【解決手段】処方せん91又は注射ラベル92に付されており、且つ、1次元バーコードよりも情報量が多い情報コードであって、調整情報に対応する第1情報コード91a、92aを読み取るバーコードリーダー4と、シリンジ95の重量を計測する電子天秤5と、操作者に情報を表示する液晶ディスプレイ7及びLEDランプ8と、バーコードリーダー4によって読み取られた第1情報コード91a又は第1情報コード92aに対応する調整情報を記憶する制御装置10とを備えている。
前記第1情報保持手段は、印刷物に付されている、または、携帯端末の表示画面に表示されるデータに付されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の調剤支援システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態にかかる調整支援システム1は、医師が発行する注射用の処方せんに基づいて行われる抗がん剤の調整作業を支援するためのものである。本調整支援システム1は、例えば、処方せんを発行する医師がいる病院とは別の病院に設置され、遠隔地治療における薬剤の調整作業に用いられる。また、処方せんを発行する医師がいる病院の薬剤調整室に設置されることもできる。抗がん剤の調整には、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、バイアル93に収容された注射抗がん剤、及び、輸液バッグ94に収容された輸液が用いられる。注射抗がん剤には、液体のものと、粉末等であり溶解が必要なものがある。
【0028】
ここで、
図1(a)、(b)を参照しつつ、注射抗がん剤が液体である場合の調整作業について説明する。まず、
図1(a)に示すように、液体の注射抗がん剤が収容されたバイアル93と輸液バッグ94とを用意する。そして、
図1(b)に示すように、処方せんの内容に基づいて、シリンジ95によりバイアル93から所定量の注射抗がん剤を吸引する。その後、輸液バッグ94に吸引した注射抗がん剤を注入する。
【0029】
次いで、
図2(a)〜(d)を参照しつつ、注射抗がん剤が溶解が必要なものである場合の調整作業について説明する。まず、
図2(a)に示すように、溶解が必要な注射抗がん剤が収容されたバイアル93と輸液バッグ94とを用意する。そして、
図2(b)に示すように、シリンジ95により輸液バッグ94から溶解用の輸液(溶解液)を所定量吸引する。次に、溶解液をバイアル93に注入して、
図2(c)に示すような液状の注射抗がん剤を作製する。さらに、
図2(d)に示すように、液状の注射抗がん剤をシリンジ95により所定量吸引する。その後、輸液バッグ94に吸引した注射抗がん剤を注入する。
【0030】
続いて、
図3を参照しつつ、調整支援システム1の概略構成について説明する。
図3に示すように、調整支援システム1は、安全キャビネット2、本体ユニット3、バーコードリーダー4(第1情報読取装置、第2情報読取装置)、電子天秤5(計測装置)、及びラベルプリンタ6(印刷装置)を備えている。本体ユニット3及び電子天秤5は、安全キャビネット2の後述する作業空間29内に配置されている。また、バーコードリーダー4及びラベルプリンタ6は、安全キャビネット2の作業空間29の外に配置されている。なお、以下の説明において、
図3に示す上下、左右、前後の各方向を、上下方向、左右方向、及び前後方向と定義する。
【0031】
安全キャビネット2は、本体ユニット3及び電子天秤5が載置される作業台21を有している。作業台21の上方の作業空間29は、作業台21の左右両側に配置された側壁25、後方に配置された後方壁26、及び天井壁27により囲まれている。作業台21の前方には、透明な板であるシャッター28が配置されている。シャッター28は上下にスライド可能であり、且つ、任意の高さ位置で停止させることができる。安全キャビネット2は、作業空間29内の空気を吸引するファン(図示せず)を備えており、ファンを駆動することで作業空間29を陰圧状態に保つことができる。
【0032】
本体ユニット3は、筐体10aに制御基板等を内蔵した制御装置10と、筐体10aの表面に配置された液晶ディスプレイ7(表示装置)、LEDランプ8(表示装置)、及びシートキー9とを備える。すなわち、制御装置10、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9は一体に構成されている。なお、筐体10aには図示しないUSB端子が設けられている。
【0033】
バーコードリーダー4は、1次元バーコード、及び、1次元バーコードよりも情報量が多い2次元バーコードをスキャンして読み取ることができる。より具体的には、バーコードリーダー4は、後述するように、処方せん91に印刷された第1情報コード91a(2次元バーコード)、注射ラベル92に印刷された第1情報コード92a(2次元バーコード)、バイアル93に付された第2情報コード93a(1次元バーコード)、及び輸液バッグ94に付された第2情報コード94a(1次元バーコード)を読み取ることができる。バーコードリーダー4は、配線により制御装置10と有線通信可能に接続されるか、無線LANやBluetooth(登録商標)等により制御装置10と無線通信可能に接続されている。
【0034】
本実施形態においては、
図4(a)に示すように、処方せん91に2次元バーコードからなる第1情報コード91aが印刷されている。また、注射ラベル92にも2次元バーコードからなる第1情報コード92aが印刷されている。これら第1情報コード91a、92aには、調整情報を管理する番号(処方せんNo又は注射ラベルNo)、患者名、注射抗がん剤の名称、輸液の名称、及び注射抗がん剤の指示成分量等を含む調整情報が記憶されている。
【0035】
なお、処方せん91の第1情報コード91aと、注射ラベル92の第1情報コード92aとは、いずれか一方のみであってもよい。すなわち、処方せん91に第1情報コード91aが印刷されていれば、注射ラベル92の第1情報コード92aはなくてもよい。また、注射ラベル92に第1情報コード92aが印刷されていれば、処方せん91の第1情報コード91aはなくてもよい。処方せん91及び注射ラベル92は、医師が薬剤の処方を入力するPC(図示せず)が属する院内の情報システムに接続されたプリンタ(図示せず)から出力されるものである。
【0036】
本実施形態の調整支援システム1では、図示しないスイッチにより、処方せん91の第1情報コード91aを採用するモードと、注射ラベル92の第1情報コード92aを採用するモードとを切り替えることができる。以下の説明においては、注射ラベル92の第1情報コード92aを採用するモードである場合について説明する。
【0037】
また、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、注射抗がん剤が収容されているバイアル93のラベル93bには、そのバイアル93に収容されている注射抗がん剤の名称に関する情報に対応する第2情報コード93aが印刷されている。第2情報コード93aは1次元バーコードである。さらに、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、輸液バッグ94には、その輸液バッグ94に収容されている輸液の名称に関する情報に対応する第2情報コード94aが付されている。第2情報コード94aは1次元バーコードである。なお、バイアル93の第2情報コード93a、及び、輸液バッグ94の第2情報コード94aは、いずれもGS1コード規格で規定されたコードである。
【0038】
電子天秤5は、重量を測定する計測器である。電子天秤5は、制御装置10と情報通信可能に接続されており、計測した結果を制御装置10に送信することができる。本実施形態においては、電子天秤5では、バイアル93又は輸液バッグ94から収容されている液体(注射抗がん剤又は輸液)をシリンジ95で吸引するときに、吸引する前および後のシリンジ95の重量が測定される。
【0039】
ラベルプリンタ6は、後で詳述するように調整結果である調整記録80(
図7参照)を印刷するものである。ラベルプリンタ6は、Bluetooth(登録商標)等により制御装置10と無線通信可能に接続されている。
【0040】
次に、
図5を参照しつつ、制御装置10について説明する。制御装置10は、調整支援システム1全体の制御を司るものである。制御装置10は、バスによって互いに接続された、CPU(Central Processing Unit)16、ROM(Read Only Memory)17、RAM(Random Access Memory)18、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)19等を備えている。制御装置10には、バーコードリーダー4、電子天秤5、ラベルプリンタ6、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9が接続される。制御装置10は、ROM17に記憶されたプログラムに従って、CPU16及びASIC19によって調整支援システム1の各部の制御を行う。
【0041】
制御装置10は、バーコードリーダー4によって読み取られた情報を記憶する。具体的には、制御装置10は、処方せん91の第1情報コード91a又は注射ラベル92の第1情報コード92aを読み取ることによって得られた調整情報を記憶する。なお、上述のように、調整情報は、調整情報を管理する番号、患者名、注射抗がん剤の名称、輸液の名称、及び注射抗がん剤の指示成分量である。また、制御装置10は、バイアル93の第2情報コード93aを読み取ることによって得られた注射抗がん剤の名称に関する情報を記憶する。さらに、制御装置10は、輸液バッグ94の第2情報コード94aを読み取ることによって得られた輸液の名称に関する情報を記憶する。
【0042】
また、制御装置10は、各種の注射抗がん剤及び輸液に関する情報を含む薬剤データテーブルを記憶している。具体的には、
図6に示すように、制御装置10には、薬剤バーコードNo、薬剤名称、バイアル内成分量、バイアル内容量、比重、入力成分量上限値、液体/溶解が必要な抗がん剤、及び溶解液量の8項目のからなる薬剤データデーブルが記憶されている。なお、制御装置10に記憶されている薬剤データテーブルの内容は、追加や修正を行うことができる。薬剤データテーブルの内容の変更は、例えばUSBメモリ等の記録された情報を制御装置10に取り込むことでなされる。
【0043】
「薬剤バーコードNo」の項目は、GS1コード規格で規定された薬剤のバーコードのナンバーであり、数値が記憶されている。「薬剤名称」の項目には、薬剤の名称が記憶されている。「バイアル内成分量」の項目は、バイアル内の注射抗がん剤の成分量であり、数値及び単位(mg、KE、KU、又はml等)が記憶されている。「バイアル内容量」の項目は、バイアル内の容量であり、数値及び単位(ml)が記憶されている。「比重」の項目は、液体の注射抗がん剤、又は、溶解後の注射抗がん剤の比重であり、数値が記憶されている。「液体/溶解が必要な抗がん剤」の項目には、「液体」又は「溶解が必要な抗がん剤」のいずれかの種別が記憶される。「溶解液量」の項目は、溶解が必要な注射抗がん剤の溶解液量、すなわち溶解時にバイアル93に注入する溶解液量であり、数値及び単位(ml)が記憶されている。「入力成分量上限値」の項目には、入力された成分量が大きく外れた数値であった場合等に、液晶ディスプレイ7やLEDランプ8に対するエラー表示等により警告するために用いられる値であって、予め設定される。
【0044】
また、制御装置10は、調整を行うために用意されたバイアル93に収容された注射抗がん剤及び輸液バッグ94に収容された輸液が、調整情報に含まれる注射抗ガン剤の種類及び輸液の種類に一致している否かを判断する判断処理を行う。具体的には、記憶している調整情報に含まれる注射抗がん剤に関する情報と、バイアル93に付されている第2情報コード93aを読み取ることで得られた注射抗がん剤の名称に関する情報とに基づいて、注射抗がん剤が一致しているか否かを判断する。また、記憶している調整情報に含まれる輸液に関する情報と、輸液バッグ94に付されている第2情報コード94aを読み取ることで得られた輸液の名称に関する情報とに基づいて、輸液が一致しているか否かを判断する。
【0045】
さらに、制御装置10は、シリンジ95によりバイアル93又は輸液バッグ94から薬剤を吸引する前および後に電子天秤5で計測されたシリンジ95の重量の差に基づいて、実際に吸引された実吸引量を算出する実吸引量算出処理を行う。また、制御装置10は、記憶している調整情報(指示成分量)、薬剤データテーブルに基づいて、必要吸引量を算出する必要吸引量算出処理を行う。尚、必要吸引量算出処理においては、注射抗がん剤が液体の抗がん剤である場合と溶解が必要な抗がん剤である場合とで処理の内容が異なる。必要吸引量算出処理において、注射抗がん剤が溶解が必要な抗がん剤である場合は、液体の抗がん剤である場合に加えて、輸液バッグ94の溶解液等で溶解する作業が行われる。そして、制御装置10は、必要吸引量算出処理で算出された必要吸引量及び実吸引量算出処理で算出された実吸引量に基づいて、バイアル93からの薬剤の吸引量が適正であるか否かを判定する判定処理を行う。判定処理においては、例えば必要吸引量と実吸引量との誤差に基づいて、バイアル93からの薬剤の吸引量が適正であるか否かを判定する。
【0046】
また、制御装置10は、液晶ディスプレイ7に調整を支援するための情報を表示する。具体的には、液晶ディスプレイ7には、制御装置10が記憶している調整情報に含まれる調整情報を管理する番号(注射ラベルNo)、注射抗がん剤の名称、輸液の名称、指示成分量が表示される。さらに、液晶ディスプレイ7には、必要吸引量、シリンジ95の空重量、実溶解液量(溶解が必要な注射抗がん剤である場合のみ)、実吸引量、誤差率、及びが判定処理の判定結果が表示される。さらに、制御装置10は、判定処理の判定結果に応じてLEDランプ8の表示色を変更する。具体的には、判定処理において注射抗がん剤の吸引量が適正であると判断した場合には、LEDランプ8が青色に点灯するように制御する。また、判定処理において注射抗がん剤の吸引量が不適正であると判断した場合には、LEDランプ8が赤色に点灯するように制御する。
【0047】
加えて、制御装置10は、
図7に示すような調整結果が印刷された調整記録80がラベルプリンタ6で印刷されるように制御する印刷処理をさらに実行する。
図7に示すように、調整記録80には、制御装置10が記憶している調整情報に含まれる調整情報を管理する番号(注射ラベルNo)、注射抗がん剤の名称、輸液の名称、指示成分量が印刷されている。さらに、調整記録80には、必要吸引量、及び、実吸引量が印刷されている。
【0048】
次に、
図8、9を参照しつつ、注射抗がん剤が液体である場合に、制御装置10で行われる処理手順の一例について説明する。なお、以下の手順において、液晶ディスプレイ7には、抗がん剤の調整を行う操作者に対する情報として、『調整を行うために必要なデータ(以降、「必要データ」と称する)』と、『調整を進めるためのガイドメッセージ(以降、「メッセージ」と称する)』とが表示される。一連の調整作業が行われている間、液晶ディスプレイ7に一度表示された必要データは、一部の例外を除いてほぼ全てが消されることなく継続して表示される。一方、メッセージは操作者が次の作業に移る度に更新される。途中で消される例外的な必要データについては、以下の説明で言及する。
【0049】
まず、注射ラベル92の第1情報コード92aをバーコードリーダー4で読み取る旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S1)。そして、第1情報コード92aの読み取りが行われた否かを判断する(S2)。ステップS2の処理は、第1情報コード92aの読み取りが行われたと判断するまで繰り返し行われる。
【0050】
その後、第1情報コード92aの読み取りが行われたと判断した場合には(S2:YES)、第1情報コード92aに対応する調整情報を記憶すると共に、その調整情報に含まれる注射ラベルNo、注射抗がん剤の名称、及び注射抗がん剤の指示成分量を必要データとして液晶ディスプレイ7に表示する(S3)。続いて、バイアル93に付されている第2情報コード93a及び輸液バッグ94に付されている第2情報コード94aを、バーコードリーダー4で読み取る旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S4)。そして、第2情報コード93a、94aの読み取りが行われたか否かを判断する(S5)。ステップS5の処理は、第2情報コード93a、94aの読み取りが行われたと判断するまで繰り返し行われる。なお、第2情報コード93a及び第2情報コード94aの読み取りは順不動であり、どちらが先でも構わない。
【0051】
次いで、第2情報コード93a、94aの読み取りが行われたと判断した場合には(S5:YES)、注射抗がん剤及び輸液の適否を判断する判断処理を実行する(S6)。すなわち、第2情報コード93a、94aの読み取りを行ったバイアル93及び輸液バッグ94に対応する注射抗がん剤及び輸液が、記憶している調整情報に含まれる注射抗がん剤及び輸液と一致しているか否かを判断する。ここで、注射抗がん剤及び輸液の少なくともいずれか一方が不適であると判断した場合には(S6:NO)、注射抗がん剤及び輸液のうち不適であるものの第2情報コード93a、94aを再度読み取る旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S7)。そして、S5に戻って、第2情報コード93a、94aの読み取りが行われたか否かを判断する。
【0052】
一方、ステップS6において、注射抗がん剤及び輸液の両方が適切であると判断した場合には(S6:YES)、調整情報に含まれる指示成分量、並びに、薬剤データベースのバイアル内成分量及びバイアル内容量に基づいて必要吸引量を算出する必要吸引量算出処理を行う。そして、算出された必は要吸引量と輸液の名称とを必要データとして液晶ディスプレイ7に表示する(S8)。
【0053】
続いて、針とキャップを装着したシリンジ95の空重量を電子天秤5で計量する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S9)。その後、計量が行われたか否を判断する(S10)。ステップS10の処理は、計量が行われたと判断するまで繰り返し行われる。そして、計量が行われたと判断した場合には(S10:YES)、計量されたシリンジ95の空重量を必要データとして液晶ディスプレイ7に表示する(S11)。さらに、バイアル93から注射抗がん剤を吸引し、シリンジ95の吸引後重量を電子天秤5で計量する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S12)。
【0054】
その後、計量が行われたか否を判断する(S13)。ステップS13の処理は、計量が行われたと判断するまで繰り返し行われる。そして、計量が行われたと判断した場合には(S13:YES)、バイアル93からの薬剤の吸引量が適正であるか否かを判定する判定処理を行う(S14)。より詳細には、まず、ステップS10で計測したシリンジ95の空重量及びステップS13で計測したシリンジ95の吸引後重量から、実際に吸引した実吸引量を算出する実吸引量算出処理を実行する。そして、ステップS8で算出した必要吸引量に対する実吸引量の誤差率を算出し、誤差率が所定値以内であるか否かで、吸引量の適否の判断を行う。
【0055】
ステップS14において吸引量が不適であると判断した場合には(S14:NO)、実吸引量及び誤差率を必要データとして液晶ディスプレイ7に表示し、且つ、LEDランプ8が赤色に点灯するように制御する(S15)。その後、注射抗がん剤を所定量だけ追加又は戻す旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S16)。さらに、図示しない再チェックボタンが操作されたか否かを判断する(S17)。S17の処理は、再チェックボタンが操作されたと判断するまで繰り返し行われる。そして、再チェックボタンが操作されたと判断すると(S17:YES)、吸引量の修正を行ったシリンジ95の重量を電子天秤5で計量する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示し(S18)、ステップS13に戻る。
【0056】
一方、ステップS14において吸引量が適正であると判断した場合には(S14:YES)、実吸引量及び誤差率を必要データとして液晶ディスプレイ7に表示し、且つ、LEDランプ8が青色に点灯するように制御する(S19)。このとき、上述ように吸引量が不適であった場合にステップS15で液晶ディスプレイ7に表示された実吸引量及び誤差率は消され、吸引量が適正と判断されたときの実吸引量及び誤差率に変更される。
【0057】
その後、シリンジ95で吸引した注射抗がん剤を輸液バッグ94に注入して希釈する旨のメッセージ、及び、図示しないOKボタンを操作して調整記録80が印刷されたラベルを発行する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S20)。さらに、OKボタンが操作されたか否かの判断を行う(S21)。ステップS21の処理は、OKボタンが操作されたと判断されるまで繰り返し行われる。そして、OKボタンが操作されたと判断した場合には(S21:YES)、ラベルプリンタ6で調整記録80のラベルが印刷されるように制御する(S22)。
【0058】
続いて、
図10、11を参照しつつ、溶解が必要である注射抗がん剤である場合に、制御装置10で行われる処理手順の一例について説明する。かかる処理手順のステップS31〜ステップS41は、上述の注射抗ガン剤が液体である場合の処理手順のステップS1〜ステップS11とほぼ同じである。すなわち、注射抗ガン剤が液体である場合の処理手順のステップS8では輸液の名称と注射抗がん剤の必要吸引量とを液晶ディスプレイ7に表示するのに対して、本処理手順における対応するステップS38では、輸液の名称のみを液晶ディスプレイ7に表示する。この点を除いて、本処理手順のステップS31〜ステップS41は、上述の注射抗ガン剤が液体である場合の処理手順のステップS1〜ステップS11と同じである。したがって、詳細な説明は省略する。
【0059】
本処理手順では、ステップS41でシリンジ95の空重量を液晶ディスプレイ7に表示した後、輸液バッグ94から溶解液を吸引した後のシリンジ95の重量を電子天秤5で計量する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S42)。その後、シリンジ95の計量が行われたか否を判断する(S43)。ステップS43の処理は、計量が行われたと判断するまで繰り返し行われる。そして、計量が行われたと判断した場合には(S43:YES)、実溶解液量及び必要吸引量を液晶ディスプレイ7に表示する(S44)。ここで、実溶解液量は、ステップS40で計測したシリンジ95の空重量及びステップS43で計測したシリンジ95の溶解液吸引後重量から算出する。また、必要吸引量は、調整情報に含まれる指示成分量、薬剤データテーブルに記憶されているバイアル内成分量、及び実溶解液量から算出される。
【0060】
その後、シリンジ95に吸引した溶解液でバイアル93内の注射抗がん剤を溶解し、溶解した注射抗がん剤をシリンジ95で吸引し、シリンジ95の吸引後重量を電子天秤5で計量する旨のメッセージを液晶ディスプレイ7に表示する(S45)。なお、この後のステップS46〜S55は、上述の注射抗ガン剤が液体である場合の処理手順のステップS13〜ステップS22と同じであるので、説明は省略する。
【0061】
以上のように本実施形態の調整支援システム1では、1次元バーコードよりも情報量が多い情報コードであって、調整情報に対応する第1情報コード91a、92aを読み取るバーコードリーダー4と、シリンジ95の重量を計測する電子天秤5と、操作者に情報を表示する液晶ディスプレイ7及びLEDランプ8と、バーコードリーダー4によって読み取られた第1情報コード91a又は第1情報コード92aに対応する調整情報を記憶する制御装置10とを備えている。そして、制御装置10は、バイアル93から注射抗がん剤を吸引する前および後に電子天秤5で計測されたシリンジ95の重量の差に基づいて実際に吸引された実吸引量を算出する実吸引量算出処理と、記憶している調整情報と、実吸引量算出処理で算出された実吸引量とに基づいて、バイアル93からの注射抗がん剤の吸引量が適正であるか否かを判定する判定処理と、記憶している調整情報、及び、判定処理での判定結果を液晶ディスプレイ7及びLEDランプ8に表示する表示処理とを実行する。
したがって、バーコードリーダー4により第1情報コード91a又は第1情報コード92aを読み取ることで取得され、制御装置10に記憶された調整情報を用いて、抗がん剤の調整作業を支援することができる。すなわち、調整情報を取得するために病院のシステムに接続する必要がなく、簡易にシステムを導入することができる。つまり、病院のシステムから独立したシステムであるので、遠隔地治療に適用することができる。また、処方せんを発行する医師がいる病院の薬剤調整室に設置される場合でも、システム導入時に病院内のシステムを接続するための複雑な構築作業が不要であり、簡易にシステムを導入することができる。
なお、遠隔地治療で用いる場合には、例えば、抗がん剤の調整を行う病院又は調剤薬局には、処方せんを発行する医師が操作端末から入力した情報を、インターネット等を介して受け取る出力装置が設置されている。そして、この出力装置で印刷された処方せん91又は注射ラベル92の第1情報コード91a、92aを読みとることで調整情報を取得する。出力装置は、例えばプリンタである。
【0062】
また、本実施形態の調剤支援システム1によれば、バーコードリーダー4により第1情報コード91a、92aを読み取ることで取得され、制御装置10に記憶された調整情報を用いて、調整を支援することができる。すなわち、調整情報を取得するために病院のシステムに接続する必要がない。病院のシステムから独立したシステムであるので、簡易にシステムを導入することができ、遠隔地治療に適用することができる。さらに、従来の調製支援システムでは、病院毎に異なる既存の情報システムとネットワークを構築し、調整に必要な情報を取得すべく情報連携を行うためには、事前に双方でのルール等の取り決めを行う必要があった。そのため、調整支援システムの導入は複雑であり、とりわけ中小病院での導入が進んでいないのが現状であった。本実施形態の調剤支援システム1は、病院のシステムから独立したシステムであるので、システム導入時に病院内のシステムを接続するための煩雑な構築作業が不要となる。したがって、中小病院であっても、簡易にシステムを導入することができる。
【0063】
また、本実施形態の調整支援システム1は、ラベルプリンタ6をさらに備えている。また、制御装置10は、各種の注射抗がん剤についてバイアル93内の成分量、及びバイアル93内の容量に関する情報を含む薬剤データデーブルをさらに記憶している。また、制御装置10に記憶される調整情報には、調整情報を管理する番号、注射抗がん剤の名称、輸液の名称、及び注射抗がん剤の指示成分量の情報が含まれている。そして、制御装置10は、調整情報に含まれる指示成分量と、薬剤データテーブルとに基づいて、注射抗がん剤の必要吸引量を算出する必要吸引量算出処理を実行する。さらに、制御装置10は、調整情報と、必要吸引量と、実吸引量とを含む調整結果である調整記録80がラベルプリンタ6で印刷されるように制御する印刷処理をさらに実行する。したがって、調整結果である調整記録80を印刷して保管しておくことができる。
【0064】
さらに、本実施形態の調整支援システム1では、バーコードリーダー4が、バイアル93に付されている第2情報コード93aと、輸液バッグ94に付されている第2情報コード94aを読み取る。また、制御装置10に記憶される調整情報には抗がん剤の調整に使用する薬剤(注射抗がん剤及び輸液)の情報が含まれている。そして、制御装置10は、調整情報、及びバーコードリーダー4によって読み取られたバイアル93の第2情報コード93a及び輸液バッグ94の第2情報コード94aに対応する情報に基づいて、コードの読み取りを行ったバイアル93に収容されている注射抗がん剤の種類と、輸液バッグ94に収容されている輸液の種類とが、調整情報に含まれている注射抗がん剤及び輸液と一致しているか否かを判断する判断処理をさらに実行する。したがって、使用する薬剤の取り違えを防ぐことができる。
【0065】
加えて、本実施形態の調整支援システムでは、1台のバーコードリーダー4で、2次元バーコードである処方せん91に印刷された第1情報コード91a及び注射ラベル92に印刷された第1情報コード92aと、1次元バーコードであるバイアル93に付された第2情報コード93a及び輸液バッグ94に付された第2情報コード94aとを読み取ることができる。したがって、1次元バーコードを読み取る装置と2次元バーコードを読み取る装置とを別に備える場合に比べて、システム構成を簡易にすることができる。よって、システムの導入がより簡易となる。
【0066】
さらに、本実施形態の調整支援システム1は、陰圧状態の作業空間29を有する安全キャビネット2をさらに備えている。そして、本体ユニット3及び電子天秤5は作業空間29内に配置されており、バーコードリーダー4は作業空間29外に配置されている。したがって、バーコードリーダー4による処方せん91に印刷された第1情報コード91aや注射ラベル92に印刷された第1情報コード92aの読み取り作業は、安全キャビネット2の外で行われる。よって、安全キャビネット2が有する作業空間29の中にバーコードリーダー4が設置されている場合と比べて、安全キャビネット2が有する作業空間29での中で調剤作業する前に調剤情報を確認することができ、作業効率が向上する。
【0067】
また、本実施形態の調整支援システム1では、制御装置10、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9は一体に構成されている。したがって、これらがそれぞれ別体である場合に比べてシステム構成が簡易となり、システムの導入作業がさらに容易となる。
【0068】
また、本実施形態の調整支援システム1では、第1情報コード91a、92aが印刷物に付されている。従って、印刷物に付されている多種多様な第1情報コード91a、92aに適用することができ、システムの導入がより容易となり、遠隔地治療により適用が容易となる。
【0069】
さらに、本実施形態の調整支援システム1では、調整情報に対応する情報コードが付される印刷物は、処方せん91又は注射ラベル92である。従来から調整を行う際に発行されていた処方せん91又は注射ラベル92に調整情報に対応する第1情報コード91a、92aを印刷するので、調整情報に対応する情報コードが付される印刷物を別途用意する必要がない。
【0070】
加えて、本実施形態の調整支援システム1では、処方せん91又は注射ラベル92に付される調整情報に対応する第1情報コード91a、92aは2次元バーコードである。2次元バーコードであれば処方せん91又は注射ラベル92自体を印刷する際に、一緒に印刷することができる。
【0071】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0072】
例えば、上述の実施形態では、バイアル93から注射抗がん剤を吸引する前及び後にシリンジ95の重量を計測することで、実際に吸引した実吸引量を算出する場合について説明したが、実吸引量を算出する方法はこれに限定されるものではない。すなわち、バイアル93から注射抗がん剤を吸引する前及び後にバイアル93の重量を計測するようにしてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、調整記録80を印刷するラベルプリンタ6を備えている場合について説明したが、ラベルプリンタ6は無くてもよい。
【0074】
さらに、上述の実施形態では、制御装置10が、用意されたバイアル93に収容された注射抗がん剤及び輸液バッグ94に収容されている輸液が、調整情報に含まれている注射抗がん剤及び輸液と一致しているか否かを判断する判断処理を行う場合について説明したが、判断処理はなくても良い。
【0075】
また、上述の実施形態では、1台のバーコードリーダー4で2次元バーコードである処方せん91の第1情報コード91a及び注射ラベル92の第1情報コード92aと、1次元バーコードであるバイアル93の第2情報コード93a及び輸液バッグ94の第2情報コード94aとを読み取る場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、処方せん91及び注射ラベル92の第1情報コード91a、92aを読み取る装置と、バイアル93及び輸液バッグ94の第2情報コード93a、94aを読み取る装置とが別々であってもよい。
【0076】
また、上述の実施形態では、本体ユニット3は作業空間29内に配置されており、バーコードリーダー4及びラベルプリンタ6は作業空間29外に配置されている場合について説明したが、機器の配置場所はこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0077】
加えて、上述の実施形態では、制御装置10、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9は一体に構成されており、安全キャビネット2の作業空間29内に配置されている場合について説明したが、これには限定されない。制御装置10、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9のうちのいくつかだけが一体に構成されていてもよいし、また、これら全てが別体であってもよい。また、これらが別体である場合には、全てが作業空間29内に配置されている必要はない。すなわち、制御装置10、液晶ディスプレイ7、LEDランプ8、及びシートキー9のうちのいくつかが安全キャビネット2の作業空間29の外に配置されていてもよい。
【0078】
さらに、上述の実施形態では、処方せん91に印刷されている第1情報コード91a又は注射ラベル92に印刷されている第1情報コード92aを読み取って、調整情報を取得する場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、第1情報コード91a、92aは、処方せん91や注射ラベル92以外の印刷物に印刷されたものであってもよい。また、第1情報コード91a、92aは、タブレット端末等の携帯端末の表示画面に表示される処方せん91や注射ラベル92等のデータに付されているものであってもよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、処方せん91又は注射ラベル92に印刷される第1情報コード91a、92aが2次元バーコードである場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、第1情報コード91a、92aは、カラーコード等であってもよい。さらに、処方せん91又は注射ラベル92に調整情報を保持するRFタグ等のタグを貼り付け、そのタグを読み取ることで調整情報を取得するようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、バイアル93又は輸液バッグ94に付された第2情報コード93a、94aが1次元バーコードである場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、第2情報コード93a、94aは、1次元バーコードよりも情報量が多い2次元バーコードであってもよい。