る位置に沿ってシート本体10aに繋がる辺が設定されて、配線Hの延在方向と直交する方向へ曲げて、配線Hを跨いだ当該辺と反対側で先端がシート本体10aに接合される。
【0052】
次に、参考例1の結束具S1を用いたワイヤーハーネスYの製造方法について、
図19および
図20を参照して説明する。配線Hの延在する位置に合わせて、シート10に厚み方向に貫通する切り込みを形成して、保持片32を設ける(
図19(a))。配線Hをシート10の自己粘着層14側に配置する(
図19(b))。保持片32をシート本体10aに繋がる辺を根元として配線Hを跨ぐように折り曲げ、保持片32の先端の自己粘着層14をシート本体10aの自己粘着層14に押し付けて、配線Hに巻き掛けた保持片32の先端をシート本体10aに接合する(
図19(c)および
図20(a))。シート本体10aの半分を配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った自己粘着層14,14同士を接合する(
図19(d)および
図20(b))。これにより、複数の配線Hを保持片32で束ねると共にシート本体10aにより配線Hの分岐部分を挟んだ結束具S1によって、配線Hの分岐部分が保持されたワイヤーハーネスYが得られる。
【0053】
参考例1の結束具S1によれば、1枚のシート10からなる簡単な構成で、複数の配線Hを適切に束ねることができるだけでなく、シート本体10aで挟んで配線Hを保持することができる。また、保持片32は、シート10と一体的に設けられているので、保持片32で配線Hを保持することで、シート10と配線Hとを位置決めすることができ、結束具S1を配線Hに対して適切な位置に配置することができる。結束具S1を用いることで、複数の配線Hを結束具S1とは別のビニールテープなどで仮止めする必要はなく、ワイヤーハーネスYに関する部品点数や作業工数等を減らすことができる。結束具S1は、シート本体10aおよび保持片32の自己粘着層14が何れも内側に向くように配置される。従って、結束具S1は、外側が基材12で基本的に構成されるので、傷つきにくく、基材12の保護層13aに由来する耐摩耗性や摺動性などの特性を発揮させることができる。また、自己粘着層14が外側を向いていると、他の結束具S1の巻き付け作業時などに、他のシート10と意図せず接合してしまうおそれがあるが、結束具S1は、自己粘着層14が外側に出ないので、前述の問題を回避できる。そして、結束具S1は、保持片32を配線Hに巻き掛けてからシート本体10aを折り返すだけの簡単な手順で得ることができ、ワイヤーハーネスYの製造について、作業性の向上に寄与し得る。
【0054】
(参考例1の変形形態1)
図21に示すワイヤーハーネスYのように、1つの保持片32によって配線Hの分岐部分を挟むように結束具S1aを構成してもよい。結束具S1aは、保持片32が配線Hの分岐部分を覆い得る幅で形成されている(
図21(a)および(b))。保持片32は、配線Hの延在方向に沿うシート本体10aと繋がる辺を根元として、配線Hの分岐部分を跨ぐように折り曲げて、保持片32の先端の自己粘着層14をシート本体10aの自己粘着層14に押し付けて、分岐部分を挟んだ保持片32の先端をシート本体10aに接合する(
図21(c))。シート本体10aの半分を配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った自己粘着層14,14同士を接合する(
図21(d))。これにより、1つの保持片32によって配線Hの分岐部分を束ねると共にシート本体10aにより配線Hの分岐部分を挟んだ結束具S1aによって、配線Hの分岐部分が保持されたワイヤーハーネスYが得られる。変形形態1の結束具S1aによれば、1つの保持片32によって配線HがT字になる分岐部分を保持することができ、構成が簡単である。また、操作する保持片32の数が少ないので、ワイヤーハーネスYの製造効率を向上させることができる。
【0055】
(参考例1の変形形態2)
図22に示すワイヤーハーネスYのように、配線Hに対して斜めに延在する1つの保持片32によって配線Hの分岐部分を挟むように結束具S1bを構成してもよい。結束具S1bは、保持片32が、分岐部分を構成する何れの配線Hの延在向きに対しても斜めになるように形成されている(
図22(a)および(b))。保持片32は、配線H側に位置するシート本体10aと繋がる辺を根元として、配線Hの分岐部分を斜めに跨ぐように折り曲げて、保持片32の先端の自己粘着層14をシート本体10aの自己粘着層14に押し付けてシート本体10aに接合する(
図22(c))。シート本体10aの半分を配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った自己粘着層14,14同士を接合する(
図22(d))。これにより、1つの保持片32によって配線Hの分岐部分を束ねると共にシート本体10aにより配線Hの分岐部分を挟んだ結束具S1bによって、配線Hの分岐部分が保持されたワイヤーハーネスYが得られる。変形形態2の結束具S1bによれば、1つの保持片32によって配線HがT字になる分岐部分を保持することができ、構成が簡単である。また、操作する保持片32の数が少ないので、ワイヤーハーネスYの製造効率を向上させることができる。
【0056】
(参考例2)
図23(d)および
図24(b)に示すように、参考例2に係る結束具S2は、複数の配線Hを束ねるものである。複数の配線Hが分かれて異なる向きへ分岐する分岐部分で結束具S2によって配線Hが束ねられると共に保持されて、ワイヤーハーネスYが構成されている。なお、ワイヤーハーネスYは、結束具S2で分岐部分を保持する態様に限らず、別の箇所を結束具S2で保持してもよい。
【0057】
図23(a)および
図24(a)に示すように、結束具S2は、基材12の一面のみに該一面全体に設けられた自己粘着層14を有し、自己粘着層14,14同士でしか接合しない1枚のシート10で構成されている。結束具S2は、シート10において自己粘着層14を内側にして複数の配線Hを挟むように重ね合わせて、向かい合う自己粘着層14,14同士が接合されているシート本体10aを有している。また、結束具S2は、シート10の内側に配置して、一辺を残してシート本体10aから切り離されられた保持片32を有している。なお、保持片32は、参考例1と同様なので、説明を省略する。更に、結束具S2は、シート10の内側に設けられて、配線Hがシート10の表裏に通るように開口可能に形成された挿通部42を備えている。
【0058】
図23および
図24に示すように、結束具S2には、1つまたは複数(本例)の保持片32と、1つ(本例)または複数の挿通部42とが設けられている。本例では、配線Hが分岐する前の部分と、2つに分岐した後の一方とに対応して、保持片32が設けられ、2つに分岐した後の他方に対応して、挿通部42が設けられている。挿通部42は、シート10に形成された切り込みによって構成され、配線Hがシート10の表裏に通るように開口可能になっている。挿通部42は、シート10の内側に、配線Hが通る位置と交錯するように配置されて、切り込みの開口縁をシート10の厚み方向にずらして開口するようになっている。また、挿通部42を形成する切り込みは、シート10の端縁まで延在しないようにシート10の内側に配置されている。なお、参考例2では、参考例1で説明した保持片32を有しているが、保持片32を省略しても、保持片32に代えて挿通部42としたり、あるいは実施形態で説明した結束具Vを組み合わせてもよい。また、挿通部42を直線的な切り込みで形成することに限らず、L字状、V字状、X字状、H字状、コの字状、円形状などとしてもよく、長孔や丸孔など開口する貫通孔で挿通部42を形成してもよい。
【0059】
次に、参考例2の結束具S2を用いたワイヤーハーネスYの製造方法について、
図23および
図24を参照して説明する。配線Hの延在する位置に合わせて、シート10に厚み方向に貫通する切り込みを形成して、挿通部42を設ける(
図23(a))。配線Hをシート10の自己粘着層14側に配置する(
図23(b))。分岐した一方の配線Hを挿通部42に通し、保持片32をシート本体10aに繋がる辺を根元として配線Hを跨ぐように折り曲げ、保持片32の先端の自己粘着層14をシート本体10aの自己粘着層14に押し付けて、配線Hに巻き掛けた保持片32の先端をシート本体10aに接合する(
図23(c)および
図24(a))。シート本体10aの半分を配線Hに沿って折り曲げて、配線Hを跨ぐように合掌状に重ね合わせ、向かい合った自己粘着層14,14同士を接合する(
図23(d)および
図24(b))。これにより、配線Hを挿通部42に通して纏めると共にシート本体10aにより配線Hの分岐部分を挟んだ結束具S2によって、配線Hの分岐部分が保持されたワイヤーハーネスYが得られる。
【0060】
参考例2の結束具S2によれば、1枚のシート10からなる簡単な構成で、複数の配線Hを適切に束ねることができるだけでなく、シート本体10aで挟んで配線Hを保持することができる。また、挿通部42は、シート10と一体的に設けられているので、挿通部42で配線Hを保持することで、シート10と配線Hとを位置決めすることができ、結束具S2を配線Hに対して適切な位置に配置することができる。結束具S2を用いることで、複数の配線Hを結束具S2とは別のビニールテープなどで仮止めする必要はなく、ワイヤーハーネスYに関する部品点数や作業工数等を減らすことができる。結束具S2は、シート本体10aおよび保持片32の自己粘着層14が何れも内側に向くように配置される。従って、結束具S2は、外側が基材12で基本的に構成されるので、傷つきにくく、基材12の保護層13aに由来する耐摩耗性や摺動性などの特性を発揮させることができる。また、自己粘着層14が外側を向いていると、他の結束具S2の巻き付け作業時などに、他のシート10と意図せず接合してしまうおそれがあるが、結束具S2は、自己粘着層14が外側に出ないので、前述の問題を回避できる。そして、結束具S2は、挿通部42に配線Hを通してからシート本体10aを折り返すだけの簡単な手順で得ることができ、ワイヤーハーネスYの製造について、作業性の向上に寄与し得る。
【0061】
前述した実施形態に限らず、例えば以下のように変更することができる。
(1)前述した保持片や挿通部などを構成する切り込みの形状は、シートを切断した線状の切れ込みや、幅がある隙間形状などの適宜開口形状で形成すればよい。
(2)基材の層構造は、前述した構成に限らない。
(3)ワイヤーハーネスは、前述した実施形態および参考例を組み合わせて構成してもよい。
【0062】
従来、ワイヤーハーネスを作製する際には、複数の配線を結束具で束ねる前にビニルテープなどの別資材で、あらかじめ複数の配線を仮止めしたり、配線が分岐する場合も同様に、両面テープなどの別資材で、あらかじめ分岐した配線を仮止めして保護することが行われている。このため、ワイヤーハーネス作製時には、複数の資材を用いる必要があり、作業性が悪いという問題がある。このような問題を解決し得る発明として、本開示には、以下のものが含まれている。以下の発明によれば、結束具自体で仮止めできるので、結束具とは別資材で仮止めする必要はなく、ワイヤーハーネスに関する部品点数や作業工数等を減らすことができる。
【0063】
(発明A)
発明Aは、ワイヤーハーネスにおける複数の配線を束ねる結束具であって、
基材の一面のみに該一面全体に設けられた自己粘着層を有し、自己粘着層同士でしか接合しないシートから構成され、
前記シートにおいて前記自己粘着層を内側にして前記複数の配線を挟むように重ね合わせて、該自己粘着層同士を接合するシート本体と、
前記シートの内側に前記シート本体から切り離して設けられ、該シート本体と繋がる辺で前記自己粘着層を内側にして曲げて前記複数の配線に巻き付け可能で、先端の自己粘着層が該シート本体の自己粘着層に接合する保持片と、を備えていることを特徴とする。
【0064】
(発明B)
発明Bは、ワイヤーハーネスにおける複数の配線を束ねる結束具であって、
基材の一面のみに該一面全体に設けられた自己粘着層を有し、自己粘着層同士でしか接合しないシートから構成され、
前記シートにおいて前記自己粘着層を内側にして前記複数の配線を挟むように重ね合わせて、該自己粘着層同士を接合するシート本体と、
前記シートの内側に設けられて、前記複数の配線が該シートの表裏に挿通可能に形成された挿通部と、を備えていることを特徴とする。
【0065】
(発明C)
発明Cは、発明Aまたは発明Bに記載の結束具によって、前記複数の配線が束ねられた
ことを特徴とするワイヤーハーネスである。