【解決手段】保護部材を備えた線状PTCヒータ線300は、正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体13と絶縁性被覆層16、22とを備えた線状PTCヒータ線30における、外側の被覆層22の外周部であって面状発熱体13が位置する部位に、面状発熱体13を衝撃荷重から保護するための保護部材40を取り付けた構成を備える。好ましい保護部材40は、枠部材43、44を備える第1の面材41と第2の面材42を有し、第1の面材41と第2の面材42は、枠部材43、44で外縁が区画される開口部45、46を有する。保護部材を備えた線状PTCヒータ線300は全体が最外層としての保護層によって被覆されていてもよい。
第1および第2の線状の給電線と前記給電線の間で並列に接続される複数の正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体と前記給電線および前記面状発熱体を被覆する被覆層とを少なくとも備えた線状PTCヒータ線と、前記線状PTCヒータ線の前記被覆層の外周部であって前記面状発熱体が位置する部位に取り付けられた前記面状発熱体を衝撃荷重から保護するための保護部材とで構成されることを特徴とする保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記被覆層は第1の被覆層で構成され、前記第1の被覆層の外周部に前記保護部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記被覆層は内側の第1の被覆層とその外側の第2の被覆層とで構成され、前記第2の被覆層の外周部に前記保護部材が取り付けられ、前記第1の被覆層と第2の被覆層との間には金属の編組線によるシールドが介装されていることを特徴とする請求項1に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記取り付けられた保護部材を外側から覆う保護層を最外層としてさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
請求項2を引用する請求項4に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線であって、前記第1の被覆層と前記保護層との間には金属の編組線によるシールドが介装されていることを特徴とする保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記シールドは前記第1の被覆層の外周面に形成されており、前記シールドの上に前記保護部材が位置していることを特徴とする請求項5に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記シールドは前記保護部材が取り付けられた前記第1の被覆層の全体を覆うようにして形成されていることを特徴とする請求項5に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記保護部材は前記線状PTCヒータ線の上下の面に対応する第1と第2の面材とで構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記保護部材は前記線状PTCヒータ線の上下の面に対応する第1と第2の面材と前記第1と第2の面材の端部を接続する縦材とで構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記保護部材の前記第1と第2の面材は枠部材と前記枠部材で外縁が区画される開口部とで構成され、前記枠部材は前記面状発熱体の外周に位置していることを特徴とする請求項8または9に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
前記保護部材の前記第1と第2の面材は平板部材であり、前記平板部材の前記面状発熱体に面する側には凹部が形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の保護部材を備えた線状PTCヒータ線。
第1および第2の線状の給電線と前記給電線の間で並列に接続される複数の正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体と前記給電線および前記面状発熱体を被覆する被覆層とを少なくとも備えた線状PTCヒータ線と共に用いる保護部材であって、
前記保護部材は、前記線状PTCヒータ線における前記面状発熱体の部位に配置可能な第1と第2の面材を少なくとも備える構成であることを特徴とする保護部材。
前記保護部材の前記第1と第2の面材は平板部材であり、前記平板部材の前記面状発熱体側の面には凹部が形成されていることを特徴とする請求項13または14に記載の保護部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1あるいは特許文献2に記載される形態の線状PTCヒータ線は、それが使用される周囲の温度環境を、使用している正温度係数特性を備えた面状発熱体の物性に応じて設定される所要の温度範囲に、容易に維持可能であることから、種々の分野で使用されるようになっており、今後も、さらに使用範囲は拡大することが期待できる。そのような使用場所として、線状PTCヒータ線に作用する荷重が、静荷重のみでなく、一時的にあるいは繰り返して衝撃荷重が作用するような使用場所を考慮することも必要となる。そのような使用場所の例としては、工場の冷凍庫などで使用される冷凍機のように振動が絶えず生じている場所での使用や、設置後に動く部位(例えば、機器のアーム)での使用等が挙げられる。
【0007】
現在使用されている正温度係数特性を備えた面状発熱体は、その構成上、静荷重に対しての耐性は十分であるものの、一時的あるいは反復して作用する衝撃荷重に対しては、耐性が十分とは言えない場合があり、破損が生じ発熱性能が低下する恐れがある。
【0008】
本発明は、起こり得る上記のような不都合に対処すべくなされたものであり、衝撃荷重に対して高い耐性を持つ線状PTCヒータ線を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線は、第1および第2の線状の給電線と前記給電線の間で並列に接続される複数の正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体と前記給電線および前記面状発熱体を被覆する被覆層とを少なくとも備えた線状PTCヒータ線と、前記線状PTCヒータ線の前記被覆層の外周部であって前記面状発熱体が位置する部位に取り付けられた前記面状発熱体を衝撃荷重から保護するための保護部材とで構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線の一態様では、前記被覆層は第1の被覆層で構成され、前記第1の被覆層の外周部に前記保護部材が取り付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線の一態様では、前記被覆層は内側の第1の被覆層とその外側の第2の被覆層とで構成され、前記第2の被覆層の外周部に前記保護部材が取り付けられ、前記第1の被覆層と第2の被覆層との間には金属の編組線によるシールドが介装されていることを特徴とする。
【0012】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線の一態様では、前記取り付けられた保護部材を外側から覆う保護層を最外層としてさらに備えることを特徴とする。
【0013】
前記被覆層は第1の被覆層で構成され、前記第1の被覆層の外周部に前記保護部材が取り付けられている形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線であって、前記取り付けられた保護部材を外側から覆う保護層を最外層としてさらに備える形態においては、前記第1の被覆層と前記保護層との間に金属の編組線によるシールドが介装されていてもよい。その場合、前記シールドは前記第1の被覆層の外周面に形成されて、前記シールドの上に前記保護部材が位置している形態であってもよく、前記シールドは前記保護部材が取り付けられた前記第1の被覆層の全体を覆うようにして形成されている形態であってもよい。
【0014】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線の一態様では、前記保護部材は前記線状PTCヒータ線の上下の面に対応する第1と第2の面材とで構成され、他の態様では、前記第1と第2の面材と前記第1と第2の面材の端部を接続する縦材とで構成される。
【0015】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線において、前記保護部材の前記第1と第2の面材は枠部材と前記枠部材で外縁が区画される開口部とで構成され、前記枠部材は前記面状発熱体の外周に位置している態様であってもよく、前記保護部材の前記第1と第2の面材は平板部材であり、前記平板部材の前記面状発熱体に面する側には凹部が形成されている態様であってもよい。
【0016】
本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線の一態様では、前記保護部材は一体のものとして構成されていてもよく、一体に組み付け可能な2つの部材から構成されていてもよい。
【0017】
本発明は、さらに、第1および第2の線状の給電線と前記給電線の間で並列に接続される複数の正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体と前記給電線および前記面状発熱体を被覆する被覆層とを少なくとも備えた線状PTCヒータ線と共に用いる保護部材であって、前記保護部材は、前記線状PTCヒータ線における前記面状発熱体の部位に配置可能な第1と第2の面材を少なくとも備える構成であることを特徴とする保護部材をも開示する。
【0018】
前記保護部材の一態様では、前記第1と第2の面材の端部を接続する縦材をさらに備える。前記保護部材の他の態様では、前記保護部材の前記第1と第2の面材は枠部材と前記枠部材で外縁が区画される開口部とで構成されている。前記保護部材のさらに他の態様では、前記保護部材の前記第1と第2の面材は平板部材であり、前記平板部材の前記面状発熱体側の面には凹部が形成されている。
【0019】
本発明において、保護部材の材料は、使用される箇所で予測される最大荷重に耐えることのできる材料であれば適宜用いることができる。例として、金属材料や樹脂材料が挙げられる。金属材料としては、アルミ等の柔らかい材料であってもよく、SUSのような硬い材料であってもよい。他に、鉄、タングステンのような金属材料を例示できる。樹脂材料としては、FRPのような材料を例示できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、線状PTCヒータ線に衝撃荷重が作用したときに、該荷重は保護部材によって最初に受け止められ、その後に、線状PTCヒータ線の本体部に伝播する。すなわち、保護部材が緩衝材として機能する。そして、保護部材は、面状発熱体が位置する部位に取り付けられているので、面状発熱体が破損するのを高い確率で阻止することができる。
【0021】
また、取り付けられた保護部材を外側から覆う保護層を最外層としてさらに備える形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線においては、取り付けた保護部材が不用意に線状PTCヒータ線から離脱するのを回避することができる。また、保護層を樹脂で構成することにより、保護部材が金属製であっても、保護部材が周囲の金属と直接接触するのを回避できるので、火花の発生を回避でき、防爆エリアでも安心して使用することができる。さらに電食が生じるのも回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線および保護部材の実施の形態を添付の図面を参照しながら説明する。
【0024】
最初に、
図1〜
図3を参照して、保護部材を装着する前の線状PTCヒータ線について説明する。
図1は、線状PTCヒータ線を構成する発熱部10の一例を示している。この発熱部10は、好ましくは銅単線のより線または編組線である第1の線状給電線11と第2の線状給電線12とを有し、第1の線状給電線11と第2の線状給電線12の間には複数の正温度係数特性を備えた矩形状の面状発熱体13の複数個が並列に接続されている。
【0025】
面状発熱体13は、従来知られたものであり、一例として、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックスからなるものが挙げられる。また、カーボンブラックのような導電体粉末を含む樹脂組成物からなるものであってもよい。
【0026】
後者の場合、導電体粉末としては、カーボンブラック、ニッケルなどの導電体粉末が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックおよびファーネスブラックで表面積が大きいもの、例えば、バルカンXC−72(キャポット社製品)、コンチネックスN330(カポット社製品)などが挙げられる。導電体粉末の平均粒径は40〜70μmであるか、それより大きな平均粒径のものあるいはそれより小さい平均粒径のものと混合したものでもよい。樹脂組成物とは、ポリマーとして一般に使用されている高分子材料であってよく、ポリエチレン、ポリエチレン共重合体、ポリエステル、フッ素樹脂、フッ素系ゴム、アクリルゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。
【0027】
導電体粉末の樹脂組成物に対する添加量は、樹脂組成物100質量部に対して、15〜30質量部であることが好ましい。導電体粉末の添加量が少なすぎると抵抗値が大きくなりすぎて発熱しなくなる。逆に多くなりすぎると抵抗が小さくなると同時に、抵抗値の温度依存性がなくなりPTC特性を示さなくなる。
【0028】
第1の線状給電線11および第2の線状給電線12と矩形状の面状発熱体13とは、両者を機械的および電気的に接続するための金属端子14によってかしめられて一体化している。矩形状の面状発熱体13の大きさに制限はないが、この例では、横幅D:10mm、長手方向の長さA:8mm、厚みH:2.5mmの寸法である。可撓性を向上させるために、D/Aの値が1または1以上であることが望ましい。金属端子14の素材としては、銅、リン青銅、鉄、鉄ニッケル合金、金、銀、アルミニウムなどを用いることができる。また、好ましくは、面状発熱体13と金属端子14との間には、導電ペースト15が塗布される。
【0029】
長手方向で隣接する矩形状の面状発熱体13、13間の距離Bは、所要の加熱環境が得られることを条件に任意であってよいが、好ましい一例として、3A≦B≦10Aの条件を満足するものが挙げられる。また、線状PTCヒータ線30の全長において、前記距離Bは等しくされている。
【0030】
図1に示す発熱部10に対し、例えば従来知られた押出成形法の手法を用いて全体を絶縁材料からなる第1の被覆層16で覆うことにより、
図2に示す、線状加熱体20とされる。絶縁材料としては、例として、電気絶縁性および可撓性を有する塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この線状加熱体20を、そのまま線状PTCヒータ線として用いることもできる。
【0031】
図2に示す線状加熱体20の全長に対して、アースとして機能する、例えばスズメッキ軟銅線のような金属の編組線によるシールド21を巻き付け、さらにその上に、例えば従来知られた押出成形法を用いて、好ましくは前記第1の被覆層16と同じ絶縁材料による第2の被覆層22で覆うことにより、
図3に示す線状PTCヒータ線30とされる。
【0032】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第1の形態]
図4(a)は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第1の形態を示している。第1の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300は、
図3に示した線状PTCヒータ線30における、その第2の被覆層22の外周部であって前記した面状発熱体13が位置する部位に、
図4(b)に示す保護部材40を取り付けている。
【0033】
保護部材40は、第1の面材41と、前記第1の面材41から距離sだけ離れた位置に第1の面材41と平行に位置する第2の面材42と、前記第1の面材41と第2の面材42の一方側の端部を接続する縦材47とで構成されている。第1の面材41と第2の面材42の平面視での形状は共に矩形状であり、同じ大きさである。前記縦材47は好ましくは、第1の面材41と第2の面材42に対して、垂直である。第1の面材41と第2の面材42は、共に、矩形状の枠部材43、44と、その枠部材43、44によって外縁が区画された開口部45、46とを有している。
【0034】
前記保護部材40において、第1の面材41と第2の面材42との間の距離sは、線状PTCヒータ線30における面状発熱体13が位置する部位の厚みとほぼ等しいか、0.1〜0.3mm程度だけ狭い。第1の面材41と第2の面材42の横幅Wは、線状PTCヒータ線30における面状発熱体13が位置する部位での横幅と等しいか、0.5〜2mm程度だけ広い。また、第1の面材41と第2の面材42の縦幅kは、前記面状発熱体13のおける長手方向の長さA(
図1参照)よりも5〜9mm程度だけ大きい。第1の面材41と第2の面材42の前記枠部材43、44によって外縁が区画される開口部45、46の形状は、前記面状発熱体13の平面視での形状とほぼ同じであり、その大きさは、面状発熱体13の大きさよりも、0.5〜2mm程度だけ大きい。
【0035】
前記の保護部材40を線状PTCヒータ線30に取り付ける。取り付けは、線状PTCヒータ線30における前記面状発熱体13が位置している部位に、線状PTCヒータ線30の側方から差し込むようにして取り付ける。取り付けた状態では、保護部材40の枠部材43、44によって外縁が区画された開口部45、46内に、面状発熱体13が入り込んだ状態となる。保護部材40の取り付けは、線状PTCヒータ線30における面状発熱体13のすべての部位に対して行ってもよく、選択して行ってもよい。当該保護部材を備えた線状PTCヒータ線300が設置される箇所で発生することが予測される衝撃荷重の発生場所や発生面積等を考慮して、施工現場ごとに設定すればよい。
【0036】
設置場所において、保護部材を備えた線状PTCヒータ線300に、作用面が面方向の広がりを持つ衝撃荷重が作用したとき、該荷重は、線状PTCヒータ線30に直接作用することはなく、保護部材40に最初に作用する。保護部材40の第1の面材41と第2の面材42は、枠部材43、44を備えており、荷重は枠部材43(または44)に直接的に作用する。一方、線状PTCヒータ線30の面状発熱体13は、枠部材43、44によって外縁が区画される開口部45、46内に位置している。そのために、衝撃が面状発熱体13に直接に作用するのを回避でき、結果、面状発熱体13が破損するのを確実に回避することができる。それにより、面状発熱体13の破損によって発熱性能が低下するのを回避できる。
【0037】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第2の形態]
図5は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第2の形態を示している。第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200は、
図2に示した線状加熱体20をそのまま線状PTCヒータ線として用い、その第1の被覆層16の外周部であって前記した面状発熱体13が位置する部位に保護部材40を取り付けている。保護部材40の形状は、第1の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300で用いた保護部材40と同じであってよいが、その第1の面材41と第2の面材42との間の距離sは、線状加熱体20における面状発熱体13が位置する部位の厚みとほぼ等しいか、それより0.1〜0.3mm程度狭い距離とされている。
【0038】
保護部材40の線状加熱体20に対する取り付け方、および保護部材40が線状加熱体20に対してなす作用効果は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線300における保護部材40の場合と同じであり、説明は省略する。
【0039】
なお、第1の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300および第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200において、そこに取り付ける保護部材の第1の面材41と第2の面材42との間の距離sを、取付部位での線状PTCヒータ線30の厚みまたは線状加熱体20の厚みと等しいかわずかに短い距離としておくことにより、横からの挿入時に、第1の被覆層16と第2の被覆層22が変形することにより、または第1の被覆層16が変形することにより、挿入を確実に行うことができるとともに、挿入後に容易には離脱できない状態で、保護部材を取り付けることが可能となる。
【0040】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第3の形態]
図6は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第3の形態を示している。第3の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aは、
図4(a)に示した第1の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300の外側表面の全体を、その長手方向にわたってさらに保護層60で被覆していることを特徴とする。この形態では、すべての保護部材40は、前記保護層60によって外側から覆われるとともに、該保護層60は、第3の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aでの最外層を形成する。
【0041】
保護層60の素材に特に制限はないが、例として、樹脂、特に、電気絶縁性および可撓性を有する塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この場合、保護層60は押出成形法の手法を用いて容易に形成することができる。
【0042】
保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aでは、保護部材40が不用意に離脱するのを防止できる。また、保護層60が樹脂被覆の場合、金属の構造物、例えば金属配管、金属パネル、金属グレーチングなどに、線状PTCヒータ線300Aを接触させる場合でも、金属製の保護部材40が金属の構造物に直接接触するのを回避することができ、不用意に火花が発生するような事態が生じるのを避けることができる。また、金属同士が接触するのを回避できることで、電食が生じるのも回避できる。
【0043】
なお、
図6に示した保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aでは、保護層60を長手方向全長にわたって形成しているが、保護部材40が位置する部位にのみ、当該保護部材40を外側から覆うようにして保護層60を形成するようにしてもよい。この場合にも、所期の目的は達成可能である
【0044】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第4の形態]
図7は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第4の形態を示している。第4の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Aは、
図5に示した第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200の外側表面の全体を、その長手方向にわたってさらに保護層60で被覆していることを特徴とする。保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Aのすべての保護部材40は、前記保護層60によって外側から覆われる。そして、該保護層60は、第4の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Aでの最外層を形成する。
【0045】
保護層60の素材は、第3の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aでの保護層60と同様であってよい。保護層60が奏する作用効果も、保護部材を備えた線状PTCヒータ線300Aでの保護層60と同様であり、説明は省略する。また、
図7に示した保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Aにおいても、保護層60を保護部材40が位置する部位にのみ形成するようにしてもよい。
【0046】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第5の形態]
図8は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第5の形態を示している。第5の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Bは、
図5に示した第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200と保護層60との間に、アースとして機能する、例えばスズメッキ軟銅線のような金属の編組線によるシールド21がさらに介装されている。すなわち、
図5に示した第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200の外側表面の全体にシールド21が形成され、さらにその上に保護層60が最外層として形成されている。
【0047】
ここでも、保護層60の素材は、他の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300A、200Aでの保護層60と同様であってよい。保護層60が奏する作用効果は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線300A、200Aでの保護層60の場合と同様であり、説明は省略する。
【0048】
[保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第6の形態]
図9は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線の第6の形態を示している。第6の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Cは、金属の編組線によるシールド21が
図5に示した第2の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200における、線状加熱体20と保護部材40との間に介装されている点で、第5の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線200Bと相違する。
【0049】
製造に当たっては、最初に、
図2に示した線状加熱体20の外側表面全体を覆うようにして金属の編組線によるシールド21を形成する。次に、シールド21を形成した線状加熱体20における面状発熱体13が位置する部位に、シールド21の上から、保護部材40を取り付ける。最後に、保護部材40を取り付けた線状加熱体20の外側表面の全体を、その長手方向にわたってさらに保護層60で被覆する。
【0050】
ここでも、保護層60の素材は、他の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線300A、200A、200Bでの保護層60と同様であってよく、また、保護層60が奏する作用効果は、保護部材を備えた線状PTCヒータ線300A、200A、200Bでの保護層60の場合と同様であり、説明は省略する。
【0051】
図10〜
図14は、保護部材40のさらに他の形態を示している。
図10(a)に斜視図を、
図10(b)に
図10(a)のb−b線に沿う断面を示す保護部材40aは、第1の面材41aと第2の面材42aが平板部材であり、前記した枠部材43、44および該枠部材43、44によって外縁が区画される開口部45、46を有しない。開口部に替えて、第1の面材41aと第2の面材42aの内面側、すなわち線状PTCヒータ線30または線状加熱体20に取り付けたときに、面状発熱体13に面する側となる面には、凹部45a、46aが形成されている。線状PTCヒータ線30および線状加熱体20に対する取り付け方は、保護部材40の場合と同じである。この形態の保護部材40aでも、面材41a(または面材42a)で荷重を受けることで、その下に位置する面状発熱体13に対する衝撃を緩和することができる。前記凹部45a、46aが存在することで、面状発熱体13に衝撃が直接に作用することを防ぐことができ、面状発熱体13の破損を回避できる。また、保護部材40のように開口部45、46を有しないことで、外からの異物が線状PTCヒータ線30または線状加熱体20に当たって面状発熱体13に損傷を生じさせることも回避できる。
【0052】
図11に示す保護部材40bは、縦材47が一枚ものでなく、第1の面材41に接続する第1の縦板47aと第2の面材42に接続する第2の縦板47bとに2分割されている点で、前記した保護部材40と異なっている。そして、第1の縦板47aの下端には張出部49を備えた突起48が形成されており、第2の縦材47bの上端には前記突起48および張出部49が嵌入することのできる受け部51を備えた切欠き部50が形成されている。
【0053】
保護部材40bでは、2分割された部材の一方(第2の面材42側)を線状PTCヒータ線30または線状加熱体20の下側に置き、それに対して、他方側(第1の面材41側)を上から押し付けることで、第1の面材41と第2の面材42との間に線状PTCヒータ線30または線状加熱体20を挟持した姿勢で、保護部材40bをそこに取り付けることができる。取り付けられた状態では、保護部材40bの前記突起48と受け部51とは離脱できない状態で係合した状態となっている。
【0054】
図12に示す保護部材40cは、第1の面材41の両側部に前記した張出部49を備えた突起48が形成され、また、第2の面材42の両側部にも前記した受け部51を備えた切欠き部50が形成されている点で、
図7に示した保護部材40bと相違している。取り付け方は、保護部材40bの場合と同様である。
【0055】
図13に示す保護部材40dは、縦板47に空所52を設けた点で、
図4(b)に示した保護部材40と相違している。空所52を設けたことで、保護部材40dの軽量化が図られる。
【0056】
なお、上記した保護部材40b〜保護部材40dにおいて、第1の面材41と第2の面材42の形状は任意であり、
図10に示した保護部材40aのように、開口部を有しない平板材である第1の面材41および第2の面材42の裏面側に、凹部45a、46aを形成する形状であってもよい。
【0057】
図14に示す保護部材40eは、第1の面材41と第2の面材42のみで構成されており、縦材47を有しない点で、前記した保護部材40〜40dと相違している。
図14に示す例では、保護部材40eの第1の面材41は開口部45を、第2の面材42は開口部46を有している。しかし、縦材47を備えないことで、
図4に示した保護部材40と相違する。保護部材40eは、縦材47を備えないことを条件に、第1の面材41と第2の面材42の形状は任意であり、ここでも、
図10に示した保護部材40aのように、開口部を有しない平板材である第1の面材41および第2の面材42の裏面側に、凹部45a、46aを形成する形状であってもよい。
【0058】
この形態の保護部材40eの使用に当たっては、
図3に示す線状PTCヒータ線30あるいは
図2に示す線状加熱体20における、保護が必要とされる面状発熱体13が位置している部位の両面に、第1の面材41と第2の面材42とを個々に配置する。そして、接着剤により固定するか、樹脂フィルムなどの適宜の被覆シートにより全体を包み込むか、あるいは、
図6〜
図9に示した第3の形態〜第6の形態の保護部材を備えた線状PTCヒータ線のように、適宜の保護層60で全体を包み込む。それにより、面状発熱体13の位置に保護部材40eが自由には移動しない状態で配置された状態となる。
【0059】
外からの衝撃力による面状発熱体13への影響は、第1の面材41と第2の面材42によって緩和されることで、面状発熱体13は保護される。線状PTCヒータ線30あるいは線状加熱体20の使用条件によっては、第1の面材41と第2の面材42のいずれか一方のみを面状発熱体13の箇所に配置し固定することもできる。
【0060】
以上の説明では、保護部材の形状はすべて矩形状としたが、保護部材の外観形状は矩形状に限らす、円形状、楕円形状、多角形状などであってもよい。また、開口部を有する保護部材にあっては、該開口部の形状も、矩形状に限らす、円形状、楕円形状、多角形状などであってもよい。
【0061】
[実験例]
次に、本発明者が行った実験例を説明する。試験に用いた線状PTCヒータ線は、
図3に基づき先に説明した線状PTCヒータ線30である。線状PTCヒータ線30の横幅は18.5mm、面状発熱体13が位置する部位での厚みは7.5mmである。面状発熱体13は、素材がチタン酸バリウム系セラミックスであり、寸法は、横幅D:10mm、長手方向の長さA:8mm、厚みH:2.5mmである。第1の被覆層16および第2の被覆層22は軟質PVCを用いて従来知られた押出成形法の手法により形成した。
【0062】
実験は、上記の線状PTCヒータ線30における面状発熱体13の位置に、
図4(b)に示した形状の保護部材40を挿入して行った。保護部材40において、第1の面材41と第1の面材42との間の距離sは7.0mm、第1の面材41と第2の面材42の横幅Wは19mm、第1の面材41と第2の面材42の縦幅kは16mmとした。また、第1の面材41と第2の面材42に形成した開口部45、46の寸法は、8mm×15mmとした。素材はSUSであり、厚み1mm、2mm、3mm、1.5mmの4種のものを用いた。
【0063】
重錘として、先端が丸みをおびたかまぼこ状であり、先端の横幅25mm、縦長さ30mm、全体の重さが1kgの柱状の重錘を用いた。該重錘を保護部材40の直上70cmの高さから、保護部材40の上に落下させた。落下させた後に、元の位置に重錘を戻し、保護部材40の形状変化を目視により観察した。また、保護部材40を取り外し、線状PTCヒータ線30の第1の被覆層16および第2の被覆層22を除去して、面状発熱体13の破損の有無を目視により観察した。
【0064】
[結果]
[保護部材の変形の有無]
厚み1mmの素材で作った保護部材では、枠部材がわずかに変形していたが、他の厚みの素材で作った保護部材には、変形は見られなかった。
【0065】
[面状発熱体の破損]
いずれの面状発熱体にも破損は見られなかった。
【0066】
[比較例]
同じ線状PTCヒータ線30を用いた。ただし、保護部材を装着しなかった。実験は、同じ重さの重錘を、同じ高さから、線状PTCヒータ線30の面状発熱体13が位置する部位上に落下させた。落下させた重錘を元の位置に戻した後、線状PTCヒータ線30の第1の被覆層16および第2の被覆層22を除去して、面状発熱体13の破損の有無を目視で観察した。
【0067】
同じ落下試験を、線状PTCヒータ線30を取り換えて複数回行ったところ、面状発熱体13に破損が生じた線状PTCヒータ線が観察される場合があった。
【0068】
[評価]
上記の結果から、本発明による保護部材を備えた線状PTCヒータ線は、衝撃力に対して高い安定性を備えていることが確認できた。また、保護部材そのものの有用性も確認できた。