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特開2019-115306穀類の貯蔵装置、穀類の払出の制御方法、穀類原料単位の特性値の調整方法、および、食品または酒類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-115306(P2019-115306A)
(43)【公開日】2019年7月18日
(54)【発明の名称】穀類の貯蔵装置、穀類の払出の制御方法、穀類原料単位の特性値の調整方法、および、食品または酒類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23B 9/00 20060101AFI20190627BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20190627BHJP
   A01F 25/00 20060101ALI20190627BHJP
   G01N 33/10 20060101ALI20190627BHJP
   C12C 1/00 20060101ALI20190627BHJP
【FI】
   A23B9/00
   C12G3/00
   A01F25/00 E
   G01N33/10
   C12C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-251684(P2017-251684)
(22)【出願日】2017年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】古林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】坂東 隆好
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋詩
(72)【発明者】
【氏名】中上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 龍之
【テーマコード(参考)】
2B100
4B128
4B169
【Fターム(参考)】
2B100AA02
2B100DA27
2B100FA05
4B128AC10
4B128AC20
4B128AT20
4B169GA05
(57)【要約】
【課題】加工工程内において原料の特性値を連続的に測定するとともに、特性値の連続的な測定結果に基づいて、即時にその前工程を制御することができる装置および制御方法を実現する。
【解決手段】穀類2を収納するサイロ部3と、穀類2をサイロ部3から払い出す払出機構4と、サイロ部3から払い出された穀類2の特性値を連続的に測定可能なセンサ6と、センサ6により測定された特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて払出機構4を制御する払出制御機構7と、を備える穀類の貯蔵装置、および、穀類の払出の制御方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類を収納するサイロ部と、
前記穀類を前記サイロ部から払い出す払出機構と、
前記サイロ部から払い出された前記穀類の特性値を連続的に測定可能なセンサと、
前記センサにより測定された特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて前記払出機構を制御する払出制御機構と、を備える穀類の貯蔵装置。
【請求項2】
前記払出制御機構は、前記払出機構を、前記サイロ部からの穀類の払出操作中に制御可能であることを特徴とする、請求項1に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項3】
前記払出制御機構は、前記サイロ部から払い出された前記穀類の量が前記センサの測定結果に基づいて決められた払出量に到達したときに、前記穀類の払出を停止するように前記払出機構を制御する請求項1または2に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項4】
前記サイロ部より払い出された前記穀類を搬送する払出ラインを備え、
前記センサは、前記穀類を搬送しながら前記穀類の特性値を測定することができるように、前記払出ラインに設置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項5】
複数の前記サイロ部と、前記サイロ部のそれぞれに対応して設けられた複数の前記払出機構と、を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項6】
前記払出制御機構は、複数の前記払出機構をそれぞれ独立に制御可能である請求項5に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項7】
前記穀類が大麦、小麦、または、米、である請求項1〜6のいずれか1項に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項8】
前記センサが前記穀類の、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群から選択される少なくとも1種の物性値を測定することができる請求項1〜7のいずれか1項に記載の穀類の貯蔵装置。
【請求項9】
穀類を収納するサイロ部と、
前記穀類を前記サイロ部から払い出す払出機構と、
前記サイロ部から払い出された前記穀類の特性値を連続的に測定可能なセンサと、を備える穀類の貯蔵装置における穀類の払出の制御方法であって、
前記センサにより測定された特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて前記払出機構を制御する穀類の払出の制御方法。
【請求項10】
特性値の平均値がそれぞれ異なる二種以上の穀類を混合して、混合後の特性値を所定の範囲とするための穀類原料単位の特性値の調整方法であって、
前記特性値の平均値が所定値である穀類を収納するサイロから払い出された前記穀類が通過する経路上の少なくとも一地点において、前記穀類の前記特性値を連続的に測定し、
当該測定した特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて、前記所定値とは異なる前記特性値の平均値を有する穀類との混合比率を決定する穀類原料単位の特性値の調整方法。
【請求項11】
前記混合比率の決定を前記穀類の払出操作中に行うことを特徴とする、請求項10に記載の穀類原料単位の特性値の調整方法。
【請求項12】
前記特性値が穀物の、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群より選択される少なくとも一種の物性値であることを特徴とする請求項10または11に記載の穀類原料単位の特性値の調整方法。
【請求項13】
特性値の平均値がそれぞれ異なる二種以上の穀類を混合して、混合後の特性値を所定の範囲とするための穀類原料単位の特性値の調整方法であって、
前記特性値の平均値が所定値である穀類を収納するサイロから払い出された前記穀類が通過する経路上の少なくとも一地点において、前記穀類の前記特性値を連続的に測定し、
当該測定した特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方が、あらかじめ決められた目標値に達すると、前記サイロからの払い出しを停止するとともに、払い出された前記穀類の重量を測定し、
当該測定した重量に基づき、前記所定値とは異なる前記特性値の平均値を有する穀類を収納する別のサイロから払い出す前記穀類の量を調整する穀類原料単位の特性値の調整方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の穀類原料単位の特性値の調整方法で特性値を調整された穀類原料単位を用いることを特徴とする、食品または酒類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類の貯蔵装置、穀類の払出の制御方法、穀類原料単位の特性値の調整方法、および、食品または酒類の製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類を原料とする食品の製造において、複数の種類の穀類を混合して用いる場合がある。このような混合を行う工程においては、得られる製品または半製品の色調や風味が要求される品質を満たすように、色調や風味が異なるそれぞれの穀類原料の使用量を制御することが一般的である。しかし、天然物である穀類の色調や風味は一定ではないため、受け入れロット間の品質のばらつきや、同一ロット内の品質のばらつきがある場合があり、製品などの品質を一定水準以上に保つ、あるいは製品品質のばらつきを抑えるために使用するべき各穀類の量を一定に定める、ことは難しい。
【0003】
たとえば、特開2017−70232号公報(特許文献1)には、ビールの製造に用いる麦芽として、淡色麦芽に、濃色の熱処理麦芽(濃色)を所定量配合して用いると、色度を低く抑えつつキレと穀物香を付与したビールが得られることが開示されている。この方法によれば、原料の熱処理麦芽の色度の測定値に基づいて、配合割合を適切に設定することで、目標とする色度のビールを得ることができる。
【0004】
天然物原料の品質のばらつきを管理して製品の品質を管理する方法として、たとえば、特開平8−271414号公報(特許文献2)には、茶生葉原料の加工において、所定の量の区分ごとにサンプリングされた生葉原料についての品質特性の測定を含む加工方法が開示されている。この方法によれば、生葉原料は前記の区分ごとに加工ラインに供給されるが、このとき、測定された当該区分の品質特性に基づいて当該区分に対する各加工工程の設定条件が定められる。また、できあがった製品に対しても当該区分の品質特性に基づいた品質ランクが付される。この方法によれば、原料のロット間やロット内の品質のばらつきが存在したとしても、十分な品質管理を行うことが期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−70232号公報
【特許文献2】特開平8−271414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の方法は、配合割合を決定するために用いる熱処理麦芽および淡色麦芽のそれぞれの色度値として、一定の原料区分に対する代表値を用いている。そのため、同一ロット内の色度のばらつきがある場合に、得られるビールの色度の調整が不十分になるおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2の方法は、区分ごとの品質特性の測定結果を、その後工程に反映しているに過ぎない。したがって、原料の品質のばらつきに由来する製品の品質のばらつきを、後工程における調整によって吸収可能な範囲で抑制するか、あるいは、そのばらつきを単に管理するか、に留まっており、原料の品質のばらつきに関わらず製品の品質を一定水準以上に保つという目的に対しては不十分である。また、特許文献1の方法においては、品質管理の信頼性が高めるためには、各区分の所定の量を少なくして品質特性の測定を行う頻度を増やす必要があるが、このような方法を大量生産に適用すると生産性を損なうおそれがある。
【0008】
そこで、加工工程内において原料の特性値を連続的に測定するとともに、特性値の連続的な測定結果に基づいて、即時にその前工程を制御することができる装置および制御方法の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、穀類を収納するサイロ部と、前記穀類を前記サイロ部から払い出す払出機構と、前記サイロ部から払い出された前記穀類の特性値を連続的に測定可能なセンサと、前記センサにより測定された特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて前記払出機構を制御する払出制御機構と、を備える。
【0010】
また、本発明に係る穀類の払出の制御方法は、穀類を収納するサイロ部と、前記穀類を前記サイロ部から払い出す払出機構と、前記サイロ部から払い出された前記穀類の特性値を連続的に測定可能なセンサと、を備える穀類の貯蔵装置における穀類の払出の制御方法であって、前記センサにより測定された特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて前記払出機構を制御する。
【0011】
また、本発明に係る穀類原料単位の特性値の調整方法は、特性値の平均値がそれぞれ異なる二種以上の穀類を混合して、混合後の特性値を所定の範囲とするための穀類原料単位の特性値の調整方法であって、前記特性値の平均値が所定値である穀類を収納するサイロから払い出された前記穀類が通過する経路上の少なくとも一地点において、前記穀類の前記特性値を連続的に測定し、当該測定した特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方に基づいて、前記所定値とは異なる前記特性値の平均値を有する穀類との混合比率を決定する穀類原料単位の特性値の調整方法である。
【0012】
また、本発明に係る穀類原料単位の特性値の調整方法は、特性値の平均値がそれぞれ異なる二種以上の穀類を混合して、混合後の特性値を所定の範囲とするための穀類原料単位の特性値の調整方法であって、前記特性値の平均値が所定値である穀類を収納するサイロから払い出された前記穀類が通過する経路上の少なくとも一地点において、前記穀類の前記特性値を連続的に測定し、当該測定した特性値の積算値および経時変化の少なくとも一方が、あらかじめ決められた目標値に達すると、前記サイロからの払い出しを停止するとともに、払い出された前記穀類の重量を測定し、当該測定した重量に基づき、前記所定値とは異なる前記特性値の平均値を有する穀類を収納する別のサイロから払い出す前記穀類の量を調整する穀類原料単位の特性値の調整方法でもある。
【0013】
また、本発明に係る食品または酒類の製造方法は、上記の特性値の調製方法で特性値を調整された穀類原料単位を用いることを特徴とする。
【0014】
これらの構成によれば、サイロ部から穀類を払い出しながら、センサによって穀類の特性値を同時に測定できるので、実際の原料に対する測定結果に基づいて穀類の払出を制御することができる。すなわち、原料の品質特性の測定結果を、その後工程ではなく、その前工程である穀類の払出に反映することができる。それによって、原料の品質に応じてその使用量を制御することができるため、原料の品質のばらつきに関わらず製品の品質を一定水準以上に保つことに寄与する。また、原料の品質特性を測定するために工程を止める必要が無いため、連続的な生産工程を実現できる。さらに、製品ロスの少ない安定した生産にも寄与する。
【0015】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0016】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、前記払出機構は、前記払出制御機構は、前記払出機構を、サイロ部からの穀類の払出操作中に制御可能であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、穀類の払出操作を中断することなく、制御を行うことができる。
【0018】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、前記払出制御機構は、前記サイロ部から払い出された前記穀類の量が前記センサの測定結果に基づいて決められた払出量に到達したときに、前記穀類の払出を停止するように前記払出機構を制御することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、穀類の払出量を、実際の測定結果に基づいて、すなわち、原料の実際の特性値に基づいて、決定することができる。また、払い出された穀類の量が決定された払出量に到達したときに自動的に穀類の払出が停止するため、払出を止めるための操作を行う必要が無い。
【0020】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、前記サイロ部より払い出された前記穀類を搬送する払出ラインを備え、前記センサは、前記穀類を搬送しながら前記穀類の特性値を測定することができるように、前記払出ラインに設置されることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、搬送ラインによる穀類の搬送を一定の速度に制御することで、センサの測定対象範囲内における穀類の運動が一定の速度に制御されるので、センサによる測定の品質を一定に保ち信頼性を高めることに寄与する。
【0022】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、複数の前記サイロ部と、前記サイロ部のそれぞれに対応して設けられた複数の前記払出機構と、を備えることが好ましい。また、この場合において、前記払出制御機構は、複数の前記払出機構をそれぞれ独立に制御可能であることが、さらに好ましい。
【0023】
この構成によれば、複数のサイロ部に貯蔵した複数種類の穀類を組み合わせて払い出すことができる。
【0024】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、前記穀類が大麦、小麦、または、米、であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、本発明を、これらの穀類を原料とする食品の製造に好適に用いることができる。これらの穀類を原料とする食品としては、例えば、ビール、発泡酒、リキュール、ウイスキー、日本酒、焼酎、パン、菓子、醤油、味噌などが挙げられる。
【0026】
本発明に係る穀類の貯蔵装置は、一態様として、前記センサが前記穀類の、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群から選択される少なくとも1種の物性値を測定することができることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群から選択される少なくとも1種の物性値に基づいて穀類の払出を制御することができ、得られる製品などの物性値を制御することに寄与する。
【0028】
本発明に係る穀類原料単位の特性値の調整方法は、一態様として、前記混合比率の決定を前記穀類の払出操作中に行うことが好ましい。
【0029】
この構成によれば、穀類の払出操作を中断することなく、制御を行うことができる。
【0030】
本発明に係る穀類原料単位の特性値の調整方法は、一態様として、前記特性値が穀物の、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群より選択される少なくとも一種の物性値であることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、色調、タンパク、水分、でんぷん、灰分、脂質、全窒素、塩分、アルコール、および、糖度、からなる群より選択される少なくとも一種の物性値に基づいて穀類の払出を制御することができ、得られる製品などの特性値を制御することに寄与する。
【0032】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明に係る穀類の貯蔵装置を麦芽の貯蔵装置として用いた例。
図2】本発明に係る穀類の払出の制御方法を表すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る穀類の貯蔵装置、および、穀類の払出の制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の貯蔵装置1は、ビールの原料として用いられる穀類の一例である麦芽2の貯蔵装置である。
ビールの原料として用いられる麦芽は、大麦を発芽させたものであって、通常、複数種類の麦芽を混合して用いられる。混合された複数種類の麦芽は、粉砕されたのちに、麦汁の製造に供される。その後、麦汁の発酵などの工程を経てビールが製造される。製品であるビールの色調を管理するため、半製品である麦汁の色調が管理されるが、麦汁の色調は原料である麦芽の色調および混合比率に依存する。本実施形態では、濃色の麦芽2aおよび淡色の麦芽2bのそれぞれの払出量を調整することによって、得られる麦汁の色調を調整する手順に用いられる、麦芽2の貯蔵装置1および麦芽2の払出の制御方法について説明する。
【0035】
〔貯蔵装置1の基本構成〕
図1に示すように、本発明に係る貯蔵装置1は、サイロ部としてのサイロ3a、3b、払出機構としてのロータリーバルブ4a、4b、払出ラインとしてのベルトコンベア5、センサとしての色調センサ6、払出制御機構としての制御部7、および、秤量部8、を備える。サイロ3aには濃色の麦芽2aが収納されており、サイロ3bには淡色の麦芽2bが収納されている。麦芽2は、サイロ3からロータリーバルブ4を通じてベルトコンベア5上に払い出され、ベルトコンベア5によって秤量部8に搬送される。
【0036】
サイロ3aおよび3bには、それぞれ対応するロータリーバルブ4a、4bが設けられている。ロータリーバルブ4は制御部7と通信可能に接続されており、制御部7からの制御信号に従って、麦芽2をサイロ3から払い出すことができる開放姿勢と、麦芽2をサイロ3に留めることができる閉止姿勢と、にわたって姿勢変更することができる。制御部7は、ロータリーバルブ4a、4bをそれぞれ独立に制御することができる。
【0037】
ベルトコンベア5は制御部7と通信可能に接続されており、制御部7からの制御信号に従って、ベルトコンベア5を運転あるいは停止する。
【0038】
ベルトコンベア5によって麦芽2を搬送しながら麦芽2の色調を測定することができるように、ベルトコンベア5の近傍に色調センサ6が設けられている。色調センサ6としては公知のものを用いることができるが、たとえば色彩計、色差計、測色計など、公知の原理を利用したものであってよい。あるいは、CCDカメラなど、麦芽2の画像を直接取得するものであってもよい。色調センサ6によって測定される色調値としては公知のものを用いることができ、たとえば、RGB値、Lab値、HSV値、XYZ値、などを用いることができる。色調センサ6は制御部7と通信可能に接続されており、制御部7に対して麦芽2の色調の測定結果を送信する。
【0039】
色調センサ6は、サイロ3aから払い出された麦芽2a、および、サイロ3bから払い出された麦芽2b、の双方が通過する経路に設けられている。そのため、1箇所にのみ設けられた色調センサ6によって、麦芽2a、2bの双方についての測定を行うことができる。したがって、サイロの数量と一致する数量のセンサを設ける必要が無く、高価なセンサの設置個所を減らすことができる。
【0040】
麦芽2はベルトコンベア5により運搬され、やがて秤量部8に到達する。秤量部8としては公知のものを用いることができるが、たとえば電子天秤であってよい。秤量部8は制御部7と通信可能に接続されており、制御部7に対して麦芽2の秤量結果を送信する。秤量部8で秤量された麦芽2は、続いて麦汁製造工程(図示せず)に搬送される。
【0041】
色調センサ6と同様に、秤量部8は麦芽2a、2bの双方が通過する経路に設けられている。そのため、1箇所にのみ設けられた秤量部8によって麦芽2a、2bの双方についての測定を行うことができ、秤量部8の設置個所を減らすことができる。
【0042】
制御部7は、ロータリーバルブ4a、4b、ベルトコンベア5、色調センサ6、および、秤量部8と通信可能に接続されている。制御部7は、上記の各要素との通信手段に加えて、記憶媒体、処理部、入力装置、および、出力装置、を含む。制御部7としては公知のものを用いることができるが、たとえば分散制御システム(DCS)であってよい。制御部7は、色調センサ6による麦芽2の色調の測定結果を受信することができるとともに、測定結果に基づいて麦芽2の色調を判定することができる。また、制御部7は、貯蔵装置1から払い出された麦芽2の量についての情報を、秤量部8から受信できる。そして、制御部7は、色調センサ6による麦芽2の色調の測定結果と、秤量部8による払い出された麦芽2の量についての情報と、に基づいて、麦芽2の払出量を決定することができ、サイロ3から払い出された麦芽2の量が当該払出量に到達したときに麦芽2の払出を停止するように、ロータリーバルブ4を制御することができる。なお、ロータリーバルブ4を閉止したときに、すでにベルトコンベア5上に払い出された麦芽2は、制御部7が払出の停止を指示した後にもかかわらず次工程に搬送されることになるが、一般的に当該ベルトコンベア5上の麦芽2の残存量は払い出すべき麦芽2の総量に対して非常に小さいので、誤差として無視してもよく、あるいは、当該残存量を考慮に入れて払出の停止を指示するように制御部7を構成してもよい。いずれの方法であっても、次工程への影響は極めて小さく、これを無視しうる。
【0043】
〔麦芽の払出の制御方法〕
次に、本実施形態の貯蔵装置1を用いて実現される麦芽の払出の制御方法について説明する。
【0044】
まず、オペレータは、制御部7に原料配合指示情報11を入力する。原料配合指示情報11は、麦汁製造設備(図示せず)に払い出すべき麦芽2の総重量W、払い出される麦芽2の色調値の積算値の目標値CS、麦芽2a、2bの受け入れ検査時における色調値の測定結果(特性値の平均値の例)CA0、CB0、麦芽2a、2bの品種名、などの情報を含む。制御部7は、入力された原料配合指示情報に従い、麦芽2a、2bそれぞれの払出予定量WTA、WTBを決定する。ここで、色調値の積算値の目標値CSのうち、麦芽2aの分担分をCSTAとする。
【0045】
払出予定量WTA、WTBが決定されると、制御部7はベルトコンベア5に対して搬送運転信号14を送信する。搬送運転信号14を受信したベルトコンベア5は、麦芽2aを運搬するように運転を開始する。続いて、制御部7はロータリーバルブ4aに対して払出指示信号12aを送信する。払出指示信号12aを受信したロータリーバルブ4aは開放姿勢に姿勢変更し、麦芽2aがサイロ3aからベルトコンベア5に払い出される。
【0046】
ベルトコンベア5によって運搬された麦芽2aは、やがて色調センサ6の測定対象範囲に到達する。色調センサ6は麦芽2aの色調値データ16を逐次的に制御部7に送信する。
【0047】
色調センサ6の測定対象範囲を通過した麦芽2aは、やがて秤量部8に到達する。秤量部8は麦芽2aの重量を測定し、その重量データ17を逐次的に制御部7に送信する。
【0048】
制御部7は、受信した色調値データ16および重量データ17に基づき、色調値の積算値CSRAを逐次的に導出する。実測に基づく麦芽2aの色調値の積算値CSRAが、原料配合指示情報11に基づいて決定された麦芽2aの色調値の積算値CSTAに到達すると、制御部7は払出停止信号13aを送信する。このときロータリーバルブ4aは閉止姿勢に姿勢変更し、ベルトコンベア5への麦芽2aの払出が停止する。
【0049】
ここで、麦芽2aの払出を停止した時点までの麦芽2aの実払出量をWRAとする。麦芽2aの実払出量WRAは、麦芽2aの払出予定量WTAと異なりうる。そのため、麦芽2bの払出予定量WTBに従って麦芽2bを払い出すと、実際に払い出される麦芽の総重量が、本来払い出すべき麦芽2の総重量Wと異なるおそれがある。そこで、制御部7は、麦芽2bの払出予定量WTBを数式(1)に従って再計算する。換言すると、実測に基づく麦芽2aの色調値の積算値CSRAと、麦芽2aの実払出量WRAと、に基づいて、麦芽2a、2bの混合比率が決定される。
TB=W−WRA (1)
【0050】
麦芽2bの払出予定量WTBを再計算すると、制御部7はロータリーバルブ4bに対して払出指示信号12bを送信する。払出指示信号12bを受信したロータリーバルブ4bは開放姿勢に姿勢変更し、麦芽2bがサイロ3bからベルトコンベア5に払い出される。
【0051】
ベルトコンベア5により運搬された麦芽2bについて、麦芽2aと同様に、色調センサ6による色調測定および秤量部8による重量測定、が行われ、色調値データ16および重量データ17が逐次的に制御部7に送信される。制御部7は、受信した重量データ17に基づき、麦芽2bの実払出量WRBを積算する。実払出量WRBが修正された払出予定量WTBに到達すると、制御部7は払出停止信号13bを送信する。このときロータリーバルブ4bは閉止姿勢に姿勢変更し、ベルトコンベア5への麦芽2bの払出が停止する。
【0052】
麦芽2a、2bの払出が全て完了すると、制御部7は搬送停止信号15を送信する。このときベルトコンベア5は運転を停止し、貯蔵装置1による麦芽2a、2bの払出が完了する。
【0053】
本発明の貯蔵装置および払出制御方法を用いて払い出された穀類は、公知の方法で製造に供される。たとえばビールを製造する際は、払い出された麦芽は、粉砕されたのちに、麦汁の製造に供される。その後、麦汁の発酵などの工程を経てビールが製造される。本発明の貯蔵装置および払出制御方法をビールの製造に適用することにより、たとえば、重要な品質指標であるビールの色調を、目標とする値に一定に保つことが可能となり、製品ロスの少ない安定した生産が可能となる。
【0054】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0055】
上記の実施形態では、本発明の、穀類の貯蔵装置、および、穀類の払出の制御方法としての実施形態を例として説明した。しかし、上記の実施形態の貯蔵装置1は、たとえば、麦芽2の原料単位の色調値データの調製方法にも用いることができ、ビールの製造方法にも用いることができる。このように、本発明は、穀類原料単位の特性値の調整方法であってもよく、食品または酒類の製造方法であってもよい。
【0056】
上記の実施形態では、対象とする穀類が、大麦を発芽させた麦芽2である例を説明した。しかし、穀類は麦芽に限定されず、収穫された状態のものであってもよいし、発芽以外の加工(たとえば、焙煎)がなされたものであってよい。また、穀類は、大麦のほか、たとえば、小麦、米、茶葉、大豆、であってよい。なお、大麦以外の穀類を用いる場合であっても、収穫された状態のものであってもよく、収穫された状態から加工されたものであってよい。
【0057】
上記の実施形態では、サイロ部として2基のサイロ3a、3bを備える例を説明した。しかし、サイロ部の数は2基に限定されず、1基であってもよく、あるいは、3基以上であってもよい。
【0058】
上記の実施形態では、払出機構としてロータリーバルブ4を用いた構成を例として説明した。しかし、払出機構はロータリーバルブに限定されず、たとえば、ギロチンバルブ、チョークバルブ、バタフライバルブ、ミューコンバルブ、であってよい。また、上記の実施形態では、ロータリーバルブを開放姿勢と閉止姿勢とにわたって姿勢変更する構成を例として説明したが、払出機構の姿勢変更はこのような実施形態に限定されず、たとえば、バルブの開度を調整して穀類の払出速度を任意に増減できる実施形態であってよい。この実施形態によれば、穀類の払出の終期に開度を減じて払出速度を低くすることができるので、払出停止指示の送信と払出の停止との間のタイムラグに起因する払出量の誤差を低減することができる。
【0059】
上記の実施形態では、センサとして色調センサ6を用いた構成を例として説明した。しかし、センサは色調センサに限定されず、公知のセンサを用いることができる。ここで、センサは光学センサであることが好ましく、近赤外分光法に基づく多成分センサ、および、撮影画像に基づく画像処理センサ、から選択される少なくとも一つであることがさらに好ましい。多成分センサを用いた場合、タンパク、全窒素などの分析対象についても払い出しの基準とすることができる。
【0060】
センサとして色調センサを用いる場合は、色調の測定の精度を高めるため、色調センサの測定対象範囲を照射する照明設備を有することが好ましい。
【0061】
上記の実施形態では、ベルトコンベア5の近傍に色調センサ6が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、センサを設ける位置は、たとえば、排出ラインを構成する複数の搬送手段の間の接続部であってよく、排出ラインとサイロ部との接続部であってよく、穀類を上下方向に運搬するためのエレベータ部であってよい。また、センサの設置角および測定対象物からの距離に関しても、センサの測定機能を果たす限り制限されない。
【0062】
上記の実施形態では、色調センサ6が貯蔵装置1のうちの、麦芽2a、2bの双方が通過する経路上の1箇所のみに設けられている構成を例として説明した。しかし、センサの位置や数量はこのような構成に限定されない。たとえば、複数のサイロ部のそれぞれに一体化してセンサが設けられると、複数のサイロ部から払い出される複数種類の穀類について、同時かつ個別に測定を行うことができるため、複数種類の穀類を同時に払い出したとしても、これを測定し、かつ、制御することができる。したがって、複数種類の穀類を同時に払い出すことができ、穀類の払い出しに要する時間を短縮することができるため、製造工程の短縮に寄与することができる。
【0063】
上記の実施形態では、払出ラインとしてベルトコンベア5を用いた構成を例として説明した。しかし、払出ラインはベルトコンベアに限定されず、たとえばエアコンベア、振動コンベア、スクリューコンベアなど、連続的に搬送可能な機構であれば公知のものを使用できる。払出ラインは、搬送される穀類への異物の混入を防ぐため、保護カバーを有することが好ましい。
【0064】
上記の実施形態では、麦芽2a、2bいずれの払出に際しても色調値データ16および重量データ17が逐次的に制御部7に送信される構成を例として説明した。しかし、複数種類の穀類を払い出す場合に、必ずしも全ての種類の穀類についてセンサによる測定を行う必要はなく、工程管理上の目的に合致する範囲で測定を省略してもよい。たとえば、濃色の麦芽についてのみ色調値データを測定するように構成してもよい。
【0065】
上記の実施形態では、麦芽2aの実払出量WRAに基づいて麦芽2bの払出予定量WTBを再計算する構成を例として説明した。しかし、払出量の制御はこのような形態に限定されることなく、たとえば、複数種類の穀類を払い出す場合において、最後に払い出す穀類の払出予定量を再計算する替わりに、実際に払い出された複数種類の穀類の総重量が予定の量に達したときに最後に払い出す穀類の払出を停止するように制御してもよい。
【0066】
上記の実施形態では、麦芽2の色調値の積算値を管理する構成を例として説明した。しかし、積算値に基づいた制御に限定されず、たとえば、瞬時値や経時変化に基づいた制御を行ってもよい。経時変化に基づく制御を行う場合は、時間経過による原料品質の変化や異物の混入を検出し、これらの異常に基づいた制御を行うことができる。また、積算値をその自転で払い出した原料の量で割り返した平均値を用いてもよい。
【0067】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、たとえばビールの原料として用いられる麦芽の貯蔵装置、および、それを用いた麦芽の払出の制御方法、に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 貯蔵装置
2 麦芽
2a 濃色の麦芽
2b 淡色の麦芽
3 サイロ
3a 濃色の麦芽1aを収納するサイロ
3b 淡色の麦芽1bを収納するサイロ
4 ロータリーバルブ
4a サイロ2aに対応するロータリーバルブ
4b サイロ2bに対応するロータリーバルブ
5 ベルトコンベア
6 色調センサ
7 制御部
8 秤量部
11 原料配合指示情報
12a ロータリーバルブ4aに対する払出指示信号
12b ロータリーバルブ4bに対する払出指示信号
13a ロータリーバルブ4aに対する払出停止信号
13b ロータリーバルブ4bに対する払出停止信号
14 搬送運転信号
15 搬送停止信号
16 色調値データ
17 重量データ
図1
図2