【課題】熱交換器で循環水を蒸気により加熱する殺菌装置において、熱交換器からのドレン排出系統の詰まりを防止できると共に蒸気排出を抑えたドレン排出を可能とすることで、所期の殺菌を図る。
【解決手段】被処理物2が収容されると共に水が貯留される処理槽3と、処理槽3との間で水が循環され、その循環水を蒸気で加熱可能な熱交換器9と、熱交換器9に供給された蒸気の凝縮水を外部へ排出するドレン排出手段12とを備える。ドレン排出手段12として、熱交換器9からのドレン排出路33に、スチームトラップは設けられないが、ドレン排出弁34が設けられている。ドレン排出路33に固定絞り部35を設けておき、ドレン排出弁34の開閉を切り替えるのがよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、殺菌槽と熱交換器との間の循環水を加熱する際、熱交換器に蒸気を供給するが、その蒸気の凝縮水(ドレン)はスチームトラップを介して排出される。ところが、スチームトラップに詰まりが発生することで、ドレンの排出が不能となり、循環水を所望に昇温できないおそれがある。
【0005】
スチームトラップに詰まりを発生させる原因として、スケール(水中の硬度成分が炭酸イオンやシリカ等と結合して析出したもの)や、配管内の錆がある。配管内の錆については、ステンレス配管を用いることで防止することもできるが、配管は装置設置場所の環境に左右される。また、スケールについては、殺菌装置に特有の次のような事情がある。
【0006】
すなわち、前提として、熱交換器において循環水を加熱するための蒸気は、通常、軟水や純水を蒸気化したものであるし、仮にそうでなくても、一旦蒸気化されることで純水化されたものである。そのため、蒸気によるスケール発生への影響は少ない。一方、熱交換器において循環水を冷却するための冷却用水は、通常、軟水や純水ではなく、硬度成分が残留した水(典型的には水道水)である。そのため、蒸気による加熱と冷却用水による冷却とを同一の熱交換器で行う場合、冷却用水によりスケールが発生し、スチームトラップに詰まりを生じさせるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、熱交換器からのドレン排出系統の詰まりを防止でき、また蒸気排出を抑えたドレン排出を可能とすることで、所期の殺菌を図ることのできる殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被処理物が収容されると共に水が貯留される処理槽と、前記処理槽との間で水が循環され、その循環水を蒸気で加熱可能な熱交換器と、前記熱交換器に供給された蒸気の凝縮水を外部へ排出するドレン排出手段と、前記ドレン排出手段を制御する制御手段とを備え、前記ドレン排出手段として、前記熱交換器からのドレン排出路に、スチームトラップは設けられないが、ドレン排出弁が設けられていることを特徴とする殺菌装置である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、処理槽と熱交換器との間で水を循環させつつ、熱交換器に蒸気を供給して循環水を加熱することで、処理槽内の被処理物を加熱して殺菌することができる。この際、熱交換器に供給された蒸気の凝縮水(ドレン)は、ドレン排出路を介して外部へ排出される。ドレン排出路には、スチームトラップは設けられないが、ドレン排出弁が設けられている。そのため、ドレン排出弁を制御することで、ドレンの排出を図ることができる。ドレン排出路にスチームトラップを設けないことで、スチームトラップの詰まりによるドレンの排出不良(ひいては処理槽内の昇温異常)を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記ドレン排出路に、ドレン排出弁と固定絞り部とが設けられ、前記制御手段は、前記ドレン排出弁の開閉を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、ドレン排出路に固定絞り部を設けることで、ドレン排出弁を開けた際のドレンの排出量を調整することができる。また、ドレン排出弁の開閉を切り替えるという簡易な制御で、ドレンを所望に排出することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記ドレン排出路に、ドレン排出弁が設けられ、前記制御手段は、前記ドレン排出弁の開度を調整することを特徴とする請求項1に記載の殺菌装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ドレン排出路に設けたドレン排出弁の開度を調整することで、ドレンを所望に排出することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲まで上昇させる昇温工程と、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲に保持する殺菌工程とを順に実行し、ドレン排出可能流量が、前記殺菌工程より前記昇温工程で多くなるように前記ドレン排出弁を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、ドレン排出可能流量が、殺菌工程より昇温工程で多くなるようにドレン排出弁を制御するので、昇温時に生じる比較的多くのドレンを円滑に排出することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲まで上昇させる昇温工程と、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲に保持する殺菌工程とを順に実行し、前記昇温工程では、前記ドレン排出弁を開放状態に維持するか、前記殺菌工程より開時間割合を大きくしつつ前記ドレン排出弁を開閉することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌装置である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲まで上昇させる昇温工程において、ドレン排出弁を開放状態に維持するか、殺菌工程より開時間割合を大きくしつつドレン排出弁を開閉することで、昇温時に生じる比較的多くのドレンを円滑に排出することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲まで上昇させる昇温工程と、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲に保持する殺菌工程とを順に実行し、前記殺菌工程では、所定時間経過するまでは、第一設定時間ごとに前記ドレン排出弁を規定時間開放し、所定時間経過後には、前記第一設定時間よりも長い第二設定時間ごとに前記ドレン排出弁を規定時間開放することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の殺菌装置である。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、殺菌工程の初期には、比較的短い間隔でドレン排出弁を開放する一方、その後は、比較的長い間隔でドレン排出弁を開放することになる。殺菌工程の初期ほど、ドレンが出やすいので、ドレン排出弁の開放間隔を短くすることで、蒸気の排出を抑えた円滑なドレンの排出を行うことができる。
【0020】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲まで上昇させる昇温工程と、前記処理槽内を殺菌温度または殺菌温度範囲に保持する殺菌工程とを順に実行し、前記昇温工程および/または前記殺菌工程では、前記ドレン排出路の温度に基づき前記ドレン排出弁の開閉または開度を調整することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の殺菌装置である。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、ドレン排出路の温度に基づきドレン排出弁の開閉または開度を調整することで、ドレンの溜まり具合に応じて、蒸気の排出を抑えつつ、ドレンの排出を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の殺菌装置によれば、熱交換器からのドレン排出系統の詰まりを防止でき、また蒸気排出を抑えたドレン排出を可能とすることで、所期の殺菌を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の殺菌装置1を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例の殺菌装置1は、被処理物2を加熱して殺菌する装置であり、殺菌後には被処理物2を冷却可能に構成される。被処理物2は、特に問わないが、典型的にはレトルト食品または缶詰など、容器に密閉された食材である。
【0025】
本実施例の殺菌装置1は、被処理物2が収容される処理槽3と、この処理槽3内への給水手段4と、処理槽3外への排水手段5と、処理槽3内への圧縮空気供給手段6と、処理槽3外への排気手段7と、処理槽3内の真空解除手段8と、処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させる循環手段10と、循環手段10による循環水を加熱するために熱交換器9に蒸気を供給する給蒸手段11と、給蒸手段11による蒸気の凝縮水(ドレン)を外部へ排出するドレン排出手段12と、循環手段10による循環水を冷却するために熱交換器9に冷却水を供給する冷却手段13と、これら各手段4〜8,10〜13を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0026】
処理槽3は、被処理物2を収容する中空容器である。処理槽3は、その形状を特に問わないが、本実施例では水平に配置された円筒材を備え、この円筒材は、一方の開口部が閉塞されており、他方の開口部が扉で開閉可能とされている。扉を開けることで、処理槽3に対し被処理物2を出し入れすることができ、扉を閉じることで、処理槽3の開口部を気密に閉じることができる。なお、被処理物2は、台車に載せられるなどして、処理槽3内の底面よりも上方に保持される。
【0027】
処理槽3には、処理槽3内の温度を検出する温度センサ14と、処理槽3内の水位を検出する水位検出器(図示省略)とが設けられる。但し、温度センサ14は、処理槽3ではなく、場合により、後述する循環路15(特に熱交換器9より下流側)に設けられてもよい。
【0028】
給水手段4は、給水路16を介して処理槽3内へ水を供給する。給水路16は、処理槽3の底部に接続され、処理槽3へ向けて給水ポンプ17と給水弁18とが設けられている。給水ポンプ17を作動させた状態で給水弁18を開けることで、給水源からの水を処理槽3内に供給して、処理槽3内に水を貯留することができる。本実施例では、処理槽3内に収容した被処理物を浸漬しない設定水位まで、処理槽3内に水が貯留される。
【0029】
排水手段5は、排水路19を介して処理槽3内から水を排出する。排水路19は、処理槽3の底部に接続され、排水弁20が設けられている。排水弁20を開けることで、処理槽3内の水を外部へ排出することができる。
【0030】
圧縮空気供給手段6は、圧縮空気供給路21を介して処理槽3内へ圧縮空気を供給する。圧縮空気供給路21は、処理槽3の上部に接続され、処理槽3へ向けて圧縮空気遮断弁22と圧縮空気弁23とが設けられている。圧縮空気遮断弁22を開けた状態で、圧縮空気弁23も開けることで、圧縮空気源からの圧縮空気を処理槽3内に供給して、大気圧を超える圧力に処理槽3内を加圧することができる。
【0031】
排気手段7は、大気圧を超える圧力下の処理槽3内から排気路24を介して気体を排出する。排気路24は、処理槽3の上部に接続され、排気弁25が設けられている。処理槽3内が大気圧を超える圧力にある状態で、排気弁25を開けると、処理槽3内の気体が排気路24を介して外部へ排出され、処理槽3内の圧力を下げることができる。
【0032】
真空解除手段8は、大気圧未満の圧力下の処理槽3内へ給気路26を介して外気を導入する。給気路26は、処理槽3の上部に接続され、真空解除弁27が設けられている。処理槽3内が大気圧未満の圧力にある状態で、真空解除弁27を開けると、給気路26を介して外気が処理槽3内へ導入され、処理槽3内の圧力を大気圧まで戻すことができる。
【0033】
熱交換器9は、処理槽3との間で水が循環され、その循環水と、蒸気または冷却水とを混ぜることなく熱交換する。つまり、熱交換器9は、循環手段10により処理槽3からの水が通されると共に、この循環水を加熱するために給蒸手段11による蒸気が通されるか、循環水を冷却するために冷却手段13による冷却水が通される。
【0034】
循環手段10は、処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させる。循環手段10は、循環路15と循環ポンプ28とを備える。循環路15は、一端部が処理槽3の底部に接続され、処理槽3の底部からの循環路15は、循環ポンプ28と熱交換器9とを順に介して、他端部が処理槽3内のノズル29に接続されている。このノズル29は、処理槽3内の側部および/または上部に設けられており、循環ポンプ28からの水を被処理物2へ向けて噴射する。
【0035】
給蒸手段11は、熱交換器9に蒸気を供給して、循環手段10による循環水を加熱する。給蒸手段11は、ボイラからの蒸気を熱交換器9へ供給する給蒸路30を備え、この給蒸路30には給蒸遮断弁31と給蒸弁32とが設けられている。循環手段10による循環中、温度センサ14の検出温度に基づき、給蒸弁32の開閉または開度を制御して、処理槽3内の温度を所望に調整することができる。なお、給蒸遮断弁31は、給蒸弁32の開閉に連動して、開閉される。
【0036】
ドレン排出手段12は、給蒸手段11により熱交換器9に供給された蒸気の凝縮水を、ドレン排出路33を介して外部へ排出する。ドレン排出路33は、熱交換器9から下方へ延出して設けられている。熱交換器9からのドレン排出路33には、ドレン排出弁34、オリフィス35および逆止弁36が順に設けられている。熱交換器9への蒸気供給中、ドレン排出弁34を開けることで、蒸気の凝縮水を外部へ排出することができる。本実施例では、ドレン排出弁34は、開閉をオンオフで切り替える弁(たとえば電磁弁)で足りるが、場合により開度調整可能な弁(たとえば電動弁)から構成されてもよい。ドレン排出路33には、スチームトラップは設けられず、さらに図示例ではドレン貯留タンクも設けられない。なお、オリフィス35に限らず、その他の固定絞り部を用いることもできる。
【0037】
冷却手段13は、熱交換器9に冷却水を供給して、循環手段10による循環水を冷却する。冷却手段13は、クーリングタワー37を備え、クーリングタワー37にて冷却された水は、送水ポンプ38により、冷却水送り路39を介して熱交換器9へ供給され、熱交換器9を通過後の水は冷却水戻し路40を介してクーリングタワー37へ戻される。図示例の場合、冷却水送り路39と給蒸路30とは、熱交換器9の側で共通管路とされている。また、冷却水戻し路40とドレン排出路33とは、熱交換器9の側で共通管路とされている。
【0038】
冷却水送り路39には冷却水送り弁41が設けられる一方、冷却水戻し路40には冷却水戻し弁42が設けられている。冷却水送り路39と給蒸路30との合流部は、冷却水送り弁41や給蒸弁32より下流側(熱交換器9側)に配置されている。また、冷却水戻し路40とドレン排出路33との分岐部は、冷却水戻し弁42やドレン排出弁34よりも上流側(熱交換器9側)に配置されている。
【0039】
給蒸弁32およびドレン排出弁34を閉じた状態で、冷却水送り弁41および冷却水戻し弁42を開けて、送水ポンプ38を作動させると、クーリングタワー37と熱交換器9との間で冷却水を循環させることができる。一方、冷却水送り弁41および冷却水戻し弁42を閉じた状態で、給蒸弁32を開ければ、熱交換器9に蒸気を供給することができる。その際、適宜、ドレン排出弁34を開けることで、ドレンの排出を図ることができる。
【0040】
制御手段は、温度センサ14および水位検出器の検出信号の他、経過時間などに基づき、前記各手段4〜8,10〜13を制御する制御器(図示省略)である。具体的には、給水ポンプ17、給水弁18、排水弁20、圧縮空気遮断弁22、圧縮空気弁23、排気弁25、真空解除弁27、循環ポンプ28、給蒸遮断弁31、給蒸弁32、ドレン排出弁34、クーリングタワー37、送水ポンプ38、冷却水送り弁41、冷却水戻し弁42の他、温度センサ14および水位検出器などは、制御器に接続されている。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽3内の被処理物2の加熱殺菌やその後の冷却を行う。
【0041】
図2は、本実施例の殺菌装置1の運転例を示す概略図であり、横軸は時間t、縦軸は処理槽3内温度Tを示している。殺菌装置1は、典型的には、給水工程S1の後、昇温工程S2と殺菌工程S3とを少なくとも一回含んで被処理物2の殺菌を図った後、冷却工程S4および排水工程S5を実行する。
図2では、給水工程S1、第一昇温工程S2a、第一殺菌工程S3a、第二昇温工程S2b、第二殺菌工程S3b、冷却工程S4および排水工程S5を順次に実行する例を示している。
【0042】
第一昇温工程S2aと第二昇温工程S2bとは、昇温目標温度が異なるが、動作内容は同一である。そのため、各昇温工程S2a,S2bについて、以下、両者を特に区別する場合を除き、単に昇温工程S2ということがある。同様に、第一殺菌工程S3aと第二殺菌工程S3bとは、保持目標温度が異なるが、動作内容は同一である。そのため、各殺菌工程S3a,S3bについて、以下、両者を特に区別する場合を除き、単に殺菌工程S3ということがある。
【0043】
以下、各工程について説明する。まず、殺菌装置1の運転に先立ち、処理槽3内には被処理物2が収容され、処理槽3の扉は気密に閉じられる。その状態では、上述した各弁の内、排水弁20、排気弁25、真空解除弁27、ドレン排出弁34は開けられているが、その他の弁18,22,23,31,32,41,42は閉じられており、各ポンプ17,28,38は停止している。
【0044】
≪給水工程S1≫
給水工程S1では、処理槽3内の被処理物2を浸漬しない設定水位まで、給水手段4により処理槽3内に水を供給して、処理槽3内に水を貯留する。具体的には、排気弁25を開けたまま、排水弁20および真空解除弁27を閉じる。そして、給水ポンプ17を作動させた状態で給水弁18を開ければよい。処理槽3内に設定水位まで水が貯留されると、給水弁18を閉じると共に給水ポンプ17を停止させて、給水工程S1を終了する。給水工程S1の後半、循環ポンプ28を間欠運転し、昇温工程S2への移行に伴い連続運転に切り替えてもよい。
【0045】
≪昇温工程S2≫
昇温工程S2では、循環手段10により処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させながら、その循環水を熱交換器9において給蒸手段11により加熱して、処理槽3内の温度を殺菌温度T1(T2)まで上昇させる。具体的には、循環ポンプ28を作動させることで、処理槽3内底部からの水を、熱交換器9を介して、ノズル29から処理槽3内へ戻すことで、処理槽3と熱交換器9との間で循環させる。また、この循環中、冷却水送り弁41および冷却水戻し弁42を閉じる一方、給蒸遮断弁31および給蒸弁32を開けて、熱交換器9へ蒸気を供給する。この際、処理槽3内の温度が所望速度で上昇するように、給蒸弁32の開度を比例制御するのが好ましい。
【0046】
昇温工程S2中、ドレン排出弁34は、適宜開閉されてもよいが、開放状態に維持するのが簡易で好ましい。処理槽3内および被処理物2の温度を上昇させる昇温工程S2では、温度を維持する殺菌工程S3と比較して、多くの熱量が必要であり、比較的多くのドレンが発生する。そのため、本実施例では、ドレン排出弁34を開放状態に維持する。但し、昇温工程S2において、ドレン排出弁34を間欠的に開放してもよい。いずれにしても、昇温工程S2でのドレン排出可能流量が殺菌工程S3でのドレン排出可能流量よりも多くなるように、ドレン排出弁34の開閉または開度を制御するのがよい。従って、昇温工程S2および殺菌工程S3においてドレン排出弁34を間欠的に開閉制御する場合でも、昇温工程S2でのドレン排出弁34の開時間割合(単位時間当たりの開放時間)は、殺菌工程S3でのドレン排出弁34の開時間割合よりも長くするのがよい。
【0047】
なお、標準的な運転環境での加熱負荷(処理槽3、水(貯留水・循環水)および被処理物2を殺菌温度まで加熱するのに必要な熱量)、ひいては発生するドレン量は、算出可能である。また、給蒸手段11による蒸気の蒸気圧と大気圧との差圧に基づき、オリフィス35を通過可能なドレン量も算出可能である。そのため、これらから最適なオリフィス35が選択されるか、および/または、ドレン排出弁34の開閉が制御される。つまり、昇温工程S2において、ドレン排出弁34を開放状態にしても、給蒸手段11による蒸気がそのまま(つまり一旦凝縮することなく蒸気のまま)外部へ排出されず、且つ熱交換器9にドレンが溜まらない範囲で、オリフィス35が選択されたり、ドレン排出弁34の開閉が制御されたりする。このことは、後述する殺菌工程S3についても同様である。
【0048】
昇温工程S2では、熱交換器9において循環水と蒸気とを熱交換して、循環水の加熱を図ることができる。このようにして、昇温工程S2では処理槽3内の温度を徐々に上昇させるが、この際、処理槽3内は大気圧を超える圧力(処理槽3内温度相当の飽和蒸気圧力よりも高圧)とされる。これにより、100℃を超える水温でも循環ポンプ28のキャビテーションを起こすことなく循環を行うことができると共に、被処理物の膨張による容器(レトルトパウチなど)の破裂を防止できる。具体的には、圧縮空気弁23と排気弁25とを制御することにより、処理槽3内の温度に応じた加圧がなされる。
【0049】
以後、循環手段10による水の循環は、冷却工程S4の終了まで継続される。また、圧縮空気供給手段6による処理槽3内の加圧は、処理槽3内が殺菌温度まで上昇した後も、処理槽3内温度相当の飽和蒸気圧力よりも高圧に、排水工程S5の排水終了まで継続される。その間、圧縮空気遮断弁22は開放状態に維持され、圧縮空気弁23と排気弁25の開閉が制御される。
【0050】
≪殺菌工程S3≫
殺菌工程S3では、処理槽3内の温度を殺菌温度に保持して、被処理物2を加熱して殺菌する。具体的には、処理槽3内の貯留水を循環手段10により循環させつつ、温度センサ14の検出温度を殺菌温度に維持するように、給蒸弁32の開度を調整する。
【0051】
殺菌工程S3では、殺菌工程S3開始から所定時間ta経過するまでは、第一設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放し、所定時間ta経過後には、第一設定時間よりも長い第二設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放する。所定時間ta、規定時間、第一設定時間および第二設定時間は、オリフィス35との関係で、給蒸手段11による蒸気が直接に外部へ排出されず、且つ熱交換器9にドレンが溜まらない範囲で、実験により予め求められる。また、殺菌工程S3の進行に伴い、各時間を段階的に変更(たとえば設定時間を徐々に長くしたり、規定時間を徐々に短くしたり)してもよい。
【0052】
いずれにしても、殺菌工程S3の初期には、比較的短い間隔でドレン排出弁34を開放する一方、その後は、比較的長い間隔でドレン排出弁34を開放することになる。殺菌工程S3の初期ほど、ドレンが出やすいので、ドレン排出弁34の開放間隔を短くすることで、ドレンの排出を円滑に図ることができる。処理槽3内が殺菌温度以上で殺菌時間経過すると、給蒸弁32および給蒸遮断弁31を閉じて熱交換器9への給蒸を停止して、殺菌工程S3を終了する。
【0053】
ところで、被処理物2の加熱殺菌中、殺菌温度を変更してもよい。図示例では、第一殺菌温度T1まで処理槽3内を昇温する第一昇温工程S2a、第一殺菌温度T1で第一殺菌時間保持する第一殺菌工程S3a、第一殺菌温度T1よりも高い第二殺菌温度T2まで処理槽3内を昇温する第二殺菌工程S3b、第二殺菌温度T2で第二殺菌時間保持する第二殺菌工程S3bを順次に実行する。典型的には、各昇温工程S2a,S2bでは、ドレン排出弁34を開放しておけばよいし、各殺菌工程S3a,S3bでは、所定時間ta経過するまでは、第一設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放し、所定時間ta経過後には、第一設定時間よりも長い第二設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放すればよい。所定時間ta、規定時間、第一設定時間および第二設定時間それぞれについて、各殺菌工程S3a,S3bで同一としてもよいし、異なったものとしてもよい。
【0054】
図示例では、第一殺菌温度T1と第二殺菌温度T2との二段階に殺菌温度を変更したが、第一殺菌温度T1、第二殺菌温度T2および第三殺菌温度T3の三段階で殺菌温度を変更(段階的に上昇)してもよい。あるいは、四段階以上で殺菌温度を変更してもよいし、逆に、殺菌温度を変更しなくてもよい(つまり第一殺菌温度T1のみとしてもよい)。
【0055】
また、図示例では、殺菌温度を上げる例を示したが、殺菌温度を途中で下げてもよい。殺菌温度を下げる場合、給蒸手段11による加熱を停止した状態で、後述する冷却工程S4と同様にして、循環手段10による循環水を冷却手段13による冷却水で冷却するか、給水手段4と排水手段5とを制御して、処理槽3内の貯留水を徐々に入れ替える降温工程を実施した後、殺菌工程S3を実施すればよい。
【0056】
いずれにしても、処理槽3内の温度を上昇させる昇温工程S2では、給蒸手段11により熱交換器9に蒸気を供給して、循環手段10による循環水を加熱するが、その際、ドレン排出弁34を開けまま維持するのがよい。そして、殺菌工程S3では、所定時間ta経過するまでは、第一設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放し、所定時間ta経過後には、第一設定時間よりも長い第二設定時間ごとにドレン排出弁34を規定時間開放するのがよい。
【0057】
後述するように、殺菌工程S3において温度変化を伴う場合、前記「所定時間ta経過するまで」は、「処理槽3内が所定温度に達するまで」であってもよい。言い換えれば、前記所定時間ta内には、処理槽3内の温度が変化してもよい。
【0058】
殺菌工程S3では、処理槽3内を殺菌温度に保持すると言っても、必ずしも一定温度に維持する必要はなく、所定範囲(殺菌温度範囲)に保持してもよい。たとえば、殺菌温度範囲の上限温度と下限温度との間に保持するように、給蒸手段11を制御してもよい。この際、上限温度になるまで給蒸手段11により加熱し、給蒸手段11による加熱を停止した状態で下限温度になるまで待機し、下限温度になると給蒸手段11による給蒸を再開してもよい。殺菌工程S3において殺菌温度範囲に保持する場合、その直前の昇温工程S2では、殺菌温度範囲に到達するまで給蒸手段11による加熱を図ればよい。
【0059】
≪冷却工程S4≫
冷却工程S4では、循環手段10により処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させながら、その循環水を熱交換器9において冷却手段13により冷却して、処理槽3内の被処理物2を冷却する。具体的には、循環ポンプ28を作動させることで、処理槽3内底部からの水を、熱交換器9を介して、ノズル29から処理槽3内へ戻すことで、処理槽3と熱交換器9との間で水を循環させる。また、この循環中、給蒸弁32およびドレン排出弁34を閉じる一方、冷却水送り弁41および冷却水戻し弁42を開けた状態で、クーリングタワー37および送水ポンプ38を作動させて、熱交換器9に冷却水を循環させればよい。
【0060】
冷却工程S4の開始から冷却時間経過するか、処理槽3内の温度が冷却温度よりも下がるか、冷却温度よりも下がってから所定時間経過すると、冷却手段13による熱交換器9への冷却水供給を停止して、冷却工程S4を終了する。この際、循環手段10による循環も停止するが、圧縮空気供給手段6による処理槽3内の加圧は、排水工程S5における排水完了まで継続するのがよい。
【0061】
≪排水工程S5≫
排水工程S5では、排水手段5により処理槽3内から排水する。具体的には、排水弁20を開けることで、外部へ水を排出する。圧縮空気供給手段6により処理槽3内を加圧したままで排水手段5により排水すれば、処理槽3内からの排水を迅速に行うことができる。また、ドレン排出弁34を開けることで、熱交換器9の一次側に溜まった冷却水を外部へ排出する。
【0062】
その後、圧縮空気遮断弁22および圧縮空気弁23を閉じる一方、排気弁25を開いて、処理槽3内の加圧を解除した後、さらに真空解除弁27を開放して、処理槽3内を確実に大気圧とする。これにより、処理槽3の扉を開けて、処理槽3内から被処理物2を取り出すことができる。
【0063】
本実施例の殺菌装置1によれば、ドレン排出路33には、スチームトラップは設けられないが、ドレン排出弁34が設けられている。そして、ドレン排出弁34を制御することで、ドレンの排出を図ることができる。ドレン排出路33にスチームトラップを設けないことで、スチームトラップの詰まりによるドレンの排出不良(ひいては処理槽3内の昇温異常)を防止することができる。なお、排水工程S5では、熱交換器9およびドレン排出路33に冷却水を残留させることなく、全て排出することができ、その場合、次回の殺菌運転における加熱負荷を軽減することができる。
【0064】
本発明の殺菌装置1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、(a)被処理物2が収容されると共に水が貯留される処理槽3と、(b)この処理槽3内の貯留水を熱交換器9との間で循環させる循環手段10と、(c)この循環手段10による循環水を加熱するために、熱交換器9に蒸気を供給する給蒸手段11と、(d)この給蒸手段11による蒸気の凝縮水を外部へ排出するドレン排出手段12と、(e)前記各手段を制御する制御手段とを備え、(f)ドレン排出手段12として、熱交換器9からのドレン排出路33に、スチームトラップは設けられないが、ドレン排出弁34が設けられているのであれは、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0065】
たとえば、前記実施例では、ドレン排出弁34は、基本的には時間制御により間欠的に開閉制御されたが、場合により、温度制御により開閉制御されてもよい。たとえば、ドレン排出弁34の一次側の配管や装置表面温度またはドレン温度など、ドレン排出路33の所定箇所の温度に基づき、第一温度(たとえば100℃)以下になるとドレン排出弁34を開け、第二温度(たとえば110℃)以上になるとドレン排出弁34を閉じる制御を実施してもよい。
【0066】
また、前記実施例では、ドレン排出弁34は、昇温工程S2では開放状態に維持され、殺菌工程S3では初期の開閉頻度をそれ以降よりも高くしたが、適宜に変更可能である。その際、昇温工程S2開始から殺菌工程S3終了までの間、最初はドレン排出弁34を全開または単位時間当たりの開放時間を長くしておき、処理が進むに連れて、単位時間当たりの開放時間を短くしていくのがよい。
【0067】
また、前記実施例では、ドレン排出手段12は、ドレン排出弁34とオリフィス35とを備え、ドレン排出弁34の開閉を切り替えたが、オリフィス35を設置せずに、ドレン排出弁34の開度を調整してもよい。この際、ドレン排出弁34は、開度調整可能な弁から構成されるが、特にボールタイプの自動弁(モータバルブやエア駆動弁)から構成されるのが好ましい。あるいは、ドレン排出弁34として、開閉を切り替える弁と、開度調整可能な弁とを組み合わせてもよい。
【0068】
そして、たとえば、昇温工程S2では、ドレン排出弁34を全開または所定開度に維持しておき、殺菌工程S3では、所定時間ta経過するまでは、第一設定時間ごとに、ドレン排出弁34を全開または設定開度で規定時間開放し、所定時間ta経過後には、第一設定時間よりも長い第二設定時間ごとに、ドレン排出弁34を全開または設定開度で規定時間開放すればよい。あるいは、ドレン排出路33(ドレン排出弁34の一次側)に温度センサを設けておき、その温度センサを利用することで、昇温工程S2および/または殺菌工程S3では、ドレン排出路33の温度に基づきドレン排出弁34の開閉または開度を調整してもよい。
【0069】
さらに、いわゆる貯湯式の殺菌装置1に適用することもできる。その場合、処理槽3内において、被処理物2を熱水に水没して殺菌を行うが、前記実施例と同様に、処理槽3内の貯留水を熱交換器9との間で循環させつつ、その循環水を、殺菌工程S3では蒸気により加熱し、冷却工程S4では冷却水により冷却する。