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特開2019-116468オゴノリ科植物の水抽出物またはその発酵体の使用、ならびに神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物および/または健康食品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-116468(P2019-116468A)
(43)【公開日】2019年7月18日
(54)【発明の名称】オゴノリ科植物の水抽出物またはその発酵体の使用、ならびに神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物および/または健康食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/04 20060101AFI20190627BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190627BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20190627BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20190627BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190627BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20190627BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20190627BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20190627BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20190627BHJP
【FI】
   A61K36/04
   A61P25/00
   A61P25/24
   A61P25/22
   A61P25/28
   A61P25/18
   A61K35/747
   A61K9/14
   A23L33/105
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-235522(P2018-235522)
(22)【出願日】2018年12月17日
(31)【優先権主張番号】15/845,394
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】潘 一紅
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲ウェイ▼萱
(72)【発明者】
【氏名】呂 居勳
(72)【発明者】
【氏名】▲温▼ 淑芳
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 信頡
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD67
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF13
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC01
4C076FF68
4C076GG05
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA04
4C087BC56
4C087BC58
4C087CA11
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA18
4C088AA14
4C088AC16
4C088AD22
4C088BA04
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA04
4C088MA43
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA12
4C088ZA15
4C088ZA18
(57)【要約】
【課題】神経疾患を治療および/または緩和する方法、ならびに医薬組成物または健康食品を提供する。
【解決手段】本開示は、神経疾患を治療および/または緩和する方法であって、有効量のオゴノリ科植物の水抽出物またはその発酵体を、それを必要とする対象に投与して、その神経疾患を治療および/または緩和する工程を含む方法を提供する。対象は人以外の動物であり、またオゴノリ科植物の水抽出物の発酵体は乳酸菌発酵体である。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経疾患を治療および/または緩和する方法であって、
有効量のオゴノリ科(family Gracilariaceae)に属する植物の水抽出物または前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を、それを必要とする対象に投与して、前記対象の神経疾患を治療および/または緩和する工程を含み、
前記対象が人以外の動物であり、
前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体が乳酸菌により形成された発酵体である、方法。
【請求項2】
前記オゴノリ科に属する植物には、クビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)、グラシラリア・コフォルボイズ(Gracilaria coforvoides)、オオオゴノリ(Gracilaria gigas)、ツルシラモ(Gracilaria chorda)、グラシラリア・リチェノイズ(Gracilaria lichenoides)、またはシラモ(Gracilaria compressa)が含まれる、請求項1に記載の神経疾患を治療および/または緩和する方法。
【請求項3】
前記乳酸菌がラクトバチルス属(genus Lactobacillus)に属する細菌である、請求項1または請求項2に記載の神経疾患を治療および/または緩和する方法。
【請求項4】
前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物が、
オゴノリ科に属する植物に対し水を用いて加熱還流のプロセスを行って、抽出液の形態の水抽出物を得る工程、または
オゴノリ科に属する植物に対し水を用いて加熱還流のプロセスを行って水抽出物を得、そして前記水抽出物を乾燥して抽出粉末の形態で水抽出物を得る工程、
にて得られる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の神経疾患を治療および/または緩和する方法。
【請求項5】
前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体が、
(a)活性化した乳酸菌を水溶液に加える工程であって、前記水溶液が、抽出液の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を含むか、または前記水溶液が、抽出粉末の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を水に加えることにより形成される工程と、
(b)前記水溶液に対し発酵プロセスを行って、前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する工程と、
を含む方法を用いて形成される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の神経疾患を治療および/または緩和する方法。
【請求項6】
前記工程(a)において、前記水溶液が糖類をさらに含む、請求項5に記載の神経疾患を治療および/または緩和する方法。
【請求項7】
オゴノリ科に属する植物の水抽出物、または乳酸菌により形成された発酵体である前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体と、
医薬的に許容される担体または塩と、
を含む神経疾患の治療および/または神経疾患を緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項8】
前記オゴノリ科に属する植物には、クビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)、グラシラリア・コフォルボイズ(Gracilaria coforvoides)、オオオゴノリ(Gracilaria gigas)、ツルシラモ(Gracilaria chorda)、グラシラリア・リチェノイズ(Gracilaria lichenoides)、またはシラモ(Gracilaria compressa)が含まれる、請求項7に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項9】
前記乳酸菌がラクトバチルス属に属する細菌である、請求項7または8に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項10】
前記ラクトバチルス属に属する細菌には、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスブルガリスクス(Lactobacillus bulgaricusk)、またはラクトバチルスガセリ(Lactobacillus gasseri)が含まれる、請求項9に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項11】
前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物が、
オゴノリ科に属する植物に対し水を用いて加熱還流のプロセスを行って、抽出液の形態の水抽出物を得る工程、または
オゴノリ科に属する植物に対し水を用いて加熱還流のプロセスを行って水抽出物を得、そして前記水抽出物を乾燥して抽出粉末の形態で水抽出物を得る工程、
にて得られる、請求項7〜10のいずれか1項に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項12】
前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体が、
(a)活性化した乳酸菌を水溶液に加える工程であって、前記水溶液が、抽出液の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を含むか、または前記水溶液が、抽出粉末の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を水に加えることにより形成される、工程と、
(b)前記水溶液に対し発酵プロセスを行って、前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する工程と、
を含む方法を用いて形成される、請求項7〜11のいずれか1項に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項13】
前記工程(a)において、前記水溶液が前記抽出液から構成されているか、または前記水溶液が前記抽出粉末を水に加えることによってのみ形成されている、請求項12に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項14】
前記工程(a)において、前記水溶液が糖類をさらに含む、請求項12に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項15】
前記神経疾患には、うつ病、双極性障害、不安障害、自閉症または認知症が含まれる、請求項7〜14のいずれか1項に記載の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品。
【請求項16】
微生物を培養する培地としてのオゴノリ科に属する植物の水抽出物の使用。
【請求項17】
前記オゴノリ科に属する植物には、クビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)、グラシラリア・コフォルボイズ(Gracilaria coforvoides)、オオオゴノリ(Gracilaria gigas)、ツルシラモ(Gracilaria chorda)、グラシラリア・リチェノイズ(Gracilaria lichenoides)、またはシラモ(Gracilaria compressa)が含まれる、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記培地が、抽出液の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を含有するか、または前記培地が、抽出粉末の形態の前記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を水に添加することによって形成されている、請求項16または請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記培地中の前記抽出粉末の含有量が1〜20%(w/v)である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記培地が糖類をさらに含む、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記培地中の前記糖類の含有量が約1〜5%(w/v)である、請求項20に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オゴノリ科(Gracilariaceae)植物の水抽出物またはその発酵体の使用、ならびに神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物および/または健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
世界中で65歳以上の年齢の人口は2050年までに20億を超え、全人口の20%を占めることになるであろう。人口の高齢化は不可避的な趨勢である。高齢者に依存する人口の比率が高まると、サポートの負担が増すと共に、医療費が年々増加することになる。
【0003】
老化による疾患のうち神経変性疾患は深刻である。加齢は、認知、論理、速度、記憶、言語能力などのような神経系に関連する能力の低下を促進し、老化に関連する疾患を引き起こす。WHOの統計によれば、60歳を超える人口の20%以上が精神疾患または神経疾患を患い、この集団中の6.6%が障害者となってしまっており、そのうち最もよく見られる高齢者の神経疾患または精神疾患はアルツハイマー病である。また、この人口の約3.8%は不安障害による影響を受けている。これら3つの疾患はいずれも神経変性疾患である。
【0004】
よって、老化を阻止するかまたは遅らせ、かつ神経変性疾患を予防すると共に緩和することは、重要かつ緊急の課題である。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、神経疾患を治療および/または緩和する方法であって、有効量のオゴノリ科に属する植物の水抽出物、またはオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を、それを必要とする対象に投与して、該対象の神経疾患を治療および/または緩和する工程を含み、該対象はヒト以外の動物であり、かつ、該オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体が乳酸菌により形成された発酵体である、方法を提供する。
【0006】
本開示はまた、オゴノリ科に属する植物の水抽出物、またはオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体であって乳酸菌により形成された発酵体と、医薬的に許容される担体または塩と、を含む神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品も提供する。
【0007】
本開示は、オゴノリ科に属する植物の水抽出物を培地として用い微生物を培養する工程を含む微生物を培養する方法をさらに提供する。
【0008】
また、本開示は、微生物を培養するための培地としてのオゴノリ科に属する植物の水抽出物の使用も提供する。
【0009】
添付の図面を参照しながら、以下の実施形態において詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明および実施例を精査することにより、より十分に理解することができる。
図1A〜1Cは、ブドウ糖を添加したクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)水抽出物含有水溶液(5%(w/v)クビレオゴノリ水抽出物+1%(w/v)ブドウ糖)の試験結果を示している。図1Aは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したかもしくは播種していないMRS液体培地またはクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液の濁度変化を示している。図1Bは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したかもしくは播種していないMRS液体培地またはクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液のpH値の変化を示している。図1Cは、MRS液体培地およびクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液中のラクトバチルスプランタラムの生育曲線を示している。試験群Aは細菌を播種していないMRS液体培地であり、試験群Bは活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地であり、試験群Cは細菌を播種していないクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液であり、試験群Dは活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液である。
【0011】
図2は、MRS液体培地およびクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(10%(w/v)クビレオゴノリ水抽出物)中のラクトバチルスプランタラムの生育曲線を示している。試験群Aは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地であり、試験群Bは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液である。
【0012】
図3Aは、本開示の一実施形態のオープンフィールド試験に用いた試験箱100の外観全体の概略図である。
【0013】
図3Bは、本開示の一実施形態のオープンフィールド試験に用いた試験箱100内側底部の概略図である。
【0014】
図4A〜4Eは本開示の一実施形態のオープンフィールド試験の結果を示している。図4Aは、オープンフィールド試験においてマウスが中央エリアに訪れた回数を示している。図4Bは、オープンフィールド試験においてマウスが中央エリアに滞在した時間の比率を示している。図4Cは、オープンフィールド試験においてマウスが移動した総距離を示している。図4Dは、オープンフィールド試験においてマウスが立ち上がった回数を示している。図4Eは、オープンフィールド試験におけるマウスの移動軌跡を示している。試験群Aはブランク群であり、試験群Bはコルチコステロンのみで誘発したマウスであり、試験群Cは、コルチコステロンで誘発し、かつ乳酸菌を含む飼料を投与した(2×1010CFU/日)マウスであり、試験群Dは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物(2wt%)を含む飼料を投与したマウスであり、試験群Eは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物の発酵体(2wt%)を含む飼料を投与したマウスである。統計的有意差は、SPSS統計ソフトウェア(SPSS Institute, Inc., Chicago, IL, USA)を用い、ダンカン検定の単変量分散分析を行うことにより分析した。0.05未満のp値は有意差とみなされる。同じ文字エレメントを有する群間に有意差はない。共通のエレメントの文字を持たない群間には有意差がある。
【0015】
図5は、本開示の一実施形態の明暗箱(LDB)試験に用いた試験箱200の概略図である。
【0016】
図6Aおよび6Bは本開示の一実施形態の明暗箱試験の結果を示している。図6Aは、マウスが明室に滞在した時間を示している。図6Bは、マウスが明室と暗室に出入りした回数を示している。試験群Aはブランク群であり、試験群Bはコルチコステロンのみで誘発したマウスであり、試験群Cは、コルチコステロンで誘発し、かつ乳酸菌を含む飼料を投与(2×1010CFU/日)したマウスであり、試験群Dは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物(2wt%)を含む飼料を投与したマウスであり、試験群Eは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物の発酵体(2wt%)を含む飼料を投与したマウスである。統計的有意差は、SPSS統計ソフトウェア(SPSS Institute, Inc., Chicago, IL, USA)を用い、ダンカン検定の単変量分散分析を行うことにより分析した。0.05未満のp値は有意差とみなされる。同じ文字エレメントを有する群間に有意差はない。共通のエレメントの文字を持たない群間には有意差がある。
【0017】
図7Aおよび7Bは本開示の一実施形態のショ糖水嗜好性試験の結果を示している。図7Aは、ショ糖水嗜好性試験におけるマウスのショ糖水嗜好性を示している。図7Bは、ショ糖水嗜好性試験におけるマウスの総水分摂取量を示している。試験群Aはブランク群であり、試験群Bはコルチコステロンのみで誘発したマウスであり、試験群Cはコルチコステロンで誘発し、かつ乳酸菌を含む飼料を投与(2×1010CFU/日)したマウスであり、試験群Dは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物(2wt%)を含む飼料を投与したマウスであり、試験群Eは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物の発酵体(2wt%)を含む飼料を投与したマウスである。統計的有意差は、SPSS統計ソフトウェア(SPSS Institute, Inc., Chicago, IL, USA)を用い、ダンカン検定の単変量分散分析を行うことにより分析した。0.05未満のp値は有意差とみなされる。同じ文字のエレメントを有する群間に有意差はない。共通のエレメントの文字を持たない群間には有意な差がある。
【0018】
図8Aおよび8Bは本開示の一実施形態のマウスの血清中のストレスホルモンの測定結果を示している。図8Aは、マウスの血清中のコルチコステロン濃度を示している。図8Bは、マウスの血清中のアドレナリン濃度を示している。試験群Aはブランク群であり、試験群Bはコルチコステロンのみで誘発したマウスであり、試験群Cは、コルチコステロンで誘発し、かつ乳酸菌を含む飼料を投与(2×1010CFU/日)したマウスであり、試験群Dは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物(2wt%)を含む飼料を投与したマウスであり、試験群Eは、コルチコステロンで誘発し、かつクビレオゴノリ水抽出物の発酵体(2wt%)を含む飼料を投与したマウスである。統計的有意差は、SPSS統計ソフトウェア(SPSS Institute, Inc., Chicago, IL, USA)を用い、ダンカン検定の単変量分散分析を行うことにより分析した。0.05未満のp値は有意差とみなされる。同じ文字のエレメントを有する群間に有意差はない。共通のエレメントの文字を持たない群間には有意差がある。
【発明の詳細な説明】
【0019】
以下の詳細な記載においては、説明の目的で、開示される実施形態が十分に理解されるよう、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な説明が無くとも一つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であることは、明らかであろう。また、図を簡潔にするため、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0020】
本開示は、神経疾患を治療および/または緩和する方法を提供する。該神経疾患を治療および/または緩和する方法は、限定されないが、有効量のオゴノリ科に属する植物の水抽出物またはオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を、それを必要とする対象に投与して、該対象の神経疾患を治療および/または緩和する工程を含み得る。
【0021】
上述の神経疾患は、特に限定されない任意の神経に関連する疾患、例えばうつ病、双極性障害、不安障害、自閉症、認知症などであり得るが、これらに制限されることはない。
【0022】
本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法において、オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体は、乳酸菌により形成された発酵体であってよいが、これに限定されることはない。
【0023】
上述したオゴノリ科に属する植物の例には、クビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)、グラシラリア・コフォルボイズ(Gracilaria coforvoides)、オオオゴノリ(Gracilaria gigas)、ツルシラモ(Gracilaria chorda)、グラシラリア・リチェノイズ(Gracilaria lichenoides)、シラモ(Gracilaria compressa)が含まれ得るが、これらに限定されることはない。一実施形態において、上記オゴノリ科に属する植物はクビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)であってよい。
【0024】
また、上述の乳酸菌にはラクトバチルス属(genus Lactobacillus)細菌が含まれ得るが、これに限定されることはない。該ラクトバシルス属細菌の例には、限定はされないが、例えばラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスブルガリスクス(Lactobacillus bulgaricusk)、ラクトバチルスガセリ(Lactobacillus gasseri)が含まれ得る。一実施形態において、上述の乳酸菌はラクトバチルス属細菌であってよく、かつラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)であってよい。
【0025】
本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法において、一実施形態では、上記オゴノリ科に属する植物はクビレオゴノリであってよく、また上記乳酸菌はラクトバチルスプランタルムであってよい。
【0026】
水が抽出溶媒として用いられる限り、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物を得る方法に特に限定はない。例えば、当該分野において周知である任意の植物の水抽出物の抽出法によって得ることもできるし、または操作者が状況に応じて適度にパラメータ調整を行うことによって得ることもできる。
【0027】
一実施形態において、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物は、以下に例示する工程より得ることができるが、これに限定されることはない。例えば、水を用いオゴノリ科に属する植物に加熱還流のプロセスを行って抽出液の形態で水抽出物を得るか、または水を用いオゴノリ科に属する植物に加熱還流のプロセスを行って水抽出液を得、その水抽出液を乾燥させて抽出粉末の形態で水抽出物を得る。
【0028】
上記実施形態において、オゴノリ科に属する植物と水との重量比は約1:5〜100、例えば1:5〜10、1:10〜15、1:10〜20、1:15〜20であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態では、オゴノリ科に属する植物と水との重量比は約1:10〜15であり得る。
【0029】
さらに、上記実施形態において、加熱還流のプロセスの温度は約80〜100℃、例えば約80℃、85℃、90℃、95℃、100℃であってよいが、これらに限定はされない。
【0030】
加えて、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を得る方法に特に制限はなく、オゴノリ科に属する植物の水抽出物が発酵するものであればよい。
【0031】
一実施形態では、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体は、以下の工程を含む方法を用いて形成することができる。
【0032】
先ず、活性化した乳酸菌を水溶液中に加える。この水溶液は、任意の上記抽出液の形態のオゴノリ科に属する植物の水抽出物を含有しているものであってもよいし、またはこの水溶液が、任意の上記抽出粉末の形態のオゴノリ科に属する植物の水抽出物を水に加えて形成されたものであってもよい。
【0033】
上記水溶液中、上記抽出粉末の含有量は、約1〜20%(w/v)、例えば1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)であり得るが、これらに限定はされない。
【0034】
一実施形態において、上記水溶液は上記抽出液から構成される。
【0035】
別の実施形態において、上記水溶液は、上記抽出粉末を水に加えることによってのみ形成され、この実施形態では、上記抽出粉末の含有量は、約1〜20%(w/v)、例えば1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態において、上記水溶液中、上記抽出粉末の含有量は約10%(w/v)であり得る。
【0036】
また、一実施形態では、活性化した乳酸菌を水溶液に加える上記工程において、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれかに加え、上記水溶液は糖類をさらに含んでいてよい。
【0037】
上記糖類が上記水溶液中に存在する場合、上記糖類に特定の制限はなく、例えばこれらに限定はされないがブドウ糖、ショ糖および乳糖のような、乳酸菌に利用され得る糖類であればよい。一実施形態では、上記糖類はブドウ糖である。また、上記糖類が上記水溶液中に存在する場合、水溶液中の上記糖類の含有量は、約1〜5%(w/v)、例えば、約1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)であってよいが、これらに限定はされない。一実施形態では、上記糖類が上記水溶液中に存在する場合、水溶液中の上記糖類の含有量は約1%(w/v)であり得る。特定の一実施形態において、上記糖類が上記水溶液中に存在する場合、上記抽出粉末の含有量は約5%(w/v)であってよく、上記糖類はブドウ糖であり、水溶液中の上記ブドウ糖の含有量は約1%(w/v)であり得る。
【0038】
次いで、活性化した乳酸菌を水溶液に加える上記工程の後、水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する。
【0039】
水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する上記工程において、上記発酵プロセスの温度に特定の制限はなく、乳酸菌の生育に適した温度であればよい。上記発酵プロセスの温度は約34〜40℃、例えば34℃、35℃、36℃、36.5℃、37℃、37.5℃、40℃であってよいが、これらに限定はされない。一実施形態では、上記発酵プロセスの温度は約37℃であり得る。
【0040】
また、水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する上記工程において、上記発酵プロセスに要する時間に特定の制限はなく、必要に応じて調整可能である。上記発酵プロセスに要される時間は、約16〜約72時間、例えば約16時間、約24時間、約48時間、約72時間であってよいが、これらに限定されることはない。一実施形態において、上記発酵プロセスに要される時間は約48時間であり得る。
【0041】
特定の一実施形態では、水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する上記工程において、上記発酵プロセスの温度を約37℃とし、上記発酵プロセスに要される時間を約48時間とすることができる。
【0042】
加えて、一実施形態において、オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する上記方法は、水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する工程の後に、オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を乾燥する工程をさらに含んでいてよい。
【0043】
また、本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法において、一実施形態では、オゴノリ科に属する植物はクビレオゴノリであり、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体は、以下の工程を含む方法を用いて形成される。
【0044】
先ず、活性化したラクトバチルスプランタルムを水溶液中に加える。上記水溶液は、抽出液の形態のクビレオゴノリ水抽出物を含有しているものであってもよいし、または上記水溶液は、抽出粉末の形態のクビレオゴノリ水抽出物を水に加えて形成されたものであってもよい。
【0045】
特定の一実施形態では、活性化したラクトバシラスプランタルムを水溶液に加える工程において、上記水溶液は上記抽出液のいずれか1つから構成されるか、または上記水溶液は、抽出粉末を水に加えることのみにより形成される。この特定の実施形態では、水溶液中の上記抽出粉末の含有量は約10%(w/v)であってよい。
【0046】
別の実施形態において、上記水溶液は、上述したクビレオゴノリの水抽出物に加え、ブドウ糖をさらに含んでいてよい。この特定の実施形態では、水溶液中の上記抽出粉末の含有量は約5%(w/v)であってよく、また水溶液中の上記ブドウ糖の含有量は約1%(w/v)であってよい。
【0047】
活性化したラクトバチルスプランタルムを水溶液に加えた後、その水溶液に発酵プロセスを行って、オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成する。上記発酵プロセスの温度は約37℃とすることができ、上記発酵プロセスに要される時間は約48時間とすることができる。
【0048】
さらに、特定の一実施形態において、活性化したラクトバシラスプランタルムを水溶液に加え、その水溶液に発酵プロセスを行ってオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体を形成した後に、オゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体をさらに乾燥することができる。
【0049】
上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物またはその発酵体のうちのいずれか1つは、血清中のストレスホルモンを低減させることができる。ストレスホルモンの例にはコルチコステロンおよびアドレナリンが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0050】
また、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物またはその発酵体のうちのいずれか1つは、感情反応(emotional reactions)を軽減する効果を有する。
【0051】
上述した本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法のうちいずれかにおいて、対象は限定されないが、脊柱動物が含まれ得る。そして、該脊柱動物には、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、または哺乳類が含まれ得るが、これらに限定はされない。哺乳類の例は限定はされないが、ヒト、オランウータン、サル、ウマ、ロバ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラットおよびマウスが含まれ得る。一実施形態では、任意の上述した本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法において、対象はヒトである。
【0052】
加えて、本開示は、神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品も提供する。ここに述べられる神経疾患に特定の制限はなく、神経に関連する任意の疾患、例えばうつ病、双極性障害、不安障害、自閉症、認知症などであり得るが、これらに限定されることはない。
【0053】
上述した本開示の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品は、上記に限定されることはないが、オゴノリ科に属する植物の水抽出物またはオゴノリ科に属する植物の水抽出物の発酵体と、医薬的に許容される担体または塩とを含み得る。
【0054】
本開示の神経疾患を治療および/または緩和する医薬組成物または健康食品に含まれるオゴノリ科に属する植物の水抽出物またはその発酵体は、本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法に関して上記段落に記載された上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物またはその発酵体のうちのいずれか1つであってよく、よってここで繰り返すことはしない。
【0055】
上記医薬的に許容される担体は限定されないが、医薬的投与に適した溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、または等張剤(isotonic agents)および吸収遅延剤(absorption delaying agents)などが含まれ得る。医薬組成物は、従来の方法を用い、それぞれ異なる投与経路に合った剤型に製剤化することができる。
【0056】
さらに、上述の医薬的に許容される塩は限定されないが、無機カチオン、例えばナトリウム塩、カリウム塩またはアミン塩のようなアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩またはカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、例えば亜鉛塩、アルミニウム塩またはジルコニウム塩のような2価または4価のカチオンを含む塩が含まれ得る。また、医薬的に許容される塩は、有機塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩、メチル−D−グルカミン、および、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはグルタミンのようなアミノ酸塩であり得る。
【0057】
本開示の医薬組成物は、経口で、吸入スプレーを用いて非経口で、または埋め込み型リザーバー(implanted reservoir)を介して、投与することができる。非経口の方法には、患部への塗抹、皮下(subcutaneous)、皮内(intracutaneous)、静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、関節内(intra-articular)、動脈内(intra-arterial)、滑膜内(intrasynovial)、胸骨内(intrasternal)、髄腔内(intrathecal)、および病巣内(intralesional)注射ならびに注入(infusion)技術が含まれ得る。
【0058】
経口用組成物(oral composition)は限定されないが、錠剤、カプセル、乳剤(emulsions)、ならびに水性懸濁液、分散液および溶液が含まれ得る。
【0059】
本開示は、微生物を培養する方法をさらに提供する。上記微生物を培養する方法は限定されないが、オゴノリ科に属する植物の水抽出物を培地として微生物を培養する工程を含み得る。
【0060】
上記微生物に特定の制限はなく、例えば細菌のような、オゴノリ科に属する植物の水抽出物を利用して育つことのできるものであればよい。一実施形態では、細菌は、例えばラクトバチルスプランタルム、ラクトバチルスアシドフィルス、ラクトバチルスブルガリスクス、ラクトバチルスガセリのようなラクトバチルス属に属する細菌であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態において、ここに述べられる微生物は、ラクトバチルスプランタラムである。
【0061】
また、本開示の微生物を培養する方法において述べられるオゴノリ科に属する植物の水抽出物も、本開示の神経疾患を治療および/または緩和する方法に関して上記段落に記載された上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれか1つとすることができ、よってここで繰り返すことはしない。
【0062】
本開示の微生物を培養する方法において、培地は、抽出液の形態の上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のいずれかを含み得るか、または培地は、抽出粉末の形態の上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のいずれかを水に加えることによって形成されたものであってよい。培地中の上記抽出粉末の含有量は、約1〜20%(w/v)、例えば1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)とすることができるが、これらに限定されることはない。
【0063】
一実施形態において、上記培地は上記抽出液から構成される。
【0064】
別の実施形態において、上記培地は単に上記抽出粉末を水に加えることのみによって形成され、この実施形態では、上記抽出粉末の含有量は、約1〜20%(w/v)、例えば1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)、8%(w/v)、10%(w/v)であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態において、上記水溶液中、上記抽出粉末の含有量は約10%(w/v)であり得る。
【0065】
また、一実施形態において、本開示の微生物を培養する方法では、上述したオゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれか1つに加え、上記培地は糖類をさらに含んでいてよい。
【0066】
上記糖類が上記培地中に存在する場合、上記糖類に特定の制限はなく、上記糖類は、これらに限定はされないが、例えばブドウ糖、ショ糖、乳糖のような微生物に利用され得る糖類であればよい。一実施形態では、上記糖類はブドウ糖である。また、上記培地中に糖類が存在する場合、培地中の上記糖類の含有量は、約1〜5%(w/v)、例えば約1%(w/v)、2%(w/v)、5%(w/v)であってよいが、これらに限定されることはない。一実施形態では、上記培地中に糖類が存在する場合、培地中の上記糖類の含有量は約1%(w/v)であり得る。特定の一実施形態において、上記培地中に糖類が存在する場合、上記糖類はブドウ糖であり、培地中の上記ブドウ糖の含有量は約1%(w/v)であり得る。
【0067】
本開示の微生物を培養する方法において、一実施形態では、培地はラクトバチルスプランタルムを培養するのに用いられる。
【0068】
培地がラクトバチルスプランタルムを培養するのに用いられる実施形態において、上記培地は、上記抽出液のいずれか1つから構成され得るか、または上記培地は、抽出粉末の形態の上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれか1つを水に加えることのみによって形成される。上記抽出粉末の含有量は約10%(w/v)であってよい。
【0069】
あるいは、培地がラクトバチルスプランタルムを培養するのに用いられる実施形態では、上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれか1つに加え、上記培地がブドウ糖をさらに含んでいてよい。培地中の上記抽出粉末の含有量は約5%(w/v)とすることができ、上記ブドウ糖の含有量は約1%(w/v)とすることができる。
【0070】
本開示の微生物を培養する方法において、培地で微生物を培養するのに適した温度に特定の制限はなく、培養されることとなる微生物によって決まり得る。一実施形態では、微生物を培養するのに適した温度は、約34〜40℃、例えば34℃、35℃、36℃、36.5℃、37℃、37.5℃、40℃であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態では、上記微生物を培養するのに適した温度は約37℃であり得る。
【0071】
さらに、本開示の微生物を培養する方法において、培地で微生物を培養するのに適した時間にも特定の制限はなく、これも同様に培養されることとなる微生物によって決まり得る。一実施形態では、培地で微生物を培養するのに適した時間は、約16時間〜約72時間、例えば約16時間、約24時間、約48時間、約72時間であってよいが、これらに限定はされない。特定の一実施形態では、培地で微生物を培養するのに適した時間は約48時間であり得る。
【0072】
加えて、本開示は、微生物を培養する培地としてのオゴノリ科に属する植物の水抽出物の使用をさらに提供する。
【0073】
微生物を培養するための培地として用いられるオゴノリ科に属する植物の水抽出物は、本開示の微生物を培養する方法に関して上段落に記載された上記オゴノリ科に属する植物の水抽出物のうちのいずれか1つであってよく、よってここで繰り返すことはしない。
【0074】
同様に、ここに述べられる微生物を培養するための培地は、本開示の微生物を培養する方法に関して上記段落に記載された任意の培地であり得るため、ここで繰り返すことはしない。
【0075】
さらに、微生物もまた、本開示の微生物を培養する方法に関して上記段落に記載された任意の微生物であってよい。
【0076】
【実施例】
【0077】
実施例1
【0078】
クビレオゴノリ(Gracilaria blodgettii)水抽出物の調製
【0079】
クビレオゴノリをその重量の10〜15倍の脱イオン水中に入れ、80〜100℃で1〜2時間加熱還流して抽出を行い、抽出液を得た。その抽出液を濾紙で吸引濾過した後、その抽出液を真空濃縮器で濃縮し、真空乾燥機で凍結乾燥して水分を除去し、抽出粉末を得た。
【0080】
実施例2
【0081】
クビレオゴノリ水抽出物の培地としての使用(クビレオゴノリ水抽出物の発酵)
【0082】
実施例2−1
【0083】
ブドウ糖添加クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液の試験
【0084】
A.方法
【0085】
1.ラクトバチルスプランタルム(商品名:Lactobacillus plantarum(LP28)、SYNBIO TECH INC.,Taiwanより購入)の菌体懸濁液(菌体懸濁液:1×10CFU/mL)を滅菌したMRS液体培地(Sigma,Cat No.69966)に1%(v/v)(菌体懸濁液と液体培地との容積比1:99)の菌播種量で播種し、37℃のインキュベータに入れ、12〜18時間培養して細菌を活性化させた。
【0086】
2.活性化したラクトバチルスプランタルの菌体懸濁液(菌体懸濁液:1×10CFU/mL)を1%(v/v)の菌播種量で、滅菌したMRS液体培地もしくはクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(上述で得られた抽出粉末の形態のクビレオゴノリ水抽出物5%(w/v)およびブドウ糖1%(w/v)を含有する水溶液)に播種するか、または播種せずに、試験群A、試験群B、試験群C、および試験群Dの4つの試験群を作った。試験群Aは、細菌を播種していないMRS液体培地(MRS液体培養のブランク群)、試験群Bは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地(MRS液体培養の実験群)、試験群Cは、細菌を播種していないクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液のブランク群)、試験群Dは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液の実験群)とした。
【0087】
3.4つの試験群を37℃のインキュベータに入れ、48時間培養した。培養中、設定した複数の時点でサンプリングを行った。各時点のサンプルの波長600nm(OD600)における吸光度およびpH値を測定した。そして、各時点のサンプルを適度に希釈してから、MRS固体培地上に塗抹した。次に、菌懸濁液を塗抹したそのMRS固体培地を37℃のインキュベータに入れて48時間培養した後、各時点のサンプル中の細菌数を算出した。
【0088】
B.結果
【0089】
各試験群の吸光度の変化およびpH値の変化を図1Aおよび図1Bにそれぞれ示す。各試験群の細菌量の変化を図1Cに示す。
【0090】
図1Aから、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群D)の濁度は培養時間の増加に伴って増加しており、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群D)の濁度の変化の傾向は、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地(試験群B)と類似していることがわかり、このことは、ラクトバチルスプランタルムが、クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液中、およびMRS液体培地中において、生育の傾向が類似するということを示している。また、図1Aから、試験群Aおよび試験群Cの濁度は増加していないことがわかり、このことは、MRS液体培地およびクビレオゴノリ水抽出物の水溶液が他の細菌に汚染されていないということを表している。
【0091】
図1Bより、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群D)のpH値が培養時間の増加に伴って減少し、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群D)のpHの変化の傾向は、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地(試験群B)と類似していることがわかり、このことは、乳酸菌の主生成物である乳酸が増加したことを表している。また、図1Bによると、試験群Aおよび試験群Cの溶液にはほとんど変化がないことがわかり、このことは、MRS液体培地とクビレオゴノリ水抽出物の水溶液が他の細菌によって汚染されていないということを表している。
【0092】
図1Cから、クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群D)で培養したラクトバチルスプランタラムの細菌量と生育速度は、MRS液体培地(試験群B)で培養したラクトバチルスプランタラムと類似していることがわかり、このことは、クビレオゴノリ水抽出物が、ラクトバチルスプランタラムの生育に十分な栄養源を提供でき、かつ標準培地の代わりに培地として使用可能であることを示している。
【0093】
実施例2−1
【0094】
ブドウ糖を添加していないクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液の試験
【0095】
A.方法
【0096】
1.ラクトバチルスプランタルム(商品名:Lactobacillus plantarum(LP28)、SYNBIO TECH INC.,Taiwanより購入)の菌体懸濁液(菌体懸濁液:1×10CFU/mL)を滅菌したMRS液体培地(Sigma,Cat No.69966)に1%(v/v)の菌播種量(菌体懸濁液と液体培地の容積比は1:99)で播種し、37℃のインキュベータに入れ、12〜18時間培養して細菌を活性化させた。
【0097】
2.活性化したラクトバチルスプランタルの菌体懸濁液(菌体懸濁液:1×10CFU/mL)を1%(v/v)の菌播種量で、滅菌したMRS液体培地もしくはクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(上述で得られた抽出粉末の形態のクビレオゴノリ水抽出物10%(w/v)含有水溶液)に播種し、試験群Aおよび試験群Bの2つの試験群を作った。試験群Aは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したMRS液体培地、試験群Bは、活性化したラクトバチルスプランタルムを播種したクビレオゴノリ水抽出物含有水溶液とした。
【0098】
3.2つの試験群を37℃のインキュベータに入れ、48時間培養した。培養中、設定した複数の時点でサンプリングを行った。各時点のサンプルを適度に希釈してから、MRS固体培地上に塗抹した。次いで、菌懸濁液を塗抹したそのMRS固体培地を37℃のインキュベータに入れて48時間培養した後、各時点のサンプル中の細菌数を算出した。
【0099】
B.結果
【0100】
各試験群の細菌数の変化を図2に示す。
【0101】
図2から、ラクトバチルスプランタラムは、クビレオゴノリ水抽出物含有水溶液(試験群B)およびMRS液体培地(試験群A)にいずれにおいてもよく育つことがわかり、このことは、クビレオゴノリ水抽出物が、ラクトバチルスプランタラムの生育に要される十分な栄養源を提供でき、かつ標準培地に代わる培地として使用可能であるということを示している。
【0102】
実施例2−1および実施例2−2の結果より、ブドウ糖の添加の有無に関わらず、クビレオゴノリ水抽出物は培地として使用可能であると共に、ラクトバチルスプランタルムを良好に生育し得る、ということが明確にわかる。
【0103】
実施例3
【0104】
オープンフィールド試験におけるマウスの行動改善に対するクビレオゴノリ水抽出物およびその発酵物の評価
【0105】
A.方法
【0106】
7〜8週齢のBALB/c雄マウスを試験群A、試験群B、試験群C、試験群D、および試験群Eの5つの群に分けた。試験群Aはブランク群とした。
【0107】
試験群B、試験群C、試験群D、および試験群Eのマウスに28日間連続してコルチコステロン(CORT)(40mg/kg/日)を皮下注射し、マウスのうつ様/不安様症状を誘発した。ブランク群のマウスには28日間連続して大豆油を皮下注射した。
【0108】
15日目に、一般の飼料(試験群Aおよび試験群B)、乳酸菌を含む飼料(2×1010CFU/日)(試験群C)、クビレオゴノリ水抽出物(2wt%)を含む飼料(試験群D)、またはクビレオゴノ水抽出物の発酵体(2wt%)を含む飼料(試験群E)をマウスに与え始めた。試験群Bでは、マウスはコルチコステロンのみで誘発した。
【0109】
飼料投与期間中もコルチコステロンのマウスへの皮下注射は引き続き行った。
【0110】
飼料サンプルの給餌を開始してから14日後に、マウスのオープンフィールド試験を行い、マウスの行動を評価した。
【0111】
オープンフィールド試験は現在最もよく用いられている動物の行動分析法である。動物行動学によれば、げっ歯動物は新たな環境に対して走触性(thimmotaxis)がある。中央エリアは開放的であってつまり脅威の状況であり、一方、周囲エリアは相対的に安全である。よって、げっ歯動物は生来、周辺エリア領域に近寄って活動する傾向がある。
【0112】
オープンフィールド試験は、図3Aに示す試験箱100で行った。図3Bは、試験箱100内部の底部を示している。試験箱の長さは40cm、幅は30cm、高さは15cmであった。図3Bに示すように、試験箱内部を中央エリア101と周囲エリア105とに分けた。中央エリア101は、試験箱底部の中央部の矩形領域に位置し、中心点103を有するものとした。周囲エリア105は、中央エリア101の周囲に位置すると共に、中央エリア101を取り囲み、かつ5cmの幅を有するものとした。試験期間中、撮影を行ない、かつ動物行動追跡解析システム(Noldus Ethovision XT,10th edition)で記録および解析を行った。
【0113】
マウスを試験箱100の中央エリアの中心点(スタートポイント)に置き、観察を開始した。5分以内にマウスが各領域を横切った回数、中央エリアに滞在した時間の割合、総移動距離、および立ち上がった回数を記録した。一般的に、げっ歯動物は周囲部で動く傾向があるため、中央エリアに滞在する回数および時間が増加したら、それはうつ/不安の程度が低減していることを意味する。中央エリアおよび周辺エリアにおける実験動物の活動からその感情反応を評価した。
【0114】
B.結果
【0115】
オープンフィールド試験の結果を図4A図4Eに示す。図4Aはマウスが中央エリアに訪れた回数を示し、図4Bはマウスが中央エリアに滞在した時間の割合を示し、図4Cはマウスが移動した総距離をし、図4Dはマウスが立ち上がった回数を示し、図4Eはマウスの移動軌跡を示している。
【0116】
図4A図4Eに示す実験結果によれば、ブランク群(試験群A)のマウスと比較して、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)では、中央エリアを訪れた回数(図4A)および中央エリアに滞在した時間の割合(図4B)が有意に減少している(p<0.05)。また、ブランク群(試験群A)のマウスと比較して、コルチコステロンのみで誘発した場合(試験群B)、マウスが移動した総距離(図4)および立ち上がった回数(図4D)も有意に減少している(p<0.05)。
【0117】
上記の結果は、うつ様/不安様の症状を有するマウスは、保護を求めるべく周囲部分に迅速に移動して避難場所を探すということを示している。その結果、マウスが中央エリアに滞在した時間およびマウスの総移動距離が大幅に減少する。またマウスの立ち上がり回数の減少は、探索行動の低減を表している。
【0118】
さらに、図4A図4Eに示す実験結果によれば、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)と比較して、乳酸菌を経口投与したマウス(試験群C)、クビレオゴノリ水抽出物を経口投与したマウス(試験群D)、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体を経口投与したマウス(試験群E)が中央エリアを訪れた回数(図4A)および中央エリアに滞在した時間の割合(図4B)は有意に回復していることがわかる(p<0.05)。さらに、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)と比較して、乳酸菌を経口投与したマウス(試験群C)、クビレオゴノリ水抽出物を経口投与したマウス(試験群D)、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体を経口投与したマウス(試験群E)は、有意に高い歩行意図(walking intention)も示し(図4C)(p<0.05)、かつ立ち上がり回数も有意に増加している(図4D)(p<0.05)。
【0119】
上述の結果より、乳酸菌、クビレオゴノリ水抽出物、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の経口投与は、マウスの外界に対する好奇心と探索を促進できることがわかる。乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の、マウスが中央エリアに滞在する時間の割合を回復させる効果は、乳酸菌またはクビレオゴノリ水抽出物よりも優れると考えられ(図4B)、かつ乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の、マウスの立ち上がり回数を増加させる効果は、乳酸菌およびクビレオゴノリ水抽出物と比較して有意に高かった(図4D)(p<0.05)。
【0120】
実施例4
【0121】
明暗箱(LDB)試験におけるマウスの行動改善に対するクビレオゴノリ水抽出物およびその発酵体の評価
【0122】
A.方法
【0123】
実施例3の各群のマウスを用いてこの実験を行った。
【0124】
飼料サンプルの給餌を開始してから14日後に明暗箱試験を行い、マウスの行動を評価した。
【0125】
げっ歯動物は、明るい光を忌避するという本能的な行動の生物学的特性を有するため、マウスの行動の変化を明暗箱試験により評価することができる。
【0126】
明暗箱試験は図5に示す試験箱200にて行った。試験箱200の内部を仕切り201で明室203と暗室205とに分けた。明室には光源207を設置して明室203を明るく保つようにし、一方、暗室は暗く保つようにした。ドア209を仕切り201の下部に配置し、マウスが明室と暗室との間を自由に移動できるようにした。試験期間中、撮影を行ない、かつ動物行動追跡分析システム(Noldus Ethovision XT,10th edition)により記録および分析を行った。
【0127】
マウスを試験箱200の明室203内に、ドア209に背を向けるように入れ、観察を開始した。5分間の間にマウスが明室に滞在した時間と、マウスが明室と暗室とに出入りした回数を記録した。一般に、げっ歯動物は暗室で活動する傾向があり、げっ歯動物が明室に滞在する回数および時間が増加する、ならびに/または明室と暗室とを変える回数が増加した場合、それはうつ/不安の程度が低減したことを意味する。明室および暗室における実験動物の活動によって、その感情反応を評価した。
【0128】
B.結果
【0129】
明暗箱試験の結果を図6Aおよび図6Bに示す。図6Aはマウスが明室に滞在した時間を示し、図6Bはマウスが明室と暗室に出入りした回数を示す。
【0130】
図6Aおよび図6Bに示す実験結果によれば、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)の明室に滞在した時間(図6A)および明室と暗室に出入りした回数(図6B)は、ブランクのマウス(試験群A)に比べ有意に低いことがわかる(p<0.05)。
【0131】
上記の結果より、うつ様/不安様の症状を有するマウスは、明室に滞在する意思が低下したことがわかる。
【0132】
図6Aおよび図6Bに示す実験結果によれば、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)と比較して、乳酸菌を経口投与したマウス(試験群C)、クビレオゴノリ水抽出物を経口投与したマウス(試験群D)、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体を経口投与したマウス(試験群E)では、明室に滞在した時間および明室と暗室に出入りした回数は有意に増加している(p<0.05)ことがわかる。
【0133】
上述の結果より、乳酸菌、クビレオゴノリ水抽出物、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の経口投与は、マウスの明室へ移動および/または明室に滞在しようとする意思を高めることができる、ということがわかる。さらに、乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の、マウスが明室に滞在する時間、およびマウスが明室と暗室に出入りする回数を増加させる効果は、乳酸菌およびクビレオゴノリ水抽出物と比較して有意に高い(p<0.05)。
【0134】
実施例5
【0135】
ショ糖水嗜好性試験におけるマウスの行動改善に対するクビレオゴノリ水抽出物およびその発酵体の評価
【0136】
A.方法
【0137】
実施例3の各群のマウスを用いてこの実験を行った。
【0138】
飼料サンプルの給餌を開始してから14日後に、ショ糖水嗜好性試験を行い、マウスの行動を評価した。
【0139】
一般に、げっ歯動物には快楽的行動(hedonic behavior)があり、無糖水よりも糖分を含む水を飲む傾向にある。げっ歯動物の砂糖水への嗜好性が高まると、それはうつ/不安の程度が低減していることを意味する。
【0140】
試験期間中、ショ糖含有量1%(w/v)のショ糖水および普通の無糖水を同時にマウスに与えた。マウスがこれら2種の液体を自由に摂取できるようにし、試験時間は24時間とした。試験終了後、マウスのショ糖水および普通の無糖水の摂取量をそれぞれ算出し、合計してマウスの総水分摂取量を求め、24時間内のマウスのショ糖水に対する選択性を評価した。ショ糖嗜好性(%)は下記の式で計算した。
ショ糖嗜好性(%)=(ショ糖水の摂取量/[ショ糖水の摂取量+普通の無糖水の摂取量])×100
【0141】
B.結果
【0142】
ショ糖嗜好性試験の結果を図7Aおよび図7Bに示す。図7Aはマウスのショ糖嗜好性を示しており、図7Bはマウスの総水分摂取量を示している。
【0143】
図7Aに示す実験結果から、ブランク群のマウス(試験群A)と比較して、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)はショ糖水に惹きつけられていないことが分る。
【0144】
上記の結果より、うつ様/不安様の症状を有するマウスは快楽的行動がより少ないことが示されている。
【0145】
図7Aに示す実験結果からわかるように、コルチコステロンのみで誘発したマウス(試験群B)と比べ、乳酸菌を経口投与したマウス(試験群C)、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体を経口投与したマウス(試験群E)のショ糖水嗜好性は有意に増加している(p<0.05)。しかし、クビレオゴノリ水抽出物(試験群D)の経口投与では、マウスのショ糖水嗜好性を高めることができていない。さらに、図7Bは、各群間で総水分摂取量に有意な差がないことを示しており、このことは、乳酸菌および乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体による改善効果が、水の飲用量の差によって生じたものではないことを意味する。
【0146】
以上の結果から、乳酸菌で発酵したクビレオゴノリは、マウスの快楽的行動を促進し、かつ感情反応の改善に対して優れた効果を持つことが示された。
【0147】
実施例6
【0148】
クビレオゴノリ水抽出物およびその発酵体の血清中のストレスホルモン含量に対する作用
【0149】
A.方法
【0150】
実施例3の各群のマウスを用いてこの実験を行った。
【0151】
飼料サンプルの給餌を開始してから14日後に、マウスから血液を採取して、マウスの血清コルチコステロンおよびアドレナリンの濃度を測定した。
【0152】
コルチコステロンおよびアドレナリンはいずれもストレス応答に関連するホルモンであり、生体内においてそれらの血中濃度が高いと、動物のうつ病/不安が引き起こされ得る。
【0153】
B.結果
【0154】
血清中のホルモン測定の結果を図8Aおよび8Bに示す。図8Aは、マウスの血清中のコルチコステロン濃度を示しており、図8Bは、マウスの血清中のアドレナリン濃度を示している。
【0155】
図8Aおよび図8Bに示すように、ブランク群(試験群A)のマウスに比べ、マウスをコルチコステロンで誘発した後(試験群B)、ストレスホルモン、コルチコステロン、およびアドレナリンの血清濃度は有意に増加している(p<0.05)。
【0156】
さらに、図8Aおよび図8Bは、乳酸菌(試験群C)、クビレオゴノリ水抽出物(試験群D)、または乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体(試験群E)の経口投与が、コルチコステロン誘発により上昇したマウスのストレスホルモンの含有量を有意に抑制できることも示している(p<0.05)。また、乳酸菌により形成されたクビレオゴノリ水抽出物の発酵体の、血清中のストレスホルモンを抑制する効果は、乳酸菌およびクビレオゴノリ水抽出物に比べ、有意に優れている(p<0.05)。
【0157】
開示された実施形態に各種修飾および変更を加え得ることは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単に例示として見なさるよう意図されており、本開示の真の範囲は以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
【外国語明細書】
2019116468000001.pdf