(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-118243(P2019-118243A)
(43)【公開日】2019年7月18日
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20190627BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20190627BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20190627BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20190627BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M7/48 F
H02M7/48 Z
H02M3/155 Z
H02P27/06
H02P25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-252405(P2017-252405)
(22)【出願日】2017年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】初田 匡之
(72)【発明者】
【氏名】奥畑 佳久
【テーマコード(参考)】
5H505
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB03
5H505BB06
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA05
5H505HA10
5H505HB01
5H505KK08
5H505LL01
5H505LL28
5H505LL41
5H505LL43
5H505LL44
5H505MM06
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS04
5H730AS13
5H730BB14
5H730DD03
5H730EE07
5H730FD11
5H730ZZ01
5H730ZZ07
5H770AA05
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770HA06Z
5H770JA11W
5H770PA12
5H770QA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コンデンサの数を低減させることができ、モータの小型化に寄与することができるモータ制御装置を提供する。
【解決手段】モータ制御装置は、外部から供給される電源電圧を昇圧する昇圧回路23と、昇圧回路23の出力電圧を平滑化するコンデンサ22と、コンデンサ22によって平滑化された昇圧回路23の出力電圧をスイッチングしてモータの駆動電圧を生成するインバータ回路21と、を備える。制御部21bは、昇圧回路23とインバータ回路21の間の距離を、寄生インダクタンスが所定値以下になる距離となるように、昇圧回路23をバイパスさせて電源電圧をインバータ回路21に供給させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される電源電圧を昇圧する昇圧回路と、
昇圧回路の出力電圧を平滑化するコンデンサと、
前記コンデンサによって平滑化された昇圧回路の出力電圧をスイッチングしてモータの駆動電圧を生成するインバータ回路と、
前記昇圧回路をバイパスさせて前記電源電圧を前記インバータ回路に供給させる制御部と、を備え、
前記昇圧回路と前記インバータ回路の間の距離を、寄生インダクタンスが所定値以下になる距離とした、
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電源電圧を前記コンデンサと昇圧回路の間にバイパスさせるスイッチング素子を、
備えることを特徴とする請求項1記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記コンデンサの容量を、
前記昇圧回路から前記インバータ回路に供給される電圧のリップル率が所定の値以下となるようにした、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
界磁コイルを有するステータと、回転中心軸を中心に回動自在に設けられたロータを収容するハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記昇圧回路と前記コンデンサと前記インバータ回路を収容する収容部を有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、
外部から供給されるトルク指示値が所定の閾値以下の場合に、前記電源電圧をバイパスさせて前記インバータ回路に供給させる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動制御を行うモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の動力となるモータの駆動電力をインバータ回路を用いて制御する技術が知られている。
例えば特許文献1には、電源電圧を昇圧する昇圧コンバータを備え、ユーザの加速要求度に応じて昇圧動作を行う運転領域を設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、昇圧回路の前後に電圧を平滑化するコンデンサを必要としている。また、昇圧回路とインバータの配置によっては、インバータの入力電圧を平滑化するコンデンサがさらに必要になるが、特許文献1に開示された技術では考慮されていない。このため、制御装置を含めたモータの小型化の観点では改善の余地があった。
上述の課題に鑑み、本発明は、昇圧回路とインバータ回路の電圧を平滑化するコンデンサの数を低減させることができ、モータの小型化に寄与することができるモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係るモータ制御装置のある態様によれば、外部から供給される電源電圧を昇圧する昇圧回路と、昇圧回路の出力電圧を平滑化するコンデンサと、前記コンデンサによって平滑化された昇圧回路の出力電圧をスイッチングしてモータの駆動電圧を生成するインバータ回路と、前記昇圧回路をバイパスさせて前記電源電圧を前記インバータ回路に供給させる制御部と、を備え、前記昇圧回路と前記インバータ回路の間の距離を、寄生インダクタンスが所定値以下になる距離とした、ことを特徴とするモータ制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
以上の構成を有する本発明によれば、昇圧回路とインバータ回路の間の距離を、寄生インダクタンスが所定値以下になる距離とすることにより、昇圧回路とインバータ回路の電圧を平滑化するコンデンサを共通とすることができる。これにより、コンデンサの数を低減させることができ、モータの小型化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】昇圧回路とインバータの構成例を示す回路図である。
【
図3】モータの消費電力とモータの回転数NとトルクTとの関係を示す図である。
【
図6】昇圧回路とIGBTの間の伝送線路の等価回路の例を図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための実施形態について詳細に説明する。
<実施形態>
図1は、実施形態に係るモータ制御装置の構成例を示すブロック図である。
このモータ制御装置は、モータの動作を制御するモータコントローラ2と、車両等の速度、加速度、アクセル開度等の車両の状態に応じてトルク指示値(トルク指令)をモータコントローラ2に供給するVCU(Vehicle Control Unit:車両制御装置)3と、モータのステータ30に設けられた界磁コイル31u、31v、31wに駆動電圧を供給するインバータ21と、インバータ21に供給する電源電圧を平滑化するコンデンサ22と、インバータ21からの指示(要求電圧)に応じてバッテリ4から供給される電源電圧を昇圧する昇圧回路23と、モータの周囲の温度等を検出する温度センサ6とを備えている。
【0009】
昇圧回路23とインバータ21の間の距離は、昇圧回路23の出力電圧をインバータ21に供給する供給経路の寄生インダクタンスが所定の値以下となるように設定している。これにより、昇圧回路23とインバータ21の電圧を平滑化するコンデンサ22を共通とすることができる。したがって、コンデンサの数を低減させることができ、モータの小型化に寄与することができる。また、コンデンサ22は、昇圧回路23の出力電圧を平滑化するコンデンサとインバータ21の入力電圧を平滑化するコンデンサと共通化している。このコンデンサ22の容量の値は、昇圧回路23からインバータ21に供給される電圧のリップル率が所定の値以下となるように設定している。コンデンサ22のサイズは、容量に応じて大きくなるため、容量の値をこのように設定することにより、コンデンサの容量を必要以上に大きくすることがなく、モータの小型化に寄与することができる。
【0010】
インバータ21は、昇圧回路23からコンデンサ22を介して供給された電圧をスイッチングして、界磁コイル31u、31v、31wに供給する三相(U相、V相、W相)の駆動電圧を生成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲート型バイポーラ・トランジスタ)モジュール(以下、単にIGBTという)21aと、インバータ21全体の制御を行う制御部21bと、IGBT21a等の温度を検出する温度センサ21cを備えている。
また、IGBT21aは、三相の駆動電圧を生成するため、例えば
図2に示すように、3組6個のスイッチング素子(IGBT素子)Tru1、Tru2、Trv1、Trv2、Trw1、Trw2を備えている。なお、IGBT素子の代わりにMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のスイッチング素子を用いてもよい。各スイッチング素子Tru1、Tru2、Trv1、Trv2、Trw1、Trw2には、減速時等に界磁コイル31u、31v、31wから供給される回生電流をコンデンサ22を介して昇圧回路23に供給する回生ダイオードDu1、Du2、Dv1、Dv2、Dw1、Dw2が接続されている。また、制御部21bは、昇圧回路23に、要求電圧を供給する。
【0011】
昇圧回路23は、チョッパ形の昇圧回路であり、昇圧回路23全体の制御を行う制御部ctrlと、電源コネクタ25を介してバッテリ4から電源電圧が供給されるリアクトル23aと、リアクトル23aからの電圧のスイッチングを行うスイッチング素子Tr1、Tr2と、電源電圧をバイパスして出力するためのスイッチング素子Tr11、Tr12とを備えている。各スイッチング素子Tr1、Tr2、Tr11、Tr12には、回生ダイオードD1、D2、D11、D12が接続されている。また、各スイッチング素子Tr1、Tr2、Tr11、Tr12、制御部ctrl等は回路基板23bに実装されている。スイッチング素子Tr12のソースの接続先(すなわち、電源電圧のバイパス先)は、昇圧回路23とコンデンサ22の間であればよいが、
図2に示すように、昇圧回路23の内部で、スイッチング素子Tr1のソース(すなわち、昇圧した電圧の出力側)とすることが好ましい。回路基板23b内で配線を行えば、寄生インダクタンスの影響が少ないためである。
【0012】
VCU3は、現在のアクセル開度、車両速度、加速あるいは減速の際の加速度等の車両の状態に応じて必要なトルクの値を示すトルク指令を生成し、モータコントローラ2に供給する。モータコントローラ2は、供給されたトルク指令に応じて制御部21bの動作を制御する。
制御部21bは、例えばモータに設けられた位置センサ32の検出電圧を所定の基準電圧と比較し、比較結果に応じて、モータのロータの角度を検出する。また、制御部21bは位置センサ32の検出電圧に基づいてモータの回転数を検出する。なお、モータの回転数は位置センサ32とは別のセンサを用いて検出するようにしてもよい。
【0013】
モータコントローラ2は、VCU3からのトルク指令に従い、モータを駆動するために必要な必要電力を算出する。モータの回転数NとトルクTとの関係は、例えば
図3に示すように、モータの消費電力に応じて変化する。モータの回転数NとトルクTとの関係は、例えば、消費電力が60kWのときは同図中の実線のようになるが、消費電力が80kW、100kW、120kWのときは夫々破線で示すようになる。このため、モータコントローラ2は、このような関係に基づいて、トルク指令とモータの回転数に応じて、必要なトルクが得られる消費電力を必要電力として算出し、制御部21bの動作を制御する。制御部21bは、モータコントローラ2からの制御に応じて、モータの駆動に必要な電圧値と電流値を算出する。なお、必要電力が所定の閾値以下である場合は、制御部21bは、電圧値をバッテリ4の電源電圧(V
BATT)とする。また、制御部21bは、算出した電圧値を要求電圧として昇圧回路23の制御部ctrlに供給する。
【0014】
昇圧回路23の制御部ctrlは、制御部21bからの要求電圧に応じてバッテリ4の電源電圧(V
BATT)から所定の昇圧比で昇圧した電圧Vをインバータ21に供給する。具体的には、制御部ctrlは、要求電圧に応じてスイッチング素子Tr1、Tr2のオンオフを制御してバッテリ4の電源電圧(V
BATT)を昇圧する。なお、要求電圧がバッテリ4の電源電圧(V
BATT)である場合には、制御部ctrlは、スイッチング素子Tr11、Tr12をオン状態とし、スイッチング素子Tr1、Tr2をオフ状態とする。これにより、バッテリ4の電源電圧(V
BATT)がそのままコンデンサ22を介してインバータ21に供給される。必要電力は上述のトルク指示値に応じて算出されているため、換言すると、制御部21bは、トルク指示値が所定の閾値以下の場合に、バッテリ4の電源電圧(V
BATT)をバイパスさせてインバータ21に供給させる。これにより、トルク指示値が所定の閾値以下の場合には、電源電圧の昇圧を行わないため、リアクトル23a、スイッチング素子Tr1、Tr2等の発熱を低減させることができる。
【0015】
制御部21bは、上述のように算出した電流値に応じてIGBT21aの各スイッチング素子によるスイッチングを制御し、三相(U相、V相、W相)の駆動電圧を生成させる。この駆動電圧は、例えば正弦波駆動の場合においてモータの界磁コイル31(界磁コイル31u〜31w)に流れる駆動電流の実効値(以下、単に電流値という。)が所定の電流値になるようにPWM(Pilse Width Moduration)制御を行って生成する。制御部21bは、上述の電流値に応じて駆動電圧のパルスのデューティ比を制御する。具体的には、制御部21bは、電流値Iに応じてPWMによる変調度を変更する。
【0016】
IGBT21aによって生成された各相の駆動電圧はステータ30の各界磁コイル31u〜31wに供給され、各界磁コイル31u〜31wには駆動電圧に応じた駆動電流が流れ、界磁コイル31u〜31wによる磁界とロータの磁石との相互作用により、ロータにトルクが発生する。このトルクはモータシャフトの出力端を介して外部に出力される。
図4及び
図5は、上述のモータ制御装置を用いて構成したDCブラシレスモータの構成例を示している。
このモータは、ハウジング10に収容された制御回路20と、三相の駆動電圧に応じた駆動電流によって磁界を発生する界磁コイル31等を有するステータ30と、回転軸を中心に回動自在に設置されたロータ40とを備えている。なお、以下、このように制御回路20がステータ30とロータ40と共にハウジング10に収容されるモータを機電一体型モータという。
【0017】
ハウジング10の内部には、冷媒を循環させる冷媒流路11が形成されている。冷媒流路11を流れる冷媒の循環により、ハウジング10を冷却し、ハウジング10に接触しているステータ30と制御回路20を冷却するようになっている。また、ハウジング10の上部には、制御回路20を収容する収容部12が設けられている。
また、ハウジング10には、ステータ30とロータ40が収容されるモータハウスの蓋13と、収容部12を覆う収容部カバー14が設けられている。モータハウス内にはロータ40のモータシャフト41を支えるベアリング15、16が取り付けられている。
【0018】
制御回路20には、上述のインバータ21と、コンデンサ22と、昇圧回路23とが含まれている。インバータ21と昇圧回路23は、冷媒流路11とモータの径方向に重なる位置に取り付けられている。換言すると、少なくとも、冷媒流路11は、インバータ21及び昇圧回路23と、ロータ40の回転中心軸(モータシャフト41)から離れる方向すなわちモータの径方向(
図4、
図5のZ方向)に重なる位置に設けられている。これにより、モータシャフト41の中心軸の先に冷媒流路11を設ける必要がなく、ロータ40の回転中心軸(モータシャフト41の中心軸)方向の小型化に寄与することができる。
上述のように、昇圧回路23とインバータ21の間の距離は、昇圧回路の出力電圧をインバータに供給する供給経路の寄生インダクタンスが所定の値以下となるように設定している。
図6は、昇圧回路23の回路基板23bとIGBT21aの間の供給経路の等価回路の例を示している。
L1、L2、L3、L4は、回路基板23bとIGBT21aの間の伝送線路(配線)の寄生インダクタンスを示している。
【0019】
寄生インダクタンスの両端のリップル電圧V
Lは、以下の式(1)で求められる。
【0020】
【数1】
ここで、Lは寄生インダクタンス、di/dtは、電流のIGBT21aに流れる電流の変化率である。寄生インダクタンスの値は、例えば1cm当たり10nHである。また、電流の変化率は、例えば100A/μsである。従って、回路基板23bとIGBT21aの間の配線の距離1cm当たり1Vのリップル電圧が発生する。
【0021】
このため、コンデンサ22の容量とインバータ21の動作との関係で、許容できるリップル電圧を決定し、決定したリップル電圧から、許容できる寄生インダクタンスの値を求め、回路基板23bとIGBT21aの間の距離を決定する。これにより、昇圧回路23とインバータ21の間の距離を、寄生インダクタンスが所定値以下になる距離とする。このような距離とすることにより、昇圧回路23の出力電圧を平滑化するコンデンサとインバータ21の入力電圧を平滑化するコンデンサを共通のコンデンサ22とすることができる。
【0022】
<変形例>
なお、上述の実施形態では、正弦波駆動によりモータの駆動電圧を生成していたが、正弦波駆動の代わりに矩形波駆動によって駆動電圧を生成するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、DCブラシレスモータの駆動制御を行う場合について説明したが、インバータを用いて3相同期モータ等の駆動制御を行う場合についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0023】
10…ハウジング、11…冷媒流路、12…収容部、20…制御回路、21…インバータ、21a…IGBT、21b…制御部 、22…コンデンサ、23…昇圧回路、23a…リアクトル、23b…回路基板、30…ステータ、31…界磁コイル、40…ロータ、41…モータシャフト