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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-118250(P2019-118250A)
(43)【公開日】2019年7月18日
(54)【発明の名称】固定子および電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/18 20060101AFI20190627BHJP
【FI】
   H02K3/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-252658(P2017-252658)
(22)【出願日】2017年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000100872
【氏名又は名称】アイチエレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 清一
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA04
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD02
5H603CD21
5H603CE01
(57)【要約】
【課題】固定子巻線の絶縁劣化を防止しながら固定子巻線の占積率を高めることができる技術を提供する。
【解決手段】U相巻線〜W相巻線は、デルタ接続されており、第1巻線(U1〜W1)と第2巻線(U2〜W2)を有している。第1巻線(U1〜W1)および第2巻線(U2〜W2)は、各ティース(122A〜122F)に同心状に巻付けられている第1の巻線部分(U1A〜W1A、U2A〜W2A)と第2の巻線部分(U1B〜W1B、U2B〜W2B)により構成されている。U相第1巻線U1を構成する第2の巻線部分U1Bは、第1の巻線部分U1Aより外側に、第1の巻線部分U1Aの巻方向と逆方向に巻付けられている。各ティース(122A〜122F)に同心状に巻付けられている第1の巻線部分および第2の巻線部分の巻始め端部sと巻終わり端部eは、第1の巻線部分により発生する磁界の方向と第2の巻線部分により発生する磁界の方向が同じになるように、第1の電源端子R〜第3の電源端子Tに接続されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースおよび複数のスロットを有する固定子コアと、前記複数のティースに巻付けられている固定子巻線を備え、前記固定子巻線は、第1の電源端子と第2の電源端子に接続されている第1の固定子巻線、前記第2の電源端子と第3の電源端子に接続されている第2の固定子巻線および前記第3の電源端子と前記第1の電源端子に接続されている第3の固定子巻線を有する固定子であって、
前記複数のティースは、それぞれ少なくとも1つのティースを含む第1のグループのティース、第2のグループのティースおよび第3のグループのティースに分けられ、
前記第1の固定子巻線は、前記第1のグループに含まれるティースに巻付けられている第1の巻線部分と第2の巻線部分により構成される少なくとも1つの巻線群を有し、
前記第1の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第2の巻線部分は、当該巻線群を構成する前記第1の巻線部分より外側に、当該第1の巻線部分の巻方向と逆方向に巻付けられ、
前記第1の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分および前記第2の巻線部分の巻始め端部と巻終わり端部は、当該第1の巻線部分により発生する磁界の向きと当該第2の巻線部分により発生する磁界の向きが同じになるように、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子に接続され、
前記第2の固定子巻線は、前記第2のグループに含まれるティースに巻付けられている第1の巻線部分と第2の巻線部分により構成される少なくとも1つの巻線群を有し、
前記第2の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第2の巻線部分は、当該巻線群を構成する前記第1の巻線部分より外側に、当該第1の巻線部分の巻方向と逆方向に巻付けられ、
前記第2の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分および前記第2の巻線部分の巻始め端部と巻終わり端部は、当該第1の巻線部分により発生する磁界の向きと当該第2の巻線部分により発生する磁界の向きが同じになるように、前記第2の電源端子と前記第3の電源端子に接続され、
前記第3の固定子巻線は、前記第3のグループに含まれるティースに巻付けられている第1の巻線部分と第2の巻線部分により構成される少なくとも1つの巻線群を有し、
前記第3の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第2の巻線部分は、当該巻線群を構成する前記第1の巻線部分より外側に、当該第1の巻線部分の巻方向と逆方向に巻付けられ、
前記第3の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分および前記第2の巻線部分の巻始め端部と巻終わり端部は、当該第1の巻線部分により発生する磁界の向きと当該第2の巻線部分により発生する磁界の向きが同じになるように、前記第3の電源端子と前記第1の電源端子に接続されていることを特徴とする固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子であって、
前記第1の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分と前記第2の巻線部分、前記第2の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分と前記第2の巻線部分および前記第3の固定子巻線の前記巻線群を構成する前記第1の巻線部分と前記第2の巻線部分は、前記複数のティースに一筆書きで巻付けられている1本の線材により形成されていることを特徴とする固定子。
【請求項3】
請求項2に記載の固定子であって、
前記線材の一方の端部と他方の端部は、前記第1の電源端子、前記第2の電源端子および前記第3の電源端子のいずれかに接続されていることを特徴とする固定子。
【請求項4】
請求項3に記載の固定子であって、
前記線材の一方の端部に、各ティースに巻付けられている第1の巻線部分の巻始め端部、第1の巻線部分、第1の巻線部分の巻終わり端部が順次接続され、最後尾の第1の巻線部分の巻終わり端部に、各ティースに巻付けられている第2の巻線部分の巻始め端部、第2の巻線部分、第2の巻線部分の巻終わり端部が、前記第1の巻線部分の接続順序と逆の順序で順次接続され、最後尾の第2の巻線部分の巻終わり端部に、前記線材の他方の端部が接続されていることを特徴とする固定子。
【請求項5】
固定子と、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備える電動機であって、
前記固定子として請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の固定子が用いられていることを特徴とする電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子巻線の絶縁劣化を防止しながら固定子巻線の占積率を高めることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を小型化しながら出力を高めるために、固定子の固定子巻線の占積率を高めることが要望されている。固定子巻線の占積率を高めるために、ティースに複数本の線材を同時に巻付けて固定子巻線を形成した固定子が、例えば、特許文献1に開示されている。線材は、銅やアルミニウム等の導電性部材と、導電性部材の外周を覆う、樹脂製の絶縁部材とにより構成される。また、特許文献1には、ティースに複数本の線材を同時に巻付ける方法として、複数のガイド穴を有するノズルを用いる方法が開示されている。なお、複数のガイド穴それぞれから繰り出されて1つのティースに巻付けられた複数本の線材によって、複数の巻線部分が形成される。1つのティースに巻付けられた複数の巻線部分は、並列に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−211899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のガイド穴を有するノズルを用いて複数本の線材をティースに巻付ける場合には、ノズルがティースの周囲を1周する毎に線材が捻れる。線材が、捻れた状態でティースに巻付けられると、固定子巻線の占積率が低下する。このため、特許文献1に開示されているように、線材の捻れを戻す機構が必要である。なお、複数のガイド穴を有するノズルは、1つのガイド穴を有するノズルに比べて大きくなる。このため、隣接するティースによって形成されるスロット内に線材を収容可能な空間が狭くなり、固定子巻線の占積率を高めるには限界がある。
そこで、線材の捻れを防止しながら、固定子巻線の占積率を高めるために、1本の線材を、ティースに複数回に分けて巻付けることが考えられる。例えば、先ず、ティースに1本の線材を所定方向に巻付けて第1の巻線部分を形成する。次に、第1の巻線部分の外側に、1本の線材を所定方向に巻付けて第2の巻線部分を形成する。
この場合、固定子巻線の占積率を高めるために、線材は、高いテンションが加えられた状態で巻付けられる。このため、線材同士の接触等により、隣接する線材の双方あるいは一方の絶縁部材が損傷するおそれがある。ここで、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材が近接して配置される。また、第1の巻線部分により発生する磁界と第2の巻線部分により発生する磁界の向きが一致するように、第1の巻線部分と第2の巻線部分は、内側の端部(巻始め端部)同士が接続されるとともに、外側の端部(巻終わり端部)同士が接続される。すなわち、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材との間の電位差は、第1の巻線部分および第2の巻線部分に印加される電圧に略等しい。このため、線材巻付け時における線材同士の接触等によって、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材の双方あるいは一方の絶縁部材が損傷すると、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材との間の絶縁が劣化するおそれがある。
なお、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材の双方あるいは一方の絶縁部材が損傷していても、固定子製造時の絶縁検査において、絶縁の劣化が検出されないことがある。この場合でも、使用環境等によって、第1の巻線部分の外側の線材と第2の巻線部分の内側の線材の間の絶縁が劣化するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、固定子巻線の絶縁劣化を防止しながら固定子巻線の占積率を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明は、固定子に関する。本発明の固定子は、固定子コアと、固定子巻線により構成されている。固定子コアは、好適には、複数の電磁鋼板が積層された積層体により構成される。固定子コアは、軸方向に直角な断面で見て、周方向に沿って配置されている複数のティースと、周方向に隣接するティースによって形成される複数のスロットを有している。固定子巻線は、各ティースに巻付けられている。固定子巻線は、導電性部材と、導電性部材の外周を覆う絶縁部材とにより構成される線材をティースに巻付けることによって形成される。固定子巻線を固定子コアに巻付ける方式としては、好適には、固定子コアの軸方向両側に樹脂ボビンを配置した状態で線材をティースに巻付ける集中巻き方式が用いられる。本発明では、固定子巻線は、第1〜第3の電源端子にデルタ接続されている第1〜第3の固定子巻線を有している。好適には、第1〜第3の固定子巻線は、3相電動機のU相〜W相の固定子巻線を構成し、第1〜第3の電源端子は、3相交流電源のR相〜T相に接続される。
複数のティースは、それぞれ少なくとも1つのティースを含む第1〜第3のグループのティースに分けられている。例えば、6スロットの固定子では、2つのティースを含む第1〜第3のグループに分けられ、9スロットの固定子では、3つのティースを含む第1〜第3のグループに分けられる。第1〜第3のグループのティースは、それぞれ第1〜第3の固定子巻線を巻付けるティースとして用いられる。
第1〜第3の固定子巻線は、第1〜第3のグループに含まれるティースに巻付けられた第1の巻線部分と第2の巻線部分により構成される少なくとも1つの巻線群を有している。巻線群を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分は、同じティースに巻付けられる。すなわち、1つのティースに同心状に巻付けられる。例えば、6スロットの固定子では、第1〜第3の固定子巻線は、第1〜第3のグループに含まれる2つのティースそれぞれに第1の巻線部分と第2の巻線部分が同心状に巻付けられることにより、2つの巻線群を有する。
第1〜第3の固定子巻線の各巻線群を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分は、第2の巻線部分が、第1の巻線部分の外側に配置されるとともに、第1の巻線部分の巻方向と逆方向となるように、同じティースに巻付けられている。なお、第1の巻線部分および第2の巻線部分は、ティースの周りに、内側から外側に向けて巻付けられる。すなわち、第1の巻線部分および第2の巻線部分は、巻始め端部が内側に配置され、巻終わり端部が外側に配置される。
そして、第1〜第3の固定子巻線の各巻線群を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分の巻始め端部と巻終わり端部は、第1の巻線部分により発生する磁界の向きと第2の巻線部分により発生する磁界の向きが同じになるように、第1〜第3の電源端子に接続される。具体的には、同じティースに逆方向に巻付けられている第1の巻線部分と第2の巻線部に、逆方向の電流が流れるように構成される。
第1の巻線部分の外側に、第1の巻線部分の巻方向と逆方向に第2の巻線部分を巻付けるとともに、第1の巻線部分と第2の巻線部分に逆方向の電流を流すことにより、近接して配置される、第1の巻線部分の外側の部分と第2の巻線部分の内側の部分の間の電位差が小さくなる。これにより、第1の巻線部分の外側の部分と第2の巻線部分の内側の部分の間の絶縁が劣化するのを防止することができる。
本発明では、固定子巻線の絶縁劣化を防止しながら固定子巻線の占積率を高めることができる。
第1発明の他の形態では、第1〜第3の固定子巻線の各巻線群を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分は、複数のティースに一筆書きで巻付けられている1本の線材により形成されている。
本形態では、一方の線材を各ティースに連続して巻付けることによって固定子巻線を形成しているため、固定子を容易に製造することができる。
第1発明の他の形態では、線材の一方の端部と他方の端部は、第1〜第3の電源端子のうちのいずれか一つの電源端子に接続されている。
本形態では、電源端子に接続される箇所から巻き始めることができる。
第1発明の他の形態では、線材の一方の端部に、各ティースに巻付けられている第1の巻線部分の巻始め端部、第1の巻線部分、第1の巻線部分の巻終わり端部が順次接続されている。そして、最後尾の第1の巻線部分の巻き終わり端部に、各ティースに巻付けられている第2の巻線部分の巻始め端部、第2の巻線部分、第2の巻線部分の巻終わり端部が、第1の巻線部分の接続順序と逆の順序で順次接続されている。そして、最後尾の第2の巻線部分の巻終わり端部に、線材の他方の端部が接続されている。
本形態では、1本の線材を、電源端子に接続される箇所から各ティースに連続して巻付けることができる。
第2発明は、電動機に関する。本発明の電動機は、固定子と、固定子に対して相対的に回転可能な回転子を備え、固定子として前述した固定子のいずれかが用いられている。
第2発明は、前述した固定子と同様の効果を有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、固定子巻線の絶縁劣化を防止しながら固定子巻線の占積率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の電動機の、軸方向に直角な方向から見た断面図である。
図2】第1の実施形態の電動機における、U相固定子巻線〜W相固定子巻線の第1巻線および第2巻線を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分の結線状態を示す図である。
図3】同じティースに第1の巻線部分と第2の巻線部分を巻付ける第1の方法を説明する図である。
図4図3を矢印IV−IV方向から見た図である。
図5】同じティースに第1の巻線部分と第2の巻線部分を巻付ける第2の方法を説明する図である。
図6図5を矢印VI−VI方向から見た図である。
図7】第1の実施形態の電動機における、U相固定子巻線〜W相固定子巻線の第1巻線および第2巻線を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分を巻付ける方法の一例を説明する図である。
図8】第1の実施形態の電動機における、U相固定子巻線〜W相固定子巻線の第1巻線および第2巻線を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分を巻付ける方法の一例を説明する図である。
図9】巻付けたU相固定子巻線〜W相固定子巻線を第1の電源端子R〜第3の電源端子Tに接続する方法の一例を示す図である。
図10】第2の実施形態の電動機の、軸方向に直角な方向から見た断面図である。
図11】第2の実施形態の電動機における、U相固定子巻線〜W相固定子巻線の第1巻線、第2巻線および第3巻線を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分の結線状態を示す図である。
図12】第2の実施形態の電動機における、U相固定子巻線〜W相固定子巻線の第1巻線、第2巻線および第3巻線を構成する第1の巻線部分および第2の巻線部分を巻付ける方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の電動機を、図面を参照して説明する。
本明細書では、「軸方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、回転子の回転中心を通る回転中心線の方向を示す。「周方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面(図1参照)で見て、回転中心Oを中心とする円周方向を示す。「径方向」という記載は、回転子が固定子に対して相対的に回転可能に配置されている状態において、軸方向に直角な断面で見て、回転中心Oを通る方向を示す。「径方向内周側」という記載は、径方向に沿って回転中心O側を示し、「径方向外周側」という記載は、径方向に沿って回転中心Oと反対側を示す。以下では、回転中心Oを、「固定子コア中心O」と呼ぶ。
また、以下では、軸方向に直角な断面(図1)において、時計方向を「周方向一方側」と呼び、反時計方向を「周方向他方側」と呼んでいるが、「周方向一方側」および「周方向他方側」は、逆方向であってもよい。
【0009】
本発明の電動機の第1の実施形態が図1に示されている。なお、図1は、第1の実施形態の電動機100の、軸方向に直角な断面図である。第1の実施形態の電動機100は、6スロットの電動機として構成されている。
電動機100は、固定子110と、固定子110に対して相対的に回転可能な回転子150により構成されている。
【0010】
固定子110は、固定子コア120と、固定子巻線(図示省略)により構成されている。
固定子コア120は、複数の電磁鋼板を積層した積層体により構成されている。
固定子コア120は、周方向に沿って延在するヨーク121と、ヨーク121から径方向に沿って径方向内周側(固定子コア中心O側)に延在するティース122を有している。図1に示されている固定子110は、6つのティース122A〜122Fを有している。
ティース122は、ヨーク121から径方向に沿って径方向内周側に延在するティース基部123と、ティース基部123の径方向内周側に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部124を有している。ティース基部123は、周方向一方側に第1のティース基部側面123aを有し、周方向他方側に第2のティース基部側面123bを有している。ティース先端部124の径方向内周側には、円弧状のティース先端面124aが形成されている。ティース先端面124aによって、回転子150が挿入される回転子挿入空間が形成される。
周方向に隣接するティース122によってスロット125が形成されている。図1に示されている固定子110は、6つのスロット125を有している。また、周方向に隣接するティース122のティース先端部124間には、スロット開口部が形成されている。固定子巻線をティース122に巻付ける際には、固定子巻線を形成する線材40を繰り出すニードルが、スロット開口部を介してスロット125内に挿入される。
ティース122(詳しくはティース基部123)には、固定子巻線が巻付けられる。固定子巻線は、銅等の導電部材と、導電部材の外周を覆う、絶縁樹脂等の絶縁部材とを有する線材40により形成される。本実施形態では、固定子コア120の軸方向両側に樹脂ボビンを配置した状態で線材40をティース122に巻付けている。すなわち、固定子巻線は、集中巻き方式で巻付けられている。樹脂ボビンは、周方向および軸方向に沿って延在する外壁部と、外壁部より内側に配置され、周方向および軸方向に沿って延在する複数の内壁部と、外壁部と各内壁部の間に径方向に沿って延在する連結部を有している。また、樹脂ボビンは、外壁部、内壁部および連結部により囲まれ、周方向に沿って延在する凹部を有している。樹脂ボビンは、外壁部、内壁部および連結部が固定子コア120のヨーク121、ティース先端部124およびティース基部123に対向するように配置される。樹脂ボビンは、公知であるため、詳しい説明は省略する。
【0011】
本実施形態では、固定子巻線は、図2に示されているように、3相交流電源のR相、S相およびT相に接続される第1の電源端子R、第2の電源端子Sおよび第3の電源端子Tにスター接続されたU相固定子巻線、V相固定子巻線およびW相固定子巻線を有している。U相固定子巻線は、U相第1巻線U1とU相第2巻線U2を有し、V相固定子巻線は、V相第1巻線V1とV相第2巻線V2を有し、W相固定子巻線は、W相第1巻線W1とW相第2巻線W2を有している。また、U相第1巻線U1は、第1の巻線部分U1Aと第2の巻線部分U1Bを有し、U相第2巻線U2は、第1の巻線部分U2Aと第2の巻線部分U2Bを有し、V相第1巻線V1は、第1の巻線部分V1Aと第2の巻線部分V1Bを有し、V相第2巻線V2は、第1の巻線部分V2Aと第2の巻線部分V2Bを有し、W相第1巻線W1は、第1の巻線部分W1Aと第2の巻線部分W1Bを有し、W相第2巻線W2は、第1の巻線部分W2Aと第2の巻線部分W2Bを有している。
ティース122A〜122Fは、U相用の第1のグループのティース122Aと122D、V相用の第2のグループのティース122Bと122E、W相用の第3のグループのティース122Cと122Fに分けられている。なお、ティース122A〜122Fは、周方向一方方向に沿って、U相用のティース、V相用のティースおよびW相用のティースの単位で順に割り当てられている(配置されている)。
U相第1巻線U1(U1A、U1B)、V相第1巻線V1(V1A、V1B)、W相第1巻線W1(W1A、W1B)、U相第2巻線U2(U2A、U2B)、V相第2巻線V2(V2A、V2B)、W相第2巻線W2(W2A、W2B)は、それぞれティース122A〜122Fに巻付けられている。
【0012】
U相固定子巻線、V相固定子巻線およびW相固定子巻線のうちのいずれかが、本発明の「第1の固定子巻線」に対応し、残りのうちの一方が、本発明の「第2の固定子巻線」に対応し、残りのうちの他方が、本発明の「第3の固定子巻線」に対応する。U相第1巻線U1、U相第2巻線U2、V相第1巻線V1、V相第2巻線V2、W相第1巻線W1およびW相第2巻線W2が、本発明の「巻線群」に対応し、U相第1巻線U1、V相第1巻線V1およびW相第1巻線W1が、本発明の「第1の巻線群」に対応し、U相第2巻線U2、V相第2巻線V2およびW相第2巻線W2が、本発明の「第2の巻線群」に対応する。第1の巻線部分U1A、U2A、V1A、V2A、W1AおよびW2Aが、本発明の「第1の巻線部分」に対応し、第2の巻線部分U1B、U2B、V1B、V2B、W1BおよびW2Bが、本発明の「第2の巻線部分」に対応する。
第1の電源端子R、第2の電源端子Sおよび第3の電源端子Tのうちのいずれかが、本発明の「第1の電源端子」に対応し、残りのうちの一方が、本発明の「第2の電源端子」に対応し、残りのうちの他方が、本発明の「第3の電源端子」に対応する。
【0013】
本実施形態では、巻線群(U1、U2、V1、V2、W1、W2)を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分(U1AとU1B、U2AとU2B、V1AとV1B、V2AとV2B、W1AとW1B、W2AとW2B)は、同じティースに巻付けられている。すなわち、巻線群を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分は、ティースに同心状に巻付けられている。
前述したように、第2の巻線部分を、第1の巻線部分の外側に、第1の巻線部分の巻方向と同じ方向に巻付けると、第1の巻線部分(「内側巻線部分」)の外側の部分と第2の巻線部分(「外側巻線部分」)の内側との間の電位差が大きくなる。この場合、第1の巻線部分の外側の部分(外側に巻付けられた線材)および第2の巻線部分の内側の部分(内側に巻付けられた線材)の双方あるいは一方が損傷すると、第1の巻線部分の外側の部分と第2の巻線部分の内側の部分との間の絶縁が劣化するおそれがある。
本実施形態では、第1の巻線部分と第2の巻線部分を逆方向に巻付けるとともに、第1の巻線部分と第2の巻線部分に逆方向の電流が流れるように構成している。これにより、第1の巻線部分の外側の部分と第2の巻線部分の内側の部分との間の電位差を小さくして、第1の巻線部分の外側の部分と第2の巻線部分の内側の部分との間の絶縁が劣化するのを防止している。
【0014】
同じティースに第1の巻線部分と第2の巻線部分を巻付ける(同心状に巻付ける)第1の方法を、図3および図4を参照して説明する。なお、図3は、第1の方法を説明する図である。また、図4は、図3を矢印IV−IV方向から見た図である。なお、以下において、固定子コア中心O側から見て、線材40をティース122(詳しくは、ティース基部123)に時計方向(右回り方向)に巻付けることによって形成された巻線部分を実線で示し、反時計方向(左回り方向)に巻付けることによって形成された巻線部分を破線で示している。
先ず、線材40を、実線で示されているように、ティース基部123に時計方向に巻付けて第1の巻線部分(内側巻線部分)Aを形成する。この場合、ティース基部123の径方向外周側(ヨーク121側)の巻始め端部A(s)から巻始める。そして、巻付け位置(線材40を繰り出すニードルの位置)を、軸方向(図4の上下方向)およびティース基部123の径方向外周側(ヨーク121側)と径方向内周側(ティース先端124側)の間で、径方向に沿って移動させながら巻付ける。そして、ティース基部123の径方向外周側(ヨーク121側)の巻終わり端部A(e)で巻終わる。
次に、線材40を、破線で示されているように、第1の巻線部分Aの外側(外周側)に反時計方向に巻付けて第2の巻線部分(外側巻線部分)Bを形成する。この場合、ティース基部123の径方向外周側の巻始め端部B(s)から巻始める。そして、巻付け位置を、軸方向および径方向に沿って移動させながら巻付ける。そして、ティース基部123の径方向外周側の巻終わり端部B(e)で巻終わる。なお、第1の巻線部分Aと第2の巻線部分Bは、連続して巻付けられる。すなわち、第2の巻線部分Bの巻始め端部B(s)は、第1の巻線部分Aの巻終わり端部A(e)と繋がっている。
このようにして線材40をティース基部123に巻付けると、図4に示されている状態となる。すなわち、第1の巻線部分Aを形成する線材40は、第1のティース基部側面123a(内側)から周方向一方側(外側)に向かっておよび第2のティース基部側面123b(内側)から周方向他方側(外側)に向かって層状(1番目の層A1〜m番目の層Am)に巻付けられる。また、第2の巻線部分Bを形成する線材40も同様に、第1の巻線部分Aの、第1のティース基部側面123aと反対側(外側)から周方向一方側(図4の右側)に向かっておよび第2のティース基部側面123bと反対側(外側)から周方向他方側(図4の左側)に向かって層状(1番目の層B1〜n番目の層Bn)に巻付けられる。なお、層数mと層数nは、同じ整数であってもよいし、異なる整数であってもよい。
【0015】
次に、ティース122に同心状に巻き付けられた第1の巻線部分Aと第2の巻線部分Bの接続状態を説明する。
第1の巻線部分Aと第2の巻線部分Bは、逆方向に巻付けられている。このため、第1の巻線部分Aにより発生する磁界の向きと第2の巻線部分Bにより発生する磁界の向きが同じになるように、第1の巻線部分Aと第2の巻線部分Bを接続する必要がある。
本実施形態では、同じティース122に巻付けられている第1の巻線部分と第2の巻線部分のうちの一方の巻線部分の巻始め端部sと他方の巻線部分の巻終わり端部eが接続されるとともに、一方の巻線部分の巻終わり端部eと他方の巻線部分の巻始め端部sが接続されている。
第1の巻線部分(内側巻線部分)Aの巻終わり端部(外側の端部)A(e)と第2の巻線部分(外側巻線部分)Bの巻始め端部(内側の端部)B(s)が接続されることにより、第1の巻線部分Aの外側に巻付けられた(配置された)線材(層Amの線材)40と第2の巻線部分Bの内側に巻付けられた(配置された)線材(層B1の線材)40との間の電位差が小さくなる。例えば、略等しくなる。したがって、第1の巻線部分Aの外側の線材40と第2の巻線部分Bの内側の線材40の双方あるいは一方の絶縁部材が、巻付け時における線材同士の接触等によって損傷した場合でも、第1の巻線部分Aの外側の線材40と第2の巻線部分Bの内側の線材40との間の絶縁が劣化するのを防止することができる。
【0016】
同じティースに第1の巻線部分と第2の巻線部分を巻付ける第2の方法を、図5および図6を参照して説明する。なお、図5は、第2の方法を説明する図である。また、図6は、図5を矢印IV−IV方向から見た図である。
第1の方法では、第1の巻線部分(内側巻線部分)Aを、ティース基部123に時計方向に巻付け、第2の巻線部分(外側巻線部分)Bを、ティース基部123に反時計方向に巻きつけた。第2の方法では、第1の巻線部分Aを、ティース基部123に反時計方向に巻付け、第2の巻線部分Bを、ティース基部123に時計方向に巻付ける。
第2の方法においても、第1の巻線部分(内側巻線部分)Aの巻始め端部A(s)および巻終わり端部A(e)を、第2の巻線部分Bの巻終わり端部B(e)および巻始め端部A(e)に接続している。これにより、第1の巻線部分Aの外側に配置される線材(層Amの線材)40と第2の巻線部分Bの内側に配置される線材(層B1の線材)との間の電位差が小さくなる。
【0017】
次に、本実施形態の電動機100における、U相固定子巻線、V相固定子巻線およびW相固定子巻線を各ティース122A〜122Fに巻付ける方法の一例を、図7図8を参照して説明する。なお、図7図8は、一例の巻付け方法を、異なる記述方法で表したものである。図7および図8に示されている方法は、固定子巻線を形成する線材40を各ティース122A〜122Fに一筆書きで連続して巻付ける方法である。
なお、以下では、U相用の第1のグループのティース122Aと122Dに、U相固定子巻線のU相第1巻線U1を構成する第1の巻線部分U1Aおよび第2の巻線部分U1BとU相第2巻線U2を構成する第1の巻線部分U2Aおよび第2の巻線部分U2Bを巻付け、V相用の第2のグループのティース122Bと122Eに、V相固定子巻線のV相第1巻線V1を構成する第1の巻線部分V1Aおよび第2の巻線部分V1BとV相第2巻線V2を構成する第1の巻線部分V2Aおよび第2の巻線部分V2Bを巻付け、W相用の第3のグループのティース122Cと122Fに、W相固定子巻線のW相第1巻線W1を構成する第1の巻線部分W1Aおよび第2の巻線部分W1BとW相第2巻線W2を構成する第1の巻線部分W2Aおよび第2の巻線部分W2Bを巻付ける場合について説明する。
【0018】
図7図8に示されている方法を用いて線材40を各ティース122A〜122Fに巻付けた場合、線材40の一方の端部と他方の端部は、第1の電源端子R〜第3の電源端子Tのうちのいずれか一つの電源端子に接続される。すなわち、線材40の一方の端部に、各ティースに巻付けられた第1の巻線部分が順次接続され、最後尾の第1の巻線部分に、各ティースに巻付けられた第2の巻線部分が、第1の巻線部分の接続順序と逆の順序で順次接続され、最後尾の第2の巻線部分に、線材40の他方の端部が接続される。
【0019】
図7図8に示されている方法を具体的に説明する。なお、図7図8では、ティース122A〜122Fには、第1の巻線部分(内側巻線部分)U1A、V1A、W1A、U2A、V2A、W2Aが時計方向に巻付けられ、第2の巻線部分(外側巻線部分)U1B、V1B、W1B、U2B、V2B、W2Bが反時計方向に巻付けられる。
【0020】
線材40を繰り出すニードル(巻付け位置)は、位置(1)から、ティース122Aの第1の巻線部分U1Aの巻始め端部sの位置(2)および巻終わり端部eの位置(3)を介して、位置(4)に移動する(U相第1巻線U1の第1の巻線部分U1Aの形成)。
続けて、ティース122Aより周方向一方側に配置されているティース122Bの第1の巻線部分V1Aの巻始め端部sの位置(5)および巻終わり端部eの位置(6)を介して、位置(7)に移動する(V相第1巻線V1の第1の巻線部分V1Aの形成)。
続けて、ティース122Bより周方向一方側に配置されているティース122Cの第1の巻線部分W1Aの巻始め端部sの位置(8)および巻終わり端部eの位置(9)を介して、位置(10)に移動する(W相第1巻線W1の第1の巻線部分W1Aの形成)。
続けて、ティース122Cより周方向一方側に配置されているティース122Dの第1の巻線部分U2Aの巻始め端部sの位置(11)および巻終わり端部eの位置(12)を介して、位置(13)に移動する(U相第2巻線U2の第1の巻線部分U2Aの形成)。
続けて、ティース122Dより周方向一方側に配置されているティース122Eの第1の巻線部分V2Aの巻始め端部sの位置(14)および巻終わり端部eの位置(15)を介して、位置(16)に移動する(V相第2巻線V2の第1の巻線部分V2Aの形成)。
続けて、ティース122Eより周方向一方側に配置されているティース122Fの第1の巻線部分W2Aの巻始め端部sの位置(17)および巻終わり端部eの位置(18)を介して、位置(19)に移動する(W相第2巻線W2の第1の巻線部分W2Aの形成)。
【0021】
続けて、ティース122Fの第2の巻線部分W2Bの巻始め端部sの位置(20)および巻終わり端部eの位置(21)を介して、位置(22)に移動する(W相第2巻線W2の第2の巻線部分W2Bの形成)。
続けて、ティース122Fより周方向他方側に配置されているティース122Eの第2の巻線部分V2Bの巻始め端部sの位置(23)および巻終わり端部eの位置(24)を介して、位置(25)に移動する(V相第2巻線V2の第2の巻線部分V2Bの形成)。
続けて、ティース122Eより周方向他方側に配置されているティース122Dの第2の巻線部分U2Bの巻始め端部sの位置(26)および巻終わり端部eの位置(27)を介して、位置(28)に移動する(U相第2巻線U2の第2の巻線部分U2Bの形成)。
続けて、ティース122Dより周方向他方側に配置されているティース122Cの第2の巻線部分W1Bの巻始め端部sの位置(29)および巻終わり端部eの位置(30)を介して、位置(31)に移動する(W相第1巻線W1の第2の巻線部分W1Bの形成)。
続けて、ティース122Cより周方向他方側に配置されているティース122Bの第2の巻線部分V1Bの巻始め端部sの位置(32)および巻終わり端部eの位置(33)を介して、位置(34)に移動する(V相第1巻線V1の第2の巻線部分V1Bの形成)。
続けて、ティース122Bより周方向他方側に配置されているティース122Aの第2の巻線部分U1Bの巻始め端部sの位置(35)および巻終わり端部eの位置(36)を介して、位置(37)に移動する(U相第1巻線U1の第2の巻線部分U1Bの形成)。
【0022】
第1の巻線部分U1A〜W1A、U2A〜W2A、第2の巻線部分U1B〜W1B、U2B〜W2Bの巻始め端部sおよび巻終わり端部eと位置(1)、(4)、(7)、(10)、(13)、(16)、(19)、(22)、(25)、(28)、(31)、(34)、(37)との間の線材40は、周方向に沿って引き回される。線材40を周方向に沿って引き回す態様としては、例えば、樹脂ボビンの凹部内を引き回す態様、樹脂ボビンの外壁部の内側を引き回す態様、樹脂ボビンの外壁部の外側を引き回す態様、樹脂ボビンの外壁部に、周方向に沿って離間して形成された溝を外壁部の内側から外側および外側から内側に交互に通しながら引き回す態様が用いられる。線材40の引き回しは、ニードルの位置を制御することによって各ティースに線材を巻付けながら行うこともできるし、各ティースへの巻付けが完了した後、作業員が手作業で行うこともできる。
また、周方向に沿って引き回された線材40が移動するのを防止するために、線材を固定するのが好ましい。例えば、紐等を用いて、線材40を樹脂ボビンの内壁部や外壁部に結び付ける方法が用いられる。
【0023】
また、位置(1)、(4)、(7)、(10)、(13)、(16)、(19)、(22)、(25)、(28)、(31)、(34)、(37)に引き回された線材40は、第1の電源端子R、第2の電源端子S、第3の電源端子Tに接続される。
線材40を第1の電源端子R、第2の電源端子S、第3の電源端子Tに接続する方法としては、種々の方法を用いることができる。
【0024】
線材40を第1の電源端子R、第2の電源端子S、第3の電源端子Tに接続する方法の一例を、図9を参照して説明する。
U1Aから引き回された部分、W1AおよびU2Aから引き回された部分、W2AおよびW2Bから引き回された部分、W1BおよびU1Bから引き回された部分の、位置(1)、(10)、(19)、(28)、(37)の近傍の領域の部分(一点鎖線で囲まれた部分)の絶縁部材を剥離する。そして、絶縁部材を剥離した部分と接続線材41の一方側の端部を撚り、撚った部分を溶接あるいはハンダ付けする。これにより、各線材40の導電部材と接続線材41が電気的に接続され、WU相端部50WUが形成される。WU相端部50WUは、絶縁フィルム60で覆われて絶縁される。
同様に、U1AおよびV1Aから引き回された部分、U2AおよびV2Aから引き回された部分、V2BおよびU2Bから引き回された部分、V1BおよびU1Bから引き回された部分の、位置(4)、(13)、(25)、(34)の近傍の領域の部分(一点鎖線で囲まれた部分)の絶縁部材を剥離する。そして、絶縁部材を剥離した部分と接続線材42の一方側の端部を撚り、撚った部分を溶接あるいはハンダ付けすることによって、UV相端部50UVが形成される。UV相端部50UVは、絶縁フィルム60で覆われて絶縁される。
また、V1AおよびW1Aから引き回された部分、V2AおよびW2Aから引き回された部分、W2BおよびV2Bから引き回された部分、W1BおよびV1Bから引き回された部分の、位置(7)、(16)、(22)、(31)の近傍の領域の部分(一点鎖線で囲まれた部分)の絶縁部材を剥離する。そして、絶縁部材を剥離した部分と接続線材43の一方側の端部を撚り、撚った部分を溶接あるいはハンダ付けすることによって、VW相端部50VWが形成される。VW相端部50VWは、絶縁フィルム60で覆われて絶縁される。
そして、接続線材41〜43の他方側の端部をクラスタ70に接続する。なお、クラスタ70は、3相交流電源のR相、S相、T相に接続可能に構成されている。すなわち、クラスタ70は、各第1の巻線部分および第2の巻線部分を3相交流電源に接続する第1の電源端子R、第2の電源端子S、第3の電源端子Tを有する。
UV相端部50UV、VW相端部50VW、WU相端部50WUが、本発明の「第1の接続端部」、「第2の接続端部」、「第3の接続端部」に対応する。
【0025】
本発明の電動機の第2の実施形態が図10に示されている。なお、図10は、第2の実施形態の電動機200の、軸方向に直角な断面図である。第2の実施形態の電動機200は、9スロットの電動機として構成されている。
電動機200は、第1の実施形態の電動機100と同様に、固定子210と回転子250により構成されている。
固定子210は、固定子コア220と、固定子巻線(図示省略)により構成されている。固定子コア220は、周方向に沿って延在するヨーク221と、ヨーク221から径方向に沿って径方向内周側に延在するティース222を有している。図9に示されている固定子210は、9個のティース222A〜222Iを有している。ティース222は、ティース基部223とティース先端部224を有している。
【0026】
本実施形態では、固定子巻線は、図11に示されているように、第1の電源端子R、第2の電源端子Sおよび第3の電源端子Tにデルタ接続されたU相固定子巻線、V相固定子巻線およびW相固定子巻線を有している。U相固定子巻線は、U相第1巻線U1、U相第2巻線U2およびU相第3巻線U3を有し、V相固定子巻線は、V相第1巻線V1、V相第2巻線V2およびV相第3巻線V3を有し、W相固定子巻線は、W相第1巻線W1、W相第2巻線W2およびW相第3巻線W3を有している。また、U相第1巻線U1は、第1の巻線部分U1Aと第2の巻線部分U1Bにより構成され、U相第2巻線U2は、第1の巻線部分U2Aと第2の巻線部分U2Bにより構成され、U相第3巻線U3は、第1の巻線部分U3Aと第2の巻線部分U3Bにより構成され、V相第1巻線V1は、第1の巻線部分V1Aと第2の巻線部分V1Bにより構成され、V相第2巻線V2は、第1の巻線部分V2Aと第2の巻線部分V2Bにより構成され、V相第3巻線V3は、第1の巻線部分V3Aと第2の巻線部分V3Bにより構成され、W相第1巻線W1は、第1の巻線部分W1Aと第2の巻線部分W1Bにより構成され、W相第2巻線W2は、第1の巻線部分W2Aと第2の巻線部分W2Bにより構成され、W相第3巻線W3は、第1の巻線部分W3Aと第2の巻線部分W3Bにより構成されている。
ティース222A〜222Iは、U相用の第1のグループのティース222A、222Dおよび222G、V相用の第2のグループのティース222B、222Eおよび222H、W相用の第3のグループのティース222C、222Fおよび222Iに分けられている。なお、ティース222A〜222Iは、周方向一方方向に沿って、U相用のティース、V相用のティースおよびW相用のティースの単位で順に割り当てられている(配置されている)。
U相第1巻線U1(U1A、U1B)、V相第1巻線V1(V1A、V1B)、W相第1巻線W1(W1A、W1B)、U相第2巻線U2(U2A、U2B)、V相第2巻線V2(V2A、V2B)、W相第2巻線W2(W2A、W2B)、U相第3巻線U3(U3A、U3B)、V相第3巻線V3(V3A、V3B)、W相第3巻線W3(W3A、W3B)は、それぞれティース222A〜222Iに巻付けられている。
【0027】
U相第1巻線U1、U相第2巻線U2、U相第3巻線U3、V相第1巻線V1、V相第2巻線V2、V相第3巻線V3、W相第1巻線W1、W相第2巻線W2およびW相第3巻線W3が、本発明の「巻線群」に対応し、U相第1巻線U1、V相第1巻線V1およびW相第1巻線W1が、本発明の「第1の巻線群」に対応し、U相第2巻線U2、V相第2巻線V2およびW相第2巻線W2が、本発明の「第2の巻線群」に対応し、U相第3巻線U3、V相第3巻線V3およびW相第3巻線W3が、本発明の「第3の巻線群」に対応する。第1の巻線部分U1A、U2A、U3A、V1A、V2A、V3A、W1A、W2AおよびW3Aが、本発明の「第1の巻線部分」に対応し、第2の巻線部分U1B、U2B、U3B、V1B、V2B、V3B、W1B、W2BおよびW3Bが、本発明の「第2の巻線部分」に対応する。
【0028】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、巻線群(U1、U2、U3、V1、V2、V3、W1、W2、W3)を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分(U1AとU1B、U2AとU2B、U3AとU3B、V1AとV1B、V2AとV2B、V3AとV3B、W1AとW1B、W2AとW2B、W3AとW3B)は、同じティースに巻付けている。すなわち、巻線群を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分は、ティースに同心状に巻付けられている。
第2の巻線部分は、同じティースに巻付けられている第1の巻線部分の外側に、第1の巻線部分の巻方向と逆方向に巻付けられている。
そして、同じティースに巻付けられている第1の巻線部分および第2の巻線部分の巻始め端部と巻終わり端部は、第1の巻線部分により発生する磁界の向きと第2の巻線部分により発生する磁界の向きが同じになるように第1〜第3の電源端子に接続されている。すなわち、第1の巻線部分と第2の巻線部に逆方向の電流が流れるように構成されている。
【0029】
本実施形態の電動機200における、U相固定子巻線、V相固定子巻線およびW相固定子巻線を各ティース222A〜222Iに巻付ける方法の一例を、図12を参照して説明する。図12に示されている方法は、固定子巻線を形成する線材40を各ティース222A〜222Iに一筆書きで連続して巻付ける方法である。
なお、以下では、U相用の第1のグループのティース222A、222Dおよび222Gに、U相固定子巻線のU相第1巻線U1を構成する第1の巻線部分U1Aおよび第2の巻線部分U1B、U相第2巻線U2を構成する第1の巻線部分U2Aおよび第2の巻線部分U2B、U相固定子巻線U3を構成する第1の巻線部分U3Aおよび第2の巻線部分U3Bを巻付け、V相用の第2のグループのティース222B、222Eおよび222Hに、V相固定子巻線のV相第1巻線V1を構成する第1の巻線部分V1Aおよび第2の巻線部分V1B、V相第2巻線V2構成する第1の巻線部分V2Aおよび第2の巻線部分V2B、V相第3巻線V3を構成する第1の巻線部分V3AおよびV3Bを巻付け、W相用の第3のグループのティース222C、222Fおよび222Iに、W相固定子巻線のW相第1巻線W1を構成する第1の巻線部分W1Aおよび第2の巻線部分W1B、W相第2巻線W2を構成する第1の巻線部分W2Aおよび第2の巻線部分W2B、W相第3巻線を構成する第1の巻線部分W3Aおよび第2の巻線部分W3Bを巻付ける場合について説明する。
【0030】
図12に示されている方法を用いて線材40を各ティース222A〜222Iに巻付けた場合、線材40の一方の端部と他方の端部は、第1の電源端子R〜第3の電源端子Tのうちのいずれか一つの電源端子に接続される。すなわち、線材40の一方の端部に、各ティースに巻付けられた第1の巻線部分が順次接続され、最後尾の第1の巻線部分に、各ティースに巻付けられた第2の巻線部分が、第1の巻線部分の接続順序と逆の順序で順次接続され、最後尾の第2の巻線部分に線材40の他方の端部が接続される。
【0031】
図12に示されている方法を具体的に説明する。
線材40を繰り出すニードルは、図7図8に示されている方法と同様に、位置(1)から位置(19)まで移動する(U相第1巻線U1の第1の巻線部分U1A、V相第1巻線V1の第1の巻線部分V1A、W相第1巻線W1の第1の巻線部分W1A、U相第2巻線U2の第1の巻線部分U2A、V相第2巻線V2の第1の巻線部分V2A、W相第2巻線W2の第1の巻線部分W2Aの形成)。
【0032】
続けて、ティース222Fより周方向一方側に配置されているティース222Gの第1の巻線部分U3Aの巻始め端部sの位置(20)および巻終わり端部eの位置(21)を介して、位置(22)に移動する(U相第3巻線U3の第2の巻線部分U3Aの形成)。
続けて、ティース222Gより周方向一方側に配置されているティース222Hの第1の巻線部分V3Aの巻始め端部sの位置(23)および巻終わり端部eの位置(24)を介して、位置(25)に移動する(V相第3巻線V3の第1の巻線部分V3Aの形成)。
続けて、ティース222Hより周方向一方側に配置されているティース222Iの第1の巻線部分W3Aの巻始め端部sの位置(26)および巻終わり端部eの位置(27)を介して、位置(28)に移動する(W相第3巻線W3の第1の巻線部分W3Aの形成)。
【0033】
続けて、ティース222Iの第2の巻線部分W3Bの巻始め端部sの位置(29)および巻終わり端部eの位置(30)を介して、位置(31)に移動する(W相第3巻線W3の第2の巻線部分W3Bの形成)。
続けて、ティース222Iより周方向他方側に配置されているティース222Hの第2の巻線部分V3Bの巻始め端部sの位置(32)および巻終わり端部eの位置(33)を介して、位置(34)に移動する(V相第3巻線V3の第2の巻線部分V3Bの形成)。
続けて、ティース222Hより周方向他方側に配置されているティース222Gの第2の巻線部分U3Bの巻始め端部sの位置(35)および巻終わり端部eの位置(36)を介して、位置(37)に移動する(U相第3巻線U3の第2の巻線部分U3Bの形成)。
続けて、ティース222Gより周方向他方側に配置されているティース222Fの第2の巻線部分W2Bの巻始め端部sの位置(38)および巻終わり端部eの位置(39)を介して、位置(40)に移動する(W相第2巻線W2の第2の巻線部分W2Bの形成)。
【0034】
続けて、図7図8に示されている方法と同様に、位置(40)から位置(55)まで移動する(V相第2巻線V2の第2の巻線部分V2B、U相第2巻線U2の第2の巻線部分U2B、W相第1巻線W1の第2の巻線部分W1B、V相第1巻線V1の第2の巻線部分V1B、U相第1巻線U1の第2の巻線部分U1Bの形成)。
【0035】
第1の巻線部分U1A〜W1A、U2A〜W2A、U3A〜W3A、第2の巻線部分U1B〜W1B、U2B〜W2B、U3B〜W3Bの巻始め端部sおよび巻終わり端部eと位置(1)、(4)、(7)、(10)、(13)、(16)、(19)、(22)、(25)、(28)、(31)、(34)、(37)、(40)、(43)、(46)、(49)、(52)、(55)との間の線材40は、周方向に沿って引き回される。線材40を周方向に沿って引き回す方法としては、前述した方法を用いることができる。
【0036】
位置(1)、(4)、(7)、(10)、(13)、(16)、(19)、(22)、(25)、(28)、(31)、(34)、(37)、(40)、(43)、(46)、(49)、(52)、(55)に引き回された線材40を第1の電源端子R、第2の電源端子S、第3の電源端子Tに接続する方法としては、図7および図8で説明した方法と同様の方法を用いることができる。本実施形態では、UV相端部50UV、VW相端部50VW、WU相端部50WUを構成する引き回し部分の数が、ティースの数(スロットの数)の増大に伴って増大している。
【0037】
以上では、6スロットの電動機100と9スロットの電動機200について説明したが、本発明は、3k個(kは正の整数)のスロットを有する電動機として構成することができる。
この場合、線材40の一方の端部に、3k個のティースに巻付けられた第1の巻線部分が直列に接続され、最後尾の第1の巻線部分に、3k個のティースに巻付けられた第2の巻線部分が、第1の巻線部分の接続順序と逆の順序で直列に接続され、最後尾の第2の巻線部分に、線材40の他方の端部が接続される。
【0038】
本発明は、詳細な説明で説明した構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、追加、削除が可能である。
巻線群を構成する第1の巻線部分と第2の巻線部分の巻方向および第1の巻線部分と第2の巻線部分との接続態様は、回転子が所定方向に回転するように設定される。
本発明は、電動機として構成することもできるし、固定子として構成することもできる。
本発明は、固定子巻線の巻線方法として構成することもできる。
実施形態で記載した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
【0039】
本発明は、以下のように構成することもできる。
「(態様1)請求項4に記載の固定子であって、前記線材の一方の端部に、各ティースに巻付けられている第1の巻線部分が、周方向一方側に隣接するティースの順に順次接続され、最後尾の第1の巻線部分に、各ティースに巻付けられている第2の巻線部分が、周方向他方側に隣接するティースの順に順次接続されていることを特徴とする固定子。」
「(態様2)態様1の固定子であって、前記複数のティースは、第1のグループのティース、第2のグループのティースおよび第3のグループのティースの単位で周方向一方方向に沿って順次割り当てられていることを特徴とする固定子。」
【符号の説明】
【0040】
40 線材
50WU WU相端部
50UV UV相端部
50VW VW相端部
60 絶縁フィルム
70 クラスタ
41〜43 接続用線材
100、200 電動機
110、210 固定子
120、220 固定子コア
121、221 ヨーク
122、122A〜122F、222A〜222I ティース
123、223 ティース基部
123a、223a 第1のティース基部側面
123b、223b 第2のティース基部側面
124、224 ティース先端部
124a、224a ティース先端面
125、225 スロット
150、250 回転子
160、260 回転子コア
161、261 外周面
162、262 内周面
170、270 回転軸
U1〜U3 U相第1巻線〜U相第3巻線(巻線群)
V1〜V3 V相第1巻線〜V相第3巻線(巻線群)
W1〜W3 W相第1巻線〜W相第3巻線(巻線群)
U1A〜U3A、V1A〜V3A、W1A〜W3A 第1の巻線部分(内側巻線部分)
U1B〜U3B、VIB〜V3B、W1B〜W3B 第2の巻線部分(外側巻線部分)
R〜T 第1の電源端子〜第3の電源端子
図1
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図12