【解決手段】この産業用ロボットでは、関節部10に、産業用ロボットの内部から産業用ロボットの外部への気体の流出を抑制するためのシール部43が形成されている。第1アーム部7は、シール部43を形成するためのアーム部本体21を備え、本体部5は、シール部43を形成するための固定部材17およびプーリ18を備えている。シール部43は、アーム部本体21と固定部材17との径方向の隙間である第1隙間S1と、アーム部本体21とプーリ18との上下方向の隙間であって第1隙間S1の上端に繋がる第2隙間S2とから構成されており、アーム部本体21と固定部材17とプーリ18とは、同じ材料で形成されている。
前記第1シール部材には、前記軸方向から見たときの形状が円形状となる内周面と、前記軸方向における前記内周面の一端に繋がるとともに前記軸方向に直交する環状かつ平面状の第1平面とが形成され、
前記第2シール部材には、前記軸方向から見たときの形状が円形状となるとともに前記径方向において一定の前記第1隙間を介して前記内周面に対向する外周面と、前記軸方向における前記外周面の一端に繋がり前記軸方向に直交する環状かつ平面状をなすとともに前記軸方向において一定の前記第2隙間を介して前記第1平面に対向する第2平面とが形成されていることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
搬送対象物が搭載されるハンドと、前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される前記第2部材としての本体部とを備え、
前記アームは、前記本体部に基端側が回動可能に連結される前記第1部材としての第1アーム部と、前記第1アーム部の先端側に回動可能に連結される先端側アーム部とを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の産業用ロボット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のロボットでは、関節部にラビリンスシールが設けられているため、ロボットの内部で発生する塵埃が関節部からクリーンルームの中に流出するのを抑制することが可能になっている。しかしながら、特許文献1に記載のロボットの場合、同心状に配置される円環状の複数の上方突出円環部と、同心状に配置される円環状の複数の下方突出円環部とによって、ラビリンスシールが形成されているため、関節部に設けられるシール部の構成が複雑になる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、関節部に設けられるシール部の構成を簡素化しつつ、内部で発生する塵埃の関節部からの流出を抑制することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、第1部材と第1部材に対して回動可能な第2部材との連結部である関節部を備える産業用ロボットにおいて、関節部には、産業用ロボットの内部から産業用ロボットの外部への気体の流出を抑制するためのシール部が形成され、第1部材は、シール部を形成するための第1シール部材を備え、第2部材は、シール部を形成するための第2シール部材を備え、第1部材に対する第2部材の回動の軸方向に直交する方向を径方向とすると、シール部は、第1シール部材と第2シール部材との径方向の隙間である第1隙間と、第1シール部材と第2シール部材との軸方向の隙間であって軸方向において第1隙間の一端に繋がる第2隙間とから構成され、第1シール部材と第2シール部材とは、同じ材料で形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の産業用ロボットでは、関節部に形成されるシール部は、第1シール部材と第2シール部材との径方向の隙間である第1隙間と、第1シール部材と第2シール部材との軸方向の隙間であって軸方向において第1隙間の一端に繋がる第2隙間とから構成されている。そのため、本発明では、関節部に設けられるシール部の構成を簡素化することが可能になる。
【0009】
一方で、本発明のシール部は、第1シール部材と第2シール部材との径方向の隙間である第1隙間と、第1シール部材と第2シール部材との軸方向の隙間である第2隙間とから構成される単純な構造であるため、産業用ロボットの環境温度が変動して、第1隙間が広がったり、第2隙間が広がったりすると、シール部のシール機能が低下して、産業用ロボットの内部から産業用ロボットの外部への気体の流出を抑制できなくなるおそれがある。また、本発明のシール部の場合、産業用ロボットの環境温度が変動して、第1隙間が狭まったり、第2隙間が狭まったりすると、第1シール部材と第2シール部材とが接触して関節部の動作に支障を来すおそれがあるため、設計上の第1隙間や第2隙間を狭めることができずに、シール部のシール機能を確保できなくなるおそれがある。
【0010】
しかしながら、本発明では、第1シール部材と第2シール部材とが同じ材料で形成されているため、産業用ロボットの環境温度が変動しても、また、設計上の第1隙間および第2隙間を狭めても、第1シール部材と第2シール部材とが接触しないように第1隙間および第2隙間を一定に保つことが可能になる。したがって、本発明では、関節部に設けられるシール部の構成を簡素化しつつ、産業用ロボットの内部から産業用ロボットの外部への気体の流出をシール部によって抑制することが可能になる。その結果、本発明では、関節部に設けられるシール部の構成を簡素化しつつ、産業用ロボットの内部で発生する塵埃の関節部からの流出を抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、たとえば、第1シール部材には、軸方向から見たときの形状が円形状となる内周面と、軸方向における内周面の一端に繋がるとともに軸方向に直交する環状かつ平面状の第1平面とが形成され、第2シール部材には、軸方向から見たときの形状が円形状となるとともに径方向において一定の第1隙間を介して第1シール部材の内周面に対向する外周面と、軸方向における外周面の一端に繋がり軸方向に直交する環状かつ平面状をなすとともに軸方向において一定の第2隙間を介して第1平面に対向する第2平面とが形成されている。
【0012】
本発明において、たとえば、第1隙間は、第2隙間よりも狭くなっており、軸方向における第1隙間の長さは、径方向における第2隙間の長さよりも長くなっている。この場合には、第1隙間が主として、産業用ロボットの内部から産業用ロボットの外部への気体の流出を抑制する機能を果たす。
【0013】
本発明において、第1シール部材および第2部材シールは、アルミニウム合金で形成されていることが好ましい。このように構成すると、第1部材および第2部材の加工が容易になるとともに、第1部材および第2部材を軽量化することが可能になる。
【0014】
本発明において、産業用ロボットは、たとえば、搬送対象物が搭載される第2部材としてのハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームとを備え、アームは、ハンドが先端側に回動可能に連結される第1部材としての先端側アーム部と、先端側アーム部の基端側が回動可能に連結される第1アーム部とを備えている。
【0015】
また、本発明において、産業用ロボットは、たとえば、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームとを備え、アームは、ハンドが先端側に回動可能に連結される第2部材としての先端側アーム部と、先端側アーム部の基端側が回動可能に連結される第1部材としての第1アーム部とを備えている。
【0016】
また、本発明において、産業用ロボットは、たとえば、搬送対象物が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される第2部材としての本体部とを備え、アームは、本体部に基端側が回動可能に連結される第1部材としての第1アーム部と、第1アーム部の先端側に回動可能に連結される先端側アーム部とを備えている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明の産業用ロボットでは、関節部に設けられるシール部の構成を簡素化しつつ、産業用ロボットの内部で発生する塵埃の関節部からの流出を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の斜視図である。
図2は、
図1に示すハンド3の一部およびアーム4の部分断面図である。
【0021】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、ガラス基板や半導体ウエハ等の搬送対象物を搬送するための水平多関節型のロボットである。このロボット1は、クリーンルームの中に設置されている。ロボット1は、搬送対象物が搭載されるハンド3と、ハンド3が先端側に回動可能に連結されるアーム4と、アーム4の基端側が回動可能に連結される本体部5とを備えている。本形態のロボット1は、2個のハンド3および2本のアーム4を備えており、2本のアーム4のそれぞれに1個のハンド3が回動可能に連結されている。本体部5には、2本のアーム4の基端側が回動可能に連結されている。なお、
図1では、ハンド3の図示を省略している。
【0022】
アーム4は、互いに相対回動可能に連結される第1アーム部7と第2アーム部8との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部7および第2アーム部8は、中空状に形成されている。第1アーム部7の基端側は、本体部5に回動可能に連結されている。第1アーム部7の先端側には、第2アーム部8の基端側が回動可能に連結されている。第2アーム部8の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。第1アーム部7は、本体部5よりも上側に配置され、第2アーム部8は、第1アーム部7よりも上側に配置されている。ハンド3は、第2アーム部8よりも上側に配置されている。本形態の第2アーム部8は、先端側アーム部である。
【0023】
第1アーム部7と本体部5との連結部は、関節部10となっており、関節部10は、第1アーム部7と第1アーム部7に対して回動可能な本体部5とを連結している。第1アーム部7と第2アーム部8との連結部は、関節部11となっており、関節部11は、第1アーム部7と第1アーム部7に対して回動可能な第2アーム部8とを連結している。第2アーム部8とハンド3との連結部は、関節部12となっており、関節部12は、第2アーム部8と第2アーム部8に対して回動可能なハンド3とを連結している。
【0024】
第1アーム部7は、本体部5に対して上下方向を回動の軸方向として回動する。すなわち、上下方向は、本体部5に対する第1アーム部7の回動の軸方向である。同様に、第2アーム部8は、第1アーム部7に対して上下方向を回動の軸方向として回動し、ハンド3は、第2アーム部8に対して上下方向を回動の軸方向として回動する。すなわち、上下方向は、第1アーム部7に対する第2アーム部8の回動の軸方向であるとともに、第2アーム部8に対するハンド3の回動の軸方向である。
【0025】
(本体部、アームおよびハンドの構成)
図3(A)は、
図2のE部の拡大図であり、
図3(B)は、
図3(A)のH部の拡大図である。
図4(A)は、
図2のF部の拡大図であり、
図4(B)は、
図4(A)のJ部の拡大図である。
図5(A)は、
図2のG部の拡大図であり、
図5(B)は、
図5(A)のK部の拡大図である。
【0026】
本体部5は、中空状に形成されるケース体14を備えている。ケース体14の内部には、ケース体14に対して回動可能な中空状の回動軸15が配置されている。また、本体部5は、ケース体14の上端部に固定される筒状の固定部材17と、固定部材17に固定されるプーリ18とを備えている。
【0027】
回動軸15は、上下方向を軸方向とする細長い円筒状に形成されている。回動軸15の上端には、第1アーム部7の基端側が固定されている。回動軸15の上端部は、ケース体14の上端面よりも上側へ突出しており、回動軸15の、上端部を除いた部分は、ケース体14の内部に収容されている。ケース体14の内部には、ケース体14に対して回動軸15を回動させるためのモータ(図示省略)が配置されている。このモータには、たとえば、プーリ、ベルトおよび減速機を介して回動軸15の下端側が連結されている。
【0028】
第1アーム部7は、細長い中空の箱状に形成されるアーム部本体21と、平板状の2枚の蓋部材22、23とを備えている。アーム部本体21の上面は、アーム部本体21の先端部を除いて開口している。アーム部本体21の下面は、アーム部本体21の基端部を除いて開口している。蓋部材22は、アーム部本体21の上面に形成される開口を塞ぐように、アーム部本体21の上面側に固定されている。蓋部材23は、アーム部本体21の下面に形成される開口を塞ぐように、アーム部本体21の下面側に固定されている。
【0029】
アーム部本体21の基端側の下面には、
図3に示すように、上下方向に貫通する貫通穴が形成されている。アーム部本体21の先端側の上面には、
図4に示すように、上下方向に貫通する貫通穴が形成されている。また、第1アーム部7は、アーム部本体21の基端部に固定される固定部材24と、アーム部本体21の先端部に固定される中空状の固定軸25および軸受押え部材26と、固定軸25に固定されるプーリ27とを備えている。
【0030】
第2アーム部8は、細長い中空の箱状に形成されるアーム部本体29と、平板状の2枚の蓋部材30、31とを備えている。アーム部本体29の上面は、アーム部本体29の先端部を除いて開口している。アーム部本体29の下面は、アーム部本体29の基端部を除いて開口している。蓋部材30は、アーム部本体29の上面に形成される開口を塞ぐように、アーム部本体29の上面側に固定されている。蓋部材31は、アーム部本体29の下面に形成される開口を塞ぐように、アーム部本体29の下面側に固定されている。
【0031】
アーム部本体29の基端側の下面には、
図4に示すように、上下方向に貫通する貫通穴が形成されている。アーム部本体29の先端側の上面には、
図5に示すように、上下方向に貫通する貫通穴が形成されている。また、第2アーム部8は、アーム部本体29の基端部に固定される筒状の固定部材32と、固定部材32に固定されるプーリ33と、アーム部本体29の先端部に固定されるシール部材34とを備えている。
【0032】
ハンド3は、ハンド3の基端部を構成するハンド基部37と、ハンド基部37に固定される固定部材38と、固定部材38に固定されるプーリ39とを備えている。ハンド基部37は、中空状に形成されている。ハンド基部37には、搬送対象物の搭載部(図示省略)が固定されている。この搭載部は、たとえば、Y型の平板状に形成されている。
【0033】
(関節部の構成)
関節部10において、ケース体14の上端部に固定される固定部材17の内周側には、回動軸15が配置されている。回動軸15は、軸受42を介して固定部材17に回動可能に支持されている。プーリ18は、固定部材17の上端部に固定されている。回動軸15の上端部および固定部材17の上端部は、アーム部本体21の基端側の下面に形成される貫通穴に挿入されており、アーム部本体21の基端側の内部に配置されている。プーリ18および軸受42も、アーム部本体21の基端側の内部に配置されている。
【0034】
固定部材24は、アーム部本体21の基端側の内部でアーム部本体21の基端部に固定されている。また、固定部材24は、回動軸15の上端に固定されており、軸受42を介して固定部材17に回動可能に支持されている。そのため、アーム部本体21は、固定部材17に対して回動可能となっている。すなわち、第1アーム部7は、固定部材17およびケース体14に対して回動可能となっている。
【0035】
アーム部本体21の基端側の下面に形成される貫通穴の内周面21a(
図3(B)参照)の、上下方向から見たときの形状は、円形状となっている。また、固定部材17の上端部の、プーリ18よりも下側の外周面17a(
図3(B)参照)の、上下方向から見たときの形状は、円形状となっている。アーム部本体21の基端側の下面に形成される貫通穴と、固定部材17の上端部とは同軸上に配置されており、外周面17aと内周面21aとは、上下方向に直交する径方向において一定の隙間S1を介して対向している。隙間S1は、たとえば、0.1(mm)である。
【0036】
アーム部本体21の基端部には、内周面21aの上端部を構成する円環状の凸部21b(
図3(B)参照)が形成されている。凸部21bは、上側に向かって(すなわち、アーム部本体21の内部に向かって)突出している。凸部21bの上面21cは、上下方向に直交する円環状の平面となっている。プーリ18の径方向の外側端は、固定部材17の外周面17aよりも径方向の外側に配置されている。プーリ18の下面18a(
図3(B)参照)は、上下方向に直交する円環状の平面となっている。上面21cと下面18aとは、上下方向において一定の隙間S2を介して対向している。
【0037】
上面21cは、内周面21aの上端に繋がっている。また、下面18aは、外周面17aの上端に繋がっている。そのため、隙間S2は、隙間S1の上端に繋がっている。隙間S2は、隙間S1よりも広くなっている。すなわち、隙間S1は、隙間S2よりも狭くなっている。また、径方向における隙間S2の長さは、上下方向における隙間S1の長さよりも短くなっている。すなわち、隙間S1の上下方向の長さは、隙間S2の径方向の長さよりも長くなっている。
【0038】
本形態では、アーム部本体21と固定部材17との径方向の隙間(具体的には、アーム部本体21の貫通穴と固定部材17の上端部との径方向の隙間)である隙間S1と、アーム部本体21とプーリ18との上下方向の隙間(具体的には、凸部21bとプーリ18との上下方向の隙間)であって隙間S1の上端に繋がる隙間S2とによって、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制するためのシール部43が形成されている。すなわち、関節部10には、縦断面形状がL形状となるシール部43が形成されている。関節部10では、隙間S2と隙間S1とがロボット1の内部からロボット1の外部に向かってこの順番に配置されている。シール部43は、本体部5の内部および第1アーム部7の内部からの気体の流出を抑制する機能を果たしている。
【0039】
関節部10において、アーム部本体21は、シール部43を形成するための第1シール部材であり、固定部材17およびプーリ18は、シール部43を形成するための第2シール部材である。本形態では、固定部材17、プーリ18およびアーム部本体21は、アルミニウム合金で形成されている。すなわち、第1シール部材であるアーム部本体21と、第2シール部材である固定部材17およびプーリ18とは、同じ材料で形成されている。また、関節部10において、隙間S1は、第1隙間であり、隙間S2は、第2隙間であり、凸部21bの上面21cは、第1平面であり、プーリ18の下面18aは、第2平面である。また、関節部10において、第1アーム部7は、第1部材であり、本体部5は、第2部材である。
【0040】
関節部11において、固定軸25は、アーム部本体21の先端側の内部に配置されている。固定軸25は、上下方向を軸方向とする細長い円筒状に形成されている。プーリ27は、固定軸25の上端に固定されている。プーリ27は、アーム部本体29の基端側の内部に配置されている。軸受押え部材26は、円環状に形成されている。軸受押え部材26は、複数のステンレス製のネジ40によって、アーム部本体21の先端部の上面側に固定されている。軸受押え部材26の一部は、アーム部本体21の先端部の上面に形成される貫通穴の中に配置されている。軸受押え部材26は、後述の軸受45を上側から押える機能を果たしている。
【0041】
固定部材32は、アーム部本体29の基端側の下面に固定されている。固定部材32の上端部の外周面は、アーム部本体29の基端部の下面に形成される貫通穴の内周面に接触している。プーリ33は、固定部材32の下端に固定されている。固定部材32は、軸受押え部材26の内周側に挿入されており、固定部材32の下端部およびプーリ33は、アーム部本体21の先端側の内部に配置されている。プーリ33とプーリ18とには、図示を省略するベルトが架け渡されている。
【0042】
固定軸25は、固定部材32およびプーリ33の内周側に配置されている。固定部材32およびプーリ33は、軸受44を介して固定軸25に回動可能に支持されている。また、固定部材32およびプーリ33は、軸受45を介してアーム部本体21の先端部に回動可能に支持されている。そのため、固定部材32は、アーム部本体21および固定軸25に対して回動可能となっている。すなわち、第2アーム部8は、第1アーム部7に対して回動可能となっている。
【0043】
上下方向から見たときの軸受押え部材26の内周面26a(
図4(B)参照)の形状は、円形状となっている。また、固定部材32の、内周面26aに対向する部分の外周面32a(
図4(B)参照)の上下方向から見たときの形状は、円形状となっている。軸受押え部材26と固定部材32とは、同軸上に配置されており、内周面26aと外周面32aとは、上下方向に直交する径方向において一定の隙間S3を介して対向している。隙間S3は、たとえば、0.1(mm)である。
【0044】
軸受押え部材26には、内周面26aの上端部を構成する円環状の凸部26bが形成されている。凸部26bは、上側に向かって(すなわち、第2アーム部8に向かって)突出している。凸部26bの上面26cは、上下方向に直交する円環状の平面となっている。アーム部本体29の基端部の下面の、固定部材32よりも径方向の外側に配置される部分(以下、「下面29a」とする。)は、上下方向に直交する環状の平面となっている。上面26cと下面29aとは、上下方向において一定の隙間S4を介して対向している。上面26cは、内周面26aの上端に繋がっている。また、下面29aは、外周面32aの上端に繋がっている。そのため、隙間S4は、隙間S3の上端に繋がっている。隙間S3は、隙間S4よりも狭くなっている。また、隙間S3の上下方向の長さは、隙間S4の径方向の長さよりも長くなっている。
【0045】
本形態では、軸受押え部材26と固定部材32との径方向の隙間である隙間S3と、軸受押え部材26とアーム部本体29との上下方向の隙間(具体的には、凸部26bとアーム部本体29との上下方向の隙間)であって隙間S3の上端に繋がる隙間S4とによって、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制するためのシール部46が形成されている。すなわち、関節部11には、縦断面形状がL形状となるシール部46が形成されている。関節部11では、隙間S3と隙間S4とがロボット1の内部からロボット1の外部に向かってこの順番に配置されている。シール部46は、第1アーム部7の内部および第2アーム部8の内部からの気体の流出を抑制する機能を果たしている。
【0046】
関節部11において、軸受押え部材26は、シール部46を形成するための第1シール部材であり、アーム部本体29および固定部材32は、シール部46を形成するための第2シール部材である。本形態では、軸受押え部材26、アーム部本体29および固定部材32は、アルミニウム合金で形成されている。すなわち、第1シール部材である軸受押え部材26と、第2シール部材であるアーム部本体29および固定部材32とは、同じ材料で形成されている。また、関節部11において、隙間S3は、第1隙間であり、隙間S4は、第2隙間であり、凸部26bの上面26cは、第1平面であり、アーム部本体29の下面29aは、第2平面である。また、関節部11において、第1アーム部7は、第1部材であり、第2アーム部8は、第2部材である。
【0047】
関節部12において、アーム部本体29の内部には、アーム部本体29の下端側から上側に突出する円筒状の中空軸部29bが形成されている。シール部材34は、円環状に形成されている。シール部材34は、ステンレス製のネジ41によって、アーム部本体29の先端部の上面側に固定されている。シール部材34は、アーム部本体29の先端部の上面に形成される貫通穴の中に配置されている。
【0048】
固定部材38は、ハンド基部37の下面に固定されている。プーリ39は、固定部材38の下端に固定されている。プーリ39の上端部は、シール部材34の内周側に挿入されており、プーリ39の下端部は、アーム部本体29の先端側の内部に配置されている。プーリ39とプーリ27とには、図示を省略するベルトが架け渡されている。中空軸部29bは、プーリ39の内周側に配置されている。固定部材38およびプーリ39は、軸受47を介して中空軸部29bに回動可能に支持されている。そのため、固定部材38およびプーリ39は、アーム部本体29に対して回動可能となっている。すなわち、ハンド3は、第2アーム部8に対して回動可能となっている。
【0049】
上下方向から見たときのシール部材34の内周面34a(
図5(B)参照)の形状は、円形状となっている。また、プーリ39の、内周面34aに対向する部分の外周面39a(
図5(B)参照)の上下方向から見たときの形状は、円形状となっている。シール部材34とプーリ39とは、同軸上に配置されており、内周面34aと外周面39aとは、上下方向に直交する径方向において一定の隙間S5を介して対向している。隙間S5は、たとえば、0.1(mm)である。
【0050】
シール部材34の下端面の内周端には、上側に向かって窪む凹部34bが形成されている。凹部34bの上面34cは、上下方向に直交する円環状の平面となっている。プーリ39の外周面39aの下側には、円環状の段差面39bが形成されている。段差面39bは、上下方向に直交する平面となっている。上面34cと段差面39bとは、上下方向において一定の隙間S6を介して対向している。上面34cは、内周面34aの下端に繋がっている。また、段差面39bは、外周面39aの下端に繋がっている。そのため、隙間S6は、隙間S5の下端に繋がっている。隙間S5は、隙間S6よりも狭くなっている。また、隙間S5の上下方向の長さは、隙間S6の径方向の長さよりも長くなっている。
【0051】
本形態では、シール部材34とプーリ39との径方向の隙間である隙間S5と、シール部材34とプーリ39との上下方向の隙間(具体的には、凹部34bと段差面39bとの上下方向の隙間)であって隙間S5の下端に繋がる隙間S6とによって、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制するためのシール部49が形成されている。すなわち、関節部12には、縦断面形状がL形状となるシール部49が形成されている。関節部12では、隙間S6と隙間S5とがロボット1の内部からロボット1の外部に向かってこの順番に配置されている。シール部49は、第2アーム部8の内部およびハンド3の内部からの気体の流出を抑制する機能を果たしている。
【0052】
関節部12において、シール部材34は、シール部49を形成するための第1シール部材であり、プーリ39は、シール部49を形成するための第2シール部材である。本形態では、シール部材34およびプーリ39は、アルミニウム合金で形成されている。すなわち、第1シール部材であるシール部材34と、第2シール部材であるプーリ39とは、同じ材料で形成されている。また、関節部12において、隙間S5は、第1隙間であり、隙間S6は、第2隙間であり、凹部34bの上面34cは、第1平面であり、プーリ39の段差面39bは、第2平面である。また、関節部12において、第2アーム部8は、第1部材であり、ハンド3は、第2部材である。
【0053】
なお、ロボット1では、アーム部本体21、29の内部、回動軸15の内周側、固定軸25の内周側および中空軸部29bの内周側を通過するように、所定の配線や配管が引き回されている。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、関節部10に形成されるシール部43は、アーム部本体21と固定部材17との径方向の隙間である隙間S1と、アーム部本体21とプーリ18との上下方向の隙間であって隙間S1の上端に繋がる隙間S2とから構成されている。同様に、本形態では、関節部11に形成されるシール部46は、軸受押え部材26と固定部材32との径方向の隙間である隙間S3と、軸受押え部材26とアーム部本体29との上下方向の隙間であって隙間S3の上端に繋がる隙間S4とから構成され、関節部12に形成されるシール部49は、シール部材34とプーリ39との径方向の隙間である隙間S5と、シール部材34とプーリ39との上下方向の隙間であって隙間S5の下端に繋がる隙間S6とから構成されている。そのため、本形態では、関節部10〜12に設けられるシール部43、46、49の構成を簡素化することが可能になる。
【0055】
一方、本形態のシール部43は、隙間S1と隙間S2とから構成される単純な構造であるため、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S1が広がると、シール部43のシール機能が低下して、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制できなくなるおそれがある。また、本形態のシール部43は、隙間S1と隙間S2とから構成される単純な構造であるため、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S1が狭まると、アーム部本体21と固定部材17とが接触して関節部10の動作に支障を来すおそれがある。したがって、設計上の隙間S1を狭めることができずに、シール部43のシール機能を確保できなくなるおそれがある。
【0056】
しかしながら、本形態では、アーム部本体21と固定部材17とが同じ材料で形成されているため、ロボット1の環境温度が変動しても、また、設計上の隙間S1を狭めても、アーム部本体21と固定部材17とが接触しないように隙間S1を一定に保つことが可能になる。
【0057】
同様に本形態では、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S3が広がると、シール部46のシール機能が低下して、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制できなくなるおそれ、および、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S3が狭まると、軸受押え部材26と固定部材32とが接触して関節部11の動作に支障を来すおそれがあるため、設計上の隙間S3を狭めることができなくなるおそれがあるが、軸受押え部材26と固定部材32とが同じ材料で形成されているため、ロボット1の環境温度が変動しても、また、設計上の隙間S3を狭めても、軸受押え部材26と固定部材32とが接触しないように、隙間S3を一定に保つことが可能になる。
【0058】
また、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S5が広がると、シール部49のシール機能が低下して、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出を抑制できなくなるおそれ、および、ロボット1の環境温度が変動して、隙間S5が狭まると、シール部材34とプーリ39とが接触して関節部12の動作に支障を来すおそれがあるため、設計上の隙間S5を狭めることができなるおそれがあるが、シール部材34とプーリ39とが同じ材料で形成されているため、ロボット1の環境温度が変動しても、また、設計上の隙間S5を狭めても、シール部材34とプーリ39とが接触しないように、隙間S5を一定に保つことが可能になる。
【0059】
したがって、本形態では、関節部10〜12に設けられるシール部43、46、49の構成を簡素化しつつ、ロボット1の内部からロボット1の外部への気体の流出をシール部43、46、49によって抑制することが可能になる。その結果、本形態では、関節部10〜12に設けられるシール部43、46、49の構成を簡素化しつつ、ロボット1の内部で発生する塵埃の関節部10〜12からの流出を抑制することが可能になる。なお、ロボット1の内部では、プーリ18、27、33、39、ベルト、および、アーム部本体21、29の内部等で引き回される配線等の影響で塵埃が生じる。
【0060】
本形態は、固定部材17、32、プーリ18、39、アーム部本体21、29、軸受押え部材26およびシール部材34がアルミニウム合金で形成されている。そのため、本形態では、固定部材17、32、プーリ18、39、アーム部本体21、29、軸受押え部材26およびシール部材34の加工が容易になる。また、本形態では、固定部材17、32、プーリ18、39、アーム部本体21、29、軸受押え部材26およびシール部材34を軽量化することが可能になる。
【0061】
なお、本形態では、ケース体14、回動軸15もアルミニウム合金で形成されている。また、蓋部材22、23、固定部材24、固定軸25およびプーリ27もアルミニウム合金で形成されている。すなわち、第1アーム部7は、アルミニウム合金で形成されている。また、蓋部材30、31およびプーリ33もアルミニウム合金で形成されており、第2アーム部8は、アルミニウム合金で形成されている。また、ハンド基部37および固定部材38もアルミニウム合金で形成されている。
【0062】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0063】
上述した形態において、アーム部本体21と、固定部材17およびプーリ18とは、アルミニウム合金以外の同じ材料で形成されていても良い。また、上述した形態において、軸受押え部材26と、アーム部本体29および固定部材32とは、アルミニウム合金以外の同じ材料で形成されていても良いし、シール部材34とプーリ39とは、アルミニウム合金以外の同じ材料で形成されていても良い。
【0064】
上述した形態において、隙間S2と隙間S1とが等しくなっていても良いし、隙間S2が隙間S1より狭くなっていても良い。同様に、隙間S4と隙間S3とが等しくなっていても良いし、隙間S4が隙間S3より狭くなっていても良い。また、隙間S6と隙間S5とが等しくなっていても良いし、隙間S6が隙間S5より狭くなっていても良い。
【0065】
上述した形態において、隙間S2の径方向の長さは、隙間S1の上下方向の長さと等しくなっていても良いし、隙間S1の上下方向の長さより長くなっていても良い。同様に、隙間S4の径方向の長さは、隙間S3の上下方向の長さと等しくなっていても良いし、隙間S3の上下方向の長さより長くなっていても良い。また、隙間S6の径方向の長さは、隙間S5の上下方向の長さと等しくなっていても良いし、隙間S5の上下方向の長さより長くなっていても良い。
【0066】
上述した形態において、アーム4は、互いに回動可能に連結される3個以上のアーム部によって構成されても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、搬送対象物を搬送するためのロボットであるが、本発明が適用されるロボットは、他の用途で使用されるロボットであっても良い。