【解決手段】帯電部10は、それぞれの表面が通風方向に沿うように、当該通風方向と交差する方向に配列された板状の複数の対向電極120と、複数の対向電極120間にそれぞれ設けられた線状の複数の高圧電極110と、を備え、複数の対向電極120は、少なくとも一組の隣接する対向電極120の一方が第1の電極面積を有する第1の対向電極120Aであり、他方が開口部130によって当該第1の電極面積より小さく設定された第2の電極面積を有する第2の対向電極120Bであって、複数の対向電極120と複数の高圧電極110との間を通風する気流に浮遊する浮遊微粒子を帯電させる。
前記第2の対向電極は、前記開口部における前記貫通穴の平面形状が円である場合、直径が当該第2の対向電極の前記通風方向における幅の2.5%以上且つ60%以下であって、当該第2の対向電極の面積に対する当該開口部の当該貫通穴が占める面積の比率が10%以上且つ50%以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の帯電装置。
前記第2の対向電極は、風上側の端部と前記第1の対向電極の風上側の端部との距離が、風下側の端部と当該第1の対向電極の風下側との距離より近く設けられていることを特徴とする請求項6に記載の帯電装置。
前記高圧電極は、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄の何れかの金属、当該金属を主成分とする酸化物若しくは合金、当該金属若しくは当該金属を主成分とする酸化物に銀、金及び白金の何れかの貴金属を表面にメッキしたものの何れかによって構成されていることを特徴とする請求項11乃至15のいずれか1項に記載の帯電装置。
前記高圧電極は、タングステン、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄の何れかの金属、当該金属を主成分とする酸化物又は合金、当該金属又は当該金属を主成分とする酸化物に銀、並びに、金および白金の何れかの貴金属を表面にメッキしたものの何れかによって構成されていることを特徴とする請求項17乃至20のいずれか1項に記載の帯電装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態が適用される集塵装置1の一例を示す図である。
第1の実施の形態が適用される集塵装置1は、帯電部10、集塵部20、ファン30、及び、これらを収納する筐体40を備える。ここでは、筐体40を破線で示し、筐体40の内部に設けられた帯電部10及び集塵部20の構成が見えるようにしている。この集塵装置1は、帯電部10と集塵部20と機能が分離した二段電気集塵方式である。ここで、帯電部10と集塵部20とは、脱着可能なユニットの形態として構成されていても構わない。
なお、集塵装置1は、帯電部10と集塵部20とに高電圧を供給する電源部や、帯電部10、集塵部20、ファン30及び電源部を制御する制御部などをさらに備えるが、ここでは記載を省略する。なお、第1の実施の形態が適用される集塵装置1の備える帯電部10は、帯電装置の一例である。
【0028】
ここで、空気の流れ(通風)の方向(通風方向)は、矢印で示すように、帯電部10から集塵部20に向かう方向に設定されている(
図1の紙面の左から右であって、後述するZ方向)。通風は、集塵部20の通風方向の下流側(風下側)に設けられたファン30により行われる。
【0029】
(帯電部10)
帯電部10は、複数の高圧電極110と、複数の高圧電極110のそれぞれに対向するように設けられた複数の対向電極120とを備える。高圧電極110は、高電圧を印加される電極であるので、高電圧電極とも呼ばれ、放電を発生する電極であるので、放電電極とも呼ばれることがある。また、対向電極120は、接地(GND)されることがあるため、接地電極と呼ばれることがある。
【0030】
高圧電極110は、導電性を有する線(ワイヤ)状の部材(線状部材)で構成されている。
対向電極120は、導電性を有する板状の部材(板状部材)で構成されている。そして、対向電極120は、板状部材の平面が通風方向に沿う方向に設けられている。
図1では、対向電極120の平面は、通風方向と一致させている(対向電極120の平面と通風方向とのなす角度が0°)が、必ずしも一致することを要せず、対向電極120の平面と通風方向とのなす角度が90°未満であればよい。
【0031】
そして、対向電極120は、一枚置きに形状が異なっている。つまり、X方向に沿って偶数番目の対向電極120は開口部130を備え、奇数番目の対向電極120に比べて、電極として機能する部分の面積(以下では、電極面積と表記する。)が小さくなるように構成されている。つまり、電極面積が異なる対向電極120が交互に、通風方向と交差する向きに配列されている。
【0032】
以下では、実施例1として後述する帯電部10で説明する。
実施例1の帯電部10では、奇数番目の対向電極120を対向電極120A(“A”と表記する場合がある。)とし、偶数番目の対向電極120を対向電極120B(“B”と表記する場合がある。)とする。対向電極120Bは、開口部130が後述する貫通穴131で構成されている。そして、対向電極120Bは、貫通穴131を備えることによって、対向電極120Aに比べて、電極面積が小さくなるように構成されている。
【0033】
ここで、高圧電極110を“*”で示すとする。すると、
図1に示す集塵装置1における実施例1の帯電部10では、高圧電極110と対向電極120とが、A−*−B−*−A−*−B−*−A−*−B−*−Aの配列で配置されている。ここでは、このように電極面積の異なる対向電極120を交互に配列されることを、“隔列”と呼ぶ。一方、電極面積が同じ対向電極120を配列されることを、“全列”と呼ぶ。
【0034】
(集塵部20)
集塵部20は、交互に積層された、表面が絶縁性材料の膜で被覆された板状の高圧電極210と、導電性を有する板状の対向電極220とを備える。なお、対向電極220は、荷電された粒子の電荷を逃がす形態であればよく、導電性を有する樹脂膜などで被覆されたものであっても構わない。高圧電極210と対向電極220の間が通風方向となる。ここでも、対向電極220は、接地(GND)されることがあるため接地電極と呼ばれることがある。
高圧電極210と対向電極220との間に、不図示の高圧電源により、直流(DC)の高電圧が印加される。すると、帯電部10で帯電した浮遊微粒子が、静電気力により対向電極220の表面に付着する。これにより、浮遊微粒子が集塵される。
【0035】
なお、高圧電極210の表面を覆う絶縁性材料の膜には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用い得る。
【0036】
(筐体40)
筐体40は、通風方向の上流側(風上側)の帯電部10側に入口部41が設けられ、風下側の集塵部20側に出口部42が設けられている。なお、入口部41には、メッシュ(網)、格子などが設けられていてもよい。入口部41に設けられるメッシュ(網)、格子などは、ユーザの帯電部10への接触を防ぎつつ、通風に対する抵抗が小さいように設けられることがよい。また、入口部41には、形状の大きな粒子の侵入を抑制するプレフィルタが設けられてもよい。
ファン30は、筐体40に設けられた風下側の出口部42に設けられている。
【0037】
つまり、空気の流れ(通風)は、筐体40の帯電部10側の入口部41から入り、帯電部10、集塵部20を経由して、筐体40のファン30が設けられた出口部42から出る。そして、説明の便宜上、
図1に示すように、通風方向をZ方向として、Z方向に直交する方向をX方向、Y方向とする。
なお、通風が阻害されない限り、集塵装置1は、どのような向きに置かれても構わない。
【0038】
そして、筐体40は、例えば、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合体)などの樹脂材料で構成されている。
【0039】
そして、高圧電極110と対向電極120との間に、不図示の高圧電源から直流(DC)の高電圧が印加されることで、高圧電極110と対向電極120との間にコロナ放電(放電)が発生する。そして、発生したコロナ放電により発生したイオンが浮遊微粒子に付着することで、浮遊微粒子を帯電(荷電)させる。
【0040】
(実施例1)
図2は、実施例1の帯電部10を詳説明する図である。
図2(a)は、帯電部10の斜視図、
図2(b)は、帯電部10の断面図(Y方向断面図)、
図2(c)は、対向電極120Aの側面図、
図2(d)は、対向電極120Bの側面図である。
実施例1の帯電部10は、高圧電極110と電極面積が異なる対向電極120A、120Bとを備える。
【0041】
図2(a)、(b)に示すように、高圧電極110は、例えば直径が90μmのタングステン(W)線で構成されている。すなわち、高圧電極110の断面は、円である。なお、高圧電極110は、タングステンの他、銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、鉄などの金属、又は、これらの金属を主成分とする合金であってもよい。さらに、高圧電極110は、これらの金属又はこれらの金属を主成分とする酸化物又は合金に、銀、金、又は、白金などの貴金属が表面にメッキされたものであってもよい。なお、高圧電極110は、酸化タングステンであると、特性が安定してよい。そして、高圧電極110は、直径が20μm以上且つ300μm以下であるとよい。
【0042】
対向電極120Aは、開口部130を備えない板状である。一方、対向電極120Bは、開口部130を備え、開口部130に貫通穴131を備える。そして、貫通穴131を備えない対向電極120Aと貫通穴131を備える対向電極120Bとが隔列で配列(配置)されている。前述したように、A−*−B−*−A−*−B−*−Aとなっている。この配列を、単にABと表記する。他も同様とする。
なお、開口部130とは、対向電極120A上のすべての貫通穴131をいう。
図1、
図2(d)では、便宜的に貫通穴131を取り囲むように開口部130を表記している。
【0043】
対向電極120A、120Bは、例えば、アルミニウムで構成されている。なお、対向電極120は、アルミニウムの他、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル合金などの金属、又は、カーボンで構成されてもよい。
対向電極120A、120BのZ方向の長さである幅W
A、W
Bは、例えばともに10mmである。なお、幅W
A、W
Bは、10mm以外であってもよいが、狭いほど帯電部10が小さくできる。対向電極120の長さ(Y方向の長さ)は、集塵装置1の大きさによって設定されればよい。例えば、400mmである。
【0044】
図2(c)に示すように、対向電極120Aは、開口部130を備えない板状である。一方、
図2(d)に示すように、対向電極120Bは、開口部130を備える。開口部130には、Y方向に配列された複数の貫通穴131が一列設けられている。ここでは、貫通穴131の平面形状は、円形である。貫通穴131は、例えば直径d
Bが3mm(3mmφ)である。なお、貫通穴131は、平面形状が円でなくともよく、平面形状が楕円、四角形など他の形状であるものを含む。なお、貫通穴131の形状は、電界が集中しない形状であることがよい。
【0045】
ここで、対向電極120A、120Bとは、外形が同じである。そこで、対向電極120におけるすべての貫通穴131(開口部130)の占める面積の対向電極120の外形の面積に対する比率を、開口部比率又は単に比率と表記する。すなわち、貫通穴131を設けない場合、つまり、対向電極120Aは、開口部比率(比率)が0%である。一方、対向電極120Bは、貫通穴131の面積で決まる開口部比率(比率)を有することになる。実施例1における対向電極120Bは、開口部比率(比率)が13.8%である。
【0046】
そして、
図2(b)に示すように、高圧電極110は、対向電極120の幅方向(Z方向)において、風上側(−Z方向側)に設けられている。高圧電極110は、対向電極120の幅方向において、風上側の端部から距離D
F、風下側の端部から距離D
Bに設けられている。なお、D
F+D
B=W
A又はW
Bである。そして、D
F:D
Bは、例えば3:7である。なお、他の位置に設けてもよい。このように対向電極120の幅方向において、高圧電極110を風上側にずらして設ける理由については、後述する。
【0047】
そして、対向電極120A、120Bと高圧電極110との距離D
Gは、例えば10mmである。
【0048】
(比較例1)
図3は、比較例1の帯電部10を説明する図である。
図3(a)は、帯電部10の斜視図、
図3(b)は、帯電部10の断面図(Y方向断面図)である。比較例1では、すべての対向電極120は、
図2(c)に示した対向電極120Aである。つまり、
図3(a)に示す比較例1の帯電部10は、
図2(a)に示した実施例1において、対向電極120B(“B”)を対向電極120A(“A”)に置き換えた構成である。つまり、対向電極120がA−*−A−*−A−*−A−*−Aの全列に配列(配置)されている。これは、単にAAと表記される。
【0049】
図4は、実施例1、比較例1及び他の実施例、比較例のそれぞれの放電電流での集塵効率及びオゾン濃度を示す表である。集塵効率及びオゾン濃度は、帯電部10の異なる放電電流で計測した結果を示している。ここでは、高圧電極110は、直径90μm(断面円形)のタングステン線とした。集塵部20の高圧電極210と対向電極220との間の電圧は、6kVとした。また、通風方向の風速は、1m/秒とした。そして、放電電流は、150μA、250μA及び450μAとした。
【0050】
集塵効率(%)は、集塵装置1の通風方向の上流側(帯電部10に入る前)と下流側(集塵部20から出た後)とにおいて、浮遊微粒子の数をパーティクルカウンタにより計測して求めた。また、オゾン濃度(ppb)は、オゾン濃度計を用いて、集塵装置1の通風方向の下流側(集塵部20から出た後)で計測した。
【0051】
前述したように、実施例1の帯電部10は対向電極120がABの隔列、比較例1は、対向電極120がAAの全列であった。
また、他の実施例2〜7における帯電部10の対向電極120は、実施例2がACの隔列、実施例3がADの隔列、実施例4がAEの隔列、実施例5がAFの隔列、実施例6がAGの隔列、そして実施例7がAHの隔列の配列(配置)である。つまり、実施例1〜7は、すべて形状が異なる(電極面積が異なる)対向電極120の隔列の配列(配置)となっている。
以下では、実施例2〜7における対向電極120C、120D、120E、120F、120G、120Hを説明する。
【0052】
図5は、他の対向電極120C、120D、120E、120F、120G、120Hを説明する側面図である。
図5(a)は、対向電極120C、
図5(b)は、対向電極120D、
図5(c)は、対向電極120E,120F、120G、
図5(d)は、対向電極120Hを示す。
【0053】
図5(a)に示す対向電極120Cは、直径3mm(3mmφ)の貫通穴131がY方向に千鳥に二列設けられている。これにより、貫通穴131が対向電極120Cの全面に設けられている。この場合、開口部比率は、27.6%である。
【0054】
図5(b)に示す対向電極120Dは、開口部130が風下側(Z方向)に設けられた切り欠き132により構成されている。ここでは、対向電極120Dは、対向電極120Aの一部が切り欠くことで構成されている。つまり、対向電極120Dの風上側の端部は、対向電極120Aの風上側の端部とZ方向(Z軸上)において同じ位置にあり、対向電極120Dの風下側の端部は、対向電極120Aの風下側の端部とZ方向(Z軸上)において短い位置(座標値が小さい位置)にある。
ここで、切り欠き132の深さd
Wは、5mmに設定されている。よって、開口部比率は、50%である。
なお、対向電極120Dは、切り欠き132の幅W
Bから深さd
Wを引いた幅の金属などで構成されてもよい。つまり、対向電極120Dの通風方向の幅が、対向電極120Aの通風方向の幅より狭く構成されていればよい。
また、開口部比率は、深さd
Wを調整することで設定される。
【0055】
図5(c)に示す対向電極120E、120F、120Gは、
図5(a)に示した対向電極120Cと同様に、直径d
Bの複数の貫通穴131が対向電極120の全面に設けられている。対向電極120Eでは、直径d
Bが0.25mm(0.25mmφ)の貫通穴131が設けられている。対向電極120Eの開口部比率は、10%である。対向電極120Fでは、直径d
Bが0.75mm(0.75mmφ)の貫通穴131が設けられている。対向電極120Fの開口部比率は、36%である。対向電極120Gでは、直径d
Bが1.5mm(1.5mmφ)の貫通穴131が設けられている。対向電極120Gの開口部比率は、50%である。
【0056】
なお、
図5(d)に示す対向電極120Hでは、
図2(a)、(d)に示した対向電極120Bと同様に、直径d
Bが6mm(6mmφ)の貫通穴131が風下側に設けられている。
【0057】
また、
図4に示す他の比較例2、3における帯電部10の対向電極120は、比較例2がBBの全列、比較例3がCCの全列である。つまり、比較例1〜3は、すべて形状が同じ(電極面積が同じ)対向電極120の全列となっている。なお、対向電極120Bは、
図2(d)に示され、対向電極120Cは、
図5(a)に示されている。
【0058】
以下では、
図4に示した結果から、顕著な例を図示して説明する。
図6は、実施例1(AB)、実施例5(AF)、及び比較例1(AA)、比較例2(BB)における集塵効率の放電電流依存性、及び、集塵効率とオゾン濃度との関係を示すグラフである。
図6(a)は、集塵効率の放電電流依存性、
図6(b)は、集塵効率とオゾン濃度との関係を示す。
図6(a)は、横軸が放電電流(μA)、縦軸が集塵効率(%)である。
図6(b)は、横軸がオゾン濃度(ppb)、縦軸が集塵効率(%)である。
【0059】
図6(a)において、比較例1(AA)では、集塵効率は、放電電流とともに大きくなる。しかし、放電電流が450μAにならないと、集塵効率が99%に達しない。
また、比較例2(BB)では、放電電流が小さい範囲における集塵効率が、比較例1(AA)より高い。しかし、比較例1(AA)と同様に放電電流が450μAにならないと、集塵効率が99%に達しない。
つまり、比較例2(BB)に示すように、風下側に開口部130(貫通穴131)を設けた対向電極120Bを全列で配列(配置)すると、放電電流が小さい範囲において集塵効率が向上する傾向にある。しかし、その効果は小さい。
【0060】
一方、開口部比率(比率)の異なる対向電極120を隔列に配列(配置)した実施例1(AB)、実施例5(AF)では、集塵効率は、放電電流が小さい範囲においても、比較例1(AA)、比較例2(BB)に比べて向上する。特に、実施例1(AA)では、放電電流が150μAであっても、98.88%の集塵効率が得られる。
【0061】
また、実施例1(AB)と比較例2(BB)とから、実施例1(AB)に用いた開口部130(貫通穴131)を風下側に設けた対向電極120Bを全列に配列(配置)しても、放電電流が300μA以下の小さい範囲において、集塵効率の大きな向上は見込めないことが分かる。そして、ともに隔列に配列(配置)した実施例1(AB)と実施例5(AF)とから、開口部130(貫通穴131)を風下側に設けた対向電極120Bを用いた実施例1(AB)の方が、開口部130(貫通穴131)を全面に設けた実施例5(AF)より、放電電流が150μAと小さくても、集塵効率が向上することが分かる。
【0062】
すなわち、帯電部10に開口部130(貫通穴131)を風下側に設けた対向電極120Bと開口部130を有しない対向電極120Aとを隔列に配列(配置)することにより、放電電流が小さい範囲(150μA)における集塵効率が向上することが分かる。これは、放電電流が小さい範囲(150μA)において、浮遊微粒子に対する帯電(荷電)効率が向上したことによると考えられる。
【0063】
また、
図6(b)に示す集塵効率とオゾン濃度との関係から、ともに隔列に配列(配置)した実施例1(AB)と実施例5(AF)とでは、オゾン濃度を低い状態に維持しつつ、高い集塵効率が得られることが分かる。これは、
図6(a)に示した集塵効率の放電電流依存性から分かるように、実施例1(AB)及び実施例5(AF)では、低い放電電流において高い集塵効率が得られるためである。逆に、
図6(a)に示した集塵効率の放電電流依存性から分かるように、比較例1(AA)及び比較例2(BB)では、高い集塵効率を得るために放電電流を高くすることが必要となるため、オゾン濃度が増加してしまうことになる。つまり、実施例1(AB)及び実施例5(AF)では、オゾン濃度を4.0ppb以下の環境基準値(50ppb)を大きく下回る範囲において、95%以上の集塵効率が得られる。
【0064】
図7は、開口部130を備える対向電極が隔列に配列(配置)された実施例1、2、3と比較例1とに対して、開口部比率(比率)と集塵効率との関係をそれぞれの放電電流毎に示す図である。横軸は比率(%)、縦軸は集塵効率(%)である。放電電流は、150μA、250μA、450μAの場合を示す。
比較例1(AA)は比率0%である。実施例1(AB)の対向電極120Bは、風下側の開口部130に3mmφの貫通穴131が設けられ、比率13.8%である。実施例2(AC)の対向電極120Cは、3mmφの貫通穴131が全面に設けられ、比率27.6%である。実施例3(AD)の対向電極120Dは、風下側に切り欠き132が設けられ、比率50%である。
【0065】
図7に示すように、開口部130を有する対向電極120を隔列に配列(配置)されている実施例1(AB)、実施例2(AC)、実施例3(AD)が開口部130を有しない比較例1(AA)より、低い放電電流(例えば150μA)において、集塵効率が高いことが分かる。このことから、開口部比率(比率)は、10%以上且つ50%以下とすると、低い放電電流(例えば150μA)における集塵効率が向上する。しかし、比率13.8%の実施例1(AB)及び比率50%の実施例3(AD)が、比率27.6%の実施例2(AC)より、低い放電電流における集塵効率が高いことから、開口部比率(比率)が大きいほど集塵効率が向上するものではないことが分かる。開口部130(貫通穴131又は切り欠き132)が風下側に設けられていることがよいことが分かる。なお、開口部130は、単位面積当たりの貫通穴131の割合を開口度と呼ぶとすると、開口度は、風上側に比べ、風下側において高くなっていると捉えることができる。つまり、貫通穴131は、開口度が風上側から風下側に向けて高くなるように設ければよい。例えば、貫通穴131を風上側から風下側に向けて直径d
Bが大きくなるように、定められた間隔で設けてもよく、貫通穴131の密度(数)が風上側から風下側に向けて大きくなるようにしてもよい。
【0066】
また、切り欠き132などにより幅を狭くして開口部130を設ける対向電極120Dのような場合には、対向電極120Dの風上側の端部と対向電極120Aの風上側の端部との距離を、対向電極120Dの風下側の端部と対向電極120Aの風下側の端部との距離より小さくなるようにすればよい。
【0067】
図8は、比較例1及び開口部130に直径d
Bの異なる貫通穴131を備える対向電極120が隔列に配列(配置)された実施例1、4、5、6に対して、開口部比率(比率)と集塵効率との関係をそれぞれの放電電流毎に示す図である。横軸は比率(%)、縦軸は集塵効率(%)である。放電電流150μA、250μA、450μAの場合を示す。
【0068】
比較例1(AA)は、貫通穴131を有さず比率0%である。実施例4(AE)の対向電極120Eは、直径d
Bが0.25mmの貫通穴131が全面に設けられ、比率10%である。実施例1(AB)の対向電極120Bは、直径d
Bが3mmの貫通穴131が風下側に設けられ、比率13.8%である。比率18%は、
図4に示されていないが、直径d
Bが0.5mmの貫通穴131が全面に設けられている。実施例5(AF)の対向電極120Fは、直径d
Bが0.75mmの貫通穴131が全面に設けられ、比率36%である。実施例6(AD)の対向電極120Dは、直径d
Bが1.5mmの貫通穴131が全面に設けられ、比率50%である。そして、実施例1(AB)、実施例4(AE)、実施例5(AF)、実施例6(AD)及び比率18%の場合は、隔列の配列(配置)である。
【0069】
高い放電電流(450μA)では、対向電極120に設ける貫通穴131の直径d
Bによる、集塵効率の大きな差が見られない。しかし、低い放電電流(150μA、250μA)では、貫通穴131の直径d
Bが大きくなるにしたがい、集塵効率が向上する傾向にある。しかし、3mmφの貫通穴131を風下側に設けた実施例1(AB)における集塵効率が最も高くなっている。
【0070】
実施例1(AB)、実施例4(AE)、実施例5(AF)、実施例6(AD)及び比率18%の場合において、比較例1(AA)より集塵効率の向上が見られる。この結果及び実施例7の結果から、集塵効率の向上が見られる開口部130の貫通穴131の直径d
Bは、対向電極120の通風方向の幅W
Bの2.5%以上且つ60%以下である。また、集塵効率の向上が見られる開口部比率は、10%以上且つ50%以下である。
【0071】
よって、開口部130が切り欠き132で構成されている対向電極120Dの場合であっても、切り欠き132の深さd
Wを、対向電極120Dの幅W
Bの10%以上且つ50%以下に設定すればよい。つまり、対向電極120Dの対向電極120Aに対する電極面積の比率を、50%を超え且つ90%未満とすればよい。
【0072】
これまで、開口部130を風下側に設けた対向電極120を隔列に配列(配置)した場合(実施例1(AB)、実施例3(AD)、実施例7(AH))及び開口部130を全面に設けた対向電極120を隔列に配列(配置)した場合(実施例2(AC)、実施例4(AE)、実施例5(AF)、実施例6(AG))を説明した。
次に、開口部130を風上側に設けた対向電極120を隔列に配列(配置)した場合を説明する。
【0073】
図9は、比較例1及び比較例4、5の帯電部10における対向電極120と、それぞれの帯電部10を備える集塵装置1のそれぞれの放電電流での集塵効率及びオゾン濃度とを示す表である。比較例1は、前述したように、対向電極120がAAの全列の配列である。一方、比較例4、5は、比較例4がAB′の隔列、比較例5がAD′の隔列の配列となっている。放電電流は、150μA、250μA、450μAである。
以下では、比較例4、5における対向電極120B′、120D′を説明する。
【0074】
図10は、比較例4、5における対向電極120B′、120D′を説明する側面図である。
図10(a)は、比較例4における対向電極120B′、
図10(b)は、比較例5における対向電極120D′を示す。
【0075】
図10(a)に示す対向電極120B′は、直径3mm(3mmφ)の貫通穴131を、風上側においてY方向に一列設けられている。つまり、対向電極120B′は、
図2(d)に示した対向電極120Bの風上側と風下側とを入れ替えた構造である。この場合、比率は、13.8%である。
図10(b)に示す対向電極120D′は、開口部130が風上側に設けられた切り欠き132′により構成されている。つまり、対向電極120D′は、
図4(b)に示した対向電極120Dの風上側と風下側とを入れ替えた構造である。この場合、比率は、50%である。
なお、比較例1(AA)の比率は、0%である。
【0076】
図11は、比較例1(AA)及び開口部を上流に備える対向電極が隔列に配列(配置)された比較例4(AB′)、比較例5(AD′)における開口部比率(比率)と集塵効率との関係をそれぞれの放電電流毎に示す図である。横軸は比率(%)、縦軸は集塵効率(%)である。放電電流は、150μA、250μA、450μAである。
図11から、比較例4(AB′)及び比較例5(AD′)のように風上側に開口部130(貫通穴131、切り欠き132)を設けても、放電電流によらず、開口部130を備えない比較例1に対して集塵効率の向上は見られない。これは、高圧電極110に対向する部分に対向電極120がなく、電界が印加されづらいことによる。
つまり、風下側に開口部130を設けることがよいことが分かる。そして、貫通穴131で開口部130を構成する場合には、貫通穴131の少なくとも重心は、高圧電極110より風下側にあることがよい。なお、貫通穴131の重心とは、貫通穴131が穴ではなく、板状の部材であるとした場合の重心をいう。貫通穴131の平面形状が円であれば、貫通穴131の重心は、貫通穴131の中心になる。
【0077】
(イオン数の測定)
低い放電電流(150μAなど)における集塵効率の向上は、低い放電電流におけるイオンの発生数(イオン数)が増加したことによると考えられる。つまり、集塵効率の向上は、イオンの発生数が多くなったことにより、イオンが付着した浮遊微粒子が多くなり、集塵効率が向上したものと考えられる。
これを確認するために、実施例1(AB)、実施例3(AD)及び比較例1(AA)において、帯電部10から発生するイオンの発生数(イオン数)を計測した。なお、実施例1(AB)、実施例3(AD)は、風下側に開口部130を設けた対向電極120を隔列に配列した場合である。比較例1(AA)は、開口部130を設けない対向電極120を全列に配列した場合である。
【0078】
ここでは、集塵装置1における集塵部20がない状態において、帯電部10から発生するイオン数を計測した。風速1m/秒の状態で、帯電部10から風下側30cmの位置に設けたイオンカウンタにより、帯電部10において発生するイオン数を計測した。
【0079】
図12は、実施例1(AB)、実施例3(AD)及び比較例1(AA)において、計測されたイオン数と帯電部10における放電電流との関係を示す図である。横軸は、放電電流(μA)、縦軸は、イオン数(×1000個/cm
3)である。なお、縦軸のイオン数は、放電電流150μA、250μA、350μA、450μAにおいて、10秒毎のサンプリングを10分間行った計測値の平均値である。
【0080】
図12から、実施例1(AB)及び実施例3(AD)は、比較例1(AA)に比べ、いずれの放電電流に対しても、イオン数が多い。特に、低い放電電流(150μA、250μA)において、イオン数の差が大きい。
このことから、風下側に開口部130を設けた対向電極120を隔列に配列することにより、イオン数が増加することが分かる。
【0081】
イオンは高圧電極110のごく近傍の放電空間で発生する。そして、イオンは、通風に伴って風下に移動する。この際、イオンが浮遊微粒子に付着して、浮遊微粒子が帯電(荷電)する。よって、イオン数が多いほど、帯電した浮遊微粒子の数も増加する。帯電した浮遊微粒子の数が増加することで、集塵効率が向上する。
【0082】
ここで、実施例1(AB)、実施例3(AD)及び比較例1(AA)において、高圧電極110は、同じ構成である。つまり、高圧電極110は、直径90μmのタングステン線である。そして、実施例1(AA)及び実施例3(AD)は、風下側に開口部130を有している。つまり、高圧電極110近傍は、対向電極120の開口部130でない部分が対向している。そして、高圧電極110と対向電極120との間の距離D
Gも同じ、10mmである。このことから、実施例1(AB)、実施例3(AD)及び比較例1(AA)において、高圧電極110のごく近傍で発生する放電の放電体積には、差がないと考えられる。つまり、発生するイオン数には、差がないと考えられる。
【0083】
しかし、
図12に示したように、実施例1(AB)、実施例3(AD)及び比較例1(AA)において、風下側で計測したイオン数が異なっている。このことから、高圧電極110において発生したイオンが、集塵部20に至るまでに、消失することが考えられる。つまり、イオンは、対向電極120に静電的に引き寄せられて付着したり衝突したりして、電荷を失う(中和される)ことが考えられる。
【0084】
そして、風下側に開口部130を設けた実施例1(AB)及び実施例3(AD)において、風下側で計測したイオン数が多い。このことから、対向電極120の風下側に設けられた開口部130により、イオンが対向電極120に付着又は衝突する確率が減少しているものと考えられる。
【0085】
なお、開口部130は、
図4の実施例2(AC)、実施例4(AE)、実施例5(AF)、実施例6(AG)に示すように、開口部130が全面に設けられた対向電極120を用いても隔列に配列された場合、比較例1に比べ集塵効率が向上している。
【0086】
しかし、比較例2(BB)、比較例3(CC)のように、開口部130が設けられた対向電極120を用いても、全列に配列した場合には集塵効率の向上が見られていない。このことから、開口部130が設けられた対向電極120と開口部130が設けられていない対向電極120とを隔列に配列したことにより、イオンが消失し(中和され)にくくなっている。つまり、隣接する対向電極120間に発生する電界が、イオンの消失(中和)を抑制していると考えられる。
【0087】
なお、帯電部10にイオンが存在する時間(滞留時間)が長いほど、浮遊微粒子を帯電(荷電)する確率が高くなる。このため、高圧電極110を対向電極120の中心を含む風上側に配置するのがよい。逆に、高圧電極110を、対向電極120の風上側の端部より風上側にずらすと、高圧電極110近傍の電界強度が低下して好ましくない。
【0088】
なお、開口部130を備える対向電極120を用いた場合にイオン数が増加する要因として、気流の乱れ(乱流)が生じ、イオンの滞留時間が延びたことによるとも考えられた。しかし、シミュレーションなどによると、1m/秒の気流の流れでは、気流の乱れは認められなかった。
【0089】
特に、低い放電電流ではイオンの発生数が少ない。しかし、発生数の少ないイオンの消失(中和)を抑制することにより、浮遊微粒子の帯電(荷電)効率が向上し、低い放電電流においても集塵効率が高くできる。そして、放電電流を低くすることで、オゾン濃度を低く抑制できる。つまり、高い集塵効率とオゾン濃度の抑制とを両立させることができる。
【0090】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、対向電極120の構成により、高圧電極110の周辺の放電空間において発生したイオンの消失(中和)を抑制して、低い放電電流における集塵効率の向上を図った。
第2の実施の形態では、高圧電極110の構成により、オゾンの発生が少ない、低い放電電流における集塵効率の向上を図る。
【0091】
図13は、第2の実施の形態が適用される集塵装置2の一例を示す図である。
第2の実施の形態が適用される集塵装置2は、帯電部10、集塵部20、ファン30、及び、これらを収納する筐体40を備える。なお、帯電部10を除いて、集塵装置2は、第1の実施の形態が適用される集塵装置1と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。なお、第2の実施の形態が適用される集塵装置2の備える帯電部10は、帯電装置の他の一例である。
【0092】
(帯電部10)
帯電部10は、複数の高圧電極111と、複数の高圧電極110のそれぞれに対向するように設けられた複数の対向電極120とを備える。
高圧電極111は、導電性を有する線(ワイヤ)状の部材(線状部材)で構成されている。なお、高圧電極111は、長方形の角部が弧状となった断面形状を有している。ここでは、この断面形状を、長円形(長円形状)(Oval又はRacing track shape)と表記する。
【0093】
対向電極120は、導電性を有する板状の部材(板状部材)で構成されている。そして、対向電極120は、板状部材の平面が通風方向に沿う方向に設けられている。なお、形状が同じ(電極面積が同じ)対向電極120が、全列に配列(配置)されている。
図13では、対向電極120は、
図2(c)に示した対向電極120Aである。対向電極120Aは、開口部130を備えない。
【0094】
(実施例8)
図14は、実施例8の帯電部10を詳説明する図である。
図14(a)は、帯電部10の斜視図、
図14(b)は、帯電部10の断面図(Y方向断面図)、
図14(c)は、高圧電極111の断面図である。
図14(c)に示すように、高圧電極111の長円状の断面は、四角形の角部が曲率半径r
Wの弧状になっている。なお、四角形の長手方向を長辺長W
W、短手方向を短辺長T
Wとする。
そして、
図14(a)、(b)に示すように、高圧電極111は、四角形の長手方向が対向電極120Aの表面に平行な方向に配置されている。なお、高圧電極111の四角形の長手方向は、対向電極120Aの表面に対して斜めになっていてもよく、直交していてもよい。
【0095】
コロナ放電は、電界の高い部分で発生する。この部分の体積を放電体積と表記する。すると、断面が円の線状の高圧電極110(
図2(b)参照)では、直径が小さいほど、高圧電極110の周りの電界が高くなり、放電体積が小さくなる。電界が高いため、発生するイオン数が多くなるが、放電体積が小さいためオゾンの発生は抑えられる。
しかし、高圧電極110の直径d
Bを小さくする、つまり細くすると、取り扱いが難しくなる。例えば、タングステン(W)で構成した高圧電極110は、定められた部分への取り付けがしにくい。曲がるとそのままの状態になり、放電特性が不均一になる。また、折れやすい。
【0096】
断面が長円形状の高圧電極111は、
図14(c)に示すように、断面の曲率半径r
Wが小さい領域αでコロナ放電が発生する。そして、長方形の長手方向の中央部である領域βでは、コロナ放電が発生しにくい。そこで、断面の角部の曲率半径r
Wを小さくすることで、放電体積が小さくなり、発生するイオン数を多くしつつ、オゾン発生が抑えられる。
【0097】
実施例8の帯電部10における高圧電極111は、断面の角部の曲率半径r
Wが短辺長T
Wの1/2である。高圧電極111は、長辺長W
Wが150μm、短辺長T
Wが50μmである。これにより、直径の断面が円形の高圧電極110を直径で二分割し、間を広げたと同じになる。つまり、第1の実施の形態で説明した直径90μmの高圧電極110を、直径50μmにしたと同様である。この断面形状であれば、曲がったり折れたりしにくく、取り扱いが容易である。
【0098】
図15は、実施例8、比較例1及び他の実施例、比較例の帯電部10における高圧電極110,111及び対向電極120と、それぞれの帯電部10を備える集塵装置1におけるそれぞれの放電電流での集塵効率及びオゾン濃度とを示す表である。
比較例1は、第1の実施の形態で説明した。他の実施例9、比較例6、7は次に説明する。放電電流は、150μA、250μA、450μAである。
【0099】
図16は、実施例9、比較例6、7の帯電部10を説明する図である。
図16(a)は、実施例9、
図16(b)は、比較例6、
図16(c)は、比較例7を示す。
実施例9は、実施例8で示した長円形状の高圧電極111と、第1の実施の形態の実施例1で示した隔列で配列した対向電極120A、120Bとを組み合わせたものである。
【0100】
比較例6は、実施例8の高圧電極111の代わりに、断面が正方形状の高圧電極112を用いる。断面が正方形状の高圧電極112は、ステンレス鋼(SUS)で構成され、一辺が70μmである。比較例7は、実施例8の高圧電極111の代わりに、断面が長方形状の高圧電極113を用いる。断面が長方形状の高圧電極113は、ステンレス鋼(SUS)で構成され、長手方向の長さが150μm、短手方向の長さが50μmである。そして、高圧電極113は、長手方向が対向電極120Aの表面に平行に配置されている。なお、比較例6、7では、開口部130を備えない対向電極120Aを全列に配列している。
【0101】
図17は、実施例8(AA)、実施例9(AB)及び比較例1(AA)における集塵効率の放電電流依存性、及び、集塵効率とオゾン濃度との関係を示すグラフである。
図17(a)は、集塵効率の放電電流依存性、
図17(b)は、集塵効率とオゾン濃度との関係を示す。
図17(a)は、横軸が放電電流(μA)、縦軸が集塵効率(%)である。
図17(b)は、横軸がオゾン濃度(ppb)、縦軸が集塵効率(%)である。
【0102】
図17(a)において、比較例1(AA)では、集塵効率は、放電電流とともに大きくなる。しかし、放電電流が450μAにならないと、集塵効率が99%に達しない。
一方、長円形状の高圧電極111を用いた実施例8(AA)では、集塵効率は、放電電流が低い範囲(150μA、250μA)においても、比較例1(AA)に比べて向上している。つまり、長円形状の高圧電極111により、イオンの発生量が増大していることが分かる。
【0103】
また、長円形状の高圧電極111を用いるとともに、隔列で配列した対向電極120A、120Bとを用いた実施例9(AB)では、放電電流が低い範囲において、さらに集塵効率が向上している。
【0104】
そして、
図17(b)に示す集塵効率とオゾン濃度との関係から、低い放電電流で高い集塵効率が得られる実施例8(AA)及び実施例9(AB)において、高い集塵効率を維持しつつ、オゾン濃度を低く抑制できることが分かる。
【0105】
図18は、実施例8(AA)、比較例1(AA)、比較例6(AA)及び比較例7(AA)における集塵効率の放電電流依存性、及び、集塵効率とオゾン濃度との関係を示すグラフである。
図18(a)は、集塵効率の放電電流依存性、
図18(b)は、集塵効率とオゾン濃度との関係を示す。縦軸、横軸は、
図17(a)、(b)と同じである。
【0106】
図18(a)において、断面が正方形状の高圧電極112を用いた比較例6(AA)、及び断面が長方形状の高圧電極113を用いた比較例7(AA)は、放電電流が低い範囲(150μA,250μA)において、比較例1(AA)より、集塵効率が低い。また、
図18(b)に示す集塵効率とオゾン濃度との関係においても、比較例6(AA)、比較例7(AA)高い集塵効率を得ようとすると、オゾン濃度が高くなってしまうことが分かる。
【0107】
以上説明したように、高圧電極111の長円形状の角部は、弧状であることが好ましく、90°でないことがよい。つまり、高圧電極111の長円形状の角部は、曲率半径r
Wが短辺長T
Wの5%以上且つ50%(1/2)以下の弧状であるとよい。例えば、短辺長T
Wは、50μm〜100μm、長辺長W
Wは、0.6mm〜1.0mmである。そして、長辺長W
Wは、短辺長T
Wに対して1を超え且つ4以下がよい。短辺長T
Wを小さく(薄く)できれば、断面が円形状の細い高圧電極110を用いたと同様になる。なお、長辺長W
Wが、短辺長T
Wに対して4を超えると、線状部材として加工しづらい。
また、高圧電極111は、第1の実施の形態で説明した高圧電極110と同様の材料で構成されればよい。
【0108】
そして、
図17(b)に示す集塵効率とオゾン濃度との関係から、低い放電電流で高い集塵効率が得られる実施例8(AA)及び実施例9(AB)において、高い集塵効率を維持しつつ、オゾン濃度を低く抑制できることが分かる。
【0109】
[第3の実施の形態]
第1の実施の形態が適用される集塵装置1及び第2の実施の形態が適用される集塵装置2では、高圧電極210と対向電極220とを用いた静電気を利用した集塵部20を備えていた。
第3の実施の形態が適用される集塵装置3では、集塵フィルタを用いる。
【0110】
図19は、第3の実施の形態が適用される集塵装置3の一例を示す図である。
第3の実施の形態が適用される集塵装置1は、帯電部10、集塵フィルタ50、脱臭フィルタ60、ファン30、及び、これらを収納する筐体40を備える。
図1に示した第1の実施の形態が適用される集塵装置1の集塵部20が、集塵フィルタ50に置き換えられている。なお、脱臭フィルタ60は、帯電部120の前面(上流側)又は背面(下流側)、集塵フィルタ50の背面(下流側)に適宜備えてもよい。
そして、帯電部10は、第1の実施の形態が適用される集塵装置1、第2の実施の形態が適用される集塵装置2において、実施例として示した帯電部10と同じであってもよい。
【0111】
集塵フィルタ50は、繊維フィルタであって、エレクトレット加工されていることで、帯電部10で帯電(荷電)した浮遊微粒子が吸着しやすい。また、集塵フィルタ50は、折り曲げ加工(プリーツ加工)により、表面積を大きくしてもよい。
【0112】
実施例1から実施例9で示した数値は、一例であって、これらに限定されないことは明らかである。
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な組み合わせや変形を行っても構わない。